第 16 回 靖国神社奉納演武大会ryuseisouun/ryushu77_2019_r1_aki.pdf―...

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龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号 Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 1 - 令和元年秋季号(Vol.77) ●奉納演武写真/Enbu snap shot (P2) ●導引術について (P3) ●体幹トレーニング… (P4) ●演武を終えて/ かみさまが… (P6) ●サンゲージング(P7) ●東南アジア遠征記 (P8) ●秋季昇段 (P9) 第 16 回 靖国神社奉納演武大会 靖国神社創立 150 周年記念 夏の暑さが残る令和元年 9 15 日、 創立 150 周年を迎えた靖国神社で「第 16 回靖国神社奉納演武大会」が開催さ れた。 参加団体は、「和太鼓破魔」、「武田流 傳黒坂派」、「北辰一刀流玄武館」、「田宮 流正麟館」、「神変自源流」、「養神館合気 道龍建速」、「天眞正自源流兵法」そして 「龍精空手道」。 午前 9 時より昇殿参拝が行われ、その後江戸情緒 を奏でる和太鼓破魔の演奏の中、参加団体が能楽堂 舞台に整列、各流派の宗家及び代表者が紹介され、 続いて神変自源流當代細沼孝宗先生の開会宣誓に より奉納演武が開始された。 今年の大会で特筆すべきは、神変自源流に第六世 細沼祐介孝宗、そして、天眞正自源流第十六世高橋 多聞鑑宗の誕生であり、参加者一同若い両先生の演 武に大きな期待と注目が集まったことである。 龍精空手道の奉納演武は今年も“古流伝統空手こ こにあり!”をテーマに、九つの演目を挙げ臨んだ。 なお今年は北辰一刀流玄武館そして天眞正自源流 尚武館それぞれの少年空手道クラスで練習する小 中学生が参加し、松濤館空手協会あるいは全空連系 の競技を中心にした空手も紹介された。 そこで一つの見方ではあるが、この奉納演武でも剣 術と同様に、空手も複数の流派が舞台に上がる事で 私達はもちろん剣術や合気道各流派の方々にとって も、そこから新たな気付きや学びがあるのではない かと思うのである。 奉納演武を締めくくる協和演武は各宗家の模範演 武が恒例となっているが、今年の天眞正自源流兵法 の各師範は矢竹の試斬を披露された。そこでいつも 感じるのは、真剣を手にする精神状態そして斬ると いう技法の難しさは、徒手空拳の空手を稽古する 我々には測り知れない次元の違いを知らされること だ。だからこそ、空手道を修業する我々は、剣術そ してそれから派生した組打ち格闘の相撲(角力)の 存在を尊重し、その上で空手を学ぶという謙虚な姿 勢が必要となると思うのである。 折しも今、全国各地でラグビーワールドカップの 試合が、日本国民が熱く注目する中で開催されてい る。騎士道を原点とするラグビーと剣術・相撲を原 点とする武士道の共通性に何かしらのロマンを感じ るのは私だけであろうか……。(坂本)

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Page 1: 第 16 回 靖国神社奉納演武大会ryuseisouun/ryushu77_2019_r1_aki.pdf― トンファー基振り& 打ち込み・Tonfa → ヌンチャク・Nuntyaku― ― 組棒Ⅰ・ Kumibo-Ⅰ

龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号

Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 1 -

令和元年秋季号(Vol.77)

●奉納演武写真/Enbu snap shot (P2)

●導引術について (P3)

●体幹トレーニング… (P4)

●演武を終えて/ かみさまが… (P6)

●サンゲージング(P7)

●東南アジア遠征記 (P8)

●秋季昇段 (P9)

第 16回 靖国神社奉納演武大会

― 靖国神社創立 150 周年記念 ―

夏の暑さが残る令和元年 9 月 15 日、

創立 150 周年を迎えた靖国神社で「第

16 回靖国神社奉納演武大会」が開催さ

れた。

参加団体は、「和太鼓破魔」、「武田流

傳黒坂派」、「北辰一刀流玄武館」、「田宮

流正麟館」、「神変自源流」、「養神館合気

道龍建速」、「天眞正自源流兵法」そして

「龍精空手道」。

午前 9 時より昇殿参拝が行われ、その後江戸情緒

を奏でる和太鼓破魔の演奏の中、参加団体が能楽堂

舞台に整列、各流派の宗家及び代表者が紹介され、

続いて神変自源流當代細沼孝宗先生の開会宣誓に

より奉納演武が開始された。

今年の大会で特筆すべきは、神変自源流に第六世

細沼祐介孝宗、そして、天眞正自源流第十六世高橋

多聞鑑宗の誕生であり、参加者一同若い両先生の演

武に大きな期待と注目が集まったことである。

龍精空手道の奉納演武は今年も“古流伝統空手こ

こにあり!”をテーマに、九つの演目を挙げ臨んだ。

なお今年は北辰一刀流玄武館そして天眞正自源流

尚武館それぞれの少年空手道クラスで練習する小

中学生が参加し、松濤館空手協会あるいは全空連系

の競技を中心にした空手も紹介された。

そこで一つの見方ではあるが、この奉納演武でも剣

術と同様に、空手も複数の流派が舞台に上がる事で

私達はもちろん剣術や合気道各流派の方々にとって

も、そこから新たな気付きや学びがあるのではない

かと思うのである。

奉納演武を締めくくる協和演武は各宗家の模範演

武が恒例となっているが、今年の天眞正自源流兵法

の各師範は矢竹の試斬を披露された。そこでいつも

感じるのは、真剣を手にする精神状態そして斬ると

いう技法の難しさは、徒手空拳の空手を稽古する

我々には測り知れない次元の違いを知らされること

だ。だからこそ、空手道を修業する我々は、剣術そ

してそれから派生した組打ち格闘の相撲(角力)の

存在を尊重し、その上で空手を学ぶという謙虚な姿

勢が必要となると思うのである。

折しも今、全国各地でラグビーワールドカップの

試合が、日本国民が熱く注目する中で開催されてい

る。騎士道を原点とするラグビーと剣術・相撲を原

点とする武士道の共通性に何かしらのロマンを感じ

るのは私だけであろうか……。(坂本)

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龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号

Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 2 -

奉納演武・ Hono Enbu snapshot

― 儀式四方拝・ Shihohai ― ― 基形三形・ Motokata ―

周氏の棍・Shushi 四峰の棍・Shiho ― ニーセイシ解説 11 構 ・11Ko ―

― トンファー基振り& 打ち込み・Tonfa → ヌンチャク・Nuntyaku―

― 組棒Ⅰ・ Kumibo-Ⅰ ― ローハイ・Rohai クーサンクー・kusanku

― 協和演武;知念之櫂・結テンショー ― ― 天眞正自源流上野景範先生;四段斬り ―

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龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号

Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 3 -

導引術について

越谷道場 師範 山内 博

度々、拝見していたので、自然に、あの、海の底深

くで呼吸しているかの様なイメージが甦り、集中す

る事が出来ました。

その後、三郷の稽古は、坂本先生から別な人に変

わり、導引術も引き継がれましたが、‘正しい動作’

を強調するあまり、窮屈で固くなった様に感じまし

た。そして、あの独特の‘空気’は無くなりました。

そんな中で私は、導引術は、先生が、そうであっ

た様に一人で深めて行くものではないかと思うよう

になりました。

そうして、一人で八段錦をするようになると、徐々

にですが、八段錦の後、頭がスッキリし気分が落ち

着くようになりました。それにともない身体の疲れ

も軽くなった気がしたのです。

私が導引術を、初めて知ったのは、空気を通して

皮膚からでした。

それは、20 代前半の三郷での稽古前の事です。

私は、余裕を持って稽古 30 分前に道場に着くよ

うにしていました。

日曜の朝9:30、駅から離れた古い体育館には、

受付のおじさん以外、人の気配はありませんでし

た。私は当然、一番乗りだと思い道場に入りました。

すると、薄暗い中、坂本先生が一人、形の様な動

作をしていました。

空気がピーンと張り詰め、密度の濃い静寂とでも

云うしかない情景を今でも皮膚を通して思いだし

ます。

私は動く事が出来ず、そのまま、先生を見つづけ

ました。初めて見る動作でした。

身体全部を使って、皮膚から息を出し入れしてい

る様にみえました。

暫くして、先生は動作を終え、私に声をかけて来

ました。私も挨拶をしました。しかし、先程の事に

ついては質問出来ませんでした。それは、先生自身

が、何かを模索しているように感じたからで、それ

について、興味本位で質問するのは失礼だと思った

からです。

その後、三郷の稽古前に度々、その動作を拝見し

ました。その度に、とても、厳粛な気持ちになりま

した。

そんなある日、先生が稽古に、その動作を取り入

れ指導してくれました。

日常生活では、物事を

秤にかけて、脳の論理的

な思考のみを動員しがち

なのに対し、導引術では、

呼吸と動作を合せなが

ら、体が感じる感覚を受

け入れ、イメージを肯定

する事により、脳の論理

的思考を司る部分を休

め、脳と身体を繋ぐこと

で感覚的な部分が活性化するのではないかと思って

います。しかし、私の導引術に対する考えは、そこ

で止まってしまいました。

“空手と導引術の結びつきは何か?”

空‘手’と 空‘拳’

最近、先生が呟いた言葉が印象に残っています。

それは、「私も拳を鍛えたが、今では、“手”を“拳”

にすると、詰まった感じがする」と、その言葉が、

よく頭に浮かんで来ていました。

そして、その言葉が、今回の講習会の主題である

変手法の前に行った導引術、羅漢八動功と繋がりま

した。

なぜ?変手法の前にやるのか?

変手法は、中途半端な心構えで挑むと、ただの、

技の羅列に、なってしまいがちで、下手をすると、

力だけで、変手法風な技の結果になれば OK、とす

るレベルの低さになってしまいます。

これは、要するに身体を連動させず、部分的な力

のみで、たまたま非力だった相手を制しているだけ

― 八段錦 弓の動作 ―

それは、導引術の八段錦と云う動作です。

指導自体は動作が主で、あとは、少し意識の掛け方

を云われただけでした。

正直、私は、何をやっているのか、まったくわか

りませんでした。ただ、幸いにも、先生の導引術を

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龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号

Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 4 -

― 和太鼓破魔 ―

にすぎません。

和太鼓のバチ

を固くゲンコ

ツの様に握り、

腕力で、叩く

と、音は、くぐ

もり、つぶれて

しまいます。

リズムの力を発揮します。

要するに導引術の目的の一つは、身体の連動の妨げ

となる、自己満足な部分的な力み、居着いた心、詰

まりや滞りを‘通す’事では、と考えています。

その中でも羅漢八動功は、空手に近く、力のタメ

を通し、そして、抜きと云った動作や、体内に波動

を廻らせる動作のイメージがあると思います。

今回の気付きが正しいかどうかは未だわかりませ

んが、私なりの一歩前進と思い稽古に取り入れよう

と思います。 それが、非力な女性が、固めるのでは無く、手の

内を締め全身で叩くと、太鼓は、弾け、本来の音と

「体幹トレーニング」と「丹田・仙骨を

意識した姿勢」を考える

宗運道場 四段師範代 甲斐 隆

それなのにここを力ませて、体軸のための単なる土

台にしてしまっては、これも体にとって正しいとは

言えません。股関節は、重心を支える大事な関節の

一つです。

つまり股関節を自在に動かせれば、重心を自在に動

かせる、ということになるわけです。重心が動かせ

ると相手の動きに惑わされずビタッとついていく事

が出来ます。

逆に言えば、股関節が力んで固まってしまうと、重

心を動かすのが非常に困難になってしまうというこ

とです。体軸とか、体幹トレーニングのみを奨励す

るスポーツや相撲・競技の武道は、膝や足首、腰の

故障者が多い様に思います。

体にとって本当に正しい使い方とは、より楽に、よ

り高いパフォーマンスが可能で、より体への負担が

少ないという事が大事だと感じます。であるなら、

より筋力を必要とし、より体本来の動きを制限し、

体幹トレーニングで意識すべき筋肉は、4大インナ

ーマッスルと言われる「腹横筋・横隔膜」-「脊柱

起立筋」-「多裂筋」-「骨盤底筋群」、それと下半身

と体幹を繋ぐ「大腰筋」と言われています。

一方、人間の体幹で一

番自由に、しなやかに、

細かく動かせる場所

は、胸椎と股関節です。

胸椎とは背骨のうち、

肩・背中・胸のあるあ

たりの高さの部分で

す。ここは腕より短い

のですが、腕の倍の関

節があるところです。

ですから、本来は腕から指まで、より自由に、しな

やかに、細かく動かせるところなのです。

これを筋力で固めて動かないようにしてしまうと、

本来特によく動かせるはずのところが、逆に、特に

動かせないところにされてしまうわけです。

動かせるように、動かすために関節があるのに、そ

こを動かないように固定するのは、体にとって正し

いわけがありません。

同じようにもう1ヶ所、体幹の中で、特別に自由に、

しなやかに、細かく動かせるところというと、それ

は股関節です。正確には2ヶ所ですが、ここはボー

ルジョイント(球体関節)なので、色んな方向に、

しかも大きくも小さくも動かせるのです。

より故障の確率を高くする様なトレーニングをする

べきどうかがハッキリとわかります。古武道におけ

る身体づくりは「武技の形成を邪魔しない」ように

行うことがポイントだと思います。

筋トレをすると特定の筋肉を使うことに意識が向き

がちです。たとえばベンチプレスをすれば大胸筋や

上腕三頭筋、三角筋が鍛えられ、筋トレをしている

時間以外もそこに意識が向きやすくなります。また、

スクワットをすれば大腿四頭筋が鍛えられ、そこに

意識が向きがちになってしまいます。

しかし、剣術の動きの中で必要とされる筋肉は、ハ

ムストリングスや内転筋、大臀筋、肩甲骨周辺のイ

ンナーマッスル等です。そのため、これらの部位が

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龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号

Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 5 -

鍛えられる種目の筋トレでなければ意味がありま

せんし、むしろその他の筋肉に意識が向くようにな

ると武技の鍛練を阻害してしまいます。

意識した姿勢で突き蹴りを繰り出すと、気配を読め

ずにガードすることができません。

丹田に意識が集中した姿勢の作り方とは

ここで大切になってくるのは、背中にある「脊柱起

立筋(せきちゅうきりつきん)」と、わき腹周りにあ

る「腹横筋(ふくおうきん)」です。この二つの筋肉

は立った姿勢で最も緊張しやすい筋肉です。腹横筋

は体の中の骨や関節とつながっていないため、最も

重力の影響を受けやすいです。この二つの筋肉を緩

めることができれば、丹田に意識が集中する姿勢が

完成します。

そこで、自分の頭を 10 ㎝上から引っ張られている気

持ちで首を伸ばしましょう。そして、両肩を耳元へ

垂直に落としましょう。すると、胸周りが楽になる

感じになるのがわかります。首の後ろ側が伸びると、

脊柱起立筋肉の緊張がほぐれ、肩を落とすことで胸

周りの筋肉が楽になります。

この姿勢により、上半身の前・後ろ側の力みがなく

なります。次に息を吐くことで腹横筋を緩めます。

息を吐くときに、お腹周りをふくらますイメージで

ゆっくりと吐いてみましみましょう。これにより、

腹横筋がゆるみ、上半身の重みが自然と腰の中央に

集中して一つの塊となります。

仙骨は締める

そこで腹圧を高め身体を支える効果を出すのが仙骨

です。仙骨の締めを行う事で腰の下手な遊びをなく

し重心を下腹に下げて体の重さを効率よく相手に伝

えられます。

初心者の段階で単純な腕力頼りの動きをすると、よ

り本質的な身体の使い方が身につかないため、先生

からも力に頼らずに最大限の技ができるように指

導を受けます。その通りにやっているつもりです

が、身体の力を抜いて技を行うのはそれなりに難し

いです。

それでは、どうしたら身体の力を抜いて技を出せる

のでしょうか?

丹田を意識した姿勢により、

体幹部を最大限に活用する

武道における「丹田」は下っ腹を指します。武道の

世界で丹田が重要視されている理由は、「丹田に気

が集まる姿勢」は「最も人がリラックスした筋肉の

状態」であるとの事からです。

立った姿勢で体全体がリラックスできているかど

うかは丹田(=おなか周り)の意識でわかります。

人は体の筋肉の一部分が緊張していると、その部位

に重力がかかります。脚が緊張していると脚に、首

に負担がかかった姿勢では首に重力がかかります。

すると、意識が脚や首にいきます。

足裏から頭にかけて一本の軸がしっかり整った姿

勢では、負荷が均一にかかります。その姿勢のとき

に、物理的に重力がお腹周りに集中すると説明され

ています。言い換えれば、下っ腹に意識が集中し、

丹田に気が集中した姿勢になります。

武道の達人が相手に

気づかれない突きを

与えたり、小さな体で

大きな相手を押し倒

したりできるのは全

てこの姿勢をとって

いるからです。体幹を

一塊にして敵のバラ

ンスの崩れている部

このように、丹田は体幹部を最大限に活用するリラ

ックス状態を理解するのに大切です。この姿勢を実

践できれば、運動技術が向上すると確信します。

普通の人がパンチや突きをすると、相手はその人の

気配がわかってしまうため、払ったりガードしたり

することができます。しかし、空手の達人が丹田を

分や意識の隙をついて自らの重さを一点に集中して

即発せられる技、これこそが真骨頂なのです。

稽古の中から気づかされる一つ一つをしっかりと吸

収しそして励んで行けば自ずと古流の入り口に立て

るのではないかと思います。

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Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 6 -

靖国演武を終えて

宗運道場 四段 福田 脩

特に変手法は、見た目だけ同じ動きを稽古してもそ

の稽古が全く別の方向に向いてしまって形骸化して

しまい、そのままいくら稽古しても技が掛からない

変手となってしまうということになるのだと思いま

す。

その為に、何が必要か?

その必要な物がなければ技の稽古にはなりません。

それは、身体の全ての部分からの動きの波であり技

全体の波であり、それを 1 つの波動として捉える事

が必要なのだと思います。

波動とは、全ての物質の基であり全ての物質の基だ

けでなく思考や音等も波動で表す事が出来ます。

音でいえば海の波の波動が浄化の作用で、思考でい

えば怒りの波動が病気の源となるのです。

その波動を捉えるためには、基本的な身体の動きが

出来ていないと理解は出来ませんので、基本四形・

基形三形の技群に対して、深い理解を持って稽古を

積んでいくしかありません。

力(努めて)必ず達するしかないのです。唱和には

それが示されています。その示す道をこれからも歩

んでいきます。

今回の演武は、形に拘らな

い様に、でも形から外れな

いように演武してみまし

た。

おかげさまで、気持ちよく

今の自分の技を素直に出す

事ができました。

その演武「ローハイ」の時に、何かスコーンと気持

ちよく抜ける瞬間がありました。それは

まるで、今まで苦労していた何かの殻から抜けたか

のような感じでした。

それが何かは未だ分かりませんが、それはこれから

の稽古で理解していくものだと思います。

そして、今回の稽古会であらためて学んだ事、それ

は見た目だけを真似しても駄目だと言う事です。

技とは身体全体の流れ、技を繋いだ全体の流れその

全体の流れを一つの大きな波動として捉えなけれ

ば技は掛からないということです。

「チームラボ かみさまがすまう森 - earth music & ecology」

国登録記念物の名勝地「佐賀県武雄温泉・御船山楽園」に“自然が自然のままアートになる”幻想の世界が

出現します。2019 年は忘れ去られた廃墟に出現する新作も含め 21 の作品群が展示されました。

時を越え連続する命を五感で感じるアートの空間が広がります。(福田)

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龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号

Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 7 -

サンゲージング(太陽凝視)について

宗運道場 弐段 西坂 毅

眠くなるのはメラトニンが分泌されるからで、日

中は睡眠に必要なメラトニンを作るための材料セ

ロトニンが分泌し、活性化されることによって睡

眠をよくしてくれるわけです。医者がうつ病患者

などに陽の光をよく浴びるように指導するのはこ

のような理由だとやっと納得がいきました。

もう一方で松果体は第三の目とも呼ばれてお

り、活性化されることによって、直感が上がり、

創造力が豊かになるとの亊です。中には人のチャ

クラが見える人もいるそうです。

サンゲージングできるのは日出直後・日没直前

の 1 時間の間の太陽のみといわれておりますが、

私の場合は職場のベランダで仕事の合間の休憩時

に日々行っています。

哲学者ルネ・デカルトは、この松果体が「物質

(肉体)と精神をつなぐ場所=魂の在りか」と前

提におきかなり詳細な研究を行ったと聞いていま

す。今後、機会があればその領域に踏み込んで勉

強してみたいと思っています。

ある時、坂本先生から「サンゲージング」という健

康法の話を聞きました。その名の通り太陽を直視する

健康法です。先生自身もこの健康法を取り組まれてお

り、最近では悩まされていた飛蚊症も改善されたそう

です。

やり方としては、始めは 1 日に 10 秒くらいから太

陽を見るようにし、慣れてきたら1日に 10 秒ずつ見

る時間を増やしていくのが良いようです。太陽の力を

取り込むことを目的として直視するので、メガネやコ

ンタクト越しには行わない。出来れば足は裸足で地面

に直接触れて行うことが良いようです。

効果については、まず自然のエネルギーを吸収する

ことで日常の自分の体温が上がるのを体感出来ます。

さらに「松果体(しょうかたい))という脳内の器官

が活性化できる感覚を持てるようになることです。

医学的に松果体は、脳にある内分泌器で睡眠に必要

なセロトニンとメラトニンを分泌します。夜になると

― 脳下垂体と松果体 ― ― 脳内の場所 ― ― 日の出 ―

― かみさまがすまう森_2 ―

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龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号

Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 8 -

私の旅行記 東南アジア遠征記

宗雲道場付き 加地 龍太

的状態を涅槃と呼び、仏となった存在は輪廻転生

の環から外れてこの世に生まれることはなくなる

という理解とのことです。

大乗仏教は釈尊が肉体の死を迎えた数百年後に龍

樹(りゅうじゅ)という人物が説き始めたものと

され、小乗仏教のように自らが仏になった後、そ

の力を行使して自分以外の人間たちをも仏への道

へ導くことを良し、とする大衆救済の思想体系で

あるとされています。

この龍樹発祥の大乗仏教系の寺院は日本や中国で

多く見られ、建物の色彩も小乗仏教系のものより

赤色や茶色などの色のものが多いです。

私は 2013 年にタイ、ラオス、

カンボジアの三つの国を旅し

ました。

各国をそれぞれ一週間ずつく

らい回りました。

ラオスでは首都のビエンチャ

ンとルアンパバーンに滞在し、

その近辺を散策していました。

寺院にも行き、寺の建物の中にも入りました。

インドから北伝し中国経由でやってきた日本の仏教

は、16 宗派すべてが大乗仏教に分類され、その寺院

の外見上の形状も宗派によって異なることはほとん

どないように思えます。しかし、インドから南伝した

小乗仏教(上座仏教)の流れを組むラオスの寺院の外

見上の見た目が日本の寺のそれと大分異なっている

ことに最初はとても驚きました。

寺の僧侶の服装も、小乗系はオレンジ色の袈裟を

着ており、大乗系の日本の僧侶の服装のイメージ

とは異なりました。

日本では、僧侶の階級によって袈裟の色が変わる

ようです。小乗系の僧侶にも同じようなルールが

あるのか私は存じ上げませんが、仏教の他にもブ

ラヴァツキーの神智学、ルドルフ・シュタイナー

の人智学という精神世界の大御所たちの思想にお

いて「色」の意味と効果と役割は必ずといって良

いほど指摘されています。

1800年代のヨーロッパにエドウィン・バビットと

いう人物がおり、その人物が提唱した色彩療法(カ

ラー・セラピー)という太陽光と色の入ったレン

ズを使った療法が今でも有志の間で伝えられてい

て、それ相応の効果を発揮しているという事実も

あるようですので、「色」が持っている力という

のはオカルト好きたちのマユツバ話とだけで片づ

けられないものがあると個人的に感じています。

ですので、釈尊が「色」の持つ力のことを知って

いてそれを自分の教えに含めているならば、小乗

仏教にも僧侶の階級で袈裟の色が異なるというル

ールがあっても不思議ではないと思えます。

そのようにラオスでは主に寺院をふらついてまわ

り、タイではバンコクとチェンマイの都会の中を

遊んでまわり、カンボジアではアンコールワット

とアンコールトムを見学しました。

遠い昔に建てられた遺跡とのことですが、現代の

建築技術でもこういう建物を作るのは困難らしい

です。同様に、エジプトのピラミッドも現代の技

術でもあれだけ正確に造ることは困難とされてい

るようです。

古代人たちは、現代では何かしらの理由で消滅し

た知恵や技術を持っており、それらの一部が現代

上の二つの写真を観ても分かるように、日本の仏教寺

院と比べると色が派手で形状も違うことがはっきり

と分かります。

釈尊が説いた教えは自らが仏(ぶつ・ほとけ)となる

ための個人救済のための方法であり、仏となった精神

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龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号

Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 9 -

の科学力を超える技術力だったりしたのかもしれな

いと個人的に思ったりしています。

オカルトの話ですが、UFOやミステリーサークルやナ

スカの地上絵やバミューダトライアングルなどの不

可思議現象も、あくまで現代の人間の科学力では科

学的証明が出来ないというだけであり、あれらのも

のは非科学(オカルト)ではなく未科学であり「未

だ」科学的ではないものだと個人的に考えています。

人体の各所にある急所も、鍼灸の世界で経穴といわ

れているものですが、「未だ」科学的に説明が出来

ないだけで現実に存在する経絡という氣のエネルギ

ーの流れの上に存在するポイントであり、そこを武

術的に使うと相手の身体を壊すことが出来、鍼灸的

に使うと身体のケアになるということだと考えて

います。

今は以前より頻繁に近所の公園で六尺棒の形(周

氏の棍と基組の棍)や、締めの形そしてサンチン

のはじめの動き(脇の下を締める動き)の稽古を

多くやるようにしています。

調べた所によると、首里手では締める力は 60%、

那覇手では締める力は 100%とされているようで

すが、やってみて感じる事は 100%の全力で筋肉を

締めるより半分より少し強い力くらいで締めた方

が形を終えた後の身体の調子が良いです。

これは一種の健康運動法になるのではないかと思

っています。

昇段(令和元年度 秋期)/Dan Grading (2019 Autumn time)

【自源流津之兵法 範士 Hanshi】 【四段 Yon dan】

薩州古傳

松村宗棍翁傳来

之兵法

福田 脩

熊本 宗運道場

【初段 Sho dan】

Dylan Hughes

ダイラン ヒューズ

Australia

Dallas Evans

ダラス イバンズ

Australia

Peta Pitzner

ペタ ピトズナー

Australia

Rebecca Randle

レベッカ ランドル

Australia

Jessica Robinson

ジェシカ ロビンソン

Australia

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龍 手(龍精空手道季刊誌) 令和元年 秋季号

Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 Autumn time Vol.77 - 10 -

力必達 まだまだ続く修業の道 を受けた松村宗棍翁(松村筑登之親雲上宗棍)を主

人公にした「琉球のさむらい」のエッセーを作成し,

贈ってくれました。

私はその上野先生の熱い心を感じ取り早速そのエ

ッセーを DVD に編集し、上野先生へ感謝の意を込

めてお渡ししたのです。

その後、龍精空手道はその天命といわれる御縁に

より「靖国神社奉納演武大会」への臨席が許され、

末席の列に加わる光栄を得たわけです。

「私たちの祖先は琉球侵攻時に戦っていたので

すよ…、不思議な御縁ですね……」。

これは、私が天眞正自源流最高師範(現綜範)

上野景範先生と初めてお会いした際の先生からの

第一声です。そしてその直後に上野先生は、私に、

唐手第二代継承者であり天眞正自源流の免許皆伝

― 範士の證・Hanshi's diploma ― ― 目録・Mokuroku ―

それから十数年を経た令和元年九月十五日、私は

天眞正自源流宗家第二十八代綜師範・上野景範先生

より、「薩州古傳松村筑登之親雲上宗棍翁伝来の兵

法を修めた」との文脈の下、「自源流津之兵法 範士」

の称号と目録を授与されました。

私は唐手第六代・千唐流開祖千歳強直翁の門下に

入ってから半世紀、まさか千歳先生(沖縄姓知念)

の母方の祖父である「松村宗棍翁」の名前が記され

た「範士」の「證」を授かれるとは夢にも思いませ

んでした。とは言いながらも、自分が追い求めて

来た唐手の歴史の上に促された必然と思い気負いな

く受け入れることができたのです。

そして今、私は千歳翁が逝去される前に言い残し

た“千唐流を頼むぞ!”の言の葉に報いる、大事の

一つを達成した実感を噛みしめています。

次の目標は奥伝位「光風(ガンフー)」の完成です。

これからは、基礎・柔軟運動をおろそかにするこ

となく自分の身体を慈しみながらまだまだ続く修業

そして探求の道を歩んでいきたいと思います。

行事予定 カナダ稽古;10 月 15 日~29 日 Canada Keiko ; Oct 15th~29th

龍精空手道季刊誌

龍手/Ryushu

http://www.ryusei-karate.com/ 忍