貧困問題と就労支援
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貧困問題と就労支援ーひとごとから自分ごとへーNPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡
理事長 津 富 宏(静岡県立大学)
(一般社団法人静岡学習支援ネットワーク)
貧困への関心の高まり『下流老人』が 20万部越え
私の原点 少年院の教官として「自分が同じように生まれていたら」•家に電話がなく、郵便物も届かない家の少年•父親が病気で入院し、帰る家がない少年•祖母と二人で、「文化住宅」に住み、先輩にさらわれるのを怖がっている少年•自分の育った地域から出ることのできない少年
8.7%
9.1%
54.0%
54.9%
0.000 0.100 0.200 0.300 0.400 0.500 0.600
保護観察処分少年
少年院仮退院者
有職 無職
4
私の原点 少年院の教官として「再犯させたくない」
再犯率
貧困はやるせないしかし就労支援は突破口になるこのような経歴の私が必要とされる悲しい時代
次の数字は何だと思いますか。二人以上世帯の「 30.9%」 単身世帯の「 47.6%」
貯金のない世帯の比率です
単身世帯
二人以上世帯
貧困化する日本
相対的貧困率(日本の数字は 2009年)
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
17.4
16
14.9
13
9.99.1 8.8
7.9
アメリカ 日本 韓国 イタリアイギリス スウェーデン ドイツ フランス
平均所得より中位所得が低い→大多数の人は貧しい(井出ほか、 2016)
中間層が減少して貧困層へ(井出ほか、 2016)
貧困とは格差の問題そして世界全体の問題
アメリカ 上位 0.1%の世帯の資産と、下位90%の世帯の資産が同じ*日本 上位 40人の資産と、下位 53%の資産が同じ
ホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領「今までこれほど生産性が高まったことはないのに、分配の仕方が悪いために、今の私たち人類はそういった生産性の恩恵にあずかっていません。わずかな人が恩恵にあずかり、ほとんどの人がフラストレーションを抱えています。これは何を意味するのでしょうか?」
要は、中間層(ふつうの暮らし)の崩壊
半分の家庭が奨学金受給
1980年代 正規雇用 85%/非正規雇用15%現在 正規雇用 62%/非正規雇用38%年収 200万円以下の労働者30%非正規雇用の求人 6 割正規雇用の求人倍率 0.6 倍
未婚率雇用形態別男女別
未婚率男女別推移
貧困との戦いは地域の持続可能性を賭けた戦い
格差は社会を壊す
格差( 1985-2000)の経済成長 (1990-2010)に対する影響( OECD)
格差は経済成長を妨げる
格差の影響を抜いた分格差の影響実際の成長率
格差は貧困層の学力を下げる
格差は社会に対する信頼を壊す(井出ほか、 2016)
展望不良率: 内閣府『国民生活に関する世論調査』「これから先,生活はどうなっていくと思うか」という質問「よくなっていく」,「同じようなもの」,「悪くなっていく」,「分からない」のうち「悪くなっていく」と答えた 20代男性の比率
貧困を予期することで自殺する人が増える
こどもの貧困
子どもの貧困率
ひとり親家庭(母子家庭)の貧困は深刻である。しかし、子どもの貧困=ひとり親家庭の問題ではない。
新しい報告 『イノチェンティ レポートカード 13 子どもたちのための公平性:先進諸国における子どもたちの幸福度の格差に関する順位表』日本① 子どもの相対的所得“底辺の格差” 41カ国中で下から(格差が大きい方から) 8 番目 *所得分布の下から 10%にあたる子どもの世帯所得は 中央値にあたる子どもの約 40%
② 学習到達度における“底辺の格差” 37カ国中で下から(格差が大きい方から) 11 番目 *(平均的な学力は高いが) 学力分布において取り残されている子が多い
400万円以下 400から 600万円 600から 800万円 800から 1000万円 1000万円超0
10
20
30
40
50
60
70
31.4
43.9
49.4
54.8
62.4
30.121.4
15.7
10.1
5.6
4年生大学進学 就職など
資料出典:東京大学大学院教育研究科 大学経営・政策研究センター「高校生の進路追跡調査 第1次報告書」
進学はお金次第
貧困の連鎖(阿部、2011)
低所得食料困窮
非正規労働低学歴15 歳時点の暮らし向き
*現在とは、 20 歳~ 39 歳 50 ~ 69 歳よりも、貧困の連鎖は強固になっている
私たちはどこに向かうべきか
貧困は、お金(生活保護)では解決できない (阿部 , 2010)
「合衆国では、数名の住民がこの社会の中で推し進めたいという意見や感情を抱くと、彼らはすぐに相互扶助の道を探す。またお互いの存在を認めると、すぐに結びつく。その時から、彼らはもはや孤立した人間ではなく、ある力が遠方から見えてくる。・・・このようにして市民的協同の実例が市民たちに相互依存と権力の意識を与える」 (トクヴィル『アメリカのデモクラシー』
「じつはわたしが知っている貧困高齢者にも、幸せな人はたくさんいる。不幸せな人との違いは明らかに「人間関係」にある。」 (藤田孝典『下流老人』)
青少年就労支援ネットワーク静岡は、静岡県内の働きたいけれども働けない人びとに対して、市民のネットワークによる伴走型の就労支援を提供することを通じて、働く喜びを分かち合える、相互扶助の社会をつくることを目的とします。 ( NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡の理念)
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いい人達のネットワークが広がる働きたい・・・
だけど、一人じゃ動けない困った時、手を差し伸べてくれる人がいた
私達にできる事ってなんだろう市民の力で地域の若者をささえる
縁を生かす若者の世界を広げる
地域を歩く 場をつくる
善意のネットワークを広げる「お節介な地域をつくる」「地域が居場所となる」
孤独死のない団地をつくる住民自治で生活を支える
こども食堂、学習支援、就労支援、困窮者支援といった、個々の取り組みを、一体的なものとして、「沼津」で展開する
さいごに
給付の集中度係数が低いほど貧しい人にお金が給付されている→一部の人だけを支援することは再分配政策への反感を高める(井出ほか、 2016)
就労支援から始まる相互扶助を通じて貧困をひとごとから自分ごとへ
補論) 子どもの貧困の問題の根幹人生の前半の社会保障の不全
まずは、再配分の問題現物(サービス)給付よりも、現金給付を子どもの貧困率の再分配前・再分配後の変化