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17 西17 17 調使調西in 17 喜界徳洲会病院での研修修了 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の土屋翼・後期研修医 (3年目)は、喜界徳洲会病院(鹿児島県)で3カ月間の 地域医療研修を終えた。研修終了間近に島内のライブ ハウスで、研修の合間に練習した三 さんしん 線の腕前を披露。 「楽しかったです。喜界島に 来て患者さんに優しくなれま した」。土屋医師は3カ月間の 地域医療研修をこう振り返る。 初期研修では病棟管理が中心 で患者さんと深くかかわること が少なかったが、喜界病院で は外来中心に3カ月にわたり患者さんの経過を追った。 患者さんのなかには、たまに行く居酒屋の店員がい たり、患者さんの家に遊びに行ったりもした。「患者さ んだけでなく、ご家族とも話していると、ただ病気を 診るだけではいけない、患者さんにも生活があるのだ と気付かされます」と同院での学びを語る。 印象的な患者さんとして土屋医師は、右手を骨折し 夜間の救急外来を受診した9歳女児を挙げた。その日 は整復(正常な位置に戻す)後にギプス固定して帰し、 翌日、整形外科医に診てもらった。整形外科医から対 応の良さをほめられたのも嬉しかったが、それ以上に 嬉しかったことがあったと言う。「その女の子から手紙 が届きました。右手が不自由だったため、左手で書い てくれたみたいで……。そこには感謝と応援のメッセ ージが綴られていて、すごく感動しました。一生の宝 物です」と土屋医師は笑顔を見せる。 土屋医師の成長を喜界病院の浦元智司院長は「最初 は患者さんに淡泊なところもありましたが、今では患 者さんの社会的背景まで考えて診察しています。当院 で学んだ “人を診る医療 “を続けていってほしいです」と エールを送る。 土屋医師は島の文化にも触れたいと、三線の教室 に通った。6月28日、島内のライブハウスで、初めて人 前でその成果を披露。同院のスタッフだけでなく、地 元の方々も見守るなかで4 曲を演奏しながら歌いきっ た。その後、飛び入り参 加の演奏や舞踊があり、 会場はヒートアップ。参加 者全員で土屋医師の門出 を祝い、土屋医師の目に は涙が光っていた。 湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)と千葉西総合病院は、中国山東 省青島市で開催された医療ツーリズムのピーアールイベントに参加 した。青島市は北京市と上海市の中ほどに位置する山東半島の付 け根部分にあり、人口は約920万人(2017年、日本貿易振興 機構)。 中国では年々、健康意識が高まっており、疾患の早期発見・ 早期治療に対する関心が強い。その一方で、同国内では健 診・人間ドックや多職種によるチーム医療が確立されてい ないことなどから、海外の医療機関を受診する医療ツーリズ ムに注目が集まっている。 両院は2日間で4回の説明会を実施し、計85人に徳洲会グ ループの概要や両院の診療体制などをアピール。湘南藤沢 病院国際医療支援室の中津川恵副主任は「会場は活気があ り青島市でも健康に対する意識の高さを実感しました。徳 洲会グループには健診施設や専門性のあるさまざまな診療 科を有する病院が多数ありますので、そうした要望に応えて いくことができると思います」と話している。 昨年9月には湘南藤沢病院、湘南鎌倉総合病院(神奈川 県)が大連市で111人、今年4月には湘南藤沢病院、湘南鎌 倉病院、南部徳洲会病院(沖縄県)、 福岡徳洲会病院が成都市で205人 が集まったPRイベントに参加。たと えば湘南藤沢病院では、このような 医療ツーリズムの促進活動を通じ、 海外から糖尿病やがんなどの患者 さんが訪れ、受診に結び付いている。 三線ライブで締めくくり 土屋・湘南鎌倉総合病院後期研修医 ワークショップは参加者が実際に人工呼吸器に触れる体験型重視の内容(左が IPPV、右が NPPV の導入) 最終回も 60 人以上が参加 セミナーを支えたスタッフと一緒に記念撮影を行う渡部大会長(前列中 央)とアシュワース教授(前列右から2人目) 患者さんを笑顔で診察する土 屋医師 研修の合間に練習した三線の腕前 を披露 in 15 01 61 17 医療ツーリズム 湘南藤沢徳洲会病院と 千葉西総合病院が PR 2 日間・4 回の説明会で計 85 人にア ピール in 命だけは平等だ 平成 29 8 7 日 月曜日│ No. 1094 月曜日 8 7 発行:一般社団法人徳洲会 〒102-0083 東京都千代田区麹町3-1-1 麹町311ビル8階 TEL:03-3262-3133 制作:一般社団法人徳洲会 編集室 〒102-0083 東京都千代田区麹町3-1-1 麹町311ビル8階 TEL:03-6272-3687 FAX:03-3263-8125  Email:news@tokushukai.jp No. 1094 7/AUG. 2017 ALL LIVING BEINGS ARE CREATED EQUAL

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  • などに関しクイズ形式で

    提示した。

    2日間を通じて随時、

    テストを実施。成績上位

    3人を表彰した。閉会の

    挨拶で渡部大会長はあら

    ためて同セミナーの17年

    間の歴史に幕を下ろすこ

    とを表明。アシュワース

    教授が毎年来日したこと

    をたたえるとともに、「日

    本全体の呼吸療法のレベ

    ルが上がっていくことを

    期待します」と願いを込

    めた。アシュワース教授

    は「皆さんはリーダー。

    講習会で学んだことを職

    場にもち帰り職員に教え

    るのが役目」と挨拶する

    と、会場から大きな拍手

    が湧いた。

    受講した東京西病院の

    菅原隆広・看護主任は「毎

    日、人工呼吸器に携わっ

    ており、最新の知識を得

    たいと2年ぶりに参加し

    ました。内容がレベルア

    ップしており、とても良

    かった」と満足げ。渡部

    大会長に対し「17年間、

    セミナーを続けていただ

    き参加者は本当に勉強に

    なったと思います。あり

    がとうございました」と

    謝意を示した。

    控室で事務局スタッフ

    から記念品を受け取った

    渡部大会長は「この17年

    間いろいろあった」と振

    り返り、「とくに湘南鎌

    倉病院、湘南藤沢病院の

    スタッフ、また国内の指

    導的な立場の方々が快く

    協力してくださいました。

    望外の喜びです」と感謝

    の意を示し、笑顔で会場

    を後にした。

    めて渡部大会長が、セミ

    ナーを今回で最後とする

    意向を表明した。「当セ

    ミナー開始時に比べ、世

    の中がずいぶん変わりま

    した。情報が早く出回る

    ようになり、同じような

    セミナーも全国で130

    以上行われています。学

    べる環境が充実し、良い

    方向で標準化に向かって

    いると思う。当セミナー

    の役目は果たしました」

    と明かすと、「今回参加

    して本当に良かった」と

    漏らす参加者もいた。

    2日目はアシュワース

    教授による講義でスター

    ト。人工呼吸器を装着し

    た患者さんの呼吸状態を

    グラフィックモニターに

    映し、そこから患者さん

    の肺の状況を読み取るポ

    イントなどを解説した。

    最後に臨床シミュレーシ

    ョンを行い、さまざまな

    症例から確認・質問すべ

    き項目や酸素治療の選択

    アシュワース教授、山田・

    臨床工学技士ともに多職

    種連携の大切さを何度も

    強調した。

    初日の後半はワークシ

    ョップを実施。6〜8人

    ずつのグループに分かれ、

    「IPPV(気管挿管や

    気管切開を必要とする侵

    襲的陽圧換気療法)」と

    「NPPV」をテーマに、

    徳洲会グループ内外の呼

    吸療法に関するスペシャ

    リストがインストラクタ

    ーを務め、実際に使用す

    る器具を用いながら解説

    した。IPPVでは、ア

    シュワース教授が各グル

    ープを回りながら「つね

    に患者さんが楽な設定が

    大切」と繰り返しアドバ

    イスした。

    NPPVでも専用機の

    特徴やモード選択、圧設

    定の目的などをふまえ、

    初期設定について説明し

    たり、グループの一人が

    NPPVで用いるマスク

    を体験装着したりした。

    終了後、会場を移して

    懇親会を開催。そこで初

    陽圧換気療法)の基本に

    ついて講義。NPPVは

    マスク装着だけで気管挿

    管や気管切開を行わない

    ため、より患者さんの身

    体的負担が少ない療法だ。

    NPPVの基本的適応と

    禁忌、成功のポイントな

    どを提示。講義のなかで

    臨床場面と結び付けられ

    るよう事例を用いたシミ

    ュレーションを行ったり

    するのが特徴だ。

    “ファイナルレクチャ

    ー”となった今回も、渡

    部大会長による開会挨拶

    の後、アシュワース教授

    が人工呼吸器の初期設定

    について説明。モードや

    吸入酸素濃度、最大流量

    などの設定、換気レベル

    などの調整、ガス交換な

    どのモニタリングについ

    て、それぞれポイントを

    解説した。

    済生会横浜市東部病院

    の山田紀昭・臨床工学技

    士はNPPV(非侵襲的

    ら年に1回開催。日本医

    工学治療学会呼吸器分科

    会の主催で、東京西徳洲

    会病院の渡部和巨院長が

    大会長、湘南鎌倉総合病

    院(神奈川県)呼吸療法

    部が事務局、米国ボイジ

    ー州立大学のロニー・ア

    シュワース呼吸療法学科

    教授がメインの講師を務

    めてきた。

    2日間を通じて人工呼

    吸器の基本的な設定を学

    べるプログラムで構成。

    座学だけでなく、ワーク

    ショップなど体験を重視

    した講義、さらには学習

    到達度を確認するために

    随時テストを実施したり、

    呼吸療法セミナーin

    湘南は呼吸療法(肺の機

    能回復をサポートする運

    動や治療)に関する基礎

    から最新までの知識習得

    を目的に、2001年か

    17年間で延べ1260人修了

    呼 吸 療 法

    セミナー 湘南

    ファイナルレクチャー

    喜界徳洲会病院での研修修了

    湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の土屋翼・後期研修医(3年目)は、喜界徳洲会病院(鹿児島県)で3カ月間の

    地域医療研修を終えた。研修終了間近に島内のライブハウスで、研修の合間に練習した三

    さ ん し ん

    線の腕前を披露。

    「楽しかったです。喜界島に来て患者さんに優しくなれました」。土屋医師は3カ月間の地域医療研修をこう振り返る。初期研修では病棟管理が中心で患者さんと深くかかわることが少なかったが、喜界病院では外来中心に3カ月にわたり患者さんの経過を追った。患者さんのなかには、たまに行く居酒屋の店員がいたり、患者さんの家に遊びに行ったりもした。「患者さんだけでなく、ご家族とも話していると、ただ病気を診るだけではいけない、患者さんにも生活があるのだと気付かされます」と同院での学びを語る。印象的な患者さんとして土屋医師は、右手を骨折し夜間の救急外来を受診した9歳女児を挙げた。その日は整復(正常な位置に戻す)後にギプス固定して帰し、翌日、整形外科医に診てもらった。整形外科医から対応の良さをほめられたのも嬉しかったが、それ以上に嬉しかったことがあったと言う。「その女の子から手紙が届きました。右手が不自由だったため、左手で書いてくれたみたいで……。そこには感謝と応援のメッセージが綴られていて、すごく感動しました。一生の宝物です」と土屋医師は笑顔を見せる。土屋医師の成長を喜界病院の浦元智司院長は「最初は患者さんに淡泊なところもありましたが、今では患者さんの社会的背景まで考えて診察しています。当院で学んだ“人を診る医療“を続けていってほしいです」とエールを送る。土屋医師は島の文化にも触れたいと、三線の教室に通った。6月28日、島内のライブハウスで、初めて人前でその成果を披露。同院のスタッフだけでなく、地

    元の方々も見守るなかで4曲を演奏しながら歌いきった。その後、飛び入り参加の演奏や舞踊があり、会場はヒートアップ。参加者全員で土屋医師の門出を祝い、土屋医師の目には涙が光っていた。

    湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)と千葉西総合病院は、中国山東省青島市で開催された医療ツーリズムのピーアールイベントに参加した。青島市は北京市と上海市の中ほどに位置する山東半島の付け根部分にあり、人口は約920万人(2017年、日本貿易振興機構)。中国では年々、健康意識が高まっており、疾患の早期発見・

    早期治療に対する関心が強い。その一方で、同国内では健診・人間ドックや多職種によるチーム医療が確立されていないことなどから、海外の医療機関を受診する医療ツーリズムに注目が集まっている。両院は2日間で4回の説明会を実施し、計85人に徳洲会グ

    ループの概要や両院の診療体制などをアピール。湘南藤沢病院国際医療支援室の中津川恵副主任は「会場は活気があり青島市でも健康に対する意識の高さを実感しました。徳洲会グループには健診施設や専門性のあるさまざまな診療科を有する病院が多数ありますので、そうした要望に応えていくことができると思います」と話している。昨年9月には湘南藤沢病院、湘南鎌倉総合病院(神奈川

    県)が大連市で111人、今年4月には湘南藤沢病院、湘南鎌倉病院、南部徳洲会病院(沖縄県)、福岡徳洲会病院が成都市で205人が集まったPRイベントに参加。たとえば湘南藤沢病院では、このような医療ツーリズムの促進活動を通じ、海外から糖尿病やがんなどの患者さんが訪れ、受診に結び付いている。

    三線ライブで締めくくり土屋・湘南鎌倉総合病院後期研修医

    ワークショップは参加者が実際に人工呼吸器に触れる体験型重視の内容(左が IPPV、右がNPPVの導入)

    最終回も 60 人以上が参加

    セミナーを支えたスタッフと一緒に記念撮影を行う渡部大会長(前列中央)とアシュワース教授(前列右から2人目)

    患者さんを笑顔で診察する土屋医師

    研修の合間に練習した三線の腕前を披露

    「呼吸療法セミナー

    in

    湘南2017」が7月15日から2日間、湘南藤沢徳洲会病

    院(神奈川県)で行われた。徳洲会グループ内外から医師をはじめ呼吸療法認定

    士の資格をもつ看護師や理学療法士、臨床工学技士ら多職種が参加し、最新の

    呼吸療法について学んだ。01年から年1回開催してきた同セミナーは今年で最後。

    今回も61人が出席し、活発な議論を展開するなど有終の美を飾った。17回の開催

    で修了者数は延べ1260人。

    医療ツーリズム 湘南藤沢徳洲会病院と千葉西総合病院が PR

    2 日間・4 回の説明会で計 85 人にアピール

    中国・青島市イベントに参加

    in

    徳 洲 新 聞徳 洲 新 聞 生い の ち

    命だけは平等だ❶ 平成 29 年 8 月7日 月曜日 │ No.1094

    月 曜 日8 月7日発行:一般社団法人徳洲会  〒102-0083 東京都千代田区麹町3-1-1 麹町311ビル8階  TEL:03-3262-3133制作:一般社団法人徳洲会 編集室  〒102-0083 東京都千代田区麹町3-1-1 麹町311ビル8階 TEL:03-6272-3687 FAX:03-3263-8125  Email:[email protected]

    No.10947/AUG. 2017ALL LIVING

    BEINGS ARE CREATED EQUAL

  • 出田副院長は「認知症

    について――運転免許か

    らBPSD(周辺症状)

    まで」と題し講演した。

    認知症と運転免許では、

    3月12日に施行された改

    正道路交通法で、75歳以

    上の高齢者の運転に関す

    る内容が大幅に変更され

    た。一定の違反

    行為をした時や、

    運転免許を更新

    する時に「認知

    症のおそれ」と判断され

    た場合は、臨時適正検査

    または診断書提出命令が

    あることを説明した。医

    師が認知症患者さんの運

    転を放置した場合は法律

    違反になることにも言及。

    さらに認知症のBPS

    Dについて解説した。認

    知症の中核症状は記憶障

    害をはじめとする認知機

    能障害。一方、心理症状

    や行動異常はBPSDと

    呼ばれる。この治療には

    抗精神病薬を使うが、こ

    れは統合失調症に使う薬

    剤であり、本来BPSD

    には適用外。このため患

    者さんの家族にしっかり

    インフォームドコンセン

    ト(説明と同意)を行う

    ことが必要と説いた。ま

    た、近年はパーソン・セ

    ンタード・ケアという患

    者さんを一人の“人”と

    して尊重し、その人を理

    解してケアを行う非薬物

    的介入もトレンドである

    ことを紹介した。

    岩渕センター長は「最

    新のウイルス肝炎情報」

    と題し講演。C型肝炎は

    これまでインターフェロ

    ン投与を中心に治療して

    いたが、近年、新しい経

    口薬を併用して9割以上

    治ることがわかってきた。

    ただし、急激にウイルス

    が体内から排除されると

    肝細胞の再生が活性化し、

    そこにがん細胞が残って

    いると、同時に活性化さ

    れる可能性を示唆。ウイ

    ルスが消えても検査を継

    続する必要性を指摘した。

    B型肝炎はHBVと呼

    ばれるウイルスに感染し

    て発症するが、これは一

    度感染すると治癒しても

    遺伝子情報は残り、感染

    が完全終息したとはいえ

    ない。こうした患者さん

    に抗がん剤や生物学的製

    剤を使用することで、H

    BVが再活性化すること

    が報告されている。HB

    V潜在感染の肝炎は高頻

    度で劇症化し死亡率も高

    いことを説明。これを見

    逃してはいけないことを

    強調した。

    これまでは母親がキャ

    リア(ウイルス保有者)

    の場合、生まれた赤ちゃ

    んにワクチンを打ってい

    たが、本来なら全員に打

    つことが望ましいと指摘。

    一度もHBVに感染しな

    い状況をつくり上げるこ

    とが必要であるとし、4

    月に全員接種(ユニバー

    サルワクチン化)の道が

    開かれたことを報告した。

    7月度の徳洲会医療経営戦略セミナー2日目(30日)

    の朝、毎回恒例となったモーニングレクチャーを開

    催した。徳洲会病院の院長や徳洲会幹部ら40人以上

    が参加し、内科の知識を共有した。今回は岸和田徳

    洲会病院(大阪府)の出田淳副院長(神経内科)が

    認知症、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の岩渕省吾・

    肝胆膵すい・消化器病センター長がウイルス肝炎をテー

    マにそれぞれ講演した。

    任をしてもらう」と言われ、「管

    理の経験がありません」と返し

    ましたが、「大丈夫」のひと言。

    てっきり師長がいると思って病

    棟に初出勤すると、「よろしく

    お願いします」と可愛い副主任

    さんが挨拶してくれました。「師

    長さんはどちら」と尋ねると、

    明るい笑顔で「いません」。そ

    こから私の看護管理者としての

    怒ど濤とうの日々が始まりました。

     

    02年10月には新築移転を控え

    ていました。病棟業務、管理業

    務、移転準備と寝る間も惜しむ

    日々。ようやく引っ越しがすん

    だと思うと次は「病院機能評価

    受審」が待っていました。

     

    03年5月に熊野二三枝・看護

    部長が就任。厳しかったですが、

    看護管理、経営管理の教科書の

    ような方でした。セピア色に染

    まった看護基準や手順書の改訂、

    教育プログラムの立案、看護部

    組織の変革と次々にアクション

    プランを実践されました。

    部長命令により看護部教育責

    任者と医療安全リスクマネジャ

    ー(専従)を経験。06年6月に

    は早々に7対1看護配置基準を

    取得しました。

    この当時の経験があったから

    こそ、現在の私があるのだと思

    います。入職5年後、待ってい

    たのは看護部長という重責で、

    07年1月から任に就きました。

    徳田虎雄理事長(当時)と面

    談した際、「東上震一院長を心

    から支えてください」と言われ、

    身が引き締まる思いがしました。

    東上院長は患者さんの小さな意

    見を何より大切にします。リー

    ダーのミッション・ビジョン・

    バリューがこれほど明確な組織

    高校を卒業し、近隣病院の事

    務職として社会人の一歩を踏み

    出しました。先輩職員から看護

    師が不足しているからと看護学

    校進学を勧められ、22歳でチャ

    レンジすることを決意、受験勉

    強を始めました。勉強は大変で

    したが、数学や国語のドリルに

    向き合うのが妙に新鮮でした。

    准看護学校に入学し、そこで

    の解剖学の授業で、人体の仕組

    みに大変興味をもちました。2

    年次の実習で末期がんの患者さ

    んと出会いました。やせ衰え、

    痛みにあえぐその方に、病院の

    指導者は「つらいですね」と声

    をかけ、1粒の薬を飲ませまし

    た。数分後に頰に赤みが戻り安あん

    堵どの表情が浮かびました。まる

    で魔法かと思うほど感激し、看

    護の世界にはまっていきました。

    卒業後、看護師を目指し国立

    の看護専門学校に進み、そのま

    ま附属病院に入職。実は学生時

    代、岸和田徳洲会病院(大阪府)

    でアルバイトをしていたことが

    あり、入職を勧められましたが、

    「今日も人がいないのよね。も

    う24時間以上働いているわ」と

    いう病棟看護師のつぶやきに、

    留とどまる勇気がありませんでした。

    入職後はいきなり看護管理者

    として怒濤の日々がスタート

    1997年から行政改革によ

    り国立病院の独立行政法人化政

    策が打ち出され、2000年の

    行政改革大綱で04年に移行が決

    定。経営管理などまったくない

    病院のあり方にうんざりし、転

    職を決意しました。

     

    02年1月、岸和田病院に入職。

    面接で「給与が合わないから主

    だから、職員全体が同じ方向を

    向き歩んでいけるのです。当院

    の大きな魅力はチームワークの

    良さにあります。一丸となって

    取り組む姿は、まるで“だんじ

    り祭”のようです。

    離島・へき地病院での

    ワークショップを企画

    今年度から徳洲会看護部門の

    業務担当を担っています。看護

    師対策に難渋を極める離島・へ

    き地病院でのワークショップを

    企画、6月に屋久島、奄美、鹿

    児島、沖縄離島の10病院、7月

    には東北5病院で開きました。

    地域医療を守り成長するため

    には、病院間の有意義でたゆま

    ぬ応援支援体制の構築が不可欠

    です。研修医のプログラムのよ

    うに、看護師も4年目以上は離

    島・へき地を経験し、その後、

    組織に貢献した者が昇格するシ

    ステムがあれば、徳洲会のDN

    Aが脈々と受け継がれていくで

    しょう。9月1日から7カ月間、

    当院の集中ケア認定看護師が名

    瀬徳洲会病院(鹿児島県)に応

    援に出ます。単に業務応援では

    なく、恵まれた環境でしか経験

    を積んでこなかった自分自身と

    向き合い、さらに成長してほし

    いと伝えています。

    ある先生から「あなたは隣の

    人の顔や名前を知っていますか。

    すぐそばの地域も知らずに“地

    域医療”ときれい事を言わない

    で」と質され、自分の足元の現

    状を知ることを教えられました。

    あらゆることに言えますが、一

    歩踏み出すには決断力を要しま

    す。さまざまな経験を積みなが

    ら、皆で頑張りましょう。

    徳洲会グループ TQM

    新指標に標準化死亡比新BIツール運用開始

    モーニングレクチャー

    「認知症患者さんの運転を放置してはいけない」と出田副院長

    ウイルス肝炎の最新情報や注意を解説する岩渕センター長

    山や ま が み

    上 美み え こ

    恵子岸和田徳洲会病院看護部長

    職員一丸となる姿は〝だんじり祭〟のよう

    当院の大きな魅力はチームワークの良さ東上院長は患者さんの小さな意見も重視

    徳洲会グループTQM事務局はセミナー2日目、TQM(To-kushukai/TotalQualityManagement=徳洲会グループ医療の質管理)プロジェクトの進

    しん

    捗ちょく

    状況を報告、「2017年度徳洲会グループQI(QualityImprovement/Indicator)重点指標・新BIツールについて」をテーマに解説した。BIツールとは、日頃の診療から得られる膨大な情報を分析する経営管理システム。7月から徳洲会グループの2017年度QI指標がBIツールで参照できるようになったことを報告。グループ重点指標に対する各病院の目標設定、また目標や前年同月などとの比較ができるレポートシステム、安全指標、感染指標などを開発した画面を開示しながら説明した。グループ重点指標のひとつである標準化死亡比は、自病院のトレンドをモニタリングする指標として利用するのが望ましいと強調した。標準化死亡比を算出する際に必要な標準化係数は、国立病院機構が算出した係数を使用。将来的に日本の標準化係数(全国のDPC〈診断群分類別包括評価〉データから算出)が使えるようになれば、国内外の他病院との比較が可能となることを補足した。続いて、標準クリニカルパスプロジェクトを説明。クリニカルパス(治療計画表)の目的は、①根拠(エビデンス)に基づいた治療やケアの内容を標準化(ガイドラインなどの内容をパスに組み入れる)、②日本クリニカルパス学会が出すBOM(ベーシック・アウトカム・マスター)を使用してアウトカム(結果)の分析を行い、治療やケア内容のさらなる改善を行う(バリアンス=脱落例分析)、③治療のスケジュールを患者さんに説明できる(インフォームドコンセント〈説明と同意〉の充実)、④やるべき医療行為をもらさない、⑤コストの標準化—など。現在、鼠

    径けい

    ヘルニア、腹ふくくう

    腔鏡下胆たんのう

    嚢摘出術、胃内視鏡的粘膜下層剥

    はく

    離り

    術、急性心筋梗塞の4つの標準パスについてシステム構築を進めており、8月に電子カルテ上で配信可能なシステムにし、9月以降テスト運用していくなどスケジュールを説明した。

    認知症やウイルス性肝炎

    院長らが知識共有

    徳 洲 新 聞生い の ち

    命だけは平等だ 平成 29 年 8 月7日 月曜日 │ No.1094 ❷

  • るようにするだけでなく、

    他国のメディカルツーリ

    スト(医療観光者)から

    一般社団法人徳洲会の鈴木隆夫理事長はセミナー初日、徳洲会グループの今後の経営・運営方針について、具体的な5項目を提示し説明した。それによると①15医療法人、2医療生協を再編し徳洲会、沖縄徳洲会、木下会、鹿児島愛心会の4医療法人、埼玉医療生活協同組合の1医療生協、函館共愛会の1社会福祉法人とする。②沖永良部徳洲会病院(鹿児島県)が12月に新築移転オ

    ープン、大和徳洲会病院(神奈川県)が2018年3月に新築オープン、和泉市立病院(大阪府)が同年4月に新築移転オープン、羽生総合病院(埼玉県)が同年5月に新築移転オープンする。今後も老朽化病院の建て替えを進める。③2020年4月に看護学部を主体とする湘南鎌倉医療大学(仮称)を神奈川県に開学する計画。④放射線治療など、がん治療に積極的に取り組む。18年4月にマンモグラフィ(乳房X線検査装置)などを搭載したマンモ検診車を導入。⑤人間ドックや健診、バス健診などによる予防医療を積極化する。鈴木理事長は「がんに倒れた仲間がいます。職員の皆さんは必ず人間ドック、健診を受けるようにしてください」と呼びかけた。

    人事紹介のなかで、湘南鎌倉医療大学(仮称)設置準備室の荒賀直子室長が挨拶した。荒賀室長は同大学学長に就任する予定。「6月1日付で着任しました。前職は甲南女子大学で副学長を務めていました。早く徳洲会人になれるよう頑張りたいと思います。大学については、徳洲会の特色を生かすよう心がけていきます。具体的には徳洲会は多くのスペシャリストがいて、“生命だけは平等だ”の理念の下、地域医療に貢献しています。これらをふまえ既存の看護大学にないような新しいカリキュラム展開をしていきたいと考えています。徳洲会は地域にネットワークをつくり、医療、介護、福祉、健診サービスを提供しています。学生にはこうした徳洲会の特徴を学ばせ、卒業時には地域に貢献できる力がある看護師になるよう育てていきます。これは私の夢でもありますので、皆様のご支援・ご協力をお願いいたします」

    SOE傘下の病院群は

    従来、親会社であるSO

    Eの監督下で独立経営を

    してきたが、医療の質の

    向上や経営の効率化を図

    るため、同国の施策によ

    り一元的な

    運営管理に

    移行。3月

    に設立した

    IHCが、

    厚生労働省の榎広之・

    年金局総務課首席年金数

    理官室年金数理専門官は

    「フィリピン人材の受入

    れ」と題し講演した。榎

    専門官は前・在フィリピ

    ン日本国大使館一等書記

    官(労働担当官)。はじ

    めにフィリピンの近況に

    ついて①人口が増加傾向

    にあり平均年齢が約23歳

    と若い、②人口の約1割

    相当が海外で就労、③経

    済情勢も良く好成長を維

    ―などと説明。

    そのうえで、日本のフ

    国立保健医療科学院研

    究情報支援研究センター

    の水島洋センター長は

    「血中RNAを用いた新し

    い診断法の開発と健康指

    標への応用」をテーマに

    講演した。RNAは細胞

    内でタンパク質の合成に

    関与しているリボ核酸で、

    なかでも遺伝情報である

    DNA(デオキシリボ核

    酸)の転写物質をm

    メッセンジャーRNA

    という。

    水島センター長は血中

    のmRNAを用い、長寿

    (サーチュイン)遺伝子や、

    がん関連遺伝子の発現量

    を調べることで、その時

    点での健康状態を知るこ

    とができる検査方法の開

    発に携わった。徳洲会グ

    病院群を統括する役割を

    担っている。

    IHCが運営管理する

    のは、石油・ガスや鉄鋼

    など各分野のSOE14社

    が所有している計60病院。

    ベッド数の合計は約65

    00床に上る。

    インドネシア政府は現

    在、2019年までを目

    標に「医療へのアクセス」

    と「医療の質」を改善す

    る施策に取り組んでいる。

    その一環でSOE病院群

    の運営管理の一元化を決

    定。2年前に着手し今年

    3月にIHCを設立し体

    ィリピン人材の受け入れ

    の仕組みとして①日比経

    済連携協定、②外国人技

    能実習制度、③3月に神

    奈川県を皮切りに東京都、

    ループでは湘南鎌倉総合

    病院(神奈川県)が同検

    査を導入。mRNA解析

    は遺伝子解析技術の高度

    化と普及により近年、登

    場した新しい検査で、予

    防医療の観点から注目を

    集めている。

    「DNA解析は個人の遺

    伝的な体質を調べるもの

    で、検査結果は基本的に

    生涯変化せず、生活習慣

    を改善しても変えられま

    せん。一方、mRNA解

    析の結果は、その時々の

    体調で変化します。DN

    AとmRNAの違いは、

    “体質”と“体調”の違

    いと言い換えられます。

    mRNAを解析すること

    で、がんマーカー(生体

    指標)や画像検査に変化

    が現れる前に、超早期が

    んの兆候を捉えることが

    可能になりつつあります」

    これまでの検査事例で

    は、がん検診でわからな

    制移行した。

    多数の病院を、スケー

    ルメリットを生かしなが

    ら一元的に運営するには

    相応のノウハウが必須。

    そこでIHCは多くの病

    院、介護・福祉施設を運

    営している徳洲会グルー

    プに対し、病院群を効率

    的に運営する仕組みづく

    りなどに関し協力を依頼。

    大阪市でスタートした国

    家戦略特区での外国人家

    事支援人材の受け入れに

    ついて解説した。

    医療・介護分野では、

    かったがんを見つ

    け、1年後の精密

    検査で実際にがん

    の発見につながっ

    た事例もあったと

    いう。水島センタ

    ー長は、mRNA

    検査は単発ではな

    く、初回検査後に

    生活を見直し、そ

    れがどの程度影響

    を与えたのかなど

    を確認するために、

    複数回実施する利

    用の仕方が望まし

    いと指摘した。

    「その時点での健康状態

    を反映するので、mRN

    Aは健康度の指標として

    用いることもできます。

    病気になる前の体調変化

    を“未病”といいますが、

    病気に近い健康なのか、

    それとも本当に健康なの

    か、その指標になり得ま

    す。指標に応じ生活習慣

    改善の動機付けなどのツ

    ールにもなります」

    水島センター長は疾患

    ごとの遺伝子発現パター

    ンによる新たな視点での

    60病院の運営一元化

    徳洲会グループに協力依頼

    徳洲会はこれに応じ、支

    援していく方針だ。

    アブダラ副大臣は「医

    療の質の向上とともに病

    院運営の効率化の推進が

    肝要です。徳洲会の力を

    借りながら、病院群が団

    結して取り組みを進め、

    IHCが本国で最善の病

    院チェーンになれるよう

    努力したい」と意気込み

    を語った。

    なお、同国は14年に国

    民皆保険制度を開始。イ

    チダン社長によると、現

    在1億700万人が加入。

    今後、加入者の拡大を計

    画している。

    「これまでは親会社の下、

    各病院はそれぞれ独自の

    文化・風土をもち、運営

    してきました。しかし今

    後は、強力なリーダーシ

    ップによって医療機器の

    調達を一本化するなどし、

    経営の効率化を進めてい

    く必要があります。これ

    はインドネシアにとって

    大きなチャレンジです」

    (イチダン社長)。最後に

    今まで同協定が唯一のス

    キームだったが、最近、

    とくに介護での受け入れ

    枠が拡大している状況を

    指摘。法改正により9月

    から留学ビザで、介護福

    祉士養成施設での養成課

    程を経て国家試験に合格

    すれば、その後にビザを

    切り替え介護施設などで

    勤務できるようになった

    ことや、11月には外国人

    技能実習制度の対象職種

    疾患分類や、難病・希少

    疾患治療への応用などm

    RNA活用の展望を提示。

    また、オミックス(生体

    分子の網羅的情報)デー

    タ解析や、mRNAの発

    現調節に関与するマイク

    ロRNAに着目した研究

    のさらなる進展に期待を

    寄せた。

    イチダン社長は、自国民

    が海外に行かなくても世

    界基準の医療を受けられ

    に介護職が追加され、要

    件(現在、検討中)を満

    たせば技能実習生として

    介護施設などに就労でき

    ることを示した。

    フィリピン国内の日本

    語教育のレベルアップな

    ど課題はあるものの、「フ

    ィリピンは人材供給国と

    して豊富な実績を有して

    おり、大きなポテンシャ

    ルが期待されます」と締

    めくくった。

    インドネシア7月度の徳洲会医療経営戦略セミナーの初日29日に、インドネシア国営企業(S

    OE)省のエドウィン・ヒダヤット・アブダラ副大臣と、インドネシア・ヘルス

    ケア・コーポレーション(IHC)のダニー・アムラル・イチダン社長が「イン

    ドネシア医療事業の新しい時代」をテーマに講演した。SOE傘下の病院群を効

    率的に運営する仕組みづくりなどに関し、IHCは徳洲会グループに協力を依頼。

    徳洲会はこれに応じ、支援していく方針だ。

    法人再編など方針示す

    地域に貢献できる看護師の育成が夢

    鈴木・徳洲会理事長

    荒賀・大学設置準備室室長

    比国人材活用の可能性

    榎・厚労省専門官が講演

    超早期がんを発見

    血中mRNA解析

    国 立 保 健医療科学院

    センター長

    【訂正】1089号1面の見

    出しで「東京女子医科大学

    と連携」とあるのを「東京女

    子医科大学臨床教授と連

    携」に訂正します。

    も選ばれる病院群をつく

    りあげていきたいと展望

    を語った。

    「最善の病院チェーンになれるよう努力したい」とアブダラ副大臣

    「職員の皆さんは必ず健診受診を」と鈴木理事長

    「既存の大学にないカリキュラムを展開したい」と荒賀室長

    「インドネシアにとって大きなチャレンジです」とイチダン社長

    フィリピン人材の受け入れの仕組みなどを解説する榎専門官

    「超早期がんの兆候を捉えることが可能になりつつあります」と水島センター長

    「mRNAは新たな健康指標にもなり得る」と提言(出典:講演資料)

    新たな健康指標を

    ● 健康度指標にもとづく「健康指導」

    ● 健康と病気は連続的● 健康度という指標はこれまでなかった● 健康支援するサプリも評価指標が無

    メッセンジャーRNAによる健康指標の測定

    徳 洲 新 聞徳 洲 新 聞 生い の ち

    命だけは平等だ❸ 平成 29 年 8 月7日 月曜日 │ No.1094

  • を構築していく必要があ

    る――と結論付けた。

    最後に湘南鎌倉病院の

    小林修三・院長代行が挨

    拶。タンザニア初となる

    腎移植プロジェクトを推

    進中であることを明かし、

    「腎移植をして終わりで

    はありません。提供され

    た大切な腎をずっと機能

    させていくために医療者

    はどうすればよいか、考

    えるきっかけになったと

    思います」と結んだ。

    合病院における腎移植の

    現状」、大木里花子・腎

    免疫血管内科医師が「低

    心機能を呈した重度MR

    患者に先行的腎移植が有

    効であった一例」をテー

    マに講演、同院の取り組

    みを紹介した。

    続いて特別講演として、

    東京女子医科大学の奥見

    雅由・泌尿器科学准教授

    が「腎移植の長期成績向

    上のために」と題し講演。

    ①免疫抑制療法と慢性腎

    臓病管理を両立していく、

    ②日本人腎移植患者さん

    の疫学・予後を正確に評

    価する、③大規模な前向

    き試験により、日本人腎

    移植患者さんに適したエ

    ビデンス(科学的根拠)

    湘南鎌倉総合病院(神

    奈川県)は7月5日、第

    31回SK腎セミナーを開

    催した。これは同院の腎

    臓病総合医療センターが

    主催し、院内のスタッフ

    や近隣の医療機関と腎臓

    に関するあらゆる知識を

    共有するのが目的。今回

    のテーマは「腎移植」。

    アフリカのタンザニアか

    ら腎移植の研修で来日し

    た医師らも参加した。

    まずは一般演題として、

    同院の三宅克典・腎移植

    外科医長が「湘南鎌倉総

    患者さんの状態に応じて

    使い分けている。

    「アプローチ法もデバイ

    ス(道具)も、患者さん

    に合わせてさまざまな選

    択肢を用意し、それに対

    応できるだけのスキルが

    あります。しっかりシミ

    ュレーションしたうえで

    治療に臨んでいるのが良

    かったのだと思います」

    (田中センター長)。

    患者さんの7割以上は

    紹介患者さん。周辺の医

    療機関への説明会、月1

    回程度の一般向けの医療

    講演など田中センター長

    はピーアールにも精力的。

    「まだ歴史の浅い治療法

    だけに、患者さんだけで

    なく、医師への啓発活動

    も大切だと思います」。

    今後はオペレーターを

    増やすため、大阪大学医

    学部附属病院にも協力を

    得ながら研修を行ってい

    る。看護師、臨床工学技

    士などもつねに固定メン

    バーではなく、何人かが

    同じレベルで対応できる

    よう部内で知識や経験を

    共有し始めている。

    「心臓弁のカテーテル治

    療はデバイスがどんどん

    進化しています。つねに

    “その先”を見据えて、

    ハートチーム全体で積極

    的に取り組んでいきたい

    と思います」と、田中セ

    ンター長は意欲的だ。

    同院では、難易度の高い

    治療を行う際には、大阪

    大学大学院の倉谷徹・低

    侵襲循環器医療学教授に

    指導を依頼し、盤石の布

    陣で臨むようにしている。

    最後に、2つの生体弁

    の選択が可能なことが挙

    げられる。これまではサ

    ピエンという生体弁が主

    流だったが、16年1月か

    らコアバルブという生体

    弁が保険適用となった。

    コアバルブは、致死率の

    高い合併症である弁輪破

    裂が起こりにくい、置換

    する位置がずれてもやり

    直せるなど特徴がある。

    同院では16年3月からコ

    アバルブを利用し始め、

    り協働作業により治療を

    進める。このためスタッ

    フ全員が治療内容を把握

    することで、スムーズか

    つ安全な治療ができる。

    2つ目は心エコーを専

    門に診る医師がいること。

    心エコーを映しながら手

    技を行うTAVIは、画

    像上で状態の変化に早く

    気付くことが、術中合併

    症の予防につながる。同

    院では海外でTAVIの

    経験豊富な心エコー医を

    招いている。

    3つ目は、さまざまな

    アプローチ法に対応でき

    ることだ。TAVIは大だい

    腿たい部からアプローチする

    のが一般的だが、血管が

    曲がっていたり血栓(プ

    ラーク)がたまっていた

    りすると合併症のリスク

    が高くなる。この場合、

    心しんせん尖部(心臓の倒円錐形

    の先端部分)からアプロ

    ーチするが、これは外科

    的な技量が必要になる。

     

    50例目のTAVIを実

    施したのは6月29日。こ

    れまでで最も難易度の高

    い症例だったが、治療中

    の合併症なく終了した。

    オペレーションを担当し

    た名古屋病院の田中昭光

    ハートセンター長は「50

    例目も笑顔で終われて良

    かったです。2年間で育

    んだチームワークがあっ

    てこそだと思います」と

    笑顔を見せた。

    TAVIが2013年

    10月に保険適用される以

    前、重症ASの根治療法

    は大動脈弁置換術(AV

    R)のみ。同手術は胸部

    を切開し、人工心肺装置

    で血液の体外循環を確保

    したうえで、機能しなく

    なった大動脈弁を切除し

    人工弁を縫い付ける。た

    だし侵襲の大きさにより、

    高齢の方や全身状態の悪

    い患者さんには実施困難

    な場合があった。

    一方、TAVIは折り

    たたんだ生体弁(生体組

    織を利用した弁)を付け

    たカテーテルを挿入、生

    体弁の開く力で硬化した

    大動脈弁を挫滅し、そこ

    に押し付ける形で留置す

    る。開胸も心肺を止める

    必要もなく、低侵襲なこ

    とが最大の特徴。AVR

    を断念していた患者さん

    も治療適応となる。

    同院は15年7月にTA

    VI実施施設の認定を取

    得し、同年8月から保険

    診療を開始。この2年間、

    術中合併症による緊急外

    科手術への移行はなく、

    術後も心タンポナーデ(心

    外膜の間に液体が大量に

    貯留し、心臓の拍動が阻

    害された状態)、脳梗塞

    などの合併症はない。「7

    月1日に日本循環器学会

    東海地方会で治療成績を

    報告しましたが、参加者

    の反応からも、当院の良

    好な成績には自信がもて

    ます」と、田中センター

    長は胸を張る。

    この治療成績の実現に

    は同院の4つの特徴が寄

    与している。まず、一人

    ひとりの患者さん用に手

    順書をつくり、治療にか

    かわるスタッフ全員で全

    体の流れを共有している。

    TAVIはオペレーター

    (循環器内科医)だけで

    なく、心臓血管外科医、

    麻酔科医、看護師、臨床

    工学技士、診療放射線技

    師など、多職種がかかわ

    福岡徳洲会病院の瀬上希代子・副看護部長は「第7回忘れられない看護エピソード」の看護職部門で最優秀賞を受賞した。同賞は、厚生労働省と日本看護協会(日看協)が毎年5月の「看護の日・看護週間」にあたり、看護職や一般の方々を対象に看護の現場で体験した心温まるエピソードを募集、入賞作品を表彰するイベント。第7回は全国から過去最多の3,578作品が寄せられ、看護職部門と一般部門で10作品ずつ入賞。瀬上・副看護部長は初応募で徳洲会グループ初となる最優秀賞受賞の快挙。表彰式では参加者から「看護管理者がスタッフの看護を認めて表現してあげることはとても大切」と言葉をかけられた。式では「看護の日」PR大使の女優・川島海荷さんが最優秀作品を朗読した。

    「看護師であれば誰もが看護観を左右するような経験をしているはず。心に残ったことを言葉にする大切さを今回、あらためて感じました」(瀬上・副看護部長)作品(原文)は以下のとおり。

    「忘れられない親子の姿〜血のつながりってなんだろう〜」長くNICU(新生児集中治療室)で看護師長として勤務してきた。

    その中で、忘れられない「親子の姿」がある。ある日、1人の赤ちゃんが入院してきた。Aちゃんは低体温で入院した。しかし、もう1つの理由は「育児者がいない」というものだった。周りの赤ちゃんは両親が面会に来ている。看護師たちは、面会のないAちゃんを抱っこしたり、目を合わせて話し掛けながら授乳するなど、できる限りの愛情を注いでいた。担当看護師Yさんは、Aちゃんの日記をつけていた。毎日少しずつ大きくなっていく体重、増えていくミルクの量をはじめ、看護師がどれだけAちゃんをかわいいと思っているかをつづり、写真や手・足型を取って、日記に貼っていた。「大好きだよ」のメッセージと一緒に。3週間の入院で、Aちゃんは乳児院へと退院し、その後のAちゃんについての情報が病院に入ってくることはなかった。それから5年後。Aちゃんの里親さんから「担当していた看護師に話を聞きたい」と連絡があった。Yさんは他部署へ異動していたが、連絡をとり、お会いする機会を持った。特別養子縁組をしてB家の長女となった、5歳の笑顔のかわいいA

    ちゃんは、お母さんと一緒に会いに来てくれた。お母さんはAちゃんが物心つくころには事実を話していたこと、愛情深く育てていること、そして生まれてすぐに入院した病院で看護師たちにとてもかわいがってもらっていたことを、Yさんの日記を見せて話をした、と教えてくださった。「『愛されていた』ということの証となる日記を作ってくださってありがとうございます」とお礼を言っていただいた。NICUという環境の中で、時には血のつながりって何だろう、と考えることがある。Aちゃんを取り巻いた色んな形の愛情からは、人と人とのつながりの奥深さと、愛情をもって接することの偉大さが感じられた。若い看護師であったYさんも、今は一児の母である。とても愛情深い育児をしながら、看護師としてがんばっている。

    TAVI 50 例達成で記念撮影するハートセンターのスタッフら

    「TAVI は役割分担の医療」と田中センター長

    「腎移植をして終わりではありません」と小林・院長代行

    作品に登場する“Yさん”こと片渕由貴・感染管理室副主任(感染管理認定看護師)は「NICU のスタッフ全員で喜んでいます」

    瀬上・副看護部長(前列中央)は、ほかの受賞者、関係者とともに記念撮影(写真は日看協提供)

    名古屋徳洲会総合病院は経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の治療実績が

    50例を超えた。2015年8月に開始して以来、2年間で達成。同治療法は重症

    大動脈弁狭きょう窄さく症(AS)のうち、体力的に外科療法(開胸手術)が困難な高齢患

    者さんなどを対象にしている。同院では、これまでTAVI治療中の合併症によ

    る緊急外科手術への移行はない。

    TAVI には10 人以上のスタッフがかかわる

    タンザニアの医師らもセミナーに参加

    タンザニア医師ら参加

    湘南鎌倉

    総合病院

    腎移植テーマにセミ

    厚労省と日看協が主催の第7回

    「忘れられない看護エピソード」

    TAVI2年で50例突破名古屋徳洲会総合病院

    緊急外科手術への移行ゼロ福   岡

    徳洲会病院

    瀬上・副看護部長

    徳洲会初の最優秀賞

    徳 洲 新 聞生い の ち

    命だけは平等だ 平成 29 年 8 月7日 月曜日 │ No.1094 ❹