4)クリスマスカクタスとサボテン...では前者を『christmas cactus』、...

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花の縁 070204 1 1 4)クリスマスカクタスとサボテン サボテンの仲間は美しい花の咲くものが多いが、世話のかかるものも少なくない。 そんな中にあって誰が育てても比較的うまく行くのが、このクリスマスカクタスで ある。サボテン科のシャコバサボテンのことをいう場合が多く、同じくサボテン科の カニバサボテンと混同することも多く見られる。しかしシャコバサボテンの花期が クリスマスの頃に対して、カニバサボテンの方は花期が 23 月頃であるために容易に 区別できる。ともに葉はなく、茎は偏平の多肉質で、多くの節片からなり、シャコバ サボテンには各節に数個の突起がある。和名の由来はこの突起のある茎の部分を、 蝦蛄 ( シャコ ) に見立てたものである。しかしカニバサボテンには各節の突起がないので、 この点からも両種を判別することができる。学名は前者のシャコバサボテンが Zygocactus truncatus 』で、 後者は『Schlumbergera bridgesii 』である。イギリス では前者を『Christmas cactus』、 後者を『crab cactus』と呼んでいる。ともに ブラジル原産の着性サボテンであるために、ミズゴケか排水性の良い腐蝕質の多い 土に植えるとよく、冬は室内に取り込んで気温が 5℃以下にならないようにしておく。 また 8 月から 9 月には水を与えずに乾燥させて育てると、花付きが良くなる。 花は よく枝分かれした茎の先に一つもしくは数個つき、垂れ下がって咲く。しかしつぼみ がついても急激な環境変化が起こると、つぼみを落としてしまう性質があるので、 花時は注意が必要で、水をひかえ気味にした方がうまく行く。またあまり多くの つぼみが着くと、結局は咲かずに落ちてしまうつぼみも多い。繁殖は挿芽によるが 34 節のところで切り放して、鹿沼土や砂、ミズゴケなどに挿しておくと容易に発根 して、誰にでもすぐに小苗を作ることができる。 シャコバサボテンが初めて発見されたのは,19 世紀の初めのことで、リオ・デ・ ジャネイロのオルゴンス山脈においてであった。 1819 年にはイギリス人のハワースに よって、クジャクサボテン属(Ephiphyllum)の新種としての学名が与えられたが、 1890 年にドイツのシューマンによって創設された、シャコバサボテン属(Zygocactusに移されて現在にいたっている。 日本にこの花が初めて渡来したのは明治のことで、一般的になったのは意外に遅く、 昭和 50 年代になってからのことである。デンマークから輸入されたため、当初は デンマークカクタスとして、年末に街角の花屋さんで見かけられるようになった。 花色が豊富で赤、白、ピンク、赤紫などのほかに、最近では黄色の花を咲かせる ゴールデン・チャームなどという品種も導入され、クリスマスの花として、おおいに 親しまれている。この花は特に欧米ではドイツを中心として改良が進められ、 100 種類 以上が知られ、最近ではアメリカで改良されたものが多く輸入されている。ヨーロッパ ではクリスマスを飾る花は少なく、クリスマスローズと本種とそれにシクラメンは、 クリスマスを代表する花ということができよう。

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Page 1: 4)クリスマスカクタスとサボテン...では前者を『Christmas cactus』、 後者を『crab cactus』と呼んでいる。ともに ブラジル原産の着性サボテンであるために、ミズゴケか排水性の良い腐蝕質の多い

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4)クリスマスカクタスとサボテン サボテンの仲間は美しい花の咲くものが多いが、世話のかかるものも少なくない。

そんな中にあって誰が育てても比較的うまく行くのが、このクリスマスカクタスで

ある。サボテン科のシャコバサボテンのことをいう場合が多く、同じくサボテン科の

カニバサボテンと混同することも多く見られる。しかしシャコバサボテンの花期が

クリスマスの頃に対して、カニバサボテンの方は花期が2~3月頃であるために容易に

区別できる。ともに葉はなく、茎は偏平の多肉質で、多くの節片からなり、シャコバ

サボテンには各節に数個の突起がある。和名の由来はこの突起のある茎の部分を、

蝦蛄(シャコ)に見立てたものである。しかしカニバサボテンには各節の突起がないので、

この点からも両種を判別することができる。学名は前者のシャコバサボテンが

『Zygocactus truncatus』で、 後者は『Schlumbergera bridgesii』である。イギリス

では前者を『Christmas cactus』、 後者を『crab cactus』と呼んでいる。ともに

ブラジル原産の着性サボテンであるために、ミズゴケか排水性の良い腐蝕質の多い

土に植えるとよく、冬は室内に取り込んで気温が5℃以下にならないようにしておく。

また 8 月から 9 月には水を与えずに乾燥させて育てると、花付きが良くなる。 花は

よく枝分かれした茎の先に一つもしくは数個つき、垂れ下がって咲く。しかしつぼみ

がついても急激な環境変化が起こると、つぼみを落としてしまう性質があるので、

花時は注意が必要で、水をひかえ気味にした方がうまく行く。またあまり多くの

つぼみが着くと、結局は咲かずに落ちてしまうつぼみも多い。繁殖は挿芽によるが

3~4節のところで切り放して、鹿沼土や砂、ミズゴケなどに挿しておくと容易に発根

して、誰にでもすぐに小苗を作ることができる。

シャコバサボテンが初めて発見されたのは,19 世紀の初めのことで、リオ・デ・

ジャネイロのオルゴンス山脈においてであった。1819年にはイギリス人のハワースに

よって、クジャクサボテン属(Ephiphyllum)の新種としての学名が与えられたが、

1890年にドイツのシューマンによって創設された、シャコバサボテン属(Zygocactus)に移されて現在にいたっている。

日本にこの花が初めて渡来したのは明治のことで、一般的になったのは意外に遅く、

昭和 50 年代になってからのことである。デンマークから輸入されたため、当初は

デンマークカクタスとして、年末に街角の花屋さんで見かけられるようになった。

花色が豊富で赤、白、ピンク、赤紫などのほかに、最近では黄色の花を咲かせる

ゴールデン・チャームなどという品種も導入され、クリスマスの花として、おおいに

親しまれている。この花は特に欧米ではドイツを中心として改良が進められ、100種類

以上が知られ、最近ではアメリカで改良されたものが多く輸入されている。ヨーロッパ

ではクリスマスを飾る花は少なく、クリスマスローズと本種とそれにシクラメンは、

クリスマスを代表する花ということができよう。

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クリスマスカクタスはクリスマス期を彩る数少ない花の代表格である。

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クリスマスカクタス、近くで見るとどこかピエロに似た愛嬌がある。

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クリスマスカクタスも毎年咲かせるとなると結構難しい。適宜肥料は与えるとして、もう一つのコツ

は、秋になったら、よく太陽の光に当ててあげることが肝心である。

純白のクリスマスカクタス。赤い雌蕊がアクセントになっているのだが、被写界深度がそこ

まで深くないので、花弁にはピントが合わない。これを克服するには多少とも装置が必要だ。

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クリスマスカクタスには赤、朱色、ピンクなど色とりどりの花があり、冬じゅう楽しめる。

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クリスマスカクタスの原産地はリオデジャネイロ州の高山帯で、これを改良して生まれた。

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サボテンの仲間には美しい花を咲かせるものが多い。机の上でも花を咲かせることができるため

大流行したこともあったが、今では普通の花と同じ扱いである(埼玉県深谷市)。

サボテン:品種名不詳

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サボテン:品種名不詳

サボテン:品種名不詳

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サボテン:品種名不詳

孔雀サボテン、同属で白い花を咲かせるのが『月下美人』である(長野県佐久市)。

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孔雀サボテン、開花し始めたばかりの花(長野県佐久市)。この仲間は種類も増えている。

夕方から咲き始めて翌朝には萎んでしまうという月下美人の近縁種。

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「月下美人」の花、深谷市で販売されていたものを朝 7 時ごろ撮影したものである。花が

咲いているのは、あと数時間。販売はこの数時間と次の花が開くときが勝負である。

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孔雀サボテンにはいろいろな色があるが、これはややピンクがかっている。

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孔雀サボテンの属名は『Epiphyllum』である。ピンクやオレンジ、黄色、白などもある。

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サボテンは花を観賞するものと思われがちだが、最近ではこんな観葉植物みたいなサボテンも

普及し始めている。たまに水をやれば出窓やテーブルの上でも育てられるからだろう。

こうした品種改良の背景には、マンションの増加があるからだろうか。 目次に戻る