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M1M2セミナー~M2シリーズ~
ASTRO-H/SXI用X線CCD素子の性能評価
UEDA Shutaro
2010.07.07
もくじ
1. ASTRO-Hとは?
*ASTRO-Hの目標
*SXIの役割(X線CCDについて)
2. SXI-CCDのプロトモデルの性能評価
*低エネルギーX線照射試験
*電荷注入試験
3. まとめ
ASTRO-Hとは?
2013年度打ち上げを予定している、日本で6番目のX線天文衛星
4つの検出器で0.3-600keVのエネルギー領域をカバー
現在運用中の3衛星との比較
拡がった天体の観測に強い⇒ 硬X線で初めてのImager搭載⇒ X線マイクロカロリメーター搭載
例えば、銀河団の観測から
銀河団・・・宇宙最大規模の天体(総質量は~1015太陽質量)
銀河団に対する仮定・・・銀河団形成後、バリオンの総質量の変化はないと考える⇒ 銀河団のバリオンの総量は、宇宙全体の平均値とみなせる
⇒ 宇宙の質量密度に対するバリオンの割合を測定することができる
銀河団の総質量(ダークマター+バリオン):M , 銀河団中に満ちるガスの質量:Mガス , 銀河の質量:M銀河
宇宙のバリオン密度:Ωb , 宇宙のダークマター+バリオンの密度:Ωm
Ωb/Ωm = (Mガス+ M銀河)/M
一方、宇宙のバリオンの総量は、ビッグバン時の元素合成から予想できる
⇒ 銀河団の総質量を精密に測定すると、 Ωmが求められる!(現在の銀河団観測による大まかな予測は~0.29)
ASTRO-Hの果たすべき役割の1つ
SXIとは?分光・撮像能力に優れたX線CCDカメラ(Soft X-ray Imager)
⇒ 0.4-12keVのエネルギー領域を担当
⇒ 36 x 36 arcminという、CCDとしては最大級の視野を持つ
銀河団のビリアル半径を超える領域を一度に観測
18 arcminだけあれば、z~0.14(18億光年)より遠い銀河団をビリアル半径を超えて観測できる
銀河団の総エネルギーのうち、熱エネルギーの精密測定を担当する
⇒ ダークマターの全貌に迫る
X線CCDSi中(空乏層内)で光電吸収による生成電荷を数え上げることで、X線を検出する
空乏層
電極構造
表面
構造
X線生成電荷
転送電荷
X線の入
射面
Si中の電場勾配
生成される電荷対 : 入射X線のエネルギー [eV] / 3.65 [eV](Siの平均乖離エネルギー)
⇒ 数え上げた電子の数=入射X線のエネルギー
生成電荷の転送と読み出し
縦転送
横転送読み出し口
1600 200300
300800
読み出した順番と読み出す速度がわかる ⇒ 位置分解能と時間分解能が優れている読み出し口に入った電荷の数がわかる ⇒ X線のエネルギーがわかる
X線イベント判定方法Grade判定法
周囲よりPHAがもっとも高い点を中心とした3x3pixelの中から、左のような計8個のGradeを求める
これらのうちX線イベントだとみなすのは
Grade0、2、3、4、6
X線イベントのPHAは、左図で黒と濃い灰色のpixelのPHAの和になる
理想のGrade分岐比
もくじ
1. ASTRO-Hとは?
*ASTRO-Hの目標
*SXIの役割(X線CCDについて)
2. SXI-CCDのプロトモデルの性能評価
*低エネルギーX線照射試験
*電荷注入試験
3. まとめ
SXI用CCD素子のプロトモデル:Pch-2k4k
撮像領域 蓄積領域
Pch−2k4k素子
30m
m30mm
Pch-2k4k素子の特徴
撮像領域が大面積のCCD(30mm×30mm)
裏面照射型のPチャンネルCCD素子
空乏層厚200μmの完全空乏化素子
低エネルギー側で感度が高い裏面型
厚い空乏層
⇒ 有効エネルギー帯域がよりワイドバンドに
低エネルギーX線照射試験の目的
生成された電荷の一部が転送電極まで運ばれないとテールが生まれる
0.5keVのX線に対する応答
XMM-Newton:黒、赤Suzaku:緑、青
Suzakuの方が応答の単色性に優れている⇒ 検出器として優秀
裏面照射型のPch-2k4k素子は、どのような応答を示すのか?また、0.52keV(O-K)のX線の平均吸収距離は0.5μm
⇒O-Kのスペクトルを取得することができるか?
軟X線発生装置
X-ray
W FilamentTarget(MgO)
Gate Valve
CCD
X-ray
Optical Blocking FilterAl:0.15μm
Chamber
Secondary Target
Check Source
Carbon Filter:2.2μm
2次ターゲット
FluorescentX-ray
e-
低エネルギーX線照射試験のセットアップ
CCDには2次ターゲット起因の蛍光X線が照射される軟X線発生装置起因の可視光などはフィルターでほぼすべてカットされている
⇒ Alフィルターがないと、サチる(可視光の影響)
真空槽
Pch-2k4k素子の低エネルギー側の応答
2次ターゲット:石英ガラス
Si-K(1.74keV)
O-K(0.52keV)
O-K(0.52keV)の応答
O-K(0.52keV)
Pch-2k4k素子は、特に1keV以下のX線の応答関数が単色ではない⇒ O-Kの応答の、約0.3keV付近にある盛り上がりなど
SXIのエネルギー帯域を低エネ側に拡張するため、応答関数の単色性が必要
O-K:0.52keV
F-K:0.68keV
Na-K:1.04keV
K-Kα:3.31keV
Si-K:1.74keV
Al-K:1.49keV
輝線
とテールの強
度比
空乏層(200μm)
電極構造
表面構造
(アキュムレー
ション層)
軟X線(≦1keV)生成電荷
転送電荷
Si中の平均吸収距離とテールの強度の関係
強度比を見るに、CCD素子表面の構造がテールを生み出しているかもしれない
テールの寄与が大きい
表面構造の1つ、アキュムレーション層を薄く
Pch-2k4k素子と同じところ裏面照射型でPチャンネルCCD素子空乏層厚(200μm)GAIN
Pch-2k4k素子と異なるところアキュムレーション層が異なる
(2k4kに比べて薄い)撮像領域のサイズが1/4
Pch-2k1k素子
15mm
30m
m
アキュムレーション層改良素子:Pch-2k1k
実験セットアップはPch-2k4kと同じ
酸素の蛍光X線(0.52keV)のみをCCDに照射⇒ かかった時間:のべ50時間⇒ 得られたイベント数:~3000イベント(40framesに1イベント)
O-K(0.52keV)
O-Kのテール構造の解析
Pch-2k1k素子のみ蛍光X線(0.52keV)のスペクトルを取得、その後Back Groundを除去
GAINは最後に55Feを当てた時の値を使用
HVが5kVと1.7kVのO-Kのスペクトルの比較
(5kVのときはSi-Kあり)
得られたスペクトル
Si中の平均吸収距離と輝線とテール比の関係
テールをEvthから各輝線のピークの中心までの応答と定義
O-Kに関して有意な違いはない現在、入射面の界面準位(アキュムレーション層より表層)を改良した
CCD素子の製作をHPKに依頼中(7月下旬頃完成予定)
K-Kα
Na-K
Si-K
F-K
O-K
Al-K
輝線とテールの強度比
電荷注入とは?宇宙空間で、CCDは放射線(主に陽子)によりダメージを受ける
⇒ CCD表面に格子欠陥ができる
⇒ 電荷転送効率が悪くなる(エネルギー分解能が悪くなる)
ダメージを受けるのは仕方がない ⇒ でも劣化は防ぎたい
電荷注入を行うことで、劣化を防ぐ
時間
転送方向
信号電荷 注入電荷 トラップ
電荷注入試験
阪口修論@2009での電圧値を参考に、Pch-mini03(350x350 pixels)を駆動 (以下のイメージはPE法で取得)
取得できたフレームイメージ
以降、縦の列(X座標)をColumn、横の行(Y座標)をRowと呼ぶ
線源は55Fe
エネルギー分解能[email protected]
読み出しノイズ15.7e-
GAIN=1.94eV/ch(0.53e-/ch)
読み出し速度:68kHz
横スジが注入ライン1フレームに12行
駆動電圧
PV 7/-7PH 6/-7RG 3/-8SG 6/-2OG -4RD -11OD -20BB 35ISV -6.2/-12.0
IG1V -5.0IG2V -2.7
電荷注入法(DC法)
Diode Cut off 法(DC法)・・・ISVとIG2Vは定電圧、
IG1Vをクロッキングさせて電荷注入を行う注入電荷量はISVとIG2Vの電位差で決まる模式図
1
3
2
4
電荷注入法(PE法)
IG1VとIG2Vは定電圧、ISVのみがクロッキングしている注入電荷量はIG1VとIG2Vの電位差で決まる
1
Potential Equlibration Method(PE法)
2ISV P2VIG1V
IG2V P1V
Vertical transfer
Pote
ntia
l
+V
-V
P3V
ISV P2VIG1V IG2V P1VP3V
+V
-V
ISVP2VIG1V
IG2V P1VP3V
+V
-V
ISVP2VIG1V IG2V P1V
P3V+V
-V
3 4
:hole
ISV変化時の注入電荷量(DC法)駆動電圧
PV 7/-7PH 6/-7RG 3/-8SG 6/-2OG -4RD -11OD -20BB 35ISV -6.5
IG1V 6/-5IG2V -2.7
ISV:-6.6V ISV:-6.4VISV:-6.5V
ある程度適切なISVを絞り込むため、ISVを変化させた(波高値はダークを除いた値)
CCDの駆動電圧に右表の値を採用⇒ この電圧値はSi中の実効電圧を踏まえても
ISV、IG1V、IG2V、P2Vの電圧差に余裕のある値
ISV:-6.5V、IG1V:6/-5V、IG2V:-2.7V
電荷注入時間は、断わりのない限り~2µs
使用したADCは一定以上の電圧が入ると0chを出力する
注入電荷量はISVの値に大きな依存性を持つ
IG2V変化時の注入電荷量(DC法)
IG2V:-2.8V IG2V:-2.7V IG2V:-2.6VIG2Vを-2.7Vを中心に±0.4Vまで、0.1V刻みで変化させた(グラフのPHAはダーク除去後)
Columnごとの注入電荷量のバラツキは大きい
IG2V変化時でもColumnごとの注入電荷量のバラツキはある
注入電荷量 [e-] Resolution [ΔQ/Q]
Saturation
注入時間と注入電荷量(DC法)
注入電荷量 [e-] Resolution [ΔQ/Q]
Saturation
約0.04μs変化するだけで注入電荷量は大きく変化する
注入時間が2.12μsを超えるとサチってしまったので、Resolutionのデータ点はない
注入時間はオシロの波形から概算で求めた
IG1Vがlowの時間と、その時の注入電荷量
ISV変化時の注入電荷量(PE法)
PE法でも注入電荷量はISVに大きく依存する
DC法での駆動電圧を参考に右表の値を採用
ISV:-6.0/-12.0V、IG1V:-5.0V、IG2V:-3.0V
駆動電圧
PV 7/-7PH 6/-7RG 3/-8SG 6/-2OG -4RD -11OD -20BB 35ISV -6/-12
IG1V -5IG2V -3.0
ある程度適切なISVを絞り込むため、ISVを変化させた(波高値はダークを除いた値)
ISV:-6.1V
ISV:-6.0V
ISV:-6.3V
ISV:-6.2V
IG2V変化時の注入電荷量(PE法)
ISV変化時の挙動から、ISVを-6.2Vにして、IG2Vを変化させた(IG1V:-5.0V)
DC法に比べて、IG2Vの変化に対する注入電荷の増減は緩やか
DC法と同じく、Columnごとのバラツキは大きい
GAINが異なっているので、サチったときの注入電荷量はDC法の場合と異なる
Saturation
注入電荷量 [e-] Resolution [ΔQ/Q]
注入時間と注入電荷量(PE法)PE法はISVのPotentialがhighの間に、電荷が注入される
Potential highの時間(IG1Vを上回るのが、矢印の位置)
~4μs
~2μs
~5μs
~3μs
~5μs
~2.5μs
DC法と同じく、非常に短い時間で注入電荷量が大きく変わる
注入電荷量 [e-] Resolution [ΔQ/Q]
各電荷注入法と、パラメータ変化時のResolutionある注入電荷量と、そのときのResolution [ΔQ/Q]の関係をプロット
(読み出しノイズと暗電流の寄与は除去済み)
DC法とPE法でも、パラメータを変えても、Resolutionはあまり変化しない5.9keVのX線の分解能に換算すると、~0.06@1600e
GAINが異なるため、PE法では2000eまでしかデータ点がない
5.9keVのX線に相当(SXI:~0.025@1600e)
もくじ
1. ASTRO-Hとは?
*ASTRO-Hの目標
*SXIの役割(X線CCDについて)
2. SXI-CCDのプロトモデルの性能評価
*低エネルギーX線照射試験
*電荷注入試験
3. まとめ
まとめASTRO-HはX線天文学の歴史を塗り替えるはず
⇒ X線のエネルギーの超精密分光:SXS⇒ 硬X線で初めてのImager:HXI
⇒ 広視野で正確な広帯域スペクトル取得:SXI
そのなかで、我々の研究は?⇒ SXIの性能を最大限発揮させるため
例えば、*低エネルギー照射試験
⇒ SXIの低エネルギー側の有効帯域*電荷注入試験
⇒ 宇宙空間で長期間性能を維持
全ての気高い行いは、最初は不可能にみえる(by A. Carnegie)