3次元測定機使用講習会報告 - 東京大学...3次元測定機使用講習会報告...

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3 次元測定機使用講習会報告 講師:荒木先生 (KEK 加速器グループ) 受講者:土井、大石 平成 27 7 31 概要 2015 7 8 -10 日に、MCE クリーンブース内で 3 次元測定機(FARO 社製) 1 の取り 扱い説明を兼ねつつ、 真空槽の MCF へのダクトに接続するフランジ 床基準点 真空槽上部フランジ 真空槽内部に設置されたブレッドボード の測量を行った。真空槽内に設置されたブレッドボードの中心位置は、真空槽上部フランジの 中心を原点とした座標系で、水平面内の x 方向に 2.015mmy 方向に 0.971mm ずれてい た。この値は、以前土井さん、高橋さんが下げ振りを使用して測定した結果 (x 方向に 1.75mmy 方向に 1.0mm のずれ) 0. mm 程度の誤差範囲内で一致していた。この結果をふまえ、 MCe suspension はブレッドボード上で中心から (-2mm, -1mm) の位置へ設置することとした。 また、ブレッドボード面から光軸(横大フランジ中心)までの高さは 210.6mm であった。MC suspension は、フレーム底面から鏡中心までの高さを 200mm に調整してあり、ブレッドボード 上では、suspension フレームの下に厚さ 10mm の板を敷くので、高さ方向についても、0.6mm 程度の誤差以内で設置されていることを確認した。以下、講習の概要、測定器の特徴、較正、測 定、座標系について報告する。 1 講習概要 講習場所は MCE クリーンブース内(写真 1)。講習前日の 7 7 日(火)に内山さん、土井さ ん、大石で測定器をクリーンブース内に清拭搬入しておいた。講習初日の 7 8 日(水)はクリー ンブース内の光学定盤をつかって、FARO の使用方法と主に較正の方法について説明を受け、練習 した。9 日(木)は実際に MCE 真空槽などの測量を行った。10 日(金)の午前中に研究棟で測量 結果をまとめた。 2 3 次元測定器の特徴 講習初日は、3 次元測定機の初歩的な説明からはじめていただいた。今回測定に用いたポータブ ル測定アーム E09-05-15-45033 は、2.7m(要確認)の測定範囲内を、単一点で 0.029[mm]、測定範 囲内で+/-0.041[mm] の精度で測定をすることができる計測器であるが、測定可能な対象物は限定 的である。たとえば、フランジに貼ってあるシールの線(写真 8)など、凹凸のないものは、基本 的に測定対象外である。また、アームの測定範囲を超える広い領域を測定する場合は、同一面上に 1 国立天文台 TMT 推進室のご厚意により、KAGRA に貸与いただいている。 1

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Page 1: 3次元測定機使用講習会報告 - 東京大学...3次元測定機使用講習会報告 講師:荒木先生(KEK加速器グループ) 受講者:土井、大石 平成27 年7

3次元測定機使用講習会報告

講師:荒木先生 (KEK加速器グループ)

受講者:土井、大石

平成 27 年 7 月 31 日

概 要2015年 7月 8日-10日に、MCEクリーンブース内で 3次元測定機(FARO社製)1の取り

扱い説明を兼ねつつ、• 真空槽のMCFへのダクトに接続するフランジ• 床基準点• 真空槽上部フランジ• 真空槽内部に設置されたブレッドボード

の測量を行った。真空槽内に設置されたブレッドボードの中心位置は、真空槽上部フランジの中心を原点とした座標系で、水平面内の x 方向に 2.015mm、y 方向に 0.971mm ずれていた。この値は、以前土井さん、高橋さんが下げ振りを使用して測定した結果 (x方向に 1.75mm、y 方向に 1.0mm のずれ) と 0. 数 mm 程度の誤差範囲内で一致していた。この結果をふまえ、MCe suspensionはブレッドボード上で中心から (-2mm, -1mm)の位置へ設置することとした。また、ブレッドボード面から光軸(横大フランジ中心)までの高さは 210.6mmであった。MCsuspensionは、フレーム底面から鏡中心までの高さを 200mmに調整してあり、ブレッドボード上では、suspensionフレームの下に厚さ 10mmの板を敷くので、高さ方向についても、0.6mm程度の誤差以内で設置されていることを確認した。以下、講習の概要、測定器の特徴、較正、測定、座標系について報告する。

1 講習概要講習場所はMCEクリーンブース内(写真 1)。講習前日の 7月 7日(火)に内山さん、土井さん、大石で測定器をクリーンブース内に清拭搬入しておいた。講習初日の 7月 8日(水)はクリーンブース内の光学定盤をつかって、FAROの使用方法と主に較正の方法について説明を受け、練習した。9日(木)は実際にMCE真空槽などの測量を行った。10日(金)の午前中に研究棟で測量結果をまとめた。

2 3次元測定器の特徴講習初日は、3次元測定機の初歩的な説明からはじめていただいた。今回測定に用いたポータブル測定アーム E09-05-15-45033は、2.7m(要確認)の測定範囲内を、単一点で 0.029[mm]、測定範囲内で+/-0.041[mm]の精度で測定をすることができる計測器であるが、測定可能な対象物は限定的である。たとえば、フランジに貼ってあるシールの線(写真 8)など、凹凸のないものは、基本的に測定対象外である。また、アームの測定範囲を超える広い領域を測定する場合は、同一面上に

1国立天文台 TMT 推進室のご厚意により、KAGRA に貸与いただいている。

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Page 2: 3次元測定機使用講習会報告 - 東京大学...3次元測定機使用講習会報告 講師:荒木先生(KEK加速器グループ) 受講者:土井、大石 平成27 年7

図 1: MCEクリーンブース内に設置された測定器 図 2: 直径 6mmのプローブ

ない 4点以上の点を基準として測定器の移動を行うことができる。プローブに 6mm球 (写真 2参照)を用いる場合は、4, 5mmのナットをホットボンドなどで貼ることによって参照基準点を作ることができる(同写真 8)。測定器の設置位置や固定方法が操作性や測定精度に大きく影響するため、測定を始める前にこれらについてよく検討する必要がある。以上のような説明を受けた後、測定器の較正を行った。

3 較正較正は、プローブ補正 (写真 3)として、専用の FAROプローブ補正コーン (写真 4)に先端部分をあてて 4方向へ動かして行うものと、単一点精度検証 (SPAT)としてアームを大きく動かして(x, y, z)座標の再現性を確認するものの 2種類があり、両方を行った。

図 3: プローブ補正の指示画面 (プローブを 4方向へ動かす)。

図 4: 専用の部品にプローブをあてて補正を行う。緑色のボタンを押すと測定される。

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4 測定翌 9日はまず測定器をMCF側の床上に移動し、専用脚を使って固定した。午前中はその状態で

MCE-MCF間を接続するダクトにつなげるフランジ(以下横大フランジ、横 Fなど)、床基準面(写真 7)、移動用の基準点(写真 5)の測定を行った。午後は測定器を真空槽内のブレッドボード上に移動し、移動用基準点、真空槽上部フランジとブレッドボードの測定を行った。本節では、以下測定方法と結果について述べる。本報告で用いる座標系については次の 5節に述べるが、MCE真空槽上部フランジ面を xy面とし、xy面に鉛直な方向を zに取っている。原点は上部フランジ面中心とし、xy面上では、原点から水平基準面に落とした横大フランジ中心位置方向を −y軸方向としている。

図 5: ブレッドボード上の基準点。提供:荒木先生 図 6: 横大フランジ測定の様子

4.1 基準点 (SPAT)の設置と測定はじめに基準点として補正コーン(写真 5中 SPAT)を設置し、点測定を行った。その後も測定の要所でこの点を再測定し、測定器の位置ずれなどがないことを確認した。

4.2 横大フランジの測定次に、平面を選択し、横大フランジの接続面を数点測定した (写真 6)。その後、この面を参照面として、円の測定を選択し、内周、外周を測定した。測定結果は表 1にまとめたが、横大フランジの内径はおよそ 995mm、外径は 1,079mmであり、真円度2は 0.7mm程、床基準点(写真 7)からの光軸高さは約 1,142mmであった。MCEでの光軸高さの設計値は 1,122mmであるが、これは真空槽下のモルタル面からの高さであり、今回測定した床基準点は、モルタル面から約 20mm下がっているので、測定値の整合性は取れている。

2最大偏差(フィット円からのずれの最大値、単位 [mm])+最小偏差(フィット円からのずれの最小値の絶対値、単位[mm])。

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測定名 直径 真円度 中心座標 床面からの高さ[mm] [mm] x[mm] y[mm] z[mm] [mm]

横大 F内周#1 994.877 0.708 -0.010 -851.195 -650.309 1141.730横大 F外周#4 1078.699 0.731 0.000 -851.195 -650.271 1141.768床基準点#1 - - 1.011 -2067.994 -1771.829 0.000

上フランジ外周#2 1679.079 2.451 0.136 0.044 -1.303 1790.736ブレッドボード#6 1311.744 0.042 2.015 0.971 -860.746 931.293上フランジ内周#5 1499.209 0.726 0.000 0.000 0.000 1792.039

表 1: 測定値:#は何回か測定を行った場合に、何番目の測定を用いたのかを示す。

4.3 床基準点の測定続いて、床の基準点を測定した。測定にはレーザートラッカと互換な専用の器具(アダプター)を使用した (写真 7)。アダプターの直径は、1.5インチ(約 38.1mm)であり、床に設置されたリング座(KEK製作)上に置いた場合のアダプターの中心高さはリング座底面からおよそ 20.21mmになる。このことから、表 1の床基準点の z座標の値は、フランジ上面から測定したアダプター中心の z値から、20.21mmを引いた値を示した。

4.4 移動用基準点の設置、測定ブレッドボードや上部フランジの形状を測定するためには、真空槽内に測定器を移動する必要がある。測定器の移動にあたっては、移動前に同一平面上にない 4つ以上の点を測定しておき、測定器を移動した後に同じ点を測定することで、移動前後の測定点の位置をつないで計測を行うことができる。このため、ブレッドボード上に 7点の基準点(図 5)を取り、上部フランジにも測定点をいくつか接着して (図 8) 移動用の基準点とし、測定を行った。

図 7: 床基準点測定の様子 図 8: 測定点の追加:ホットボンドでナットを接着。6個くらい貼ったが、半数は取れてしまった。

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4.5 測定器の移動移動用の基準点の設置、測定を終えた後、測定器を定盤上に移動した。移動に使った点は、ブレッドボード上の 7点(図 5)と上部フランジ上に貼った 2点 (図 8)である。「測定器の管理」から「測定器位置」を選択して測定器の移動を行った。移動の最大偏差は 0.101mm、標準偏差は 0.03mmであった。

図 9: ブレッドボード上に移動した測定器 図 10: 上フランジの測定の様子。

4.6 上部フランジ測定横大フランジの測定と同様に、基準となる面として、まずフランジ上面を測定した。この上面を参照して円周を測定するのであるが、参照面の指定に問題があり、外周の測定時は偏差が実際より大きくなっていた。この後ブレッドボードの測定を行った際に、上記の問題に気がついたので、参照面を指定し直して内周の測定を行った。結果は、内径約 1,499mm、外径は約 1,679mm(参照面に問題あり)、床からの高さは 1,792mmだった。

4.7 ブレッドボード測定続いてブレッドボードの測定を行った。測定結果では、ブレッドボードの直径は約 1,312mm、真円度は 0.042[mm]と測定精度は高かった。上部フランジ中心とブレッドボード中心の水平面内での位置ずれは、x方向に 2.015mm、y方向に 0.971mmであった。ブレッドボードの回転については、基準点 4-6, 2-5(図 5) を組み合わせた線で検証した。測定結果は、ねじの設置誤差が含まれるが、角度にして 1度程度のずれになった。これらの基準点位置から算出されたブレッドボードの傾き (∼度)は、面測定で算出された値 (∼0.0002[rad])より大きかったことなどから、1度という値には、基準点の設置誤差の寄与が大きく、ブレッドボードの回転角は、今回の測定誤差の 1度以内程度であると考えられる。

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5 座標系の構築前節で測定結果について述べたが、測定された座標値は、座標系を定めることではじめて決めることができる。KAGRAでは、真空槽上部フランジが参照基準とされている。そこで、本測定ではまずMCE上部フランジ面を水平面とし、その内周測定#5の中心を座標原点と定めた。次に、横大フランジ中心を上部フランジ面に落とした点と座標原点を結ぶ線を作成し、これを y軸とした。xyの方向は、KAGRAのアームの方向と一致するように定めた。

6 今後の課題など次回以降の測定のために、以下の物品の用意を進めていきます。

• 25mmピッチの定盤に合う測定器固定用板(FAROの板はインチ)

• アームを束ねるバンド

• 専用の測定用パーツ(アダプター:今回は荒木先生所有の物を使用)

• 測定基準点

今回は準備不足などもありましたが、荒木先生はじめみなさまのご協力をいただくことで一通りの測定を行うことができました。ありがとうございました。

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