2p074 vsfg βfig. 2. 羽軸の透過像およびアミドiに対するvsfg像 (①...

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2P074 VSFG検出赤外超解像顕微鏡法による羽毛 β-ケラチンの 赤外分光イメージング -偏光依存性測定による分子配向、キラリティーの観測- 1 岡山理大・理, 2 東工大・化生研 ○高橋広奈 1 ,山本幸汰 1 ,木村裕也 1 ,渡瀬五常 2 ,藤井正明 2 ,酒井誠 1 Orientation-sensitive IR imaging of feather β-keratins by a VSFG-detected IR super-resolution micro-spectroscopy -Polarization dependency measurements- Hirona Takahashi 1 , Kota Yamamoto 1 , Yuya Kimura 1 , Yukihisa Watase 2 , Masaaki Fujii 2 , Makoto Sakai 1 1 Faculty of Science, Okayama University of Science, Japan 2 Laboratory for Chemistry and Life Science, Tokyo Institute of Technology, Japan AbstractFeather is generally known to consist of rachis, barb and barbule regions from the root to the tip, and it has been reported that main components of feather are β-keratins with β-sheet structures. On the other hand, the spatial inhomogeneity of β-keratins could not be disclosed because of a lack of the spatial resolution of previous analytical methods. In this study, we aim to elucidate the spatial distribution and orientation of β-keratins at each region of feather in the amide I band and verify those differences at each region by a vibrational sum-frequency generation (VSFG) detected IR super-resolution microscopy that has the ability to measure the orientation-sensitive molecular image with sub-micrometer scale spatial resolution. In addition, we will discuss the results of the cutting angle dependence on VSFG- detected IR super-resolution imaging. 【序】 物理的・化学的に頑丈で軽量な羽毛は、羽軸を中心に羽 枝、小羽枝へと分岐した特殊な形状を持っている。それぞれの直 径は~ 200 μm~ 100 μm 及び~ 5 μm と明瞭な違いがある[1]。各 部位では、 β-シート構造を有するケラチンタンパク質(β-ケラチ ン)が階層的に集束し、繊維状構造を形成している[2]。特に羽 軸では、平行に配列した一対のβ-ケラチンが互い違いに重なった β-ケラチンフィラメントが、羽軸の伸長方向に沿って並んでいる といわれている[3, 4]。我々は、振動和周波発生(VSFG)法を顕 微鏡技術に応用し、空間分解能を~ 1.0 μm まで向上した VSFG 出赤外超解像顕微鏡を用いて、羽毛β -ケラチンの内部分布・配 向の解明を試みた。VSFG 信号強度は VSFG、可視光そして赤外光の偏光に依存し、 かつ、分子配向によってその応答が大きく変化すること[5]から、 β-ケラチンの分子配 向観察が可能である。我々は既に、羽軸中心部の横断面(Fig. 1)におけるβ-ケラチン のアミド I バンド(CO str., 1630 cm -1 )の偏光依存性測定を行った結果を昨年の分子科 学討論会で報告した[6]。その結果から、羽軸の大部分にβ-ケラチンが分布しているこ とに加えて、偏光の組み合わせによって VSFG 信号強度が明瞭に変化したことから、 Fig. 1. 羽毛全体像 (①先端部、②中心 部、③根元部、破線 は切断箇所)

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2P074

VSFG検出赤外超解像顕微鏡法による羽毛β-ケラチンの 赤外分光イメージング

-偏光依存性測定による分子配向、キラリティーの観測- 1岡山理大・理,2東工大・化生研

○高橋広奈1,山本幸汰1,木村裕也1,渡瀬五常2,藤井正明2,酒井誠1

Orientation-sensitive IR imaging of feather β-keratins by a VSFG-detected IR super-resolution micro-spectroscopy -Polarization dependency

measurements-

○Hirona Takahashi1, Kota Yamamoto1, Yuya Kimura1, Yukihisa Watase2, Masaaki Fujii2, Makoto Sakai1

1 Faculty of Science, Okayama University of Science, Japan 2 Laboratory for Chemistry and Life Science, Tokyo Institute of Technology, Japan

【Abstract】Feather is generally known to consist of rachis, barb and barbule regions from the root to the tip, and it has been reported that main components of feather are β-keratins with β-sheet structures. On the other hand, the spatial inhomogeneity of β-keratins could not be disclosed because of a lack of the spatial resolution of previous analytical methods. In this study, we aim to elucidate the spatial distribution and orientation of β-keratins at each region of feather in the amide I band and verify those differences at each region by a vibrational sum-frequency generation (VSFG) detected IR super-resolution microscopy that has the ability to measure the orientation-sensitive molecular image with sub-micrometer scale spatial resolution. In addition, we will discuss the results of the cutting angle dependence on VSFG- detected IR super-resolution imaging. 【序】物理的・化学的に頑丈で軽量な羽毛は、羽軸を中心に羽

枝、小羽枝へと分岐した特殊な形状を持っている。それぞれの直

径は~ 200 µm、~ 100 µm及び~ 5 µmと明瞭な違いがある[1]。各部位では、β-シート構造を有するケラチンタンパク質(β-ケラチン)が階層的に集束し、繊維状構造を形成している[2]。特に羽軸では、平行に配列した一対のβ-ケラチンが互い違いに重なったβ-ケラチンフィラメントが、羽軸の伸長方向に沿って並んでいるといわれている[3, 4]。我々は、振動和周波発生(VSFG)法を顕微鏡技術に応用し、空間分解能を~ 1.0 µmまで向上した VSFG検出赤外超解像顕微鏡を用いて、羽毛β -ケラチンの内部分布・配向の解明を試みた。VSFG 信号強度は VSFG、可視光そして赤外光の偏光に依存し、かつ、分子配向によってその応答が大きく変化すること[5]から、β-ケラチンの分子配向観察が可能である。我々は既に、羽軸中心部の横断面(Fig. 1)におけるβ-ケラチンのアミド Iバンド(CO str., 1630 cm-1)の偏光依存性測定を行った結果を昨年の分子科

学討論会で報告した[6]。その結果から、羽軸の大部分にβ-ケラチンが分布していることに加えて、偏光の組み合わせによって VSFG 信号強度が明瞭に変化したことから、

Fig. 1. 羽毛全体像(①先端部、②中心

部、③根元部、破線

は切断箇所)

Fig. 2. 羽軸の透過像およびアミド Iに対する VSFG像 (① 先端、②中心、③根元部、Scale bar:50 µm).

β-ケラチンが規則的に一方向に整列している可能性を示した。本研究では、羽軸の根元部から先端部にかけて偏向依存性測定を行い、β-ケラチンの分布・配向の部位依存性について調べた。また、分子配向を精査するために、羽軸中心部について切断角度

を変化させて作成した試料についても同様の測定を行った。 【実験】励起光源の可視光と赤外光を発生するために、再生増幅器によって増幅さ

せたピコ秒レーザーシステム(パルス幅:2 ps)を採用した。赤外光は 5500 ~ 9000 nmまで波長を可変できるようにし、可視光は 613 nmに固定して使用した。赤外光と可視光はビームコンバイナーで同軸に合わせ、羽毛試料に対して垂直に照射し、発生し

た VSFGを反対側から対物レンズで集光した後、赤外カットフィルターおよびバンドパスフィルターを介して ICCDカメラに結像した。偏光依存性測定では、可視光と赤外光は 1/2 波長板、VSFG は偏光フィルターを用いて、偏光を縦偏光および横偏光に制御して測定した。試料は、ガチョウの胸部の羽毛をエポキシ樹脂で包埋し、65 °Cで約 18 時間熱重合させてサンプルチップを作製した後、ミクロトームで Fig. 1 上に示した破線の通り羽軸の長軸方向に対して垂直に厚さ 3 µmに薄切りにした。切り出した羽軸横断面は、カバーガラス上に半固定し測定に用いた。 【結果・考察】Fig. 2は羽軸先端部、中心部および根元部におけるβ-ケラチンのアミド I バンドの偏光依存性測定の結果である。画像上で横方向が

X偏光、縦方向がY偏光とし、VSFG、可視光、赤外光のそれぞれの偏光の組

合せが YYXと XXYの場合で測定した。透過像を比較すると、先端部と中

心部が断面の形状がよく似ているの

に対し、根本部は空洞の大きさが大き

く、形状が異なることがわかった。赤

外超解像イメージング測定の結果を

比較すると、先端部では偏光が XXYの際に強度が強くなっているのに対

し、中心部では YYX偏光の際に強度が強く、配向が逆転していることがわかる。また、根元部では YYX、XXYどちらでも同じ強度の信号が観測されており、β-ケラチンが X 配向、Y 配向のものが混在していることがわかった。このように羽軸内でのβ-ケラチンの配向が部位によって異なることが示唆された。発表では、羽軸中心部について切断角度を変化させて測定した結果を

もとに、キラリティーの観測についても議論する。 【参考文献】 [1] D. Yildiz et al., J. Anim. Vet. Adv., 12, 8 (2009). [2] T. Lingham-Soliar et al., Proc. R. Soc. B, 1161-1168, 277 (2010). [3] R. D. B. Fraser and E. Suzuki, Polymer, 35-56, 12 (1971). [4] R. D. B. Fraser et al., J. Struct. Biol., 1-13, 162 (2008). [5] Y. R. Shen and V. Ostroverkhov, Chem. Rev., 106, 1140 (2006). [6] 渡瀬, 藤井, 酒井, 第10回分子科学討論会, 2F13 (2016).