爀屲face...
TRANSCRIPT
PEACE
Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment
for Continuous medical Education
がん性疼痛の評価と治療
2009年1月版
M-3
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
臨床疑問
評価
がん性疼痛はどうやって評価したらよいか?
薬物療法
くすりは何をどのように使ったらよいのか?
オピオイドの使い方・注意点は?
非薬物療法・ケア
くすり以外の対処法はどんなものか?
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
メッセージ
がん患者の疼痛について正しく評価すること
が重要
抗がん治療と並行して行う
疼痛治療のアルゴリズムに従って治療を行う
ケアとコミュニケーションが重要
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目的
この項目を学習した後、以下のことができ
るようになる
がん性疼痛の評価
疼痛のパターン・強さ・性状が評価できる
がん性疼痛の薬物治療
オピオイドの処方のしかたがわかる
がん性疼痛の非薬物療法・ケア
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開かれた質問から始める
まず「開かれた質問」で患者が も心配して
いることを聞く
(症状で)一番困っていることは何ですか?
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開かれた質問の重要性
開かれた質問 (open-ended question)「いちばん困っていらっしゃることは何ですか?」のように、はい・
いいえで答えることができず、受け手の自由な応答を促す質問
閉じた質問 (closed question)「痛みがありますか?」のように、はい・いいえで答えられる質問
特定の問題についての情報を収集するために有用
痛いのはいいんだけど、もっと違う心配があるんだけどなあ‥
痛いですか?
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全人的苦痛 (total pain)
がん患者の苦痛は多面的であり、全人的に捉えなければ
ならない
全人的苦痛(total pain)
精神的苦痛
痛み他の身体症状
日常生活動作の支障
身体的苦痛
社会的苦痛
スピリチュアルな苦痛
不安いらだちうつ状態
経済的な問題仕事上の問題家庭内の問題
生きる意味への問い死への恐怖自責の念
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生活の支障・満足度を聞く
症状が生活へ及ぼしている影響、今の治療
についての満足度を聞く
症状について今の治療で満足されていますか?
それとも生活に支障があるので対応が必要なくらいですか?
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症例1
膵臓がんの54歳女性
1週間前より心窩部から背部にかけて痛み
が出現するようになり、次第に増悪してきた
ため本日外来を受診した
Q1.痛みを評価するためにどのようなこ
とを聞けばよいのだろうか?
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痛みの部位と経過を聞く
「どこが痛みますか?」と部位を確認し、診察を行う
痛みの原因となる病変があることを、必要なら画像検査などを用いて評価する
がん患者の痛みがすべてがんによる痛みとは限らない
新しく出現した症状は、新しい病変や症状の出現の可能性を考える必要がある
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痛みの性状と分類
内臓痛腹部腫瘍の痛みなど局在
があいまいで鈍い痛み。
ズーンと重い
オピオイドが効きやすい
体性痛
骨転移など局在がはっきり
した明確な痛み。ズキッと
する
突出痛に対するレスキューの使用が重要になる
神経障害性
疼痛
神経叢浸潤、脊髄浸潤な
ど、びりびり電気が走るよ
うな・しびれる・じんじんす
る痛み
難治性で鎮痛補助薬を必要とすることが多い
侵害受容性疼痛
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痛みの強さを聞く
Numeric Rating Scale (NRS)
痛み 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
全くなかった
これ以上耐えられないほど
ひどかった
症状が全くないときを0、これ以上ひどい症状が考えられないときを10とすると、今日の(症状の)強さは
どれくらいになりますか?
症状の程度を数値化して聞く (NRS)
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痛みの強さを聞く
Visual Analog Scale (VAS)
0痛みなし
10想像できる悪の痛み
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痛みの強さを聞く
Face Scale
飯村直子ら:日本小児看護学会誌. 2002; 11(2): 21-7Wong, DL,: Wong's Essentials of Pediatric Nursing, ed. 6,2001, p1301
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痛みのパターンを聞く
疼痛はパターンから、持続痛と突出痛に分
けられる
持続痛 持続痛+突出痛 突出痛
一日中ずっと痛い 時々痛くなる
10
0
10
0
10
0
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症例1 つづき
1週間前より心窩部から背部にかけて1日中持続する鈍痛 (NRS 5/10)が出現する
ようになったという
画像検査を行ったところ、膵体部に門脈浸
潤を伴う4cm大の膵がんを認め、多発肝
転移、大動脈周囲のリンパ節転移もきたし
ていた
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症例1に戻ると・・・
どこがいつから痛いのか?
1週間前から心窩部から背部にかけて痛い
どのように痛いのか?
持続する鈍痛 内臓痛の可能性が高い
痛みのパターンと強さ
1日中痛い 強さはNRS 5/10
疼痛の原因となるがん病変があることの確認
腫瘍の腹腔神経叢浸潤を疑う
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症例1 つづき
膵臓がんの54歳女性
1週間前より心窩部から背部にかけて1日中
持続する鈍痛 (NRS 5/10)があり、膵臓が
んによる内臓痛と判断した
Q2.どのようにして痛みをとっていけばよいだ
ろうか?どのような薬剤を選択するか?
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WHO方式がん性疼痛治療の5原則
経口投与を基本とする
時間を決めて定期的に投与する
「疼痛時」のみで使用しない
WHOラダーに沿って痛みの強さに応じた薬剤を
選択する
原則として非オピオイド鎮痛薬をまず投与し、効果が不
十分な場合にはオピオイドを追加する
患者に見合った個別的な量を投与する
患者に見合った細かい配慮をする
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WHOラダー
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
疼痛治療の目標
第1目標
痛みに妨げられずに夜は良眠できる状態
第2目標
安静時に痛みがない状態
第3目標
体動時にも痛みがない状態
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疼痛治療
アルゴリズム
(1) NSAIDsの開始
(2) オピオイドの導入
(3) 残存・増強した痛みの治療
持続的な痛みをとるためにオピオイドを増量する
(持続痛の治療ステップ)
10
0
10
0
10
0
体動時や突然の痛みに対処するためにレスキューを使う(突出痛の治療ステップ)
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
疼痛治療の導入
overview
WHOラダーに沿ってNSAIDsを開始する
NSAIDsの定期投与レスキューの指示胃潰瘍の予防
(1) NSAIDsの開始
(2) オピオイドの導入
(3) 残存・増強した痛みの治療
持続的な痛みをとるためにオピオイドを増量する
(持続痛の治療ステップ)
10
0
10
0
10
0
体動時や突然の痛みに対処するためにレスキューを使う(突出痛の治療ステップ)
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
NSAIDsの開始
NSAIDsの定期投与
NSAIDsは、鎮痛効果と副作用から選択する
胃潰瘍の予防
ミソプロストール(サイトテックⓇ)、プロトンポンプ阻害薬
またはH2ブロッカーを併用
レスキューの指示
疼痛の悪化にそなえ、レスキュー指示を出す
NSAIDsの1日 大量を超えない範囲でNSAIDs1回量
アセトアミノフェン
オピオイド
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
症例1 つづき
膵臓がんの54歳女性
ロキソニンⓇを3錠分3で開始し、3日後に再診とした
しかし、再診時にも痛みはNRS 4/10と十分にとれていなかった
Q3.どうしたらよいだろうか?
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイドの導入
overview
(1) NSAIDsの開始
(2) オピオイドの導入
(3) 残存・増強した痛みの治療
持続的な痛みをとるためにオピオイドを増量する
(持続痛の治療ステップ)
10
0
10
0
10
0
体動時や突然の痛みに対処するためにレスキューを使う(突出痛の治療ステップ)
WHOラダーに沿ってオピオイドを開始する
オピオイドの定期投与レスキューの指示嘔気・便秘の予防
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイド
オピオイド受容体と親和性を示す化合物の
総称で、アヘンが結合するオピオイド受容体
に結合する物質として命名
日本で医薬品として用いられるオピオイド
モルヒネ
コデイン
オキシコドン
フェンタニル
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイド導入のポイント
時間を決めて、定期的に投与
NSAIDsは中止しないで併用する
体格が小さい、高齢者、全身状態が不良の
場合には少量から開始
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイドの剤形と製剤の選択
経口
非経口
速放性製剤
徐放性製剤
オプソ・モルヒネ(散・水)
MSコンチン・カディアン・ピーガード・パシーフ・モルペス・MSツワイスロン
注射剤
坐剤
貼付剤
アンペック坐薬
デュロテップ
オキシコンチン
モルヒネ注
フェンタニル注
パビナール
オキノーム
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
各オピオイドの特徴
モルヒネ
剤形が豊富であり、経口(速放性・徐放性製剤)、静注、皮下注、経直腸など様々な投与経路の変更に対応が可能
各投与経路間の換算比が確立している
腎障害がある場合には、活性代謝産物 (M-6-G)が蓄積して、傾眠や呼吸抑制などが生じやすい
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
各オピオイドの特徴
オキシコドン
経口(速放性、徐放性製剤)と複合剤である
注射剤がある
活性代謝産物は微量に生成されるが、腎機
能障害による影響を受けにくい
徐放製剤の 小規格5mgで強オピオイドと
しては 低用量での開始が可能
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
各オピオイドの特徴
フェンタニル
注射剤と経皮吸収型の貼付剤がある。貼付剤は72時間作用が持続するが、増量や減量の際の調節性は劣る
レスキューとして使用できる経口製剤がなく、モルヒネまたはオキシコドンの速放性製剤の併用が不可欠
他のオピオイドに比して、便秘、眠気などの副作用の頻度が低いというメリットがある
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
経口モルヒネ60mg
オピオイド力価表
アンペック坐40mg
モルヒネ注30mg
フェンタニル注0.6mg
オキシコンチン40mg
デュロテップMT4.2mg/3d
デュロテップ2.5mg/3d==
=
==
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
投与開始量
経口投与
モルヒネから開始する場合は
速放性製剤を4時間ごとに1回5~10mg徐放性製剤( 12 または 24 時間ごと )を1日20~30mg
オキシコドンから開始する場合は
徐放性製剤を1日10~20mg
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
投与開始量
非経口投与
モルヒネ注から開始する場合は
1日量として10mgを持続静注・皮下注
フェンタニル注から開始する場合は
1日量としてフェンタニル0.2~0.3mgを持続静
注・皮下注
モルヒネ坐薬から開始する場合は
8時間ごとに1回10mg
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイドの導入
レスキュー
疼痛の悪化にそなえ、レスキュー指示を出す
徐放性製剤と同じ種類のオピオイドを用いる
レスキューの投与量
内服・坐薬はオピオイド1日量の6分の1持続注射は1時間量を早送り
内服は1時間以上あけて、持続注射では15~30分以上あけて繰り返し使用可
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイド導入時に注意すること
オピオイドを導入する際にはどのようなこと
に注意すればよいのだろうか?
副作用対策が重要!
どんな副作用があるだろうか?
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイドの副作用
嘔気・嘔吐
便秘
眠気
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイドの副作用
嘔気・嘔吐
オピオイド投与初期にみられることがある
出現頻度は30%程度ではあるが、一旦出
現すると継続投与が困難になることが多く
予防対策が必須
プロクロルペラジン(ノバミン®)を3錠分3で投与開始し、1~2週間で漸減・中止可
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オピオイドの副作用
便秘
ほとんどの患者に便秘が生じるため、オピオ
イド導入時にあらかじめ下剤を併用する
便を軟らかくする浸透圧下剤と、腸蠕動を
亢進させる大腸刺激性下剤がある
便が硬いときは浸透圧下剤、腸蠕動が弱
いときには大腸刺激性下剤を用いる
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイドの副作用
眠気
オピオイド開始数日は、眠気や軽い傾眠が
見られることが多い
「眠気は、うとうとしてちょうどいいくらいで
すか?それとも不快な感じですか?」と聞き
不快であれば対処を始める
対処方法としては、オピオイドの減量、オピ
オイドローテーション、他の薬剤の見直し
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
症例1 つづき
膵臓がんの54歳女性
ロキソニンⓇを3錠分3で開始し、3日後に再
診としたが、再診時にも痛みはNRS 4/10と十分とれていなかった
Q4.オピオイドを開始するとして、実際の処方
箋を記載してみよう!
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
実際の処方例
オキシコンチン (10) 2錠 分2 (8時、20時)
ロキソニン (60) 3錠 分3 (朝・昼・夕)
タケプロンOD(15) 1錠 分1 (夕)
ノバミン(5) 3錠 分3 (朝・昼・夕)
酸化マグネシウム 1.5g 分3 (朝・昼・夕)
オキノーム (2.5mg) 疼痛時頓用
1時間以上あけて繰り返し使用可
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処方箋の記載方法
麻薬施用者番号を記載
患者の住所を記載
オピオイド副作用対策 をセットで処方レスキュー
署名、捺印
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症例1 つづき
膵臓がんの54歳女性
心窩部から背部にかけての持続する鈍痛に対し、オキシコンチンⓇを20mg/日処方し、3日後再診とした
再診時、NRS 3/10とまだ痛みが残存していた
レスキューのオキノームⓇ散2.5mgでNRS 1/10まで改善し、1日4回使っていた。
Q5.どのように対処すればよいだろうか?
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
持続痛の治療
overview
(1) NSAIDsの開始
(2) オピオイドの導入
(3) 残存・増強した痛みの治療
持続的な痛みをとるためにオピオイドを増量する
(持続痛の治療ステップ)
10
0
10
0
10
0
体動時や突然の痛みに対処するためにレスキューを使う(突出痛の治療ステップ)
持続する痛みをとるためにNSAIDsを 大量まで増量し、さらにオピオイドを増量する
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
持続痛の治療STEP
放射線治療・神経ブロック
STEP1 STEP2 STEP3
オピオイドローテーションor 鎮痛補助薬
定期オピオイドの増量30~50%/1~3日ごと
NSAIDs大投与量まで増量
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
持続痛の治療
STEPにかかわらず考える:放射線治療
骨転移による疼痛の緩和と骨折の予防に
放射線照射が有効
3Gy×10frが標準的だが、単回照射でも可
適応について、放射線治療医と相談
骨転移に限らず、責任病巣のはっきりした疼痛
に対しては、適応の可能性がある
局所制御や根治も視野に入れた設定が可能
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持続痛の治療
STEPにかかわらず考える:神経ブロック
膵癌による上腹部痛、骨盤内臓がんによる肛門・
会陰部の痛み、胸壁の痛みなどで適応になる場
合が多い
適応となる疼痛が出現したすべての場合で、適応
を検討する
早期の適応について、専門医と相談
全身状態が悪化してからは、ブロック処置を行うことが
できないことがある
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持続痛の治療
STEP1・2
NSAIDsが 大量まで投与されていることを確
認する
嘔気や眠気が生じない範囲で、オピオイドを増量
する
オピオイドの投与量に絶対的な上限はない
増量幅
経口モルヒネ換算120mg/日以下の場合は50%120mg/日以上・体格が小さい・高齢者・全身状態が
不良の場合には30%
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症例1に戻ると・・・
定期オピオイドを増量する
基本的には50%増量するので、現在の1日20mgを30mgに増量
前日に使用したレスキュー使用量の合計量を上乗せしてもよい
レスキューを4回使用しているので、2.5×4=10mgを追加して、20mg+10mg=30mgとする
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症例1 つづき
痛みを評価しながらオキシコンチンを徐々
に増量した
1日100mgから120mgに増量したところ、
痛みは軽減したものの眠気が強くなり、不
快に感じていた
Q6.どのように対処すればよいだろうか?
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
持続痛の治療
STEP3
眠気などの副作用により増量が困難な場
合や、十分な鎮痛が得られないときに考え
ること
オピオイドローテーション
鎮痛補助薬
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
持続痛の治療
STEP3:オピオイドローテーション
鎮痛が十分でない、または副作用のために
オピオイドの種類を変更すること
力価表に従って、現在のオピオイドと等価の
新しいオピオイドの投与量を決め変更する
経口モルヒネ換算120mg以上の場合には
原則として一度に変更せずに、30~50%づつ徐々に置き換える
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経口モルヒネ60mg
オピオイド力価表
アンペック40mg
モルヒネ注30mg
フェンタニル注0.6mg
オキシコンチン40mg
デュロテップMT4.2mg/3d
デュロテップ2.5mg/3d==
=
==
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイドローテーションの実際
大量のオピオイドの場合
例)オキシコンチンⓇ120mg/日 デュロテップⓇ
オキシコンチン120mg/日
レスキュー:オキノーム
20mg/回
オキシコンチン80mg
デュロテップMT4.2mg
オキシコンチン40mg
デュロテップMT8.4mg
デュロテップMT12.6mg
1 2 3 4
• オキシコンチン1回量60mgを内服と同時にデュロテップMT4.2mgを貼付
• 次回内服分からオキシコンチン1回量を40mgに減量
• レスキュー:そのまま
• 次回デュロテップMT貼り替え日、オキシコンチン1回量40mgを内服と同時にデュロテップMT8.4mgを貼付
• 次回からオキシコンチン1回量を20mgに減量
• レスキュー:そのまま
• 次回デュロテップMT貼り替え日、オキシコンチン1回量20mgを内服と同時にデュロテップMT12.6mgを貼付
• レスキュー:そのまま
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
持続痛の治療
STEP3:鎮痛補助薬
ビリビリした痛みやじんじんした痛みなど(神経障
害性疼痛)で有効な可能性がある
鎮痛補助薬の有効性:40~60%副作用(主に眠気)があるので、鎮痛効果と副作用とのバランスを
とりながら処方する
十分なエビデンスと保険適応がない薬剤が多い病院・地域の専門家の意見にしたがって使用する
トリプタノールⓇ、ガバペンⓇ、リボトリールⓇ、テグレ
トールⓇ、ケタミンⓇ、リンデロンⓇなど
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
症例1に戻ると・・・
膵臓がんの痛みは、腹腔神経叢ブロックの適応になることがある
必要に応じて専門家にコンサルテーション
オピオイドローテーションを検討
オキシコンチンⓇ120mgをデュロテップMTⓇ
12.6mgに段階的にローテーション
鎮痛補助薬の使用を検討
専門家にコンサルテーション
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
症例2
乳がん、多発骨転移の50歳女性
ロキソニンⓇの定期内服とデュロテップⓇMTパッチ12.6mgが貼付されており、レスキューとしてオプソⓇ5mgが処方
安静時には特に痛みはないが、トイレに行くときには腰がとても痛い(腰椎の転移部位に一致)
レスキューは使用していない
Q7.どのように対処すればよいだろうか?
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
突出痛の治療
アルゴリズム
(1) NSAIDsの開始
(2) オピオイドの導入
(3) 残存・増強した痛みの治療
持続的な痛みをとるためにオピオイドを増量する
(持続痛の治療ステップ)
10
0
10
0
10
0
体動時や突然の痛みに対処するためにレスキューを使う(突出痛の治療ステップ)
動いたとき、突然の痛みに対処するためにレスキューをうまく使う
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
突出痛の治療
エッセンス
定期的にオピオイドを投与されていても、
70%の患者が突出痛を経験する
レスキューの使用法を患者・家族に指導
骨転移の痛みには、放射線照射およびビス
ホスホネート製剤の適応がないか検討
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
突出痛の治療
骨転移の痛みの治療
骨転移による疼痛の緩和と骨折の予防に
放射線照射が有効
3Gy×10frが標準的だが、単回照射でも可
ビスホスホネート製剤も疼痛および骨折の
予防に効果がある
処方例)ゾメタⓇ (4mg)の点滴投与
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
突出痛の治療
レスキューの必要性の説明
レスキューの使用により「鎮痛薬の必要量を
早く見積もることができること」、「突出痛に
よる苦痛へ対応できること」を説明する
レスキューを使いこなせるようになることで、
患者の「自分で痛みの対処ができる感覚」
が高まり、生活や治療への意欲が増すこと
が期待される
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
症例2 つづき
放射線照射を考慮
ビスホスホネートの点滴投与を検討
デュロテップⓇMTパッチ12.6mgはモルヒネ内服
換算で180mg/日となる。
標準的なレスキュー量は180÷6=30mg必要量が処方されておらず、増量が必要
レスキューの使用について十分に説明する
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
がん性疼痛の非薬物療法・ケア
痛みに関与する要因は?
どのような時に痛みが強くなり、どのような時
に痛みが軽くなるだろうか?
薬物治療以外の痛みを緩和する方法は?
薬物療法以外の疼痛緩和の方法を考えてみる
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
痛みを和らげるケア
痛みの閾値に影響する因子
不快 不眠
疲労 不安
恐怖 怒り
悲しみ うつ状態
倦怠感
内向的心理状態
孤独感
社会的地位の喪失
症状緩和睡眠 休憩
周囲の人々の共感理解
人とのふれあい気晴らしとなる行為
不安減退気分高揚
鎮痛薬抗不安薬抗うつ薬
Twycross, et al 著, 武田文和 訳:末期患者の診療マニュアル, 第2版, 1991
これらを高めるケアを考える
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
ケアは薬物療法と並行して行う
ケアは薬物療法と並行して行う必要がある
患者本人や家族が行っている疼痛時の対
処方法を尋ね、より良いケアの方法をとも
に考える
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
痛みを和らげるケア
実際の例
ぐっすり眠る
リラックスする
うまく気晴らしする
軽い運動を取り入れる
安静にする
マッサージする
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
痛みを和らげるケア
実際の例
環境調整
疼痛が増強するような体動を避けた日常生活、寝床の
工夫など
装具や補助具の工夫
コルセット、頸椎カラー、歩行器、
杖などの使用を検討
ひとりで抱え込まない
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
まとめ
がん患者の疼痛について正しく評価すること
が重要
抗がん治療と並行して行う
疼痛治療のアルゴリズムに従って治療を行う
ケアとコミュニケーションが重要
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
選択スライド
以下のスライドは状況により使用しても使
用しなくてもよいスライドです
必要なら順番を入れ替えて使用してくださ
い
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
それぞれのオピオイドの特徴
モルヒネ オキシコドン フェンタニル
受容体 μ(μ1、μ2)κδ
μ(μ1、μ2)κ
μ (μ1)
極性 水溶性 水溶性 脂溶性
代謝産物 M6G,M3G→薬理活性あり
ノルオキシコドン
→薬理活性なし
薬理活性なし
排泄 M3G,M6Gとして腎臓より
排泄
腎臓より排泄 一部が未変化
体として腎臓よ
り排泄
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
ペンタゾシン
μ拮抗薬であり、かつκ作動薬である
(agonist-antagonist)
慢性疼痛に対する定期薬として推奨されない
定期的に他のμ作動性のオピオイドを内服してい
る患者に投与した場合、離脱症状を起こすこと
がある
用量依存的に精神症状を呈することがある
Oxford Textbook of Palliative Medicine 3rd Ed, 2004.
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
症例1 つづき
膵臓がんの54歳女性
ロキソニンⓇを3錠分3で開始し、3日後に再
診としたが、再診時にも痛みはNRS 4/10と十分とれていなかった
Q4.オキシコンチンⓇ10mg錠1日2回で開始
する実際の処方箋を記載してみよう!
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
持続痛の治療
STEPにかかわらず考える:補足
疼痛治療と同時に、抗がん治療の可否を
十分に検討する
抗がん治療の目標の設定も根治的なものから
症状緩和を主体とするものまで多様
原疾患、病状、疼痛の責任病巣などに応じて
提供されうる手段も変化する
様々な治療のオプションについて、適宜そ
の可能性を検討する
CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
オピオイドローテーションの実際
大量のオピオイドの場合
例)オキシコンチンⓇ120mg/日 デュロテップⓇ
オキシコンチン120mg/日レスキューオキノーム20mg/回
オキシコンチン80mgデュロテップMT4.2mg
オキシコンチン40mgデュロテップMT8.4mg
デュロテップMT12.6mg1 2 3 4
• 次回デュロテップMT貼り替え日、オキシコンチン1回量40mgを内服と同時にデュロテップMT8.4mgを貼付
• 次回からオキシコンチン1回量を20mgに減量
• レスキュー:そのまま
オキシコンチン
デュロテップMT
60 60↓ ↓ 40 40
↓ ↓40 40↓ ↓
40 40↓ ↓ 20 20
↓ ↓20 20↓ ↓
20 20↓ ↓
4.2mg↓
8.4mg↓ 12.6mg
↓
• オキシコンチン1回量60mgを内服と同時にデュロテップMT4.2mgを貼付
• 次回内服分からオキシコンチン1回量を40mgに減量
• レスキュー:そのまま
• 次回デュロテップMT貼り替え日、オキシコンチン1回量20mgを内服と同時にデュロテップMT12.6mgを貼付
• 次回からオキシコンチン中止• レスキュー:そのまま