4. khk レベル 1 コード - engineering-eye.com · khkレベル1コード 4. khk レベル1...

22
KHKレベル1コード 4. KHK レベル 1 コード AutoPIPE 6.0 より、高圧ガス設備等耐震設計基準(通産省告示 515 号および 143 号)および高 圧ガス設備等耐震設計指針(レベル 1 耐震性能評価(配管系)編 KHK E 012-2-1997)に準拠し た配管の応力算定機能が追加されています。 高圧ガス設備等耐震設計基準(告示 515 号)の一部が改正され(告示 143 号)、配管系が耐震設 計の対象になっています。また、改正告示では、耐震設計地震動がレベル 1 地震動とレベル 2 震動の 2 段階評価になっています。KHK レベル 1 コードはレベル 1 地震動に対する評価に対応 し、次節に説明する KHK レベル 2 コードはレベル 2 地震動に対応しています。この章では、KHK レベル 1 コードの使用方法について説明します。 4.1 適用範囲 基準および指針では配管系の応力算定に関して様々な規定が示されていますが、KHK レベル 1 コードが対応している項目は以下のようになります。 ・重要度 重要度 対応 備考 a 及びⅠ 詳細解析 Ⅱ及びⅢ × 簡易解析 ・解析手法 解析分類 解析手法 対応 備考 詳細解析 修正震度法 モード解析法 × 時刻歴応答解析法 × 簡易解析 許容スパン法 × ・応力算定 応力算定 対応 備考 配管部の応力算定 指針による組合せ、応力、許容応力の算定 フランジの応力算定 × 弁の応力算定 × 伸縮継手の応力算定 × ノズル部の応力算定 × WinNozl 3.0 にて対応) 配管支持構造物の応力算定 × ・その他 修正震度法による解析では以下を考慮することができます。 ・領域あるいは節点ごとの設計修正地震力の設定 ・腐れしろを除いた剛性による解析 ・運転時の縦弾性係数を用いた解析 バージョン9.4の補足 4-1

Upload: phamnguyet

Post on 04-Jun-2018

241 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

KHKレベル1コード

4. KHK レベル 1 コード

AutoPIPE 6.0 より、高圧ガス設備等耐震設計基準(通産省告示 515 号および 143 号)および高

圧ガス設備等耐震設計指針(レベル 1 耐震性能評価(配管系)編 KHK E 012-2-1997)に準拠し

た配管の応力算定機能が追加されています。 高圧ガス設備等耐震設計基準(告示 515 号)の一部が改正され(告示 143 号)、配管系が耐震設

計の対象になっています。また、改正告示では、耐震設計地震動がレベル 1 地震動とレベル 2 地

震動の 2 段階評価になっています。KHK レベル 1 コードはレベル 1 地震動に対する評価に対応

し、次節に説明するKHKレベル2コードはレベル2地震動に対応しています。この章では、KHKレベル 1 コードの使用方法について説明します。

4.1 適用範囲

基準および指針では配管系の応力算定に関して様々な規定が示されていますが、KHK レベル 1コードが対応している項目は以下のようになります。 ・重要度

重要度 対応 備考 Ⅰa 及びⅠ ○ 詳細解析 Ⅱ及びⅢ × 簡易解析

・解析手法

解析分類 解析手法 対応 備考 詳細解析 修正震度法 ○ モード解析法 × 時刻歴応答解析法 × 簡易解析 許容スパン法 ×

・応力算定

応力算定 対応 備考 配管部の応力算定 ○ 指針による組合せ、応力、許容応力の算定 フランジの応力算定 × 弁の応力算定 × 伸縮継手の応力算定 × ノズル部の応力算定 × (WinNozl 3.0 にて対応) 配管支持構造物の応力算定 ×

・その他 修正震度法による解析では以下を考慮することができます。 ・領域あるいは節点ごとの設計修正地震力の設定 ・腐れしろを除いた剛性による解析 ・運転時の縦弾性係数を用いた解析

バージョン9.4の補足 4-1

KHKレベル1コード

4

4.2 仕様

4.2.1 荷重の組合せ

レベル 1 耐震性能評価において対象となる配管の荷重の組合せは、高圧ガス設備等耐設計のレ

ベル 1 指針より以下の通りです。

表 4.1 配管のレベル 1 耐震性能評価における荷重の組合せ 地震荷重 荷重の

応力 種類 の種類

流体の 圧力

運転 重量 慣性力 相対変位

長手方向応力 σl

○ ○ ○

繰り返し応力 範囲 σE

○ ○ 支持構造

KHK レベル 1 コードを用いて耐震性能評価を行う場合、AutoPIPE で必要とされる荷重ケースの

一覧を以下に示します。耐震性能評価において熱荷重ケースは直接関係ありませんが、

AutoPIPE では内圧荷重と熱荷重が同時に計算されるため表中には示されています(また、許容

応力算定時等にも運転温度のデータが必要になります)。

表 4.2 レベル 1 耐震性能評価で必要となる荷重ケース 荷重の種類 荷重ケース名 備考 運転重量 GR 管重量、保温材重量、内部流体重量 流体の圧力 P1(,P2~P20) 内圧 熱荷重 T1(,T2~T20) 熱膨張 慣性力 E1 X 方向の慣性力 E2 Z 方向の慣性力 E3 Y 方向の慣性力 相対変位 S1 X 方向の地震相対変位 S2 Z 方向の地震相対変位

上記の表 4.1 の荷重の組合せは、AutoPIPE の KHK レベル 1 コードでは、以下のように扱われ

ます。

表 4.3 AutoPIPE におけるレベル 1 耐震性能評価の荷重の組合せ 地 震 荷 重 荷重の

応力 種類 の種類

地震方向

流体の 圧力

運転 重量 慣性力 相対変位

長手方向応力 X 方向 P1 GR E1 及び E3 σl Z 方向 P1 GR E2 及び E3

繰り返し応力 X 方向 E1 及び E3 S1 範囲 σE Z 方向 E2 及び E3 S2

それぞれ荷重ケースで求められた軸力及び曲げモーメント成分を上記の組合せに従い絶対値和

により合成します。ただし、圧力と運転荷重の結果の合成には、代数和(単純和)を用います。

4-2 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

4.2.2 流体の圧力、運転重量および地震力による長手方向応力

配管の曲がり管部、分岐部及び配管支持部のそれぞれについて、流体の圧力、運転重量、設計

水平地震力及び設計垂直地震力による長手方向応力は、以下に示す告示の式により算出しま

す。

( ) ( )σ l

i i o oi M i MZ

FA

=+

+2 2

(式 4.1)

ここに、 σl :圧力、重量および地震力による長手方向応力。 ii :管継手の種類に応じ、適切な方法で求める面内応力集中係数。公称厚で算出

します。 io :管継手の種類に応じ、適切な方法で求める面外応力集中係数。公称厚で算出

します。 Mi :配管内の流体の圧力、運転重量及び配管に作用する設計水平地震力並びに

設計鉛直地震力に伴う配管の面内曲げモーメント。 Mo :配管内の流体の圧力、運転重量及び配管に作用する設計水平地震力並びに

設計鉛直地震力に伴う配管の面外曲げモーメント。 Z :管の断面係数。ただし、腐れしろを除いて算出します。

( )

ZD D

Do i

o

=−π 4 4

32 (式 4.2)

ここに、 Do:配管の外径。 Di:配管の内径。ただし、腐れしろを除きます。 異径分岐管にあっては、次の式より得られる値。 (式 4.3) Z r t s= π 2

ここに、 r:分岐管の平均半径。ただし、腐れしろを除きます。 ts:分岐管の有効肉厚で、主管部肉厚と分岐管肉厚にiiを乗じた値

のいずれか小なる値。腐れしろ及び補強板の肉厚を除きます。 F :配管内の流体の圧力、運転重量及び配管に作用する設計水平地震力並びに

設計鉛直地震力による配管軸力。 A :管の断面積。腐れしろを除きます。

4.2.3 地震力による繰り返し応力範囲

設計水平地震力、設計垂直地震力及び配管支持点の移動に伴う繰り返し応力範囲は、以下に示

す告示の式により算出します。

( ) ( )Z

MMiMi2

2t

2oo

2ii

E

++⋅=σ (式 4.4)

ここに、 σE :設計水平地震力、設計鉛直地震力及び配管支持点の移動に伴う合成曲げ応

バージョン9.4の補足 4-3

KHKレベル1コード

4

力の繰り返し応力範囲。 ii、io :前記と同じ。 Z :前記に同じ。 Mi :配管に作用する設計水平地震力、設計鉛直地震力及び配管支持点の移動に

伴う配管の面内曲げモーメント。 Mo :配管に作用する設計水平地震力、設計鉛直地震力及び配管支持点の移動に

伴う配管の面外曲げモーメント。 Mt :配管に作用する設計水平地震力、設計鉛直地震力及び配管支持点の移動に

伴う配管のねじりモーメント。

4.2.4 長期応力と熱応力

高圧ガス設備等耐震設計基準および指針は当該設備の耐震性能の評価規定であり、長期応力

や熱応力の評価については明記されていません。しかしながら、配管設計において長期応力や

熱応力等は重要な因子であるため、AutoPIPE の KHK レベル 1 コードでは、地震応力とともにフ

ープ応力・長期応力・熱応力の算出も行っています。これらの応力については ASME B31.3 に従

って算出および評価を行っています。

NOTE: AutoPIPE では、長期応力を算出する際の内圧による長手方向応力項はデフォル

トでは PD/4t を使って算出しています。F/A を使って長期応力を算出する場合は、

[ツール]/[モデルオプション]/[結果]コマンドで設定を変更してください(4.3.7 節参

照)。

4.2.5 たわみ性係数と応力集中係数

配管の長手方向応力と繰返し応力範囲の算定において、たわみ性係数と応力集中係数は、レベ

ル 1 指針の(表 2.2)に従ってプログラムで算出します。なお、他に適切と認められる資料がある場

合は、その値を直接入力することも可能です。

4.2.6 解析に用いる縦弾性係数

AutoPIPE には、特定設備検査規則例示基準別添 1 第 12 条の縦弾性係数の抜粋がライブラリ

(AUTOKHK.LIB)に登録されています(ポアソンは 0.3 としています)。解析には、運転温度にお

ける縦弾性係数を用いることが必要であり、AutoPIPE では”静解析の荷重ケース”ダイアログ

(”[荷重]/[静解析セット]コマンドで当該の解析セットを選択して[修正]ボタンをクリックして表示)の”運転時弾性係数ケース”でその設定を行います。常温時の弾性係数を用いて解析を行う場合は

None を指定し、運転時の弾性係数を使用する場合はその熱荷重ケースの番号を選択します。静

解析および地震相対変位解析を実行する前に、この設定をしておきます(入力例については

4.3.6 節を参照してください)。

4-4 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

4.2.7 解析における腐れしろの扱い

配管の梁要素の剛性は、公称寸法から腐れしろを除いた寸法により算出しなければなりません。

AutoPIPE では[ツール]/[モデルオプション]/[編集]コマンドを用いてその設定を行います。静解

析および地震相対変位解析を実行する前に、”腐食代を除いた剛性による解析”をチェックしてお

きます(入力例については 4.3.6 節を参照してください)。なお、重量は腐れしろを考慮しない公称

寸法により算出しています。

4.2.8 配管の高さ方向の震度分布

AutoPIPE では、設計修正地震力の設定は[挿入]/[追加データ]/[部材の静的地震係数]コマンド

または[節点の静的地震係数]コマンドを用いて行います。[部材の静的地震係数]は配管・バルブ・

レジューサ・フレキシブルジョイント等のように長さを持った要素の重量(内部流体および保温材重

量を含む)に対して作用します。[節点の静的地震係数]はフランジおよび付加重量のように節点の

みの重量に対して作用します。どちらの”静的地震係数”においても、各方向ごとに設計修正地震

力を指定することができます。ここで定義した”静的地震係数”が、[荷重]/[静的地震]コマンドで指

定した”重力加速度に対する乗数(G)”に掛けられ、その値が配管重量に乗じられます。

配管支持点の設計震度が高さ方向に変わる場合は、その支持点間の設計水平修正地震力の分

布は線形分布が妥当と考えられますが、レベル 1 指針 2.2.3(9)の「近似的には両節点間の設計

水平修正震度の平均値とすればよい」により AutoPIPE では”部材の静的地震係数”は等分布で

与えるようにしています。

4.2.9 配管の耐震設計用許容応力

AutoPIPE には、特定設備検査規則例示基準別添 1 の別表第 1 の各温度における許容引張応

力、別表第 3 の各温度における降伏点又は 0.2%耐力のデータの抜粋がライブラリ(AUTO KHK.LIB)に登録されています。AutoPIPE は、告示の表に従って配管の耐震設計用許容応力

を自動的に算出します。

表 4.4 レベル 1 地震動に対する耐震設計用許容応力 応力の種類 耐震設計用許容応力

内圧、自重および地震慣性力

による長手方向応力 S

地震荷重の繰り返し応力範囲 2Sy

バージョン9.4の補足 4-5

KHKレベル1コード

4

この表において、S及びSyは、それぞれ次の値を表わします。 S :耐圧部材の耐震設計用許容応力であって、告示[表 16.2]の左欄に挙げる材料の種類に応

じ、右欄に既定する値。 Sy :材料の設計温度における降伏点又は 0.2%耐力であって、特定設備検査規則例示基準別添

1 の別表第 3 に挙げる値。

表 4.5 材料の種類に応じた耐震設計用許容応力

材料の種類 S イ 室温以下の温度で使用する低温用ア

ルミニウム合金材及び 9%ニッケル鋼

次ぎの(1)及び(2)のいずれか小なる値 (1) 0.6Su (2) 0.9Sy

ロ 室温以上の高温で使用するオーステ

ナイト系ステンレス鋼及び高ニッケル

合金鋼

次ぎの(1)から(4)までのうち最小の値 (1) 0.6Su0 (2) 0.6Su (3) 0.9Sy0 (4) Sy

ハ イ及びロ以外の材料 次ぎの(1)から(4)までのうち最小の値 (1) 0.6Su0 (2) 0.6Su (3) 0.9Sy0 (4) 0.9Sy

この表において、Su、Su0、Sy及びSy0は、それぞれ次の値とします。 Su及びSu0 :材料の設計温度及び常温における引張強さであって、特定設備検査規則例示

基準別添 1 の別表第 1 に示す許容引張応力の 4 倍の値。 Sy及びSy0 :材料の設計温度及び常温における降伏点又は 0.2%耐力であって、特定設備

検査規則例示基準別添 1 の別表第 3 に挙げる値。

4.3 解析手順と制限

AutoPIPE には様々な解析法・要素・ユーティリティ等が用意されていますが、以降に KHK レベ

ル 1 コードで使用する機能および使用上の制限について示します。

4.3.1 解析機能と荷重ケース

AutoPIPE には様々な解析機能や荷重ケースが用意されていますが、KHK レベル 1 コードに対

応している解析機能を以下に示します。 なお、KHK レベル 1 コードは静解析セットの機能には対応しておりません。KHK レベル 1 コード

では複数の静解析セットを定義しないでください。

4-6 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

表 4.6 KHK レベル 1 コードの対象となる荷重ケース 対象となる荷重ケース 対象外の荷重ケース

荷重ケース名 略称 荷重ケース名 略称 自重 GR 熱膨張 (*1) T1(,T2~T20) 内圧 P1(,P2~P20) 静的地震 (*2) E1,E2,E3 静的地震 (*3) E4~E10 地震相対変位 (*5) S1,S2 地震相対変位 (*3) S3~S10 静的風 W1~W10 ユーザ定義 U1~U20 荷重スペクトル F1~F10 調和振動 H1~H10 応答スペクトル (*4) R1~R10 時刻歴応答 (*4) M1~M10

NOTE: (*1) 熱膨張荷重ケース T1(,T2~T20)は、レベル 1 耐震性能評価において直接

は必要とされませんが、AutoPIPE では内圧荷重と熱膨張荷重が連動して解析さ

れるため必要となります。

NOTE: (*2) サポートのギャップや摩擦反力等の非線形性を考慮する場合、プラス方向の

地震荷重による解析結果とマイナス方向の地震荷重による結果は異なるので注意

が必要です。また、水平 2 方向(X 方向:E1、Z 方向:E2)および鉛直方向(Y 方向:

E3)として解析する必要があります。

NOTE: (*3) これらの荷重ケースによる応力評価は行いません。

NOTE: (*4) AutoPIPE では、応答スペクトル解析(R1,R2,R3)および時刻歴応答解析

(M1,M2,M3)による応力算定を行うこともできます。

NOTE: (*5) 水平 2 方向(X 方向:S1、Z 方向:S2)として解析する必要があります。また、地

震相対変位解析では、サポート部のギャップや摩擦等の非線形性は考慮されませ

ん。

4.3.2 要素と部品

AutoPIPE には、配管解析で必要とされる様々な配管部品や要素が用意されています。しかし、

AutoPIPE が持つすべての部品や要素が耐震設計基準に対応しているわけではありません。以

下に KHK レベル 1 コードに対象としていない部品や要素等を示します。

表 4.7 KHK コード非対応の部品/要素 非対応

・マイターベンド ・地盤ばね ・フランジの ANSI による相当圧力評価

バージョン9.4の補足 4-7

KHKレベル1コード

4

4.3.3 システムオプション

新規データを作成する際に表示される”システムのモデルオプション”画面では、以下の設定を行

ってください。 表 4.8 システムのモデルオプションの設定値

項目 設定値 応力評価コード KHK E 012 Level 1 単位系ファイル名(入力および出力) SI ライブラリ(部品) AUTOJIS ライブラリ(材料) AUTOKHK

以下に”システムのモデルオプション”画面の入力例を示します。

NOTE: AutoPIPEのSI単位では、バルブ・フランジ・付加重量等の単位はkg、圧力の単位

はN/mm2になっていますが、これらの単位をNやMPaに変更したSIJPという単位

系ファイルも用意されています。

4.3.4 設計修正地震力の定義

地震荷重を定義する際、AutoPIPE ではβやμ等の係数を入力するのではなく、これらの係数を

掛け合わせて最終的に求められる設計修正地震力を入力します。設計修正地震力の入力は[挿入]/[追加データ]/[部材の静的地震係数]コマンドおよび[挿入]/[追加データ]/[節点の静的地震係

数]コマンドを使って入力します。[部材の静的地震係数]は配管・バルブ・レジューサ・フレキシブ

ルジョイント等のように長さを持った要素の重量(内部流体および保温材重量を含む)に対して作

用します。[節点の静的地震係数]はフランジ・付加重量・バルブアクチュエータ部のように節点の

みの重量に対して作用します(バルブを付加重量でモデル化した場合は、[節点の静的地震係数]を使って地震荷重を定義します)。ここで定義した”静的地震係数”に、[荷重]/[静的地震]コマンド

で指定した”重力加速度に対する乗数(G)”が掛けられ、その値が配管重量に乗じられます。以下

4-8 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

に静的地震係数の入力例を示します(詳細は 4.4 レベル 1 計算例を参照してください)。

また、[荷重]/[静的地震]コマンドで”重力加速度に対する乗数(G)”を定義する際は、以下のように、

E1 では X 方向に 1.0、E2 では Z 方向に 1.0、E3 では Y 方向に -1.0 を入力してください。

修正震度法では水平方向の設計震度は高さごとに変わります。そして、配管に作用する設計修正

地震力も高さごとに変わります。設計修正地震力を入力する場合、AutoPIPE では高さごとに地

震力を設定することはできません。代わりに、AutoPIPE では[部材の静的地震係数]コマンドを使

って、設計震度が異なる領域ごとに設計修正地震力を定義して行きます。 配管支持点の設計震度が高さ方向に変わる場合は、その支持点間の設計水平修正地震力の分

布は線形分布が妥当と考えられますが、AutoPIPE では指定領域内の設計修正地震力は一定と

して定義します。したがって、配管支持点の設計震度が大きく変化する場合は、領域を細かく区切

って設計修正地震力を個々に定義していきます。 [部材の静的地震係数]コマンドはフランジと付加重量に対しては作用しません。フランジや付加重

量がある場合には、[節点の静的地震係数]コマンド使って別途定義しなければなりません。

バージョン9.4の補足 4-9

KHKレベル1コード

4

4.3.5 慣性力に伴う配管支持点の応答変位の定義

通常、配管支持構造物と配管とは独立に解析します。したがって、配管の応力解析を行う前に支

持構造物の応答変位を算出し、求められた配管支持部の応答変位を配管系の支持点の強制変

位として入力します。支持構造物の応答変位の入力には、[挿入]/[追加データ]/[強制変位]コマン

ドを使って入力します。以下に強制変位の入力画面の例を示します。その後、[解析]/[地震相対

変位]コマンドを使って、地震相対変位解析(変位応答解析)を行います。なお、地震相対変位解

析では、サポート部のギャップや摩擦等の非線形性は考慮されません。

作用させる荷重ケース: X 方向地震による配管支持点の変位量を入力する場合には S1 を、Z 方

向地震による配管支持点の変位量を入力する場合には S2 を選択します。 位相番号: 配管系が複数の支持構造体上にある場合、それぞれの支持構造体は異なる位相で

振動します。配管支持点がどの支持構造体上(位相番号)にあるかを入力します。AutoPIPE が

自動的にそれぞれ異なる方向に振動する場合の解析を行います。配管支持構造体が異なる方向

に振動した場合の変位量を直接入力した場合は、位相番号をすべて 1 としてください。 移動量: X または Z 方向地震による配管支持点の移動量を入力します。 回転角: 地震相対変位解析では回転角の入力はできません。

4.3.6 解析時のオプション

静解析および地震相対変位解析を実行する前に、[荷重]/[静解析セット]コマンドおよび[ツー

ル]/[モデルオプション]/[編集]コマンドで、以下の設定を行ってください。詳細は 4.2.6 節および

4.2.7 節を参照してください。

表 4.9(A) 静解析の荷重ケースの設定値 オプション 設定値

運転時弾性係数ケース T1~T20 のどれか

表 4.9(B) 編集のモデルオプションの設定値

オプション 設定値 腐食代を除いた剛性による解析 ON

4-10 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

・運転時弾性係数のケースの設定例:

[荷重]/[静解析セット]コマンドにて、対象となる解析セットを選択して[修正]ボタンをクリック

・腐食代を除いた剛性による解析の設定例:

[ツール]/[モデルオプション]/[編集]コマンド

バージョン9.4の補足 4-11

KHKレベル1コード

4

4.3.7 応力算出時のオプション

KHK レベル 1 コードで応力を算出する場合は、”結果のモデルオプション”([ツール]/[モデルオプ

ション]/[結果]コマンド)は以下のように設定しておいてください。地震力による長手方向応力およ

び繰返し応力範囲の算出において、AutoPIPE は基準および指針に基づいて応力値の算出を

自動的に行います。 表 4.10 結果のモデルオプションの設定値

オプション 設定値 軸力を考慮 OFF 公称厚さで応力計算 OFF 非ベンドの長期に SIF=1 を設定 OFF 長期/短期に SIF=1 を設定 OFF 長期/短期に SIF=0.75i を設定 OFF ねじりモーメントを考慮 OFF 設計圧力係数 1.0 主荷重に軸力と P ケースを考慮 ON

以下に”結果のモデルオプション”画面の入力例を示します。

また、長期応力を算出する際の内圧による長手方向応力項を、F/A で算出する場合は、”長手方

向内圧応力(P/A/M/N)”を A に設定してください。

4-12 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

4.3.8 荷重の組合せ

AutoPIPE では、節点の変位、配管支持点に作用する力およびモーメント、配管内部に発生する

断面力は個々の荷重ケースごとに出力され、各荷重ケースを組み合わせたデータは自動的には

出力されません。各荷重ケースを組み合わせたデータを出力する場合は、[ツール]/[組合せ]コマ

ンドにおいて[応力以外の組合せ]タブの”新規”ボタンを使ってそれらの組合せを定義してください。

以下に E1、E3、S1 の 3 つの荷重ケースを組み合わせる場合の例を示します。

また、耐震性能評価では、長期応力(GR+MaxP)、熱膨張応力(Amb to T1 等)の評価は規定さ

れていません。AutoPIPE ではこれらの応力値の出力も行いますが、[応力以外の組合せ]タブの

印刷フィールドのチェックを外すことで、これらの応力の出力を抑制することができます。

バージョン9.4の補足 4-13

KHKレベル1コード

4

4.4 レベル 1 計算例

AutoPIPE による「高圧ガス設備等耐震設計指針 レベル 1 耐震性能評価(配管系)編」の計算例

(塔廻り配管)を以下に示します。

A00

A05

A06

A08

A09

A10

A07

A11

A12

A13

A01

A04

A03

A02

図 4.1 塔廻り配管のモデル図

4-14 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

(1) システムオプション

新規にデータを作成する際に表示される”システムのオプション”画面では、以下の設定を行ってく

ださい。

項目 設定値 応力評価コード KHK E 012 Level 1 単位系ファイル名(入力および出力) SI ライブラリ(部品) AUTOJIS ライブラリ(材料) AUTOKHK

NOTE: AutoPIPEのSI単位では、バルブ・フランジ・付加重量等の単位はkg、圧力の単位

はN/mm2になっていますが、これらの単位をNやMPaに変更したSIJPという単位

系ファイルも用意されています。

(2) モデル作成

AutoPIPE の各コマンドを使って、上記に示すモデル形状を作成します。

(3) 設計修正地震力の定義

AutoPIPE の地震データの入力は、βやμ等の係数を与えるのではなく、これらの係数を掛け合

わせて最終的に求められる設計修正地震力を入力します。以下に節点 A00 の設計修正地震力

の算出例を示します。

バージョン9.4の補足 4-15

KHKレベル1コード

4

重要度: β1 = 1.0 (Ia) 地域係数: β2 = 1.0 (特A) 表層地盤増幅係数: β3 = 2.0 (第 4 種地盤) 設計水平震度: KH = 0.150μkβ1β2β3 = 0.150×1.0×1.0×2.0 = 0.30 設計鉛直震度: KV = 0.075μkβ1β2β3 = 0.075×1.0×1.0×2.0 = 0.15 配管支持点(節点A00)の震度分布係数: μ = 1.5×(H / Ht) = 1.5×(27.2 / 27.2) = 1.50 塔の水平方向の応答倍率: β5 = (基準応答倍率×補正係数) = 2.6×1.18 = 3.068 配管支持点(節点A00)の設計水平震度: μKMH = μβ5KH = 1.50×3.068×0.30 = 1.381 鉛直方向の応答倍率: β6 = 2.0 設計鉛直震度: KMV = β6KV = 2.0×0.15 = 0.30 配管の支持構造物に対する水平方向応答倍率: β8 = 2.0 配管の支持構造物に対する鉛直方向応答倍率: β9 = 2.0 設計修正水平地震力: FMH = β8μKMHWH = 2.0×1.381WH = 2.762 WH

設計修正鉛直地震力: FMV = β9KMVWV = 2.0×0.3WV = 0.6 WV

各配管支持点に作用する設計修正地震力は指針の計算例より以下のようになります。

節点 設計水平修正地震力 設計鉛直修正地震力

A00 2.762 WH 0.60 WV

A03 2.448 WH 0.60 WV

A04 1.840 WH 0.60 WV

A10 1.396 WH 0.60 WV

A13 1.202 WH 0.60 WV

AutoPIPE では、支持点間の設計水平修正地震力の分布を線形分布として入力できないため、

両支持点間の設計水平修正地震力はその平均値を入力します。AutoPIPE に入力する設計修

正地震力は以下のようになります。

領域 設計水平修正地震力 設計鉛直修正地震力 A00 ~ A02 F 2.762 WH 0.60 WV

A02 F ~ A03 2.605 WH 0.60 WV

A03 ~ A04 2.144 WH 0.60 WV

A04 ~ A05 F 1.618 WH 0.60 WV

A05 F ~ A11 F 1.396 WH 0.60 WV

A11 F ~ A12 F 1.299 WH 0.60 WV

A12 F ~ A13 1.202 WH 0.60 WV

以下に A00~A02 F 区間の設計修正地震力の入力例を示します。最初に[選択]/[領域]コマンド

等を使って、A00~A02 F の領域を赤く表示させます。次に[挿入]/[追加データ]/[部材の静的地

震係数]コマンドを実行し、以下のように各方向の設計修正地震力を入力します。他の領域につい

ても設計修正地震力を入力していきます。

4-16 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

フランジ・付加重量・バルブアクチュエータ部については、[挿入]/[追加データ]/[節点の静的地震

係数]コマンドを使って、別途、設計修正地震力を入力します。以下にフランジ節点 A07 の入力例

を示します。

最後に、[荷重]/[静的地震]コマンドを実行し、以下のように”重力加速度に対する乗数(G)”を定義

します。ここで定義した”重力加速度に対する乗数(G)”に、先ほど入力した”設計修正地震力”が掛けられ、その値が配管重量に乗じられます。

(4) 慣性力による配管支持点変位の定義

地震時の各配管支持点の応答変位は指針の計算例より以下のようになります。[挿入]/[追加デー

タ]/[強制変位]コマンドを使って、これらのデータを入力します。

バージョン9.4の補足 4-17

KHKレベル1コード

4

節点 X 方向変位

(mm)

Y 方向変位

(mm)

Z 方向変位

(mm)

A00 120 0 120 A03 100 0 100 A04 40 - 40 A10 - 0 - A13 -4 0 -4

以下に、節点 A00 の強制変位の入力例を示します。最初に X 方向地震による応答変位量を入力

します。節点 A00 をクリックし、[挿入]/[追加データ]/[強制変位]コマンドを実行します。以下のよう

に、”作用させる荷重ケース”から”S1”を選択し、X 方向の変位量を入力します。

次に Z 方向地震による応答変位量を入力します。[挿入]/[追加データ]/[強制変位]コマンドを実行

し、”作用させる荷重ケース”から”S2”を選択し、Z 方向の変位量を入力します。

節点 A03、A04、A13 についても同様に応答変位量を入力していきます。

(5) 解析セットの定義

静解析を行う荷重ケースと解析オプションの定義を行います。[荷重]/[静解析セット]コマンドを実

行して荷重セットダイアログを表示させます。

4-18 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

1 番目の解析セットの行を選択し、[修正]ボタンを押して、以下の”静解析の荷重ケース”ダイアログ

を表示させます。静的地震のE1、E2、E3にチェックを付け、”運転時弾性係数ケース”から熱荷重

ケースの T1 を選択してください。

NOTE: 大口径で薄肉のエルボと曲がり管においては、圧力がたわみ係数と応力集中係数

に大きな影響を与えるため、その補正が必要になります。補正を行う場合は”内圧硬

化ケース”オプションの設定が必要になります。

(6) その他の解析オプションの設定

耐震性能評価では、”腐れしろを除いた剛性による解析”が必要になります。[ツール]/[モデルオプ

ション]/[編集]コマンドを使って、この設定を行います。以下に”編集のモデルオプション”の入力画

バージョン9.4の補足 4-19

KHKレベル1コード

4

面を示します。”腐食代を除いた剛性による解析”をチェックしてください。

(7) 静解析の実行

[解析]/[静解析]コマンドを選択し、静解析(自重、熱、内圧、慣性力)を実行します。

(8) 地震相対変位解析の実行

[解析]/[地震相対変位]コマンドを選択し、支持点変位による解析を実行します。以下に実行例を

示します。1 ケース目と 2 ケース目をチェックし、”運転時弾性係数のケース”から T1 を選択してく

ださい。

4-20 バージョン9.4の補足

KHKレベル1コード

(9) レポートの作成

この計算例では耐震性能評価のみに着目し、長期応力や熱応力は結果リストには含めないことに

します。[ツール]/[組合せ]コマンドを実行し、[コード応力の組合せ]タブをクリックして、GR+MaxP、

Amb to T1、MaxP のチェックを消してください。

[結果]メニューの各コマンドを使って、レポートの出力、変位図の表示、応力の分布図の表示等を

行って、解析結果の確認を行います。以下にバッチレポート([結果]/[バッチレポート])の実行例を

示します。

バージョン9.4の補足 4-21

KHKレベル1コード

4

バッチレポートの出力例(抜粋) -----------------------------------------------------------------------------------------------MODEL1 03/22/2011 BENTLEY 10:52 AM AutoPIPE Plus 9.3.2 RESULT PAGE 27----------------------------------------------------------------------------------------------- 解 析 結 果 の 要 約 -------------------- 最大の長手方向[|P+W|+|X|+|Y| <L1>]応力 節点番号 : A12 F 応力 N/mm2 : 45 許容値 N/mm2 : 187 比 : 0.24 荷重の組合せ : PW+X+Y (E) 最大の長手方向[|P+W|+|Z|+|Y| <L1>]応力 節点番号 : A06 N 応力 N/mm2 : 46 許容値 N/mm2 : 187 比 : 0.24 荷重の組合せ : PW+Z+Y (E) 最大の繰返し[2*(|X|+|Y|+|DX|) <L1>]応力 節点番号 : A12 F 応力 N/mm2 : 141 許容値 N/mm2 : 430 比 : 0.33 荷重の組合せ : X+Y+DX (E) 最大の繰返し[2*(|Z|+|Y|+|DZ|) <L1>]応力 節点番号 : A02 F 応力 N/mm2 : 147 許容値 N/mm2 : 430 比 : 0.34 荷重の組合せ : Z+Y+DZ (E)

4-22 バージョン9.4の補足