海外研修報告 -...
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海外研修報告
土木・環境工学系 3 年 小暮悠介
はじめに
私は 2019 年 9 月 2 日から 8 日までオーストラリアを訪れた。
シドニー、キャンベラ、メルボルンの 3 都市を訪れた。シドニー
からキャンベラまでは高速バスに乗車し、キャンベラからメルボ
ルンまではオーストラリアの LCC、タイガーエアオーストラリア
を利用した。本研修が初めての海外旅行であり、かつ 1 人での旅
行であったため、まずは安全の確保を第一に考えた。そのうえで、
本研修では、英語でのコミュニケーションを図り、海外に対する
不安を和らげ、今後の海外旅行あるいは海外での仕事により積極
的になることを目的とした。
1. シドニー
シドニーはオーストラリア最大の人口を有し、経済、文化の中心であり、オペラハウスや
ハーバーブリッジに代表されるように、国際的な観光都市でもある。シドニーでは 2 日間
滞在し、初日にオペラハウスなどがある市街地を巡り、2 日目は郊外にあるブルーマウンテ
ンズやジェノランケーブを訪れた。
シドニーを含むニューサウスウェールズ州では、opal カードという交通系 IC カードが使
われており、電車やバス、フェリーといったあらゆる公共交通機関をこのカードで利用する
ことができる。たいていの駅には図 1 に示したような opal カードのチャージ機が設置され
ているのだが、なかにはクレジットカードチャージ専用の機械もあり、日本よりもキャッシ
ュレス化が進んでいるなと思った。
opal カードを利用した場合の運賃は、紙の切符の運賃よりもかなり安くなっており、1 回
だけの乗車であっても opal を用意する価値は十分にある。そのうえ、opal カードには 1 日
当たりおよび、1 週間当たりの上限金額が設定されていたり、1 時間以内であれば、改札の
外に出ても途中下車とみなされず、乗り換え扱いになったりするなど、お得な特典が豊富に
用意されている。その甲斐あってか、私が見る限り全員 opal カードを利用していたように
思う。日本では、なかなか鉄道を利用しない人や観光客は、IC カードを利用していない場
合もよくあるが、利用の促進にはこのような施策も必要ではないかと思った。
シドニーの交通で印象的だったのはフェリーが数多く行き交っており、市民の足となっ
ていることだった(図 2)。実際に乗ってみると、オペラハウスをさまざまな角度から眺め
られ、またハーバーブリッジの下をくぐることもできて、観光客にとっても、よい体験であ
った。
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図 1 オペラハウス周辺を行き交うフェリー 図 2 opal card のチャージ機
2. キャンベラ
キャンベラはオーストラリアの首都であるが、シドニーとメルボルンが首都を争った末、
妥協案としてその中間に造られた計画都市である。そのため、国会議事堂をはじめ政府機関
は集積しているものの、人口は約 40 万人と少な目ある。私が今回、キャンベラを訪れた理
由は、完全な計画都市を見てみたかったのと、日本との関わりとしてオーストラリア戦争記
念館を訪れたかったからである。観光の目玉になるような施設はなく、実際、外国人観光客
らしき人は少なかったが、オーストラリアの歴史を学ぶには非常にいい所だった。
図 3 は、オーストラリア戦争記念館から国会議事堂方向を見た様子である。もともと何
もない所に都市を造っただけあって、道幅が非常に広くなっている。しかし、政府機関が活
動している平日の昼間に訪れたにもかかわらず、交通量は少なく、歩行者に至ってはほぼ0
の状態であったので、本当にここまで豪華な設備が必要なのかは疑問であった。
図 4 はオーストラリア戦争記念館に展示されていた、第二次世界大戦時にオーストラリ
アで作られたポスターである。背景を見ればわかる通り、銃を持って攻めてきているのは日
本軍である。この記念館には実物大のゼロ戦の模型や旧日本軍の軍服も展示されていた。む
しろ、第二次世界大戦に関する資料はほとんど旧日本軍に関するものとなっていた。日本軍
が、当時オーストラリアの統治領であったニューギニアでの激戦や、さらにはオーストラリ
ア本土にも空襲を行っていたことを知った。日本はさまざまな場所へ侵攻していったので、
オーストラリアはその中のひとつ、というようにしか捉えているかもしれない。しかし本土
を襲撃されたオーストラリアにとっては、第二次世界大戦は大日本帝国との戦いという印
象を強く感じた。
私が展示物を見ていると、記念館の解説員の方に声を掛けられた。その方の娘さんは、徳
島で英語の先生をしているということで、日本人らしき私を見かけて声を掛けてきたよう
だ。その方は、私の出身地である群馬県太田市は知らなかったようだが、中島飛行機の工場
があったところですと言ったら驚いた様子であった。日本人でも中島飛行機のことを知ら
ない人は多いかもしれないが、オーストラリアで、中島飛行機がゼロ戦を製造していたこと
を知っている人がいるとは、私も驚いた。
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図 3 キャンベラの道路 図 4 第二次世界大戦時のポスター
オーストラリアでは自転車の利用が目についた。図 5 は前面に自転車を搭載する装置を
つけて走っているバスである。日本では、鉄道やバスの中に自転車を持ち込むということは
行われているが、外に自転車を載せるというのは面白いと思った。図 6 は LRT の駅の様子
である。LRT には自転車を持ち込めないが、ホームのすぐ脇には駐輪場があり、スムーズ
な乗り換えが可能になっていた。
図 5 自転車を搭載したバス 図 6 LRT の停留所と駐輪場
3. メルボルン
メルボルンは世界一住みやすいまちに選ばれたこともあり、私も今回訪れた 3 都市の中
で最も住みたいと思う都市であった。メルボルンの市街地ではトラムを無料で利用するこ
とができ、市民、観光客を問わず多くの人に利用されていた。ほとんどの主要な通りに、縦
横無尽に路面電車が走っていて、一見すると複雑に見えるが、停留所名が、京都市のように
通りの名(例:烏丸御池)で表されていてわかりやすかった。
メルボルンのいい所は、美しい図書館として有名なビクトリア州立図書館(図 7)や、世
界遺産である王立展示館とカールトン庭園(図 8)をはじめとした主要な観光施設はすべて、
無料のトラムで周れることだ。カールトン庭園は市街地にありながら、広大な公園になって
いて、市民の憩いの場にもなっていた。また、南半球最大の市場といわれる、クイーンビク
トリアマーケットもある。買い物、交通が整っていて、さらには文化施設も充実しており、
観光するだけでなく、住んでみたくなる都市であった。
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図 7 ビクトリア州立図書館 図 8 カールトン庭園
ただ、滞在中に一度デモに遭遇したのは予想外であった。おそらく平穏なデモであったと
思われるが、デモ隊が道路を占拠し、道路が封鎖されたため、トラムの運行がストップして
しまった。歩いてホテルに向かおうにも、警察に止められてしまったので、車内に戻って、
結局 30分くらい足止めをくらってしまった。とはいえ無事にホテルに戻れたのでよかった。
このことを考えると、デモを行うにも事前に警察の許可が必要で、少なくとも一般の人には
迷惑がかかない日本のデモはほんとうに平穏だと思った。
旅行の最終日にはメルボルン市内発着の、グレートオーシャンロードツアーに参加した。
英語ガイドの現地ツアーということで、説明が全然わからないのではないかと不安だった。
しかし、参加者はさまざまな国から集まっており、おそらく非英語圏からの参加者も多いよ
うで、ガイドさんはゆっくり、はっきりと話してくれたので、半分くらいは聞き取ることが
できた。バス車内での BGM もカントリーロードや We Are The World など世界的に知られ
た曲をかけたり、ガイドさんがオーストラリアに関するクイズを出したりして、退屈するこ
となく過ごすことができた。グレートオーシャンロードは海岸線に沿って建設された
200km にも及ぶ道路である。図 9 はグレートオーシャンロードの中でも特に美しい、ロッ
クアードゴージと 12 人の使徒と呼ばれる場所である。このあたりはメルボルン市街地から
約 300km 離れており、一日がかりのツアーで少々疲れたが、たいへん車窓も美しいので、
ぜひともおすすめしたい観光地である。
図 9 グレートオーシャンロード(左: ロックアードゴージ、右: 12 人の使徒)
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おわりに
日本での一人旅は何度も経験している私も、海外はなんとなく不安で、なかなか行けずに
いました。しかし、土木系の授業を受けている中で、多くの海外の事例を知って、興味が湧
いてきました。海外旅行には金銭的な負担は避けて通れませんが、今回は丘友会様からのご
支援をいただいて、渡航することができました。
当初の目的としていた、英語でのコミュニケーションに慣れ、海外に対する不安を和らげ
ることは、今回だけではなかなか難しかったです。むしろ、突如デモに遭遇したり、キャン
ベラからメルボルンへのフライトが 3 時間遅れたり、計画通りいかない部分もあり、もし
そのまま欠航になっていたらどうしただろうか、と不安になる部分もありました。しかし、
そのようなイレギュラーな時こそ、その場でコミュニケーションをとり、情報収集すること
が必要だと思いました。まだまだ、英語力、海外経験ともに不足していることを感じたので、
これからも勉強に励んでいきたいと思います。
末筆ながら、このような貴重な機会を与えてくださった丘友会の皆様に深く感謝を申し
上げます。