2物理性の改善 土壌の物理性は透水性(保水性)や作物の根張り … ·...
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2 物理性の改善
土壌の物理性は透水性(保水性)や作物の根張りの良否と共に、土壌微生物活性を左
右し、土壌窒素の無機化・土壌病害の発生等に大きく影響を与えるため、物理性の改善
は非常に重要である。
(1)物理性改善の共通事項
ア 断面調査時の注意事項
(ア) 調査を実施する前に調査点数及び地点を決め、必ず耕作者の許可を得ておく。
(イ) 試坑場所は畦畔から4~5m以上離し、作業機械の旋回部分や暗きょを避けた地
点とする。
(ウ) 調査断面は垂直に、かつ南向きとなるように掘る。深さは1mとする。
(エ) 掘り出した土は作土と下層土に分けて両側にまとめる。このとき、シートあるい
はコンパネ等を敷いておくと埋め戻すときに便利である。
(オ) 調査断面の上は決して踏みつけないようにする。
(カ) 深さが確認できたら断面表面をコテで少しずつ削り取り、土層、土色などが良く
わかるようにする。
(キ) 湧水がある場合は水をくみ出し、速やかに調査のうえ放置し、湧水面の高さ等を
観察する。
(ク) 1m以内に礫層があり、以下同質の場合、それ以上の掘り下げは中止してよい。
ただし、少なくとも50~60cm程度は確保する。
(ケ) 埋め戻しは下層から層位ごとに踏みつけて戻す。また、水田では地耐力の確保の
ため砂袋を4~6袋作土直下に埋める。また、湧水がある場合は必ず汲み出して土
を埋め戻す。
図 Ⅲ-2-1 断面調査の概要
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イ 断面調査結果の見方
(ア)土性…別述(Ⅰ-5参照)
(イ)土色
土色は土壌の生成過程や物質の集積・溶脱、酸化・還元程度を知る上で重要であ
る。未熟な土壌では母材の色に左右されるが成熟するに従い腐植や鉄の影響を受け
腐植が多いと黒色、酸化鉄が多いと赤色、還元が進むと青灰色となる。
(ウ) 斑紋(斑鉄・結核)
土壌断面で本来の土壌の色とは異なって赤色や黄色、黒色などのさまざ
まな紋様が観察される。これらの斑紋は鉄やマンガンの化合物で斑鉄あるいはマ
ンガン斑と呼ぶ。斑紋は水の影響で還元状態となって可溶化した鉄やマンガンが
再び酸化されて沈積・濃縮したのもで、水田土壌では乾田化の程度や地下水位の
変動、畑土壌では還元過湿の程度を示す。
(エ) グライ層
排水不良により湛水条件下にある水田土壌で還元状態が発達し青灰色や緑灰色
を呈している土層をグライ層と呼ぶ。グライ層では酸素欠乏のため鉄が二価鉄
(還元鉄)となり、青灰色となる。出現位置は地下水位と関連があり、地下水位
が常時浅い水田では浅く全層がグライ層となる場合もある。また、グライ層が浅
い畑や転換畑では湿害を受けやすい。識別にはジピリジル液を土壌に滴下すると
赤色・赤紫色を呈することでわかる。
(オ) ち密度
土壌の硬さは山中式土壌硬度計(図Ⅰ-9-(2)-1参照)を用いて測定する。作土
のち密度が12mm以下ではトラクターが地面にめり込んでしまい旋回が難しい。土
壌が膨軟であれば通常10~15mmであるが、親指が入らない場合は20mm以上であり、
根の伸長に問題がある。25mm以上ではほとんど根は伸長できない。
山中式硬度計とSR-Ⅱ型貫入抵抗測定器間の数値の換算は以下の換算式で対応
可能である。
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Y=-0.13+16.03 logX
Y=山中式の読み=mm X=SR-Ⅱ型測定値(バネ:50kg/40mm時)
ウ 主な土壌物理性改善項目
項目 改善項目
水田 作土の厚さ、粒径組成、透水性、ち密度、地耐力
園芸畑 作土の厚さ、粗孔隙、ち密度、透水性(保水性 、地下水位)
果樹園 有効土層、粗孔隙、ち密度、透水性(保水性 、地下水位)
草地 作土の厚さ、ち密度、透水性(保水性)
水田転換地 作土の厚さ、粗孔隙、ち密度、酸化層の厚さ、地下水位、
地表水残留日数、作土の砕土率
(2) 水田土壌の改良対策
ア 作土層の確保
作物根の多くは作土層に存在するため、作土の浅層化は根域を狭めることになり、
養水分供給力の低下に伴い気象変動の影響を受けやすくなる。また、作土は厚ければ
良いものではなく、CECの大きい粘質土では15cm、CECの小さい砂質土では20cm
程度が良いとされている。
浅い作土の場合、一度に深耕すると下層の不良土が作土に混入したり、田植え機の
走行や植え付け精度に悪影響を及ぼすため、数年をかけて徐々(年に1~2cm)に深耕
する。
イ 透水性の促進
非かんがい期でも全層あるいは作土直下からグライ層が出現する湿田(強グライ土
壌、泥炭土、黒泥土、黒ボクグライ土等)では、地下水位が高いことや、機械による
圧密を受け排水不良となっており、積極的な排水対策が必要である。
具体的には、粘質土壌で透水性が3~5×10 cm/sec以上の水田では本暗きょを施工-5
し、5×10 cm/sec以下の水田には本暗きょの他に浅い土層に補助暗きょを組み合わせ-5
て排水を促進する。
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ウ 保水性
圃場容水量(pF1.5~1.8)から毛管連絡切断点(pF2.7~3.0)までの水分を易有効水
といい植物が容易に吸収できる土壌水ということができる。この易有効水は有機物連
用等により増加する。
図Ⅲ-2-3 有機物連年施用と作土層の保水力(有効水量)
(新潟農試、H5)※堆肥=稲わらのみの堆肥
図Ⅲ-2-2 本暗渠、補助暗渠と地表排水用溝の組み合わせ例 (農林水産省農産園芸局,1979)
長辺方向の本暗渠に直交させて補助暗渠を深さ30~40cmに埋設し、その直交部には籾殻、砕石、粗砂
などを埋め戻しておく
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エ 地耐力
水田において農業機械の走行作業時に必要な地耐力は、①耕うんおよび収穫時でコー
ン指数(qc)=4kgf/cm 程度以上(田面から深さ0~15cm、4点平均 、②代かき時でコーン2 )
指数(qc)=2kgf/cm (作土直下15cm間、4点平均)が必要である。そのためには地下水位2
を40~50cmに低下させる必要がある。また、地耐力は地下水位と密接な関連があり、
地耐力を増大するためには地下水位の低下は必要条件で暗きょ排水は地下水低下を図る
有効な手段である。また、田畑輪換を目的とする耕地では更に10cm程度地下水位を低下
する必要がある。
オ 漏水対策
、減水深が50mm/日を超えるような漏水田では用水量の増大や低水温による生育遅延
養分の溶脱等により生産が不安定となる。漏水の多くは畦畔漏水のため丁寧なあぜ塗
りや畦畔板の設置をする。垂直方向の漏水は土性によるもので、壌~埴壌土(L~C
L)ではブルドーザによる床締め、砂質~砂礫質土壌では客土(10~40t/10a)やベン
トナイトの施用の施用が効果的である。
以下にベントナイト施用の留意事項を述べる。
(ア) 施用法
ベントナイトの施用は耕起または荒代前に10aあたり1~2トンを全面施用し、直
ちに、ロータリー耕により作土とよく混合する。
(イ) 効果
水田土壌の透水性が減少し、減水深が著しく減少するため、水田の水温及び地温
が上昇する。
土壌の養分吸着力が高まり肥料成分の持続性が増大する。
ベントナイトは可給態ケイ酸を含んでおり、耐倒伏性が増す。
(ウ) 注意事項
降雨直後および湿田状態での施用は避ける。
極端な中干しは田面に亀裂を生じ漏水防止効果が低下するので避ける
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ベントナイトは、砂質水田、有効土層が薄く下層に砂れき層があるような漏水田、心土破砕などによ
り浸透水量が大きくなり過ぎた水田に施用すると効果があります。通常4~5年効果が持続しますが
、黒ボク水田では2~3年しかもちません。効果が急激に低下するので、3~5年で再施用するよう
にします。10a当たり1~2トンを、耕起または荒代前に全面施用し、作土とよく混合します。
ベントナイトの漏水防止効果は、土壌中で粒子が多量の水を吸収して膨張し、攪拌により容易に
分散して、土壌孔隙を詰める働きによるものです。したがって、土壌の種類による施用量の目安はあ
りません。
ベントナイトは膨張性の高いモンモリロナイトを主成分とする粘土岩の粉末で、過剰害の心配は
ないと思われますが、土壌中の有機態窒素の無機化を促進するので、窒素施用量が多くなり過ぎない
ように減肥する必要があります。
漏水田は一般に窒素施用量が多いため、ベントナイトにより漏水防止がなされた
場合は窒素過剰により倒伏、いもち病の多発の懸念されるため、施用量を減ずる。
ベントナイトの持続効果は土壌の種類により異なる。それほど長くないので、3
~5年を目標に再施用する必要がある。
コラム 漏水対策としてベントナイト施用は1回でいいの?
また、「1~2トンを全面施用」とあるが、目安は?過剰害はないの?
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(3) 園芸畑の改良対策
土壌の物理性は、園芸作物の根の伸長に多大な影響を及ぼし、作目により好適土壌環境
は異なるが、一般的には耕土が深く膨軟で、地下水位が低く(60cm以上 、保水性・排水)
性ともに優れる土壌で生育が良好となる。
ア 作物毎の物理性条件
(ア) 果菜類
きゅうり、トマト、なす等の果菜類は、栄養生長と生殖生長が平行して行われ、長期
にわたって連続収穫する。このため深耕を行うと同時に、深層への肥料、有機物の施用
により根群域を十分確保し、肥効が持続するようにする必要がある。
(イ) 葉菜類
葉菜類は、一部を除けば、基本的に栄養生長のみであり比較的生育期間が短い。この
ため、生育の初期から肥料養分が順調に吸収されるよう土壌条件を良好に整える必要が
ある。完熟堆肥の施用等で膨軟で適度な水分状態を保持し、スムーズな根の伸長と初期
生育の促進を図る。
特に栽培期間の短いほうれんそうやこまつな等では、おがくず混合家畜ふん堆肥等で
は窒素飢餓で下葉の黄化など障害が発生する場合があるので注意する。
(ウ) 根菜類・いも類
だいこん・にんじんなどの根菜類やばいれしょ・ながいもなどのいも類は、深根性で
あるので、土壌改良を兼ねた深耕を行い、作土の確保に留意して広範囲に施肥して吸収
利用させることが重要である。特に下層土の改良が重要である。未熟な堆肥の施用は、
、 。品質を大きく悪化させることが多いので 物理性の改善のためには完熟堆肥を施用する
(エ) まめ類等
まめ類は、根粒菌の着生によりあまり窒素を必要としないといわれ、作土の確保や土
づくり、肥料養分は軽視されがちであるが、着莢率の向上、充実した収穫物、食味向上
には、作土深の確保と堆肥など有機物施用による地力の向上と根群域の確保が重要とな
る。
(オ) 花き類
本県では、球根養成、球根切り花類、草花類等があるが、いずれも保水性・排水性に
すぐれ、耕土の深いところで良品生産が可能となる。しかし、品目によっては、土質の
、 。違いで生育収量や品質に大きな差があり チューリップでは砂質壌土が最も適している
切り花は品質が特に問われるので、栽培に適した土壌を選び的確な土壌改良が大切で
ある。完熟堆肥を積極的に投入し、土壌の膨軟性と団粒化を促進する。
イ 作土層の確保(深耕)
作土層とは耕耘により土壌が攪拌される土層である。根の大部分が分布し、施肥やか
ん水などの影響を直接受ける。根域の確保と養分保持力、保水力を高めるため、野菜や
。 。花きでは25cm以上の深耕が望ましい プラウ耕に比較するとロータリー耕は耕深が浅い
ウ 有効土層の確保(耕盤破砕・心土破砕)
有効土層とは作物根が容易に伸長できる土層のことであり、園芸畑では1m以上ある
ことが望ましい。岩盤や礫層、あるいはち密度29mm(山中式硬度計)以上で厚さ10cmを
超える層があればその上面までの層が有効土層とされている。しかし、ち密度が20mmを
超えると作物根の伸長は極端に悪くなるため、実際の栽培面ではち密度20mm以下の土層
の厚さが重要である。比較的表層に近い部分にち密度20mm以上の耕盤ができている畑で
は、トレンチャーやサブソイラーによる深耕、耕盤破砕が有効である。
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エ 排水対策
県内の水田土壌の75%は排水不良のグライ土壌で占められていることと、大部分は粘
質な土壌であるため、転換畑で安定生産をめざすには徹底した排水対策が必須となる。
排水不良の主な原因は、排水路の水位の低下不能、粘質土壌における透水性不良、傾
斜地での伏流水や平坦地での地下水位の上昇等がある。
一般に転換畑は透水性が小さく、地表残留水を浸透水として地下から排除することは
困難であり、営農的に地表水の排水対策が中心となる。そのため、ほ場内排水溝の掘削
が有効であり、その効果は土壌タイプ等にもよるが有効範囲が深さ30cm位、両側3m以
内といわれている。
また、うね立て栽培も地表水排除の有効な方法で、うね間を排水溝に接続すると効果
。 、 、 、的である さらに排水効果を高めるためには うね間の均平をはかり うね長を短くし
うね方向に暗きょを直交させる等の工夫が必要である。
オ 保水性の改善
砂丘未熟土等、粗孔隙量が大きく保水性が悪い土壌では、堆きゅう肥等の有機物施用
により保水力を高めることが必要である (表Ⅳ-1-3参照 。投入量が多ければ効果も。 )
大きいが、化学性(肥料成分量)への影響も考慮し、家畜ふん堆肥の施用は年間1~2
トン程度にとどめる。また、ベントナイトなどの粘土質資材やパーライト、泥炭などの
保水性に富む資材の投入も効果がある。
カ 粗孔隙量の確保
一般的に野菜や花き類の根は、酸素要求量の大きく、有機物の投入は、それ自体の孔
隙が大きいことと、土壌の団粒化を促進するため、土壌の粗孔隙量を増加させ、排水性
を高めるとともに土壌空気の増大に効果が大きい。
(4) 果樹園の改良対策
果樹園の根群分布範囲は、広く深くなければ発育・生育量を維持できない。土壌条件と
しては、有効土層70cm以上、地下水位100cm以下に下げることを目標とし、栽植時には全
面深耕および植穴掘りによって通気性を高めることと、流去水や下層土の過剰水分を除く
ための排水施設を考慮しなければならない。
また、永年作物のため、長期間のうちに土壌の固結、腐植の分解や化学性の悪化が生じ
やすいので、植栽後7~10年目くらいから計画的な深耕を行うと同時に、有機物や改良資
材を土とよく混ぜて埋め戻し、根域全体の改良を心がける。
土壌改良にあたっては、現状を十分に把握し、問題点を的確につかむ必要があり、その
際、単に好適条件や改良目標値との対比だけでなく、好適樹相や果樹生産の現状と推移を
みて実施する。
以下の改良対策は、当該園地の適正樹相、収量等を十分考慮し、化学性の改良と併せて
行うのが本来である。
ア 排水不良地
湿害を受け易いだけでなく、根張りも活力も不良で吸収力が劣る。地下水位が高いと
ころ、水田跡の低湿地、排水の悪い平坦な重粘地などでみられる。低湿地では暗きょ、
明きょにより地表排水などが必要である。重粘地ではそれらに心土破砕、深耕を加えた
ものが対策となる。なお、植え付け時には土盛りして、その頂点に植えることも大切で
ある。
イ 硬化して根域の狭い土壌
硬い土壌では、値の伸びが非常に悪く、根域が狭い範囲に限定される。このため、園
内に養水分が十分あるにもかかわらず樹勢不良な場合が多い。ピードスプレーヤーなど
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の大型機械が園内を走行することから土壌が硬化しやすいので深耕するとともに、再度
硬化するのを抑制するため、バーク堆肥等物理性改善効果の高い有機物を混入する。
また、空気を地下に圧入するバンダーなどの利用も効果的である。
ウ 保水力、保肥力の不足する土壌
、 。砂質土や有効土層の浅い土壌では水分や養分が不足しがちで 樹勢不良になりやすい
下層部がれき層や盤層でなければ、深耕して有機物を混入(堆肥2~10トン/10a、
樹勢や耕深により増減)する。日常的にもかん水や有機物施用を行う。
エ 深耕の方法
タコツボ状に掘り下げるには、オーガやホールディガーを使用し、溝状に深耕するも
のはトレンチャーやバックホーを使用する。特に礫の多い園ではバックホーを用いる。
① 主要根群域からみて、深耕の深さは、ナシ、ブドウ、モモでは40~60cm、カキ、ク
リでは40~80cmを標準とする。その範囲における深浅については土地、地下水および
深耕年次によって考慮しなければならない。
② 深耕する位置は、成木の場合樹幹から2~3m離れた場所を樹幹に対して1/4の
面を施工し、4~6年で樹幹を一周する。
③ 深耕時に投入する土づくり肥料は幅40cm、深さ60cm、長さ1mあたり苦土石灰1~
3kg、堆きゅう肥4~5kg(または稲わら6~7kg、せん定枝3kg)、ようりん0.5 kg
を標準とする。
④ 深耕の時期は、根群の損傷、再生力、土壌構造を考慮した場合10月中旬~11月下旬
に行い、埋め戻しはなるべく早くおこなう。溝状深耕に際しては、溝尻を必ずほ場外
まで続け、深耕部に停滞水しないようにする。
⑤ その他、タコツボ深耕やオーガ法、吹起耕深耕、放射状深耕等があるが、放射状深
耕については樹幹の広がった成木園での二次的改良手段として考える。
、 ( ) 、なお 下層部 40~100cm の理化学性が極端に不良な粘質土状では深耕と土壌改良
排水改善(配水管の埋設)など総合的に対策を講じる。
オ 土壌の地表面管理
果樹園土壌の表面管理法には清耕法、全面草勢法、部分草生法、マルチ法およびそれ
らの折衷法がある。
(ア) 清耕法
雑草が繁茂しないように随時中耕除草する。
長所 ・養水分の競合する草がないので、施肥による樹体栄養の調節が比較的容易である
・マルチや草生法に比べ熟期がやや早くなる・病害虫の発生、越冬源を少なくする
短所 ・土壌浸食に弱い・降雨による団粒構造の破壊、大型機械の走行による土壌の鎮圧など物理性が悪化しやすい
・土壌有機物の分解、塩基類の流亡等消耗が大きい
(イ) 全面草生法
園全体に草を生やし、適時刈り取りを繰り返して土壌表面を保護する方法である。
、 、長所 ・自園内において有機物の生産ができ その土壌還元による地力維持増進効果がある
・施肥成分の流亡を防止・土壌浸食防止・草根による団粒形成効果など土壌物理性改善効果
短所 ・樹と草の養分競合が大きい
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(ウ) マルチ法
稲わらや刈草などを樹冠下あるいは全面に被覆する。
長所 ・使用する資材の種類により土壌浸食の防止、物理性悪化の防止、有機物の補給など草生法に近い利点がある
短所 ・マルチの材料を外部から調達しなければならない・マルチにより、地温上昇が抑えられ、春先は初期生育の遅れにつながる場合がある
(エ) 部分草生法
清耕法と草生法の短所を補い、地力の維持管理と施肥による樹体栄養の調節を容易
にするためには部分草生法が望ましい。部分草生法には帯状草生法と樹幹草生法の2
種類がある。りんご矮
帯状草生法 樹間草生法化栽培のように並木植
の場合はすべて帯状草
生法を採用するが、正 o o清耕
方形植の場合はどちら o o
草でもよい。
生 草生
清耕o o
o o
o o
図Ⅳ-2-(4)-1 部分草生法 (相馬1977)
カ 局所施肥法
従来の全面表層施肥に変わり、樹幹から一定の距離に穴を掘って施肥をする局所施
肥法が注目されている。野菜同様、根圏付近に直接肥料を施用することによって肥料
の利用率が高まり、減肥が可能である。以前からあるタコツボ施肥と考え方は同じで
あるが、専用の機械も開発され、施用方法についての知見も増えつつある。
表層施肥に比べ2~3割の減肥が可能といわれており、穴を掘ることで物理性の改
善効果も期待できる。
果樹園の表層施肥は、肥料成分の流亡が問題視され、環境負荷低減という観点から
も局所施肥法を積極的に導入する必要がある。
コラム 土壌分析・診断は毎年しなければならないの?
土壌診断の目的は、良質な農産物を安定して生産するために効果的な土壌管理・肥培管理を行うことです。土壌診断は、①土壌改良のために行う診断と、②肥培管理のための診断に大別されます。前者は本書に記載されている土壌改良目標値によって土壌改良をするためのもので、これは毎年する必要はありません。後者は特に施設栽培において、果菜類などの栽培期間中に追肥時期・量を決めるために
行ういわゆるリアルタイム診断です。これは必要に応じて栽培前や 週間に 回といった2 1間隔で行います。この場合とりあえず硝酸態窒素等を測定し、その過不足により追肥を加減します。