第 章 コンピュータ 構成要素 -...

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コンピュータ構成要素で得点できるようになるためには、次のような 知識・技能が必要です。 1 CPUの動作の仕組み 2 CPUの性能計算(MIPS、CPI) 3 コンピュータの高速化技術(パイプライン、メモリインタリーブ) 4 光記憶装置(CD、DVD)の特徴 5 ハードディスクのアクセス速度の計算 6 半導体記憶装置の種類(RAM、ROM)の知識 7 キャッシュメモリの仕組みとアクセス速度の計算 8 入出力装置(ディスプレイ、プリンタ)の知識 9 インタフェースの特徴 今日の学習目標 コンピュータ 構成要素 1 1 日目 今日は、コンピュータシステムを構成する様々な装置の種類とその仕組みを学 習します。 コンピュータ構成要素の過去4回の試験での出題数は次のとおりです。 試験 平成23年度秋 平成23年度春 平成22年度秋 平成22年度春 出題数 7問 5問 6問 5問 学習内容の基本は、各装置の特徴を覚えることです。装置の特徴を覚えるだけ で解答できる問題が中心です。それ以外に、計算問題が毎回1-2問出題されます。

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 コンピュータ構成要素で得点できるようになるためには、次のような知識・技能が必要です。

1 CPUの動作の仕組み2 CPUの性能計算(MIPS、CPI)3 コンピュータの高速化技術(パイプライン、メモリインタリーブ)4 光記憶装置(CD、DVD)の特徴5 ハードディスクのアクセス速度の計算6 半導体記憶装置の種類(RAM、ROM)の知識7 キャッシュメモリの仕組みとアクセス速度の計算8 入出力装置(ディスプレイ、プリンタ)の知識9 インタフェースの特徴

今日の学習目標

コンピュータ構成要素

第 1 章1日目

 今日は、コンピュータシステムを構成する様々な装置の種類とその仕組みを学習します。 コンピュータ構成要素の過去4回の試験での出題数は次のとおりです。

試験 平成23年度秋 平成23年度春 平成22年度秋 平成22年度春

出題数 7問 5問 6問 5問

 学習内容の基本は、各装置の特徴を覚えることです。装置の特徴を覚えるだけで解答できる問題が中心です。それ以外に、計算問題が毎回1-2問出題されます。

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第 1章 コンピュータ構成要素

1-1 コンピュータの5大装置SECTION

 この章では、コンピュータの構成要素を学習します。コンピュータの構成要素とは、コンピュータを構成する様々なハードウェアのことです。まず始めに、コンピュータの基本となる5大装置を紹介します。

コンピュータのハードウェア

 各装置の名称と機能は次のとおりです。

● �演算装置:データに対する演算を行う。● �制御装置:各装置を制御する制御信号を出す。● �記憶装置:プログラムやデータを記憶する。● �入力装置:コンピュータに外部からデータを入力する。● �出力装置:コンピュータから外部にデータを出力する。

演算装置

記憶装置

制御の流れ情報の流れ

出力装置入力装置

制御装置

■ 図 コンピュータの 5 大装置

 この5つの装置によりコンピュータは動作します。 現在のコンピュータシステムでは、この5大装置は次のように実装されています。

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1-1 コンピュータの 5大装置

第1章 コンピュータ構成要素

入力装置 キーボードやマウス、マイクやカメラなどコンピュータに情報を入力するための機器です。

CPU(Central Processing Unit) 中央処理装置とも呼ばれます。制御装置と演算装置を合わせたものであり、コンピュータの頭脳といえます。プログラムを解釈し、実行します。試験では、プロセッサとよばれることが多いです。

主記憶装置(メインメモリ) プログラムやデータを一時的に格納する領域です。メモリとも呼ばれます。揮発性(電源を切ると記憶内容が消えてしまう)で、高速・小容量の記憶装置です。

補助記憶装置 大容量で不揮発性(電源を切っても記憶内容が消えない)の記憶装置です。磁気ディスク装置や磁気テープ装置などの磁気記憶装置、CDやDVDなどの光記憶装置、フラッシュメモリのような半導体記憶装置などがあります。主記憶は小容量なうえ、揮発性なので大容量で不揮発性の補助記憶装置にプログラムやデータを保管しておきます。

出力装置 ディスプレイやプリンタなど、情報を出力するための装置です。

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第 1章 コンピュータ構成要素

1-2 CPUSECTION

 CPUとは、コンピュータシステムの中核となる装置であり、コンピュータに対する命令を実行します。情報処理技術者試験では、処理装置とよばれることもあります。ここでは、CPUの機能、およびその基本的な構成について説明します。

機械語の命令

 CPUに命令を与えるときは、機械語を利用します。機械語とは、CPUが解釈して実行することのできる唯一の言語です。機械語はCPU固有の命令体系をもちます。ここではCPUが機械語をどのように実行しているかの仕組みを確認しましょう。 機械語の命令は、命令部(オペコード)とアドレス部(オペランド)から構成されています。命令部は「どのような処理を行うか」、アドレス部は「処理対象はどこに格納されているか」を表します。

ADD A, B

命令部 アドレス部

レジスタ(CPU内の記憶領域)AとレジスタBを加算し、結果をレジスタAに格納する

■ 図 機械語命令の例

CPU の動作

 CPUは、命令を解釈してコンピュータを制御する制御装置と、算術演算や論理演算を実行する演算装置からなります。その他、命令を解読するデコーダ、記憶領域のレジスタがあります。

レジスタ CPU内部の高速小容量の記憶領域の名前です。用途に応じて、様々なレジス

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1-2 CPU

第1章 コンピュータ構成要素

タが存在します。

命令の実行 CPUは、主記憶からプログラム(命令)を一つずつ順に取り出して、解釈して実行します。また、必要に応じて、主記憶からデータを取り出したり、書き込んだりします。CPUによる命令実行の順序は次のとおりです。

①命令フェッチ 主記憶装置から命令を命令レジスタに読み込みます。

②命令の解読 解読器(デコーダ)で命令を解読します。

③オペランド読み出し 命令の実行に必要なオペランドを主記憶装置から読み出します。

④命令の実行 命令を実行します。必要に応じて、実行結果を主記憶装置に格納します。

CPU の性能

 CPUの性能は、基本的に単位時間にどのくらいの命令数を処理できるかによって比較します。また、CPUなどの処理装置の動作の基準となるクロック周波数も性能を図る指標となります。

クロック周波数 CPUなどの処理装置は、コンピュータ内部にある発振器から発せられる信号に同期して動作します。クロック周波数とは、この発振器が1秒間に何回振幅を発生させるかという指標です。例えば、クロック周波数が1GHzであれば、1秒間に10億回の信号の振幅が発生することを意味します。一般的にクロック周波数が高いほどCPUの性能は高くなります。

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第 1章 コンピュータ構成要素

CPI(Clock cycles Per Instruction) CPIとは、1命令を実行するのに要するクロック数(振幅の数)のことです。例えば、あるCPUでは1命令の実行に4〜30クロック程度を必要とします。同じ種類のCPUでも命令によって実行時間が異なります。つまり、命令の種類によってCPIは異なります。

MIPS(Million Instructions Per Second) MIPSとは、CPUの性能を評価する指標です。1秒間に何百万命令実行できるかということを表します。例えば25MIPSの場合、1秒間に25,000,000命令実行できることになります。MIPS値の計算をする場合に使用する“1命令の実行時間”は、命令ミックスと呼ばれる平均的な命令の出現頻度と実行速度から計算します。

CPU の高速化技術

 CPUを高速化させるには、クロック周波数を向上させるなどCPUの動作自体を高速化させるほかに、同時に処理できる命令数を増やすことで高速化させる技術もあります。ここでは、CPUの高速化に関する技術について代表的なものを解説します。

パイプライン処理 CPUの命令の実行動作をいくつかのステージに分割して、ステージ単位で並行処理を行う技術です。ステージ数は、CPUのアーキテクチャによって異なります。パイプライン処理のステージをさらに細分化したものを、スーパーパイプラインとよんでいます。 パイプライン処理は、分岐命令による分岐が発生した場合、前の命令の実行結果を必要とする場合など、すべての命令が図のように処理できるわけではありません。このような場合、命令の並行処理ができなくなるため、命令の実行効率が低下します。

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1-2 CPU

第1章 コンピュータ構成要素

命令1

時間

① ① 命令読み出し② 解読③ アドレス計算④ データ読み出し⑤ 実行

② ③ ④ ⑤

命令2 ① ② ③ ④ ⑤

命令3 ① ② ③ ④ ⑤

命令4 ① ② ③ ④ ⑤

■ 図 パイプライン処理による命令の実行

スーパースカラ パイプライン処理の実行速度をさらに向上させるため、命令を実行するユニットを複数搭載することで同時に実行できる命令数を増やした技術です。

マルチプロセッサ 複数の処理装置を搭載し、処理を分散させることで処理性能を向上させる技術です。

フリンの分類 命令とデータの扱い方からコンピュータのアーキテクチャを分類する方法として、次のようなフリン(Flynn)の分類があります。

①SISD(Single�Instruction�stream,�Single�Data�stream) 一つのCPUを搭載し、逐次処理される一個の命令を扱う方式のシステムです。一般的なプロセッサです。

②SIMD(Single�Instruction�stream,�Multiple�Data�stream) ベクトル演算のように、一つの命令で複数のデータ処理を行う方式のシステムです。コンピュータグラフィックを扱ったり、高度な数値演算を行うプロセッサで採用されています。

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第 1章 コンピュータ構成要素

③MISD(Multiple�Instruction�stream,�Single�Data�stream) 複数の命令が単一のデータに対して動作することになります。実際には今まで作られたことはありません。

④MIMD(Multiple�Instruction�stream,�Multiple�Data�stream) いくつかの命令を異なるデータに対して並列に実行します。MIMDには多くのバリエーションがあります。

例題 パイプライン処理 プロセッサにおけるパイプライン処理方式を説明したものはどれか。

ア �単一の命令を基に、複数のデータに対して複数のプロセッサが同期をとりながら並列にそれぞれのデータを処理する方式

イ �一つのプロセッサにおいて、単一の命令に対する実行時間をできるだけ短くする方式

ウ �一つのプロセッサにおいて、複数の命令を少しずつ段階をずらしながら同時実行する方式

エ �複数のプロセッサが、それぞれ独自の命令を基に複数のデータを処理する方式

(基本情報技術者試験 平成21年度春期午前 問11)

解説

ア �SIMD方式の説明です。イ �SISD方式の説明です。ウ �正しい説明です。パイプライン処理方式は、命令実行サイクルを複数のステー

ジに分割し、ステージ分ずらすことにより、一つのプロセッサで複数の命令を同時に実行します。

エ �MIMD方式の説明です。

 したがって、正解はウです。

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1-3 記憶装置

第1章 コンピュータ構成要素

1-3 記憶装置SECTION

 記憶装置は、主記憶装置と補助記憶装置に分類されます。主記憶装置(メインメモリ)とは、CPUが実行するプログラムやデータを格納する記憶領域です。主記憶装置は揮発性(電源を切ると内容が保持できない)であり、長期間にわたりデータを保管する目的には利用できません。また、高速性が要求されるので高価な記憶素子を利用するため、大容量化も容易ではありません。 補助記憶装置は、不揮発性(電源を切っても内容が保持される)であり、また、主記憶に比較すれば同じ記憶容量でも安価に構成できます。そこで、プログラムやデータは補助記憶装置に格納し、必要に応じて主記憶装置に読み出して利用します。

主記憶

 主記憶装置へのアクセスを高速化する方法として、キャッシュメモリとメモリインタリーブがあります。

キャッシュメモリ キャッシュメモリは、CPUの処理性能と主記憶装置のアクセス速度のギャップを埋めるために、両者の間に置かれた高速アクセス可能なメモリのことです。 ほとんどのプログラムは頻繁に参照される部分が存在します(これを参照の局所性といいます)。この頻繁に参照される部分だけでも、高速なキャッシュメモリに格納しておけば、全体のアクセス速度は向上します。

メモリインタリーブ メモリインタリーブとは、メモリを複数のバンクというブロックに分割し、バンクごとに並行してアクセスが行えるようにする技法です。次の図のように、データを分割して配置(インタリービング)します。メモリアクセスは、連続したアドレスを読み込む場合が多いので、バンク1をアクセスした場合は、バンク2

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第 1章 コンピュータ構成要素

のデータを送出できるように準備しておくことで、メモリアクセスの遅延を短縮します。

バンク0

0

4

アドレス

アドレス

バンク1

1

5

バンク2

2

6

CPU

バンク3

3

7

… … … …

■ 図 メモリインタリーブの仕組み

例題 メモリインタリーブ メモリインタリーブの説明はどれか。

ア �CPUと磁気ディスク装置との間に半導体メモリによるデータバッファを設けて、磁気ディスクアクセスの高速化を図る。

イ �主記憶のデータの一部をキャッシュメモリにコピーすることによって、CPUと主記憶とのアクセス速度のギャップを埋め、メモリアクセスの高速化を図る。

ウ �主記憶へのアクセスを高速化するために、アクセス要求、データの読み書き及び後処理が終わってから、次のメモリアクセスの処理に移る。

エ �主記憶を複数の独立したグループに分けて、各グループに交互にアクセスすることによって、主記憶へのアクセスの高速化を図る。

(基本情報技術者試験 平成23年度春期午前 問12)

解説

ア �磁気ディスク装置と主記憶装置の間に設置する半導体メモリをディスクキャッシュとよびます。

イ キャッシュメモリの説明です。ウ メモリインタリーブを採用しない場合は、このような処理となります。

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1-3 記憶装置

第1章 コンピュータ構成要素

エ メモリインタリーブの説明です。

 以上より、正解はエです。

磁気ディスク(ハードディスク)

 磁気ディスクは、代表的な補助記憶装置です。高速回転する円盤(ディスク)上にデータを記録し、読み書きする記憶装置です。 磁気ディスクは、データを記録する領域としてメディア上の同心円上にトラックを配置します。また、磁気ヘッドを移動せずにデータの読み書きができる領域(円筒状に並んだトラックの集まり)をシリンダとよびます。例えば、1面に800トラックある場合、その磁気ディスクには800のシリンダが存在します。

トラック

ディスク

磁気ヘッド

■ 図 磁気ディスク(ハードディスク)の構造

磁気ディスクのアクセス時間の計算 1ブロックのアクセス時間は、次の式で求めることができます。

 1ブロックのアクセス時間=�平均シーク時間(平均位置決め時間)+平均サーチ時間(平均回転待ち時間)�

+データ転送時間

●平�均シーク時間:磁気ヘッドがブロックの格納されているトラックまで移動する時間の平均時間です。平均位置決め時間ともいいます。

●平�均サーチ時間:磁気ヘッドがブロックの先頭に来るまでの時間の平均時間です。サーチ時間の最大は1回転の時間、最小は0なので、平均サーチ時間は、(最大時間+最小時間)÷2=(1回転の時間+0)÷2=1/ 2回転の時間となり

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第 1章 コンピュータ構成要素

ます。平均回転待ち時間ともよびます。●デ�ータ転送時間:磁気ヘッドがブロックを読み込んでいる(もしくは書き込んでいる)時間です。通常、転送速度とブロック長から求めます。

 次に示す例題で、実際にアクセス時間を求めてみましょう。

例題 磁気ディスクのアクセス時間 回転数が4,200回/分で、平均位置決め時間が5ミリ秒の磁気ディスク装置がある。この磁気ディスク装置の平均待ち時間は約何ミリ秒か。ここで、平均待ち時間は、平均位置決め時間と平均回転待ち時間の合計である。

ア 7   イ 10   ウ 12   エ 14

(基本情報技術者試験 平成22年度春期午前 問12)

解説

 磁気ディスクの平均待ち時間を求める問題です。平均位置決め時間は5ミリ秒と指定されているため、平均回転待ち時間を求めます。平均回転待ち時間は1回転に必要な時間を2で割ることで求められます。 4,200回転/ 1分間=4,200回転/ 60秒=4,200回転/ 60,000ミリ秒であるため、1回転に必要な時間は60,000÷4,200=14.28ミリ秒です。平均回転待ち時間は、14.28÷2≒7ミリ秒となります。以上より、平均待ち時間は、5ミリ秒+7ミリ秒=12ミリ秒となります。

 したがって、正解はウです。

光ディスク 光ディスクとは、データの読み書きにレーザ光を利用する記憶媒体です。磁気ディスクと比較すると、記憶媒体が交換可能で持ち運びが容易です。光ディスクには、CDやDVD、MOなどの種類があります。また、光ディスクは記録方式の違いにより、再生専用型(Read�Only�Memory)、追記型(Recordable)、書換え型(Rewritable)の3種類があります。

CD(Compact Disc) CDは、直径8cm、または12cmの樹脂製の円盤にピットとよばれるきわめて細

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1-3 記憶装置

第1章 コンピュータ構成要素

かい凹凸を刻んでディジタルデータを書き込み、レーザー光を照射して反射光を読み取ることにより、データを再生する記録メディアです。記録容量は650〜700Mバイトです。

CD-ROM(CD-Read Only Memory) 再生専用型のCDで、製造工程で一度データを書き込むと、追加・消去が行えなくなります。

CD-R(CD-Recordable) ユーザが任意のデータを一度だけ書き込める追記型のCDです。いったん書き込んだデータは消去できません。

CD-RW(CD-Rewritable) 相変化記録方式を採用し、ユーザが任意のデータを何度でも書き込んだり消去したりできる書換え型のCDです。

MO(Magneto-Optical Disc) 磁気記録方式に光学技術を併用した書き換え可能な記憶媒体です。書き込み時はあらかじめレーザー光を照射してからデータを磁気的に書き込みます。読み出し時はレーザー光のみを用いるため、高速にデータを読み出すことができます。

DVD 大容量の光ディスクです。CDと同様に、再生専用型のDVD-ROM、一度だけ書き込める追記型のDVD-R、書き込み・消去が可能なDVD-RAM/ DVD-RWなどのさまざまな種類があります。原理はCDとほぼ同じで、12cmの樹脂製円盤にレーザー光を照射し、その反射光を検出してデータを読み出します。CDと違って両面記録、2層記録などが可能であり、最大記憶容量は片面1層記録で4.7Gバイト、片面2層記録で8.5Gバイト、両面1層記録で9.4Gバイト、両面2層記録で17Gバイトとなっています。

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第 1章 コンピュータ構成要素

例題 光ディスク 記憶媒体の記録層として有機色素を使い、レーザ光によってピットと呼ばれる焦げ跡を作ってデータを記録する光ディスクはどれか。

ア CD-R   イ CD-RW   ウ DVD-RAM   エ DVD-ROM

(基本情報技術者試験 平成20年度秋期午前 問22)

解説

 記録媒体の記録層として有機色素を使い、レーザ光によってピットと呼ばれる焦げ跡を作るのはCD-Rです。焦げた部分は反射率が変わるので、読取り時はレーザ光を当ててその反射光によってデータを読み取ります。CD-Rに記録することを俗に「焼く」というのはこのような理由もあります。イのCD-RWとウのDVD-RAMは、記録層を結晶状態または非結晶状態(アモルファス状態)に変化させることで情報を記録する相変化記憶方式を採用しています。エのDVD-ROMやCD-ROMは、プレス工程による凹凸によってピットを作ることで情報を記録します。

 以上より、正解はアです。

RAID(ディスクアレイ)

 RAID(Redundant�Arrays�of�Independent(またはInexpensive)Disks)は、磁気ディスクの信頼性や処理速度を向上させるために、複数の磁気ディスクを集めて一つの装置として使えるようにしたものです。RAID0〜RAID6までの各種の方式がありますが、この中で代表的な方式はRAID0、RAID1、RAID3、RAID5です。

RAID0(ストライピング) RAID0は、アクセス速度の向上を狙って、2台以上のディスクを利用して並列にデータを読み書きする方法です。

RAID1(ミラーリング) RAID1は、信頼性の向上のために、複数台の磁気ディスクに同じ内容のデータを書き込みます。万一、あるディスクに障害が発生しても、残りのディスクに記録されたデータを使って処理を継続します。

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1-3 記憶装置

第1章 コンピュータ構成要素

RAID3 RAID3は、データを格納する際にパリティとよばれる誤り訂正符号を生成し、データ用のディスクとは別のパリティ用のディスクに格納します。データは、バイト単位に分割して複数のディスクに分散して格納します。あるディスクに障害が発生した場合は、残ったディスクとパリティデータから障害が発生したディスクの内容を復元します。

RAID4 RAID3と同様な形式ですが、データの格納単位がバイトではなくブロック(物理的な入出力単位)となります。

RAID5 RAID5は、データをブロック単位に分割し、パリティデータを生成します。パリティデータもブロック単位に分割して、データと同様に格納します。最も一般に利用されているRAIDの方式です。

例題 RAID RAID1〜5の各構成は、何に基づいて区別されるか。

ア �構成する磁気ディスク装置のアクセス性能イ �コンピュータ本体とのインタフェースの違いウ �データ及び冗長ビットの記録方法と記録位置の組合せエ �保証する信頼性のMTBF値

(基本情報技術者試験 平成21年度春期午前 問13)

解説

ア �構成する磁気ディスク装置のアクセス性能は、RAIDの構成とは関係ありません。

イ �コンピュータ本体とのインタフェースの違いは、RAIDの構成には関係ありません。

ウ �正しい記述です。データおよび冗長ビットの記録単位にはバイト、ブロックなどがあり、冗長ビットをどこに記録するかもいくつか方法があり、これらの組合せにより、RAIDの番号が決まります。

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第 1章 コンピュータ構成要素

エ �RAIDの信頼性は、MTBF(平均故障間隔)ではなく、障害発生時にデータを復旧するための冗長ビットの持ち方で区別されます。

 以上より、正解はウです。

半導体メモリ(IC メモリ)

 半導体とは、基本的に「条件によって電気を通したり通さなかったりする物質」のことを指します。もう少し正確にいうならば、「金属と絶縁体の中間の電気抵抗をもち、その電荷のキャリア濃度が、ある温度範囲で温度とともに増加するような電子伝導性の物質」ということになります。この性質が、1と0の情報を保持したり、電子回路を作ったりするのに有効なのです。 このような半導体を利用した回路(半導体素子)を集積した電子回路をIC(半導体集積回路)といい、このICを利用した記憶素子(メモリ)であるICメモリは、主にRAMとROMに分けることができます。

RAM(Random Access Memory) ランダムアクセスが可能なメモリという意味ですが、現在ではROMも補助記憶装置(磁気ディスクなど)もランダムアクセス可能なのであまり意味はありません。現在、RAMは揮発性(電源の供給が断たれると記憶内容を保持できない)の記憶素子の総称として使われています。RAMはSRAMとDRAMに分類できます。

■ 表 RAM の種類と特徴

DRAM(Dynamic�RAM) コンデンサを使用してデータを記憶するRAMです。一定時間ごとに再書き込み(リフレッシュ)を行い、記憶内容を保持します。SRAMよりも低速ですが、集積化しやすく、低コスト化、大容量化に対応できるので、主記憶装置に用いられます。

SRAM(Static�RAM) フリップフロップ回路を用いてデータを記録するRAMです。リフレッシュが不要なことが特徴です。DRAMに比べて高速ですが、小容量なので、キャッシュメモリ(後述)に用いられます。

 主記憶装置には安価で容量の大きいDRAMが採用されます。キャッシュメモリにはSRAMが用いられます。

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1-3 記憶装置

第1章 コンピュータ構成要素

ROM(Read Only Memory) 読み出し専用という意味ですが、現在では読み書き可能なROMも多いため、RAM同様、名前に意味はありません。現在では、不揮発性(電源供給がなくとも記憶内容を保持できる)の半導体記憶素子の総称として用いられています。ROMの種類には次のようなものがあります。

■ 表 ROM の種類と特徴

マスクROM(Mask�ROM) 製造するときに記憶内容を書き込み、後から内容を書き換えることができないROMです。

PROM(Programmable�ROM) 一度だけデータを書き込めるROMです。一度書き込んだデータは変更できません。

EPROM(Erasable�PROM) 記憶内容を紫外線で一括消去して、再度、内容を書き換えることができるROMです。

EEPROM(Electrically�EPROM) 電気的にブロックまたはバイト単位で記憶内容を消去し、データを書き換えることができるROMです。

フラッシュメモリ(Flash�Memory) 電気的に一括またはブロック単位でデータを消去して内容を書き換えることができるROMです。ディジタルカメラの画像記録用などに使われます。

例題 半導体記憶装置 フラッシュメモリの説明として、適切なものはどれか。

ア 1回だけ電気的に書込みができる。イ 一定時間内に再書込み(リフレッシュ動作)を行う。ウ 書込み、消去とも電気的に行い、一括又はブロック単位で消去する。エ 書込みは電気的に行い、消去は紫外線によって行う。

(基本情報技術者試験 平成22年度春期午前 問24)

解説

 正解はウです。なお、アはPROM、イはDRAM、エはEPROMの説明です。

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第 1章 コンピュータ構成要素

キャッシュメモリ

 キャッシュメモリの仕組みと、実効アクセス時間を求める計算方法を説明します。

キャッシュメモリに関する計算 情報処理技術者試験では、キャッシュメモリを実装したコンピュータシステムのメモリへの実効アクセス時間を求める計算が出題されます。実効アクセス時間とは、アクセス時間の期待値で、次のように求めます。

  実効アクセス時間=主記憶装置へのアクセス時間×NFP

           +キャッシュメモリへのアクセス時間×ヒット率

 ここで、NFP(Not�Found�Provability)とは、キャッシュメモリに目的のデータがない確率、つまり、主記憶装置へアクセスする確率のことです。ヒット率とは、キャッシュメモリに目的のデータがある確率、つまりキャッシュメモリへアクセスする確率のことです。

キャッシュメモリの書き込み方式 キャッシュメモリに蓄えた情報を、主記憶装置に書き戻すタイミングにより、2つの方式に分けられます。

● �ライトバック CPUから主記憶への書きこみ命令が発行されたとき、キャッシュメモリにだけ書き込む方式です。書き込みの時間が短縮されますが、主記憶の内容とキャッシュメモリの内容が一致しなくなるので、適切なタイミングでキャッシュメモリの内容を主記憶に反映させる必要があります。

● �ライトスルー CPUから主記憶への書きこみ命令が発行されたとき、キャッシュメモリと同時に主記憶装置へ書き込む方式です。書き込みの時間は短縮されませんが、主記憶の内容とキャッシュメモリの内容は常に一致します。

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1-3 記憶装置

第1章 コンピュータ構成要素

例題 キャッシュメモリ(1) キャッシュメモリに関する記述のうち、適切なものはどれか。

ア �書込み命令を実行したときに、キャッシュメモリと主記憶の両方を書き換える方式と、キャッシュメモリだけを書き換えておき、主記憶の書換えはキャッシュメモリから当該データが追い出されるときに行う方式とがある。

イ �キャッシュメモリにヒットしない場合に割込みが生じ、プログラムによって主記憶からキャッシュメモリにデータが転送される。

ウ �キャッシュメモリは、実記憶と仮想記憶のメモリ容量の差を埋めるために採用される。

エ �半導体メモリのアクセス速度の向上が著しいので、キャッシュメモリの必要性は減っている。

(基本情報技術者試験 平成21年度春期午前 問12)

解説

ア �適切な記述です。書込み命令を実行したときに、キャッシュメモリと主記憶の両方を書き換える方式をライトスルー方式、キャッシュメモリだけを書き換え、主記憶の書換えはキャッシュメモリから当該データが追い出されるときに行う方式をライトバック方式といいます。

イ �キャッシュメモリにヒットしない場合は割り込みではなく、ハードウェア処理により主記憶からデータが転送されます。

ウ �キャッシュメモリは、主記憶とプロセッサの処理速度の差を緩和するための装置です。

エ �半導体メモリのアクセス速度も向上していますが、それ以上にプロセッサの処理能力が向上しているので、キャッシュメモリの重要性は以前よりも増しています。

 以上より、正解はアです。

例題 キャッシュメモリ(2) 図に示す構成で、表に示すようにキャッシュメモリと主記憶のアクセス時間だけが異なり、ほかの条件は同じ2種類のCPU�XとYがある。 あるプログラムをCPU�XとYでそれぞれ実行したところ、両者の処理時間が等しかった。このとき、キャッシュメモリのヒット率は幾らか。ここで、CPU処理

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第 1章 コンピュータ構成要素

以外の影響はないものとする。

CPU

キャッシュメモリ

256kバイト

CPU

キャッシュメモリ

256kバイト

主記憶

256Mバイト

図 構成

表 アクセス時間単位 ナノ秒

CPU�X CPU�Y

キャッシュメモリ � 40 � 20

主記憶 400 580

ア 0.75   イ 0.90   ウ 0.95   エ 0.96

(基本情報技術者試験 平成22年度春期午前 問10)

解説

 メモリのアクセス時間とヒット率に関する問題です。キャッシュメモリへのアクセス時間をC、主記憶へのアクセス時間をS、キャッシュメモリのヒット率をHとした場合、実効アクセス時間は次の式で表せます。

  実効アクセス時間=C×H+S×(1-H)

ここで、CPU�XとCPU�Yの実効アクセス時間が等しいことは次の式で表せるため、この方程式を解いてキャッシュメモリのヒット率Hを求めます。

  40×H+400×(1-H)=20×H+580×(1-H)  40H+400-400H=20H+580-580H  200H=180  H=0.9

 したがって、正解はイです。

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1-4 入出力装置

第1章 コンピュータ構成要素

1-4 入出力装置SECTION

 代表的な入力装置にはキーボードやマウス、代表的な出力装置にはディスプレイやプリンタがあります。情報処理技術者試験では、各装置の特性に関する知識が出題されます。ここ数年は、ディスプレイとプリンタのみが出題されています。

各種ディスプレイの特徴

 さまざまなディスプレイの主な特徴を紹介します。

CRTディスプレイ ブラウン管を利用したディスプレイです。表示原理はブラウン管を利用したテレビと同じで、電子銃から電子ビームを発射し、蛍光体を発光させることで画像を表示させます。

液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display) 液晶は電圧をかけると分子の配列が変わる特性を持っており、この特性を利用し、薄型のディスプレイを実現したものです。具体的には2枚のガラス板の間に液晶を封入し、電圧をかけることで液晶分子の向きを変え、光(バックライトの光)を透過させたり反射させたりすることで画像を表示させます。

プラズマディスプレイパネル(PDP) 2枚のガラスの間にヘリウムやネオンなどの高圧のガスを封入し、そこに電圧をかけて放電させることによって発光させる自発光式のディスプレイです。

有機ELディスプレイ 電圧を加えると発光するジアミン類などの有機化合物を利用したディスプレイです。発光ダイオード(LED)とほぼ同じ原理の自発光式のディスプレイです。

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第 1章 コンピュータ構成要素

例題 プラズマディスプレイ プラズマディスプレイの説明として、適切なものはどれか。

ア �ガス放電によって発生する光を利用して映像を表示する。イ �自身では発光しないので、バックライトを使って映像を表示する。ウ �電極の間に有機化合物を挟んだ構造で、これに電気を通すと発光することを

利用して映像を表示する。エ �電子銃から電子ビームを発射し、管面の蛍光体に当てて発光させ、文字や映

像を表示する。

(基本情報技術者試験 平成21年度春期午前 問14)

解説

ア �適切な記述です。プラズマディスプレイは、ヘリウムやネオンなどのガス放電により発生する紫外線を利用して、蛍光体を発光させ映像を表示します。

イ �液晶ディスプレイの説明です。ウ �有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイの説明です。エ �ブラウン管(CRT:Cathode�Ray�Tube、陰極線管)の説明です。

 以上より、正解はアです。

各種プリンタの特徴

 さまざまなプリンタの主な特徴を説明します。

ドットインパクトプリンタ ドットインパクトプリンタとは、ピン式の印字ヘッドをインクリボンに打ち付けて、印字する方式のプリンタです。カーボン紙を使って複写印刷ができるというメリットがあります。

インクジェットプリンタ 印字ヘッドにあるノズルからインクを紙に吹き付けて印刷を行うプリンタです。

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1-4 入出力装置

第1章 コンピュータ構成要素

熱転写式プリンタ 印字ヘッドに熱を加えてインクを紙に付着させて印字するプリンタです。インクリボンに熱した印字ヘッドを押し付け、インクを溶かして紙に転写します。

レーザプリンタ レーザ光を利用して感光ドラムに印字イメージを作り、トナーを付着させて熱と圧力で紙に転写して印字します。印刷原理はコピー機と同じです。 なお、レーザプリンタはページ単位で印刷するのでページプリンタと呼びます。これに対して、1文字ずつまたは1ドットずつ印刷するドットインパクトプリンタやインクジェットプリンタなどはシリアルプリンタと呼びます。

例題 プリンタの性能 レーザプリンタの性能を表す指標として、最も適切なものはどれか。

ア 1インチ(2.54cm)当たりのドット数と1分間に印刷できるページ数イ 1文字を印字するのに使われる縦横のドット数と1秒間に印字できる文字数ウ 印字する行の間隔と1秒間に印字できる行数エ 印字する文字の種類と1秒間に印字できる文字数

(基本情報技術者試験 平成20年度秋期午前 問26)

解説

 レーザプリンタはページプリンタです。ページ単位で印刷を行い、文字単位のシリアルプリンタや行単位のラインプリンタよりも高速で高品質な印刷が可能です。ア �適切な記述です。1インチ当たりのドット数は印刷品質を示し、dpi(ドット

/インチ)という単位で表します。1分間に印刷できるページ数は印刷速度を示し、ppm(ページ/分)という単位で表します。

イ シリアルプリンタに関する性能指標です。ウ ラインプリンタに関する性能指標です。エ これもシリアルプリンタに関する記述です。

 以上より、正解はアです。

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第 1章 コンピュータ構成要素

1-5 入出力インタフェースSECTION

 入出力インタフェースとは、コンピュータと入出力装置や補助記憶装置との接点を意味します。具体的には、装置を接続するコネクタの物理仕様と電気的特性、コネクタのピンの役割などを定めたものです。ここでは、代表的なインタフェースを紹介します。

代表的な入出力インタフェースの特徴

IDE(Integrated Device Electronics)/ATA(Advanced Technology Attachment) 主に内蔵用のハードディスクを接続するためのパラレル(並列)インタフェースです。標準規格では最大2台(マスタ/スレーブ)の装置を接続できますが、拡張規格であるE-IDE(Enhanced�IDE)では、CD-ROMなどの補助記憶装置を含め4台まで接続できます。ATAインタフェース(ATAPI)ともよばれます。

シリアルATA ATAの後継規格で、より高速な伝送速度を実現したシリアル(直列)インタフェースです。

SCSI(Small Computer System Interface) パソコンと周辺機器を接続するパラレルインタフェースで、基本となる規格(SCISⅠ規格)のデータ転送速度は最大5Mバイト/秒で、デイジーチェーン接続(数珠つなぎ)により最大7台まで周辺装置を接続することができます。

USB(Universal Serial Bus) パソコンやキーボード、マウス、モデムなどの周辺機器を接続する高速なシリアルインタフェースです。データ転送速度はUSB1.1規格では最大12Mビット/秒、USB2.0規格では最大480Mビット/秒、USB3.0規格では4.8Gビット/秒です。最大127台の機器をハブを介して接続することができます。このほかホットプラ

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1-5 入出力インタフェース

第1章 コンピュータ構成要素

グ機能(機器を動作中に抜き差しできる)をもっています。

IEEE1394 最大で63台の機器をデイジーチェーン、またはツリー接続できる高速なインタフェースです。ディジタルビデオカメラの接続端子として採用されています。USBと異なり、パソコンを介さなくても、機器同士で接続可能です。

RS-232C パソコンやモデムなど、さまざまな周辺機器を接続するための低速な汎用インタフェースです。以前はほとんどのパソコンに標準で装備されていましたが、現在ではUSBにその役割を譲り渡しました。

IrDA(Infrared Data Association) 赤外線を利用した近距離のデータ通信インタフェースです。以前はノートパソコンによく採用されていましたが、最近ではあまり利用されなくなりました。携帯電話の電話帳データなどの交換用として、IrDAをベースにした赤外線通信機能が用いられています。なお、赤外線は直進性があるため、機器間に赤外線をさえぎるような障害物を置かないよう注意する必要があります。

Bluetooth 短距離無線通信インタフェースの仕様です。最新の規格でのデータ転送速度は約3Mビット/秒です。

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第 1章 コンピュータ構成要素

例題 USB の特徴 USBの説明はどれか。ア �PCに内蔵されるCD-ROM装置、DVD装置を接続するためのパラレルインタ

フェースである。イ �磁気ディスク、プリンタなどをデイジーチェーンで接続するパラレルインタ

フェースである。ウ �ハブを介してツリー状に機器を接続できるシリアルインタフェースである。エ �プリンタなどに赤外線を使ってデータを転送するシリアルインタフェースで

ある。(基本情報技術者試験 平成21年度秋期午前 問11)

解説

ア �ATA(IDE)インタフェースの説明です。イ �SCSIの説明です。ウ �USBはシリアルインタフェースであり、USBハブを利用することで、ツリー

状に機器を接続することができます。適切です。エ �IrDAの説明です。

 以上より、正解はウです。

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1-6 練習問題

第1章 コンピュータ構成要素

1-6 練習問題SECTION

問題1 入出力装置 自発光型で、発光ダイオードの一種に分類される表示装置はどれか。

ア CRTディスプレイ     イ 液晶ディスプレイウ プラズマディスプレイ   エ 有機ELディスプレイ

(基本情報技術者試験 平成22年度春期午前 問13)

解説

 発光ダイオードに分類される自発光型のディスプレイは、有機ELディスプレイです。

ア CRTは自発光式ですが、ブラウン管を利用しています。イ �液晶ディスプレイは自発光式ではありません。バックライトなどの光源が必

要です。ウ �プラズマディスプレイは自発光式ですが、高圧ガスに放電することで発光し

ます。発光ダイオードではありません。

 したがって、正解はエです。

問題2 半導体記憶装置の問題 ディジタルカメラの画像データや携帯音楽プレーヤの音楽データの記録媒体として利用されているものはどれか。

ア DRAM� � � イ SRAMウ フラッシュメモリ� � エ マスクROM

(基本情報技術者試験 平成21年度秋期午前 問9)

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第 1章 コンピュータ構成要素

解説

 画像データや音楽データの記録媒体として利用されるのはフラッシュメモリです。したがって、正解はウです。

ア DRAMは揮発性であり、主に主記憶装置に利用されます。イ SRAMは不揮発性であり、主にキャッシュメモリに利用されます。エ �マスクROMは不揮発性であり、工場出荷時に書き込まれた内容の変更はでき

ません。

問題3 CPU の高速化技術 パイプライン制御の特徴はどれか。

ア �複数の命令を同時に実行するために、コンパイラが目的プログラムを生成する段階で、それぞれの命令がどの演算器を使うかをあらかじめ割り振る。

イ �命令が実行される段階で、どの演算器を使うかを動的に決めながら、複数の命令を同時に実行する。

ウ �命令の処理をプロセッサ内で複数のステージに細分化し、複数の命令を並列に実行する。

エ 命令をさらに細かなマイクロ命令の組合せで実行する。

(基本情報技術者試験 平成22年度秋期午前 問10)

解説

ア VLIWの説明です。イ スーパースカラーの説明です。ウ パイプライン制御の説明です。ウが正解です。エ マイクロプログラム方式の説明です。

問題4 CPU の性能計算 平均命令実行時間が20ナノ秒のコンピュータがある。このコンピュータの性能は何MIPSか。

ア 5�   イ 10   ウ 20   エ 50

(基本情報技術者試験 平成22年度秋期午前 問9)

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1-6 練習問題

第1章 コンピュータ構成要素

解説

 このコンピュータは、1命令の実行に平均して20ナノ秒かかります。つまり、1秒間に1÷20ナノ命令を実行可能です(ナノは10億分の1を表す単位です)。

  1÷(20×10-9)=1×109÷20=1,000,000,000÷20=50,000,000

 1秒間に50,000,000命令実行できるため、50MIPSとなります。したがって、正解はエです。

問題5 キャッシュメモリ 主記憶のアクセス時間60ナノ秒、キャッシュメモリのアクセス時間10ナノ秒のシステムがある。キャッシュメモリを介して主記憶にアクセスする場合の実効アクセス時間が15ナノ秒であるとき、キャッシュメモリのヒット率は幾らか。

ア 0.1   イ 0.17   ウ 0.83   エ 0.9

(基本情報技術者試験 平成23年度春期午前 問11)

解説

 次の式に問題の数値を当てはめて計算します。

 実効アクセス時間=キャッシュメモリのアクセス時間×ヒット率          +主記憶のアクセス時間×(1-ヒット率)

 15ナノ秒=10ナノ秒×ヒット率+60ナノ秒×(1-ヒット率) ヒット率=0.9

したがって、正解はエです。

問題6 ハードディスクの性能の計算 表に示す仕様の磁気ディスク装置において、1,000バイトのデータ読み取りに要する平均時間は何ミリ秒か。ここで、コントローラの処理時間は平均シーク時間に含まれるものとする。

回転数      6,000回転/分平均シーク時間  10ミリ秒

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第 1章 コンピュータ構成要素

転送速度     10Mバイト/秒

ア 15.1   イ 16.0   ウ 20.1   エ 21.0

(基本情報技術者試験 平成22年度秋期午前 問14)

解説

 磁気ディスクの読み込み時間は、平均シーク時間+平均回転待ち時間(1/2回転する時間)+データ転送時間で求められます。

   平均シーク時間:10ミリ秒   平均回転待ち時間:60秒÷6,000回転÷2=5ミリ秒   データ転送時間:1000バイト÷10Mバイト/秒=0.1ミリ秒

 以上より、1000バイトのデータ読み取りに要する平均時間は15.1ミリ秒となります。 したがって、正解はアです。