4.環境と技術(1hasegawa/_src/sc466/1505078ed089...六ヶ所村再処理工場の貯蔵プールは、...
TRANSCRIPT
1
社会学概論 4.環境と技術(1) 放射性廃棄物問題を考える 2015.5.7+5.13 長谷川 公一 東北大学大学院文学研究科教授 k-‐[email protected]
© K. HASEGAWA
無断での引用・改変 ・配布等を禁じます
2
本講義の視点 1 福島第一原発事故とどう向き合うか(1)
• 福島第一原発事故とどう向き合うかが、東日本大震災後の日本社会のあり方、エネルギー政策、放射性廃棄物問題を考える基本前提である。
• 安倍首相が3月14日に仙台で開催された「国連防災世界会議」の演説で原発事故についてわずかに「東日本大震災と福島第一原発事故を踏まえ、長期的視点に立ってさらなる防災投資に取り組んでいます」(http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0314statement.html)としか言及しなかったのは、きわめて遺憾である。
• 元国連関係者によれば、政権交代後、現政権側は今回の「国連防災世界会議」で原発事故を扱わないようにと国連側に要請した(「環境・原発災害と防災に関するシンポジウム」(3月16日仙台で開催)でのフロアーからの発言)。
© K. HASEGAWA
3
本講義の視点 1 福島第一原発事故とどう向き合うか(2)
• 4つの〈偶然〉が救った、4号機・使用済み燃料貯蔵プールの「危機」 • 2013年9月16日以降、日本では全原発が停止している。六ヶ所村に建設中の再処理工場も、原子力規制委員会が新規制基準への適合性を審査中である。
• 原発稼働ゼロは使用済み核燃料が増えないことを意味する。 • 今こそ、立ち止まって、核燃料サイクル路線の是非を抜本的に再検討すべきである。
• 高レベル放射性廃棄物の処分問題については、日本学術会議の2012年9月の「回答」、2014年9月のフォローアップ検討委員会の社会・技術分科会報告、2015年4月に発表した「提言」をふまえて、抜本的な政策転換をはかるべきである。
© K. HASEGAWA
4
米原子力規制委員会は3月16日プールに水がないと想定、空だきを警戒。1日15度づつ温度上昇。 しかし16日時点で水があった! ①シュラウド交換のために原子炉ウェルに水が張ってあった(4号機ではじめて) ② 3月7日に水を抜く予定だったが、作業用機器のサイズミスで3月下旬まで水抜きが中止された ③ 貯蔵プールの水位低下で仕切り板が機能しなくなり、原子炉ウェルとDSピットの水が貯蔵プールに流入した ④ 4号機の建屋爆発で天井が抜け、水があることが16日夕方上空から確認できた 3月20日からは自衛隊が注水開始。 (左図は2012年3月8日付朝日新聞 記事による)。
東日本を救った4重の偶然 1つでも欠けていたら
© K. HASEGAWA
5
本講義の視点 2 公論形成による 社会的合意形成を前提とする • 政府は、なしくずし的に原発再稼働を進め、その前提として、弥縫策的に、高レベル放射性廃棄物処分問題の基本方針の改定を閣議決定しようとしている(国民的レベルでの「公論形成」は避けながら、「既成事実化」を図る)。ただし年度内の予定だったのが、遅れている。
• 「公論形成」とは、公共的な関心をもつ人びとが集まって、自由で平等な、開かれた対話を通じて「公益」とは何かを討議し、社会的合意をつくりあげることである。
© K. HASEGAWA
6
本講義の視点 3 倫理的判断を重視する
• エネルギー基本計画の3つのE(energy, economy, environment)に加えて、Ethics が重要
• ドイツの「安全なエネルギー供給のための倫理委員会」(2011年3月にメルケル首相の指示でつくられ、5月末に、2021年末までにドイツの全原子炉の閉鎖などを答申した)
• 優先されるべき倫理的観点 安全性、公平性(fairness)、社会的合意、核不拡散、将来世代への責任、効率性など
© K. HASEGAWA
7
本講義の視点 4 地域住民の観点を重視する
• 六ヶ所村の住民は?
© K. HASEGAWA
8
本講義の視点 5 国際的なコンテキストを重視する
• ポイントは、 日米原子力協定の更新問題(2018年7月) 韓米原子力協定の動向 日本の再処理工場が本格運転を開始した場合、北朝鮮・韓国・中国はどのように反応するか?
© K. HASEGAWA
9
本講義の視点 6 核燃料サイクル問題と高レベル放射性廃棄問題を連関づけて考察する
• 使用済み核燃料の「暫定保管」は、再処理施設を不要化する可能性がある。
© K. HASEGAWA
10 10
© K. HASEGAWA
11
六ヶ所村再処理工場の貯蔵プールは、 貯蔵限界に(貯蔵割合98.6%)
• 2959t/3000t=98.6%(日本原燃, 2015.3.20発表)
• 100万kWの原発を1年間動かすと、再処理後、直径40cm, 高さ130cm,重さ500kgのガラス固化体約30本分の高レベル放射性廃棄物が生まれる。
• 現在ガラス固化体2万5000本相当の使用済み核燃料がある。
© K. HASEGAWA
12
「トイレなきマンション」?
• トイレに対して失礼ではないか? • 練馬大根、千住ネギ、堀川ごぼう等 • 人糞肥料(有価物・資源)と野菜のリサイクル • 排泄物を処理しない動物はいるのか?
© K. HASEGAWA
13
放射性廃棄物問題とは?
• 発電後の使用済み核燃料をどう扱うか?
直接処分方式(1度しか使わない) アメリカ、ドイツ、フィンランドなど 再処理方式(再処理して、取り出したプルトニウムとウランを再利用) フランス、日本、イギリス、ロシア、中国 課題 軍事転用・核拡散の危険性 コスト高 放射能汚染の危険性(平時でも)
13
© K. HASEGAWA
14
原子力施設・放射性廃棄物の集中地帯
• 日本の六ヶ所村 核燃料サイクル施設が立地 • フランスのラ・アーグ 再処理工場などが立地
• イギリスのセラフィールド 原発、再処理工場などが立地
• アメリカのハンフォード(ワシントン州) プルトニウム処理施設
14
© K. HASEGAWA
15
使用済み核燃料をどうするか? • 使用済み核燃料の処理(処分)方法・処理技術が確立していない
• 原発をめぐる 大の隘路の一つ 大の「倫理的」問題 原発ゼロをめざすにしろ 原発を継続するにしろ • 六ヶ所村の再処理工場 貯蔵プールには既に98.6%分(2959トン/3000トン)が貯蔵されている • 初期の原発ほど貯蔵能力に限界がある • バックエンドコスト 約19兆円 • 再処理か、直接処分か? • 「中間貯蔵」(30〜50年)か、「暫定保管」か(30〜50年)、地中処分か? • 日本に適地はあるのか? 10万年の安全性 • どうやって社会的合意を形成するのか? • 緊急性と時間軸 • テロのリスク • 軍事転用の危険性 • 世代間倫理 のちの世代への負の遺産
15
© K. HASEGAWA
16
使用済み核燃料の厄介さ • 「人類の発生させたゴミのうちでも も取り扱いのやっかいなもの、人類
大の負担といっても過言ではない」(高木仁三郎)
①放射線のレベルが高い ②発熱量が大きい ③毒性が強い ④寿命が長い ⑤雑多な元素を含む ・原子力発電は、「ファウスト的取引」(クネーゼ) 倫理的に正当化しえない • 10万年程度、生活圏から隔離しなければならない 10万年前はネアンデルタール人のいた時代 2000年間の50倍 200年間の500倍
16
© K. HASEGAWA
17
核燃料サイクル概念図
17
© K. HASEGAWA
18
なぜ青森県六ヶ所村に立地されたのか?
• 九州電力中心の立地探しへ 鹿児島県徳之島(1976年) 沖縄県西表島(1980年) 長崎県平戸島(1982年) • 東北電力中心の立地点探しへ 青森県むつ市関根浜(原船むつの母港) 東通村(原発20基分の敷地) 六ヶ所村(むつ小川原開発用地)
© K. HASEGAWA
19
むつ小川原開発計画の挫折から 核燃料サイクル施設誘致へ • 青森県はなぜ誘致したのか?
1)むつ小川原開発計画の救済 • 5200ヘクタールの遊休地 • 1400億円の累積赤字(1983年末段階) • 石油化学コンビナート建設の代替プロジェクト
2)用地買収完了、漁業補償も終了 3)83年までに石油備蓄基地が3分の2まで完成。残りについても本体の建設工事がほぼ終わろうとしていた。雇用不安の打開策としての新プロジェクト
19
© K. HASEGAWA
20
下北半島における 「構造的緊張の連鎖的転移」 戦後開拓の挫折---→ むつ製鉄の失敗(1963年〜65年)---→ フジ製糖青森工場閉鎖(1962年操業開始、67年閉鎖)、ビート栽培の奨励の失敗(1963年から砂糖の輸入自由化) ---→ 新田開発の挫折(1970年からの減反政策)---→ むつ小川原開発(1969年〜72年に基本計画、1973年10月オイルショック)---→ 核燃料サイクル施設の誘致(1983年〜85年、1986年チェルノブイリ事故、2011年福島原発事故) 周回遅れのランナー? 情報不足・人材不足・お人好し
20
© K. HASEGAWA
21
核燃事業の既成事実化
• 1991年7月 ウラン濃縮工場、安全協定締結 • 1992年3月 ウラン濃縮工場操業開始 • 1992年12月 低レベル放射性廃棄物埋設センター操業開始 • 1993年4月 再処理工場着工開始
21
© K. HASEGAWA
22
再処理工場の完成予定と建設費用 • 当初 1997年12月 2012年10月と発表(2010年9月時点) 22回延期を重ね、2016年3月が目標(14年10月時点) 活断層の追加調査が必要で、実質的には未定 建設費用(全体) 当初 7600億円 現時点 2兆1930億円(2011年2月現在) +補強工事410億円 (新基準対応, 14年10月時点) 総費用は約19兆円(国内再処理の試算結果、2003年11月電事連発表)
22
© K. HASEGAWA
23
プルトニウムバランスは可能か?
【供給】 • 日本は34.19トンのプルトニウムを保有(そのうち24.13トン分は英仏の再処理工場で保管、いずれ返還される)。2009年末現在
• 六ヶ所村の再処理工場が稼働すると 年間800トンの使用済み核燃料から8トンのプルトニウムが出てくる 【需要】 • 高速増殖炉もんじゅで、年間0.5トンを消費→困難 • 軽水炉でウラン燃料と混ぜて燃やす(プルサーマル)
• 乾式中間貯蔵(5000トン)に
23
© K. HASEGAWA
24
余剰プルトニウム問題
• 使用済み核燃料をどう処理すべきか? A. 直接処分(再処理をしない) B. 核燃料サイクル 再処理→プルトニウムを取り出す →MOX燃料や高速増殖炉で利用 フランス、イギリス(実質的に撤退)、ロシア、中国、インド、日本がBを採
用(非核保有国では日本のみ) • 日本は余剰プルトニウムを持たないことを国際公約(1991年8月以来) IAEAの査察(全査察業務量の24%が日本)がもっとも多い 再処理が開始されると30%に • 全量再処理の原則(プルトニウムができる) しかし使い途がない
24
© K. HASEGAWA
25
何のための核燃料サイクルか? • 原発継続・維持のため 再処理中止—→原発増設困難に(福島事故前) • 使用済み核燃料の貯蔵場所として 六ヶ所村の貯蔵プール自体が98.6%の貯蔵率に • 青森県当局のため? 青森県・六ヶ所村と日本原燃の「覚書」問題(1998.7) • 「履歴効果」or自己維持性 日本の組織文化のもとでの「撤退」の困難性 • 潜在的核抑止力として 1988年に改定された日米原子力協定で国際的に認められた権益としての「核抑止力」の担保(2018年に改訂) 核にかかわる「国際的権益」確保 経済的・技術的能力の担保として
© K. HASEGAWA
26
電力会社はなぜ再処理に固執するのか? 本当に再処理をしたいのか?
26
• そもそも再処理は発電事業とは直接関係がない(電力会社にノウハウの蓄積があるわけではない)。
• 電力自由化を控えて、コスト負担を軽減したい。
• 再稼働への悪影響は避けたい。 • 日本原燃の破綻処理は回避したい。
• 初期トラブルや軽微なトラブルを口実に、「もんじゅ化」することを願っているのか?
© K. HASEGAWA
27
青森県知事の拒否権
根拠 「覚書」(1998年7月29日付、青森県知事・六ヶ所村長・日本原燃社長の3者、電事連会長が立会人) 「記 再処理事業の確実な見通しが著しく困難となった場合には、青森県、六ヶ所村及び日本原燃株式会社が協議のうえ、日本原燃株式会社は、使用済燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずるものとする。」 2012年9月6日 民主党エネルギー・環境調査会、「核燃サイクルを一から見直す」と政府へ提言 日本原燃の画策(2012年9月6日、2013年2月2日付毎日新聞記事)
六ヶ所村議会の「再処理堅持」の意見書(2012年9月7日) 三村知事、使用済み核燃料の返還を細野原発担当相に明言(同9月6日)
2012年9月14日 エネルギー・環境会議「再処理継続」を決定 27
© K. HASEGAWA
28
再処理路線の5つの隘路 日本原燃の経営問題(原発維持の隠れたコスト) 再処理工場は本格稼働できるのか? 稼働率は? 早期閉鎖か? 電力会社にとってのバックエンドコストの増大 余剰プルトニウム問題 アメリカ政府の反応・韓国政府の反応
28
© K. HASEGAWA
29
原子力規制委員会設置法
原子力規制委員会設置法案の成立と原子力基本法の改正(6/20) 「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする」(設置法第1条) 「国家行政組織法第3条第2項の規定に基づいて、環境省の外局として、原子力規制委員会を設置する。」(設置法第2条)
29
© K. HASEGAWA
30
原子力基本法の「改正」
第2条 (基本方針) 原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公表し、進んで国際協力に資するものとする。 ↓ 第2条 (基本方針) 原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公表し、進んで国際協力に資するものとする。
2 前項の安全の確保については、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。
30
© K. HASEGAWA
31
原子力基本法「改正」の政治的意図
「自公案作成の中心となった塩崎恭久衆院議員は「核の技術を持っているという安全保障上の意味はある」と指摘。「日本を守るため、原子力の技術を安全保障からも理解しないといけない。(反対は)見たくないものを見ない人たちの議論だ」と話した。」(2012年6月21日付東京新聞)
31
© K. HASEGAWA
32
「(大統領選への立候補を表明している)鄭(夢準、チョン・モンジョン)氏は「核を持つ北は核を持たぬ我々を恐れず、今のような 悪の南北関係になった。北の非核化のためには、核保有能力を備えねばならない。交渉カードとして必要だ」と語った。また、日本についても「多くのプルトニウムを持ち、数千発の核弾頭を作ることができる。2週間で核武装できる」と述べ、29日に締結予定の日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)についても、締結(→署名式の1時間前に延期に)を取りやめ、韓国政府は国民に謝罪すべきだと訴えた。日本の核武装論や日韓防衛協力については大統領選の野党有力候補である文在寅(ムン・ジェイン)氏も27日、「日本は過去を十分に反省せず、核武装まで試みている」として反対する姿勢を示した。」(2012年6月29日付朝日新聞)。
韓国大統領候補のリアクション
32
© K. HASEGAWA
33
読売新聞の主張・社説から
「日本が今後もエネルギーを確保していくために、基幹電源の原子力をどう利用するか。食糧問題などと同様、国の基本戦略、安全保障にかかわるこの問題は、五十年先、百年先 をにらんで総合的な政策を立案し、着実に取り組んでいくべきものである」(2004年8月24日付読売新聞社説) 「日本は、平和利用を前提に、核兵器材料にもなるプルトニウムの活用を国際的に認められ、高水準の原子力技術を保持してきた。これが、潜在的な核抑止力としても機能している」(2011年8月10日付読売新聞社説)
「日本は原子力の平和利用を通じて核拡散防止条約(NPT)体制の強化に 努め、核兵器の材料になり得るプルトニウムの利用が認められている。こう した現状が、外交的には、潜在的な核抑止力として機能していることも事実だ」(2011年9月7日付読売新聞社説)
33
© K. HASEGAWA
34
わが国の外交政策大綱(1969.9.29)
1969年に何を決めたのか
34
© K. HASEGAWA
35
核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持する
35
© K. HASEGAWA
36
韓国の再処理問題 韓米原子力協定(2014年改訂。現在交渉中) 韓国側 乾式再処理の許可をアメリカ側に求める。日本に認めているのに、韓国には認めないのか 米側 中国・北朝鮮への影響、核拡散の拡大を懸念
36
© K. HASEGAWA
37
日米原子力協定の更新問題
37
• 1968年締結の日米原子力協定 「個別同意方式」 1)アメリカは日本の再処理に対して拒否権をもつ 2)再処理の可否、使用済み核燃料の移送などに際して、その都度、アメリカ政府に申請し許可を得なければならない • 1988年に改訂された日米原子力協定 「包括同意方式」 アメリカ政府は個別に規制権を行使せず、事前に一括して再処理等に承認を与える レーガン政権・中曽根首相時代 • 2018年に期限切れ。現状のまま更新できるか?
© K. HASEGAWA
38
予想されるアメリカ側の反応・主張点
38
• 再処理工場は、30年間本格稼働の実績がない • プルトニウムバランスの見通しが立たない • 日本への包括同意を継続することのもつ 韓国側への影響 北朝鮮への影響 • 福島原発事故対応をどう見ているか? • オバマ政権・次の政権と、日本側現政権との距離感 歴史認識、「改憲」問題、対中国戦略 • 核不拡散政策への悪影響
日本に包括同意を継続することは、アメリカ側にとってどんなメリットがあるのか?
© K. HASEGAWA
39
再処理せずに、乾式貯蔵する 空冷式の乾式貯蔵容器で、数十年間保管する 長所 〔水冷式に比べて、再処理に比べて〕 • コスト的にも相対的に有利 • 核兵器への転用が困難 • 相対的に安全性が高い • 原発施設近傍で乾式貯蔵(核燃料税を支払う) • むつ市関根浜の中間貯蔵施設を活用(核燃料税を支払う) • 青森県や地元の合意が得られれば、 東通村の原発建設用地なども、転用可能
39
© K. HASEGAWA
40
高レベル放射性廃棄物
• 100万kWの原発を1年間動かすと、ガラス固化体約30本分の高レベル放射性廃棄物が生まれる。
• 2014年4月現在、日本には、ガラス固化体2万5000本の使用済み核燃料がある。
• 7Svの放射線を浴びると、100%の人が死亡する • 製造直後のガラス固化体からは、1時間あたり500Svの放射線が出ているので、20秒弱で、7Svの放射線を浴びることになる。
• プルトニウムの半減期は、2万4000年
© K. HASEGAWA
41
71
高レベル放射性廃棄物処分の方法
現在位置: 朝日新聞デジタル 記事 2012年9月11日19時20分
原発のごみ「最終処分撤回を」 学術会議提言関連トピックス
原子力発電所 日本学術会議は11日、原発から出る高レベル放射性廃棄物の量を総量規制し、数十~数百年間暫定的に保管するべきだとする提言をまとめ、内閣府原子力委員会に提出した。現行の地中に廃棄する最終処分政策を白紙に戻し、抜本的な見直しを求める内容。提言を受け、原子力委員会は年内にまとめる国の原子力政策大綱の議論に反映させる。
現行の政策では、原発から出る使用済み燃料はすべて再処理される。再処理で出る高レベル放射性廃棄物は国内の地下300メートル以深に廃棄することになっている。現在、政府は使用済み燃料の再処理について見直しを含めて検討している。
原子力発電環境整備機構が2002年、候補地選びに向けて自治体を対象に公募を始めたが難航している。状況を打開しようと、原子力委員会は10年9月、政府の特別機関として学者らが政策提言をする日本学術会議に提言のとりまとめを依頼。学術会議は検討委員会を作り議論し
41
© K. HASEGAWA
42
10万年後でも
© K. HASEGAWA
43
選択肢 どこに
• 深地層 • 宇宙空間 • 深海底 • 極地 • 陸上
• 国内か、海外か • 処分(埋め捨て)か、回収可能にするのか
• 人間による恆久的な管理は困難。せいぜい数百年ほど
43
© K. HASEGAWA
44
カリフォルニア州原子力安全法の例
• 1976年6月 • 「カリフォルニア州エネルギー委員会は、連邦政府が高レベル放射性廃棄物処理に関する実証的な技術が存在すると認めるまで、いかなる原子力施設の新設も認可しない」
• カリフォルニア州では、原発の新設が事実上不可能に
44
© K. HASEGAWA
45
アメリカ ネバタ州ユッカマウンテン
• 国有地、核実験場跡の近く • 州知事(共和党)、住民団体・環境団体などの反対 • 100万年の環境防護基準を設定(当初は1万年、日本は1万年、ヨーロッパ諸国1万年〜10万年)
• 2010年に中止決定
45
© K. HASEGAWA
46
海外の実情 2ヶ国でのみサイトが確定
• フィンランド オンカーロ(「隠された場所」)。オルキルオト原発近く。2003年8月地元合意。2012年着工、20年から受入開始予定
• スウェーデン 2009年6月 フォルスマルク原発近くに。
• ドイツ 難航 ゴアレーベン 中断
• フランス 候補サイトを特定
46
© K. HASEGAWA
47
使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)をめぐる公平性 • 「暫定保管」 • 「高レベル放射性廃棄物の総量管理」 →社会的合意
• 「世代間公平性」 「使用済み核燃料問題を将来世代に先送りすべきではない」 将来世代は、「負の遺産」だけを引き受ける 現世代として、将来世代に対して、高レベル放射性廃棄物にどのように、世代責任を果たすことができるのか?(原理的・倫理的に不可能)
47
© K. HASEGAWA
48
暫定保管の意義
• 処分(埋め捨て)か、暫定保管か どちらがより安全か? テロのリスク 火山活動によるリスク 地震によるリスク 地下水による影響、腐食による影響
48
© K. HASEGAWA
49
終処分をめぐる諸課題
• 立地適地をどうやって選ぶのか • 誰が費用を負担するのか 発生者負担 • 安全性をどのように担保するのか 将来世代にどう伝えるのか?
49
© K. HASEGAWA
50
札束では「強制」できない
• 2002年8月から 候補地の公募開始 文献調査だけで年間2億1000万円を交付 (周辺自治体を含めると2年間に20億円を交付) 「概要調査地区」になると年間20億円を交付 (周辺自治体を含めると4年間に約70億円を交付) • 2007年高知県東洋町の町長が文献調査を独断で申請。批判を浴び、町長は辞職、出直し町長選で敗れ、申請を撤回。
• 単なるリスク・コミュニケーションの問題か?
50
© K. HASEGAWA
51
日本学術会議の検討の経緯
51
• 2010年9月7日 原子力委員会から「高レベル放射性廃棄物の処分の取組における国民に対する説明や情報提供のあり方についての提言のとりまとめ」の審議依頼を受け、「高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会」を設置。
• 2012年9月11日 「回答」を行う。 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf • より一層の具体化を図るために、2013年5月「高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会」設置。
• 2014年9月19日、技術的検討分科会・社会的合意形成に関する分科会、報告を提出。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h140919-1.pdf • 2015年4月28日、4月24日付けの「提言」を公表。 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t212-1.pdf
© K. HASEGAWA
52
2012年9月11日付け「回答」のポイント
52
• 「社会的合意の欠如のまま」の「転倒した手続き」、「従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、 見直しをすることが必要である」
• 「受益圏と受苦圏の分離」
• 「科学・技術的能力の限界の認識」と「科学的自覚性の獲保」。「自律性のある科学者集団(認識共同体)」のもとでの「開かれた討論の場」の確保
• 「暫定保管および総量管理を柱とする」 • 「討論の場の設定による多段階合意形成の手続きの必要性」
© K. HASEGAWA
53
新提言(2015年4月24日付)の 大ポイント
53
• 暫定保管と中間貯蔵及び地層処分との違いを明確化 • 地上での暫定保管 • 暫定保管施設は地層処分場に連ならない
• 「中間貯蔵」=「再処理あるいは地層処分に向けて高レベル放射性廃棄物を冷却・貯蔵すること」
• 「暫定保管」=「地層処分についての安全性確保の研究並びに国民の理解と合意形成を図るための期間を確保する」ことを目的とする。「高レベル放射性廃棄物を、一定の暫定的期間に限って、その後のより長期的期間における責任ある対処方法を技術的及び社会的に検討し決定する時間を確保するために、安全性に厳重な配慮をしつつ保管することである」。回収可能性を担保した地層処分とは異なる
© K. HASEGAWA
54
地層処分とは
54
• 地層処分とは300メートル以上の深地層に処分施設を建設し、原子力発電によって出てくる高レベル放射性廃棄物を 終的に埋設して処分することである。
© K. HASEGAWA
55
暫定保管施設の立地選定の考え方
55
• 暫定保管の期間は原則50年とする。 • 「暫定保管施設は原子力発電所を保有する電力会社の配電圏域内の少なくとも1か所に、電力会社の自己責任において立地選定及び建設を行うことが望ましい。また、負担の公平性の観点から、この施設は原子力発電所立地点以外での建設が望ましい」。
© K. HASEGAWA
56
総量管理とは
56
• 総量管理=「高レベル放射性廃棄物の総量に関心を向け、それを望ましい水準に保つことである」
「総量の上限の確定」=「総量に上限を設定すること」 「総量の増分の抑制」=「単位発電量当たりの廃棄物の分量を可能な限り少ない量に抑え込むことである」。
© K. HASEGAWA
57
再稼働の前提条件として
57
• 「原子力発電所の再稼働問題に関する判断は、安全性の確保と地元の了解だけでなく、新たに発生する高レベル放射性廃棄物の保管容量の確保及び暫定保管に関する計画の作成を条件とすべきである。暫定保管に関する計画をあいまいにしたままの再稼働は、将来世代に対する無責任を意味する」(提言7)
© K. HASEGAWA
58
高レベル放射性廃棄物問題総合政策委員会
58
• 「「総量管理」と「暫定保管」及び「科学の限界の自覚」という考えの下に」
• 国民の意見を反映した政策形成を担う「高レベル放射性廃棄物問題総合政策委員会」を設置。「核のごみ問題国民会議」及び「科学技術的問題検討専門調査委員会」を統括する。中核メンバーは原子力事業の推進に利害関係を持たない者とする。独立性の高い政府の第三者機関とする。政府への勧告権などを付与する。公募委員は委員のうち3分の1程度とする。学術的な専門家の委員は、日本学術会議が推薦する。
© K. HASEGAWA
59
核のごみ問題国民会議
59
• 「高レベル放射性廃棄物の地層処分の立地選定の在り方とその合意形成について公論を喚起する」
• 「核のごみに関する総量管理の視点から」「暫定保管の前期30年の間に、エネルギー政策に関する国民的議論をリードし、原子力利用の将来像をどうするのかについて国民の合意形成に携わる」
• 委員は市民団体、経済界、学問界から均等に計15名程度選抜する。
© K. HASEGAWA
60
科学技術的問題検討専門調査委員会
60
• 「暫定保管及び地層処分の施設と管理の安全性に関する科学技術的問題の調査検討を徹底して行う諮問機関」
• 「自律性・第三者性・公正中立性を確保し社会的信頼を得られるよう、専門家の利害関係状況の確認、公募推薦制、公的支援の原則を採用する」
• 11名程度(社会科学者、哲学者、弁護士なども含む)
© K. HASEGAWA
61
3委員会の関係
61
高レベル放射性廃棄物 核のごみ問題国民会議 問題総合政策委員会 科学技術的問題検討 専門調査委員会
© K. HASEGAWA
62
報告者らの参考文献
• 舩橋晴俊・茅野恒秀・金山行秀編,2013, 『「むつ小川原開発・核燃料サイクル施設問題」研究資料集』東信堂。
• 舩橋晴俊・長谷川公一・飯島伸子,2012, 『核燃料サイクル施設の社会学−−−−青森県六ヶ所村』有斐閣。
• 舩橋晴俊・長谷川公一・飯島伸子編,1998, 『巨大地域開発の構想と帰結−−−−むつ小川原開発と核燃料サイクル施設』東京大学出版会。
• 長谷川公一,2011, 『脱原子力社会へ−−−−電力をグリーン化する』岩波新書。
• 鎌田慧, [1991]2011, 『六ヶ所村の記録(上・下)』岩波書店(岩波現代文庫)。
62
© K. HASEGAWA