スウェーデンの若者の余暇活動政策における若者参画の発展と実際

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スウェーデンの若者の余暇活動政策にお ける若者参画の発展と実際 両角達平

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Page 1: スウェーデンの若者の余暇活動政策における若者参画の発展と実際

スウェーデンの若者の余暇活動政策における若者参画の発展と実際

両角達平

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目次

1. スウェーデンとは? スウェーデンと日本を比べてみる

2. スウェーデンの若者政策とは? 政策全体

 現場のとりくみ

3. スウェーデンの若者政策の特徴 社会的影響力とはなにか?

 なぜ余暇活動なのか?

4. スウェーデンの若者政策の成り立ち 発展の歴史

5. まとめ

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About me

◼両角達平 (MOROZUMI TATSUHEI)◼ 88年、新潟生まれ、長野育ち、静岡県立大学国際関係学部卒

◼ ストックホルム大学国際比較教育研究科 修士課程 在籍

◼ Tatsumaru Times 運営

~これまで関わってきた活動~

Youth Policy Press オフィスチーム (ベルリン)

元 内閣府子ども若者育成支援点検評価会議 構成員 (2011)

NPO法人 Rights 理事

日本シティズンシプ教育フォーラム (J-CEF)学生団体 : YEC (若者エンパワメント委員会) 創設/ 元代表 / サポーター

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③ ④

スウェーデンとは?

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スウェーデンとは?

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スウェーデンとは?日本とスウェーデン

共通してるとこ

◼ 室内で靴を脱ぐ

◼ 時間に厳しい

◼ おいしい水が飲める

◼ 寿司屋が人気

◼ セブンイレブンがある

◼ 健康的

◼ ほどほどがちょうどいい

◼ 出る杭は打たれないけど…。

◼ 所得格差が小さい(昔は)

全然違うとこ

◼ フィーカ文化

◼ 休みが多い

◼ 「金髪の人が少ない」

◼ 寒いプールで泳ぐおばあちゃん

◼ 日の長さ(短さ)、湿度

◼ 人権意識

◼ 容疑者の名前を出さない

◼ 「目のやり場に困る」

◼ お酒が自由に買えない

◼ 学費が無料

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日本とスウェーデンより良い暮らし指標 (Better Life Index by OECD)

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日本とスウェーデン

日本 スウェーデン

より良い暮らし指標 (OECD Better Life Index)

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CSIS 世界若者幸福度調査 (Global Youth Wellbeing Index)

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目標

◼ 若者が、影響力への実質的なアクセスをもつこと

◼ 若者が、福祉への実質的なアクセスをもつこと

若者政策法 (2004), 決定する権利-福祉の権利

(Makt att bestämma – rätt till välfärd)

特徴

◼ 政策の対象を13歳から25歳としている

◼ 若者政策を担当する省庁が、教育庁とは別で存在する

◼ 「若者は社会の問題ではなく、社会のリソース(資源)」

スウェーデンの若者政策とは?

Page 11: スウェーデンの若者の余暇活動政策における若者参画の発展と実際

就労

家庭

学校教育余暇活動

政治

スウェーデンの若者政策とは?スウェーデンの若者政策の領域

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スウェーデンの学校制度

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スウェーデンの若者の余暇活動

1. 若者団体

◼ 二人に一人が所属

◼ 豊富な助成金

◼ 若さを保つ仕組み

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若者団体の種類

出典:Forkby, T. (2014).

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全国青年協議会(LSU)

政党青年部

全国 若者会

全国 生徒会

文化団体

環境団体

LSU

76団体が加盟

会費の支払い

役職員の派遣

意見の表明

教育プログラムの提供

団体間交流機会の提供

ロビイングのサポート

政府 EU

ロビイング

パブコメ

補助金・意見聴取

ロビイング

参考:NPO法人 Rights スウェーデンスタディツアー報告書

Page 16: スウェーデンの若者の余暇活動政策における若者参画の発展と実際

スウェーデンの若者の余暇活動

1. 若者団体

◼ 二人に一人が所属

◼ 豊富な助成金

◼ 若さを保つ仕組み

◼ Måtplats = Meeting Place = 出会いの場

◼ 13歳から25歳が対象

◼ スウェーデンの290の自治体に1500施設

◼ 3700人の余暇活動職員

2. 施設 (ユースセンター)

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スウェーデンの若者施設の様子

「私は若者の可能性を信じているし、それはとても大事なことであると若者自身が感じることができる、と信じています」

You Tube : スウェーデンのユースワーカー

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第2の家:ハールホルメンの若者の家 

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出典:Tatsumaru Times

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余暇活動施設での若者の参加

基本的には遊んでる

・施設でダラダラ

・やりたいことをやる

運営・意思決定への参加

・若者運営理事会

・施設の予算配分・スケジュール・活動の決定

・若者からの提案にはすべて職員がフィードバック

・施設の設立から若者とともに

施設外でも

・政治家・政党を招いて討論・ロビイング

・地域の活性化・スタッフとしてバイト

若者の社会的な影響力を高める

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その結果

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社会問題に関与したい若者

出典:内閣府 子ども・若者白書 (平成26年)

「社会をよりよくするため、私は社会における問題に関与したい」という質問に対して、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた満13~29歳の若者の割合

今日のスウェーデンの若者たち

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出典:世界価値観調査 2010-2015

今日のスウェーデンの若者たち

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今日のスウェーデンの若者たち

● 18歳〜21歳の若者の投票率 79% 

● 18歳〜25歳の若者の議員数増加 ⤴

● 16歳から25歳の若者の3.5%が政党組織所属(過去10年間で変化なし)

● 2012年の16歳から25歳の若者の政治活動参加率 71%

● 40%の若者が自分の地域に影響を与えることに興味があり、17%が政治家に意思表明する機会があると感じている。

出典: Ung Idag 2012

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今日のスウェーデンの若者たち

日本 スウェーデン

若者の国政選挙の投票率

33.4% (20-29歳) 79.5% (18-29歳)

政党に加わっている若者の割合

1.4% (29歳以下) 9.6% (29歳以下)

社会現象が変えられと思う若者の割合

30.2% (13-29歳) 43.4% (13-29歳)

署名をしたことがある、またはするかもしれない若者の割合

27.4% (29歳以下) 73.7% (29歳以下)

出典: 明るい選挙推進協会 , 世界価値観調査2010-2014

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スウェーデンの若者政策の特徴

若者の「社会的影響力を高めること」とはなんなのか?

なぜ若者の「社会参加を促進」じゃだめなのか?

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“Participation is a process where someone influences decisions about their lives and this leads to change”(1997, Treseder)

社会参加とは何か?参加の段階

スウェーデンの若者政策の特徴27

“社会参加とは、人々が自分の生活または人生の意思決定に影響を与え、変化をもたらす過程のことである”

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どこへ参加するのか?

•学校、クラス、学校外、余暇活動

•法律・政策形成過程、調査、助成金、制度

•就労、職業訓練、消費

•政治、メディア、情報、市民活動

公共

生活経済

教育

余暇活動

政策

枠組み

多様な参加形態

ボランティア vs 非ボランティア

ボトムアップ vsトップダウン

積極的 vs 受動的

意識的 vs 潜在的

社会・制度的制裁 vs 非社会・制度的

集団的 vs 個人的

参考: Loncle & Muniglia, 2008

スウェーデンの若者政策の特徴

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Page 29: スウェーデンの若者の余暇活動政策における若者参画の発展と実際

なぜ余暇活動なのか?改めてユースワークとは?

◼ 楽しさ、挑戦、学びと結びついたインフォーマルな活動を通して、若者が彼ら自身や他者、社会を学ぶことを支援すること(National Youth Agency)

◼ 仲間づくりを通じて、若者が社会参加主体へと育つ過程で必要な社会資本形成を支援するノンフォーマルな教育活動 (第3回:英国のユースサービス (平塚眞樹), イギリススタディーツアー報告書, NPO法人 Rights, 2012)

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 “民主主義の参加の視点から主張できるのは、身近な状況での小規模な活動への参加をトレーニングすることは、連鎖反応的に異なる状況の活動へ参加することにつながる傾向があるということである。このような意味においては、開かれた若者活動は、それ自体に価値がある民主主義の訓練のためのプラットフォームを提供し、願わくば、その他の状況での民主的な参加のための機会を増やすことになるだろう。” (Ungdomsstyrelsen,2010)

なぜ余暇活動なのか?改めてユースワークとは?

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スウェーデンの若者政策どうやってできたのか?

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スウェーデンの若者政策の歴史 ①若者政策の誕生

◼ 1898年に初めて子ども・若者政策のにスウェーデン政府が責任をもつこと明確化

◼ 特徴:都市化と工業化、少ない福祉制度、若者向けの余暇活動政策はほとんどなかった

◼ 道端でたむろしている若者は「社会問題」とされ、「ギャングボーイ委員会」なる政府委員会ができた

◼ 委員会は余暇活動に関連のある育児放棄、乱暴行為、犯罪についてモラルの改善という観点で問題をあつかった。

◼ 1912年にストックホルムにセツルメント・コミュニティーセンターとしてビルカゴーデンが設立される

◼ 194o年以降から、60〜70年代のミリオンプログラムの拡大に伴ってほとんどすべてのスウェーデンの市で設立された。

参考:Forkby, 2014

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スウェーデンの若者政策の歴史 ②ユーザー参加のはじまり

◼ 1939年にユースケア委員会(Youth Care Committee)が設立

◼ 基本的な姿勢は、「どのようにすれば大人社会が、若者の生き様に関与し、影響を与え、彼らについて知ることができるか」という姿勢であった。

◼  「そもそも、どうやって私たち(大人が)若者の余暇活動の選択に影響を与えようというのか?」(1945年, 政府報告書 )

◼ 結果、委員会は伝統的な権威的なやり方ではなく、若者の個々の能力と主導力を高めるために、「若者独自の空間」を与えることを結論付けた。

◼ この時点で、「既存の活動に招待する」というやり方ではなく、影響力のために若者の参加を促すことが明言された。

参考:Forkby, 2014

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スウェーデンの若者政策の歴史 ③ユースワークの導入

◼ 1940年代: ユースワーカー(余暇活動施設職員)の導入

◼ 若者主導の活動を促進する余暇活動施設と若者団体における「オープンアクティビティ」の拡大も、自治体レベルにおける委員会の設置と同じのこの時期

◼ この委員会に若者を巻き込むこともこの時期から実施された。

◼ 若者施設における多様な若者の活動を促進することが70年代前後で掲げられる、が….

◼ 若者の社会的問題の増加

◼ 酔っ払った若者がユースセンターに来る

◼ 施設における危険ドラッグの使用

参考:Forkby, 2014

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スウェーデンの若者政策の歴史 ④消費者から参加者へ

◼ 1980年代初期の政府白書 「Not for sale」の刊行

◼ 商業主義と社会的排除を被る若者について

◼ 「若者が、商品や物品の、さらには自身の人生の『消費者』になってしまい、結果として自身の人生をも自分で決めることができなっている」(政府報告書)

◼ 「余暇活動施設におけるユースワーカーや行政職員は、できるだけ多くの「高価な」活動や施設を若者の提供することを義務だと感じている」

◼ 結果、政府からの支出は、ボランティア活動や、 自己編成団体やプログラムに割り当てるようにすることが提案された。

参考:Forkby, 2014

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スウェーデンの若者政策の歴史 ⑤参加から影響へ

◼ 1985年の国際青年年 (国連)においてスウェーデンは、若者の「参加」に注力することを選択◼ 若者政策担当大臣の導入

◼ 政府レポートでは、学びの過程と責任という観点から、若者に権力を与えることを認めた

◼ 同時期、研究者(Henkriksson)によって実施された調査結果を考慮◼ 86%の若者が地域社会における低い影響力を実感

◼ 80%の若者が学校における低い影響力を実感

◼ 「タスク?こんな馬鹿げたことは今までに聞いたことがない。あっちやこっちにタスクを振り分ける必要はなく、ただ若者に地域社会の中に場所をあたえればいいだけだ。そうすれば、タスクを割り振る必要もない。自分からやりだす。」(23〜26歳 男性)

参考:Forkby, 2014

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まとめ

◼ スウェーデンの若者には学校以外にも多様な活動ができる機会がある

◼ それを支える制度としての若者政策が整えられている◼ 社会参加とは、社会的影響力を高めること

◼ 若者の社会参加は、教育、就労、政治、に限らない

◼ 若者と大人、若者とユースワーカー、若者と行政、との間の「権力関係」を変える覚悟が必要

◼ 果たして日本の若者は、成長する過程でどのくらい自分の人生に対して自分で意思決定してきたか?若い人が多様な生き方を決めれる社会であるか?

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日本のユースワークの実情

◼ 「教育」と「雇用」の社会の参加しかない◼ 「市民」ではなく「生徒・学生」か「社員」のどちらか

◼ 余暇活動⇒部活、受験⇒塾、社会人=企業人

◼ ノンフォーマル教育の認知⇒就職へつなげる (Youthpass)

◼ ユースワークは、ニート・ひきこもりへの就労支援、社会教育、プレーパークなどに偏る◼ 健全育成 ⇔ 困難層支援

◼ 遊び場、施設、学校を乗り越えない

◼ ユースワークの職業・学問体系基盤の欠落

◼ 若者に絞ることすらターゲットアプローチ⇒ デモクラシーワーク

◼ 若者の傘団体の欠落◼ 若者の代弁者がいない

◼ 30歳以下の国会議員の割合はスウェーデンの10分の1

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日本のここが変だと思うようになった

• 「余暇活動」ってなんだ?

• ミーティング・プレイス、余暇活動リーダーの存在

• 日本では授業・宿題・部活と塾 = 学校と塾の往復

• 「若者の社会的な影響力」ってなんだ?

• 大人になること・社会に参加すること ≠ 「社会人」になること

• 社会参加=自分(若者)に関する全てのことに、自分で責任をとって意思決定をすること→自尊心

• 果たして僕ら日本の若者は、成長する過程でどのくらい意思決定してきたのか、「生き方」が決められていないか?

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参考文献• Tatsumaru Times• Better Life Index, OECD, 2015, • Youth Wellbeing Index, CSIS, 2015• Makt att bestämma - rätt till välfärd, Regeringskansliet, 2004• Youth Policy and Participation in Sweden – a historical perspective, Forkby Torbjörn,

2014• スウェーデンスタディツアー報告書 ,NPO法人 Rights, 2010• スウェーデンのユースワーカー (YouTube)• 子ども・若者白書, 内閣府, 2014• 世界価値観調査, 2015, WVS• Ung Idag, ungdomsstyrelsen, 2012• 年代別投票率の推移, 公益財団法人 明るい選挙推進協会, 2014• ロジャーハート子どもの参画, 萌文社, 2000• Empowering Children & Young People: Training Manual, 1997, Phil Treseder• Introduction: Youth Participation in Europe --- between social and political

challenges and youth practice, Locle&Muniglia, 2008• National Youth Agency• 第3回:英国のユースサービス (平塚眞樹), イギリススタディーツアー報告書, NPO法人

Rights, 2012 • Fokus 10, Ungdomsstyrelsen, 2010