afm 1. - welcome to kanazawa biophyiscs groupbiophys.w3.kanazawa-u.ac.jp/paper/hs-afm.pdf1...

14
1 図1Tapping Mode AFM 装置の概略 AFM による分子イメージング 1. はじめに AFMAtomic Force Microscope; 原子間力顕微鏡)は、先端の尖った探針で試料表面をな ぞることにより表面形状を計測し画像化する一種の触針顕微鏡である。AFM は試料環境を 選ばず、生理的な溶液環境にある生体分子をナノメータレベルの解像度でイメージングで きる。このような特徴をもつ顕微鏡は他にはなく、生命科学研究にとって大変貴重な存在 である。しかし、ユーザーフレンドリーさに若干欠け、また、生命科学が欲する性能をま だ十分に満たしているとは言えない。だが、性能向上とともに生命科学分野でその活躍す る場は今後急速に広がっていくものと期待されている。ここでは、AFM の概説に続き、生 命科学の要請に応えるための技術を中心に解説する。また、今後有望と予想される技術に ついても概説する。 2. AFM イメージングの原理 基板表面に載った試料の形状を AFM で捉える方法にはいくつかある。ここでは、探針が 試料に間欠的に接触し、そのため、基板に緩く吸着した柔らかく脆い生体分子の形状観察 において探針接触の影響を最も受けにくい Tapping モードを説明する。小さく柔らかいレバ ーの先に先端の尖った針が付いたものをカンチレバーと呼ぶ(図 1 参照)。レバー面に垂直 な方向(z方向)にカンチレバーをその共振周波数で振動させる。励振方法にはいくつか あるが、カンチレバーホルダーのそばに設置したピエゾを振動させ、その振動をカンチレ バーに伝える音響励振法がよく使われる。カンチレバーの変位計測には光てこ光学系が広 く使われている。すなわち、カンチレバーにレーザ光を当てて、その反射光を2分割フォ トダイオードに導く。カンチレバーがたわむと、フォトダイオードに当たるレーザビーム の中心位置がずれ、2つのフォトダイオ ードからの出力の差が変化する。この変 化からカンチレバーのたわみを計測す る。振動する針が試料に接するか、若干 押し込むとカンチレバーの振幅が減少 する。振幅値は RMS-DC Converter から 出力される。試料ステージをXY方向に 走査しながら、カンチレバーの振幅(つ まり、針・試料間にかかる力)が一定に 維持されるように試料ステージを上下 にフィードバック走査すると、試料ステ ージの動きは試料形状をほぼ正確にな ぞることになる。従って、試料ステージ

Upload: vanmien

Post on 18-Apr-2018

219 views

Category:

Documents


4 download

TRANSCRIPT

AFM による分子イメージング

1. はじめに

AFM(Atomic Force Microscope; 原子間力顕微鏡)は、先端の尖った探針で試料表面をな

ぞることにより表面形状を計測し画像化する一種の触針顕微鏡である。AFM は試料環境を

選ばず、生理的な溶液環境にある生体分子をナノメータレベルの解像度でイメージングで

きる。このような特徴をもつ顕微鏡は他にはなく、生命科学研究にとって大変貴重な存在

である。しかし、ユーザーフレンドリーさに若干欠け、また、生命科学が欲する性能をま

だ十分に満たしているとは言えない。だが、性能向上とともに生命科学分野でその活躍す

る場は今後急速に広がっていくものと期待されている。ここでは、AFM の概説に続き、生

命科学の要請に応えるための技術を中心に解説する。また、今後有望と予想される技術に

ついても概説する。

2. AFM イメージングの原理

基板表面に載った試料の形状を AFM で捉える方法にはいくつかある。ここでは、探針が

試料に間欠的に接触し、そのため、基板に緩く吸着した柔らかく脆い生体分子の形状観察

において探針接触の影響を最も受けにくい Tapping モードを説明する。小さく柔らかいレバ

ーの先に先端の尖った針が付いたものをカンチレバーと呼ぶ(図 1 参照)。レバー面に垂直

な方向(z方向)にカンチレバーをその共振周波数で振動させる。励振方法にはいくつか

あるが、カンチレバーホルダーのそばに設置したピエゾを振動させ、その振動をカンチレ

バーに伝える音響励振法がよく使われる。カンチレバーの変位計測には光てこ光学系が広

く使われている。すなわち、カンチレバーにレーザ光を当てて、その反射光を2分割フォ

トダイオードに導く。カンチレバーがたわむと、フォトダイオードに当たるレーザビーム

の中心位置がずれ、2つのフォトダイオ

ードからの出力の差が変化する。この変

化からカンチレバーのたわみを計測す

る。振動する針が試料に接するか、若干

押し込むとカンチレバーの振幅が減少

する。振幅値は RMS-DC Converter から

出力される。試料ステージをXY方向に

走査しながら、カンチレバーの振幅(つ

まり、針・試料間にかかる力)が一定に

維持されるように試料ステージを上下

にフィードバック走査すると、試料ステ

ージの動きは試料形状をほぼ正確にな

ぞることになる。従って、試料ステージ

1

図1:Tapping Mode AFM 装置の概略

2

を動かしている信号をパソコンに取り込めば、試料の3次元形状がパソコン内に再現され

る。この原理から明らかなように、溶液中に浮いている試料は観察できず、また、針先端

が接触できる試料面の3次元形状しか捉えることができないという制約がある。

3. 生命科学が AFM に期待する性能

タンパク質や DNA といった分子の形状を知るだけならば、電子顕微鏡で得られる以上の

情報を AFM は与えない。もちろん、より生理的環境にある分子を AFM で見られることは

確かだが。分子構造の詳細を知るという意味では、X線結晶構造解析や NMR に勝るものは

ない。AFM に最も期待されるは、「機能中の生体分子のダイナミックな振る舞いをナノメー

タの解像度であるがままに見る」ということである。このようなダイナミクス情報を得る

ことは他の技術では原理的に不可能である。もちろん、光学顕微鏡、特に蛍光顕微鏡では、

生体分子のダイナミックな振る舞いを蛍光輝点の振る舞いとして観察できるが、分子その

ものを直接見ているわけではない。この AFM に対する期待に応えるには、高速性と非侵襲

性を併せもつ性能が要求される。しかし、高速性と非侵襲性は技術的に相反する要求であ

り、それらを調和させることは難しい技術的課題である。だが、以下に述べるように、こ

の克服に向けた様々な技術開発が現在進展しており、生命科学の強い要請に応えられつつ

ある。生きた細胞表面のタンパク質を見ることも強い要請のひとつであるが、細胞は柔ら

かくこれまで報告例がない。探針・試料間にかかる力を劇的に減らす技術開発が必須であ

る。形状の可視化だけでは分子種を特定することはできない。それ故、分子認識能力も AFM

に期待されている。また、細胞内部の微細構造ダイナミクスを観察することも生命科学の

強い要請のひとつであるが、表面だけを観察できる AFM には無理な要請である。しかし、

AFM と他の技術を融合することで実現される可能性がある。

4. イメージングの例

AFM の技術的内容を述べる前に、AFM 及

び高速 AFM によりどのような画像が得られ

るのかを、いくつかの具体例を通して説明す

る。高い解像度の画像は、起伏の少ない試料

で得られることが多い。起伏が少ない場合に

は、探針はその最も尖った先端部分でのみ試

料に接触するからである。このような例とし

て、図 2 に紫膜断片中のバクテリオロドプシ

ンの2次元結晶の画像を示す。バクテリオロ

ドプシンは3量体を単位として、六方格子状

の結晶を形成している。生体膜には流動性が

あるが、このようにぎっしりとタンパク質が

図 2:紫膜中のバクテリオロドプシンの

高解像 AFM 画像

3

埋め込まれている場合には、各3量体は膜中

でほぼ静止しており、時間をかけてイメージ

ングしても高解像の画像が得られる。図 3a

にマイカ基板に展開したビオチンを含む脂

質2重層膜に結合したストレプトアビジン

の2次元結晶の像を示す。図 3b に骨格筋の

筋原線維の像を示す。z線を挟んで両側にア

クチンフィラメントからなる I 帯、アクチン

フィラメントとミオシンフィラメントが重

なっている A 帯、ミオシンフィラメントの中心

に双頭構造をもつミオシン V の像を示す。先端

クがあり、そのネックの先で 2 つの重鎖は Co

モチーフのそれぞれにカルモジュリン(CaM)

平滑筋の必須軽鎖であるといわれている)、図

しか見えていない。基板と接触している側に残

骨格筋ミオシンの頭部の図を示す。アクチン結

フトが若干見えている(図 3e の原子モデルを参

域がないように見えるが、この部分は基板に結

観察されていない。

次に高速 AFM が捉えたタンパク質の動態

を 示 す ( 実 際 の 動 画 は 、 http://www.s.

kanazawa-u.ac.jp/phys/biophys/roadmap.htm を

参照)。図 4a にミオシンVが高密度で吸着し

たマイカ基板上をアクチンフィラメントが

滑走している様子を示す。図 4b には、マイ

カ基板上にミオシンVがまばらに吸着し、そ

のミオシンVと相互作用しているアクチン

フィラメントの像を示す。アクチンに結合し

たミオシンVの頭部・ネック領域は左を指さ

すように配向しているが、これは筋肉でよく

知られている矢じり構造である。この構造から

がマイナス端、右側がプラス端である。アクチ

(マイナス端方向)に向かって移動している。

から供給された試料)の像を示す。左の模式図

部が突出しており、ATPase 反応に伴いステム部

させた GroEL に GroES が結合する様子を示す。

図 3:生物試料の AFM 静止画像

部である M 線がはっきり見えている。図 3c

の頭部に 6 つの IQ モチーフをもつ長いネッ

iled-coli を形成して繋がっている。6 つの IQ

が結合しているが(ひとつは CaM ではなく

3c では長いネックのそれぞれに3つの CaM

りの CaM3分子が結合している。図 3d に、

合部位と 50K 領域の上部と下部の間のクレ

照)。AFM 像では軽鎖の結合したネック領

合しておらず激しく運動しているため全く

図4:生物試料の動態 AFM 画像

アクチンの極性を知ることができる。左側

ンフィラメントは動くべき方向である左側

図 4c にダイニン C(通信総研の大岩研究室

に示すように頭部からステム部とストーク

が上下に運動している。図 4d に基板に吸着

GroEL は2つのリングが背中合わせに結合

4

した構造をもつが、そのひとつのリングで基板に吸着しており、もうひとつのリングが観

察されている。中央に小さな穴が見えている。溶液中には GroES と Caged-ATP が含まれて

おり、”F”とマークされた画像の直前で紫外線パルスを照射して ATP を生成させている。ATP

生成直後に GroES が GroEL に結合している様子が見える。

5. イメージング速度を律する因子

イメージング速度を律する因子は、スキャナーの周波数帯域とフィードバック帯域であ

る。前者はスキャナーを走査しても振動しない最大走査周波数を意味する。後者について

以下に説明する。試料が空間周波数λのサイン波形状をしていると仮定する。試料ステー

ジをx方向に速度 Vs で走査した場合、試料ステージが試料表面をなぞるように動くために

は、試料ステージは λ/Vf s の周波数でz方向に動かなければならない。しかし、フィー

ドバック制御は後追い制御であるため常に遅れが生ずる。位相が 45 度遅れる周波数を通常

フィードバック帯域と定義する。45 度の遅れまでがおおよその許容範囲であると考えられ

るからである。周波数 f の 45 度の位相遅れは、時間にして 1/8f である。

探針が試料に接触してから試料ステージを動かしてカンチレバーの振動振幅を目標値

(セットポイント)に戻すまでのフィードバックループには色々な遅れが入りこむ。主な

ものを挙げると、(a)カンチレバーの応答時間(τc)、(b)カンチレバーの振幅計測にかかる

時間(τm)、(c)スキャナーの応答時間(τs)、(d)パラシューティング時間)(τp)である。

τc とτs は同じ形で、Qc/πfc、Qs/πfs で表わされる。ここで、Qc と fc はカンチレバーの Q

値と共振周波数、Qs と fsはzスキャナーの Q 値と共振周波数である。τmは最少でもカン

チレバーの共振の半周期はかかり、1/2fc となる。パラシューティングとは、試料の下り勾

配で探針が試料表面から完全に離れてしまい、試料に再着地するまでに時間がかかること

を意味する。これにつては後述する。これらの時間遅れの和はフィードバックループの遅

れにほぼ等しく、フィードバック帯域 fBは以下のように表わされる。

pc

s

csccB τf

fπfQ

πQ

/f

f21

8(1)

エラー信号(セットポイントと実際の振幅の差に対応する信号)からフィードバック信号

を作るフィードバック回路には通常、比例・積分・微分(PID)回路が用いられる。その微

分成分により位相の遅れはある程度補償され、約 40%改善される。次に、フィードバック

帯域 fBと最少イメージング時間 Tmとの関係を求める。走査範囲 L×L、ライン数 N、フィー

ドバック周波数 fB でイメージングすると、x方向に往復する時間は 2L/Vs であるので、

Tm=2LN/λfBとなる。例えば、Tm=33 ms(ビデオレート)、L = 250 nm、N = 100、λ = 10 nm

とすると、fB = 150 kHz となる。PID 回路の微分による補償効果を考慮しても、フィードバ

ックループの遅れ時間は約 1 µs と極めて短くなければならない。

6. 高速化デバイス

5

カンチレバー:長さ l、幅 w、厚さ d の短冊型カンチレバーの共振周波数 fc とばね定数 kcは

ρE

l

d.fc 12560

2 (2), E

L

wdkc 3

3

4 (3),

で与えられる。ここで、E と ρは材質のヤング率と密度である。比較的柔らかいカンチレバ

ーに用いられる窒化シリコンでは、E = 1.461011 N/m2、 ρ = 3,087 kg/m3 である。共振周波

数が高く、柔らかいカンチレバーでは、小さく、薄くなる。オリンパスが開発した微小カ

ンチレバーは、l = 7 µm、w = 2 µm、d = 90 nm で、大気中 fc ~ 3 MHz、水中 fc ~ 1.2 MHz、kc ~

0.2 N/m、水中の Q 値は 2 ~ 3 である[1]。これらの値から、カンチレバーの応答時間と振幅

計測の最少時間はそれぞれ、0.66 µs、0.4 µs となる。光てこ法に用いるレーザ光をレンズで

絞って微小カンチレバーに効率良く当てるためには光学系にも工夫が必要になる[2]。入射

光を絞るレンズで反射光を集め、偏光ビームスプリッタとλ/4 板を利用して入射光と反射

光を分ける。

振幅計測回路:通常の RMS-DC コンバーターでは、

整流とローパスフィルターを用いるため、振幅の

RMS 値を出力するのに搬送波の数周期分の時間が

かかる。サイン波のピークとボトムの電圧信号をサ

ンプル・ホールドすることにより、搬送波の半周期

毎に振幅を計測できる回路が開発されている[2](図

5)。

スキャナー:イメージング速度を律する最大の

デバイスである。機械系であるため振動しやす

く、共振周波数を上げることが難しい。z走査

で駆動される試料基板(ないしはカンチレバー)

は軽く、その共振特性は用いる圧電素子でほぼ

決まる。最大変位 2 µm のもので、自由振動の共

振周波数はおおよそ 350 kHz 程度である。急速

な変位により圧電素子の固定端を支えるベースには大

共振周波数の低い機械系を振動させてしまう。そこで

を固定し、これら2つの圧電素子を同時に反対向きに

ーバランス法が考案された[2,3](図 6)。圧電素子をそ

周波数は自由共振周波数の半分になる。圧電素子の側

部分だけで固定すると、自由振動の共振周波数を保つ

電素子は両向きに変位する結果運動量変化はゼロであ

但し、利用できる最大変位量は半分になる。カウンタ

り、x走査用の圧電素子の両端をフレクシャーで固定

方向に駆動する物体の質量は大きく、x方向の共振周

図 5:高速振幅計測回路

図 6:高速スキャナーの構造

きな激力が働くため、ベース周りの

、ベースの反対側に同種の圧電素子

変位させて激力を中和するカウンタ

の端面でベースに固定すると、共振

面中央で固定するか、端面のエッジ

ことができる。また、この場合、圧

るため、支持部に激力が働かない。

ーバランス法はx方向にも有効であ

する方法が考案された[3](図 6)。x

波数は圧電素子自身の共振周波数よ

りも下がるが、50 kHz 程度は達成できる。100 ライン走査でビデオレートイメージングする

場合のx方向の周波数は 3 kHz 程度であり、三角波の角を若干丸めた信号で駆動すれば、共

振は起こらない。

アクティブダンピング:共振の Q 値を下

げるダンピングも重要である。柔らかい

樹脂を用いるパッシブダンピングは低

い周波数の小さい共振を除去するのに

有効である。周波数の高い大きな共振を

除去するには、アクティブ Q 値制御法[4]

が用いられる。単純な質点、ばね、ダン

パ ー 系 の 運 動 方 程 式 は 、

tfkzzγzm と記述される。変位 z を

をかけたものを外力 f(t)に加えると、摩擦係

から 'γγ/ωm'Q c 0 に減少する。この方

る場合には有効である。zスキャナーの場

難しい。そこで考案されたのが、実際のz

路(Mock zスキャナー)を利用する方法で

んど変化しないので、いったん Mock zス

ことができる。この方法はxスキャナーに

でも、各ピークに対応する 2 次伝達関数が

対応する Q 値制御回路を直列につなげばす

しかし、2 次伝達関数が並列につながってい

考案されたのが、任意伝達関数に対する逆

の回路の伝達関数は、ゲイン g を 1 に近づ

る場合には、ほぼ 1/G(s)となる。回路の遅

りゲインを 1 に近づけることが難しい場合

この回路を複数直列につなぐことで改善さ

もちろん、共振周波数より上の周波数領域

振系の振幅ゲインは小さいので、圧電素子

イブ電源は大きな電圧を出力しなければな

ドライブ電源に余裕が必要である。

動的PID制御:探針が試料にわずかに接触し

チレバーの自由振動振幅近くに設定しなけ

急な下り勾配で探針は試料から完全に離れ

ューティングの間、カンチレバーの振幅は

動振幅のままで、エラー信号は小さく一定

図 7:Mock Z-スキャナーを用いたアクティ

6

ブ Q 値制御回路

計測し、それを微分した信号に負のゲイン( 'γ )

数が γから 'γγ に増大し、Q 値は γ/ωmQc 0

法は共振のピークが単一で、変位 z を計測でき

合、その変位を高速に検出することは実際には

スキャナーと同じ伝達関数を有する LCR 共振回

ある[5](図 7)。スキャナーの機械特性はほと

キャナーをデザインしてしまえば長く利用する

も適用できる。共振ピークが2つ以上ある場合

直列につながっていれば、それぞれのピークに

べての共振成分の Q 値を下げることができる。

る場合には、Q 値制御は不完全になる。そこで

伝達関数を生成する方法である[6,7](図 8)。図 8

けられ

れがあ

には、

れる。

では共

のドラ

らず、

た状態を

ればならな

パラシュー

試料表面か

となり(エ

図 8:逆伝達関数自動生成回路

維持するには、セットポイントをカン

い。しかし、この設定では、試料の

ティングを起こしてしまう。パラシ

らどれだけ離れていようとも自由振

ラー信号の飽和)、その結果フィード

7

バック走査による再着地には時間がかかる。こ

のパラシューティングの時間τpはフィードバッ

ク帯域を下げる大きな原因である。τpは、自由振

動振幅A0、セットポイント(Peak-to-peakでAs)、

試料の最大高さh0などの関数で、τp =(tanβ/β - 1)/fc

と表わされる[8]。ここで、βはcos-1[2A0(1 - r)/h0

sin(π/8)]、r=As/2A0である。図6に示すように、セ

ットポイントを上げていくと、フィードバック

帯域はどんどん下がっていく。もちろん、PIDフ

ィードバック回路のゲインを大きくすれば、τp

は短縮されるが、試料の上り勾配の箇所ではオ

ーバーシュートし、パラシューティングを誘発

してしまう。この困難を克服するために、PID回路

的PID制御法が開発された[8]。セットポイントと自

の閾値を越えたときに、偽のエラー信号を真のエラ

が、図9に示すように、r が0.9程度までフィードバッ

高速性と非侵襲性の両立がある程度可能になった。

ドリフト補償:ドリフト補償は高速化とは直接関係

効にするために必須である。セットポイントを自由

の差はサブナノメータレベルになる。カンチレバー

励振強度が下がるとしよう。この場合、振幅は減少

置はこの減少を探針が試料に強く接触したためであ

ンチレバーから遠ざけられ、ますます探針は試料か

試料から完全に離れイメージング不能になる。サブ

ようなことが起こってしまうため、探針が試料にわ

難しい。イメージング中に励振強度をモニターする

できないので、ドリフト検出は難しい。そこで考案

振幅をモニターし、それを一定に保つように励振源

[8]。探針・試料の接触により、共振サイン波は若干

数成分が現れる。2倍波の振幅は小さいが、探針・

このフィードバック制御の時定数を大きくし、基本

に影響が出ないようにする。このドリフト補償によ

持したまま安定なイメージングを長時間行うことが

7. 周波数・位相イメージング

探針と試料との相互作用により振幅ばかりでなく

図 9:フィードバック帯域に及ぼす

セットポイントの効果。実線は通常

の PID 回路、破線は動的 PID 回路の

場合

のゲインを状況に応じて自動可変する動

由振動振幅の間に閾値を設け、振幅がこ

ー信号に加算するだけの簡単なものだ

ク帯域はほぼ一定になる。これにより、

ないが、上記の動的PID制御を実際に有

振動振幅にかなり近づけると、それら

の励振強度にドリフトがあり、例えば

し、探針は試料から若干遠ざかる。装

ると解釈する結果、試料ステージはカ

ら遠ざかってしまい、そのうち探針は

ナノメータレベルのドリフトでもこの

ずかに接触した状態を維持することは

ために自由振動振幅を計測することは

されたのが、カンチレバーの2倍波の

をフィードバック制御する方法である

歪むため、共振周波数の整数倍の周波

試料の接触に敏感である。もちろん、

波の振幅に基づくフィードバック制御

り、探針・試料間のわずかな接触を維

できる。

、共振周波数も変化する。探針・試料

8

間に働く力をF(z)とすると、 zdz/dFFzF 0

となる。 dz/dF'k とおくと、カンチレバーのみ

かけのばね定数は、kcから 'kkc へと変化し、そ

の結果共振周波数は ccc k/'kf.fΔ 50 だけ変化

する。斥力領域ではk’<0であるので、共振周波数

は増大する。励振周波数が固定の場合(Amplitude

modulation (AM)-AFM)、この共振周波数シフトに

伴い位相(励振信号とカンチレバー振動との位相

差)が変化する(図10)。同じ共振周波数シフトでも

きいほど大きいので、位相像を撮るにはカンチレバー

のが普通である。しかし、Q値を大きくすると、カン

また、ロックインアンプのような精度は高いが遅い計

イメージングできない。しかし、微小カンチレバーは

的小さい。それ故、 cc k/f の値は通常のカンチレバー

は大きくなり、小さなQ値であっても大きな位相シフ

プに頼らない高速の位相イメージングが可能である。

に位相検出できる回路が考案され、トポグラフィー像

影されている[9]。この位相検出回路の重要な点は、

位相を検出することが可能なことにある。数周期以上

ない従来の方法では、検出感度を上げるためにカンチ

間の相互作用の場が常に存在するようにカンチレバー

った。それ故、フィードバック帯域は狭くなり、かな

た。新しい検出法では、場の大きな影響が現れるタイ

チレバーの振幅を大きくできる。

励振周波数がカンチレバーの共振周波数に常に一致

(FM)-AFM)でも以上の議論はそのまま成り立つ。FM

チレバーの自身の熱揺らぎ変位信号の位相を位相シフ

た信号を励振信号とする。位相を90度ずらしているた

り、その結果、カンチレバーはやがて自励発信する。

圧制御発信器(VCO)を内蔵したPLL回路により検出

でもFM-AFMでも探針・試料間相互作用の検出感度は

制御信号を大きくしていくとカンチレバーは自励発信

くできない。FM-AFMでは、探針と試料との強い接触

く減少する場合には、自励発信が止まってしまうこと

探針・試料間相互作用は上記の保存力相互作用の他

があり、この場合にもカンチレバー振動の位相は変化

図 10:共振周波数シフトと位相シフト

位相の変化はカンチレバーのQ値が大

のQ値をQ値制御法により大きくする

チレバーの振幅応答は遅くなるので、

測器を使わざるを得ないので、高速

共振周波数が高く、ばね定数は比較

に比べ1,000倍程度大きい。従って、 cfΔ

トが起こる。それ故、ロックインアン

実際、カンチレバーの振動周期ごと

と位相像が50ms/フレームで同時に撮

カンチレバーの振動周期の任意の点で

にわたる位相の平均値しか検出でき

レバーの振幅の範囲内に探針・試料

の振幅を小さくしなければならなか

り遅いイメージングしかできなかっ

ミングで位相検出できるため、カン

する場合(Frequency-modulation

-AFMでは外部励振信号はなく、カン

ターあるいは微分回路で90度ずらし

め、Q値を大きくするQ値制御がかか

共振周波数のシフトはQ値の大きな電

する。PLL回路の応答は遅い。AM-AFM

同じである。但し、AM-AFMではQ値

してしまうので、Q値をそれほど大き

が起こってカンチレバーの振幅が大き

も起こりえる。

に、エネルギー散逸を伴う相互作用

する。1サイクル当たりのこの相互作

9

用によるエネルギー散逸量の平均 tipE と位相差φとの関係は、 tipE がカンチレバーに供給さ

れる平均エネルギーと、レバーが受ける粘性によるエネルギー散逸の平均との差に等しい

として、次式で与えられる[10]。

0

02

0 21

ff

φsinAA

QfAkπ

dtzzγmztFT

E c

c

ccTtip (4)

ここで、Aはカンチレバーの振幅、f0 はダンピングがまったくない場合のカンチレバーの共

振周波数である。同じエネルギー散逸量でもQ値が大きいほど大きな位相差が得られる。位

相差は、保存力でも粘性や吸着といったエネルギー散逸を伴う相互作用でも起こるため、

位相像の解釈は難しい。しかし、上述した位相検出タイミングを調節できる高速位相検出

回路を使うと、特定の相互作用で生ずる位相差を引き出すことが可能である[9]。エネルギ

ー散逸を伴う相互作用の場合には、探針と試料との相互作用のあとでもエネルギー散逸の

影響が残るが、保存力の場合には残らないからである。保存力だけが働く場合の位相像と

トポグラフィー像との差はあまりないが、エネルギー散逸を伴う相互作用の場合にはトポ

グラフィー像に現れない微細な構造を位相像に見出せる場合多い。

8. 非侵襲性

探針が試料を叩く力の大きさはほぼ cc Q/AAk 220 で表せると言われている。カンチ

レバーのQ値が大きいほど力は弱くなる。探針が試料に接触してからカンチレバーの振幅が

最終的に AA 0 だけ減少するまでにほぼQc回の振動を要することが根拠である。kc = 0.2

N/m、A0 = 5 nm、Qc = 3の場合、動的PID制御と励振効率のドリフト補償法を利用してセット

ポイントを自由振動振幅の95%まで近づけても、約17 pNの力が働くことになる。タンパク

質を変性させてしまうほどの大きな力ではないものの、弱いタンパク質間相互作用には影

響を与えてしまう場合もあるであろう。この困難な問題を解決するひとつの方法は、振幅

信号の代わりに位相信号を使うことである。Q値が3程度であっても、位相信号の方が振幅

信号より探針・試料間相互作用に敏感であるからである。

もっと優れた手段はQ値制御によりカンチレバーのQ値

を上げ、位相信号を使ってフィードバック制御すること

である。しかし、Q値を上げるとカンチレバーの応答が

遅くなり、高速イメージングに向かないと考えられる。

直感的にそう思われるが、本当にそうであろうか。

探針・試料間に保存力だけが働き、フィードバック制

御をかけずに試料の高さが低くなる段差部分を走査し

ていると仮定しよう(図11)。段差を降りたあとカンチ

レバーの振幅はゆっくりと増大していくので、しばらく

図 11:段差を走査したときのカンチ

レバーの振動の振幅と位相の変化

10

の間探針は試料に接触しない。しかし、位相は段差を降りた瞬間に減少し、その後探針が

試料に接触していくと位相は増大して行き、最終的に振幅と位相は新しい定常値に落ち着

く。それでは位相信号を用いて速いフィードバック制御を行った場合ではどうであろうか。

段差を降りてからカンチレバー振動の1周期程度の時間のあと段差後の低い面のz位置は

段差前の高い面の位置に来る。その結果、カンチレバーの振幅はほとんど変化しない内に

探針・試料間の接触の強さは段差前の走査時における強さに戻される。従って、Q値が大き

く振幅の応答が遅くても、フィードバック制御は正常且つ高速に働くことになるはずであ

る。但し、フィードバック制御が遅い場合には、振幅応答の遅さが原因となって、フィー

ドバック走査は振動すると予想される。以上のことはまだ実験的に明らかにされていない

が、非侵襲高速AFMが実現される可能性を示唆しており、今後の高速AFMの技術開発課題

のなかでも最も重要な課題であると思われる。

これまで様々な生物試料のAFM観察が行われているが[11]、生きた細胞表面のタンパク質

を含む微細構造の観察はAFMではまったく実現されていない。生きた細胞表面は極めて柔

らかいため、探針の接触で変形してしまうことが一番大きな理由であるが、細胞膜に埋め

込まれたタンパク質はダイナミックに動いているからでもある。非侵襲高速AFMが実現さ

れれば、この未踏の観察が可能になるものと期待される。細胞膜の変形の緩和時間がある

程度長い場合には、探針・試料間にかかる力がある程度大きくても、Tapping速度が速けれ

ば細胞膜は変形する暇がなく、その結果、イメージングできる可能性もある。この点も未

だ確認されておらず、今後の大きな課題のひとつと言えよう。生きた細胞表面のタンパク

質のイメージングは、固定剤を使ってタンパク質の動きを止めた状態ではあるが、完全な

非接触状態でイメージングできるイオンコンダクタンス走査プローブ顕微鏡で実現してい

る[12]。しかし、プローブとなるガラス管先端の穴の大きさを数nmまで小さくしても、完全

な非接触であるため分解能はよくない。高速イオンコンダクタンス走査プローブ顕微鏡の

実現の可能性はある。もうひとつの非侵襲AFMイメージングの可能性については、11節の

最後で簡単に触れる。

9. 更なる高速化に向けて

1画像を1msで撮ることはすでに実現されているが[13]、フィードバック制御をかけずに行

われているため、水中にある生物試料の動態観察は不可能である。フィードバック制御は

あくまでも必須と考えなければならない。フィードバックループに含まれるデバイスの中

で最も遅いデバイスはスキャナーである。圧電素子による距離制御の速度はほぼ限界にき

ている。他方、微小カンチレバーの共振周波数は極めて高く、更に共振周波数を上げるこ

とも可能である。それ故、カンチレバーを直接駆動して、探針・試料間の距離制御ができ

れば、更なる高速イメージングが実現されると予想される。カンチレバーの直接駆動には

3つの異なる方法がこれまで検討されてきた。(a)ZnOなどの圧電体をカンチレバーにコート

して電圧で駆動する方法[14]、(b)磁性体をコートして磁界で駆動する方法[15]、(c)光をカン

11

チレバーに照射して熱膨張で駆動する方法[16,]。圧電体の場合には、コートすること、更に

は絶縁処理を施すことにより共振周波数が下がる。また、加工が複雑なため微小カンチレ

バーは実現されていない。磁性体コートも共振周波数を下げる。光による駆動では、Q値の

大きいカンチレバーの励振に用いられた例はあるものの、探針・試料間の距離制御に用い

られた例はこれまでなかった。その理由は、熱伝導過程は遅く、速い距離制御ができなか

ったためである。図5に示した逆伝達関数生成回路を用いて、遅い熱伝導過程の補償が最近

実現している[7]。カンチレバーは圧電体を用いたスキャナーに比べその共振ピークは単一

であるため、この補償法は極めて有効である。オリンパスが開発した微小カンチレバーで

は、光による変位効率は405 nmのレーザを用いた場合に約10 nm/mW、908 nmのレーザの場

合に約1 nm/mWである[7]。この差はコートした金の光吸収の程度の差による。405 nmの光

は生物試料にダメージを与えるため実際には利用できない。908 nmではまったくダメージ

は起こらない。908 nmの光を用いて、探針・試料間距離制御を行った場合、240 nm×240 nm

の走査範囲、100本のライン走査の条件でタンパク質のビデオレートイメージングが実現し

ている[7]。ところで、非侵襲の条件を満たすにはカンチレバーのQ値を大きくしなければな

らないが、光による距離制御の高速性と相容れないと思われるかもしれない。レーザ駆動

を行う場合、Q値を大きくしたカンチレバーの伝達関数と同じ伝達関数をもつMockカンチ

レバーに対してQ値を下げるQ値制御を施した信号をレーザドライバーに印加すれば、レー

ザ駆動に対してだけQ値を下げることが可能である。従って、非侵襲性とレーザによるカン

チレバーの高速駆動は両立し得る。

レーザによる高速駆動の弱点は、最大変位を大きくできないこと、カンチレバーの変位

検出のダイナミックレンジを大きくしなければならないためセンサー感度が低下すること

にある。この問題は、圧電体を用いたスキャナーと併用し、低周波の駆動は圧電体に任せ、

高周波の駆動だけをレーザで行うダブルアクチュエーション方式で解決可能と思われる。

最近MEMS技術を用いて静電アクチュエータが開発されている[17]。微小な試料ステージ

スキャナーを作ることが可能であり、従来の圧電体を用いたスキャナーに比べてはるかに

高い共振周波数を達成できるものと期待される。

10. 認識イメージング

AFMは試料の凹凸を計測する顕微鏡であり、試料系に複数の異なる分子種があっても形

状が似ていれば区別することは難しい。探針に特定の分子に対する抗体や基質をPEGなどの

リンカーを介して結合させ、それらと特定分子との結合をモニターする認識イメージング

法が考案された[18]。カンチレバーのサイン波振動のボトム側の振幅とピーク側の振幅を

別々に計測する方法であり、すでに述べた高速振幅計測回路を応用したものである。ボト

ム側の振幅は試料の形状情報を与える。ピーク側の振幅は分子間に結合があった場合、リ

ンカーが張る結果、振幅が余分に減る。分子間に結合があった場合には、カンチレバーの

位相も変化するので、位相イメージングでも認識イメージングは可能である。但し、位相

12

変化の原因は他にもあり得るため解釈が難しくなる。

11. 細胞内観察の可能性

AFMは試料表面を観察する顕微鏡であり、表面下

にある物体を見ることはできない。最近になり、通

常のAFMに超音波を組み合わせることにより、細胞

内を観察した例が報告された[19]。通常の走査型超

音波プローブ顕微鏡では、試料基板背面から超音波

を当て、カンチレバーをアンテナとして透過超音波

の振幅と位相を検出する。それに対し新しく開発さ

れた顕微鏡法[19](scanning near-field ultrasound

holography; SNFUH)では(図12)、試料基板背面か

ら超音波を当てると同時に、その周波数 1f と若干異

なる周波数 2f の超音波をカンチレバーに当てる。それ

振周波数の差にほぼ等しくなるように設定する。試料

傍にある探針に達し、カンチレバーを伝わってきた周

果、 21 ff の周波数と 21 ff の周波数の音波が生じ

する。超音波は試料を通過してくる間に、一部散乱さ

変わる。発信器から出力する 1f と 2f の信号をミキシン

り、それを基準信号として、 21 ff の周波数のカンチ

水平方向の分解能は通常のAFMと同じ程度である。垂

くる超音波を利用しているため、超音波伝搬方向に垂

のと考えられ、分解能はないと考えられる。マラリア

血球内のマラリア寄生虫が可視化された。未知な部分

当てる方向を変化させることにより3次元情報を得ら

上により更に微細な細胞内構造を観察できる可能性が

ことで、細胞内微細構造の動態を観察できる可能性を

基板に載せたタンパク質などに上記の方法を適用し

超音波はほぼ均一と考えられる。それ故、試料に接近

るカンチレバーの共振を検出することにより、試料の

可能性もある。

参考文献

1. M. Kitazawa, K. Shiotani and A. Toda: Jpn. J. Appl. Phy

2. T. Ando, N. Kodera, E. Takai, D. Maruyama, K. Saito

98: 12468-12472 (2001).

図 12:SNFUH の構成

らの周波数の差はカンチレバーの共

を通過してきた超音波は試料表面近

波数 2f の超音波と干渉する。その結

、後者の音波はカンチレバーを励振

れ、透過した超音波の位相と振幅が

グして 21 ff の周波数の信号を作

レバー振動との位相差を検出する。

直方向については、試料を通過して

直な面への投影像を観察しているも

に感染された赤血球の観察では、赤

の多い顕微鏡法であるが、超音波を

れる可能性があり、また、感度の向

ある。高速走査技術と組み合わせる

秘めている。

た場合、試料基板や試料を透過した

した探針で起こる超音波の干渉によ

形状を非接触でイメージングできる

s. 42 Part 1:4844-4847 (2003).

and A. Toda, Proc. Natl. Acad. Sci. USA

13

3. T. Ando, T. Uchihashi, N. Kodera, A. Miyagi, R. Nakakita, H. Yamashita and K. Matada: e-J.

Surf. Sci. Nanotech. 3:384-392 (2005).

4. B. Anczykowski, J.P, Cleveland, D. Kruger, V. Elings, and H. Fuchs, Appl. Phys. 66: 885-889

(1998).

5. N. Kodera, H. Yamashita and T. Ando, Rev. Sci. Instrum. 76: 053708 (pp. 5) (2005).

6. S. Morita, H. Yamada and T. Ando, Nanotechnol. 18:08401 (pp. 10) (2007).

7. H. Yamashita, T. Uchihashi, N. Kodera, A. Miyagi, D. Yamamoto and T. Ando (submitted to Rev.

Sci. Instrum.)

8. N. Kodera, M. Sakashita, and T. Ando, Rev. Sci. Instrum. 77: 083704 (pp. 7) (2006).

9. T. Uchihashi, H. Yamashita, and T. Ando, Appl. Phys. Lett. 89: 213112 (pp. 3) (2006).

10. J.P. Cleveland, B. Anczykowski, A.E. Schmid and V.B. Elings, Appl. Phys. Lett. 72: 2613-2615

(1998).

11. K.I. Kirat, I. Burton, V. Dupres and Y.E. Dufrene, J. Microco. 218, Pt.3: 199-207 (2005).

12. A. I. Shevchuk, G.. I. Frolenkov, D. Sánchez, P. S. James, N. Freedman, M.J. Lab, R. Jones, D.

Klenerman and Y. E. Korchev, Angew. Chem. Int. Ed. 45:2212-2216 (2006).

13. L.M. Picco, L. Bozec, A. Ulcinas, D.J. Engledew, M. Antognozzi, M.A. Horton, and M.J. Miles,

Nanotechnology 18:044030 (4pp) (2007).

14. B. Rogers, T. Sulcjek, K. Murray, D. York, M. Jones, L. Manning, S. Malekos, B. Beneshott, J.D.

Adams, H. Cavazos and S.C. Minne, Rev. Sci. Instrum. 74: 4683-4686 (2003).

15. G. R. Jayantj, Y. Jeong and C. -H. Menq, Rev. Sci. Instrum. 77: 053704 (pp. 7) (2006).

16. D. Ramos, J. Tamayo, J. Mrtens and M. Calleja, J. Appl. Phys. 99: 124909 (pp. 8) (2006).

17. A.G. Onaran, M. balantekin, W. Lee, W.L. Huges, B.A. Buchine, R.O. Guldiken, Z. Parlak, C.F.

Quate, F.L. Degertekin, Rev. Sci. Instrum. 77: 023501 (pp. 7) (2006).

18. C. Stroh, H. Wang, R. bash, B. Ashcroft, J. Nelson, H. Gruber, D. Lohr, S.M. Lindsay and P.

Hinterdorfer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 12503-12507 (2004).

19. G. S. Shekhawat and V. P. Dravid, Science 310: 89-92 (2005).

20. 竹安邦夫編集 「ナノテクノロジーによる生命科学 ナノバイオロジー」共立出版 第

7章、第9章

21. 高松哲郎編集 「バイオイメージングがわかる 細胞内分子を観察する多様な技術とそ

の原理」 羊土社 トピックス編第3章

14

図の説明

図1:Tapping モード AFM の装置の構成

図2:高解像 AFM 画像の例(バクテリオロドプシン)

図3:AFM 静止画像の例。(a)脂質2重層膜上のストレプトアビジンの2次元結晶、走査範

囲 100nm、(b)筋原線維、スケールバーは 1μm、(c)2量体ミオシンVの頭部・ネック部、(d)

骨格筋ミオシン頭部、(e)骨格筋ミオシン頭部・ネック部の原子モデル

図4:AFM 動画像の例。数字はフレーム番号。(a)高密度で基板に吸着させたミオシンVの

上を滑走するアクチンフィラメント。走査範囲 1μm、イメージング速度 1s/フレーム。(b)

まばらに基板に吸着させたミオシンVと相互作用して運動するアクチンフィラメント。ア

クチンフィラメントのこぶの間隔は 36nm。イメージング速度 160ms/フレーム。(c)ATPase

反応で駆動されるダイニンCのステムの運動。イメージング速度 160ms/フレーム。(d)基板

に吸着させた GroEL に ATP の生成に伴い結合する GroES。イメージング速度 1s/フレーム。

図5:高速振幅計測回路

図6:高速スキャナーの構造

図7:Mock スキャナーの出力を利用したzスキャナーのアクティブダンピング

図8:逆伝達関数生成回路

図9:フィードバック帯域のセットポイント依存性。実線:通常の PID 制御の場合、破線:

動的 PID 制御の場合。それぞれについて、(カンチレバーの自由振動振幅)/(試料の最大

高さ)の値は上の曲線から下に向かって、5, 2, 1, 0.5。

図10:カンチレバーの共振周波数シフトと位相シフトの関係。黒の曲線:自由振動の場

合の共振特性。グレーの曲線:探針・試料間に斥力が働いた場合の共振特性。①共振周波

数のシフト、②振幅の変化、③位相の変化。

図11:段差を走査したときの振幅と位相の変化。カンチレバーの Q 値は 20 として計算。

図12:表面下の構造を観察できる走査型超音波プローブ顕微鏡の原理。