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「ラシュディ事件と日本:歴史をいかに語るか」『各科研修会研修要録』平成十二年度名古屋市教育センター 2000年

(2) 歴 史 H12.6.27

ラシュデイ事件と日本一歴史をいかに語るか

講師国際日本文化研究センタ一助教授 稲賀 繁美

1 はじめに

小説『悪魔の詩』にまつわる事件は,日本では今から 12年前の1989年に『ユリイカ』という雑誌に紹介された。

作品はその後,日本語に翻訳された。訳者の五十嵐一(ひとし)は筑波大学で比較文化を担当していた。その彼

が1991年7月14日に殺された。この本が出版された当初は,イスラムとヨーロッパとの間で,言論の自由などに関

して論争のあることが,他人ごとのように論評されていたが,ほかならぬ日本で、火の手が上がってしまった。こ

の事件から何が浮かび上げるのかを取り上げる o

2 サルーマン・ラシュディと『悪魔の詩』について

サルーマン・ラシュデイは, 1947年インドの独立の直前にボンベイで生まれた。父親はケンブリッジ大学で学

んでいた人でずいぶん裕福な家庭に育った。二重言語の環境の中で育った。 1981年にブッカー賞を受賞して一躍

有名になった。そして, 1988年に『悪魔の詩Jを発表した。ムハンマドが宣教の初期の段階で,神様のことばと

間違って,多神教を信じろということばを吹き込まれ,一時それを信じてしまったという言い伝えがある。これ

が,事実かどうかは,イスラムの神学者の中でも議論が分かれるが, r悪魔の詩Jという題名が,そのことを扱っ

たものであることは,イスラムのことを少しでも知っている者にはすぐわかる o r悪魔の詩Jという小説が,クル

アーンを改貧し,預言者ムハンマドを冒涜したものだという噂が,出版当初から流れはじめた。聖書はミサまで

その国のことばで行うが,クルアーンは原則的に翻訳は不可能だ。してはいけないことになっている o 神の言葉

が直接アラビア語で宣べられたと考えられているからだ。聖書とは,別格の書物である D 聖書はイエスの弟子た

ちが,われわれのことばで書いた。クルアーンをパロデイーにしてしまうような書物は,信者にとっては,胃潰

的なものである O

サルーマン・ラシュデイはもともとイスラムの家庭の出身である O 彼は,本を書いたあとイスラムを捨てたと

いったが,死刑宣告を受けると,イスラムであると訂正した。神という絶対の存在に気が付いて,その信仰をは

じめたら,途中でやめるということはありえない,というのがイスラムの理屈である。イスラムの側から見れば,

信者でありながら,クルアーンを冒漬するのはけしからんということになる o

3 各国の対応

インドでは出版後,発禁になる。その理由は非常に政治的である。当時のラジヴ・ガンデイ一首相が88年の総

選挙で1億人近くいるイスラム教徒を敵にまわしては,選挙は勝てないと判断してのことである o それ以外の理由

もあるが,ラシュデイはこの決定にたいして,インドという文明国としては,はなはだもとる判断である口自分

の小説がそのような,政治のフットボールに利用されたのは,非常にけしからんと抗議の手紙を書いた。これに

対して,シャハブッティーンというイスラムの代議士は反論して,そもそも政治的な,宗教的なポルノグラフィー

を読む必要はないし,聖なるものと,俗なるものの区別を忘れてしまったのがヨーロッパ文明で,その行き着く

先を象徴的に表しているのが,この小説である。ラシュデイは文学的植民地主義にそまってしまっている。そん

なものにたいして,インドの民衆が蜂起するのは当然である O それを未然に防ごうとしたインド政府の対応こそ

文明的であると反論した。小説は中身以前に,政治の道具になっていた。

88年12月2日に問題はイギリスに飛び火する o イスラム系の住民の多い地域で,ラシュデイの本を焚書にすると

いう事件が起こった。ラシュデイの小説の中に,読みようによっては,移民としてインドからイギリスに渡って

きた人たちが,自分たちの扱われ方,差別の受け方に対して,怒りを発している,と読める部分もたくさんある D

ところが,ラシュデイにとって仲間であるはずの移民たちが,彼の本がけしからんと言い出した。

1月22日にパキスタンのイスラマバードの暴動で, 6名の死者を出す。この時の襲撃の対象はアメリカの文化セ

ンターであった。西側の非イスラム化された勢力が,自分たちイスラムに対して,何かよからぬことを考えてい

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-7-

--

るo その一つの象徴がラシユデイの本であって,その背後にいるのはアメリカであろうという,一種の短絡的妄

想,つまりイスラムが善であり,西側が悪である,そして,その背後にはアメリカがいるという論理で大衆動員

がかけられたということは疑いがない。政治的にみれば,当時の首相プット氏が親米であるため,そのゆさぶり

をかけるためにラシュデイの本を口実に使ったと言われる O これで5000名規模の大衆動員がかけられてしまう O

西側世界によるイスラムへの侵略であり,その陰謀の手先としてラシュデイの本を使われた。では,彼らはラシュ

デイの本を読んだか。彼らのほとんどの人は読んでいない。「読んでいないけれど,読んではいけないJという人

がたくさん出てくる状況である O インド,西アフリカでは日本と違い文盲率が非常に高い。

4 政治の道具として

はたしてラシュデイの本は,政治的なスケープゴートだったのか。それとも意図的に暴動を起こそうとする教

唆をある意味で含んでいたものなのか。本来は英国を告発する移民側の宣誓であったはずなのが,その仲間だ、った

はずの移民たちから忌避され,排除された。典型的にエグザイルの文学である。亡命の放浪の文学であるといって

し),,)0

ホメイニのFatwaが89年2月14日に出された。22日に北米で販売開始なので,北米で販売されることを見越して,

Fatwaを出したのではないかと考えられる。Fatwaは日本では死刑宣言と訳されているが,誤訳である O

Fatwaとはシーア派で法解釈の権威を持った人による意見書のこと O アヤトラ(神の言葉をつかさどる人)の地

位にあるホメイニから見れば, r悪魔の詩』をたたくことは当然のことであるという考えもある O イスラムの側か

らみればあくまでもラシュデイはイスラムの信者である。イスラムの法は,国家や民族を越えて信者に適用され

る。したがって,ラシュデイがイギリスにいてイギリスの法によって身を守られようとも,それを飛び越えてイ

スラムの法はラシユデイに適用される。もとより,ラシユデイの行為は,世界中に広がるイスラム共同体への裏

切りである,などなど。上記の考え方は,イスラムだけか。そうではなく,ユダヤ・キリスト教の伝統にすでに

ある O ホメイニの宗教的な立場にあれば,これだけ暴動を起こしてしまった本があらわれた場合に, Fatwaで、これ

は胃潰であるという判断を示さずにはいられない状況にあったのだろうとも推測される O イスラム法と国際法の

関係については,イラン政府はラシュデイの身に何が起こっても関係はないと発表した。国際法上は当然の判断

で,ここに世俗の法と宗教法が二重にかぶさっているo

ホメイニは官漬は許されないと言った。これは,当然である O しかし,この地上で冒演を犯した者が殺されな

ければならない,という理由にはならない。これは,スンニ派のみならず,イランで多数派のシーア派の中でも

議論になる。イスラムが一枚岩ではない,またイラン政府内部も一枚岩ではないことを示す。

ラシュデイを死刑にするという宣告は,マスメディアを狙った効果が期待できる。イランの国内で革命の維持

と牽制。国民の意識を引き付ける o この10年間の動き(サウジ転覆失敗,マッカ奪回失敗,対イラク戦争不勝利)

にわだかまる不満のはけ口を与える一種の政治地理学的転進ともいえる。続いて,シーア派の急進派が中心になっ

て,このあとボンベイ,カラチで暴動が起こる O このあたり,国際的にこの事件が注目されるようになる O 片一

方で,イランの草命運動が国外に輸出されている。それがあたかもヨーロ ッパから見れば,国際的テロリズムと

非難される。

一方からみればイラン革命の成果。ヨーロッパはそれに対して国際テロリズム,のレ ッテルをはる o 結果は,

ホメイニのメディア戦略の成功。もともとラシュデイの本は権力濫用の弾劾であったが,その本が見事に権力に

よって利用された結果となった。虚構が現実の政治を動かしてしまった。そこに虚構のもつ真実があるのではな

いか。ラシュデイが言った「暴動の犠牲者に共感は覚えない」とのコメントに対して,欧米の多くのインテリも

同じ意見で示した。小説に罪はない。政治的に利用した奴が悪いという論理である O

5 アメリカ合衆国の販売開始を契機に

アメリカでの販売の目前に,ブリユ ツセルで12ヵ国の蔵相会議が行われ,その際に,国際法違反非難決議, 報

復として対イラン大使召還, 禁輸措置で共同歩調がとられた。それに対して,イランは「西欧が共謀したイスラ

ムへの陰謀」と反論した。しかし, 1ヵ月後に禁輸措置は解除された。 ドイツを中心にして,ヨーロ ッパがこの問

題をどのように考えていたかがわかる O 神様の問題や言論の自由といった問題ではなく,イスラム,背後には冷

徹な経済政策の配慮があった。スンニ派の対応は,処刑命令には反対,自国内では発禁処分,他国への出版停止

と回収を要請。

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-8-

22日発売。アメリカのペンクラブと作家連盟は「回収はアメリカ国民に不快,権利への侵害」という声明文を

出し,これをイランの国連代表部につきつけようとする O ここから明らかなのは,アメリカ国民ないしアメリカ

の権利が世界中の表現の自由の右代表にして,自由の守護神であるという激烈な正義感が見事に出ていることだ。

自由の守護神(言論の自由を守る)ニイランの国際テロリズムへの対抗。こうして,妥協の余地がない対立の図

式が出来上がる O このあたり,日本の報道が大きくなる。

暗殺命令はけしからんとの判断と,表現の自由の擁護。これらふたつはつながらない。癒着してしまう o こう

して何がなんでもラシュデイの本を出版しないと表現の自由が犯されるとする極論へと論調が動いている o 反対

に,穏健なイスラム教徒から見ても,冒漬であると言われている出版物をあえて出版するということは,はっき

りといって信者への悪質な挑発である O これは,特にイギリスやフランスなどの移民の多い国のイスラムの知識

人から出た意見である。この時のカナダの対応は回収。その背後には,レバノンから多数の知識人が亡命してい

た事実がある D 日本の場合 翻訳の出版社の広告ができなくなったり, 書庖が自主的に回収にまわるなどのこと

があった。日本は腰砕けであった。

アメリカの知識人は出版しないことはテロリズムへの屈伏だという o そして,イスラム世界への対抗措置は硬

直化する D だが,自由を守るための行動によ って,結果的に自分たちの行動が不自由になった。表現の自由とい

う大義の伝達手段に還元された文学作品,プロパガンダマシーン,というテヘラン側のレ ッテルを張り通りの事

態となる O 結果的に,作品は西洋のかかげる「自由jの囚人になってしまった D アメリカでは,自由はある意味

で絶対不可侵である。だが 自由は不可侵であるとするのと自由を聖域とすることとは違う o 聖域となった自由

は果たして自由なのか。聖域があれば タブーは存在する O タブーが出てくると,官漬がある。アメリカの知識

人は自由が冒漬されているから 自由を守ろうと訴えた。だが,果たして,自由の胃潰があるのか。冒演する自

由はある O だが,自由に対する冒j賓という考えは,自由を聖域ーすなわち不自由ーにするという矛盾を犯してい

るo

これが,イグナテ ィーフの議論の要点だ。ところで,英国には冒涜法があるロキリスト教に冒涜法があって,

なぜイスラムにないのか。進歩的な知識人はそこがおかしいと感じた。しかし,そう主張したのが,むしろアン

グリカンチャーチの牧師。それに対して,労働党が逆に移民の反発に理解を示し,保守党のサ ッチャ一政権がラ

シユデイ 擁護にまわった。ラシユデイ事件をきっかけに,冒j費法がいびつなものであることが明らかになった。

つまり,宗教と世俗に関係は決着がついたはず、だ、ったのに,そうではなかった。冒漬法があてはまるのはキリス

ト教のみ。それでは実情にあわないという矛盾を露呈した。

6 ラシュディ「事件Jの功罪

矛盾を白日にさらすラシュデイの事件は,実は異なる文化の問で,それぞれの社会生活のゲームの規則が違い,

それが衝突した時に,何が起こり得るかということを実に見事に示した。

こういう状況の中で,日本の訳者は何をしようとしていたか。五十嵐ーはもともと数学をやっていた。その後,

美学に転向。出版に対して,在日パキスタン協会のデモに対して「文化人は仕事があとに何を引き起こすか考え

てはいけないjと翻訳を決意した理由を述べている O 言論の自由を守るためには,日本語訳を出さなくてはいけ

ないというのではなく ,テヘラン側とヨーロッパ側にある対立にさらに第三項目を加え,中立の立場である日本

で,日本語訳を通して,理解を深め,相対立する両者に対して仲裁をする,といった決然たる意思が翻訳の背後

にあった。

五十嵐の言葉を借りれば,中東の問題について日本は傍観者的立場にいる o その日本を国際化してやろうとい

うのが,五十嵐のねらいだったD 傍観者ではいられない。そのために,知的な介入をする。それが知識人の義務

である D これが彼の確信であった。調停役を請われるでもなく買って出た五十嵐は,あたかも審判か裁判官のよ

うにホメイニ師とも対等な立場にたって,哲学問答めいた架空の書簡まで、作っていた。この大胆な宣言の裏には,

アメリカ合衆国中心の国際報道と,それに付和雷同し,いざ内輪に火の手があがればもみ消しに走る,事なかれ

主義の日本のマスコミに対する,五十嵐自身の積年の欝積がこもっていたともいえる O

7 翻訳について

日本ほど英語やドイツ語の文献が訳されている国はない。そうした翻訳は日本において,日本人だけが日本語

で読んでいるのだろうと思いがちだ。輸入しているだけなので,それが外にインパクトを与えるなどとは思って

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もいない。五十嵐が殺されたという事実は,日本語の翻訳があること自体が,日本の国境を越えた所で,なんら

かの判断の対象となり,翻訳者を殺すという結果を招いたo そのことを,迷宮入りしたこの事件が示している。

日本語訳が存在し,日本人がそれを読んでいることは世界に関係がないだろうと思っていたけれど,五十嵐の死

によってそうではないことが明らかになった。つまり,日本語に何かを翻訳をするということは,それなりの国

際的な責任を負うことも意味しているのだ。今回の翻訳は『悪魔の詩Jを政治的操作の道具から「文学」の領域

に奪回し,日和見主義的沈黙を決め込むいわゆる日本の知識人たちを尻目に,日本人として世界に意見する,と

いう五十嵐の「文学Jに対する誇示であったようにも考えられる o

これは,五十嵐の世界人権宣言(1948) に対するスタンスからも見てとれる O 世界人権宣言に批准していない

目立った国がある O それはイスラム圏のいくつかの因。人類はみな平等に生まれると書いであるが,その前に平

等にしなくてはいけない。また,人間の権利については書いてあるが,それに根拠を与える神のことについては

言及していない。翻訳のまえがきで,五十嵐は世界人権宣言に署名しなかったいくつかのイスラム教国の立場を

このように説明して支持しでいるo イスラム側が非難した本を擁護すると言っていながら,逆に西側のロ ジッ ク

には乗らないという姿勢が濃厚に出ている O

この本が官演 であるという有罪宣告の基準がとこにあるか,ということについても彼は議論している。一つ目,

五十嵐が翻訳をした理由というのは,ホメイニが言った「この本は冒演である」ということを,反証するため。

内容をきちんと読めばわかる O しかし,この五十嵐の論理は成り立ちにくい。二つ目,五十嵐はしたがって有罪

宣告をひっこめるべきだという o だが,ホメイニの死刑宣告は,内容についての判断というよりも,宣告そのも

のに意味があるのではないか。三つ目,ホメイニはまちがった判断を下した。自分は死刑にはあたらないと思う,

というのが五十嵐の主張だが,宣言に取り消しは可能か。だが,彼の主張は,仮に正しくてもイスラムの権威の

中ではいかなる影響も持ち得ない。

8 まとめ

彼の心持ちは理解できるが彼の建てたロジ ックでもっては 彼のやろうとしていたことができないことは最

初からわかりきっていた。自分が不利になることがわかっていても,それを引き受ける能力のことをネガテイブ

ケイパピリテ ィーと彼は呼ぶ。 これを彼は 自分の人生観としていた。

世界中を震憾させた,結局20世紀最後のいちばんさわがしい本。それが引き起こした事件に,日本という国籍

を持ち,日本語を手段とした人聞が,なんらかの形で,知的な介入を示そうとした。五十嵐が暗殺されたから持

ち上げるわけではない。たまたま暗殺されたことで,その主張が目に見えるものとなった。

比較文学を大学の生業にしている人聞からみれば,申し上げておきたいことがある D 近年イスラム圏を中心に,

西欧の世俗化した価値観に対抗する「宗教の復権Jの趨勢が顕著になってきた。国際報道 つまり西欧のマスコ

ミでは,ともすれば「原理主義」と規定されるこうした「東西の思想闘争」とは一見無縁にみえ,ひたすら対岸

の火事よろしくこれに傍観者的姿勢をとり,世界情勢の一方的な受信者に撤して,無軌道な経済進出を除けばお

よそ発進行為一切を疎かにしてきた日本も,外から見れば決して罪なき無害な文化輸入国ではありえない。五十

嵐ーが生命をかけて示した問題は,今なお解決を見ていない。

〈参考文献〉

佐々木英昭 編 『異文化への視線一新しい比較文学のためにj(名古屋大学出版会)

稲賀 繁美編 『異文化理解の倫理に向けてj(名古屋大学出版会)

記録(世話係) 北高等学校 柴田康 博

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平成12年度

高等学校

各科研修 会研 修要 録

平成13年3月15日 発行

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