Ⅰ.小児等医療提供ネットワーク構築 · 12...
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平成 28 年度小児等在宅医療推進事業報告(九州大学病院)
Ⅰ.小児等医療提供ネットワーク構築
1.在宅療養児対応の診療所拡充
1.1 福岡県医師会への事業説明及び意見交換
(1)事業説明および意見交換の概要
本事業の継続と発展のためには、福岡県医師会が中心となって策定している地域医療構
想への参画が必要であり、事業の説明と連携協力のための意見交換を行った。
① 第 1回事業説明および意見交換会
日時:平成 28年 4月 13日(水) 18:00~18:50
場所:福岡県医師会館 6階 研修室 3
参加者:瀬戸理事、戸次理事、桑野理事、稲光理事(福岡県医師会)、吉良医師(福
岡市立こども病院)、落合医師、横大路課長補佐(九州大学病院)、馬場課長補佐、猪
毛尾在宅医療係長、藤松主任技師(福岡県保健医療介護部高齢者地域包括ケア推進
課)
内容:福岡県担当課より本事業の概略、落合より当院の取組みを説明した。小児科診
療所と在宅療養支援診療所に対象を分けた研修会を検討し、研修会の周知は県医師
会が協力することになった。
② 第 2回事業説明および意見交換会
日時:平成 28年 6月 1日(水) 18:00~19:00
場所:福岡県医師会館 6階 研修室 3
参加者:桑野理事、稲光理事(福岡県医師会)、吉良医師(福岡市立こども病院)、落
合医師、横大路課長補佐(九州大学病院)、馬場課長補佐、猪毛尾在宅医療係長、藤
松主任技師(福岡県保健医療介護部高齢者地域包括ケア推進課)
内容:落合より研修案を、福岡県より福岡県小児等在宅医療推進事業検討会議案を説
明した。
③ 第 3回事業説明および意見交換会
日時:平成 28年 8月 3日(水) 16:30~17:10
場所:福岡県医師会館 6階 研修室 3
参加者:桑野理事、辻理事(福岡県医師会)、落合医師、横大路課長補佐、黒岩事務
員(九州大学病院)
内容:研修概要を説明の後、在宅療養支援診療所への案内状の送付の承認を得た。
医師会との連携方法を確認した。
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1.2 診療所医師を対象とした在宅医療講習会実施 (1)平成 28年度福岡県小児等在宅医療推進事業 小児在宅医療懇話会
小児科診療所と在宅療養支援診療所を対象に、小児在宅医療に対する理解を深めてもら
い、病院、小児科診療所、在宅療養支援診療所との協力体制について意見交換を行うために
下記懇談会を行った。小児科診療所においても時間の配慮をした外来診療を行っている事
例や、休憩時間に在宅訪問を行っている事例などが報告された。
(2)平成 28年度福岡県小児等在宅医療推進事業 小児在宅医療研修会
小児科標榜診療所、在宅療養支援診療所、地域の中核病院、在宅療養支援病院、訪問看護
ステーション、在宅療養児に対応している相談支援事業所を対象小児在宅医療及びその支
援について情報提供を行うとともに、意見交換を行うため、下記研修会を行った。大阪小児
科医会 田中祥介先生より在宅療養に関連する診療報酬について、にのさかクリニック 二
ノ坂保喜先生より在宅医における小児科医との連携との意義について講演が行われた。
① 小児在宅医療懇話会
日時:平成 28年 9月 16日(金) 19:00~21:00
場所:福岡県医師会館
研修内容:平成 28年度福岡県小児等在宅医療推進事業 小児在宅医療懇話会
課題提供1 福岡県における小児在宅医療の現況
九州大学病院総合周産期母子医療センター新生児内科
病棟主任 落合 正行
課題提供2 在宅療養支援診療所における小児への対応、小児科診療所での医療的
ケア児の診療
小さな診療所 所長 京極 新治 先生
村上こどもクリニック 院長 村上 龍夫 先生
主催:福岡県、九州大学病院、福岡大学病院、福岡市立こども病院、聖マリア病院、
飯塚病院、北九州市立総合療育センター
共催:福岡県小児科医会、福岡地区小児科医会、北九州地区小児科医会、
筑豊小児科医会、宗像小児科医会、筑後小児科医会
参加者(下表):
所属機関 人数
小児科標榜診療所 29名
在宅支援診療所 17名
病院 5名
事業関係者 27名
計 78名
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② 小児在宅医療研修会
日時:平成 28年 12月 15日(木)19:00~21:00
会場:九州大学医学部百年講堂大ホール
研修内容:平成 28年度福岡県小児等在宅医療推進事業 小児在宅医療研修会
第1部 小児在宅医療の診療報酬~診療報酬改定から視た小児在宅医療の推進
田中小児科医院 院長(大阪小児科医会) 田中 祥介 先生
第2部 小児在宅医療における在宅医の役割と医療連携
にのさかクリニック 院長 二ノ坂 保喜 先生
主催:福岡県、九州大学病院、福岡大学病院、福岡市立こども病院、聖マリア病院、
飯塚病院、北九州市立総合療育センター
共催:福岡県小児科医会、福岡地区小児科医会、北九州地区小児科医会、
筑豊小児科医会、宗像小児科医会、筑後小児科医会
後援:福岡県医師会
参加者(下表):
所属機関 人数
中核病院 23名
在宅療養支援病院 2名
小児科標榜診療所 13名
在宅療養診療所 19名
訪問看護ステーション 39名
相談支援事業所 23名
行政 8名
社会福祉事業所 4名
計 131名
事業拠点病院 31名
福岡県(事業担当) 3名
講師(小児科診療所、在宅療養診療所) 2名
合計 167名
1.3 退院時に小児科診療所、在宅療養支援診療所のペア診療のコーディネ
ート
(1)当院総合周産期母子医療センター新生児内科部門における退院支援実績
平成 28 年度は 23 例が在宅療養へ移行した。うち 5 例が在宅療養支援診療所と、さらに
12 例で小児科診療所に連携することができた。小児科診療所への依頼内容は日常診療や予
防接種であり、医療連携センターを通じてマッチングを行った。情報提供書だけでなく担当
医から診療所へ電話連絡等を行い、より緊密な連携を図った。
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2.在宅療養児対応の訪問看護ステーション拡充
2.1 小児訪問看護研修の開催
(1)研修概要
本年度小児に対応できる訪問看護の拡充および小児訪問看護の発展を目的に、福岡地区
では九州大学病院と福岡大学病院、福岡市立こども病院が協働し、小児訪問看護研修を 5 回
に渡って開催した。小児の訪問看護にこれから取り組む訪問看護ステーションを対象にし
た実習を福岡市立こども病院が担当し、すでに小児の訪問看護に取り組んでいる訪問看護
ステーションに向けた研修を九州大学病院と福岡大学病院で担当した。九州大学病院で行
った小児訪問看護研修の詳細は以下の通りである。
小児訪問看護研修 九州大学病院担当
日時:2016 年 9 月 9 日 18:00~20:00
参加者:訪問看護師 36 名
内容:講義
・小児の人工呼吸器管理
講師:野田洋子看護師(アムナス博多訪問看護ステーション所長)
・人工呼吸器・カフアシスト(機器説明)
講師:西谷透氏(メディック呼吸器センター)
機器実演
トリロジー200、PB560、カフアシスト E70
講師:メディック呼吸器センター
(2)アンケート結果
参加者の属性、研修全体への満足度、今後の小児訪問看護の実践について問い、今後の小
児訪問看護の拡充や、訪問看護と病院との連携を強化する上で参考にする目的で参加者へ
アンケート協力を依頼した。(有効回収率 100%)参加者の属性は以下の通りであった。
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・研修全体への満足度について
研修全体への満足度を以下に示す。
0 10 20 30 40
今回のような研修に以前から参加したいと思ってい
た
研修を受講してよかった
今後もこの研修を継続していくべきだ
この研修目的は明確に設定されていた
自分に必要な知識やスキルを学習できた
職場に戻って、学習内容を活用してみようという気
持ちになった
小児の人工呼吸器管理の特徴について理解できた
人工呼吸器管理の子供を看る上でのポイントを理解
できた
今後、人工呼吸器管理の子供の訪問看護に取り組め
る
研修全体について
そう思う どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない そう思わない
無回答 どちらともいえない
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・今後の小児訪問看護の実践について
今後の小児訪問看護の実践について以下に示す。全ての項目において「どちらともいえな
い」という項目の回答が多く、小児訪問看護の実践についてはまだ十分な環境が整ってい
ないことが示唆された。しかし、「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の回
答は少なく、今後引き続きこのような情報共有できる場を設けながら環境を整えていく
ことによって、より小児の訪問看護が充実してくるのではないかと考える。
・自由記載について
自由記載における参加者の声の一部を以下に記載する。
・とても実践的な内容で良かった。
・また人工呼吸器の研修をしてほしい。回路の固定方法など色々な症例を写真でみたい。
・小児のフィジカルアセスメントについての研修を行ってほしい。
・小児看護の経験が少ないが今後活用し、いつでも対応できるように努めたい。
0 20 40
今後これまでに培った経験を小児訪問看護に生かす自信がある
小児の医療的ケアについての知識に自信がある
在宅環境下での医療的ケアについての知識に自信がある
訪問看護師として小児の利用者のフィジカルアセスメントができ
る
訪問看護師として小児の利用者の変化を予測した観察ができる
小児訪問看護の役割を理解した看護ができる
小児訪問看護において病院医師・看護師、
在宅医・相談支援専門員等の役割を理解し、連携することがで…
多職種から小児の利用者に関する相談を受けることができる
重症心身障害児をもつ親の気持ちや、障害受容・家族看護を理解
した看護ができる
小児訪問看護について学んだり、相談する環境が職場に整ってい
る
小児訪問看護の実践について
そう思う どちらかといえばそう思う
どちらともいえない どちらかといえばそう思わない
そう思わない 無回答
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-研修ポスター- -研修の様子-
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2.2 訪問看護ステーションとの同行訪問
本年度、訪問看護ステーションとの退院前後の同行訪問の実施が目標であったが、退院前
後の同行訪問をシステム化するためには、院内での細部にわたる検討が必要である。
そのため、同意書等、同行訪問に必要な書類を作成し、NICU・GCU の病棟看護師長、医
療連携センター看護師長と共に打ち合わせを行いながら、まずは看護部へ計画提出を行っ
た。今後、更に検討を行いながら、また既に実施している他施設へ助言を求めながら来年度
の実施に向けて引き続き検討を行っていく。
2.3 在宅支援マニュアル(福岡県版)改訂
小児の訪問看護を行う際に、入院していた病院間のケア方法の違い等による困難感を出
来る限り少なくし、統一したケアを子どもに提供できることを目的として、昨年度在宅支援
マニュアル(福岡県版)(計画時の旧名:退院調整ガイドライン(福岡県版))の作成を行っ
た。内容の精錬を目指しながら、本年度も各関係機関の意見を参考に修正を行い、改訂版を
作成した。引き続き次年度も内容の精錬を目的に改訂を行うと同時に、在宅支援マニュアル
の普及に向けても活動していく必要があると考える。
福岡県小児等在宅医療推進事業
在宅支援マニュアル(福岡県版)
平成28年2月 第1版平成29年2月 第2版
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3.在宅療養児(及び移行予定の児)の院内連携
3.1 小児診療科の連携会議の開催(月 1回)
院内で在宅療養児に関わる部署(新生児内科、新生児外科、小児科、小児外科、小児救命
センター、臨床遺伝部、医療連携センター)の医師、看護師により構成されている定例会議
を月 1 回開催しており、NICU/GCU、PICU における長期入院児、今後在宅療養が必要になる
見込みの児、入退院を繰り返している在宅療養児等の情報共有を行っている。この会議には、
在宅療養支援診療所の医師も参加しており、在宅療養児に関する病院、診療所間の情報共有
も行っている。
4.在宅療養児(及び移行予定の児)の医療機関連携
4.1 重症児情報の共有化
九州大学病院では、院内の職員に在宅療養指導を行っている患児について、電子カルテ上
で把握できるようシステム改正の提案を行っている。このシステム改正が整えば、どの患児
が来院しても、医療的ケアの必要度や在宅サービスの関連機関等の把握がしやすくなり、患
児やその家族が安心して受診又は療養できる環境を提供することが可能となり、医療者と
の情報共有が早期にできることが期待される。
5.小児医療従事者とのネットワーク作り
5.1 学会、研究会、協議会等への参画・参加
医療的ケア児の在宅支援の取り組みは、厚生労働省の政策、推進もあり、全国で活発に
行われつつある。児の医療及び在宅療養への支援について、下記の学会、研究会、協議会
への参加を通し、情報の収集と共にネットワーク作りを行った。
【参加学会、研究会、協議会】
・定例(毎月)の福岡都市圏新生児医療連絡会 FMNNカンファレンス
(7月、12月は FMNN/FMPN JOINTカンファレンス)
・第 68回九州新生児研究会(2016年 5月 28日、山口県)
・第 52回日本周産期・新生児医学会学術集会 (2016年 7月 16-18日 富山県)
・第 6回日本小児在宅医療支援研究会 (2016年 9月 3日、埼玉県)
・文部科学省 課題解決型高度医療人材養成プログラム
鳥取大学・筑波大学 合同フォーラム (2016年 10月 30日)
・第 69回九州新生児研究会 (2016年 11月 26日、大分県)
・第 61回日本新生児成育医学会・学術集会(2016年 12月 1-3日、大阪府)
・第 3回東海三県小児在宅医療研究会(2017年 2月 12日、名古屋市)
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Ⅱ.医療、福祉、教育との連携
1.地域のレスパイトの拡充
1.1 行政、関係機関との意見交換会
医療的ケア児の在宅療養を支えている家族のためのレスパイトは、必要不可欠なもので
ある。医療的ケア児のレスパイトの問題点を洗い出し、医療・行政・福祉・教育が連携して、
どの様に支援を行うべきか検討する為、下記の会、シンポジウムで意見交換を行った。
① 『平成 28年度 第 1回福岡県小児等在宅医療推進事業 意見交換会』
日時:2016年 5月 30日(月) 18:00~19:50
参加者:福岡県、九州大学病院、福岡大学病院、福岡市立こども病院、聖マリア病院、
飯塚病院、北九州市立総合療育センター、福岡市、久留米市、飯塚市より
計 45名
<レスパイトに関する意見交換内容>
・レスパイトを目的とした、病院での児の医療評価入院実施が必要。
・福祉型のレスパイトは経営的に困難がある。
・医療型の施設指定は、病院、療養施設、介護老人保健施設しか取れない。
・小児慢性特定疾病児童等自立支援に関して、レスパイトを制度的に検討し
たい。(福岡県からの意見)
② 『平成 28年度 第 2回福岡県小児等在宅医療推進事業 意見交換会』
日時:2016年 10月 31日(月) 13:00~15:00
参加者:福岡県、九州大学病院、福岡大学病院、福岡市立こども病院、聖マリア病院、
飯塚病院、北九州市立総合療育センター、福岡市、北九州市より
計 34名
<レスパイトに関する意見交換内容>
・乳児の医療的ケア児のレスパイトの為の入所先が無い。
・酸素吸入や人工呼吸器装着の児に関しては、特別支援学校でも保護者の
付き添いが必要である。保護者の負担軽減の為に、福岡県でも学校にヘル
パーや看護師が入れる仕組みを検討して欲しい。
③ 『平成 28年度 福岡県小児等在宅医療推進事業 小児在宅医療シンポジウム』
日時:2017年 1月 15日(日) 13:00~16:35
シンポジウムでのレスパイトに関する意見交換については、
当報告書の『3.1 研究会・シンポジウムの開催』に詳細を記述。
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2.地域の医療、福祉、教育の連携
2.1 地域自立支援協議会への参画
医療的ケアが必要な児(障がい児等)の福祉サービスの利用は必要不可欠である。その相
談窓口やコーディネート機能を担うのは相談支援専門員である。しかし相談支援専門員と
の情報共有を行い、医療的ケア児の対応は事業者数が少ないことや、対応実績がないなどの
理由で円滑な在宅療養に結びつかないことを把握し、前年度の事業報告でも示してきた。
本年度は、相談支援事業の円滑な運営を司る機関として「地域自立支援協議会」へ働きか
けを行い、相談支援事業の活性化に繋がる様、活動を実施した。
福岡県内の自立支援協議会は 29 箇所ある。その内、福岡地区内の協議会は、7 箇所あり、
本年度は 4 箇所の協議会に参加し活動状況を確認した。
行政を中心に協議会内で部会が設置されており、相談支援部門を立ち上げているが、成人
を中心とした活動が多く、医療的ケアが必要な小児に着目しているところはほぼなかった。
医療ケアが必要な小児が在宅療養をしている現状の周知がなされていないこと、行政窓口
も認識に温度差があることがわかった。しかしながら、積極的に医療ケア児を地域で支援す
る取り組みをしている行政区もあり、自立支援協議会内でも地域差がある。これからは在宅
サービスのコーディネートが中心となっていくことは明らかとなっているため、自立支援
協議会への働きかけは継続的に必要と考える。
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3. 多職種研究会、勉強会等
3.1 研究会・シンポジウムの開催
医療的ケア児に関わる医療、福祉、行政分野の多職種の人々との、医療的ケア児の在宅療
養におけるレスパイトの現状、問題点把握及び意見交換の為、平成 29 年 1 月 15 日(日)、
九州大学医学部百年講堂大ホールにて『平成 28 年度福岡県小児等在宅医療推進事業 小児
在宅医療シンポジウム』を開催。
シンポジウムは、福岡県小児等在宅医療推進事業の委託元である福岡県(保健医療介護部
高齢者地域包括ケア推進課)と事業の拠点病院である九州大学病院、福岡市立こども病院、
福岡大学病院、聖マリア病院、飯塚病院、北九州市立総合療育センターが主催し、福岡県小
児科医会、福岡地区小児科医会、北九州地区小児科医会、筑豊小児科医会、宗像小児科医会、
筑後小児科医会が共催、福岡県医師会が後援し、実施された。
シンポジウムの第 1 部では、福岡県小児等在宅医療推進事業の拠点病院から、医療的ケ
ア児の在宅療養への移行及び在宅生活の支援の為の平成 28 年度事業活動に関する報告を
行い、第 2部では、『医療的ケア児とレスパイト』をテーマに、医療、福祉分野の 5名のシ
ンポジストによる口演と討論を行った。
(1)シンポジウムの参加者
このシンポジウムの参加者は以下である。訪問看護ステーション、日中のレスパイト
を行っている福祉事業所からの参加者が最も多く、各機関から多職種の参加があった。
所属機関 人数
中核病院 24
在宅療養支援病院 7
小児科標榜診療所 13
在宅療養診療所 16
その他の診療所 6
訪問看護ステーション 47
短期入所施設 9
福祉事業所(相談支援) 22
福祉事業所
(発達支援、日中一時、放課後等デイ) 41
行政 20
その他(医学部院生) 2
事業拠点病院 40
福岡県(事業担当) 4
医師会(共催、後援) 2
総計 253
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(2)シンポジウムの内容
【第 1部】で行われた、『福岡県小児等在宅医療推進事業の拠点病院からの活動報告』
については、当報告書内の九州大学病院、福岡市立こども病院、福岡大学病院、聖マリ
ア病院、飯塚病院、北九州市立総合療育センターの活動報告と同様の為、参照の事。
【第 2部】のシンポジウム『医療的ケア児とレスパイト』では、レスパイト入院を実
施している病院、医療型短期入所施設、日中一時支援、病児保育、放課後等デイサービ
ス等を行っている機関・事業所から、シンポジストを招き、医療的ケア児の在宅での生
活に関わるレスパイトの現状、問題点、支援する機関・事業所の取り組みについての口
演、参加者からの質疑に対する応答、及び意見の交換を行った。
夜間、宿泊を伴うレスパイトに関しては、福祉事業所、診療所での実施は難しく、
病院(又は、医療型の短期入所施設)での実施を要望する声が多かった。
【シンポジスト】: 二日市徳洲会病院 院長 今嶋 達郎
コールメディカルクリニック福岡(小さなあしあと)院長 岩野 歩
こどもクリニック/アルカディアキッズセンター 理事長 福田 清一
みらいのいぶき 管理責任者 柴田 謙一
桜が丘クリニック 理事 半田 みどり
【シンポジストの口演内容】:
・支援をするにあたってのポリシーや計画(災害時の営業、支援内容の拡大等)
・レスパイト事業実施に関する体制(スタッフ、看護師の配置等)
・児の地域とのふれあいの促進(預かり時の地域への外出)及び地域の理解促進
・預かり時の、感覚遊びを通した療育 等
【シンポジウムでの意見交換内容】(抜粋):
(意見1)夜間の緊急対応や夜間のレスパイトは、クリニックや福祉事業所では実
施が難しい為、日頃診ている病院で病床の確保をして実施して欲しい。
(一部の病院では夜間の緊急の預かりや宿泊を伴うレスパイトが可能)
(意見2)一部地域(宗像等)では小児科診療所と在宅療養支援診療所が同行訪問
等を行ない連携をしている。
(意見3)18 歳以上の患児(者)について、かかりつけ病院が 18 歳以上を受け付
けない所もある為、対応してくれる病院を探す支援を在宅療養支援診療
所が行っている場合がある。
(意見4)小児科診療所と日中一時支援等を行っている施設の連携が必要。
(意見5)小児科診療所が、忙しい為に在宅療養児に関われていない。
(意見6)病児保育を日中のレスパイトとして使っている都道府県もある。
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<第 1 部:拠点病院活動報告>
<第 2 部:シンポジウム>
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(3)シンポジウムの参加者アンケート結果
シンポジウムの参加者に対してアンケートを行い、150名からの回答を得た。
アンケートでは、参加者の所属機関、職種、在宅療養児への対応の有無、参加の動機、
研究会の内容について、今後の研修に希望する事について質問を行った。
アンケート回答者の分野別の割合は、病院、診療所、訪問看護ステーション、医療
型短期入所施設などの医療分野が 57%、相談支援事業所、日中一時支援、発達支援等
の福祉分野が、31%、行政分野が 11%であった。また、在宅療養児に対応している所
属先からの参加者が約7割を占め、参加者の職種としては、看護師が最も多く、看護師
と医師で 47%を占めていた。
病院, 30, 20%
小児科標榜診療
所, 5, 3%
小児科標榜診療
所+在宅療養支援
診療所, 3, 2%
在宅療養支援診
療所, 5, 3%
訪問看護ステーション,
37, 25%短期入所施設, 5, 3%
福祉事業所(相談、日
中一時、発達支援、放
課後デイ), 47, 31%
行政機関, 16, 11%
その他, 1, 1% 無回答, 1, 1%
機関別人数病院
小児科標榜診療所
小児科標榜診療所+在宅療養
支援診療所
在宅療養支援診療所
訪問看護ステーション
短期入所施設
福祉事業所(相談、日中一
時、発達支援、放課後デイ)
行政機関
その他
無回答
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研究会の内容については、参考になったという意見が多かったが、“県内の地区別の
状況に関する情報・データの提示”、“行政の積極的な参加”、“児の具体的な事例による
説明”などの要望が挙がっていた。
0
10
20
30
40
50
60
人数
職種
職種別人数
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3.2 多職種による症例検討会実施及び実施準備
今年度、多職種による症例検討会の開催には至らなかったが、院内で実施した多職種連携
について記載する。
Ⅰ.3.1の小児診療科の連携会議の開催(月一回)でも記載をしているが、多職種によ
る連携会議を定期的に実施。症例を元に各職種の立場で課題を抽出。それに対する対応策の
検討を行うことで共通認識を図り連携を行った。
また、在宅療養児の退院前に、院内外の関係機関(在宅医、訪問看護師、訪問介護士、相
談支援専門員等)で集まりカンファレンスを実施し、顔の見える関係作りを行った。
平成 28年度(2月時点)は 27件の退院前合同カンファレンスを開催した。
訪問看護
患者・家族
消防署TEL:119
行政
九州大学病院
在宅支援ネットワーク図
医療機器業者相談支援事業所
ヘルパー
訪問診療・かかりつけ医
療養通所介護
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Ⅲ.課題の抽出と検討
1.地域におけるレスパイトの現状、問題点の把握と検討
行政、関係機関との意見交換及び『小児在宅医療シンポジウム』で、医療的ケア児のレス
パイトについて意見交換を行い、下記の問題点の把握と検討を行った。
医療的ケアが必要な子どものレスパイトは医療依存度が高く、その受け入れ体制が整っ
ていないのが現状である。
2.地域の医療、福祉、教育の連携の現状、問題点把握と検討
“Ⅱ.2 地域の医療、福祉、教育の連携”に詳細を記述。参照のこと。
♦診療所、福祉施設・事業所でも日中一時支援、放課後等デイサービス、病児保育等
の支援を行う所が少しずつ増えてきているが、夜間、宿泊を伴うレスパイトが可能
なところは非常に少ない。また、夜間体制を整えることは、経営上困難でもある。
♦福祉施設・事業所では医療体制が十分でない。
♦短期入所施設に関して医療的ケア児を受け入れる為の体制があるのは、医療型短期
入所施設となるが、施設側の受け入れの定数が少なく、常に利用できるわけではな
い。
♦乳児に関して、レスパイトに必要な障害者手帳(身体、精神、療育)の早期取得が
困難である為、レスパイトに関する福祉制度利用が難しい。
♦上記の様な状況から、かかりつけの病院が「医療評価」入院の形態をとり、対応せ
ざるを得ない。しかしながら病院でもその様な対応をしている機関は少なく、病院
でのレスパイトにも困難があるというのが現状である。
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Ⅳ.資源の把握と周知
1. 医療・福祉・教育資源の把握と周知
医療的ケア児の在宅療養支援計画をする上で必要な、在宅支援機関の情報、及び福岡地
域における医療的ケア児の在宅支援が必要な市区町村の情報について、最新情報の把握と
一部周知を行った。
1.1 医療・福祉・教育情報の収集・構築・共有
(1)医療的ケア児の在宅支援機関の情報把握
平成 26 年度、平成 27 年度でも、医療的ケア児の在宅支援機関に関する情報の収集
を行ったが、毎年変動がある為、常に最新の情報の収集が必要であり、平成 28 年度
でも福岡県内の情報収集を行った。以下に示すのが、本年度情報収集を行った支援機
関であり、今年度の研修、シンポジウムの計画・実施にあたり、その情報の活用を行
った。
(2)福岡地域における医療的ケア児の在宅支援が必要な市区町村の情報把握
平成 28 年 7 月時点の、福岡地域の医療的ケア児の在宅支援を必要とする市区町村
の情報を収集し、地域の診療所を対象とした、在宅支援への理解・参加を求める研修
会で報告。
・在宅療養支援病院
・小児科標榜診療所
・在宅療養支援診療所
・訪問看護ステーション
・障害児相談支援事業所
・短期入所施設
・日中一時支援機関・事業所
・放課後等デイサービスの実施機関・事業所
・児童発達支援センター
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Ⅴ.事業の進捗管理
1.事業拠点病院との連携の上、県全体の状況把握、課題抽出、
及び事業の取りまとめ
1.1 同一戦略・共同活動の事業計画・調整と拠点病院連携のとりまとめ
平成 28 年度福岡県小児等在宅医療推進事業に関し、拠点病院である福岡大学病院、福
岡市立こども病院、飯塚病院、聖マリア病院、北九州市立総合療育センターとの取りまと
めを九州大学病院の事業活動の一環で行った。各拠点病院との連携・調整を行った内容は
以下である。
連携・調整項目
連携病院(及び福岡県)
九大
こども
福大
マリア
飯塚
療育
福岡県
小児科標榜診療所、在宅療養支援診療所を対象とした
研修計画、実施の為の連携・調整 ✔ ✔ ✔ ✔ ✔ ✔ ✔
訪問看護研修の実施計画の為の連携と調整 ✔ ✔ ✔ ✔
福岡県在宅支援マニュアルの改訂の為の調整 ✔ ✔ ✔ ✔ ✔ ✔
福岡地域の自立支援協議会への参加・参画の為の調整 ✔ ✔ ✔ ✔
『小児在宅医療シンポジウム』の実施、運営の調整 ✔ ✔ ✔ ✔ ✔ ✔ ✔
平成 28年度事業報告書作成の為の取りまとめ ✔ ✔ ✔ ✔ ✔ ✔ ✔
九大:九州大学病院、こども:福岡市立こども病院、福大:福岡大学病院、
マリア:聖マリア病院、飯塚:飯塚病院、療育:北九州市立総合療育センター
1.2 同一戦略・共同活動を通した県の状況、課題の把握
上記1.1で記述した活動で把握した状況、課題については、下記の章に記述。
“Ⅰ.1 在宅療養児対応の診療所拡充”
“Ⅰ.2 在宅療養児対応の訪問看護ステーションの拡充”
“Ⅱ.2 地域の医療、福祉、教育の連携”
“Ⅱ.3 多職種研究会、勉強会等”
“Ⅲ.課題の抽出と検討”