asean で増加する自然災害と国際社会の動き」 今...

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2019年9月号 千葉銀行 シンガポール駐在員事務所 バンコク駐在員事務所 《今月号のメニュー》 今月のシンガポールトピックス ASEAN で増加する自然災害と国際社会の動き」 今月のバンコクトピックス 「タイの宝くじについて」 アセアンニュース短信

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2019年9月号

千葉銀行

シンガポール駐在員事務所

バンコク駐在員事務所

《今月号のメニュー》

◆ 今月のシンガポールトピックス

「ASEANで増加する自然災害と国際社会の動き」

◆ 今月のバンコクトピックス

「タイの宝くじについて」

◆ アセアンニュース短信

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(出所:CRED(災害疫学研究センター)

自然災害危険度(World Risk Index 2018)

国名 指数 危険性

1 バヌアツ 50.28

2 トンガ 29.42

3 フィリピン 25.14

25 ベトナム 11.35

29 日本 11.08

36 インドネシア 10.36 高い

82 マレーシア 6.44

88 タイ 6.12

158 シンガポール 2.31 非常に低い

非常に高い

中程度

(出所:国連大学)

今月のシンガポールトピックス

「ASEAN で増加する自然災害と国際社会の動き」

9 月 9 日、日本では台風 15 号の影響で、千葉県をはじめ首都圏で大きな被害と混乱

が発生し、自然災害の脅威を改めて認識された方も多いと思います。

日本は、外国に比べて地震や台風などの自然災害が頻繁に発生する国として、

世界的に知られていますが、ここ最近 ASEAN でも自然災害の件数が急増しており、

ASEAN域内の多くの市民が被害を受けています。

右図は、2018 年に世界で発生した自然災害の上位 10 ヶ国を

示していますが、このうち 4ヵ国を ASEANが占めています。

また自然災害による死傷者数の約半分は、インドネシアで

起こった災害の被害者(地震津波 4,340 人、地震 564 人、

火山噴火 425人、合計 5,329人)となっています。

今月のシンガポールトピックスでは、「ASEAN で増加する自

然災害と国際社会の動き」についてレポートします。

1. ASEAN での自然災害について

(1) ASEAN における自然災害 高リスク国

ASEAN の全ての国で自然災害リスクが高いわけでは

ありません。世界各国の自然災害リスクを指数化し

てランキングしたデータとして、国連大学が毎年公

表している「自然災害危険度」があります。

右表のとおり、ASEANではフィリピンが最もリ

スクが高く(全体でも第 3位)、以下、ベトナム、

インドネシアとなっています。一方、最もリスクの

低い国はシンガポールになります。

この指数は「エクスポージャー(リスク量)」、「脆弱性」、「耐久力」、「対

処能力」、「適応力」の 5 要素の各指数に基づき算出されています。このため、例

えば「エクスポージャー」だけを見ると、日本は上位 5 ヶ国以内ですが、その他 4

要素が優れていることから、29 位に位置しています。逆にフィリピンは全要素とも

劣後しているため、自然災害リスクの上位国となっています。

自然災害発生上位10ヵ国(2018年)

インド 22

中国 22

米国 19

インドネシア 15

フィリピン 10

ベトナム 7

日本 7

フランス 7

アフガニスタン 6

ミャンマー 5

アルゼンチン 5

国別件数

3

(出所:国連「Asia Pacific Disaster Report 2019」)

(2) 自然災害件数の推移

アジア太平洋地域における

自然災害件数の推移を示した

のが右図になります。

自然災害を「気候変動関連」

と「地震関連」に分けると、

「気候変動関連」の自然災害

が 1980 年以降、急増してい

ることが分かります。

また、気候変動関連の中では「洪水」による被害が最も顕著となっています。

ベルギーに拠点を構える CRED(災害疫学研究センター)の調査によると、1995-

2015 年に世界で発生した気候変動関連の自然災害のうち 47%は「洪水」による

もので、この 95%はアジア(特に ASEAN)で発生している、と報告されています。

洪水の被害が ASEAN で顕著な理由としては、①フィリピン、ベトナム、インド

ネシアといった国々は、海岸線が長く、低地に人口が集中していること、②日本の

ように災害対策のインフラが十分に構築出来ていないこと、などが挙げられます。

2. 自然災害の増加理由と国際社会の動き

近年、気候変動関連の自然災害が増加している背景には、新興国の急激な成長に

伴う「エネルギー需要拡大による温室効果ガス排出量の増加」と、「森林伐採による

温室効果ガス吸収量の減少」があると言われています。

ASEAN の中で成長が著しいインドネシア、フィリピン、ベトナムなどは、特に若年

層を中心に人口が多いという特徴を活かし、豊富な労働力供給を梃子に成長を遂げて

います。

しかし、成長を遂げる過程で生じるエネルギー需要の多くは、温室効果ガス排出量

の多い石炭火力により賄われています。また、増加する人口に見合う食料確保や、外

貨収入源であるパルプや紙製品の生産のため、森林伐採も行われています。

気候変動に伴う経済的な悪影響は非常に大きく、アジア開発銀行は、「このまま気

候変動を放置すると 2100 年までに ASEAN 全体の GDP を 11%も押し下げる要因になり得

る」と試算しています。このため、先進国を中心に新興国に対して環境に配慮した経

済成長を求める声が上がっています。

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アジア太平洋地域の自然災害件数推移

気候変動関連 地震関連

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アジア太平洋地域の自然災害件数推移

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アジア太平洋地域の自然災害件数推移

気候変動関連 地震関連

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一方、ASEAN には未だに電気のない生活を余儀なくされている人々が 6,500 万人

いるとされています。これらの人々を早期に、近代的な生活を過ごせるようにするに

は適切なエネルギー供給が必要ですが、膨大な費用支出が伴います。しかし、新興国

の財政余力は乏しいため、「エネルギー需要を生産コストの低い石炭火力にある程度

頼らざるを得ない」というのが実情です。

このような背景から、日本を初めとした先進国が新興国に対して、温室効果ガス排

出量削減を強く迫ることは難しくなっています。その一例として、1997 年に第 3 回国

連 気候変動枠組条約締結国会議(COP3)で採択された「京都議定書」があります。

同議定書の中では、先進国に対して温室効果ガス排出量削減義務が課されています

が、新興国には課されていません。つまり、インドネシアは京都議定書批准国である

ものの、温室効果ガス削減義務はないというものです。

3. パリ協定の採択・発効

気候変動対策は、ASEAN のみならず、世界の人々にとって喫緊の課題として認識され

ているものの、国際社会が協調して対策を講じることが困難となっていました。

2015 年に第 21 回国連気候変動枠組条約締結国会議(COP21)で採択 され 2016 年に

発効された枠組みが「パリ協定」(「京都議定書」の後継となる枠組み)になります。

「パリ協定」は、皆さんもニュース等で耳にしたことがあるかもしれませんが、

新興国も含む全ての国に対して温室効果ガス削減の努力を求める内容となっており、

非常に画期的な枠組みと言えます。

「パリ協定」では、以下のような世界共通の長期目標を掲げています。

具体的には、新興国を含む全ての参加国に、2020 年以降の「温室効果ガス削減・

抑制目標」を定めることを求めています。(達成義務はなく、努力目標の位置づけ)

「パリ協定」が「京都議定書」と異なり、新興国にも努力目標を課すことができた

背景には、各国の目標を一部の先進国によるトップダウンで課すのではなく、各国が

自国の実情を踏まえ、自主申告する形式にした点が挙げられます。

シンガポールや日本のような先進国が掲げた目標と、フィリピンやインドネシアの

ような新興国が掲げた目標を比べてみましょう。(下図参照)

◎世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする

◎そのため、できる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、

 温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

5

先進国が具体的な削減目標を掲げている一方、新興国は削減基準値に将来の温室効

果ガス排出量予測値を採用しています。つまり、柔軟な目標設定を許容することで、

新興国にも削減努力目標を掲げ易くしています。

加えて、新興国が削減を図るためには再生可能エネルギー導入が必須となり、技術

移転や資金援助が必要となります。このため、先進国からの支援も新興国の目標に加

味されています。

なお、削減目標は義務でなく努力目標となっていることから、進捗確認が重要であ

り、各国は進捗状況を定期的に報告するとともに、専門家からレビューを受けること

が定められています。そして、各国の目標は 2020 年以降、5 年毎の更新が求められて

います。

「パリ協定=トランプ大統領の脱退表明」を想起する方も多いかと思いますが、

同協定では脱退について、「協定発効(2016 年 11 月)から 3 年経過して通告ができ、

通告が効力を有するまで 1 年かかる」と規定しています。このため、米国の脱退は、

早くても 2020年 11月以降になります。

4. おわりに

世界各国による歴史的な合意の上で発効された「パリ協定」ですが、削減目標を

自主申告制にしたため、各国の削減目標値を合計しても、2100 年の世界の気温は現在

よりも 3℃以上の上昇が見込まれるという調査結果があるなど、万全とは言えません。

また、同協定では 2020 年(来年)以降の温室効果ガス削減目標を掲げているため、

実際に各国が自主申告した目標をどこまで達成できるかも現時点では未知数です。

もっとも、地球温暖化の進展は更なる気候変動による自然災害を引き起こす可能性

が高く、ASEANの中で自然災害リスクの高い国々にとっては、死活問題です。

シンガポール 日本

2030年までに2005年比で、GDP当たりの温室効果

ガス排出量を36%削減する。更に2030年頃に排出量

がピークすることを目標に、温室効果ガス排出量を

安定化させる。

2030年までに温室効果ガス排出量を、2013年度の

水準から26%削減する。

フィリピン インドネシア

2030年までに技術移転や資金援助などを受けつつ、

温室効果ガス排出量を、気候変動対策を何もしない

場合の予測値と比較し、70%削減する。

2030年までに温室効果ガス排出量を、気候変動対策

を何もしない場合の予測値と比較し、29% 削減

する。技術移転や資金提供などの国際支援次第では

最大41%まで削減する。

【新興国】

【先進国】

6

世界各国が気候変動対策を取り組むためには、日本を初めとした先進国が率先して目

標を達成する姿を各国へ見せるとともに、新興国の目標達成に向けて支援する必要が

あります。

気候変動対策に向けた今後の世界の動きとしては、今年の 12 月にチリで第 25 回

国連気候変動枠組条約締結国会議(COP25)が予定されていることから、COP25 でどの

ような議論がなされるのかに注目していきましょう。

千葉銀行シンガポール駐在員事務所は、今後も、シンガポールを初めとした ASEAN

地域の様々な情報をご提供してまいります。お気軽にご相談ください。

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今月のバンコクトピックス

「タイの宝くじについて」

タイでは、街頭、寺院の門前など、至るところで露店の宝くじ販売所を見かけます。

さらに、レストランの中にまで入り宝くじを販売する売り子の姿も目にすることもあ

ります。

タイの街頭で販売されている宝くじは、政府宝くじ事務所が事業運営する公営の

宝くじであり、日本でもよく知られるサマージャンボ宝くじや年末ジャンボ宝くじと

同様のものです。老若何女問わず、多くの人々が街頭で気軽に宝くじを購入する光景

を目にすることからも、タイでは宝くじの人気が非常に高いことが窺えます。

今回のバンコクトピックスでは、タイ人の生活の一部として深く根付く、宝くじに

ついてレポートします。

1. タイの宝くじの歴史

アユタヤ王朝時代の 17 世紀にタイを訪れた

外 国 人 の 記述 に 「タ イ 人 は ボー ト レー ス 、

水牛レース、闘鶏など複数の種類の賭け事を好む」

と 残 さ れ てい る よう に 、 古 くか ら タイ 人 は

ギャンブル好きとして知られているようです。

タイの宝くじは、現王朝(チャクリー王朝)ラマ

3 世(現国王はラマ 10 世)の時代である 1832 年に登

場しました。当選金が購入金額の 30 倍であるこの宝

くじは大いに流行し、売上から得られる税収は国庫

の貴重な収入源となりましたが、1916 年、過剰な投

機は国民に道を誤らせる恐れがあるとして、ラマ 6

世により一旦廃止されました。

現在タイ政府が発行する宝くじは、政府管理の下、

定期的なサイクルで発行されるものとして 1932 年に

再登場しました。1939 年には政府宝くじ事務所が設

立され、現制度が整備されてきました。

(筆者撮影)

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(筆者撮影)

2. 事業運営主体となる政府宝くじ事務所とは

政府宝くじ事務所は、1939 年 4 月に財務省管轄の国営企業として設立され、1974 年

施行の「政府宝くじ事務所法」に則り、①宝くじの印刷、②宝くじの販売、

③宝くじの抽選、④当選金の支払いの 4業務を行います。

宝くじの印刷では偽造防止印刷技術を、また、宝くじの抽選では国際基準に基づい

た抽選マニュアルや抽選機を導入するなど、主要業務で ISO(国際標準化機構)の規格

である ISO9001認証を受けており、透明性の高い事業運営を行っています。

また、月 2 回実施される抽選会の様子は、国営放送、陸軍テレビ局といったテレビ

チャンネルや宝くじ事務所のウェブサイトで生放映されるほか、年 4 回地方で 抽選

会を実施するなど、国民に広く浸透する宝くじ人気の維持に努めています。

なお、宝くじの売上代金の約 60%は当選金として配当されますが、宝くじ事業の

運営経費を除いた 20%程度の収益金が、国庫へ充当されます。

3. 宝くじの仕組み

宝くじは、月 2 回(毎月 1 日~15 日、毎月 16 日

~ 月末日)に分けて販売されます。抽選日は

各販売期間の翌日(16 日、翌月 1 日)となります。

抽選会はタイの人々にとり毎月恒例の重要イベント

と言えます。

宝くじの 1 回あたりの発行枚数は 100 万枚であり、

1 枚の券面金額は 80 バーツ(約 280 円)です。

100 万枚のなかに当選本数は 14,168 本含まれて

おり、賞金総額は 4,800 万バーツ(約 1 億 6,800 万

円)となります。

① 購入方法:店頭に並ぶ宝くじから好きなものを

選びます。面白いのが、店により販売価格が違

うことです。殆どのお店では券面金額 80 バー

ツ(約 280 円)に対し、100~120 バーツ(約

350~420 円)程度で販売されます。また、タイ

人にとり縁起の良い数字である 9 を含む番号、

連番、王様の誕生日等にちなんだ数字を含むくじは 200 バーツ(約 350 円)以上の

値段で販売されるなど、販売価格もまちまちです。くじをいくらで販売するかは店

の自由であり、差額が店の儲けになります。

タイの宝くじの当選本数、当選金額

当選本数 当選金額(THB)1等賞 1本 6,000,0002等賞 5本 200,0003等賞 10本 80,0004等賞 50本 40,0005等賞 100本 20,000

1等の前後賞 2本 100,000上3桁賞 2,000本 4,000下3桁賞 2,000本 4,000下2桁賞 10,000本 2,000合 計 14,168本 48,000,000

(出所:タイ政府宝くじ事務所)

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② 当選確認方法:テレビ中継のほか、宝くじ事務所公式ホームページを含む多くの

サイトで当選番号が公表されています。宝くじに記載されている数字を入力すれば

当選の有無を検索してくれる便利なサイトなどもあります。

③ 当選金の受取り:自ら政府宝くじ事務所へ赴くか、宝くじ屋さんに 3%程度の

手数料を支払い当選金の受取りを委託する方法のいずれかとなります。

4. 宝くじに対するタイ人の意識と購入行動

政府調査に基づく分析から、15 歳以上のタイ国民の約半数が何らかの賭け事を行っ

ており、人気の高い順に①政府発行宝くじ、②闇宝くじ(違法な民間の宝くじ、1 バー

ツから購入可能であり当選時の賞金倍率が高い)、③サッカー賭博、という結果が出

ています。特に、タイの労働力の中枢をなす 30 歳以上の正規労働者や個人事業主等の

うち 1,000万人ほどが習慣的に宝くじを購入している、との調査結果もあります。

多くの宝くじ購入者は宝くじを賭け事と考えておらず、またその購入目的も一攫

千金を狙い良い暮らしをしたい、という発想からです。

タイ人の宝くじ購入の為の支出は全収入の約 2%に達すると言われており、経済の

好不調や収入の増減にかかわらず、安定的に支出計上がなされているとの調査結果

からも、宝くじがタイ人の生活に密接に関わっていることがわかります。

5. タイ政府の先進的な取組み

以前は、既に外れた宝くじの番号を改変した偽造宝くじが再流通するなどの問題も

起きましたが、現在の宝くじには QR コードが付されており偽造の心配は大幅に低下し

ています。また、政府は 2018 年 10 月以降「LINE」と協力し、モバイルニュースサー

ビス「LINE TODAY」をつうじ抽選会の様子を配信しているほか、偽造宝くじを 排除

するための情報提供や、LINE スタンプを活用し宝くじ売買の透明性を高めるための啓

蒙活動などを実施しています。

6. おわりに

宝くじに当選するとすぐに仕事をやめたり、急に生活が派手になる人々がいるなど、

悲喜こもごもの人生ドラマを提供してきたタイの宝くじですが、人生の逆転を狙い

家族や友達と皆で夢を語りながら盛り上がることのできる宝くじは、タイ人にとり

生活に根付いた一種のエンターテイメントとも言えるものになっています。皆さんも

訪タイの際には実際に購入してみてはいかがでしょうか。

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在タイ日系企業の業況感、3年半ぶりにマイナスへ 【タイ】

シンガポール、少子高齢化対策で定年延長へ 【シンガポール】

アセアンニュース短信

シンガポールのリー・シェンロン首相は、8 月 18 日に実施されたナショナルデーラリー

(施政方針演説)で、2022年から定年・再雇用年齢上限の段階的引き上げを発表しました。

具体的には、定年は現行の 62 歳から 2030 年までに 65 歳へ、定年後の再雇用年齢の上限も

現行の 67 歳から 2030 年までに 70 歳へ引き上げます。(再雇用年齢の引き上げは、2017 年

に 65歳から 67歳に引き上げられたばかり)

ナショナルデーラリーとは、毎年シンガポールの建国記念日(8 月 9 日)の後に、首相が

行う施政方針演説のことで、1 年間の中で最も重要な政治イベントとひとつとされています。

今年のナショナルデーラリーの中でリー首相が述べた主な内容としては、上述の「定年・

再雇用年齢上限の段階的引き上げ」以外に、「南部沿岸地区の再開発」や「気候変動に伴う

海面 上昇に対するインフラ整備」などが挙げられます。

また、シンガポールの景気が世界経済の影響を受け、減速傾向にあることについても言及

し、「米中貿易摩擦が深刻化すれば、サプライチェーンや投資、研究開発活動に支障が生じ、

人的交流も制約される」との見解を示しました。また、「新たな国際情勢に適応しなければ

ならない」とも述べています。

8 月 6 日、バンコク日本人商工会議所(以下、JCC)は、半期毎に在タイ会員企業 1,760 社

を対象に実施している在タイ日系企業の景気動向調査の結果を発表しました。これによると、

2019 年上期の日系企業の業況感(DI「上向く」の回答割合から「悪化」の割合を引いた値)は

マイナス 8 となり、2015 年下期調査以来、7 期ぶりのマイナスとなりました。一方、2019 年

下期はプラス 6 と、年後半にかけ業況感の回復を見通す企業が多いことを示す結果と

なりました。8 月に入り、複数の機関が 2019 年のタイの経済成長率予測を相次ぎ下方修正

しています。

同調査は JCC が会員企業を対象に 5 月中旬から 6 月上旬にかけ実施、回答企業は 560 社で

回収率は約 32%でした。

なお、前回 2019 年 2 月の調査時にプラス 25 であった 2019 年上期の業況感が今回の調査

(マイナス 8)で大幅に低下していることから、今年に入り企業の業況感に変化が見られて

いることが窺える結果となりました。

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お知らせ

千葉銀行シンガポール駐在員事務所及びバンコク駐在員事務所では、アセアン地域

への進出等を全面的にサポートしております。

現地法人設立の手続きやオフィス・工場物件のご紹介、税制等の情報、販路・調達

先のご紹介など、幅広いサービスを提供させて頂いておりますので、弊行お取引店を

通じ、お気軽にご相談ください。

以 上

※ ここに掲載されているデータや資料は、情報提供のみを目的としたもので、投資勧誘等を

目的としたものではありません。投資等の最終決定は、ご自身の判断でなされるようお願

いいたします。

※ また、弊行は、かかる情報の正確性や妥当性については、責任を負うものではありません。

本レポートに関するお問い合わせは、千葉銀行 市場営業部 海外支店統括グループ

(Tel:03-3270-8526、e-mail:[email protected])までお願いいたします。

≪出典≫

NNA、時事通信、各種新聞報道