“おかやま”防災まちづくり 教育研究プロジェクト · 2013-05-23 ·...

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“おかやま”防災まちづくり 教育研究プロジェクト わが町“おかやま”を想う 熱い心」と「冷静な頭脳」を持った人材育成を目指して 岡山大学大学院環境生命科学研究科 氏原 岳人 2013年2月27日 成果報告会 1

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“おかやま”防災まちづくり教育研究プロジェクト

わが町“おかやま”を想う

「熱い心」と「冷静な頭脳」を持った人材育成を目指して

岡山大学大学院環境生命科学研究科

氏原 岳人

2013年2月27日 成果報告会

1

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プロジェクトの目的

① 【教育効果】 “おかやま”のまちづくりに貢献できる知識と技術、並びに調査・研究能力を有した人材を育成する。

② 【研究効果】教員、学生により実施された調査・研究の分析結果に基づいて、“おかやま”のための有益な知見を提示する。(研究成果を地域へ還元)

教員・学生が地域と密接に関わりながら、地域の課題を一緒に解決する →学都形成の基盤

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プロジェクトの内容

プロジェクト① 課題発見力を養う

プロジェクト② 情報・データ収集力を養う

「まちなかの問題は何か?」学生自身がまちなかに出て主体的に行動することにより、岡山のまちなかの問題点を体感し、その実態を把握するとともに、課題解決に向けた知見を得るための方法論を自ら考える。

まちなかの問題を定量的に把握するためには、どんな情報あるいはデータが必要なのか、また、それらはどのようにすれば収集できるのか?などデータ解析のための情報を収集する能力を養う。

プロジェクト③ 情報・データ解析及び提言力を養う

地域課題を客観的かつ定量的に解析することで、魅力ある “おかやま”に向けた有益な情報を得るための解析能力と、それらを整理しわかりやすく政策提言できる能力を養う。

“おかやま”のまちづくりに貢献できる

“熱い心”と“冷静な頭脳”を持った人材を育成する。3

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プロジェクトスケジュール

2012年5月~8月 魅力ある“おかやま”のためのまちづくりの課題抽出2012年9月 富山市、金沢市におけるフィールドワーク(事前勉強会、調査報告)

2012年5月~6月 地理情報システム(GIS)を用いた空間解析手法の修得

2012年6月~7月 統計データを用いた統計解析、多変量解析手法の修得

2012年9月~2013年2月 “おかやま”の防災まちづくりのための調査、解析2013年3月~ “おかやま”の防災まちづくりのための政策提言

“おかやま”の課題の確定

防災まちづくり!!

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プロジェクト① 課題発見力を養う

プロジェクト② 情報・データ収集力を養う

プロジェクト③ 情報・データ解析及び提言力を養う

地域に入って、、、

研究室で解析する

対象者:岡山大学地域環境計画学研究室(阿部宏史・氏原岳人研究室)学部4年生 4名

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研究背景岡山地域

津波“非常襲”地域

津波到達まで3時間以上、津波高は最大2~3m程度

“おかやま”に抱く津波に対する3つの危険

①日本一安全な土地“おかやま”??②津波到達までの時間が長い

→漠然とした安心感

③過去の被災経験がなく、当然知識の伝承もない。

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「津波が来るまで3時間以上あるから十分に逃げられる。その間に家財一式を車に詰め込み逃げればよい」という安易な声も。。。

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津波“常襲”地域【10分前後で到達】

津波てんでんこ→減災の視点

おかやま【津波到達まで長時間】人的被害ゼロも可能?

→防災の視点

研究目的

津波到達まで3時間は住民の漠然とした安心感を生んでしまう一方で、しっか

りとした津波避難計画を立て、行動できれば人的被害ゼロも実現可能できる

“人的被害「ゼロ」”実現に向けた

“OKAYAMA”方式の津波避難計画を考える

我われ研究室の持つ知識や技術を最大限活用して、科学的根拠を蓄積し、

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プロジェクトの流れ

1. 津波防災意識・避難行動に関するアンケート調査の作成・実施

2. 津波防災意識に関する実態把握

3. 南海トラフ巨大地震を想定した避難行動(避難タイミング、移動手段、避難ルート等々)の推計及び課題検討 →現段階(2月27日時点)

→ 津波避難時の交通行動の推計や避難道路のネットワーク解析

1. 解析結果を、アンケート回答者(住所記入者を対象)に送付

2. 住民ヒアリング調査の実施、小中学校などの教育施設での津波意識啓発等々

3. 津波避難計画の検討及び、アンケート調査の継続実施

4. 岡山市沿岸部における津波避難計画の検討

2012年度2013年度

実施

2013年度以降実施

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解析結果を地域へフィードバック

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津波避難行動・意識調査の概要

日時 平成24年11月21日(配布)~平成24年12月2日(締め切り)

対象者 岡山市南区沿岸部在住の世帯主

配布方法 直接配布・郵送回収

津波避難行動・意識調査の概要

8

1.あなた自身について回答者の属性など

2.東南海・南海地震について津波に対する危機感、知識など

3.あなたと地域の関わりについて近所とのつながり、町内会、自主防災組織の加入状況など

4.防災対策について避難場所や避難経路などを決めているか、津波に対する備えはできているかなど

5.南海トラフ巨大地震を想定した避難行動について避難タイミング、移動手段、避難ルート等々

岡山市沿岸部の住民の津波避難行動・意識を約50問の設問、計8ページにわたって調査

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調査風景

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調査風景

非常に高い回収率

444名の思い

岡大学章付きボールペン

アンケート調査票

回収されたアンケート調査票(1000部中、444部)

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単純集計(2012年12月20日記者発表の数値を最終版として修正)

津波常襲地域住民との津波防災意識の比較• 東南海地震や南海地震に対する関心度は、津波常襲地域である和歌山県の調

査では、「非常に関心がある」住民が約45%であるのに対して、岡山市沿岸部の住民は約27%である。

• 東南海地震や南海地震が「明日起きても不思議はない」と考える住民は、和歌山県では約47%であるのに対して、岡山市沿岸部の住民は約24%である。

→津波常襲地域の住民と比較して、岡山市沿岸部の住民は、津波に対する関心や危機意識が低い。

岡山市沿岸部住民の津波対策(備え)の現状• 津波避難時の場所や、避難経路、交通手段は、それぞれ約41%、約31%、約

37%の住民が既に決めている。その一方で、非常持ち出しグッズを準備してい

る、津波避難訓練に参加したことがある、津波の勉強会(ワークショップなど)に参加したことのある住民は、それぞれ約17%、約2%、約4%と顕著に低い。

→津波避難対策を頭で考えている住民はある程度いるが、(そもそも避難訓練や勉強会などのイベント自体が多くないが、)

実際に体を動かして津波に備える住民はほとんどいない。

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要援護者の実態• 要援護者(*世帯主対象)は住民の約5%(サンプル20名)。家族・近所に要援護者がい

る住民は、約28%(120名)。

• 要援護者(*世帯主対象)の約71%(サンプル15名)は、誰かに助けてもらう段取りができてない。そのうち、約11%は、助けてもらう人自体がいない。

→地震発生時に逃げたくても逃げられない住民が相当数存在する。

津波避難計画において、要援護者への対応は最重要課題になる。「限られた時間で如何に要援護者を助けるか!」

岡山では“津波てんでんこ”の発想は導入しにくい。(時間があればどうしても助けにいくはず)

平日の午後8時に東南海・南海地震が発生し、岡山県沿岸部では震度6強の揺れが観測されました。地震発生から数分後に、あなたの居住する地域に大津波警報が発令され、高さ3mの津波が約3時間後に到達すると発表されました。また、市町村からの避難指示も出されています。 これらの情報を受けて、あなたは安全な場所に避難することにしました。なお、このとき、あなたは自宅にいて、同居している家族全員と一緒にいる状況です。

南海巨大トラフ地震を想定した津波避難行動

以下の状況をイメージしてもらい、その際の避難行動を回答してもらう

*本調査の回答は世帯主が対象となっている。そもそも要援護者の方は世帯主ではない場合が多いと考えられる。

単純集計(2012年12月20日記者発表の数値を最終版として修正)

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津波避難行動の実態• 約25%の住民がすぐ避難する(10分以内)一方で、荷造りなどをして1時間以上

経過後に避難する住民も約12%存在する(最頻値は約11分~30分で約37%)。

• 約45%の住民が自動車で避難を開始する。(徒歩での避難は約45%程度)

• 約79%の住民が実際に「避難する」「避難する可能性が高い」一方で、残りの約21%が大津波警報が発令されても「避難する可能性が低い」「避難しない」。

→国(中央防災会議)の指針では、原則「徒歩」ではあるが、実際には自動車で避難する住民が数多く存在する。また、「逃げない」層も、ある一定程度いる。

①津波避難時の自動車利用の可能性、②“逃げない(残る)”層への対応策等々、おかやまの実情にあわせて検討する必要がある。

単純集計(2012年12月20日記者発表の数値を最終版として修正)

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この他、これまでに実施した分析

1. 津波防災のための「備え行動」と「地域との関わり合い」との関連分析

2. 津波防災のための「備え行動」の類型化とその特性の把握

3. 避難時のタイミング・移動手段と個人・世帯属性との関連性

4. 津波避難意向(逃げるか、逃げないか)に関する要因モデル分析

5. 徒歩避難シミュレーション

南海トラフ巨大地震を想定して

2. 5. のみを抜粋して紹介

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似たもの同士を集めて、各グループの特徴を探る。(クラスター分析、統計的検定)

Ex.防災知識だけあって、行動に移せていない頭でっかちはどんな人が多い?(あくまでも統計的に)

津波防災のための「備え行動」の類型化とその特性の把握

津波防災に関する「思考」、「行動」、「知識」に着目して岡山市沿岸部住民の備え行動の実態をグルーピング

来年度からの津波防災に関する意識啓発のための基礎資料とするため、

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②似た者同士を数学的に類型化(クラスター分析)

③各グループの特徴(個人・世帯属性)を統計的に検定する。

①各住民の津波防災の備え行動を定量化

住民

ウォード法:クラスター内のデータの平方和を最小化

④どんな人?

Ex.高齢者夫婦

Ex.若者の単身世帯

津波避難時の避難場所を決めている

津波避難時の避難経路を決めている

津波避難時の交通手段を決めている

津波避難に備えて非常持ち出しグッズを準備している

地域の津波避難訓練に参加したことがある

ワークショップ等の津波に関する勉強会に参加したことがある

津波ハザードマップを閲覧したことがある

津波警報・大津波警報・津波注意報の違いがわかる

避難勧告・避難指示の違いがわかる

思考

行動

知識

津波防災に関する備え指標

Ex.決めていれば1ポイント

個人・世帯属性

性別年齢高齢者人数世帯構成居住形態居住年数

例えば、、、

津波防災のための「備え行動」の類型化とその特性の把握

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思考 行動 知識

タイプ

クラスター1 57 0.439 0.421 0.965 行動タイプ

クラスター2 44 3.000 0.250 2.432 オールラウンドタイプ

クラスター3 78 0.282 0.103 2.359 知識タイプ

クラスター4 44 0.000 0.000 0.000 無対策タイプ

クラスター5 36 2.583 0.167 1.000 思考タイプ

クラスター内の住民の平均値最大3ポイント

思考タイプ(避難方法等を頭で考えているが、、):→ その土地に長く住んでいる住民

行動タイプ(とりあえず行動しているが、、) :→ 比較的若い層(30代以下)

知識タイプ(津波の知識は持っているが、、) :→ 比較的高齢層(60代)

オールラウンドタイプ(満遍なく備え行動が

できている) :→ 70歳以上の高齢者夫婦のみ世帯

無対策タイプ(何にもしていない):→ 単身世帯

年齢** 高齢者人数* 世帯構成** 居住年数**

高 31-40年

低高 30代以下 10年以内低 60代高 60代低

三世代同居夫婦のみ核家族

単身世帯高 単身世帯低

独立性の検定 ***  : 1%有意 残差分析  : 1%有意**  : 5%有意  : 5%有意*  : 10%有意

知識タイプ(n=78) 有意

思考タイプ(n=36) 有意

行動タイプ(n=57) 有意

無対策タイプ(n=44) 有意

低 30代以下 いない 10年以内オールラウンドタイプ(n=44) 有意

高 70歳以上 いる

津波防災のための「備え行動」の類型化とその特性の把握

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大規模徒歩避難シミュレーション

岡山市南区の浸水想定区域内の全建物データ

(ゼンリン住宅地図)

道路ネットワークデータ(拡張版全国デジタル道路地図データベース)

南海トラフ巨大地震時の浸水想定区域*地震発生から3分後に堤防が破壊された場合

(内閣府)

GISを用いて、約5万棟(岡山市南区)を対象とした大規模徒歩避難シミュレーション解析

浸水想定区域外まで逃げるのにどれくらいかかるか?

地理情報システム(GIS)を用いてデータベースを構築

対象建物数 50,219棟

各種学術研究を参考にして、震災時の徒歩速度を設定

高齢者:徒歩速度 時速1.8㎞ 【液状化、建物倒壊や疲労などを想定→1.8㎞から速度20%減】

高齢者以外:徒歩速度 時速3.6㎞ 【液状化、建物倒壊や疲労などを想定→3.6㎞から速度20%減】

前面道路から幹線道路まで

全道路ネットワークを再現

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南海トラフ巨大地震時において地震発生から3分後に堤防が

破壊された場合を想定(内閣府)

大規模徒歩避難シミュレーション

25.6%24.3%

17.0%

10.6%8.2%

5.2% 4.2%2.3% 1.2% 0.7% 0.4% 0.2% 0.1%0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

建物割合

建物数(棟)

避難移動距離

浸水想定区域外に逃げる場合、3㎞以上の避難が必要になる住民が

9%(4,500棟)存在する。

3㎞以上

どれくらいの距離を逃げないといけないのか?

建物割合

建物数

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0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

100.0%

0h 0.5h 1h 1.5h 2h 2.5h 3h

危険率

避難開始のタイミング

高齢者以外

(徒歩速度20%減)

高齢者(1.8km/h)

高齢者(徒歩速度20%減)

高齢者以外(3.6km/h)

仮に津波来襲までを「3時間」とした場合

・高齢者とそれ以外の住民とでは、避難開始のタイミングによって危険率が大きく異なる。

・(避難開始が揺れて1時間後の場合、)高齢者の徒歩速度が20%減速すると、危険率が2倍近く上昇→液状化、建物倒壊の程度によって被害がより甚大になる可能性がある。

危険建物率=3時間で逃げ切れない可能性の高い建物数/浸水区域内建物数

南海トラフ巨大地震時において地震発生から3分後に堤防が

破壊された場合を想定(内閣府)

大規模徒歩避難シミュレーション

危険建物率

避難開始のタイミング

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高齢者以外のケース(震災時:徒歩速度時速3.6㎞)

(高齢者以外の場合)区域外までの避難所要時間は2時間以内である。

言い換えれば、揺れて1時間以上後に逃げた場合には、津波来襲が3時間

の場合には逃げ切れない住民が発生する可能性がある。

南海トラフ巨大地震時において地震発生から3分後に堤防が

破壊された場合を想定(内閣府)

大規模徒歩避難シミュレーション

浸水想定区域

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高齢者のケース(震災時:徒歩速度時速1.8㎞)

(高齢者の場合)津波来襲が3時間後の場合には、揺れてすぐ逃げたとしても、

逃げ切れない可能性のある住民(182棟)が存在する

南海トラフ巨大地震時において地震発生から3分後に堤防が

破壊された場合を想定(内閣府)

大規模徒歩避難シミュレーション

浸水想定区域

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浸水区域内の標高及び12m以上の建物分布

浸水想定区域外までの所要時間が非常に長い地区には、緊急一時避難場所として活用できる可能性のある建物が非常に少ない。

大規模徒歩避難シミュレーション

浸水想定区域

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岡山市沿岸部(藤田) 3階以上の建物はほとんど見当たらない

震度分布図 液状化危険分布図

南海トラフ巨大地震を想定

出典:岡山県危機管理課HP

岡山県危機管理課:2013年2月15日発表

大規模徒歩避難シミュレーション

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そのことを十分に踏まえた上で言えることは、

津波来襲までに3時間あったとしても時間的に余裕がないことをまず理解すること。(地域住民は、適切な情報を収集したら、焦らず速やかに避難を開始すること。)

液状化、建物倒壊によって、被害がより甚大になる可能性が高いこと。

津波避難は「原則徒歩」ではあるが、科学的根拠を十分に蓄積した上で、地域の実情にあわせて自動車避難などの可能性も具体的に考えること。

多くの住民が長距離を移動しなければならない可能性があるため、まずは浸水想定区域内の既存施設を対象として、「場所」、「高さ」、「収容可能人数」に配慮した津波災害対応型の緊急一時避難場所の指定を早急に進めること。

「地域の実情に合った津波避難計画」と「津波に対する住民意識の高まり」があれば、

岡山県は津波による「人的被害をゼロ」にできる地域である。

今回の徒歩避難シミュレーションは、あくまで一つのシナリオ結果である。

大規模徒歩避難シミュレーション

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1. 津波防災意識・避難行動に関するアンケート調査の作成・実施

2. 津波防災意識に関する実態把握

3. 南海トラフ巨大地震を想定した避難行動(避難タイミング、移動手段、避難ルート等々)の推計及び課題検討 →現段階(2月27日時点)

→ 津波避難時の交通行動の推計や避難道路のネットワーク解析

1. 解析結果を、アンケート回答者(住所記入者を対象)に送付

2. 住民ヒアリング調査の実施、小中学校などの教育施設での津波意識啓発等々

3. 津波避難計画の検討及び、アンケート調査の継続実施

4. 岡山市沿岸部における津波避難計画の検討

2012年度2013年度

実施

2013年度以降実施

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解析結果を地域へフィードバック

プロジェクトの流れ

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本教育研究プロジェクトは、平成24年度岡山大学「大学機能強化戦

略経費」、岡山大学地域総合研究センタープロジェクトの一環として実施しました。また、津波避難行動・意識調査では444名の南区住民の方々にご協力頂きました。

深く御礼申し上げます。