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1 ウォーターズのソリューション ACQUITY UPLC BEH Amideカラム ACQUITY UPLCシステム ACQUITY SQD キーワード 臭素酸分析、飲料水、水道水、 微量不純物定量、オゾン高度処理 アプリケーションの利点 HILIC条件でのBEH Amideカラム使用により、 ポストカラム誘導体化なしに遊離の臭素酸 イオンの保持と検出を向上 汎用性が高いLC-MS 検出により従来から使 用されるイオンクロマトグラフィー(IC)法 に比べて信頼性・感度高い分析法 はじめに 水道水中の臭素酸は発がん性の化合物であり、水道水中に極低濃度含ま れていても長期的に健康に悪影響を与える。臭素酸は水源に内因性の物 質ではなく、水のオゾン高度処理に伴う副生成物である。オゾンが水源 に存在する臭素と反応することで生成するが、臭素の量は水源によって 異なる。これまで、臭素または副生成物の臭素酸を除去する実用的な方 法はなく、水の処理過程における臭素酸の生成を制限するのが唯一の解 決方法である。これには、安全な水道水の基準を超えないように臭素酸 濃度を注意深くモニターする必要がある。世界保健機関(W.H.O. )の飲料 水水質基準の勧告値は10ppb (μg/L)に限定されている 1 ACQUITY BEH Amideカラムを用いた 水道水中の臭素酸分析 Sachiki Shimizu, FUJIFILM Fine Chemicals Co., Ltd., Kanagawa, Japan Kenneth J. Fountain, Kevin Jenkins, and Yoko Tsuda, Waters Corporation

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1

ウォーターズのソリューションACQUITY UPLC BEH Amideカラム

ACQUITY UPLCシステム

ACQUITY SQD

キーワード臭素酸分析、飲料水、水道水、

微量不純物定量、オゾン高度処理

アプリケーションの利点 ■■ HILIC条件でのBEH Amideカラム使用により、

ポストカラム誘導体化なしに遊離の臭素酸

イオンの保持と検出を向上

■■ 汎用性が高いLC-MS検出により従来から使

用されるイオンクロマトグラフィー(IC)法

に比べて信頼性・感度高い分析法

はじめに水道水中の臭素酸は発がん性の化合物であり、水道水中に極低濃度含まれていても長期的に健康に悪影響を与える。臭素酸は水源に内因性の物質ではなく、水のオゾン高度処理に伴う副生成物である。オゾンが水源に存在する臭素と反応することで生成するが、臭素の量は水源によって異なる。これまで、臭素または副生成物の臭素酸を除去する実用的な方法はなく、水の処理過程における臭素酸の生成を制限するのが唯一の解決方法である。これには、安全な水道水の基準を超えないように臭素酸濃度を注意深くモニターする必要がある。世界保健機関(W.H.O.)の飲料水水質基準の勧告値は10ppb(μg/L)に限定されている1。

ACQUITY BEH Amideカラムを用いた水道水中の臭素酸分析Sachiki Shimizu, FUJIFILM Fine Chemicals Co., Ltd., Kanagawa, JapanKenneth J. Fountain, Kevin Jenkins, and Yoko Tsuda, Waters Corporation

2 Analysis of Free Bromate Ions in Tap Water using an ACQUITY BEH Amide Column

結果および考察

従来法での課題

1. W.H.O.ガイドラインを遵守した水道水の品質モニターを確実に行うには臭素酸の検出下限値(1μg/L)が要求される。

2. イオンクロマトグラフィー(IC)-ポストカラム(PC)誘導体化法(三臭素イオン法):

a)有機炭素レベルの高い水源では臭素イオン含量がマスクされ、結果として誤ったデータになる。

b)炭酸塩/重炭酸塩は天然に高濃度で存在し、臭素酸分析の阻害となる

c)ポストカラム反応で強酸を使用するため機器のダウンタイムが長く、機器のメンテナンスや操作性が悪い

3. イオンクロマトグラフィー (IC) -質量分析法 (IC-MS/MS):

a)ICに使用する移動相がMS分析のイオン化を抑制するため、臭素酸の感度および分析の頑健性を低下させる

b)IC-MS はイオン化する分析種に対してのみ有用

c)水質分析を行っている研究機関で広く採用されていない。

臭素酸分析のためのHILIC-LC/MS アプローチ

1. MS分析に適した移動相を用いてHILIC条件下でBEH Amideを使用し臭素酸を保持

2. アセトニトリル比率の高い移動相を使用することで誘導体化の必要なく十分な検出感度が得られる。

3. 汎用性の高いLC/MSシステムは他の分析にも使用できるため、装置の利用性と柔軟性を向上できる。

表1  臭素酸分析法の比較。HILIC分析法のLOQ(定量下限値)は    シグナルノイズ(S/N)比=10で決定。

臭素酸分析

IC-PC IC/MS HILIC-LC/MS試料の前処理 不必要 不必要 必要(希釈)強酸を用いた     ポストカラム反応

必要 不必要 不必要

ポストカラムでの   有機溶媒添加

不必要 必要 不必要

定量下限値 (ppb)

標準液 1 0.1 0.1

水道水 1 0.1 0.5

1ppb標準溶液の再現性 (%RSD)

5~6 2~3 2~3

定性分析       (スクリーニング) No Yes Yes

汎用性 No No Yes

実験 サンプル調製:全ての標準液は90%アセトニトリル/10%脱イオン水を用いて調製。水道水サンプルはアセトニトリルで5倍に希釈。

LC システム: ACQUITY UPLC

検出器: ACQUITY SQD (-ve ESI, SIR mode m/z 128.9)

カラム: ACQUITY BEH Amide 2.1x100 mm, 1.7 µm(製品番号:186004801)

カラム温度: 40℃

注入量: 20 µL

注入モード: Full Loop

流速: 0.3 mL/min

アイソクラティック移動相: 90% アセトニトリル: 10% 50 mM ギ酸アンモニウム水溶液 (非緩衝)

弱洗浄溶媒: アセトニトリル

強洗浄溶媒: 水

シール洗浄: 50% アセトニトリル水溶液

データ管理: MassLynx version 4.1

3

感度信頼性の高いデータを確立するために、分析法は分析に課せられた処理限界の少なくとも10倍以上の感度が得られることが望ましい。臭素酸に関してのW.H.O.ガイドラインの10ppbに従うと、1ppb以下まで検出できる必要がある。従来のIC法は低濃度まで臭素酸を検出可能だが労力がかかり、ポストカラム反応に用いる試薬のため厳しい機器のメンテナンスが必要となる。一方、MS検出と組み合わせたHILICクロマトグラフィーでは、操作性がよく高い感度も得られる。図1には0.05-1.0ppbの範囲の選択イオンレコーディング (SIR) MS クロマトグラムを示す。臭素酸イオン定量には128.9 Daの質量電荷比をモニターした。

0 1 2 3 4 5 6 7 min

図 1. 標準液のSIR クロマトグラム (m/z 128.9)

回収率水道水に臭素酸を添加した時の回収率を表2に、詳細なクロマトグラムを図2に示す。水道水の臭素酸添加回収率はどちらの添加濃度でも95%以上で非常に良好だった。

表 2. 水道水への臭素酸添加回収率 、回収率の値はブランクサンプル中の臭素酸濃度で修正。添加回収率試験に用いた水道水はもともと1.21ppbの臭素酸を含有。

Bromate (ppb)

添加濃度 測定値 試料中濃度 回収率(%)

0 0.24 1.21 -

1 0.44 2.18 97.0

4 Analysis of Free Bromate Ions in Tap Water using an ACQUITY BEH Amide Column

5 1.21 6.06 97.0

Tap WaterS/N = 19

Tap Water + 1 ppb BrO3

S/N = 27

Tap Water + 5 ppb BrO3

S/N = 69

0 1 2 3 4 5 6 7 min

図 2. 臭素酸を1ppbおよび5ppb添加した水道水サンプルのSIR クロマトグラム。水道水はもともと1.21ppbの臭素酸を含有。

再現性臭素酸標準液および水道水に臭素酸1ppbを添加した溶液の再現性(n=9)を表3に示す。1ppb標準液と水道水に添加したサンプルの相対標準偏差(RSD)はそれぞれ1.7%、6.7%であり、添加範囲に渡って良好な直線性を示した。(図3)

表3. 臭素酸標準液および水道水に臭素酸1ppb添加した溶液のピーク面積再現性 (n=9)。 注入サンプルの臭素酸濃度は0.2ppb(希釈前の1ppbサンプルに相当)。臭素酸分析試料 平均値 (n = 9) σ %RSD

1.0ppb 標準液 1657 29 1.70.5ppb標準液 880 40 4.60.2ppb標準液 357 18 5.10.1ppb標準液 164 18 11.0水道水+1.0ppb 605 37 6.7

5Analysis of Free Bromate Ions in Tap Water using an ACQUITY BEH Amide Column

Waters、ACQUITY SQD、ACQUITY UPLC、UPLC は Waters Corporationの登録商標です。MassLynx, および The Science of What’s Possibleは Waters Corporationの商標です。その他すべての登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

日本ウォーターズ株式会社 www.waters.co.jp東京本社 140-0001 東京都品川区北品川1-3-12 第 5小池ビル TEL 03-3471-7191 FAX 03-3471-7118大阪支社 532-0011 大阪市淀川区西中島5-14-10 サムティ新大阪フロントビル11F TEL 06-6304-8888 FAX 06-6300-1734ショールーム 東京 大阪テクニカルセンター  東京 大阪 名古屋 福岡 札幌

このISO9001認証登録ロゴは、Waters Corporationのものです。

適用規格:JISQ9001:2008(ISO9001:2008)登録番号:JMAQA-331 登録日:1999年05月31日審査登録範囲:理科学機器(液体クロマトグラフ・質量分析 装置・データ管理システム等)の輸入・販売から保守業務 までのトータルサポート及び保守プランの設計・開発

©2012 Waters Corporation. Produced in Japan. 2012年3月 720004197JA PDF

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

臭素酸濃度 (ppb)

0

1000

2000

3000

4000

SIR面積応答

図3. 臭素酸の検量線(0.1 ppb – 10 ppb).

結論HILIC-LC/MS法は、水道水中の臭素酸イオンを0.1ppbレベルまでポストカラム誘導体化なしに標準溶液を分析できる非常に高感度な分析法であることが分かった。本アプリケーションではHILIC分離モードおよび世界中多くのラボですでに採用されている柔軟性の高いLC-MSを用いて水道水中の臭素酸イオンが分析できる可能性を示した。

参考文献1. WHO (2005) Background document for Development of WHO Guidelines for Drinking-Water Quality: Bromate in Drinking

Water. World Health Organization, WHO/SDE/WSH/05.08/78.

2. 水道法水質基準