グローバルスタンダード最前線 apt/ttc bsg(標準...

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NTT技術ジャーナル 2016.860

グローバルスタンダード最前線

一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)は2007年に普及推進委員会を設置して,東南アジア地域へのICTを利活用した社会的課題解決ソリューションのケーススタディ,それらのケーススタディを周辺諸国へ展開していくうえでの利用標準の作成を行っています.2012年からは,BSG(標準化格差是正)専門委員会へ活動を移行しています.それらの活動は,ASTAPの標準化格差是正エキスパートグループ(EG-BSG)に「ケース ・スタディ ・チーム」を設置し,アジアルーラルエリアにおけるICTを利活用した社会的課題解決ソリューションの展開 ・普及を行っています.

ケーススタディ

一般社団法人情報通信技術委員会(TTC) は2₀₀₇年 か ら,APT(Asia-Pacifi c Telecommunity)のJ2(人材開発研究交流),およびJ₃(ICTテレセンタ構築)の支援を得て次の ₅ つのパイロットプロジェクトを実施しました.

① インドネシアの西スマトラのタナダタール県で,医療関連機関を結ぶ無線ネットワーク構築と医療情報データベース構築の医療ソリューション

② インドネシアのカリマンタンのパランカラヤで,パランカラヤ大学 と 連 携 しM2M(Machine to Ma chine)ネットワークを活用した,乾季に発生する泥炭地火災を

抑制する環境ソリューション(図1)③ マレーシアでのボルネオのバリ

オ村で,サラワク大学と連携した光ファイバネットワーク構築と教育 ・ 医療ソリューション

④ フィリピンのサンパブロ市のパラパキン湖で,M2Mネットワークを構築しアテネオ大学と連携したティラピア養殖での収穫量改善の農・水産業ソリューション(図 ₂ )

⑤ ベトナムのホーチミンで,ホーチミン工科大学と連携し,M2Mネットワーク構築による海老養殖の収穫量改善の農 ・ 水産業ソリューション

ICTソリューション導入ハンドブック制定

各国で実施した,農水産業,環境,教育,医療分野の ₅ つのICTソリューションは,東南アジア地域だけでなく,類似の課題を抱えている新興国のルーラル地域でも有益です.他国でも同様なソリューションを提供できるように,ケーススタディをまとめた「遠隔地域でのICTソリューション導入に向けたケーススタディハンドブック」の作成を行いました.各国のケーススタディを記述するとともに,各ソリューション実施にあたり一般化した場合,各国への展開した場合の共通項目をまとめました.2₀₁4年 ₈ 月に開催され

運河

モニタ装置水位 3(泥炭地)

モニタ装置水位 2(泥炭地)

データサーバ

3.0 km運河

RiverRiverRiverRiver

3.9 km

2.6 km

1.3 km

300 m水位 1(ダム 2)

モニタ装置

図 ₁  インドネシア カリマンタン泥炭地火災抑制ソリューション

APT/TTC BSG(標準化格差是正)専門委員会の活動

岩い わ た

田 秀ひでゆき

行NTT研究企画部門

NTT技術ジャーナル 2016.8 61

たASTAP(APT Standardization Program)-24に てASTAPレ ポ ー ト“Handbook t o I n t r oduce ICT Solutions for the Community in Rural Areas” として承認されました.

ガイドライン策定

ハンドブックでは,ケーススタディの一般化を行いましたが,次のステップとして,APTの支援を得て,ケーススタディから,現地に根ざしたICTを利活用した社会課題解決ソリューションの実装,運用,維持を支援するためのノウハウを共有化するガイドラインを作成することとしました.具体的にはASTAPの標準化格差是正エキスパートグループ(EG-BSG)でまとめてきた各分野のケーススタディを分野ごとに深堀して実施事項のノウハウを展開できるガイドラインを作成しました.

ガイドラインの概要は以下のとおり

です.① ソリューションを導入する,現

地サイトの現況調査の必要性と実施手順

② ソリューション導入による,現地への効果検証の必要性と実施手順

③ ソリューション導入費用の見積もり方

④ ソリューション導入の対費用効果の検証の必要性と実施手順

⑤ ソリューション実施に必要なネットワーク(基幹系,センサ網)設計,設備選定方法

⑥ ソリューション策定,データ解析の責任者確定の必要性

⑦ ソリューション運用者,保守者の確保の必要性

⑧ 運用,保守のためのICT人材育成⑨ 事業持続性のための課題作成には,各プロジェクトのパート

ナーであるサラワク大学(マレーシア),アテネオ大学(フィリピン),パランカラヤ大学(インドネシア),カ

セサート大学(タイ)のメンバーを中心に,当事者の視点で作成しました.

今後の展開

標準化というと,技術的な項目の標準化が一般ですが,新興国においては,実施手順等のより実用的な標準化が求められています.標準化格差是正の活動として,ICT利活用の社会課題解決ソリューション提供のためのガイドライン(利用標準)を作成していますが,アジア太平洋地域外でも活用できるものであり,アフリカ地域などでも有益と考えています.日本のICTシステムと現地大学等が作成したソリューションをバンドルしたパイロットモデルは現地に根ざした展開が可能ですが,どのように事業持続性を保つかが最大の課題であり,今後は持続可能なビジネスモデルや現地ステークスホルダーの牽引力が必要とされます.

センサ: 溶存酸素pHメータ湿度

タイフィールドサーバ

パラパキン湖 入口

センサ: 溶存酸素pHメータ気温湿度IPカメラ

日本フィールドサーバワイヤレスルータ

コンピュータテレセンタ

アクセスポイントネットワークゲートウェイ

ネットワーク図

出口

センサ: 溶存酸素水温IPカメラ水中カメラ

フィリピンフィールドサーバ

図 2  フィリピン養殖魚の収穫改善ソリューション

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