平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 wh...

227
Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査) 報告書 2017331経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギーシステム課 御中

Upload: ngonhi

Post on 22-May-2018

225 views

Category:

Documents


3 download

TRANSCRIPT

Page 1: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.

平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査

(ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査)

報告書

2017年3月31日

経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギーシステム課 御中

Page 2: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 1

概要版

Page 3: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 2

背景:蓄電池の自発的な導入に着目

蓄電池の価格が十分に低下し、需要家にとって蓄電池を導入するほうが導入しないよりも経済的である状態になれば、蓄電池の「自発的」な導入が進むと考えられる。

本調査はこのような状態を「ストレージパリティ」と定義し、その成立の蓋然性や、影響の定量評価を行うものである。

このうち、早い段階で生じうると考えられる低圧需要家にとってのストレージパリティに着目する。太陽光発電(PV)を既に保有している住宅における、FIT買取期間終了後の蓄電池追加導入が、最も早い段階で生じ得るストレージパリティである。

低圧電力価格(住宅)

高圧電力価格(業務・産業)

卸電力価格

2019年 2025~2030年 2035~2040年 2045年頃

買取期間終了に伴い、蓄電池ニーズが顕在化

買取終了案件(2019年53万戸)の一部に導入

PVおよび蓄電池の価格低減が進み、新規導入でもメリットが出る

LCOEでのコストが低圧電力と同等になるときから徐々に導入拡大 (新設戸建および住宅寿命20年以上の既築が市場ポテンシャル)

PVおよび蓄電池の価格低減が進み、既存発電と同等に (既存設備の建替えのタイミングで導入)

Stage1 FIT買取期間終了によるストレージパリティ

業務・産業でも住宅と同様のことが起こる(既存建築物がポテンシャル)

Stage2 低圧需要家におけるストレージパリティ

Stage3 高圧需要家におけるストレージパリティ

Stage4 発電事業者におけるストレージパリティ

本調査の対象

ストレージパリティの定義の考え方と本調査の対象

Page 4: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 3

蓄電池の自発的な導入が始まる条件(FIT買取期間終了後の追加導入)

PVを保有している平均的な住宅において、 FIT買取期間終了後、蓄電池価格が9万円/kWh前後まで低下していれば、蓄電池を導入したほうが蓄電池を導入しないよりも経済的メリットが発生するようになる。

この蓄電池価格に到達するのは2020年前後と見込まれ、FIT買取期間終了の住宅が発生し始める2019年と同時期である。

102

91 89 87 81

81

73 71 69 64

0

25

50

75

100

125

0 2 4 6 8 10

千円

/kW

h

蓄電池容量 kWh

割引率0% 割引率3%

9万円

/kWh

日充電回数

0.924回/日

日充電回数

0.829回/日

日充電回数

0.809回/日

日充電回数

0.789回/日

日充電回数

0.734回/日

• 蓄電池寿命15年、工事費含まず

• PV4.5kW、買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

蓄電池許容価格 定置用リチウムイオン電池の価格見通し

バッテリーパック

$/kWh 2015 2020 2025 2030 2040 2050

BNEF(2016) 384 262-

289

182-

223

147-

188 (推計値)

IRENA(2015) 350

Rocky Mountain

Institute (2015) 550 400 300 250 200 99

Navigant

(2013) 400 300 250 200

BNEF (2013) 700 350 250 200

BCG(2010) 360-

440

2020年:約260~400$/kWh

2030年:約150~250$/kWh 予測価格

(バッテリーパック)

2020年:約7.9~12万円/kWh

2030年:約4.6~7.6万円/kWh 予測価格

(システム)

出所)各文献

Page 5: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 4

蓄電池の自発的な導入が始まる条件(新規での太陽光発電と蓄電池の同時導入)

PVを保有していない平均的な住宅において、PVの余剰買取がなくても、蓄電池価格が7万円/kWh前後まで低下すれば、PV

の価格低下程度に関わらず、6kWh程度の蓄電池を導入することが最適になる。

この蓄電池価格に到達するのは2020年後半と見込まれる。

また、ストレージパリティに達さず蓄電池導入の可能性がない場合に比較して、蓄電池導入のオプションがあるほうが、住宅当たりのPV導入容量を拡大することができる。

0

2

4

6

8

10

0 2 4 6 8 10 12

最適な蓄電池容量

[kW

h]

蓄電池価格[万円/kWh]

PV価格20万円/kW PV価格25万円/kW PV価格30万円/kW

PV価格・蓄電池価格別の最適な蓄電池容量

7万円

/kWh

• PV容量は最適化、PV・蓄電池工事費用含まず

• PV寿命25年、蓄電池寿命15年、買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

PV20万円/kW・蓄電池6万円/kWhの場合

16.24

14.50

13.71

13.65

13.64

13.67

13.73 13.95

14.24

19.8

17.5

16.4

15.4 15.1 15.2 15.4

15.8 16.1

16.5

0.0

1.5

3.0

4.5

6.0

7.5

9.0

10.5

12.0

12

13

14

15

16

17

18

19

20

0 2 4 6 8 10 12 14

最適蓄電池容量

[kW

h]

PV込みの年経費

[万円

/年]

PV容量 [kW]

電池有PV込み年経費

電池無PV込み年経費

最適蓄電容量kWhPV導入時の年間コスト

PV+蓄電池導入時の年間コスト

最適な蓄電池容量(右軸)

蓄電池あり:

最適PV容量が増加

蓄電池なし:

5kWが最適

• 年経費=買電費用(基本料金込み)-売電収入+蓄電池年経費+PV年経費

• PV・蓄電池工事費含まず

• PV価格20万円/kW・寿命25年、蓄電池価格6万円/kWh、電気料金が買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

6kWh

Page 6: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 5

蓄電池の自発的な導入が始まる条件(停電回避価値)

蓄電池を導入することによる停電回避機能も、需要家にとってのメリットになる。

需要家が停電回避機能に感じる価値にはばらつきがあるが、全体平均では、10分程度の停電で55円/月、3時間程度の停電で164円/月。停電回避機能を利用したいと思う需要家の平均では、10分程度の停電で436円/月、3時間程度の停電で552

円/月。

これは、停電回避機能を利用したいと思う平均的な需要家にとっては、蓄電池の投資回収年数を1.5年程度短縮するインパクトになり、蓄電池の自発的な導入を後押しする要因になる。

停電回避機能による投資回収年数への影響

平均[円/月] 停電時間

10分間 1時間 3時間 6時間 12時間 24時間

全体 55 96 164 269 391 655

停電回避機能を利用したいと思う需要家

436 465 552 700 951 1505

停電回避機能に対する支払意思額(月額)

出所)アンケート結果。N=1000

0% 50% 100%

10分程度の停電

1時間程度の停電

3時間程度の停電

6時間程度の停電

12時間程度の停電

24時間程度の停電

0円(利用したいと思わない)

300円/月

500円/月

1,000円/月

1,500円/月

2,000円/月

3,000円/月

4,000円/月

5,000円/月

5,000円/月 以上

停電回避機能なし 10分間の

停電回避機能あり

蓄電池導入量 6kWh

6.2kWh

(0.2kWhの充電を常にリザーブ)

初期投資額

(9万円/kWh) 54万円 55.8万円

年間メリット 3.6万円

4.1万円

(436円×12ヶ月分を追加)

投資回収年数 15年 13.5年

Page 7: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 6

「ストレージパリティ」の到達時期

以上より、FIT買取期間終了後のPVに対して蓄電池を追加導入する場合は、「ストレージパリティ」は2020年頃となる見通し。

低圧需要家にPVと蓄電池を新規導入する場合は、 「ストレージパリティ」は2020年代後半となる見通し。

蓄電池追加(FIT買取期間終了後に蓄電池追加導入) PV+蓄電池(新規で太陽光発電と蓄電池を同時導入)

時期 2020年頃 2020年代後半

価格見通し

国内の蓄電池の価格目標は9万円/kWh

諸外国では2020年で定置用蓄電池パック(PCS、筐体等含まず)で3~4万円/kWh程度となる見通し

PVは4.5kWが導入されているものがFITにより設備償却済みと想定。このときの最適蓄電池容量は6kWh

系統電気料金は燃料費増加に伴う卸価格の上昇や賦課金の上昇により、3円/kWh程度の増加を見込む

蓄電池の価格は7万円/kWh程度まで低下していると想定。PVは各種目標・見通し等から20~30万円/kW程度と想定

諸外国では2030年で住宅用PVが15~25万円/kW、定置用蓄電池パック(PCS、筐体等含まず)で1.5~2.5万円/kWh程度となる見通し

系統電気料金は燃料費増加に伴う卸価格の上昇や賦課金の上昇により、3円/kWh程度の増加を見込む

備考

自家消費の増加や昼夜間値差による収益を元に需要家のメリットを想定。系統への貢献などによる収益は見込まず。

自発的な蓄電池の活用による系統への貢献は限定的であり、その効果を増大させるためには、需要家に何らかのシグナル・報酬を与えて運転パターンを変化させる工夫が必要

PVや蓄電池の価格次第では、何も設備を入れない状態より、PVのみ、もしくはPVと蓄電池を入れた方が経済的メリットが出る

VPP等により制御を行うことで収益増大、系統への貢献向上に資する可能性がある

+ +

Page 8: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 7

自発的に導入される蓄電池の運転パターン

需要家にとっては、売買電料金が一定であれば、昼から雨になる等で蓄電量が最大に達しないリスクを考慮して逆潮流が発生し始めた時にすぐ充電を始め、翌日までに全量放電しきれないリスクを考慮して逆潮流の発生がない時にすぐ放電を始める運転パターンが、経済的メリットの点で選択される。

自発的に導入される蓄電池の運転パターンの例(3月)

0

1

2

3

4

3/14 3/15 3/16 3/17 3/18

買電 自家消費 売電 充電 放電 需要

満充電

満充電

満充電

満充電

満充電

[kWh/h]

0

1

2

3

4

7/19 7/20 7/21 7/22 7/23

買電 自家消費 売電 充電 放電 需要

ネット負荷大(年間最大)

満充電

[kWh/h]

自発的に導入される蓄電池の運転パターンの例(7月)

0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18

Page 9: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 8

蓄電池が自発的に導入されることによる2030年の蓄電池の普及見込

蓄電池の導入により経済的メリットが生じるかどうかは、各住宅の需要パターンにも依存する。また、蓄電池を導入するかどうかは、需要家の新商品導入への積極性(期待する投資回収年数)によっても異なる。

2030年の住宅のPV導入量は、足元の伸びや新築住宅の増加を考慮すると、19GW(430万世帯)に達すると見込まれる。

一方、PV保有住宅において、6kWhの蓄電池の追加導入により期待する経済的メリットが生じる住宅の比率は、蓄電池価格6万円/kWhに対して31%と見込まれる。すなわち、蓄電池価格が6万円/kWhまで低下したとき、 131万世帯において、自発的な蓄電池の導入が見込まれる。

蓄電池導入の条件*

構成比

蓄電池導入率

(蓄電池価格

6万円/kWh)

イノベーター 何年でも 2.5% 100%

アーリー・アダプター 15年 13.5% 100%

アーリー・マジョリティ 10年 34% 43%

レイト・マジョリティ 5年 34% 0%

ラガード 導入しない 16% 0%

蓄電池導入率 ― 31%

蓄電池導入量 ― 131万世帯

家庭での自発的な蓄電池導入見込(2030年)

* 期待する投資回収年数(何年以下であれば導入するか) 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.6 4.6 4.5 4.4 4.2 4.0 3.7 3.4 3.1 2.9 2.7 2.2

1.3

0.4 0.9 1.4 1.9 2.5 3.1 3.7 4.3 5.0 5.6 6.3 7.0 7.8 8.5 9.3 10.1 11.0 11.812.7

1.01.8

2.42.7

3.23.5

3.73.9

4.04.2

4.44.5

4.64.7

4.84.9

5.0 5.1 5.2

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030

ストック導入量(

GW)

新規認定(既築)

新規認定(新築)

移行認定

住宅のPV導入見込

移行認定分

新規認定分

(既築住宅への導入)

新規認定分

(新築住宅への導入)

2016年度以降推計

19GW

住宅

のP

V導

入見

込量

[GW

]

Page 10: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 9

自発的に導入される蓄電池が系統へ与える影響(1)

需要家が自身の経済的メリットのために自発的に導入する蓄電池は、系統側から自由に制御できるものではないが、電力系統にある程度の好影響を与えると考えられる。

マクロには短周期変動の抑制と余剰電力の発生緩和・出力制御減少の効果がある。2030年に131万戸の需要家が自発的蓄電池を導入・運用した場合、蓄電池が導入されないときと比較して、燃料費111億円、CO2排出量54万トンを削減し、自給率を0.06ポイント上昇させる。

このような好影響は、蓄電池の導入量が大きいほど大きくなる。

63万戸

(PV保有世帯の15%)

131万戸

(PV保有世帯の31%)

231万戸

(PV保有世帯の50%)

Energy

security 自給率増加 +0.03 [%ポイント]

(0.12%)

+0.06 [%ポイント]

(0.23%)

+0.09 [%ポイント]

(0.36%)

Environm

ent CO2削減 ▲27 [万-CO2トン]

(0.23%)

▲54 [万-CO2トン]

(0.15%)

▲83 [万-CO2トン]

(0.07%)

Economic

efficiency 燃料費削減 ▲55[億円]

(0.10%)

▲111 [億円]

(0.21%)

▲169 [億円]

(0.32%)

蓄電池導入量

※ ()内の%はそれぞれ2030年の目標値(長期需給見通し)に対する比率 自給率:24.3% CO2排出量:3.6億tCO2 燃料費:5.3兆円

自発的に導入された蓄電池が2030年の3Eへ与える影響(蓄電池が導入されないときとの比較)

Page 11: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 10

自発的に導入される蓄電池が系統へ与える影響(2)

蓄電池が系統へ与える好影響をより大きくするためには、需要家自身の経済的メリットを最大化する運転ではなく、需要家に何らかのシグナル・報酬を与えることで、系統全体で余剰電力が発生しやすい時刻に充電を行う、ローカル系統への逆潮流量を一定以下に抑える、といった運転パターンの変更が望まれる。

その他の電力システムの設備形成の削減効果も期待されるが、2030年までに想定される住宅のみでの蓄電池の導入では、量的・制度的に大きな効果とならないと考えられる。低圧需要家でのストレージパリティをきっかけとして蓄電池価格低下・導入がさらに進み、系統側でも積極的に需要家側蓄電池を活用する工夫を行うことで、これらの効果も発現すると考えられる。

需要家自身の

経済的メリット最大化

昼間(10時以降)に充電を行う

逆潮流量を一定(1.4kW)以下に抑える

Energy

security 自給率増加 +0.06 [%ポイント]

(0.23%)

+0.06 [%ポイント]

(0.25%)

+0.05 [%ポイント]

(0.22%)

Environm

ent CO2削減 ▲54 [万-CO2トン]

(0.15%)

▲56 [万-CO2トン]

(0.16%)

▲59 [万-CO2トン]

(0.16%)

Economic

efficiency

燃料費削減 ▲111 [億円]

(0.21%)

▲110 [億円]

(0.21%)

▲113 [億円]

(0.21%)

電圧調整コストの削減

±0

[百万円/1配電線]

▲4

[百万円/1配電線]

▲5

[百万円/1配電線]

蓄電池運転パターン

※ ()内の%はそれぞれ2030年の目標値(長期需給見通し)に対する比率 自給率:24.3% CO2排出量:3.6億tCO2 燃料費:5.3兆円

自発的に導入された蓄電池が2030年の3Eへ与える影響

(蓄電池が導入されないときとの比較)

Page 12: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 11

詳細版

Page 13: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 12

調査の背景と目的

東日本大震災以降、従来の大規模集中電源に依存した硬直的な電力供給システムを脱却するとともに、急速に普及を拡大している再生可能エネルギーを安定的かつ有効に活用していくことが求められている。

そのような中、FIT制度をはじめとした再生可能エネルギー推進政策の全世界的展開により、太陽光パネルのコストが急激に低下するとともに、電気自動車等の普及による蓄電池セルコストの低下に伴い、家庭用蓄電池についても低コスト化が進んだことにより、市場が立ちあがりつつあり、今後一層のコストダウンが期待されている。

このような背景の下、欧州や豪州では、系統電力を利用するコストよりも需要家側で発電・蓄電し、自家消費するコストが小さくなる、いわゆる「ストレージパリティ」の到達が間近に迫っていると言われている。一旦ストレージパリティに到達すると、経済的優位性を有する太陽光発電+蓄電池のエネルギーシステムへの需要が高まり、結果、太陽光発電+蓄電池のシステムコストをさらに押し下げるというポジティブフィードバックを生むことになる。

我が国におけるストレージパリティの到達は2020年以降になると考えられるが、中長期的なエネルギー政策に影響を与えるポテンシャルに鑑み、その成立の蓋然性やメリット/デメリット、影響度の評価を行い、望ましい政策の方向性を検討するための材料を収集・分析することを本調査の目的とした。

政策の方向性

再生可能エネルギーの急速な普及

太陽光パネルや蓄電池コストの低下

生じうる事態 背景・外部環境変化

ストレージパリティの到達によるエネルギーシステムの不可逆的変化

電力システム・電力事業への影響

政府目標への影響

蓄電池普及支援によるストレージパリティ到達への加速

電力料金設計の見直し 等

調査の背景と目的

Page 14: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 13

目次

I. ストレージパリティの定義の設定 15

II. ストレージパリティの定義を元にした、

再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析 43

III. ソーラーシンギュラリティのインパクトに係る分析 126

IV. ストレージパリティの到達時期に係る分析 172

V. ソーラーシンギュラリティ実現の必要性について 206

VI. 海外調査 211

Page 15: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 14

目次

1. ストレージパリティの定義の考え方

2. 低圧需要家単位での、電力需要量と太陽光発電設備、蓄電池等の容量の関係

3. 系統バックアップのあり方について

4. 定置用蓄電池以外の蓄エネルギー機器について

I. ストレージパリティの定義の設定

1. 太陽光パネル及び蓄電池等の蓄エネルギー機器、エネルギーマネジメントシステムの価格低下トレンド

2. 再エネ賦課金、託送料金等を含む系統電気料金上昇/下落トレンド

IV.ストレージパリティの到達時期に係る分析

ストレージパリティの定義、到達時期の分析 政策の方向性検討

1. 系統安定化への貢献

2. 再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

3. 送配電網の最適化への貢献

4. 需要家の防災対策への貢献

II.ストレージパリティの定義を元に、再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析

I~Vに関する海外動向調査

V.ソーラーシンギュラリティ実現の必要性について

1. 住宅用太陽光の導入ポテンシャル

2. 蓄電池等による自家消費の拡大トレンド

3. それが系統全体に与えるインパクト

III.ソーラーシンギュラリティのインパクトに係る分析

ストレージパリティの影響の分析

VI.海外調査

エネルギーミックスに与える影響

各章間の関係は下図のとおり。

各章間の関係

Page 16: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 15

Ⅰ.ストレージパリティの定義の設定

1. ストレージパリティの定義の考え方

2. 低圧需要家単位での、電力需要量と太陽光発電設備、蓄電池等の容量の関係

3. 系統バックアップのあり方について

4. 定置用蓄電池以外の蓄エネルギー機器について

Page 17: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 16

ストレージパリティの定義の考え方

「ストレージパリティ」を、「蓄電池を導入しないよりも、蓄電池を導入したほうが経済的メリットがある状態」と定義する。

本調査では、特に低圧需要家(住宅)にとってのストレージパリティに着目する。

Stage1:「PVを既に保有している住宅の、FIT買取期間終了後の蓄電池導入」

Stage2:「PVを保有していない住宅の、PV+蓄電池の新規導入」

低圧電力価格(住宅)

高圧電力価格(業務・産業)

卸電力価格

2019年 2025~2030年 2035~2040年 2045年頃

買取期間終了に伴い、蓄電池ニーズが顕在化

買取終了案件(2019年53万戸)の一部に導入

PVおよび蓄電池の価格低減が進み、新規導入でもメリットが出る

LCOEでのコストが低圧電力と同等になるときから徐々に導入拡大 (新設戸建および住宅寿命20年以上の既築が市場ポテンシャル)

PVおよび蓄電池の価格低減が進み、既存発電と同等に (既存設備の建替えのタイミングで導入)

Stage1 FIT買取期間終了によるストレージパリティ

業務・産業でも住宅と同様のことが起こる(既存建築物がポテンシャル)

Stage2 低圧需要家におけるストレージパリティ

Stage3 高圧需要家におけるストレージパリティ

Stage4 発電事業者におけるストレージパリティ

本調査の対象

ストレージパリティの定義の考え方と本調査の対象

Page 18: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 17

Ⅰ.ストレージパリティの定義の設定

1. ストレージパリティの定義の考え方

2. 低圧需要家単位での、電力需要量と太陽光発電設備、蓄電池等の容量の関係

3. 系統バックアップのあり方について

4. 定置用蓄電池以外の蓄エネルギー機器について

Page 19: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 18

(1)試算の前提 ①分析対象とするストレージパリティ

低圧需要家がストレージパリティに到達する際の、電力需要とPV・蓄電池等の容量の関係や条件について、蓄電池の運転のシミュレーションを行い、分析を行った。

分析対象とするストレージパリティの種類は下表の2とおりとして、主にStage1(蓄電池追加導入)について分析した。

ストレージパリティのステージ 蓄電池の導入者と導入形態 想定される時期

Stage1

FIT買取期間終了によるストレージパリティ

PVを既に保有している住宅の、FIT買取期間終了後の蓄電池追加導入

2019年以降

Stage2

低圧需要家におけるストレージパリティ

PVを保有していない住宅の、PV+蓄電池の新規導入

2020年代後半~

分析対象とするストレージパリティ

Page 20: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 19

(1)試算の前提 ②試算の方法

試算に用いたデータと、試算の方法について以下に示す。

試算においては、早稲田大学スマート社会技術融合研究機構の協力を得た。

線形計画法で蓄電池容量等の最適解を求めた。

(下線:最適化対象)

<目的関数>

年間コスト

=蓄電池価格(年経費)×蓄電池容量+基本料金

+Σ(買電量×買電料金-売電量×売電料金)→最小化

<主な制約式> ネットロード=需要-PV発電量 ネットロード>0のとき 買電量=ネットロード-充電量+放電量、 放電量<ネットロード ネットロード<0のとき 売電量=-ネットロード-充電量、 充電量<-ネットロード 蓄電池容量>蓄電量 蓄電量(次の時刻)=蓄電量+充放電効率×充電量-放電量 充電量、放電量<蓄電池出力

試算の方法

• 群馬県太田市で実測した2007年のPV導入戸建て住宅200軒(電気温水器非保有)

• 30分平均の需要とPV出力を整理し、200軒の平均から平均的住宅のデータを作成

同一時刻で平均をとった「平均的住宅」は、

・最大需要1.87kW、PV最大電力3.46kW

・PV年間発電量と設備利用率を13%とした時のPV定格容量は4.5kW*2

*1: 2012年度の戸建・3人世帯の平均需要 6,585kWh/年

(資源エネルギー庁「平成24年度エネルギー消費状況調査」(民生部門エネルギー消費実態調査))

*2:2016年8月時点(10 kW未満)PV導入平均

新規認定分: 4.5kW

移行認定分: 3.9kW (固定価格買取制度 情報公開用ウェブサイト)

住宅の需要・PV出力データ

(200軒のデータ) 平均 最大 最少 標準偏差

年間需要 [kWh] 6,256*1 13,875 3,031 2,008

最大需要 [kW] 4.31 8.92 1.78 1.17

PV年間発電量 [kWh] 5,125 6,639 3,943 681

PV最大電力 [kW] 3.76 6.84 2.77 0.48

Page 21: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 20

(1)試算の前提 ②試算の方法 ≪参考≫蓄電池容量最適化の方法(1/2)

汎用最適化計算ツールGAMSと、ソルバーCPLEXを使い、線形計画法で次のように最適解を求めた。

以下、外生変数は小文字、最適化する内生変数は大文字で示す。

<目的関数>

 𝑇𝑂𝑇𝐴𝐿(→最小化)

= 𝑏𝑎𝑡𝑡𝑝𝑟𝑖𝑐𝑒 ∙ 𝐵𝐴𝑇𝑇𝐾𝑊𝐻 + 𝑒𝑙𝑒𝑐𝑡𝑘𝑤𝑝𝑟𝑖𝑐𝑒 + 𝑏𝑢𝑦𝑝𝑟𝑖𝑐𝑒 𝑡 ∙ 𝑂𝑃𝑇𝐵𝑈𝑌 𝑡 − 𝑠𝑒𝑙𝑙𝑝𝑟𝑖𝑐𝑒(𝑡) ∙ 𝑂𝑃𝑇𝑆𝐸𝐿𝐿(𝑡)

17520

𝑡=1

ここで、

𝑡 : 1月1日0時からの30分刻みの時間 𝑏𝑎𝑡𝑡𝑝𝑟𝑖𝑐𝑒 : 蓄電池価格 [円/kWh]

𝐵𝐴𝑇𝑇𝐾𝑊𝐻 : 蓄電池容量 [kWh] 𝑒𝑙𝑒𝑐𝑡𝑘𝑤𝑝𝑟𝑖𝑐𝑒 : 電気料金基本料金[円]

𝑏𝑢𝑦𝑝𝑟𝑖𝑐𝑒 𝑡 : 買電単価 [円/kWh] 𝑂𝑃𝑇𝐵𝑈𝑌 𝑡 : 買電量 [kWh]

𝑠𝑒𝑙𝑙𝑝𝑟𝑖𝑐𝑒(𝑡) : 売電単価 [円/kWh] 𝑂𝑃𝑇𝑆𝐸𝐿𝐿(𝑡) : 売電量 [kWh]

注)electkwpriceは、実際には需要最大値とPV容量の内、大きい方をkW単位で切り上げて契約kW(またはアンペア)を決め、kW単価との積で決めている。

例えば、𝑆𝑇𝑂𝑅𝐴𝐺𝐸𝐶𝐴𝑃<1 のように蓄電池容量が小さい場合、蓄電池の実売価格はkWhに比例せずに割高となることが予想されることに留意が必要。

Page 22: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 21

(1)試算の前提 ②試算の方法 ≪参考≫蓄電池容量最適化の方法(2/2)

汎用最適化計算ツールGAMSと、ソルバーCPLEXを使い、線形計画法で次のように最適解を求めた。(続き)

<制約条件(2)>  

蓄電池容量[kWh]: 𝑆𝑇𝑂𝑅𝐴𝐺𝐸𝐶𝐴𝑃 ≥ 𝑆𝑇𝑂𝑅𝐴𝐺𝐸(𝑡)

蓄電量: 𝑆𝑇𝑂𝑅𝐴𝐺𝐸 𝑡 + 1 = 𝑆𝑇𝑂𝑅𝐴𝐺𝐸 𝑡 + ∙ 𝐶𝐻𝐴𝑅𝐺𝐸 𝑡 − 𝐷𝐼𝑆𝐶𝐻𝐴𝑅𝐺𝐸(𝑡)

蓄電池サイクル効率: (=0.9に設定)

蓄電量の初期値と最終値: 𝑆𝑇𝑂𝑅𝐴𝐺𝐸 1 = 𝑆𝑇𝑂𝑅𝐴𝐺𝐸 17521

= 0.5 ∙ 𝑆𝑇𝑂𝑅𝐴𝐺𝐸𝐶𝐴𝑃

充放電出力上限: 𝐶𝐻𝐴𝑅𝐺𝐸 𝑡 、 𝐷𝐼𝑆𝐶𝐻𝐴𝑅𝐺𝐸 𝑡 ≤ 𝑏𝑎𝑡𝑡𝑒𝑟𝑦𝑘𝑤 = 2

<制約条件(1)>  

見かけの需要[kW]: 𝑛𝑒𝑡𝑙𝑜𝑎𝑑 𝑡 = 𝑙𝑜𝑎𝑑 𝑡 − 𝑝𝑣𝑜𝑢𝑡𝑝𝑢𝑡(𝑡)

𝑛𝑒𝑡𝑙𝑜𝑎𝑑(𝑡) ≥ 0 の時

最適買電量[kW]: 𝑂𝑃𝑇𝐵𝑈𝑌 𝑡 = 𝑛𝑒𝑡𝑙𝑜𝑎𝑑 𝑡 − 𝐷𝐼𝑆𝐶𝐻𝐴𝑅𝐺𝐸 𝑡 + 𝐶𝐻𝐴𝑅𝐺𝐸 𝑡

0 ≤ 𝐷𝐼𝑆𝐶𝐻𝐴𝑅𝐺𝐸 𝑡 ≤ 𝑛𝑒𝑡𝑙𝑜𝑎𝑑 ℎ 逆潮なしの条件で充放電可能

(𝑛𝑒𝑡𝑙𝑜𝑎𝑑(𝑡) < 0) の時

最適売電量[kW]: 𝑂𝑃𝑇𝑆𝐸𝐿𝐿 𝑡 = −𝑛𝑒𝑡𝑙𝑜𝑎𝑑 𝑡 − 𝐶𝐻𝐴𝑅𝐺𝐸 𝑡

0 ≤ 𝐶𝐻𝐴𝑅𝐺𝐸 𝑡 ≤ −𝑛𝑒𝑡𝑙𝑜𝑎𝑑 𝑡 逆潮ありの時は放電禁止・充電は逆潮以下

注) ここでは、電池なしで買電となる時間と、売電となる時間で場合分けし、買電時には充電も放電も可能だが、売電時には放電禁止とすることで、低料金時間帯の電気を高料金時間帯に転売することを禁止する。電池を導入後も、導入前の買電時は売電禁止、売電時は買電禁止とし、導入前後で同一時間帯での料金を固定することで、線形計画法により最適解が得られるようにしている。なお、今回の設定では、売電価格は常に買電価格より安いので、系統電力の充電分を、逆潮ありの時に放電して売電するのは経済的でない。このため、この制約条件の有無で最適解は変わらない。

Page 23: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 22

(2)蓄電池追加導入の分析 ①試算の前提

PVを既に保有している住宅の、FIT買取期間終了後の蓄電池追加導入を想定したときの、以下の計算を行った。

平均的住宅に対する評価:蓄電池の寿命までで投資回収可能な金額(蓄電池許容価格)、蓄電池の最適容量

個別の住宅に対する評価:蓄電池投資が回収可能な住宅の比率

蓄電池の運転や電気料金に関する前提は下表のとおり。

昼夜間

値差

なし

昼夜間値差が無いため、昼間のPV

からの充電のみ

シミュレーションに基づき充放電を行うとして、日平均充電量は1回/日未満

(雨天時等は満充電不可)

充放電効率は90%

寿命は15年

買売電価格を固定

買電29円・売電8円/kWh

(買電26円・売電5円/kWhも試算)

割引率は0%とする

昼夜間

値差

あり

昼夜間値差が有るため、昼間のPV

からの充電に加えて、深夜受電分を充電

シミュレーションに基づき充放電を行うとして、日平均充電量は1回/日超

充放電効率は90%

寿命は15年

買電32.9円/kWh(昼間)

・20円/kWh(夜間)

(28.6円/kWh(昼間)も試算)*

売電価格は5円/kWhで固定

割引率は0%とする

蓄電池の運転パターン 蓄電池の条件 価格設定等

* PVも蓄電池も保有しない家庭で、年間の電気料金が「昼夜間値差無」の29円・26円と同じとなるように設定。

シミュレーションの条件

Page 24: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 23

(2)蓄電池追加導入の分析 ②蓄電池許容価格-昼夜間値差なし-

買電価格/売電価格を29円/8円、もしくは26円/5円にしたとき、蓄電池容量の変化による蓄電池許容価格(蓄電池の寿命までに投資可能な金額)は下図のとおり。

蓄電池容量が増えることにより、日充電回数が減少し、それにより蓄電池許容価格も減少する。

蓄電池容量6kWh前後の場合、蓄電池許容価格は9万円/kWhとなる。

104

93 90 88 82

82

74 72 70 65

0

25

50

75

100

125

0 2 4 6 8 10

蓄電

池許

容価

格 千

円/k

Wh

蓄電池容量 kWh

割引率0% 割引率3%

102

91 89 87 81

81

73 71 69 64

0

25

50

75

100

125

0 2 4 6 8 10

蓄電

池許

容価

格 千

円/k

Wh

蓄電池容量 kWh

割引率0% 割引率3%

蓄電池許容価格

(買電)26円 (売電)5円固定 蓄電池許容価格

(買電)29円 (売電)8円固定

9万円

/kWh 9万円

/kWh

日充電回数

0.924回/日

日充電回数

0.829回/日

日充電回数

0.809回/日

日充電回数

0.789回/日

日充電回数

0.734回/日

日充電回数

0.924回/日

日充電回数

0.829回/日

日充電回数

0.809回/日

日充電回数

0.789回/日

日充電回数

0.734回/日

• 蓄電池工事費含まず

• PV4.5kW、蓄電池寿命15年

• 蓄電池工事費含まず

• PV4.5kW、蓄電池寿命15年

Page 25: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 24

(2)蓄電池追加導入の分析 ②蓄電池許容価格-昼夜間値差あり-

買電価格/売電価格を昼夜間値差ありとしたとき、蓄電池容量の変化による蓄電池許容価格(蓄電池の寿命までに投資可能な金額)は下図のとおり。

昼夜間値差なしと同様、蓄電池容量が増えることにより、日充電回数が減少し、それにより蓄電池許容価格も減少する。

9.5kWhもしくは8.7kWh前後で、蓄電池許容価格は9万円/kWhとなる。

133

114 110

105

95 90

82 106

91 88

84

75 72

66

0

25

50

75

100

125

150

0 2 4 6 8 10 12

蓄電

池許

容価

格 千

円/k

Wh

蓄電池容量 kWh

割引率0% 割引率3% 148

125 120

114

101

90 87

118

100 96

91

80

72 69

0

25

50

75

100

125

150

0 2 4 6 8 10 12

蓄電

池許

容価

格 千

円/k

Wh

蓄電池容量 kWh

割引率0% 割引率3%

9万円

/kWh 9万円

/kWh

日充電回数

1.38回/日

日充電回数

0.89回/日

日充電回数

0.81回/日 日充電回数

1.38回/日

日充電回数

0.84回/日

日充電回数

0.81回/日

蓄電池許容価格

(買電)28.6円/20円 (売電)5円 蓄電池許容価格

(買電)32.9円/20円 (売電)8円

• 蓄電池工事費含まず

• PV4.5kW、蓄電池寿命15年

• 蓄電池工事費含まず

• PV4.5kW、蓄電池寿命15年

Page 26: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 25

(2)蓄電池追加導入の分析 ③最適蓄電池容量

平均的住宅での蓄電池容量と年経費の関係

蓄電池価格9万円/kWhの時、蓄電池容量と年経費の関係を示す。

蓄電池設備費相当の年経費は蓄電池容量に比例して増加するが、電気料金はわずかに下に凸の曲線で減少するので、合計も、わずかに下に凸となる。

蓄電池容量が0~6kWhの間で、需要家の年間コストは2千円ほどしか差がつかない。

116.8 116.0 116.5 117.1 118.1 121.8

0

20

40

60

80

100

120

140

0 1 2 3 4 5 6 7 8

年経費

[千円

]

蓄電容量 [kWh]

年経費(電気料金+蓄電池設備費)

電気料金

蓄電池設備費(9万円/kWh)

蓄電池容量と年経費の関係

• 年経費=買電費用(基本料金除く)-売電収入+蓄電池年経費

• 蓄電池工事費含まず

• PV4.5kW、蓄電池価格9万円/kWh・寿命15年、買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

蓄電池容量

Page 27: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 26

(2)蓄電池追加導入の分析 ③最適蓄電池容量

平均的住宅での蓄電池価格と最適蓄電池容量との関係

蓄電池価格をパラメータとし、年経費が最小となる蓄電池容量を求めた。

単価が7.5万円程度に下がるまでは、蓄電池容量は6kWhまで大きく増加するが、さらに安くなった場合は、容量の増分は一定になる。

蓄電池の最適容量

• 年経費=買電費用(基本料金除く)-売電収入+蓄電池年経費

• 蓄電池工事費含まず

• PV4.5kW、蓄電池寿命15年、買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

蓄電池価格

0

2

4

6

8

10

12

14

0

2

4

6

8

10

12

14

0 2 4 6 8 10 12

年経費

[万円

]

最適な蓄電容量

[kW

h]

蓄電池単価 [万円/kWh]

蓄電容量

年経費

価格低下時、

最適な蓄電池容量は6kWhまで大きく増加

Page 28: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 27

(2)蓄電池追加導入の分析 ③最適蓄電池容量

平均的住宅での蓄電池容量と日間充放電回数・充電量の関係

蓄電池の利用率の指標として、蓄電池容量一杯までの充放電を1日1回行う場合を1とする時、蓄電池容量を大きくすると、この値は減少し、蓄電池への投資が回収しにくくなる。

日間充電量を大きい順に並べると、充電容量が大きい場合は、日照量の多い日に十分充電できる一方、少ない日には容量を使い切れないので、利用率が低下する。

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

0 2 4 6 8 10 12 14

年平均日間充放電回数

最適蓄電容量 [kWh]

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360

日間充電量[kWh/日]

8kWh蓄電池充電量

6kWh蓄電池充電量

4kWh蓄電池充電量

1日当たり充電・放電回数 蓄電池容量と充電量の関係

蓄電池容量が大きいほど1日当たり充放電

回数が低下

• PV4.5kW、買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析 • PV4.5kW、買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

注 6kWh蓄電池を1日1回充放電する時の充電量は、効率を90%に設定したので6/0.9=6.67kWhとなる。また、昼にPV出力が低下したときにいったん放電すると、1日の充電量が6.67kWhを超える場合もある。

蓄電池容量

Page 29: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 28

0

2

4

6

8

10

12

14

0 1 2 3 4 5 6 7

蓄電

池容

量kW

h

出力 kW

NEC

東芝

Panasonic

EliiyPower

OMRON

ニチコン

SHARP

京セラ

Tesla

② ③

日本メーカー平均

7.3 kWh

日本メーカー平均

2.6 kW

蓄電池セルメーカー

PCS

メーカー

PVパネルメーカー

その他日本メーカー平均

3時間率

(2)蓄電池追加導入の分析 ③最適蓄電池容量 ≪参考≫現状の蓄電池ラインナップ

各社から販売されている製品は、出力3kW以下、容量4~8kWhの製品が主流(①)であるものの、出力は3kW以下のままで容量を増大させた製品群(②)やPVとの併用を想定し、出力、容量共に増大させた製品群(③)が存在する。

各社の蓄電池のラインナップ

出所)資源エネルギー庁 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査(定置用蓄電池の普及拡大及びアグリゲーションサービスへの活用に関する調査)

Page 30: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 29

(2)蓄電池追加導入の分析 ③最適蓄電池容量 ≪参考≫蓄電池なし時の買電量

蓄電池を導入していない場合の月別の買電量を整理すると、季節間で大きくばらつきがある。

電気料金に昼夜間値差がある場合、PV余剰電力の充電は夜間以外(7-23時)に使用されるとすると、夜間以外買電量の平均では7.14kWh/日となり、需要家が導入する蓄電池容量の一つの目安になる。

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

日間

売買

電電

力量

(月平

均)

[kW

h/日

]

7-23時の買電量 23-7時の買電量 売電量(PV4.5kW)

年平均

(7-23時)

7.14kWh/日

年平均

(終日)

12.7kWh/日

月別買電量

• PV4.5kW

• 200軒平均の需要データを用いて分析

Page 31: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 30

0

5

10

15

20

1

15

29

43

57

71

85

99

113

127

141

155

169

183

197

211

225

239

253

267

281

295

309

323

337

351

365

余剰量 充電量

(2)蓄電池追加導入の分析 ③最適蓄電池容量 ≪参考≫蓄電池あり時の余剰量

6kWhの蓄電池を導入したときの、365日別の余剰電力と充電量は下図のとおり(昼夜間値差無の場合)。

6kWhの蓄電池によって、余剰電力の6割弱を蓄電することができる。

6kWhの蓄電池を導入したときの余剰電力と充電量 月別余剰電力

kW

h/日

kW

h/日

余剰電力量 余剰電力の 蓄電可能率

蓄電池なし 3,145 kWh/年 0%

6kWh 1,398 kWh/日 56%

• PV4.5kW、蓄電池容量6kWh、買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

0

10

20 2 3 4

0

10

20 5 6 7

0

10

208 9 10

0

10

20 1 11 12

365日

Page 32: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 31

(2)蓄電池追加導入の分析 ④住宅の個別評価

住宅200軒への個別評価で、蓄電池価格別・投資回収年数別に、蓄電池投資が回収可能な住宅の割合を算出した。

対象とした200軒の住宅に6kWhの蓄電池を導入する場合、15年、10年、5年で回収できる住宅の割合を求めた。

10年回収の場合、7万円/kWhで回収可能な住宅もあるが、4万円/kWh近くまで下がらないと回収できない住宅もある。

蓄電池価格と投資回収可能な住宅の割合

• PV4.5kW、蓄電池容量6kWh買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

蓄電

池投

資が

回収

可能

な住

宅の

割合

蓄電池価格

Page 33: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 32

(3)PV+蓄電池の新規導入の分析 ①PV容量の最適化

FIT終了後を前提に(売電価格8円)、平均的住宅にPVのみを新設する場合、PV設備費と寿命をパラメータとしてPV込みの年経費を計算した。

PV30万円/kW・寿命25年の場合、PV3kWが年経費最小となる。PV容量を増やすと、買電費用削減・売電収入増加がPV年経費の増加に相殺されてしまうため、住宅当たりのPV導入容量は、現在(平均4.5kW)よりも減少すると見込まれる。

一方、PV20万円/kWでは、買電費用削減・売電収入増加がPV設備費の増加を上回るが、基本料金の増加の影響も出てくるため、これを考慮する必要がある。

平均的住宅における最適PV容量(蓄電池なし)

PV価格・寿命

PV30万円

寿命25年:

3kWが最適

• 年経費=買電費用(基本料金除く)-売電収入+PV年経費

• 蓄電池工事費含まず

• 買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

Page 34: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 33

0

2

4

6

8

10

0 2 4 6 8 10 12

最適な蓄電池容量

[kW

h]

蓄電池価格[万円/kWh]

PV価格20万円/kW PV価格25万円/kW PV価格30万円/kW

(3)PV+蓄電池の新規導入の分析 ②PV容量・蓄電池容量の最適化

基本料金も考慮して、PV容量・蓄電池容量の最適化を行うと、蓄電池価格が7万円/kWh前後まで低下すれば、PV価格に関わらず、6kWh程度の蓄電池を導入することが最適になる。

PV20万円/kW・蓄電池6万円/kWhの場合の、蓄電池の有無による年経費の変化を右下図に示す。

蓄電池なしに比較して、蓄電池導入のオプションがあるほうが、住宅当たりのPV導入容量を拡大することができる。

計算結果では最適PV容量は8kW。なお、後述のPV導入ポテンシャル試算より、2030年にPV導入可能な住宅の約1/4は、8kW以上の設置が可能。

導入するPV容量を大きくしても設備利用率が低下するため、住宅に対して最適な蓄電池容量は、9kWh程度で頭打ちとなる。

PV価格・蓄電池価格別の最適な蓄電池容量

7万円

/kWh

• PV容量は最適化、PV・蓄電池工事費用含まず

• PV寿命25年、蓄電池寿命15年、買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

PV20万円/kW・蓄電池6万円/kWhの場合

16.24

14.50

13.71

13.65

13.64

13.67

13.73 13.95

14.24

19.8

17.5

16.4

15.4 15.1 15.2 15.4

15.8 16.1

16.5

0.0

1.5

3.0

4.5

6.0

7.5

9.0

10.5

12.0

12

13

14

15

16

17

18

19

20

0 2 4 6 8 10 12 14

最適蓄電池容量

[kW

h]

PV込みの年経費

[万円

/年]

PV容量 [kW]

電池有PV込み年経費

電池無PV込み年経費

最適蓄電容量kWhPV導入時の年間コスト

PV+蓄電池導入時の年間コスト

最適な蓄電池容量(右軸)

蓄電池あり:

最適PV容量が増加

蓄電池なし:

5kWが最適

• 年経費=買電費用(基本料金込み)-売電収入+蓄電池年経費+PV年経費

• PV・蓄電池工事費含まず

• PV価格20万円/kW・寿命25年、蓄電池価格6万円/kWh、電気料金が買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

6kWh

Page 35: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 34

(4)まとめ

以上の試算から得られた示唆をまとめる。

PVの余剰買取がないとき、蓄電池価格が9万円/kWh前後まで低下すれば、PVを保有している平均的な住宅において、蓄電池を導入したほうが蓄電池を導入しないよりも経済的メリットが発生するようになる。

蓄電池価格が低下するほど、需要家にとって経済的メリットが最大になる蓄電池容量は大きくなるが、6kWh前後でその傾向に変化がある。市販されている蓄電池のラインナップを鑑みても、6kWhが、自発的に導入される蓄電池容量の目安になる。

蓄電池の導入により経済的メリットが生じるかどうかは、各住宅の需要パターンにも依存する。

FITが終了しても、PV価格が20万円/kWの水準となっていれば、需要家はPV導入で経済的メリットが得られる。このときの最適PV容量は5kWである。

蓄電池なしに比較して、蓄電池導入のオプションがあるほうが、住宅当たりのPV導入容量を拡大することができる。住宅に対して最適な蓄電池容量は、9kWh程度で頭打ちとなる。

Page 36: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 35

Ⅰ.ストレージパリティの定義の設定

1. ストレージパリティの定義の考え方

2. 低圧需要家単位での、電力需要量と太陽光発電設備、蓄電池等の容量の関係

3. 系統バックアップのあり方について

4. 定置用蓄電池以外の蓄エネルギー機器について

Page 37: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 36

系統バックアップのあり方について

自発的に導入された蓄電池は、需要家の経済的メリットが最大になるように運転を行う。これは、常に必要な系統のバックアップを受けられる前提である。

低圧需要家にとって基本料金の削減効果は大きくないため、買電・売電電力を削減しようとするインセンティブはあまり働かない。

売買電料金が時間によって変わらないのであれば、昼から雨になる等で蓄電量が最大に達しないリスクを考慮すると、逆潮流が発生し始めた時にすぐ充電を始める運転が経済的である。同様に、放電しきれないリスクを考慮すると、逆潮流がなくなった時点ですぐ放電を始める運転が経済的である。

前節で行ったシミュレーションを用いて、特徴的な期間の蓄電池の運転パターン・系統電力の利用の例を示す。

①春の軽負荷期

②雨天時

③夏季

昼夜間値差が無いため、昼間のPV

からの充電のみ

シミュレーションに基づき充放電を行うとして、日平均充電量は1回/日未満

(雨天時等は満充電不可)

充放電効率は90%

寿命は15年

買売電価格を固定

買電29円・売電8円/kWh

蓄電池の運転パターン 蓄電池の条件 価格設定等

シミュレーションの条件

Page 38: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 37

0

1

2

3

4

5/1 5/2 5/3 5/4 5/5

買電 自家消費 売電 充電 放電 需要

0

1

2

3

4

3/14 3/15 3/16 3/17 3/18

買電 自家消費 売電 充電 放電 需要

①春の軽負荷期の蓄電池の運転パターン

春の軽負荷期は、需要が少ないがPV発電量が大きく、余剰電力や逆潮流が多く発生する時期である。

需要家にとって、逆潮流が発生し始めた時にすぐ充電を始める運転が経済的であるため、晴天の日には昼までに満充電となってしまうことが多い。

このため、逆潮流の年間最大値を減少させる効果は少ない。

充放電パターン(3月) 充放電パターン(5月)

満充電

満充電 満充電

満充電

満充電

満充電

満充電

逆潮流

最大値 満充電

満充電

放電しきれず

放電しきれず

[kWh/h] [kWh/h]

• 電気料金買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18

Page 39: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 38

0

1

2

3

4

6/8 6/9 6/10 6/11 6/12

買電 自家消費 売電 充電 放電 需要

0

1

2

3

4

11/24 11/25 11/26 11/27 11/28

買電 自家消費 売電 充電 放電 需要

②雨天時の蓄電池の運転パターン

雨天の日は充電量が十分でないため、買電での電力調達が必須となり、系統バックアップが不可欠である。

梅雨だが日射強度が大きい6月よりも、冬至前後の雨天日のほうがPV発電量が低下するために、系統依存度が高い。

買電価格が一定であれば深夜充電を行うことにもメリットはなく、雨天等の逆潮流が発生しない日には、蓄電池は稼働しない。

充放電パターン(6月) 充放電パターン(11月)

蓄電池

稼働なし

蓄電池

稼働なし

蓄電池

低稼働

蓄電池

低稼働

[kWh/h] [kWh/h]

• 電気料金買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18

Page 40: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 39

③夏季の蓄電池の運転パターン

家庭における年間の最大需要発生時刻は、在宅人数が多い夏の夜である。

下図の7月20日の例では、日中のPV発電量も多く満充電になったが、最大需要が発生する時刻前に放電しきっている。

下図の8月23日の例では、休日のため日中の負荷が大きく、ほとんど充電できず夕方~夜の需要が抑制できていない。

充放電パターン(7月) 充放電パターン(8月)

0

1

2

3

4

7/19 7/20 7/21 7/22 7/23

買電 自家消費 売電 充電 放電 需要

0

1

2

3

4

8/22 8/23 8/24 8/25 8/26

買電 自家消費 売電 充電 放電 需要

ネット負荷大(年間最大)

日中

負荷大

ネット負荷

大 満充電

[kWh/h] [kWh/h]

• 電気料金買電29円/kWh、売電8円/kWh

• 200軒平均の需要データを用いて分析

0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18

Page 41: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 40

Ⅰ.ストレージパリティの定義の設定

1. ストレージパリティの定義の考え方

2. 低圧需要家単位での、電力需要量と太陽光発電設備、蓄電池等の容量の関係

3. 系統バックアップのあり方について

4. 定置用蓄電池以外の蓄エネルギー機器について

Page 42: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 41

①定置用蓄電池以外の蓄エネルギー機器との特徴の比較

家庭の電気自動車・ヒートポンプ式給湯機なども、PVの余剰電力の充電に利用することができる。

2030年の普及容量は、定置用蓄電池よりも電気自動車やヒートポンプ式給湯器のほうが大きい。

一方で、これらの機器には、充電時間に制約がある。また、家全体の需要やPVの短周期変動に追従するような制御は行われていない。

定置用蓄電池 電気自動車(EV, PHEV) ヒートポンプ式給湯器

平均的機器の

1台当たりの容量

6kWh

2kW

24kWh *1

3kW(普通充電)*1

3kWh相当*3

1kW*3

2030年の普及見込 131万台 (後述するシナリオ)

960万台 (普及率16%*2, 6000万台を想定)

1400万台*2

2030年の普及見込

(総量)

786万kWh

262万kW

23,040万kWh

2,880万kW

4,200万kWh

1,400万kW

充電時間の制約 • 満充電時は充電不可 • 満充電時は充電不可

• 外出・走行時は充電不可

• 外出前に一定量充電が必要

• 充電可能量は走行距離に依存

• 満充電時は貯湯不可

• 給湯需要発生時刻前に一定量の貯湯が必要

• 貯湯可能量は給湯需要に依存

短周期変動緩和 • 一般に可能 • 現状製品では困難 • 現状製品では困難

*1 EV・PHV ロードマップ検討会 報告書, 2016年3月 *2 長期エネルギー需給見通し関連資料, 平成27年7月 *3 各社カタログ値等より想定

定置用蓄電池以外の蓄エネルギー機器との比較

Page 43: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 42

0

1

2

3

4

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000

逆潮流量

[kW

]蓄電池なし 定置用蓄電池あり

電気自動車あり ヒートポンプ式給湯器あり

②定置用蓄電池以外の蓄エネルギー機器の逆潮流量への影響

電気自動車とヒートポンプ式給湯器を、昼間の余剰電力吸収に用いたときの効果を試算した。

昼間に在宅している電気自動車(全体の25%)の充電を昼間に行う

ヒートポンプ式給湯器の50%の需要を昼間9時以降にシフトする

参考:資源エネルギー庁「電気自動車及びヒートポンプ給湯器の導入による需要創出の効果について」(2008年)

充電(貯湯)時間の制約を考えると、1台当たりの効果は定置用蓄電池が大きい。また後述するように運転方法を変化させることにより、年間最大逆潮流量を減らす運転も可能である。

注)

• 需要・蓄電池運転パターンは前節のシミュレーションに用いたものと同じ

• 電気自動車とヒートポンプ式給湯器の稼働パターンは、「資源エネルギー庁「電気自動車及びヒートポンプ給湯器の導入による需要創出の効果について」(2008年)」より。

これを年間一律としておいた(実際は、曜日・季節による変動がある)

• 世帯によって需要や機器稼働パターンが異なるが、その平均を示している

各蓄エネルギー機器利用時の逆潮流量への影響

(朝から充電する場合)

年間時間

Page 44: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 43

Ⅱ.ストレージパリティの定義を元にした、

再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析

1. 系統安定化への貢献

2. 再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

3. 送配電網の最適化への貢献

4. 需要家の防災対策への貢献

Page 45: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 44

(1)系統安定化への貢献分析の方法 ①分析のスコープ

本項目での実施内容は以下のとおり。

ストレージパリティの実現を前提に、蓄エネルギー機器を用いて再生可能エネルギー電気を自家消費をするケースとしないケースについて、一般送配電事業者が行う以下のサービスに対し、どのような変化を与えるか、3E(安定供給、経済効率性の向上、環境への適合)の観点から分析を行う。

A) 周波数調整

B) マクロ需給バランス調整

C) 配電網電圧・潮流調整

分析目的 今回実施する評価

ストレージパリティ後、家庭が蓄電池を導入することで、PVが起因となる短周期変動がどの程度抑えられるかを、必要となるLFC容量の観点から算出する

算出された短周期変動を、Task2のマクロ需給分析における必要LFC容量で考慮する

Task1:LFC容量へのインパクト分析

家庭が蓄電池を導入することによる、余剰電力の減少とL必要FC

容量の減少が、火力発電等の運転にどのようなインパクトがあるのかを明らかにする

火力発電の運転変化により、3Eの各効果が見込まれる

Task2:マクロ需給へのインパクト分析

一般家庭がPV+蓄電池を導入した際に、配電系統の電圧に対してどのようなインパクトがあるのかを明らかにし、その効果を3Eの観点(特にEconomic efficiencyの観点)で評価する

Task3:電圧問題へのインパクト分析

Page 46: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 45

(1)系統安定化への貢献分析の方法 ②本実施項目のアウトプットイメージ

本項目のアウトプットは、3Eの観点から表現する。それぞれのTaskから出されるインパクトは、下図のとおり。

3Eのマクロ的な観点からの効果は、マクロ需給分析からのアウトプットから出される。電圧インパクト分析からは、追加的に必要となるSVC等の電圧制御機器の削減コストの規模感が算出される。

Task1:

LFC容量への

インパクト分析

Task2:

マクロ需給への

インパクト分析

Task3:

電圧問題への

インパクト分析

必要となるLFC容量の削減分を評価し、マクロ需給分析のインプットとする(総合的な効果はマクロ需給分析と合わせて算出される)

3Eの観点からの評価項目

本実施項目のアウトプットイメージ

Energy Security

原子力・再エネの最大限活用による自給率向上効果

Environment

火力発電減少(原子力・再エネ最大限活用)によるCO2削減効果

火力発電の効率的運用によるCO2削減効果

Economic efficiency

火力発電減少(原子力・再エネ最大限活用)による燃料費削減効果

火力発電の効率的運用による燃料費削減効果

追加で必要となるSVC等の電圧制御機器のコスト削減効果

Page 47: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 46

82

205

573

268

49

283

13780

226

15

165

895

1,379

689

79

484433

199

1,136

40

229

456

41 40 18 31 57 4184

20

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄

導入量

[万kW

]

太陽光(住宅) 太陽光(非住宅) 風力

(2)系統安定化への貢献分析における想定 ①太陽光発電・風力発電の導入量

OCCTOは「広域系統整備委員会」における電力潮流シミュレーションで想定する2030年の地域別太陽光および風力発電の導入シナリオを公表しており、本分析では基本的に当該想定(OCCTOシナリオと呼ぶ)をベースに評価を行う [1] 。

全国合計量はエネルギー長期需給見通しの値と整合しており、太陽光では64GW、風力では10GW。

ただし、本調査では太陽光に関しては住宅用の導入量を約19GWと想定しているため(詳細はIII.1.節を参照)、OCCTOシナリオの補正を行う。

長期需給見通しの太陽光発電64GWの内訳は住宅用9GW、非住宅用55GWであるため、OCCTOシナリオの導入量を住宅・非住宅比率で補正した数値を採用する。

2030年の太陽光・風力発電導入量

[1] OCCTO 第18回 広域系統整備委員会 資料1 太陽光・風力シナリオ①

※住宅用太陽光の推計方法は別紙参照

Page 48: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 47

(2)系統安定化への貢献分析における想定 ②蓄電池の導入量

2030年における蓄電池の導入量は、「III.ソーラーシンギュラリティのインパクトに係る分析」(後述)において計算された3つのシナリオを採用する。

3つのシナリオ(上位、中位、下位)毎の導入割合、及び導入世帯数は下表のとおり。

ストレージパリティの定義に関わる分析の結果に基づき、PVを導入している需要家は、2kW/6kWhの蓄電池を導入すると

仮定している。

蓄電池導入

シナリオ

対応する

蓄電池価格 蓄電池導入率 住宅PV導入量 蓄電池導入量

上位 4万円/kWh 50%

1,919万kW

(426万世帯)

213万世帯

中位 6万円/kWh 31% 131万世帯

下位 8万円/kWh 15% 63万世帯

蓄電池の導入シナリオ

Page 49: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 48

(2)系統安定化への貢献分析における想定 ③蓄電池の運転ケース

需要家が導入する蓄電池の運転方法について、下図の3つのバリエーションを想定し、それぞれのケースにおけるインパクトを定量的に評価する。

この他にも、VPPのように統合制御されるなどの方策が考えられるが、ここでは扱わない。

ケース1:需要家メリット最大

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3/19 3/20

Reve

rse P

ow

er

Reverse Power Charge Discharge

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3/19 3/20

Reve

rse P

ow

er

Reverse Power Charge Discharge

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3/20 3/21

Reve

rse P

ow

er

Reverse Power Charge Discharge

ケース2:昼間充電 ケース3:逆潮一定以下

逆潮流に合わせて、朝から充電を開始する。満充電となった時点で充電を終了する

PVを保有している家庭が自身の経済的メリットを最大化させることを想定

ケース1の運転パターンについて、充電開始時間を10時にシフトし、満充電となった時点で充電を終了する

昼の余剰電力を吸収することを意図した運転パターンである

家庭からの逆潮流電力がある一定のラインを超えたら充電を開始するという方法

ここではこのラインを1.4kWと設定している 短周期変動の吸収を意図した運転パター

ンであると言える

運転パターンのイメージ 運転パターンのイメージ 運転パターンのイメージ

Page 50: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 49

(2)系統安定化への貢献分析における想定 ④シミュレーションで扱うシナリオとケース

蓄電池の運転ケース

ベースケース

ケース1 需要家メリット最大

(逆潮流に合わせて、朝から充電を開始)

ケース2 昼間充電

(充電開始時間を10時にシフトし、満充電となった時点で充電を終了)

ケース3 逆潮一定以下

(家庭からの逆潮流電力がある一定のラインを超えたら充電を開始)

蓄電池導入

シナリオ

上位 (蓄電池導入率50%)

― ○ ― ―

中位 (蓄電池導入率31%)

― ○ ○ ○

下位 (蓄電池導入率15%)

― ○ ― ―

導入なし ○ ― ― ―

本分析では、これまでに示した蓄電池の導入シナリオ及び運転ケースについて、感度分析を実施する。

実施するシミュレーションの条件は、下表のとおり。住宅用PV導入量は共通として、蓄電池導入シナリオやその運転ケースを蓄電池を変更する。

蓄電池の導入がない場合を、ベースケースとして算定し、これとの比較として、蓄電池導入による系統貢献を評価する。

シミュレーション対象となるシナリオとケース

Page 51: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 50

Ⅱ.ストレージパリティの定義を元にした、

再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析

1. 系統安定化への貢献

Task1:LFC容量へのインパクト分析

Task2:マクロ需給へのインパクト分析

Task3:電圧問題へのインパクト分析

2. 再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

3. 送配電網の最適化への貢献

4. 需要家の防災対策への貢献

Page 52: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 51

(1)実施内容の概要

<実施の目的>

ストレージパリティ後、家庭が蓄電池を導入することで、PVが起因となる短周期変動がどの程度抑えられるかを、必要となるLFC

容量の観点から算出する。

<実施方針>

再生可能エネルギーの連系可能量の短周期変動分の評価手法として一般的に知られている「代数的手法」を用いて評価を行う。

ベースケースとして蓄電池が導入されない条件下でのPVの短周期変動の計算を行い、その後、蓄電池の導入による効果を考慮した計算を行うことで、LFC容量に対するインパクトを把握する。

得られたPVの短周期変動抑制効果は、Task2の「マクロ需給へのインパクト分析」のインプット(前提条件)の一つとする。

諸条件の設定 ベースケース

の計算

蓄電池の導入によるインパ

クト分析の実施

- 各データの整理

(各変動量の設定や蓄電池

導入シナリオ、運転手法の定

義)

- 代数的手法により、蓄電池が

導入されていないケースにおける

PVの短周期変動を計算

(8760時間分)

- 蓄電池の導入による効果を考

慮した上で、PVの短周期変動

がどの程度抑制されるかを計算

- 各シミュレーション条件について

検討を行い、感度分析を実施

する

Task2「マクロ需給へのイン

パクト分析」へのインプット

- 得られた結果をTask2のマクロ

需給分析におけるLFC容量の

評価のインプットとする

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 53: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 52

需要変動量、風力変動量及びPV変動量は、シナリオにおいて設定された需要、風力発電及びPVの導入量について、Ogimoto et al. (2014) [1]に倣い、以下の条件式・想定で算出する。

今回のストレージパリティ時における検討という観点では、PV変動量をどのように評価するかが検討のイシューとなる。

(2) LFC容量計算のコンセプト

状態量 想定

需要変動量 対象とする時点での需要の3%

風力変動量 導入設備容量の10%

PV変動量 対象とする時点での出力の10%

[1] K.Ogimoto et al. (2014) Impact of variable renewable energy source integration into power system operation and implications for Japan's future

power market, CIGRE Symposium, Vol.134 No.4, 2014.

LFC容量  ≥  (需要変動量)2+(風力変動量)2+(PV変動量)2

合成変動量

必要となるLFC容量の条件式

各種変動量の想定

Page 54: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 53

(3) PV短周期変動計算結果 ①ベースケース 東京

2030年における需給構造について、蓄電池が導入されないと仮定した場合の東京エリアのPVの短周期変動の計算結果は下図のとおり。

PVの出力変動はその時点における出力に比例するため、昼間の短周期変動が多くなる。

季節別にみると、春から夏にかけてが変動量が多く、冬は少ないという傾向である。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0時

1時

2時

3時

4時

5時

6時

7時

8時

9時

10時

11時

12時

13時

14時

15時

16時

17時

18時

19時

20時

21時

22時

23時

PVの

短周

期変

動(

時間

帯別

平均

)[万

kW

]

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

PVの

短周

期変

動(

月別

平均

)[万

kW

]

PV短周期変動の時間帯別平均 PV短周期変動の月別平均

Page 55: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 54

(3) PV短周期変動計算結果 ①ベースケース 九州

九州エリアのPVの短周期変動の計算結果は下図のとおり。

PVの導入状況が東京と異なるために、プロファイルや絶対値が変わるものの、全体の傾向としては東京エリアと同様である。

PV短周期変動の時間帯別平均 PV短周期変動の月別平均

0

10

20

30

40

50

60

70

0時

1時

2時

3時

4時

5時

6時

7時

8時

9時

10時

11時

12時

13時

14時

15時

16時

17時

18時

19時

20時

21時

22時

23時

PVの

短周

期変

動(

時間

帯別

平均

)[万

kW

]

0

5

10

15

20

25

30

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

PVの

短周

期変

動(

月別

平均

)[万

kW

]

Page 56: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 55

(4)蓄電池のLFC容量に対するインパクトの考え方 ①短周期変動が抑制されるPV

短周期変動が抑制されるPVは、蓄電池を保有している住宅に導入されているものに限られる。

PV導入量と蓄電池導入比率の想定 短周期変動の取り扱い

全PV導入量

2030年における

住宅PV導入量

2030年における

非住宅PV導入量

蓄電池の導入しない家庭

蓄電池を

導入する家庭

31%(中位シナリオ)

69%(中位シナリオ) 1,919万kW

5,500万kW

短周期変動の想定に変化なし

蓄電池の導入による影響がないために、短周期変動は対象とする時点での出力の10%とする

短周期変動の想定に蓄電池の運転を考慮

蓄電池の運転が、PVの短周期変動を抑制する効果を考慮

蓄電池の短周期変動抑制効果の考え方は次ページ参照

Page 57: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 56

(4)蓄電池のLFC容量に対するインパクトの考え方 ②短周期変動の抑制の時間帯

PVと蓄電池を保有している住宅について、下図のような発電・充電プロファイルであった場合には、短周期変動が下図のように吸収されると考える。

このような考慮を行った際のPVの変動が、各時間帯においてどの程度少なくなるかを見ていく。

蓄電池のPV短周期変動吸収の考え方

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

逆潮流

(=PV発電電力ー負荷)

※簡易化のため、この図では放電の方向は記載していない

蓄電池の充電電力

蓄電池のkW上限値

(2kW)

蓄電池の満充電となる時点

(6kWhの充電がされるタイミング)

<Point1:逆潮流が2kW以下の時>

• 蓄電池は逆潮流分をそのまま吸収する

• 短周期変動も同時に吸収されるため、このような時は「PV短周期変動が見かけ上ゼロになる」と評価する

<Point2:逆潮流が2kWを超える時>

• 蓄電池は充電電力2kWで充電を行う

• 2kWを超える逆潮流分の変動を吸収することができない。そのため、このような時は「短周期変動はそのままである」と評価する

<Point3:満充電となった時>

• 満充電となって以降は、蓄電池はその日には充電しない。従って、それ以降は「PVの短周期変動はそのままである」と評価する

• 蓄電池が充電をしていない時も同様

運転ケース1(需要家メリット最大)の例

Page 58: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 57

(5)蓄電池考慮後のPV短周期変動計算結果 ①導入シナリオ分析・東京

蓄電池の運転ケースを運転ケース1と設定した際の、蓄電池の運転を考慮した東京エリアのPVの短周期変動は下図のとおり。

蓄電池の導入シナリオに対する感度を見るために、高位(50%)、中位(31%)、低位(15%)の結果を示している。

高位シナリオにおいて、最もPVの短周期変動抑制効果のパフォーマンスが高いことが見て取れる。

PVの短周期変動抑制効果は、逆潮流が多くなる傾向にある昼間・春季が高い。一方で、冬季などでは、逆潮流が少ないために蓄電池に充電されず、抑制効果が顕著に出てこない。

PV短周期変動の時間帯別平均 PV短周期変動の月別平均

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0時 2時 4時 6時 8時 10時12時14時16時18時20時22時

PVの

短周

期変

動(

時間

帯別

平均

[万kW

] ベースケース

高位・ケース1

中位・ケース1

低位・ケース1

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月P

Vの

短周

期変

動(

月別

平均

)[万

kW

]

ベースケース

高位・ケース1

中位・ケース1

低位・ケース1

Page 59: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 58

(5)蓄電池考慮後のPV短周期変動計算結果 ①導入シナリオ分析・東京

PV短周期変動のデュレーションカーブを、蓄電池の導入シナリオ別に比較した結果は下図のとおり。

高位シナリオでは顕著にPV短周期変動抑制効果がみられる。一方で、中位シナリオ、低位シナリオではさほど抑制効果が見られない。

PV短周期変動の最大値(5月18日12時:167万kW)については、蓄電池の導入有無にかかわらず、短周期変動抑制効果が見られなかった。この日は午前中の発電量も多く、12時になる前に蓄電池が満充電となってしまうためである。

高位シナリオ 中位シナリオ 低位シナリオ

0

50

100

150

200

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 中位・ケース1

0

50

100

150

200

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 高位・ケース1

0

50

100

150

200

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 低位・ケース1

Page 60: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 59

(5)蓄電池考慮後のPV短周期変動計算結果 ②導入シナリオ分析・九州

九州エリアでは、東京エリアほど蓄電池導入による短周期変動抑制効果が見られない。

これは、PVの住宅/非住宅比率が大きく関係している。即ち、九州エリアでは非住宅PVの割合が大きく、蓄電池の導入量が少ない。

高位シナリオ 中位シナリオ 低位シナリオ

PV短周期変動の時間帯別平均 PV短周期変動の月別平均

0

10

20

30

40

50

60

70

0時 2時 4時 6時 8時 10時 12時 14時 16時 18時 20時 22時

PVの

短周

期変

動(

時間

帯別

平均

[万kW

] ベースケース

高位・ケース1

中位・ケース1

低位・ケース1

0

5

10

15

20

25

30

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

PVの

短周

期変

動(

月別

平均

)[万

kW

]

ベースケース

高位・ケース1

中位・ケース1

低位・ケース1

0

20

40

60

80

100

120

140

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 中位・ケース1

0

20

40

60

80

100

120

140

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 高位・ケース1

0

20

40

60

80

100

120

140

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 低位・ケース1

Page 61: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 60

(5)蓄電池考慮後のPV短周期変動計算結果 ③運転ケース分析・東京

蓄電池の導入シナリオを中位(31%)に固定し、蓄電池の運転ケースを3つのパターンで変えたときの、蓄電池の運転を考慮した東京エリアのPVの短周期変動は下図のとおり。

PVの短周期変動抑制効果は、概ね「運転ケース3>運転ケース1>運転ケース2」の順序となる。

運転ケース2では、晴れの日は蓄電池が2kWの一定で運転されるため、短周期変動が取りに行けない。運転ケース1でも同様だが、運転ケース1の場合は朝の間で短周期変動を吸収するという時間帯が多いため、運転ケース2に比べて若干パフォーマンスが高い。

PV短周期変動の時間帯別平均 PV短周期変動の月別平均

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0時 2時 4時 6時 8時 10時 12時 14時 16時 18時 20時 22時

PVの

短周

期変

動(

時間

帯別

平均

[万kW

] ベースケース

中位・ケース1

中位・ケース2

中位・ケース3

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月P

Vの

短周

期変

動(

月別

平均

)[万

kW

]

ベースケース

中位・ケース1

中位・ケース2

中位・ケース3

Page 62: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 61

(5)蓄電池考慮後のPV短周期変動計算結果 ③運転ケース分析・東京

PV短周期変動のデュレーションカーブを、蓄電池の運転ケース別に比較した結果は下図のとおり。

運転ケース3が最も効果が顕著にみられる。

運転ケース2は運転ケース1に比べて、ベースケースとのかい離が少ないように見受けられる。これは前ページのとおりである。

運転ケース1 運転ケース2 運転ケース3

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

0

50

100

150

200

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 中位・ケース1

0

50

100

150

200

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 中位・ケース2

0

50

100

150

200

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 中位・ケース3

Page 63: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 62

(5)蓄電池考慮後のPV短周期変動計算結果 ③運転ケース分析・九州

九州エリアでは、東京エリアほど蓄電池導入による短周期変動抑制効果が見られないことは、蓄電池導入シナリオ分析の結果と同様。

運転ケース1 運転ケース2 運転ケース3

PV短周期変動の時間帯別平均 PV短周期変動の月別平均

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

0

10

20

30

40

50

60

70

0時 2時 4時 6時 8時 10時 12時 14時 16時 18時 20時 22時

PVの

短周

期変

動(

時間

帯別

平均

[万kW

] ベースケース

中位・ケース1

中位・ケース2

中位・ケース3

0

20

40

60

80

100

120

140

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 中位・ケース1

0

20

40

60

80

100

120

140

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 中位・ケース2

0

20

40

60

80

100

120

140

PVの短周期変動

[万k

W]

ベースケース 中位・ケース3

0

5

10

15

20

25

30

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

PVの

短周

期変

動(

月別

平均

)[万

kW

]

ベースケース

中位・ケース1

中位・ケース2

中位・ケース3

Page 64: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 63

Ⅱ.ストレージパリティの定義を元にした、

再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析

1. 系統安定化への貢献

Task1:LFC容量へのインパクト分析

Task2:マクロ需給へのインパクト分析

Task3:電圧問題へのインパクト分析

2. 再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

3. 送配電網の最適化への貢献

4. 需要家の防災対策への貢献

Page 65: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 64

(1)実施内容の概要

<実施の目的> 家庭が蓄電池を導入することによる、余剰電力の減少と必要LFC容量の減少が、火力発電の運転にどのようなインパクトがあるのかを明

らかにする。 この火力発電の運転変化等を、3E(Energy Security, Environment, Economic efficiency)の観点での評価を行う。

<実施方針> PVが大量に導入されると、時間帯によっては余剰電力が発生し再エネ出力を抑制せざるを得なくなる場合が生じる。また、PVの出力変

動に対応するために火力発電の運転(LFC容量確保)が必要であり、火力発電を十分に代替できない。 本分析では、需要家がPVに加えて蓄電池を保有することで、再エネ出力抑制や火力発電等の運転にどのようなインパクトがあるかを評

価する。 なお、現実の出力抑制はさまざまな制約のもと実施されているが、本分析ではマクロ的需給の点からの余剰分を抑制するとする。

当該評価に当たっては、三菱総研が保有しているシミュレーションツールを用いる。 具体的には、以下のフローに基づいて分析を実施する。

諸条件の設定 ベースケースの算定

ケース1:

需要家蓄電池の

マクロ需給バランス

貢献の算定

- シミュレーションの条件の

設定

- PV、蓄電池導入量の設

- PVが大量に導入された

際に、どの程度の火力発

電運転が行われるかを算

- 各需要家が蓄電池を保

有し、需要家の経済的メ

リットが最大になるよう運

用した際に、それが火力

発電運転をどの程度減ら

すかを計算

ケース2、3:

蓄電池の運転変更

時のマクロ需給バラン

ス貢献算定

- 蓄電池の運転ケースを変

えることで、左記の火力

発電運転の削減効果が

どの程度上がるかを評価

3Eの評価

- ケース1~3で得られた

結果をもとに、自給率向

上効果、火力燃料費削

減効果、CO2削減効果

を算出

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 66: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 65

(2)諸条件の設定 ①シミュレーションツールと入出力データ

電力会社エリア別、8760時間別に、発電可変費が最小となる火力の運転を決定するシミュレーションモデルである。

電源のディスパッチは以下の順番で行う。

1. まずはベース電源(原子力、地熱、一般水力)が供給される

2. 次に火力を、短周期変動に対する調整力(LFC容量)を確保しながら出力制御または停止しながら運転

3. 火力の出力制御または停止でも余剰電力が発生する場合、揚水における余剰電力の吸収、バイオマス発電の出力抑制、太陽光・風力発電の出力抑制の順で余剰電力を削減する

需給モデル 1時間毎に、ネットロードに対する発電可変費が最小となる火力の運転を決定 <条件> • 需給バランスの確保 • 短時間での対応力(LFC容

量)の確保

<入力データ>

需要 1時間別

供給

原子力発電 設備容量 年間稼働率

流込式水力発電 設備容量 月別稼働率

揚水発電 設備容量

火力発電 ユニット別の容量、燃料種、効率 燃料価格

太陽光・風力発電 設備容量 1時間別出力 LFC容量

再生可能エネルギー発電(上記以外)

設備容量 年間稼働率

<出力データ>

供給

火力発電 1時間別出力

太陽光・風力発電 1時間別出力抑制量

電力会社単位

• 自給率向上効果 • 火力燃料費削減効果 • CO2削減効果を算出

シミュレーションツールと入出力データ

Page 67: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 66

(2)諸条件の設定 ①シミュレーションツールと入出力データ -参考-

必要調整力の増減による年間発電量・抑制量の変化イメージ

蓄電池導入によりPV由来の必要LFC容量が減少すると、調整力確保に必要な火力発電が減少。

調整力確保に必要な火力が減少すれば、メリットオーダーにより抑制されていた再エネの一部が発電可能となる。

総設備容量

火力

(8)

再エネ

(7) 需要

(10)

設備

容量

調整力が不要の場合(仮想状態)

火力

(3)

再エネ

(7)

火力

(5)

調整力が必要な場合

(現状)

火力

(6)

再エネ

(4)

火力

(2)

再エネ

(3)

必要調整力が減少した場合

(蓄電池導入後)

火力

(5)

再エネ

(5)

火力

(3)

再エネ

(2)

<前提となる火力・再エネ容量> 単純なメリットオーダーで再エネが

全て入り、火力発電量のみが減少

火力で調整力を確保するため、

再エネ抑制が発生

蓄電池の導入で必要調整力が

減少することで、必要な火力量が

減少し、再エネが増加

実際に

発電できる

設備

必要調整力の増減による年間発電量・抑制量の変化イメージ

Page 68: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 67

(2)諸条件の設定 ②マクロ分析 前提条件一覧

マクロ分析の前提条件は下表のとおり。

シナリオ分析では、1)PV由来の必要LFC容量、2)電力需要、3)太陽光発電 のパラメータを変化させることで、蓄電池導入による影響を評価する。

ベースシナリオ 蓄電池導入シナリオ

調整力制約 必要調整力と保有調整力のバランスを1時間毎に評価。

LFC必要調整力:需要比3%、PV出力比10%、WT容量比10% ベースシナリオに比べて、PV由来のLFC必要調整力に蓄電池の影

響を加味(需要、WTはベースシナリオと同想定)

電力需要 2014年度の8760時間別の電力需要を想定。 ベースシナリオの電力需要に対して、蓄電池の放電パターンを加味

火力発電 既存および新設・増設計画中の発電所を設定。

原子力発電 長期エネルギー需給見通しの2030年度と同想定。

一般水力発電 第7回系統WGより設定。

揚水発電 第7回系統WGより設定。

太陽光発電 住宅用:本調査独自想定(詳細はⅢ.1.節を参照)

非住宅用:OCCTO※の太陽光シナリオ① ベースシナリオの出力に対して、蓄電池の充電パターンを加味

風力発電 OCCTO※の風力シナリオ①

地熱発電 長期エネルギー需給見通しの2030年度と同想定。

バイオマス発電 長期エネルギー需給見通しの2030年度と同想定。

地域間連系線 第7回系統WGより設定。

※ 電力広域的運営推進機関「広域系統長期方針 中間報告書」(2016)

マクロ分析の前提条件

Page 69: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 68

(2)諸条件の設定 ②3Eへの寄与の計算方法(CO2削減)

蓄電池による発電量変化[億kWh]から、石炭、LNG、石油火力の削減量を想定し、各削減量に、それぞれのCO2排出原単位を掛けることで蓄電池によるCO2削減効果を計算する。

火力の種類

蓄電池による発電量変化

(ベースケース比) CO2排出原単位

石炭

476[g-CO2/kWh]

マクロ分析の計算結果

[億kWh]

LNG マクロ分析の計算結果

[億kWh]

石油 マクロ分析の計算結果

[億kWh] 695[g-CO2/kWh]

864[g-CO2/kWh]

▲○○[億t-CO2/kWh]

▲○○[億t-CO2/kWh]

▲○○[億t-CO2/kWh]

CO2削減効果

CO2排出原単位の出所)

• 石炭、LNG:総合資源エネルギー調査会長期エネルギー需給見通し小委員会第5回会合 資料3(2015)における従来火力の排出原単位

• 石油:電力中央研究所(2009)

Page 70: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 69

(2)諸条件の設定 ②3Eへの寄与の計算方法(燃料費削減)

CO2削減計算と同様、蓄電池による発電量変化[億kWh]及び燃料投入量削減効果から、石炭、LNG、石油火力の

削減量を想定し、各削減量に、それぞれの燃料単価を掛けることで蓄電池による燃料費削減効果を計算する。

火力の種類

蓄電池による発電量変化

(ベースケース比) 燃料単価

石炭

10[円/kWh]

マクロ分析の計算結果

[億kWh]

LNG マクロ分析の計算結果

[億kWh]

石油 マクロ分析の計算結果

[億kWh] 19.3[円/kWh]

5.1[円/kWh]

▲○○[兆円]

▲○○[兆円]

▲○○[兆円]

燃料費削減効果

燃料単価の出所)

• 第6回発電コスト検証ワーキンググループ資料1(2015)におけるモデルプラントの燃料費

Page 71: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 70

(2)諸条件の設定 ②3Eへの寄与の計算方法(自給率向上)

長期需給見通しで想定される2030年の全一次エネルギー供給量は489[百万kl]であるが、マクロ分析で計算した再生可能エネルギー増分だけ、自給率が向上する。

再生可能エネルギーの増加量を一次エネルギー換算し、長期需給見通しの489 [百万kl]と比較することで蓄電池によるエネルギー自給率の変化量を算出する。 電力量[kWh]及び熱量[MJ]から一次エネルギー供給[kl]への換算は、一次エネルギー換算係数[MJ/kWh]と原油換算キロリットル[MJ/kWh]

の各換算係数を用いることで求めることができる。

9.76[MJ/kWh]

●●[百万kl]

蓄電池による再エネの発電増加量から一次エネルギー供給増加量への換算

2.58×10-5[kl/MJ]

蓄電池による

再エネの増加量[億kWh]

一次エネルギー

換算係数 原油換算キロリットル

【計算方法】

蓄電池によるエネルギー自給率の増分[%] = ●●[百万kl] ÷ 489[百万kl]

出所)エネルギー・経済統計要覧(2014) 出所)経済産業省「エネルギーの使用の合理化等に関する法律 省エネ法の概要」(2014)

マクロ分析の計算結果

Page 72: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 71

-3.00

-2.50

-2.00

-1.50

-1.00

-0.50

0.00

0.50

1.00

0時 2時 4時 6時 8時 10時 12時 14時 16時 18時 20時 22時

Net

Lo

ad[k

Wh

/世帯

]

ベースケース ケース1 ケース2 ケース3 (参考)PV考慮前

(3)蓄電池導入によるネットロードの変化 ①1世帯需要

蓄電池を導入することで、太陽光発電出力および蓄電池運転を考慮した後の需要(ネットロード)が変化する。ここではネットロードを以下の式により算出する。

ネットロード = 需要 - (太陽光発電出力 - 蓄電池充電量) - 蓄電池放電量

九州における5月平均の1時間別のネットロード(蓄電池を導入した1世帯に着目)を、蓄電池運転ケース別に示す。

ベースケースでは日中以外はネットロードが正であるが、蓄電池を導入することでネットロードが正となるのは0時~7時頃までになる。

ケース1ではすぐに蓄電池への充電が開始されるため、逆潮開始時間がケース2,3に比べて遅い。

ケース2,3ではケース1よりも充電終了時間が遅く、特にケース3では負荷平準化の効果がある。

九州における5月平均の世帯当たりネットロード(蓄電池運転ケース別)

ケース2,3で

逆潮開始

ケース2,3で

蓄電池運転開始

ケース1では10時頃から逆潮開始

いずれのケースでも

夕方から放電開始

ケース1では13時頃に

ほとんど充電が終了

ケース2,3ではケース1よりも

遅い時間まで充電が継続

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 73: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 72

(3)蓄電池導入によるネットロードの変化 ②全国需要

前頁のネットロードの定義に倣い、全国における5月の1時間別平均のネットロードを蓄電池導入シナリオおよび運転ケース別に示す。

今回、住宅における蓄電池のみを想定しているため、住宅以外も含めた全国の需要に対する蓄電池の効果は大きくはないが、蓄電池導入シナリオ別および運転ケース別にネットロードの変化が確認できる。

蓄電池運転ケース1では、蓄電池導入量が多いほど午前中のネットロードが上昇し、夕方には低下する傾向が確認できる。

運転ケース別に見ると、ケース1は朝7時頃から充電を開始する一方、ケース2,3は10時頃から充電開始する様子が確認できる。また、ケース2,3

の方がケース1よりも日中の遅い時間まで充電しており、負荷平準化に貢献している。

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

0時 2時 4時 6時 8時 10時 12時 14時 16時 18時 20時 22時

Net

Lo

ad[万

kWh

]

ベースケース ケース1上位 ケース1中位 ケース1下位

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

0時 2時 4時 6時 8時 10時 12時 14時 16時 18時 20時 22時

Net

Lo

ad[万

kWh

]

ベースケース ケース1中位 ケース2中位 ケース3中位

7時頃から

充電開始

※ 縦軸のスケールの底がゼロでない点に注意

蓄電池導入量が多いほどNet Loadが上昇

12時前頃に

フル充電

夕方に放電開始し、

導入量が多いほどNet Loadは減少

⇒1日の負荷平準化

ケース1は

7時頃から

充電開始

ケース2,3は

10時頃から

充電開始

ケース1では

12時頃に

フル充電

ケース2,3では

14時頃に

フル充電

いずれのケースでも

夕方から放電

全国における5月の1時間平均ネットロード

(蓄電池導入シナリオ別)

全国における5月の1時間平均ネットロード

(蓄電池運転ケース別)

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 74: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 73

(3)蓄電池導入によるネットロードの変化 ③1日当たり蓄電池充電量

運転ケース別・地域別の年間平均充電量(1世帯・1日当たり)を確認すると、ケース1・ケース2では充電量に大きな違いはなく、ケース3ではケース1、2に比べて約半分の充電量である。

地域別に確認すると、ケース1、2では中部での平均充電量が最も大きく、北陸で最も低い。

ケース3では沖縄の平均充電量が高く、これは1.4kWh以上の逆潮が発生する時間が他地域よりも多いためと考えられる。

九州における1日当たりの充電量を、運転ケース別にヒストグラムに示す。

ケース1、ケース2では日数分布に大きな変化がない一方、ケース3では全く蓄電池が運転されない日数が年間の約1/3である。

需要家は自然状態では朝から充電開始すると考えられるが、10時から運転を開始してもトータルの充電量には大きな変化がない。

1世帯・1日当たり充電量 九州における運転ケース別1日当たり充電量のヒストグラム

0

1

2

3

4

5

6

7

ケース1 ケース2 ケース3

年間平均充電量

[kW

h/世帯

]

北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄

※ 効率90%を想定しているため、最大充電量は6.67kWh/世帯

ケース1、2の充電量に大きな差は無い

ケース3では充電量が他ケースの約半分

014 16 18 21 20 19

257

014 18 18 24 18 20

253

132

58

3321 20 22 28

51

0

50

100

150

200

250

300

0kWh 1kWh

未満

2kWh

未満

3kWh

未満

4kWh

未満

5kWh

未満

6kWh

未満

6.7kWh

未満

日数

蓄電池充電量 [kWh/世帯]

ケース1 ケース2 ケース3

ケース1、2の日数分布に大きな差は無い

ケース3では充電量が

少ない日数が多い

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

平均

充電

量[k

Wh

/日.世

帯]

Page 75: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 74

(4)分析結果:3Eへの影響評価

蓄電池の導入による3Eへの寄与を、蓄電池の導入がない場合との比較として、定量的に評価した。

自給率、CO2削減、燃料費削減のいずれの観点でも、長期需給見通しで示された2030年の目標値に対しては0.1~0.3%程度の寄与度である。

寄与度は蓄電池導入量に大きく依存し、運転パターンの変化は0.01%程度の影響を有する。

ケース1に比べてケース2では自給率が増加(昼間の運転により再エネ抑制がより減少)し、CO2の削減効果も高い一方、燃料費削減量は低下(LFC抑制分が小さい)する。

ケース3ではLFC抑制が大きく、CO2削減・燃料費削減には効果があるが、自給率増加という観点ではケース1、2よりも寄与度が小さい。

シナリオ 上位

(ケース1)

中位

(ケース1)

下位

(ケース1)

ケース1

(中位)

ケース2

(中位)

ケース3

(中位)

3E

への

寄与

自給率増加 +0.09 [%ポイント]

(0.36%)

+0.06 [%ポイント]

(0.23%)

+0.03 [%ポイント]

(0.12%)

+0.06 [%ポイント]

(0.23%)

+0.06 [%ポイント]

(0.25%)

+0.05 [%ポイント]

(0.22%)

CO2削減 ▲83 [万-CO2トン]

(0.23%)

▲54 [万-CO2トン]

(0.15%)

▲27 [万-CO2トン]

(0.07%)

▲54 [万-CO2トン]

(0.15%)

▲56 [万-CO2トン]

(0.16%)

▲59 [万-CO2トン]

(0.16%)

燃料費削減 ▲169 [億円]

(0.32%)

▲111 [億円]

(0.21%)

▲55 [億円]

(0.10%)

▲111 [億円]

(0.21%)

▲110 [億円]

(0.21%)

▲113 [億円]

(0.21%)

蓄電池導入量 蓄電池運転パターン

※ ()内の%はそれぞれ2030年の目標値(長期需給見通し)に対する比率 自給率:24.3% CO2排出量:3.6億tCO2 燃料費:5.3兆円

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

3Eへの影響評価(蓄電池の導入がない場合との比較)

Page 76: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 75

Ⅱ.ストレージパリティの定義を元にした、

再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析

1. 系統安定化への貢献

Task1:LFC容量へのインパクト分析

Task2:マクロ需給へのインパクト分析

Task3:電圧問題へのインパクト分析

2. 再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

3. 送配電網の最適化への貢献

4. 需要家の防災対策への貢献

Page 77: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 76

(1)実施内容の概要

<実施の目的>

ストレージパリティが実現した時、需要家(特に家庭)がPV+蓄電池を導入した際に、配電系統の電圧に対してどのようなインパクトがあるのかを明らかにし、その効果を3Eの観点(特にEconomic efficiencyの観点)で評価する。

<実施方針>

PVが大量に導入されると、電圧対策が必要となる。本分析では、需要家がPVに加えて蓄電池を保有することで、この電圧対策がどの程度削減されるかを評価するアプローチをとる。

当該評価に当たっては、早稲田大学が保有しているシミュレーションツールを用いる。

ソーラーシンギュラリティを超えた後、需要家は、自身の経済的メリットを最大化するように蓄電池を動かすことが想定され、蓄電池の動かし方(制御方法)によっては、電圧に対してインパクトが少ないと考えられる。ここでは、最も電圧問題がクリティカルとなる時間帯(昼間)に動かすように誘導した際に、どの程度インパクトが向上するかも合わせて分析を行う。

諸条件の設定 ベースケースの算定

ケース1:

需要家蓄電池の

電圧貢献の算定

- 配電系統モデル化

- シミュレーションの条件の

設定

- PV、蓄電池導入量の設

- PVが大量に導入された

際に、どの程度の系統対

策(SVCの設置)が必

要かを算定

- 静特性解析を実施する

ことで全体の傾向を把握

し、より詳細な分析として

動特性解析を実施する

- 各需要家が蓄電池を保

有し、需要家の経済的メ

リットが最大になるよう運

用した際に、それがSVC

の容量をどの程度下げる

のかを計算

ケース2、3:

蓄電池の運転変更

時の電圧貢献算定

- 逆潮の大きい時間帯に

蓄電池を充電したり、需

要家蓄電池を電圧制御

(余剰吸収)に活用す

ることを想定することで、

左記の電圧貢献効果が

どの程度上がるかを評価

電圧対策削減効果

金額の試算

- ケース1~3で得られた結

果をもとに、電圧対策削

減効果をEconomic

efficiencyの観点で評価

Page 78: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 77

(1)実施内容の概要 -参考:電圧調整器について-

電圧調整器として、SVRおよびSVCの主な機能について以下に示す。

現行はSVR(逆潮時タップ固定型)にて電圧調整が行われているが、太陽光発電の逆潮流が増加し性能が不足する場合は、柔軟に無効電力を制御できるSVCを追加設置することになると考えられる。

高圧自動電圧調整器

SVR (Step Voltage Regulator)

無効電力補償装置

SVC (Static VAR Compensator)

装置概要 • 配電線に直列に挿入し、通過電流に基づき負荷中心点電圧一定制御により変圧器1次側のタップを自動的に変え、2次側の電圧を制御する。

• 現在設置されているものは「逆潮時タップ固定型」が主流。「分散型電源対応型」もある。

• 任意の電圧が出力できる電圧型インバータを連系リアクタンスを介して、配電線に並列に接続することで構成されている。

• インバータ電圧を配電線電圧より大きめにすることで進み無効電力が、逆に小さめにすることで遅れ無効電力を配電線に出力することができる。

機能 • 定常的な電圧上昇の抑制(逆潮流、分散電源)

• 定常的な電圧降下の抑制

• SVRでは補償が不可能な分散型電源やモータの起動・停止時に突発的に生じる配電線の急峻な電圧変動を補償

電圧調整時間 • 1分程度の電圧調整 • 瞬時電圧変動対策

電圧調整器の種類

写真出所)財団法人エネルギー総合工学研究所

「新電力ネットワークシステム実証研究 新電力ネットワーク技術に係る総合調査 経過報告 」2006年

Page 79: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 78

配電系統

モデル

配電系統に

関わるデータの

設定方法

(2)本検討で用いる配電系統モデル

本検討では、戸建て住宅を想定し、住宅地区主体の実態に即した配電系統でのシミュレーションを行うため、以下のモデルを構築している。

実配電線に関して、配電系統に関わるデータについて得られている情報を採用することで、より実態に近い条件下でのシミュレーションを可能としている。

SS 1 7

2

35

4

6

SVR

8 9

10

13

11

12

14A FEDCB K ML

JIG H N

em

d

c

b

a

e

g

fh

l

k

j

i

幹線亘長 6.1km分岐長 3.7km軽負荷 1132kWSVR 1段

項目 設定根拠 項目 設定根拠

線路形態 実配電線情報 太陽光出力 実測値

線路長 実配電線情報 低圧線に均等配置

SVR整定値 実配電線情報 高低圧比率 実配電線情報

高圧負荷カーブ 電協研平均

低圧負荷カーブ 実測値

配電系統モデルの想定

Page 80: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 79

(3)ベースケースの静特性解析 ①PVの導入割合と電圧逸脱の関係

軽負荷期の断面で、PV逆潮流によってどの程度の電圧上昇が起こるかを評価するために、需要家蓄電池及びSVCが導入されない時の静特性解析を行っている。

PVが低圧線路に均等に配置されていると仮定し、PVの導入量を増加させた時の電圧変動の結果を下図に示す。下図からは、低圧需要家の90%以上にPVが連系されると、電圧逸脱が発生することがわかる。

96

98

100

102

104

106

108

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

電圧

(V

)

ノード

PV=0%

PV=50%

PV=90%

PV=100%

適正電圧範囲

PV連系量増加

PVの導入割合と電圧逸脱の関係

ノード12と13の間にSVRがあるため、電圧の傾向が変化している。

Page 81: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 80

(3)ベースケースの静特性解析 ②電圧逸脱回避に必要なSVC容量の算出

軽負荷期の断面で、低圧需要家全てにPVが導入された際に電圧逸脱を回避できるSVC容量を、静特性解析から評価している。

線路に電圧制御装置SVRが1台設置されていることから、電圧制御区間をLRT区間、SVR区間とし、SVCはそれぞれの区間の末端2か所に等容量を設置した。

結果は下図のとおり。SVC容量を200kVA(100kVA×2)とすることで、電圧逸脱が回避されることが分かる(黄色)。

SVCの容量(出力)と電圧逸脱の関係

Page 82: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 81

(4)動特性解析のための条件設定 ①PVと負荷のプロファイル

以上の検討より、今回の検討では、対象とする配電線の需要家(住宅)の全てがPVを導入しているというケースを想定する。

次なるステップとして、動特性解析によって、1日のPV、負荷変動特性を基にPV逆潮流+PV・負荷変動による電圧上昇・変動の影響を評価する。

PVと需要のプロファイルは特にクリティカルなケース(最も逆潮が大きくなるタイミング)をベンチマークとするために、軽負荷期の10日間(3月14日~3月20日)の実データを用いる。

PVのプロファイル 負荷のプロファイル

一軒当たり3.5kWのPVを導入することを想定

低圧需要家(479軒)全てがPVを導入することを想定

高圧負荷 (14軒)の定格容量: 630kVA 低圧負荷(479軒)の定格容量: 502kW

Page 83: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 82

(4)動特性解析のための条件設定 ②シミュレーションケースの設定

本検討で行う動特性解析のシミュレーションケースは下表のとおりである。

シミュレーションケース

※蓄電池容量・出力は( 6kWh, 2kW)

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

シミュレーションケース 住宅の

PV導入率

電圧制御機器台数 住宅の

蓄電池導入率 シミュレーションの目的

SVR SVC

ベースケース

(ケース0)

(i) 0% 1 0 0 SVRの制御パラメータの妥当性確認

⇒PV非導入時に受電点電圧を逸脱させないことを確認

(ii) ~100% 1 0 0 電圧逸脱の生じない最大のPV導入量の算定

(iii) 100% 1 1 0 PV導入系統の電圧管理に必要なSVC容量の算定

蓄電池運転ケース1 100% 1 0/1 住宅の

15%,31%,50% 需要家メリット最大化のために蓄電池を運転した場合の評価

蓄電池運転ケース2 100% 1 0/1

住宅の31%

(150軒)

昼間に充電をシフトさせた場合の評価

蓄電池運転ケース3 100% 1 0/1 系統貢献のために蓄電池を用いた場合(逆潮流量を常に1.4kW以下にする)の系統貢献度の評価

蓄電池運転ケース3‘ 100% 1 0/1 ケース2とケース3を組み合わせたときの場合の評価

Page 84: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 83

(5)ベースケースの動特性解析 ①必要となるSVC導入量算定の考え方

戸建て住宅における蓄電池の系統電圧への効果を検証するため住宅地区を主体とした実配電系統に基づくモデルを構築し、低圧需要家が全てPVを導入したと設定する。PVからの逆潮流により、配電系統の電圧が管理幅から逸脱してしまうPV導入量の定量評価を行う。

この逸脱が起こらないようにするために必要となるSVC(高圧系統の末端に設置)の導入量(kVA)をシミュレーションから求める。

PV導入の想定

全ての低圧需要家がPVを導入したと想定

電圧が管理幅を逸脱してしまう

電圧制御機器

として、

SVCを導入

SVC

SVCの導入により、電圧逸脱がなくなる

電圧逸脱がなくなった際のSVCの挙動が下図のとおりとなったとする。その振れ幅の最大値を、「必要となる

SVCの容量」とする

必要となるSVCの容量算定

kVar

必要となる

SVCの容量

(ケース0)

時間

Page 85: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 84

(5)ベースケースの動特性解析 ②受電電圧の推移 (i)PV非導入時

ベースケースの動特性解析のファーストステップとして、1日の負荷変動特性を基に、負荷変動による電圧上昇・変動の影響を評価した。

結果は下図のとおり。PVが導入されていない系統では、電圧逸脱は生じていないことがわかる。

高圧配電系統

LRTの 制御区間

SVRの 制御区間

低圧配電系統

PV導入住宅

PV非導入時の受電電圧の動特性解析結果

Page 86: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 85

(5)ベースケースの動特性解析 ②受電電圧の推移 (ii)PV導入時

ベースケースの動特性解析のセカンドステップとして、1日のPV、負荷変動特性を基に、PV逆潮流+PV・負荷変動による電圧上昇・変動の影響を評価した。

結果は下図のとおり。全住宅(479軒)にPVが導入された際、PV逆潮流が最大となる日(3/14)に電圧逸脱が発生しており、既設の電圧制御装置(SVR)では適正電圧に制御できないことが明らかとなった。

3/14 全住宅(479軒)の受電点電圧 (PV導入量=100%)

Page 87: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 86

(5)ベースケースの動特性解析 ②受電電圧の推移 (iii)PV導入・SVC設置時

前ページに見た電圧逸脱を回避するために、SVCの設置を行う。まずは、設置箇所及び容量について検討を行った。

SVC設置箇所は、電圧逸脱が生じないように決定している(6,600V一定制御)。

また、SVCの容量は、一般的なSVC容量300kVAを按分し、初期値として各SVC150kVAとして、最低限必要なSVC

容量を算出した。

SVC設置箇所

SVC1150kVA

SVC2容量:150kVA

LTR区間 SVR区間

Page 88: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 87

(5)ベースケースの動特性解析 ②受電電圧の推移 (iii)PV導入・SVC設置時

前ページのSVC設置条件の下、ベースケース(PV100%導入時)のPV逆潮流により電圧逸脱が発生した条件において、高圧系統の中間、末端にSVCを設置したときの電圧上昇・変動の影響を、動特性解析によって評価した。

シミュレーション結果を下図に示す。全住宅(479軒)にPVが導入された際、PV逆潮流が最大となる日(3/14)に電圧逸脱を回避するのに必要なSVC容量は130kVA×2 = 260kVAとなる。

電圧逸脱回避に必要なSVC容量の算出結果

Page 89: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 88

(6)蓄電池運転ケース1 ①シミュレーションの考え方

ストレージパリティ後に、需要家が蓄電池を導入することを想定する。ここでは、 PVを導入している低圧需要家のうち31%が蓄電池を導入したという状況を想定する。この設定の下、配電系統シミュレーションを実施する。

需要家の蓄電池は最も設備利用率が高くなるよう充放電を行うこととなる。配電系統の電圧への影響(効果)は、 PVの逆潮流時のピーク電流抑制にどれだけ寄与(充電)できるかに依る。すなわち、逆潮流のピーク時間帯と需要家の充電スケジュールの整合が重要となることに加え、蓄電池のSOCの状態に依っては確実な動作は保証されないため効果は限定的と予想される。

需要家は、自身の経済的メリット最大化のために蓄電池を動かすと想定。

即ち、「ストレージパリティ」で得られた蓄電池の容量(kWh、kW)と、蓄電池の運転スケジュールを用いる。

蓄電池導入の想定

B B B B B B B B B

kWh容量:

5kWh(要精査)

kW容量:

2.5kWh(要精査)

運転スケジュール:

系統対策削減効果の考え方

ベースケースの設定に左記を加えて

シミュレーションを

実施

kVar

時間

必要となる

SVCの容量

(ベースケース)

必要となる

SVCの容量

(ケース1)

必要となるSVCの容量が減る

この差分を「系統対策削減効果」とする

ベースケースのSVCの動き

ケース1のSVCの動き

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3/19 3/20

Reve

rse P

ow

er

Reverse Power Charge Discharge

PV4.5kW, Battery:30,000yen/kWh, 2.25kW, 4.75kWh

PV

充電

放電

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 90: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 89

(6)蓄電池運転ケース1 ②シミュレーション結果

ベースケース(PV100%導入・SVC非設置時)のPV逆潮流により電圧逸脱が発生した条件において、需要家の蓄電池(PV

導入需要家31%に導入を想定)を、最も設備利用率が高くなるよう逆潮流発生時点ですぐに充電を始める場合の配電系統の電圧への影響(効果)を評価している。

下の図に示すように、蓄電池が充電している時間帯には系統の一部で電圧改善効果が見られるが、時間帯や場所については限定的であり、 SVC削減効果はほとんどないと評価できる。

ケース1のシミュレーション結果

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 91: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 90

(7)蓄電池運転ケース2 ①シミュレーションの考え方

ケース1での蓄電池の運転スケジュールでは、蓄電池は朝と夕方ごろに充電をするということになってしまい、最も逆潮流が出る昼間に充電を行わない。これでは、効果が少ないということが予想される。

従って、「蓄電池を昼間に充電をする」という何かしらの誘導があったと仮定し、その条件下でケース1と同様のシミュレーションを実施する。

SVCの出力変動幅は、ケース1に比べてさらに減少することが期待されが、ケース1と同様にPVの逆潮流時のピークの抑制にどれだけ寄与(充電)できるかは蓄電池の出力およびその時の蓄電池のSOCの状況に依るが、確実な動作は保証されないため効果が限定的と予想される。これを「ケース2の系統対策削減効果」と呼ぶこととする。

系統対策削減効果の考え方

kVar

時間

ベースケース ケース1

ケース1に比べて、さらに系統対策削減効果が大きいと考えられる

ベースケースのSVCの動き

ケース2のSVCの動き

必要となる

SVCの容量

(ケース2)

ベースケースの設定に左記を加えて

シミュレーションを

実施

運転スケジュールの変更

ケース1:

電池がこのような動きになるように誘導するケースを

想定する

ケース2:

ケース1の朝、夕方の充電を昼間にシフトさせることを想定。

導入する蓄電池の容量はケース1同様、「ストレージパリティの定義」において算出されたkWh、kWを用いる。

どのように誘導するかは、例えばメーカへの指導や、インセンティブ付け等が考えられるが、ここでは議論を行わない。

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3/19 3/20

Reve

rse P

ow

er

Reverse Power Charge Discharge

PV4.5kW, Battery:30,000yen/kWh, 2.25kW, 4.75kWh

PV

充電

放電

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3/19 3/20

Rev

erse

Pow

er

Reverse Power Charge Discharge

PV4.5kW, Battery:30,000yen/kWh, 2.25kW, 4.75kWh

PV

充電

放電

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 92: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 91

(7)蓄電池運転ケース2 ②シミュレーション結果

ベースケース (PV100%導入・SVC非設置時)のPV逆潮流により電圧逸脱が発生した条件において、ケース1の充電時間をPVのピーク時間帯にシフトした際の配電系統の電圧への影響(効果)を評価している。

下の図に示すように、蓄電池が充電している時間帯には系統の一部で電圧改善効果が見られケース 1よりは電圧逸脱が緩和されているものの、時間帯や場所については限定的であり、SVC削減効果は小さいと評価できる。

ケース2のシミュレーション結果

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 93: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 92

(8)蓄電池運転ケース3 ①シミュレーションの考え方

ケース1、2では、需要家の蓄電池の容量全てを需要家の目的で使用するため、電圧制御の確実な動作が保証されないなど効果が限定的との課題がある。

ケース3では需要家側に導入した蓄電池容量全てを用いて電圧制御を行うことを想定する。すなわちPVの逆潮流時のピークの抑制効果を目的として、蓄電池の充放電制御を行う。

これにより、SVCの出力変動幅が減少することが期待される。SVCの変動幅減少分は、蓄電池の導入によるSVCの代替効果としてみることができるため、これを「ケース3の系統対策削減効果」と呼ぶこととする。

需要家が導入する蓄電池を、最大限電圧制御に貢献させることを想定。

具体的には、PV逆潮流のピーク抑制を行うよう、需要家の蓄電池を用いて充放電制御を行う。

需要家の逆潮流を監視し、蓄電池の容量(kWh、kW)をピーク抑制に用いる。

蓄電池制御の変更 系統対策削減効果のイメージ

シミュレーションを

実施

ケース4

需要家は、自身の経済的メリット最大化のために、自身の保有する蓄電池を運転させることを想定

ケース1

ケース2

系統対策

削減効果

(kVA)

ケース2 ケース3 ケース1

最大限電圧制御に貢献させることで、

削減効果の増加が期待できる

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 94: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 93

(8)蓄電池運転ケース3 ②シミュレーション結果

ベースケース (PV100%導入・SVC非設置時)のPV逆潮流により電圧逸脱が発生した条件において、需要家側に導入した蓄電池容量全てを用いて電圧制御を行う際の配電系統の電圧への影響(効果)を評価している。

下の図に示すように、系統貢献のために蓄電池が充電を行うことで大幅な電圧改善効果が見られた。

蓄電池設置個所は電圧逸脱が解消されているものの、系統の一部で電圧逸脱が生じているため、SVCに置き換えることはできないが、SVC削減効果(300kVA→160kVA)はあると評価できる。

ケース3のシミュレーション結果

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 95: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 94

(8)蓄電池運転ケース3 ③ケース2とケース3の感度分析(ケース3‘)

ケース2とケース3の感度分析を実施するために、ケース2での蓄電池の運転スケジュールのうち、ケース3の系統電圧貢献の割合を1/4、1/2、3/4と増やした際のシミュレーションを実施した。

結果は下図のとおり。これらを「ケース3‘」と呼ぶ。

ケース2とケース3の感度分析結果

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 96: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 95

(9) 最大電力逸脱量とSVC削減量のまとめ

下の図に示すように、系統貢献度に依らず電圧逸脱が発生している。これは、蓄電池の導入率が31%で電圧改善効果が限定的なため、SVCを全て取り除くことはできないが、いくらかのSVC削減効果は表れている。

電圧逸脱なし

• ケース0(i)(PV導入なし) SVRの制御により電圧逸脱回避

電圧逸脱あり

• ケース0(ii)とケース1、2、3

蓄電池導入効果により、電圧逸脱箇所の

一部の時間帯が解消されるため電圧逸脱量は

ケース0(ii) >ケース1>ケース2>ケース3

SVCの制御により電圧逸脱回避

住宅用蓄電池導入によるSVC削減効果

(ケース0(iii)の260kVAと比較)

• ケース1:削減効果なし

• ケース2:80kVA(31%)削減

• ケース3:100kVA(38%)削減

• ケース3’:100kVA(38%)削減

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

Page 97: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 96

(10) 電圧対策削減効果金額の試算

エネルギー総合工学研究所(2006)[1]によると、SVCのkVA単価は5万円/kVAである。

前ページの結果を考慮すると、全住宅にPVが導入されるような配電線について、需要家が蓄電池を導入した際、電圧対策として必要となるSVC容量の削減効果は、1配電線あたり下表のような結果となる。

今回採用した配電系統モデルは、電気共同研究の検討をベースとしており、全国の高圧配電線のうち、約20%(44/223)が、今回採用した配電系統モデルとコンフィグレーションが合致している。また、エネルギー総合工学研究所(2006)[1]によると、全国の高圧配電線の回線数は、架空・地中合わせて61,690本存在するので、今回のシミュレーションと同様の状況が起こりうる配電線は、全国に12,172本ある。

今回の分析においては、1配電線に接続されている家庭の90%以上がPVを導入しているという仮定を置いている。このような集中的な導入が起こった場合、上記に示す蓄電池による電圧制御機器削減効果がみられることになる。

[1] エネルギー総合工学研究所, 「新電力ネットワークシステム実証研究 新電力ネットワーク技術に係る総合調査 経過報告 【第一部】電力ネットワーク技術実証研究に係わる経過報告」(2006)

蓄電池の運転ケース 蓄電池の導入シナリオ 削減できたSVCの容量

[kVA/1配電線]

SVC容量削減効果

[百万円/1配電線]

ケース1

高位 0 0

中位 0 0

低位 0 0

ケース2 中位 80 4

ケース3 中位 100 5

※蓄電池の運転ケース ケース1:需要家メリット最大、ケース2:昼間充電、ケース3:逆潮一定以下

電圧対策削減効果金額の試算

Page 98: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 97

Ⅱ.ストレージパリティの定義を元にした、

再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析

1. 系統安定化への貢献

2. 再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

3. 送配電網の最適化への貢献

4. 需要家の防災対策への貢献

Page 99: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 98

(1)再生可能エネルギーの導入拡大への貢献の考え方 ①系統WGの考え方

家庭での蓄電池の自発的な導入拡大によって太陽光発電電力の自家消費が拡大することで、再生可能エネルギーの接続可能量が増加することが期待される。

新エネルギー小委員会 系統WGにおいて、再生可能エネルギーの接続可能量の計算方法が示されている。

1発電所当たりの再生可能エネルギーの出力制御日数・時間数に一定の上限を課した上で、接続可能量を算出している。

出所)新エネルギー小委員会 系統ワーキンググループ(第8回)資料(2016年10月14日)

系統WGによる接続可能量の計算の方法

① 太陽光・風力の出力が大きい状況では、火力電源を安定供給に必要な最低出力とする。・・・(A)

② その上で、電気の供給量が需要量を超過する場合、まずは揚水運転を実施し、できる限り余剰の再エネ電気を吸収。・・・(B)

③ それでもなお、太陽光・風力の余剰電力が発生する場合は、年間30日、年間360時間(太陽光)、年間720時間(風力)を上限とする出力制御を実施。・・・(C)

④ 1発電所当たりの再エネ電気の出力制御日数が年間30日、年間360時間(太陽光)、年間720時間(風力)に達するまで、太陽光発電・風力発電を受入れることとし、「接続可能量」を算定。・・・(D)

Page 100: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 99

(1)再生可能エネルギーの導入拡大への貢献の考え方 ②推定の方法

家庭での自発的な蓄電池導入と自家消費拡大は、接続可能量を定める要因のうち、需要パターンの変形や、出力の短周期変動(2σ出力)の緩和に寄与する。

家庭での自発的な蓄電池導入によりマクロ的に出力制御量が削減できるとき、許容される出力制御量を従来水準と同じとする場合には、導入可能な再生可能エネルギー量が拡大できると見なせる。

前述の「マクロ需給へのインパクト分析」における、再生可能エネルギーの出力制御量に関する分析結果を用いて、導入可能量増加への寄与を推定した。

再生可能エネルギーの導入拡大への貢献の考え方

出力制御量 年間●%減

(蓄電池導入が無い場合との比較) 再生可能エネルギー導入可能量 ■%増

■=(1/(1-●/100)-1)

家庭での自発的な

蓄電池導入が無い場合

家庭での自発的な

蓄電池導入がある場合 家庭での自発的な

蓄電池導入がある場合

1kW当たりの出力制御量が同じ

出力制御量 X kWh/1kW

Page 101: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 100

(2)再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

前述の「マクロ需給へのインパクト分析」における、再生可能エネルギーの出力制御量に関する分析結果を用いた、再生可能エネルギーの導入可能量増加への寄与の推定結果は、下表のとおり。

蓄電池導入量が大きいほど、再生可能エネルギー導入可能量増加への寄与も大きい。

運転パターンの変化による違いは±0.1GW程度であるが、昼間の余剰電力を積極的に吸収するケース2では、比較的効果が大きい。

蓄電池稼働時間中は風力発電の出力制御にも影響するため、わずかに風力発電の導入可能量も増加する。

再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

シナリオ 上位

(ケース1)

中位

(ケース1)

下位

(ケース1)

ケース1

(中位)

ケース2

(中位)

ケース3

(中位)

太陽光発電

(74GW) +2.9[GW]

(+4.0%)

+1.9[GW]

(+2.5%)

+0.9[GW]

(+1.3%)

+1.9[GW]

(+2.5%)

+2.0[GW]

(+2.7%)

+1.8[GW]

(+2.4%)

風力発電

(10GW)

+0.1[GW]

(+0.6%)

+0.0[GW]

(+0.4%)

+0.0[GW]

(+0.2%)

+0.0[GW]

(+0.4%)

+0.0[GW]

(+0.5%)

+0.0[GW]

(+0.3%)

蓄電池導入量 蓄電池運転パターン

Page 102: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 101

Ⅱ.ストレージパリティの定義を元にした、

再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析

1. 系統安定化への貢献

2. 再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

3. 送配電網の最適化への貢献

4. 需要家の防災対策への貢献

Page 103: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 102

①ストレージパリティが送配電網の設備形成に与える影響

需要家が蓄電池を導入が電力システムに与えるインパクトを、短周期変動やマクロ需給バランス、電圧の観点から見てきたが、その他にも、下記に示すようなインパクトが考えれる。

ただし、これらの効果が意図どおり出るかについては、いくつかの条件を考慮する必要があり、ケースバイケースである。今後精査が必要となる。

ストレージパリティが送配電網の設備形成に与えると考えられるインパクト

期待される効果 考慮すべき事項

送配電線潮流制約の緩和 重潮流となるのは、地方部における送電線や変電所が主であり、都市部に比べ需要が少ない。

どの程度の効果があるのかの吟味が必要。

バンク逆潮流の緩和

対象とするバンクに連系されている需要家が相当数蓄電池を導入する必要がある。

現在のバンク逆潮流の主な発生要因は、非住宅PVによるものである。住宅PVの寄与度がどの程度あるのかの評価が必要。

離島・へき地等、高供給コスト地域への供給の合理化

対象となる地域の需要家が蓄電池を導入しなくてはならない。

送配電網が合理化されるのは、対象地域がオフグリッドになった状態でないと実現できない。

対象地域の詳細な情報が必要となる。

需要減による送配電設備のスリム化・

投資繰延べ効果

後述するように、一方で「デススパイラル」による電気事業収益の悪化と合わせた評価が必要となってくる。

実現するためには、蓄電池需要家のネットロードのプロファイルを適切に把握することが必要。

需要家の自発的な蓄電池導入を、ロングタームの設備計画にどのように反映させるかが課題。

Page 104: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 103

②「デススパイラル」の助長の可能性

太陽光発電等の分散型電源が拡大するにつれ、下記に示す「デススパイラル」の状態に陥ることが懸念されている。

ストレージパリティにより需要家が蓄電池を導入することで、自家消費の割合が増大し、送配電系統の利用量自体が減少するため、デススパイラルはさらに助長される可能性がある。

送配電網のデススパイラル

出所)送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討WG 第1回資料3

電力システムより供給を受ける需要家の負担増大

PV+蓄電池を導入する需要家の更なる増大

送配電事業が高コスト事業となる。分散型電源に対して競争力低下

もたらされる影響

Page 105: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 104

③デススパイラル対策としての料金制度の検討の事例

需要家の自家消費が進むことで、電気事業者の投資回収が難しくなるという課題は各国でも起きている。

これに対し、各国では料金体系の再構築を試みている状況。送配電事業に対する影響分析は、これらの効果を包括的に吟味する必要がある。

基本料金と従量料金の比率見直し(スペイン)

出所)送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討WG 第3回資料3

スペインの配電料金は、コスト構造をよりよく反映するために、2014

年2月より、固定料金の割合を増やしている。

分散電源向けの新たな料金体系の検討(米国)

米国NARUCは、分散型電源の普及の際に検討すべき電気料金体系について、複数の案を提示している。

(NARUC Manual on Distributed Energy Resources Rate

Design and Compensation)

料金体系 概要

Demand Charges 最大の電力消費量(kW)に応じた固定料金

Fixed Charges

and Minimum Bills 従量料金の他に、系統接続に対する固定料金や

最低チャージを設定し、それを上乗せする

Standby and

Backup Charges

PV等の自家発需要家について、発電設備が計画的もしくは突発的に発電しない際に、系統バックアップを受けることに対する対価としての料金

固定料金及び従量料金から成る

Interconnection

Fees/Metering

Charges

系統連系費用、メータ設置費用を徴収する

Page 106: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 105

Ⅱ.ストレージパリティの定義を元にした、

再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析

1. 系統安定化への貢献

2. 再生可能エネルギーの導入拡大への貢献

3. 送配電網の最適化への貢献

4. 需要家の防災対策への貢献

Page 107: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 106

需要家の防災対策への貢献 アンケートの概要

蓄電池導入による需要家防災対策への貢献度合いの金銭価値換算のため、アンケートを実施した。

調査名 需要家の防災対策への貢献に関するアンケート調査

目的 停電による一般家庭における被害の内容、金銭的被害額の算定(戸建住宅に居住) PV+蓄電池による防災対策(停電回避)の金銭的価値の算定・評価

⇒ストレージパリティの需要家防災対策への貢献の定量化に利用

調査対象・ 回答数

現在、戸建住宅に居住する全国の男女 計1,000人(8居住地域各125人)

主な 結果

PV+蓄電池により、停電時でも電力が利用できる機能に対する支払意志を示した人の割合は、補償する停電回避時間が長くなるにつれ増加する。10分程度の停電に対する停電回避機能については、12.4%程度の人が支払意思があると回答。1時間程度では20%強、3時間程度では30%強、6時間程度では40%弱に増加する。ただし停電時間が6時間を超すと、停電回避機能に対する支払意思を示した人の割合は大きく伸びず、頭打ちに。

PV+蓄電池により、停電時でも電力が利用できる機能に対する支払意思額(支払意思なし含む)[円/月]は、全国平均で、10分程度の停電で55[円/月]、1時間程度の停電で96[円/月]。停電時間の増加と支払意思額の増加は、ほぼ比例関係にあり、24時間程度では655[円/月]。

なお、全国の戸建住宅に居住する家庭における停電による金銭的被害額は、10分程度の停電で約800[円/回]、1時間程度の停電で約2,500[円/回]

停電回避機能に対する支払意思額(支払意思なし含む、[円/月])

停電時間

10分間 1時間 3時間 6時間 12時間 24時間

地域

北海道 54 75 142 306 777 456

東北 44 85 157 250 380 578

関東 70 129 206 341 452 939

中部 74 110 202 271 380 699

関西 32 58 104 213 308 354

中国 45 74 133 224 338 892

四国 19 46 93 158 254 341

九州沖縄 49 94 148 233 322 430

全国平均 55 96 164 269 391 655

(参考)支払意思ありのみ

436 465 552 700 951 1505

0% 50% 100%

10分程度の停電

1時間程度の停電

3時間程度の停電

6時間程度の停電

12時間程度の停電

24時間程度の停電

0円(利用したいと思わない)

300円/月

500円/月

1,000円/月

1,500円/月

2,000円/月

3,000円/月

4,000円/月

5,000円/月

5,000円/月 以上

停電回避機能に対する支払意思額(月額)の割合 (N=1000) (1地域 N=125、全国 N=1000)

Page 108: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 107

(1)調査項目 ①調査フロー

PV+蓄電池の防災(停電回避)対策としての価値を金銭評価するため、以下の項目について調査した。

(1)一般家庭における停電による被害の内容および想定される金銭的被害額[円/回]

(2)PV+蓄電池により停電時でも電力が利用できる機能に対する支払意思額[円/月]

過去の電中研調査(後述)や電気保安統計などを参考に停電時間の長さや停電被害額・支払意思額の選択肢を設定した。

≪Step1≫

停電による金銭的被害額

(1)停電時間別による想定される金銭的被害額[円/回]の聞き取り。

10分程度の停電

1時間程度の停電

3時間程度の停電

6時間程度の停電

12時間程度の停電

24時間程度の停電

≪Step2≫

停電回避機能に対する支払意思額

≪Step3≫

属性との相関分析

(2)PV+蓄電池により、停電時でも電力が利用できる機能に対する支払意思額[円/月]を停電時間別に聞き取り。

10分程度の停電

1時間程度の停電

3時間程度の停電

6時間程度の停電

12時間程度の停電

24時間程度の停電

防災対策の金銭的価値の分析フロー

停電による金銭的被害、停電回避機能に対する支払意思ともに、どういった需要家属性と相関があるか考察。

居住地(地域/都道府県)

計画停電の経験有無

など

Page 109: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 108

(1)調査項目 ②設問票概要

以下の5問を想定した。

回答者は、ウェブ上の画面で示された各問に対し、選択肢方式にて回答する。(一部、数値回答方式あり)

アンケート調査 設問票概略

質問No. 質問内容 回答選択肢

Q.1 PVを所有しているか 所有/未所有

Q.2 蓄電池を所有しているか 所有/未所有

Q.3 過去に計画停電を経験したことがあるか ある / ない

Q.4 Q.5

停電が発生した場合、以下に示す停電時間それぞれについて、どの程度の金銭的被害を想定するか

停電時間長さ

• 10分間程度の停電

• 1時間程度の停電

• 3時間程度の停電

• 6時間程度の停電

• 12時間程度の停電

• 24時間程度の停電

想定被害額 • 0円(損害なし) • 500円 • 1,000円 • 2,000円 • 3,000円 • 4,000円 • 5,000円

• 10,000円 • 15,000円 • 20,000円 • 30,000円 • 40,000円 • 50,000円 • 50,000円以上

⇒Q.7にて数値回答

Q.6 Q.7

自宅にPV+蓄電池を導入することで、「停電時でも一定の時間、電力が利用できる機能」が利用可能とした場合、1か月当たりの利用料金がどの程度までであれば利用するか

月間支払意思額

• 0円 (利用したいと思わない)

• 300円/月 • 500円/月 • 1,000円/月 • 1,500円/月 • 2,000円/月

• 3,000円/月 • 4,000円/月 • 5,000円/月 • 5,000円/月 以上

⇒Q.9にて数値回答

Page 110: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 109

(1)調査項目 ③停電時間の設定

停電時間の選択肢の設定に際しては、過去の電中研調査や電気保安統計などを参考とし、「10分程度」、「1時間程度」、「3時間程度」、「6時間程度」、「12時間程度」、「24時間程度」に設定した。

なお、電力保安統計では、10分以上1時間未満を、10分以上30分未満と30分以上1時間未満に区分している。

停電発生からの経過時間の設定

~10分 3時間~6時間 1時間~3時間 10分~1時間 6時間~

~10分 3時間~6時間 1時間~3時間 10分~1時間 6時間~

~10分 3時間~ 1時間~3時間 10分~30分 30分~1時間

電力中央研究所

「電力サービスに関する

国内の一般家庭・ 事業所調査」

本調査

電力中央研究所

「首都圏大停電

一般家庭調査」

平成14年度

電気保安統計

事故発生箇所別供給

支障事故件数表

0 10分 30分 1時間 3時間 6時間 12時間 24時間

Page 111: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 110

(1)調査項目 ④停電による金銭的被害額-選択肢の設定-

停電時間別に、想定される金銭的被害額[円/回]を聞き取った。

本調査では、回答者にとっての回答し易さを考慮して、選択肢方式とし、回答者は0円~50,000円の範囲の複数の金額から、停電時に想定する被害額を1つ選択する。選択肢の額が増加するにつれ、選択肢間の差額も徐々に増加するように選択肢を設定する。(差額と金額の総体割合を考慮)

過去の電中研のアンケート調査では、停電による想定被害額を数値回答方式を採用しているが、慶應義塾大のアンケート調査(停電時の生活継続効果が居住者にもたらす経済的便益の評価)では、複数の金額帯を示す選択肢方式を採用している。

なお、50,000円超の被害額を想定する回答者のため、想定被害額として50,000円以上を選択した回答者は、想定被害額を数値回答する。

停電による想定被害額

0円(損害なし)

500円

1,000円

2,000円

3,000円

4,000円

5,000円

10,000円

15,000円

20,000円

30,000円

40,000円

50,000円

50,000円以上⇒Q.4にて数値回答

1,000円刻み

5,000円刻み

10,000円刻み

500円刻み (参考)慶応大学アンケート調査

• 損害なし

• 1,000円未満

• 1,000円以上2,000円未満

• 2,000円以上3,000円未満

• 3,000円以上4,000円未満

• 4,000円以上5,000円未満

• 5,000円以上10,000円未満

• 10,000円以上15,000円未満

• 15,000円以上20,000円未満

停電時間の長さ

10分間程度の停電

1時間程度の停電

3時間程度の停電

6時間程度の停電

12時間程度の停電

24時間程度の停電

Page 112: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 111

(1)調査項目 ④停電による金銭的被害額 《参考》既存文献レビュー

停電による需要家への影響に関して、電力中央研究所が過去に以下の3つの調査を実施している。これらの結果について、同所報告書「需要家から見た供給信頼度の重要性と停電影響」(2007年)で評価を行っている。

(a) 日本全国の一般家庭・事業所を対象に、仮に停電が発生した場合に想定しうる被害額について、アンケート調査

(b) 首都圏大停電(2006年)の影響を受けた一般家庭を対象に、実際に発生した被害額について聞き取り

(c) 北米大停電(2003年)の影響を受けた業務用・産業用需要家を対象に、実際に発生した被害額について聞き取り

上記報告書では、(a)と(b)の比較(平時の想定額と実発生額との比較)、および(a)と(c)の比較(日米間比較)による評価も行っている。

調査名 (a) 電力サービスに関する

国内の一般家庭・事業所調査 (b) 首都圏大停電一般家庭調査

(c) 北米大停電による

業務・産業用需要家の停電被害調査

調査主体 電力中央研究所 電力中央研究所 電力中央研究所

調査時期 2005年11月 2006年9月8~10日 2003年11月~12月

調査対象 日本全国の一般家庭、事業所

2006年8月14日の首都圏大停電の影響を受けた地域の一般家庭

※ 停電発生から完全復旧まで

4時間42分(停電を認識していない一般家庭は除外)

2003年8月14日の北米大停電の影響を受けた従業員50人以上の業務産業用需要家

調査方法 質問紙郵送調査 電話質問調査 電話質問調査

有効回答数 一般家庭2,736件、事業所1,911件 一般家庭1,035件(回答率32.7%) 業務・産業用需要家 604件

主な

調査項目

一般家庭の仮想的な停電被害額 停電時間帯別

事業所(低圧/高圧/特別高圧)の仮想的な停電被害額

停電時間帯別(瞬停含む)

業種別 など

一般家庭の実際の停電被害額

停電時間帯別

停電被害の状況

停電対策の現状

停電対応への満足度 など

業務・産業用需要家の実際の停電被害額

停電時間帯別

業種別 など

出所)電力中央研究所「需要家から見た供給信頼度の重要性と停電影響」(2007年)

<参考>既存文献レビュー 「需要家から見た供給信頼度の重要性と停電影響」

既存文献による停電影響調査

Page 113: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 112

(1)調査項目 ④停電による金銭的被害額 《参考》既存文献レビュー

<参考>続き

電力中央研究所が過去に日本全国の一般家庭を対象に実施したアンケート調査(電力サービスに関する国内の一般家庭・事業所調査)の結果では、仮に停電が発生した場合に想定しうる1時間当たりの平均被害額は、 1,706円/hと算出されている。また、上記調査では、停電時間の長さそれぞれに対して、1時間換算した被害額は、停電時間が長くなるほど漸減するとの結果が得られた。

また、同所が過去に、 2006年の首都圏大停電の影響を受けた一般家庭を対象に実施したアンケート調査(首都圏大停電一般家庭調査)の結果では、停電による1時間当たりの平均被害額は、2,439円/hと算出されている。

停電時間に対する平均被害額および停電コスト単価

注)5%トリム平均値に基づき集計

※「1時間平均被害額」および「停電コスト単価」については、たとえば「10分以上1時間未満」と「1時間以上3時間未満」の閾値である1

時間周辺での重複を排除すべく、5%トリム平均値を算出している

出所)電力中央研究所「需要家から見た供給信頼度の重要性と停電影響」(2007年)

2006年 首都圏大停電による一般家庭の金銭的被害額

1時間当たり平均被害額

= 2,439円/h

Page 114: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 113

(1)調査項目 ④停電による金銭的被害額-停電被害と停電時間の関係-

回答者には、各停電時間に対する停電被害のイメージを示した。

10分間程度の停電による停電被害のイメージは下記のとおり。

トラブル 説明

家事・家電

電気製品の使用不可 TVや洗濯機などの電気製品が使えない。

エアコン停止による暑さ・寒さ エアコンによる空調が使えなくなり、夏季や冬季にはご家庭の室温をコントロールできなくなる。

上下水道の断水(ポンプの停止) ポンプの停止により、蛇口から水が出ない。また、一部のトイレは水を流せない。

照明の使用不可 ご家庭の照明が点灯せず、室内が暗くなる。

ガス機器の使用不能 ガスを使った給湯器や暖房機器が使用できない。

料理の中断・中止 特にオール電化のご家庭ではコンロを使用できない。また、電子レンジやオーブンレンジが使用できない。

情報・通信

PC使用不可・データへのアクセス不可 デスクトップPCの電源が落ち、作業中のデータが消失・破損したり、ハードディスクの不具合が生じる。

固定電話の不通 固定電話から電話を掛けることができない。

在宅医療機器の停止・故障 人工透析器、吸入器等ご家庭で使用する医療機器が使えなくなったり、故障したりする。

生命・安全 停電回復後の火災 (電熱機器・ロウソクなど)

停電時回復時に通電状態になった電熱機器や、停電時に使用していたロウソクが原因となって火災が発生する。

Page 115: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 114

(1)調査項目 ④停電による金銭的被害額-停電被害と停電時間の関係-

1時間程度の停電による停電被害のイメージは下記のとおり。

トラブル 説明

家事・家電

電気製品の使用不可 TVや洗濯機などの電気製品が使えない。

エアコン停止による暑さ・寒さ エアコンによる空調が使えなくなり、夏季や冬季にはご家庭の室温をコントロールできなくなる。

上下水道の断水(ポンプの停止) ポンプの停止により、蛇口から水が出ない。また、一部のトイレは水を流せない。

照明の使用不可 ご家庭の照明が点灯せず、室内が暗くなる。

ガス機器の使用不能 ガスを使った給湯器や暖房機器が使用できない。

料理の中断・中止 特にオール電化のご家庭ではコンロを使用できない。また、電子レンジやオーブンレンジが使用できない。

電気自動車の充電停止 電気自動車の充電ができない。

情報・通信

PC使用不可・データへのアクセス不可 デスクトップPCの電源が落ち、作業中のデータが消失・破損したり、ハードディスクの不具合が生じる。

固定電話の不通 固定電話から電話を掛けることができない。

在宅医療機器の停止・故障 人工透析器、吸入器等ご家庭で使用する医療機器が使えなくなったり、故障したりする。

携帯電話の電源切れ 携帯電話の充電がなくなり、携帯電話による通信ができなくなる。

生命・安全 停電回復後の火災 (電熱機器・ロウソクなど)

停電時回復時に通電状態になった電熱機器や、停電時に使用していたロウソクが原因となって火災が発生する。

その他 ペットへの被害 熱帯魚の水槽用のエアーポンプが停止するなど、ご家庭のペットへの被害が生じる。

赤字:10分程度の停電からの追加項目

Page 116: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 115

(1)調査項目 ④停電による金銭的被害額-停電被害と停電時間の関係-

3時間程度の停電による停電被害のイメージは下記のとおり。

トラブル 説明

家事・家電

電気製品の使用不可 TVや洗濯機などの電気製品が使えない。

エアコン停止による暑さ・寒さ エアコンによる空調が使えなくなり、夏季や冬季にはご家庭の室温をコントロールできなくなる。

上下水道の断水(ポンプの停止) ポンプの停止により、蛇口から水が出ない。また、一部のトイレは水を流せない。

照明の使用不可 ご家庭の照明が点灯せず、室内が暗くなる。

ガス機器の使用不能 ガスを使った給湯器や暖房機器が使用できない。

料理の中断・中止 特にオール電化のご家庭ではコンロを使用できない。また、電子レンジやオーブンレンジが使用できない。

電気自動車の充電停止 電気自動車の充電ができない。

情報・通信

PC使用不可・データへの アクセス不可

デスクトップPCの電源が落ち、作業中のデータが消失・破損したり、ハードディスクの不具合が生じる。

固定電話の不通 固定電話から電話を掛けることができない。

在宅医療機器の停止・故障 人工透析器、吸入器等ご家庭で使用する医療機器が使えなくなったり、故障したりする。

携帯電話の電源切れ 携帯電話の充電がなくなり、携帯電話による通信ができなくなる。

セキュリティシステムの停止 バッテリーにより一定時間は機能するが、長時間の停電では、緊急信号が送信できない、セキュリティが稼働しないなどの可能性がある。

生命・安全 停電回復後の火災 (電熱機器・ロウソクなど)

停電時回復時に通電状態になった電熱機器や、停電時に使用していたロウソクが原因となって火災が発生する。

その他 ペットへの被害

熱帯魚の水槽用のエアーポンプが停止するなど、ご家庭のペットへの被害が生じる。

植物への被害 温度管理等が必要な植物が被害を受ける。

赤字:1時間程度の停電からの追加項目

Page 117: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 116

(1)調査項目 ④停電による金銭的被害額-停電被害と停電時間の関係-

6時間以上の停電による停電被害のイメージは下記のとおり。

トラブル 説明

家事・家電

電気製品の使用不可 TVや洗濯機などの電気製品が使えない。

エアコン停止による暑さ・寒さ エアコンによる空調が使えなくなり、夏季や冬季にはご家庭の室温をコントロールできなくなる。

上下水道の断水(ポンプの停止) ポンプの停止により、蛇口から水が出ない。また、一部のトイレは水を流せない。

照明の使用不可 ご家庭の照明が点灯せず、室内が暗くなる。

ガス機器の使用不能 ガスを使った給湯器や暖房機器が使用できない。

料理の中断・中止 特にオール電化のご家庭ではコンロを使用できない。また、電子レンジやオーブンレンジが使用できない。

電気自動車の充電停止 電気自動車の充電ができない。

冷蔵庫・冷凍庫内の食料品の廃棄 庫内の温度が上昇し、中身の食品を廃棄しなければならなくなる。

情報・通信

PC使用不可・データへの アクセス不可

デスクトップPCの電源が落ち、作業中のデータが消失・破損したり、ハードディスクの不具合が生じる。

固定電話の不通 固定電話から電話を掛けることができない。

在宅医療機器の停止・故障 人工透析器、吸入器等ご家庭で使用する医療機器が使えなくなったり、故障したりする。

携帯電話の電源切れ 携帯電話の充電がなくなり、携帯電話による通信ができなくなる。

セキュリティシステムの停止 バッテリーにより一定時間は機能するが、長時間の停電では、緊急信号が送信できない、セキュリティが稼働しないなどの可能性がある。

生命・安全 停電回復後の火災 (電熱機器・ロウソクなど)

停電時回復時に通電状態になった電熱機器や、停電時に使用していたロウソクが原因となって火災が発生する。

その他

ペットへの被害 熱帯魚の水槽用のエアーポンプが停止するなど、ご家庭のペットへの被害が生じる。 植物への被害 温度管理等が必要な植物が被害を受ける。 非常用備品の使用 (食品、水、携帯ラジオなど)

長時間の停電では、食品・水等の非常用食品や携帯ラジオ・ブランケットの非常用備品を消費する。

赤字:3時間程度の停電からの追加項目

Page 118: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 117

(1)調査項目 ⑤停電回避機能に対する支払意思額

ついで、PV+蓄電池により、停電時でも電力が利用できる機能(停電回避機能)に対する、1月当たりの支払意思額[円/

月]を停電時間別に聞き取った。

停電回避機能に対する支払意思額[円/月]の選択肢の最大値は、5,000円/月(60,000 円/年)に設定した。

5,000円/月以上を支払う意思がある回答者は、直接数値回答する。

停電回避機能に対する支払意思額

0円(利用したいと思わない)

300円/月(年間利用料金に換算すると、3,600円/年)

500円/月(年間利用料金に換算すると、6,000円/年)

1,000円/月(年間利用料金に換算すると、12,000円/年)

1,500円/月(年間利用料金に換算すると、18,000円/年)

2,000円/月(年間利用料金に換算すると、24,000円/年)

3,000円/月(年間利用料金に換算すると、36,000円/年)

4,000円/月(年間利用料金に換算すると、48,000円/年)

5,000円/月(年間利用料金に換算すると、60,000円/年)

5,000円/月 以上

(年間利用料金に換算すると、60,000円/年 以上)

⇒Q.6にて数値回答

停電時間の長さ

10分間程度の停電

1時間程度の停電

3時間程度の停電

6時間程度の停電

12時間程度の停電

24時間程度の停電

Page 119: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 118

(2)調査結果 ①停電による金銭的被害額

<停電時間の長さと、想定被害額との関係>

停電時間が長くなるにつれ、停電による金銭的被害が生じると回答した者の割合が高くなる。

「10分程度の停電」で金銭的被害が生じると回答した人は約34%にとどまるが、「1時間程度の停電」で50%弱、「3時間程度の停電」で約58%、「12時間程度の停電」で約72%と上昇する。

ただし、停電時間が長くなるにつれ、金銭的被害が生じると回答する人の割合の増加率は小さくなり、被害額の内訳のみ高額にシフトしていく傾向が見られる。

回答者の75%弱は、24時間程度の長時間の停電が発生しても金銭的被害は生じないと回答している。

停電時間別の想定被害額の分布(N=1000)

Page 120: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 119

(2)調査結果 ①停電による金銭的被害額

<停電時間および金銭的被害が発生すると回答した人の割合の関係>

停電時間、および停電時間それぞれに対し金銭的被害が発生すると回答した人の割合をそれぞれ、横軸・縦軸とし、下図のとおりプロットした。

金銭的被害が発生すると回答した人の割合は、停電時間に対して対数的に増加する傾向が見られる。

停電時間および金銭的被害が発生すると回答した人の割合の関係(N=1000)

Page 121: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 120

(2)調査結果 ①停電による金銭的被害額

<停電時間別の平均想定被害額>

6つの停電時間区分について、平均想定被害額と1時間換算被害額を試算した。

過大な被害額を回答した人による影響を軽減するため、5%トリム平均値に基づき集計した。(電中研が過去に実施した調査においても、5%トリム平均値を導出する方法を採用している)

停電が発生した際の1時間当たりの平均想定被害額は、停電時間が長くなるほど低下する傾向にある。

停電時間 平均想定被害額

(円) 1時間換算被害額

(円)

10分程度 800 4,802

1時間程度 2,476 2,476

3時間程度 6,062 2,021

6時間程度 8,859 1,477

12時間程度 13,332 1,111

24時間程度 19,407 809

停電時間別の平均停電被害額および1時間換算被害額(N=1000)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

0 5 10 15 20 25

平均停電被害額(円)

停電時間(h)

全国平均

Page 122: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 121

(2)調査結果 ②停電回避機能に対する支払意思額

<停電回避機能に対する支払意思額の分布>

補償する停電回避時間が長くなるにつれ、支払意思を示した人の割合は増加する。

10分程度の停電に対する停電回避機能については、12.4%程度の人が支払意思があると回答。1時間程度では20%強、3時間程度では30%強、6時間程度では40%弱に増加する。

ただし停電時間が6時間を超すと、停電回避機能に対する支払意思を示した人の割合は大きく伸びず、頭打ちになる。

24時間程度の停電においても、約57%は支払意思はないと回答している。

0% 20% 40% 60% 80% 100%

10分程度の停電

1時間程度の停電

3時間程度の停電

6時間程度の停電

12時間程度の停電

24時間程度の停電

0円(利用したいと思わない)

300円/月

500円/月

1,000円/月

1,500円/月

2,000円/月

3,000円/月

4,000円/月

5,000円/月

5,000円/月 以上

停電回避機能に対する支払意思額(月額)の割合(N=1000)

Page 123: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 122

(2)調査結果 ②停電回避機能に対する支払意思額

<一定時間の停電回避サービスに対する平均支払意思額(支払意思なし除く)>

停電回避機能を「利用したいと思わない」と回答した人を除いた、支払意思額の回答を地域別に単純平均(各地域 n=125)。地域別の戸建住宅数で加重平均し、全国平均の支払意思額を試算した。

全国の停電回避機能に対する支払意思額は、10分程度で436(円/月)、1時間程度で465(円/月)、以降は停電時間の長さとともに増加し、24時間程度では1,504(円/月)。

停電時間の増加と支払意思額の増加は、ほぼ比例関係にある。停電時間1時間当たり、支払意思額は、約45(円/月)増加する。

停電時間

10分間 1時間 3時間 6時間 12時間 24時間

地域

北海道 515 495 536 910 2111 1188

東北 393 461 544 678 950 1390

関東 489 460 496 722 883 1806

中部 484 531 720 753 969 1784

関西 333 406 500 682 939 1028

中国 509 438 461 583 796 1991

四国 300 335 446 532 691 906

九州沖縄 381 513 597 647 855 1145

全国 436 465 552 700 951 1505

y = 44.943x + 422.27

R² = 0.9997

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

0 5 10 15 20 25 30

支払意思額(円

/月)

停電時間(h)

停電時でも一定の時間、電力が利用できる機能に対する支払意思額(円/月)

停電回避機能に対する支払意思額(支払意思なし除く、円/月) (1地域 N=125、全国 N=1000)

全国:

停電時間と停電回避機能に対する支払意思額の関係

Page 124: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 123

(2)調査結果 ②停電回避機能に対する支払意思額

<一定時間の停電回避サービスに対する平均支払意思額(支払意思なし含む)>

停電回避機能を「利用したいと思わない」と回答した人を含む、支払意思額の回答を地域別に単純平均(各地域 n=125)。地域別の戸建住宅数で加重平均し、全国平均の支払意思額を試算した。

全国の停電回避機能に対する支払意思額は、10分程度で55(円/月)、1時間程度で96(円/月)、以降は停電時間の長さとともに増加し、24時間程度では655(円/月)。

停電時間の増加と支払意思額の増加は、ほぼ比例関係にある。停電時間1時間当たり、支払意思額は、約26(円/月)増加する。

停電時間

10分間 1時間 3時間 6時間 12時間 24時間

地域

北海道 54 75 142 306 777 456

東北 44 85 157 250 380 578

関東 70 129 206 341 452 939

中部 74 110 202 271 380 699

関西 32 58 104 213 308 354

中国 45 74 133 224 338 892

四国 19 46 93 158 254 341

九州沖縄 49 94 148 233 322 430

全国 55 96 164 269 391 655

停電回避機能に対する支払意思額(支払意思なし含む、円/月) (1地域 N=125、全国 N=1000)

全国:

停電時間と停電回避機能に対する支払意思額の関係

y = 24.544x + 82.952

R² = 0.9874

0

100

200

300

400

500

600

700

800

0 5 10 15 20 25 30

支払意思額(円

/月)

停電時間(h)

停電時でも一定の時間、電力が利用できる機能に対する支払意思額(円/月)

Page 125: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 124

(2)調査結果 ②停電回避機能に対する支払意思額

<計画停電の経験有無×一定時間の停電回避サービスに対する平均支払意思額>

停電回避機能を「利用したいと思わない」と回答した人を除いた、支払意思額の回答を、計画停電の経験のあり・なし それぞれ地域別に単純平均。地域別の戸建住宅数、および地域別の計画停電経験率を用いて、加重平均し、全国平均での支払意思額を試算した。

停電時間が10分程度、1時間程度、12時間程度のとき、停電経験ありの経験停電なしより、停電回避機能に対する支払意思額が高いが、停電時間が3時間程度、6時間程度、24時間程度の時は、停電経験ありの経験停電なしよりも、停電回避機能に対する支払意思額が低い。

計画停電の経験有無×回避機能に対する支払意思額(月額)

停電時間

10分間 1時間 3時間 6時間 12時間 24時間

全国平均

計画停電経験 あり

508 486 511 607 1,006 1,395

計画停電経験 なし

411 461 564 726 930 1509

y = 40.349x + 441.72

R² = 0.9727

y = 45.16x + 419.22

R² = 0.9968

0

400

800

1,200

1,600

0 5 10 15 20 25 30支払意思額(円

/月)

停電時間(h)

計画停電経験あり 計画停電経験なし

Page 126: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 125

(3)考察 停電回避価値による蓄電池導入への影響

アンケートで把握された停電回避機能に対する支払意思額が、蓄電池の年間メリットや投資回収年数に与えるインパクトを試算した。

10分間の停電回避機能を利用したいと思う平均的な需要家にとっては、蓄電池の投資回収年数を1.5年程度短縮するインパクトになり、蓄電池の自発的な導入を後押しする要因になる。

ただし、停電回避可能時間を長くすると、停電回避のための蓄電コストが、需要家の感じる停電回避価値を上回ってしまう。

停電回避機能による投資回収年数への影響

停電回避機能なし 10分間の

停電回避機能あり

1時間の

停電回避機能あり

停電回避機能への支払意思のある需要家の比率

- 12% 20%

停電回避機能による支払意思額(支払意思のある需要家のみの平均)

- 436円/月 465円/月

蓄電池導入量 6kWh 6.2kWh

(0.2kWhの充電をリザーブ)

7.2kWh

(1.2kWhの充電をリザーブ)

初期投資額

(9万円/kWh) 54万円 55.8万円 64.8万円

年間メリット 3.6万円 4.1万円

(436円×12ヶ月分を追加)

4.2万円

(465円×12ヶ月分を追加)

投資回収年数 15年 13.5年 15.6年

Page 127: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 126

Ⅲ.ソーラーシンギュラリティのインパクトに係る分析

1. 住宅用太陽光の導入ポテンシャル

2. 蓄電池等による自家消費の拡大トレンド

3. それが系統全体に与えるインパクト

Page 128: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 127

(1)PV導入ポテンシャルの推計

ソーラーシンギュラリティのインパクトに係る分析に当たり、太陽光発電・蓄電池普及のシナリオを作成する前段階として、住宅PV

導入の最大ポテンシャルを把握した。

設置可能面積全体のPVパネル導入を想定した。

ストレージパリティ到達が最も近いと考えられる、戸建住宅のみを対象とした。

今後の住宅新築のトレンドを踏まえて2013年・2030年・2050年の3断面について、以下の5パターンの条件でのポテンシャルを算出した。

物理的制約のみ

物理的制約×耐震基準

物理的制約×耐震基準×(1-空室率)

物理的制約×耐震基準×日照時間

物理的制約×耐震基準×(1-空室率)×日照時間

条件の決め方は、資源エネルギー庁委託調査「H22年度新エネルギー等導入促進基礎調査事業調査報告書」を参考とした。

物理的制約(必須)

• 屋根形状(寄棟・切妻・陸屋根)別に導入規模考慮

• 屋根における設置不可能面積(他の構造物による占有)なし

• 屋根における保安スペース等、

パネル以外に必要となる面積なし

• 導入量の上限なし

耐震基準

• 都道府県別に

昭和56年以降に建築された住宅は耐震基準を達成

していると想定 日照時間

• 都道府県別に

日照時間分布が

5時間以上を想定

系統電力からの供給は制約なしと想定

法規制(斜線制限に

抵触しないように屋根

面に並行に設置が可能)は制約なしと想定

空室率

• 都道府県別に

空室でない住宅を想定

考慮したPV導入の制約

Page 129: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 128

(1)PV導入ポテンシャルの推計 推計の概要

2013年のデータを用いて、2030年・2050年断面の物理的制約条件・耐震基準・空室率・日照時間の条件を満たす戸建数・導入量を求めた。

Page 130: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 129

(1)PV導入ポテンシャルの推計 ①物理的制約条件の考慮(2013年)-戸数-

物理的制約条件とは、PVアレイの設置場所を物理的に確保するための制約である。

屋根形状によって屋根面積と導入可能規模が異なるため、戸建住宅数(全数)に対して屋根形状(寄棟44%、切妻39%、陸屋根6%)別の戸数を積算した。

出所)H25年住宅土地統計調査第34表より作成

出所)同上 出所)太陽光ナビ

屋根形状 屋根形状の割合

屋根形状 屋根面積 1kW当たりの

必要面積 考え方

寄棟・切妻 建築面積×1/2 6.67m2 アレイ効率15%

側壁面に並行

陸屋根 建築面積 8.58m2 アレイ効率15%

傾斜角10度

その他 ―(設置しない) ― ―

屋根形状別屋根面積と1kW当たりの必要面積

出所)資源エネルギー庁

「H22年度新エネルギー等導入促進基礎調査事業調査報告書」

建築面積 戸建(全数) 屋根形状 屋根面積 導入可能戸数

19㎡以下 94,800戸

寄棟、切妻

陸屋根

その他

7㎡

15㎡

75,764戸

5,005戸

20~29㎡ 577,800戸

寄棟、切妻

陸屋根

その他

12 ㎡

25 ㎡

461,778戸

30,508戸

30~39 1,453,900戸

寄棟、切妻

陸屋根

その他

17 ㎡

35 ㎡

1,161,957戸

76,766戸

40~49 2,402,500戸

寄棟、切妻

陸屋根

その他

22 ㎡

45 ㎡

1,920,078戸

126,852戸

50~74 10,040,400戸

寄棟、切妻

陸屋根

その他

31 ㎡

62 ㎡

8,024,288戸

530,133戸

75~99 6,478,200戸

寄棟、切妻

陸屋根

その他

44 ㎡

87 ㎡

5,177,377戸

342,049戸

100~124 3,115,200戸

寄棟、切妻

陸屋根

その他

56 ㎡

112 ㎡

2,489,668戸

164,483戸

125~149 1,851,800戸

寄棟、切妻

陸屋根

その他

69 ㎡

137 ㎡

1,479,959戸

97,775戸

150㎡以上 2,094,400戸

寄棟、切妻

陸屋根

その他

75 ㎡

150 ㎡

1,673,844戸

110,584戸

物理的制約条件を加味した導入可能戸数の推定

Page 131: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 130

(1)PV導入ポテンシャルの推計 ①物理的制約条件の考慮(2013年)-ポテンシャル-

屋根形状別の1kW当たりの必要面積を考慮し、屋根面積に対する導入可能規模を求めた。

屋根面積別の導入可能規模×導入可能戸数で導入ポテンシャルを求めた。

結果、合計で導入可能戸数は1,917万戸、導入ポテンシャルは118GWと推定された。

建築面積 建築面積代表値 屋根形状 屋根面積 導入可能規模 導入可能戸数 導入可能量

19㎡以下 15㎡

寄棟、切妻

陸屋根

その他

7㎡

15㎡

1.1 kW

1.7 kW

75,764戸

5,005戸 83,340kW

8,509kW

20~29㎡ 25㎡

寄棟、切妻

陸屋根

その他

12 ㎡

25 ㎡

1.8 kW

2.9 kW

461,778戸

30,508戸 831,194kW

88,472kW

30~39 35㎡

寄棟、切妻

陸屋根

その他

17 ㎡

35 ㎡

2.6 kW

4.0 kW

1,161,957戸

76,766戸 3,021,067kW

307,062kW

40~49 45㎡

寄棟、切妻

陸屋根

その他

22 ㎡

45 ㎡

3.3 kW

5.2 kW

1,920,078戸

126,852戸 6,336,213kW

659,626kW

50~74 62㎡

寄棟、切妻

陸屋根

その他

31 ㎡

62 ㎡

4.6 kW

7.2 kW

8,024,288戸

530,133戸 36,911,465kW

3,816,932kW

75~99 87㎡

寄棟、切妻

陸屋根

その他

44 ㎡

87 ㎡

6.5 kW

10.1 kW

5,177,377戸

342,049戸 33,652,718kW

3,454,670kW

100~124 112㎡

寄棟、切妻

陸屋根

その他

56 ㎡

112 ㎡

8.4 kW

13.1 kW

2,489,668戸

164,483戸 20,913,064kW

2,154,706kW

125~149 137㎡

寄棟、切妻

陸屋根

その他

69 ㎡

137 ㎡

10.3 kW

16.0 kW

1,479,959戸

97,775戸 15,234,467kW

1,564,390kW

150㎡以上 150㎡

寄棟、切妻

陸屋根

その他

75 ㎡

150 ㎡

11.2 kW

17.5 kW

1,673,844戸

110,584戸 18,746,927kW

1,935,212kW

物理的制約条件を加味した導入ポテンシャルのある戸数の推定

Page 132: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 131

(1)PV導入ポテンシャルの推計 ②その他条件の考慮(2013年)

物理的制約条件を満たす導入可能戸数・導入可能量を都道府県で按分した値に対して、その他考慮すべき条件を加味した。

耐震基準: 都道府県別の昭和56年(1981年)以降建築の割合(全国平均63%)を乗じる。[1]

空室率:都道府県別戸建空室率(全国平均10.5%)を乗じる。 [2]

日照時間:都道府県別日照時間5時間以上の住宅割合 (全国平均72%)を乗じる。 [3]

物理的制約条件・耐震基準・空室率・日照時間を考慮した結果、2013年の導入可能戸数は908万戸、導入可能量は56.8GWと見積もられた。

各条件を考慮した導入可能戸数・導入可能量

[1] H25年住宅土地統計第5表 [2] H25年住宅土地統計第9表 [3] H10年住宅土地統計都道府県編第35表

導入可能戸数(万戸)

導入可能量(GW)

物理的制約条件のみ 2,395 150

物理的制約条件+耐震基準を考慮 1,431 89.4

物理的制約条件+耐震基準+空室率を考慮 1,290 80.7

物理的制約条件+耐震基準+日照時間を考慮 1,030 64.4

物理的制約条件+耐震基準+空室率+日照時間を考慮 908.3 56.8

Page 133: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 132

(1)PV導入ポテンシャルの推計 ③物理的制約条件の考慮(2030/50年)-戸数-

新設の屋根の形状は、切妻は増加、寄棟は減少し、切妻と寄棟の合計は減少傾向にある。

寄棟は1999年から2012年までほぼ線形に減少。切妻は緩やかに増加。陸屋根は緩やかな減少傾向にある。

将来の新設の屋根の形状を、以下のように想定した。

PVパネルを載せることも見越した一戸建が建築されるとすれば、切妻と寄棟の合計が2012年断面から著しく減少することはないと考えられる。

陸屋根が徐々に減少した分を、寄棟+切妻が増加すると想定した。

結果、2030年には寄棟+切妻が82%、陸屋根が3%になる見込み。

出所)H24年住宅金融支援機構フラット35住宅使用実態調査報告、

資源エネルギー庁「H22年度新エネルギー等導入促進基礎調査事業調査報告書」より作成

ストック屋根形状の割合の推移(2002~2052年) 新築の屋根形状の推移

出所) H24年住宅金融支援機構フラット35住宅使用実態調査報告より作成

-10%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060

屋根形状の割合(%)

切妻

寄棟

陸屋根

推計

86.2 83 79.8 80.4 81 81.6 82.2 82.8 83.4 84 84.6

6.66

5.4 4.8 4.2 3.6 3 2.4 1.8 1.2 0.6

7.2 11 14.8 14.8 14.8 14.8 14.8 14.8 14.8 14.8 14.8

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

2002 2007 2012 2017 2022 2027 2032 2037 2042 2047 2052

屋根形状の割合(

%)

その他

陸屋根

寄棟+切妻

Page 134: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 133

(1)PV導入ポテンシャルの推計 ③物理的制約条件の考慮(2030/50年)-世帯数-

国立社会保障・人口問題研究所により、人口推計は2060年まで行われている。一方で世帯数推計は2035年までしか行われていないため、2050年までの推定を行った。

世帯人員を、人口問題研究所の推計結果をもとに2050年に2.26に収束すると想定し、世帯数を人口推移を世帯人員で割ったものとして推計した。

結果、世帯数は2020年をピークに緩やかに減少する。

人口予測と世帯数の推移

出所)人口推移: 国立社会保障・人口問題研究所、日本の将来推計人口(平成24年1月推計)2011年~2060年

世帯数(予測値): 国立社会保障・人口問題研究所、日本の世帯数の将来推計(全国推計)(平成25年1月推計)

世帯人員の推移

2.272.272.26

2.24

2.26

2.28

2.30

2.32

2.34

2.36

2.38

2.40

2.42

2010 2020 2030 2040 2050 2060

世帯人員

人口問題研予測値

近似式

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

2010 2020 2030 2040 2050 2060

人口推移(人口問題

研予測値)

世帯数(人口問題研

予測値)

世帯数(推定)

Page 135: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 134

0.971.011.051.081.101.111.111.131.141.15

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1.40

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

1世帯当たり住宅数

総住宅数及び世帯数(万戸、万世帯)

総住宅数

総世帯数

1世帯当たり住宅数

(1)PV導入ポテンシャルの推計 ③物理的制約条件の考慮 (2030/50年)-ストック戸数-

2008年の住宅土地統計調査より、1世帯当たり住宅数は1.15戸である。

すなわちストック住宅数は世帯数の1.15倍となる。戸建についても同じ割合だとし、今後も維持すると想定した。

H10,15,20,25住宅土地調査より、全住宅に対する戸建の割合は2013年以降54%に収束すると想定した。

結果、ストックは2015年から2020年にかけてピークをむかえ、2020年以降は減少する。

ストックの戸建住宅数は2020年に3,285万戸、2030年に3,181万戸、2050年に2,663万戸。

出所)平成20年住宅・土地調査より作成

世帯数・ストック住宅数・ストック戸建数の推移

2015年から推定した

世帯数からストック住宅数

を推定

総住宅数、総世帯数及び1世帯当たり住宅数

出所)平成20年住宅・土地調査より作成

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

1980 2000 2020 2040 2060

世帯数

ストック住宅数

ストック戸建て数

Page 136: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 135

(1)PV導入ポテンシャルの推計 ④その他条件の考慮 (2020年/2030年)-耐震基準-

1981年以降に建築された住宅は、全て必要な耐震基準を満たしているものと仮定した。

2013年に残存する1981年以前築の建物を100%とすると、2015年に91%、2030年に47%が残存。2050年にはほぼ消滅。

ある年(2013年以降)の耐震基準を満たすのは、その年の物理的制約を満たす戸数から、その年に残存する1981年以前築の戸数を差し引いた件数となる。

出所)第157回NRIメディアフォーラム、2020年の住宅市場

2013年を基準とした1981年以前築の残存する割合 ストック住宅数の築年別割合推移

出所)第157回NRIメディアフォーラム、2020年の住宅市場より作成

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

2010 2020 2030 2040 2050 2060

Page 137: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 136

(1)PV導入ポテンシャルの推計 ④その他条件の考慮(2020年/2030年)-空室率-

既存文献によると、将来的に全国の空き家率(集合住宅を含む)は14%程度で収束する。

空き家率の推移はロジスティック曲線で近似されている。

空き家率が増加すると、新規物件の価格低下を引き起こす。これにより新規物件開発が抑制され、一定の水準に収束すると考えられている。

これと同じ考え方を用いて、 2003年から2013年のデータからロジスティック曲線を作成して戸建の空室率を推定した。

結果、2030年10.8%, 2050年11.5%となると見込まれる。

出所)NRI、2020年の住宅市場~人口・世帯数減少のインパクト~ 出所)住宅土地統計調査より作成

戸建空室率の実績推移と将来予測 住宅空室率の実績推移と将来予測

*住宅には集合住宅も含む

7.28

9.1

10.510.8

11.5

0

2

4

6

8

10

12

14

1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060

戸建空室率(

%)

実績 推定

Page 138: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 137

(1)PV導入ポテンシャルの推計 ⑤ポテンシャル推計結果(~2050年)

以上をもとに、各年のPV導入ポテンシャルを推計した。

戸建の数は2020年をピークとするので、物理的制約を満たす建物は2015年がピークとなる。

耐震基準を満たす建物の割合は年々高くなるため、最終的に耐震基準・空き家でない・日照時間が十分ある建物は2030

年、2050年の方が2015年よりも多い。

ポテンシャル(導入量)推移

ポテンシャル(戸数)推移

出所)前述の文献より作成

2,193

1,391 1,252 1,001 881 2,395

1,431 1,290 1,030 908 2,597 1,633 1,471 1,175 1,036

2,799 2,089 1,878 1,503 1,322

2,711 2,236

1,995 1,609 1,435

2,269 2,269 2,008

1,632 1,445

0

1,000

2,000

3,000

物理的制約 耐震基準 耐震基準×空室率 耐震基準×日照時間 耐震基準×空室率×日照時間

戸建総数(万戸)

2012 2013 2014 2015 2030 2050

137.2

87.7 79.063.1 55.6149.7

89.5 80.7 64.4 56.8162.2 102.0 91.9 73.4 64.7

174.7131.0 117.7 94.2 82.9

167.3137.6 122.8

99.0 88.3137.9 137.9

122.099.2 87.8

0.0

50.0

100.0

150.0

200.0

物理的制約 耐震基準 耐震基準×空室率 耐震基準×日照時間 耐震基準×空室率×日照時間

導入量(

GW)

2012 2013 2014 2015 2030 2050

Page 139: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 138

(2)2030年の住宅PV導入量推計 推計の概要

推計の手順

1. 新規認定分導入量を、新築・既築別導入量(ストック)に分割する。

JPEAの補助金申請実績(2012年7月~2014年度末)を用いる。

2. 新規認定分導入量の新築・既築別導入量(ストック)の差分からフローを算出し、フローベースで将来を推計する。

新規認定分のうち、新築の導入量(フロー)と、フローに占める新築の割合が線形増加すると見込む。

3. PVの寿命を20年として、滅失分を考慮する。

2030年までに滅失するのは移行認定分のPVであり、2011年以降に導入された新規認定分のPVは100%残存する。

4. 以上のフローから、2030年導入量(ストック)を求める。

2030年には19.2GWとなる見込み。

5. 2030年導入量を、電力会社エリア別に分割する。

推計の前提

FIT認定の10kW未満を住宅用導入とする。また、認定容量を、実際の導入量とみなす。

導入量を、「新規認定」分と「移行認定」分に二分する。さらに、「新規認定」分を「新築」「既築」に分けて推計する。

2014年4月以降のFIT実績公表データ*は、「新規認定」「移行認定」の区分。かつ「新規認定」分は認定量と導入量が示されている。

• 「新規認定」分はFIT制度開始後に新たに認定を受けた認定容量。

• 「移行認定」分は再エネ特措法(以下、「法」という)施行規則第2条に規定されている、法の施行の日において既に発電を開始していた設備、もしくは法附則第6条第1項に定める特例太陽光発電設備であって、FIT制度開始後にFIT制度へ移行した設備の導入量。移行分については、認定容量と同じとみなす。

2012年7月から2014年3月までのFIT実績公表データ*は、「認定容量」または「認定出力」のみ(導入量については公表なし)。

• この値を「新規認定」分の認定量として見なして、2014年以降データと統合する。

長期エネルギー需給見通し(参考資料)によると、2030年の住宅のPV導入量は9GW(非住宅は55GW)とされている。

しかし、足元の住宅PVの導入や、今後の新築住宅の増加を踏まえると、2030年の住宅のPV導入量は、これよりも上振れするものと考えられる。

ここでは、2030年の住宅PV導入量の推計を、以下の手順で行った。

2030年の住宅PV導入量推計の前提と手順

Page 140: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 139

27% 33% 36% 42%

73% 67% 64% 58%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2012 2013 2014 2015

新築・既築ストック割合

既築割合

新築割合

(2)2030年の住宅PV導入量推計 ①新規認定分導入量の新築・既築別への分割

新規認定には新築と既築の2種類がある。

新規認定分導入量に、2012年7月FIT開始以降の補助金申請実績の新築・既築の比率(ストック)を用いることで、新築・既築別導入量(ストック)を求めた。

出所)固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイトより作成

FIT新規認定分導入量の実績値(ストック)

出所)JPEA 住宅用太陽光発電補助金交付決定件数・設置容量データより作成

FIT開始以降の補助金申請の新築・既築比率(ストック)

新築・既築別FIT新規認定導入量(ストック)

*割合の推移を線形とし、

2015年を推計

出所)固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイトとJPEA 住宅用太陽光発電補助金交付決定件数・設置容量データより作成

**導入量は実績値、2015年の割合は推計

1.3

2.7

3.84.6

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

2012 2013 2014 2015

認定容量(

GW)

0.40.9

1.41.91.0

1.8

2.4

2.7

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

2012 2013 2014 2015

新築・既築ストック認定容量(

GW)

既築

新築

Page 141: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 140

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

2010 2020 2030

新築フロー認定容量

(G

W)

実績値

推定値

(2)2030年の住宅PV導入量推計 ②新規認定分導入量の新築・既築別フローと将来推計

前述の新築・既築別FIT新規認定導入量(ストック) の年間の差分から、フローを算出した。

新築・既築割合(フロー)について、新築割合がロジスティック曲線に従って増加し、2030年に9割になると仮定した。

また、2013年から2015年の実績より、新築(フロー)は線形で推移すると仮定した。

新築フロー導入量の推計値に新築・既築割合を考慮し、既築の導入量(フロー)を求めた。

2016年以降推計

新築・既築FIT新規認定分導入量(フロー) 新築・既築割合推移(フロー)将来推計

新築導入量の推移(フロー)将来推計

2016年以降推計

新築・既築FIT新規認定分導入量

(フロー)将来推計

2016年以降推計

2012年度は年度途中に制度が開始したため、推定には含まない。

0.360.52 0.49 0.56

0.980.83

0.610.29

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1.40

1.60

2012 2013 2014 2015

フロー認定容量(

GW)

既築

新築

0%

20%

40%

60%

80%

100%

20

12

20

15

20

18

20

21

20

24

20

27

20

30

新築・既築割合(

%)

既築割合

新築割合

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

20

12

20

14

20

16

20

18

20

20

20

22

20

24

20

26

20

28

20

30

新築・既築フロー認定容量

(G

W)

既築

新築

Page 142: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 141

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

19

94

-19

96

19

97

19

98

19

99

20

00

20

01

20

02

20

03

20

04

20

05

20

06

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

導入量(

GW)

フロー

ストック

(2)2030年の住宅PV導入量推計 ③滅失量の推移

PVの寿命を20年とすると、2012年以降に導入された新規認定分は、2030年には100%残存することになる。

FITの移行認定量の4.7GWは、2012年以前に導入された容量と見なせる。NEPCへの補助金申請実績より、各年フローの2011年ストックに対する比を1996年~2010年の導入比率として、それを各々2016年~2030年の滅失量(フロー)とした。

出所)固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイトより作成

FIT認定導入量の実績値(ストック)

2011年以前PV導入容量の実績値(フロー・ストック)

出所)NEPC年度別・都道府県別住宅用太陽光発電システム導入状況(設備容量)より作成

各年で滅失するPV導入容量(フロー)

4.7 4.7 4.7 4.7

1.32.7

3.84.6

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

2012 2013 2014 2015

認定容量(

GW)

新規認定

移行認定

0.02 0.02 0.03 0.07 0.09 0.11 0.17

0.21 0.25 0.32

0.28 0.22 0.24

0.48

0.92

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

滅失量(

GW)

Page 143: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 142

(2)2030年の住宅PV導入量推計 ④2030年の住宅PV導入量

以上のフローからストックを求めると、新規認定分のうち新築は増加、既築は飽和すると見込まれる。移行認定は2016年以降減少する。

2030年の住宅PV導入量は、19GW(1,919万kW)と推計された。

新規認定(新築・既築)・移行認定別PV導入量推移(ストック)

2016年以降推計

4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.6 4.6 4.5 4.4 4.2 4.0 3.7 3.4 3.1 2.9 2.7 2.21.3

0.4 0.9 1.4 1.9 2.5 3.1 3.7 4.3 5.0 5.6 6.3 7.0 7.8 8.5 9.3 10.1 11.0 11.812.7

1.01.8

2.42.7

3.23.5

3.73.9

4.04.2

4.44.5

4.64.7

4.84.9

5.0 5.1 5.2

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030

ストック導入量(

GW)

新規認定(既築)

新規認定(新築)

移行認定

19GW

Page 144: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 143

(2)2030年の住宅PV導入量推計 ⑤電力会社エリア別分割

前述した2030年の都道府県別PV導入ポテンシャル(建築時期、空き家ではない、日照時間を考慮したもの)をもとに、2030年の住宅PV導入量1,919万kWを按分した。

導入ポテンシャルの計算においては、戸建て数、建築時期、空室率、日照時間は、都道府県による差を考慮している。

都道府県別に分割したものを電力会社エリア別に集約し、エリア別の導入量を推計した。

各都道府県を電力会社エリアに対応させる。ただし、静岡県については中部:東京を2:1としている。

2030年の住宅PV導入量の電力会社エリア別導入量

82

205

573

49

268 283

13780

226

150

100

200

300

400

500

600

700

北海道 東北 東京 北陸 中部 関西 中国 四国 九州 沖縄

電力会社別導入量(万

kW)

Page 145: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 144

Ⅲ.ソーラーシンギュラリティのインパクトに係る分析

1. 住宅用太陽光の導入ポテンシャル

2. 蓄電池等による自家消費の拡大トレンド

1-1. 2030年の蓄電池導入見込量

1-2. 需要家の蓄電池投資の受容性

3. それが系統全体に与えるインパクト

Page 146: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 145

①蓄電池導入のドライビングフォース

2030年の蓄電池導入のドライビングフォースは、蓄電池システム価格の低下であると想定し、それに対する蓄電池導入量を推計する。

2030年の蓄電池システム価格は、「IV.1.太陽光パネル及び蓄電池等の蓄エネルギー機器、エネルギーマネジメントシステムの価格低下トレンド」で述べるとおり、4.6~7.8万円/kWhと推計される。

これをもとに、蓄電池導入上位・中位・下位シナリオに対応する蓄電池システム価格を、それぞれ4万円・6万円・8万円/kWhと設定した。

蓄電池導入シナリオ 対応する蓄電池システム価格

上位 4万円/kWh

中位 6万円/kWh

下位 8万円/kWh

各シナリオでPV導入量は同じ。

蓄電池導入のドライビングフォースとなる蓄電池システム価格の設定

Page 147: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 146

イノベーター アーリー・ アダプター

アーリー・ マジョリティ

レイト・ マジョリティ

ラガード

2.5% 13.5%

34.0% 34.0%

16.0%

②蓄電池システム価格への需要家への反応

蓄電池システム価格に対する需要家の反応は、需要家の新商品導入への積極性によって異なると想定した。

具体的には「イノベーター理論」での消費者の層に対して、それぞれが期待する投資回収年数を対応づけた。

エベレット・M・ロジャーズ(Everett M. Rogers)の「イノベーター理論」モデルでは、消費者は、新商品導入への積極性の違いにより、「イノベーター」「アーリー・アダプター」「アーリー・マジョリティ」「レイト・マジョリティ」「ラガード」の5つの層に区分される。

一方で、投資回収年数と、それを受容する需要家の比率の関係のモデル(投資回収年数受容曲線)も提唱されている。このモデルは、米国エネルギー省のAnnual Energy Outlookや、我が国の「長期エネルギー需給見通し」において、省エネルギー機器等の導入量の推定に用いられている。

イノベーター理論 投資回収年数受容曲線(例)

2.5% イノベーター 13.5% アーリー・アダプター

34.0% アーリー・マジョリティ

34.0% レイト・マジョリティ

16.0% ラガード

消費者の層 構成比 期待する投資回収年数(何年以下であれば導入するか)

イノベーター 2.5% 何年でも

アーリー・アダプター 13.5% 15年

アーリー・マジョリティ 34% 10年

レイト・マジョリティ 34% 5年

ラガード 16% 導入しない

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0 5 10 15 20

受容

する

比率

投資回収年数

DOEモデル(法定耐用年数7年

の設備)

補正(寿命15年の設備)

Page 148: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 147

0

20

40

60

80

100

3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

経済

的メ

リット

が出

る住

宅の

比率

蓄電池システム価格 [万円/kWh]

③蓄電池システム価格に対する導入率

「イノベーター理論」における消費者の各層に対して、シミュレーションをもとに、蓄電池システム価格に対する導入率を設定した。

シミュレーションにより、各層が期待する投資回収年数以内で、「経済的メリットが出る住宅の比率」を算出。

結果、蓄電池システム価格が6万円/kWhになれば、イノベーターとアーリー・アダプターの全て、アーリー・マジョリティの約4割は、経済的メリットが出るために蓄電池を導入する。一方で、レイト・マジョリティが導入を始めるのは、蓄電池システム価格が4万円/kWhを下回ったとき。

結果、上位・中位・下位シナリオに対応する蓄電池導入率は、それぞれ50%・31%・15%となった。

消費者の層 構成比

蓄電池システム価格別の導入率

4万円/kWh

6万円/kWh

8万円/kWh

イノベーター 2.5% 100% 100% 100%

アーリー・アダプター 13.5% 100% 100% 92%

アーリー・マジョリティ 34% 100% 43% 0%

レイト・マジョリティ 34% 0% 0% 0%

ラガード 16% 0% 0% 0%

合計 100% 50% 31% 15%

シナリオ 上位 中位 下位

アーリー・マジョリティ アーリー・アダプター

イノベーター

蓄電池導入シナリオ 蓄電池価格に対する導入率

下位 中位 上位

レイト・マジョリティ

Page 149: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 148

④2030年の蓄電池導入量

前節「1.住宅用太陽光の導入ポテンシャル」で見込んだ2030年の住宅PV導入量(全国で1,919万kW)に対して、前述のシナリオ別の蓄電池価格導入率を適用して、蓄電池導入世帯数を設定した。

住宅PVの平均導入容量は、4.5kW/世帯とする。

蓄電池の平均容量は、6kWh/世帯とする。

上位・中位・下位シナリオでの蓄電池導入世帯数は、それぞれ213万・131万・63万世帯となった。

蓄電池導入

シナリオ

対応する

蓄電池価格 蓄電池導入率 住宅PV導入量 蓄電池導入量

上位 4万円/kWh 50% 1,919万kW

(426万世帯)

213万世帯

中位 6万円/kWh 31% 131万世帯

下位 8万円/kWh 15% 63万世帯

蓄電池導入シナリオ

Page 150: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 149

0 0 0 0

53

20

27

34 31

22 19 19 18 18 18 18

22.1

9

6

0

5

10

15

20

25

30

0

10

20

30

40

50

60

蓄電池価格

[円/k

Wh

]

FIT終了世帯数

[万世帯

]

各年FIT終了世帯 蓄電池価格

⑤2030年までの蓄電池導入量

前頁で示した2030年の蓄電池導入量の131万世帯(中位)に対応する、フローの導入量を推計した。

2030年ごろまでは、各年の蓄電池導入量は、PVのFIT買取期間終了世帯の発生と、蓄電池価格の低下によって定まるものとして推計。

家庭向け蓄電池市場が立ち上がる条件は、2019年のFIT買取期間終了世帯の発生だけでは不十分で、蓄電池価格が9万円/kWhを下回ることが必要である。

一方でFIT買取期間終了世帯のみを対象にしていては、家庭向け蓄電池市場は伸び悩むため、PV+蓄電池の新規導入を開拓していくことが必要である。

蓄電池導入フローの推計 FIT買取期間終了世帯数と蓄電池価格低下

• FIT買取期間終了世帯数:PV導入実績と導入見込から作成。

• 蓄電池価格:2015年22.1万円/kWh、2020年9万円/kWh、(2025年7万円)2030年6万円/kWhを補間。

• 蓄電池価格から前述の早稲田大学シミュレーションをもとにした蓄電池導入率を算出。これと、各年の直近3年でのFIT買取期間終了世帯数の積に、各年のフローが比例するものとして推計。

131

0 0 0 0 0

6

10 10

13 14

13 12 12

13 14

15

0

5

10

15

20

25

30

0

25

50

75

100

125

150

フロー

[万世帯

]

ストック

[万世帯

]

蓄電池ストック 蓄電池フロー

Page 151: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 150

Ⅲ.ソーラーシンギュラリティのインパクトに係る分析

1. 住宅用太陽光の導入ポテンシャル

2. 蓄電池等による自家消費の拡大トレンド

1-1. 2030年の蓄電池導入見込量

1-2. 需要家の蓄電池投資の受容性

3. それが系統全体に与えるインパクト

Page 152: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 151

需要家の蓄電池投資の受容性 アンケートの概要

調査名 PV+蓄電池の初期投資費用と光熱費削減効果の受容性に関するアンケート調査

目的 新築/既築の戸建住宅にPVや蓄電池を導入する際の、初期投資費用に対する受容性、および1年当たりの光熱費削減効果に対する受容性を評価

調査対象・ 回答数

①既築戸建住宅居住・PV所有(500人)⇒ 蓄電池を追加導入 ②既築戸建住宅居住・PV未所有(500人)⇒ PVのみ導入 ③既築戸建住宅居住・PV未所有(500人)⇒ PV+蓄電池導入 ④新築戸建住宅(500人)⇒ PVのみ導入 ⑤新築戸建住宅(500人)⇒ PV+蓄電池導入

主な 結果

需要家の初期投資額の価格受容性は、現在の機器価格と比較したときに、

既築戸建住宅にPVまたはPV+蓄電池を導入(②、③)<新築戸建住宅に導入(④、⑤)

PVのみ導入(②、④)≒PV+蓄電池を導入(③、⑤)

需要家が光熱費削減メリットとして期待する金額は、現在の額と比較したときに、

新築・既築戸建住宅に、PVまたはPV+蓄電池を導入(②、④、③、⑤):期待する削減メリット<現在の削減メリット

既築住宅に蓄電池のみ追加導入(①):期待する削減メリット≒現在の額×2

以上より、設備購入へのハードルの高さは、

新築戸建住宅にPVまたはPV+蓄電池を導入(④、⑤)<既築戸建にPVのみ導入(②)

<既築戸建にPV+蓄電池を導入(③)<PV既設置の既築住宅に蓄電池のみ追加で導入(①)

既築戸建住宅 新築 戸建住宅 PV既設置 PV未設置

PVのみ (6kW、175万円)

- ② 62万円 (35%)

④ 86万円 (49%)

蓄電池のみ (5kWh、150万円)

① 46万円 (31%)

- -

PV+蓄電池 (6kW+5kWh、

325万円) -

③ 93万円 (28%)

⑤ 146万円 (45%)

既築戸建住宅 新築 戸建住宅 PV既設置 PV未設置

PVのみ (6kW、15.6万円/年)

- ②14万円/年

(91%) ④14万円/年

(87%)

蓄電池のみ (5kWh、4.4万円/年)

①8.9万円/年 (203%)

- -

PV+蓄電池 (6kW+5kWh、20万円/年)

- ③17万円/年

(86%) ⑤19万円/年

(94%)

PVおよび蓄電池の初期投資許容額(単純平均) PVおよび蓄電池の導入による光熱費削減メリット期待額(単純平均)

※ 括弧内は、現在のPVおよび蓄電池価格(工事費含む)に対する比率を示す ※ 括弧内は、現在、同一スペックのPVおよび蓄電池設置を設置した場合の、年間の光熱費削減メリット額に対する比率を示す

現状の需要家の蓄電池導入への受容性を把握するために、アンケート調査を実施した。

Page 153: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 152

(1)調査項目 ①調査フロー

新築/既築の戸建住宅にPVや蓄電池を導入する際の、初期投資費用に対する受容性、および1年当たりの光熱費削減効果に対する受容性を評価した。

戸建住宅にPVおよび蓄電池を導入するケースとして、以下の5ケースを想定した。

既築戸建住宅 新築 戸建住宅 PV既設置 PV未設置

現在戸建住宅に居住し、PV未所有かつ蓄電池未所有の500人

現在、戸建住宅に居住し、PV所有しているが、蓄電池は未所有の500人

将来、新築戸建住宅に住替える意向がある500人

PVのみ導入 - ○ ○

蓄電池のみ導入 ○ - -

PV+蓄電池導入 - ○ ○

戸建住宅にPVおよび蓄電池を導入するケース

Page 154: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 153

(1)調査項目 ①調査フロー

それぞれのケースに対して、今後、設備価格がどの程度まで低下すれば設備を購入するかを調査する。

設備価格が下がっても購入しない、という回答も認める。

回答者には、現状の、戸建住宅に導入される平均的な設備容量および初期投資費用、設備導入による主なメリットを提示する。

(提示する費用・メリットについては後述)

また、上記で回答された価格に対して、1年当たりの光熱費削減メリットとして何万円/年 以上を期待するかを調査する。

現状

<標準的な戸建住宅に設置されるPV>

• 単価最大35万/kW

• 平均出力5kW

• 平均価格≒175万円

<PVによる主なメリット>

光熱費削減・売電メリット:約15.6万円/

CO2削減効果:年間のCO2削減量は、約0.9トン

停電対策:地震等で停電が発生した際にも、太陽光発電の電力を利用可能

PV価格に対する受容性

「左記出力のPVの価格が何万円まで低下すれば、PVを購入するか?」

<価格>

• 価格が下がっても太陽光発電システムを購入するつもりはない

• ●●万円まで価格が下がれば購入する

(数値を自由回答)

光熱費削減効果に対する受容性

「左記で答えた価格支払い、PVを購入した場合、1年当たりの光熱費削減効果として何万円以上を得ることを期待するか?」

<1年当たり光熱費削減効果>

• 数値を自由回答(●●万円/年)

PVのみを導入するケース 既築 新築

Page 155: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 154

(1)調査項目 ①調査フロー

現状

<標準的な戸建住宅に導入される蓄電池>

• 単価最大20万/kWh

• 平均容量6kW

• 工事費≒25~30万円

• 平均価格≒150万円(工事費含む)

<蓄電池による主なメリット>

光熱費削減メリット:深夜電力利用により、

約4.4万円/年 節約

CO2削減効果:年間のCO2削減量をさらに

約1.1トン増

停電対策:地震等で停電が発生した際に、

蓄電池に貯めていた電気を利用可能

蓄電池の価格に対する受容性

「左記容量の蓄電池の価格が何万円まで低下

すれば、既に所有しているPVに加えて、蓄電池を

購入するか?」

<価格>

• 価格が下がっても蓄電池を購入するつもりはない

• ●●万円まで価格が下がれば購入する

(数値自由回答)

光熱費削減効果に対する受容性

「左記で答えた価格を支払い、蓄電池を購入した場合、1年当たりの光熱費削減効果として何万円以上を得ることを期待するか?」

<1年当たり光熱費削減効果>

• 数値を自由回答(●●万円/年)

現状

<標準的な戸建住宅に導入されるPV+

蓄電池>

• PV:平均出力5kW

• 蓄電池:平均容量6kWh

• 合計平均価格≒325万円

(蓄電池工事費含む)

<PV+蓄電池による主なメリット>

光熱費削減・売電:約20.0万円/年

CO2削減効果:年間のCO2削減量は、約2トン

停電対策:地震等で停電が発生した際に、太陽光発電の電力を蓄電池に貯めて、利用可能

PV+蓄電池の価格に対する受容性

「左記出力・容量のPV+蓄電池の合計価格が

何万円まで低下すれば、PV+蓄電池を購入

するか?」

<価格>

• 価格が下がってもPV+蓄電池を購入するつもりはない

• ●●万円まで価格が下がれば購入する

(数値自由回答)

光熱費削減効果に対する受容性

「左記で答えた価格を支払い、PV+蓄電池を

購入した場合、1年当たりの光熱費削減効果として何万円以上を得ることを期待するか?」

<1年当たり光熱費削減効果>

• 数値を自由回答(●●万円/年)

PV+蓄電池を導入するケース

既設PVに加えて蓄電池を導入するケース 既築

既築 新築

Page 156: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 155

(1)調査項目 ②設問票概要(1/2)

アンケート設問は、以下の15問である。

回答者は、ウェブ上の画面で示された各問に対し、選択肢方式および数値自由回答方式にて回答する。

設問票概略(1/2)

設問票 設問No.

設問内容 選択肢

1 Q.1

全国の 戸建

住宅居住者 ×

PV未所有

過去に計画停電を経験したことがあるか。 ある/ない

Q.2 現在住んでいる既存戸建住宅に、PVを導入する場合、現在の標準的な価格(出力5kW、約175万円)がどの程度まで低下すれば、PVを購入するか。

• 価格が下がってもPVを購入するつもりはない • 金額を整数値で自由回答(175万円以下)

Q.3 前問で答えた価格でPVを導入した場合、年間の光熱費削減効果として何万円以上を期待するか。

• 金額を自由回答(万円/年)(最大値99.9万円)

Q.4 現在住んでいる既存戸建住宅に、PV+蓄電池を導入する場合、現在の標準的な価格(PV:出力5kW、蓄電池:容量6kWh、計約325万円、蓄電池工事費含む)がどの程度まで低下すれば、PV+蓄電池を購入するか。

• 価格が低下してもPVと蓄電池のセットを購入するつもりはない • 金額を整数値で自由回答(300万円以下)

Q.5 前問で答えた価格でPV+蓄電池を導入した場合、年間の光熱費削減効果として何万円以上を期待するか。

• 金額を自由回答(万円/年)(最大値99.9万円)

2 Q.1

全国の 戸建

住宅居住者 ×

自宅に PVのみ所有

過去に計画停電を経験したことがあるか。 ある/ない

Q.2 現在住んでいる既存戸建住宅に、蓄電池を導入する場合、現在の初期投資費用(容量6kWh、約150万円、工事費含む)がどの程度まで低下すれば、蓄電池を購入するか。

• 価格が低下しても蓄電池を購入するつもりはない • 金額を整数値で自由回答(125万円以下)

Q.3 前問で答えた価格で蓄電池を導入した場合、年間の光熱費削減効果として何万円以上を期待するか。

• 金額を自由回答(万円/年)(最大値99.9万円)

既築

既築

Page 157: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 156

(1)調査項目 ②設問票概要(2/2)

(続き)

設問票概略(2/2)

設問票 設問No.

設問内容 選択肢

3 Q.1

全国の 新築戸建住

宅に 住替える

意向がある人

過去に計画停電を経験したことがあるか。 ある/ない

Q.2 今後住替える新築戸建住宅に、PVを導入する場合、現在の標準的な価格(出力5kW、約175万円)がどの 程度まで低下すれば、PVを購入するか。

• 価格が下がってもPVを購入するつもりはない • 金額を整数値で自由回答(175万円以下)

Q.3 上記の価格でPVを導入した場合、年間の光熱費削減効果として何万円以上を期待するか。

• 金額を整数値で自由回答(万円/年) (最大値99.9万円)

Q.4 今後住替える新築戸建住宅に、PV+蓄電池を導入 する場合、現在の標準的な価格(PV:出力5kW、蓄電池:容量6kWh、計約325万円、蓄電池工事費含む)がどの程度まで低下すれば、PV+蓄電池を購入するか。

• 価格が低下してもPV+蓄電池のセットを購入するつもりはない • 金額を自由回答(325万円以下)

Q.5 上記の価格でPV+蓄電池を導入した場合、年間の光熱費削減効果として何万円以上を期待するか。

• 金額を整数値で自由回答(万円/年) (最大値99.9万円)

新築

Page 158: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 157

(1)調査項目 ③初期投資費用の提示

太陽光発電システム導入時の初期投資費用の平均として、35万円/kW×5kW=175万円を示した。

現在、日本の太陽光発電システムの価格は、35万円/kW程度。

また、調達価格算定委資料によると、H28 の一般家庭に設置されるPVの平均出力は5kW程度。

蓄電池導入時の初期投資費用の平均として、約150万円を示した。

現在、日本の家庭用蓄電池の価格は、15~20万円/kWhの範囲であり、一般家庭に導入される蓄電池の平均容量は、6kWh程度。

蓄電池導入時の本体平均価格は、20万円/kWh×6kWh=120万円

加えて、おおよそ20~30万円/台 の工事費がかかるとした。

出所) 太陽光発電技術の現状と課題、NEDO、2016年2月

太陽光発電システムの設備コスト

Tesla Power Wall(10kWh) 約8万円/kWhの水準

出所)NEDO二次電池技術開発ロードマップ2013

日本の家庭用蓄電池の価格

Page 159: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 158

(1)調査項目 ④導入メリットの提示

光熱費削減・売電メリットは、現在の電気料金や設備価格を踏まえ、以下のように算出した結果を提示した。

1. PVによる光熱費削減メリット

逆潮流によるメリット:

5kW(PV出力) × 13.7%※1(設備利用率) × 365日 × 24時間 × 70%(売電分) × 26円/kWh ≒ 10.9万円/年

自家消費によるメリット:

5kW(PV出力) × 13.7% ※1 (設備利用率) × 365日 × 24時間 × 30%(自家消費分) × 26円/kWh ≒ 4.7万円/年

メリット合計: 10.9万円/年 + 4.7万円/年 ≒ 15.6万円/年

2. 蓄電池による光熱費削減メリット

深夜電力利用によるメリット: 6kWh(蓄電池容量) × 365日 × 20円/kWh(価格差) ≒ 4.4万円/年

既築戸建住宅 新築 戸建住宅 PV既設置 PV未設置

PVのみ (6kW)

- 15.6万円/年 15.6万円/年

蓄電池のみ (5kWh)

4.4万円/年 - -

PV+蓄電池 (6kW+5kWh)

- 15.6万円/年+4.4万円/年

≒20.0万円/年

15.6万円/年+4.4万円/年

≒20.0万円/年

※1:平成 29 年度以降の調達価格等に関する意見、調達価格等算定委員会(平成28年12月13日(火))より

PV及び蓄電池導入による光熱費削減メリット

Page 160: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 159

(2)調査結果 ①初期投資費用

<既築戸建住宅にPVを導入するケース>

PV(出力5kW)の価格が、現在の約175万円から

100万円になれば、約10%の人が購入しても良いと回答

50万円になれば、約23%の人が購入しても良いと回答

約71%の人は、価格に関わらず、購入するつもりがないと回答

PVの価格と設備購入割合の関係

1%

10%

23%

29%

0

10

20

30

40

50

60

70

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

回答数

購入割合(%)

PV価格(万円)

回答数 購入割合

蓄電池の価格と設備購入割合の関係

1%

9%

38%

68%

0

20

40

60

80

100

120

140

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

回答数

購入割合(%)

蓄電池価格(万円)

回答数 購入割合

<既築戸建住宅に、蓄電池を導入するケース(PVは既所有)>

蓄電池(容量6kWh)の価格が、現在の約150万円から

100万円になれば、約9%の人が購入しても良いと回答

50万円になれば、約38%の人が購入しても良いと回答

約32%の人は、価格に関わらず、購入するつもりがないと回答

既築

Page 161: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 160

(2)調査結果 ①初期投資費用

PV+蓄電池のセット価格と設備購入割合の関係

0%

3%

6%

11%

22%

0

5

10

15

20

25

30

35

0%

5%

10%

15%

20%

25%

回答数

購入割合

PV+蓄電池 価格(万円)

回答数 購入割合

<既築戸建住宅にPV+蓄電池を導入するケース>

PV(出力5kW)と蓄電池(容量6kWh )の合計価格が、現在の約325万円から

225万円になれば、約3%の人が購入しても良いと回答

150万円になれば、約6%の人が購入しても良いと回答

100万円になれば、約11%の人が購入しても良いと回答

約78%の人は、価格に関わらず、購入するつもりがないと回答

既築

Page 162: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 161

(2)調査結果 ①初期投資費用

PVの価格と設備購入割合の関係 PV+蓄電池のセット価格と設備購入割合の関係

<新築戸建住宅にPVを導入するケース>

PV(出力5kW)の価格が、現在の約175万円から

150万円になれば、約8%の人が購入しても良いと回答

100万円になれば、約39%の人が購入しても良いと回答

50万円になれば、約58%の人が購入しても良いと回答

約33%の人は、価格に関わらず、購入するつもりがないと回答

<新築戸建住宅に、PV+蓄電池を導入するケース>

PV(出力5kW)と蓄電池(容量6kWh )の合計価格が、

現在の約325万円から

250万円になれば、約10%の人が購入しても良いと回答

200万円になれば、約23%の人が購入しても良いと回答

150万円になれば、約33%の人が購入しても良いと回答

約39%の人は、価格に関わらず、購入するつもりがないと回答

新築

8%

39%

58%

67%

0

20

40

60

80

100

120

140

160

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

回答数

累積購入割合(%)

太陽光発電システム 購入価格(万円)

回答数 購入割合

3% 10%

23%

33%

61%

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

回答数

購入割合(%)

太陽光発電システム+蓄電池 価格

回答数 購入割合

Page 163: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 162

(2)調査結果 ②光熱費削減メリット

<既築戸建住宅にPVを導入するケース>

PVを導入することにより得られる1年当たりの光熱費削減

メリットが、

10~12.5万円/年 であれば、全体の73%が満足すると回答

20~22.5万円/年であれば、全体の89%が満足すると回答

PV導入に期待する光熱費削減メリット回答額 蓄電池導入に期待する光熱費削減メリット回答額

<既築戸建住宅に、蓄電池を導入するケース(PVは既所有)>

蓄電池を導入することにより得られる1年当たりの光熱費削減

メリットが、

5~7.5万円/年 であれば、全体の55%が満足すると回答

10~12.5万円/年 であれば、全体の86%が満足すると回答

既築

73% 89%

0

10

20

30

40

50

60

70

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

回答数

累積相対度数

光熱費削減メリット(万円)

回答数 累積相対度数

55%

86%

0

20

40

60

80

100

120

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

回答数

累積相対度数(%)

光熱費削減メリット(万円)

回答数 累積相対度数

Page 164: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 163

(2)調査結果 ②光熱費削減メリット

PV+蓄電池導入に期待する光熱費削減メリット回答額

<既築戸建住宅にPV+蓄電池を導入するケース>

PV+蓄電池を導入することにより得られる1年当たりの光熱費削減メリットが、

10~12.5万円/年であれば、全体の53%が満足すると回答

20~22.5万円/年であれば、全体の79%が満足すると回答

25~27.5万円/年であれば、全体の87%が満足すると回答

既築

53%

79% 87%

0

5

10

15

20

25

30

0%

20%

40%

60%

80%

100%

回答数

累積相対度数

光熱費削減メリット(万円)

回答数 累積相対度数

Page 165: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 164

(2)調査結果 ②光熱費削減メリット

PV導入に期待する光熱費削減メリット回答額 PV+蓄電池導入に期待する光熱費削減メリット回答額

<新築戸建住宅にPVを導入するケース>

PVを導入することにより得られる1年当たりの光熱費削減メリットが、

10~12.5万円/年であれば、全体の69%が満足すると回答

15~17.5万円/年であれば、全体の76%が満足すると回答

20~22.5万円/年であれば、全体の87%が満足すると回答

<新築戸建住宅に、PV+蓄電池を導入するケース>

PV+蓄電池を導入することにより得られる1年当たりの光熱費

削減メリットが、

10~12.5万円/年であれば、全体の48%が満足すると回答

20~22.5万円/年であれば、全体の74%が満足すると回答

30~32.5万円/年であれば、全体の87%が満足すると回答

新築

48%

74%

87%

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1-2

.5

2.5

-5

5-7

.5

7.5

-10

10-1

2.5

12.5

-15

15-1

7.5

17.5

-20

20-2

2.5

22.5

-25

25-2

7.5

27.5

-30

30-3

2.5

32.5

-35

35-3

7.5

37.5

-40

40-

回答数

累積相対度数(%)

光熱費削減メリット(万円)

回答数 累積相対度数

69% 76%

87%

0

20

40

60

80

100

120

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1-2

.5

2.5

-5

5-7

.5

7.5

-10

10-1

2.5

12.5

-15

15-1

7.5

17.5

-20

20-2

2.5

22.5

-25

25-2

7.5

27.5

-30

30-3

2.5

32.5

-35

35-3

7.5

37.5

-40

40-

回答数

累積相対度数

光熱費削減メリット(万円)

回答数 累積相対度数

Page 166: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 165

(2)調査結果 ③初期投資費用×光熱費削減メリット

設備初期投資費用として支払う意思のある金額と、期待する光熱費削減メリットに対応した導入割合を整理した。

(初期投資費用がX万円、かつ光熱費削減メリットがY万円であるとき、設備を購入し、メリット額にも満足する人の割合)

PV 初期投資費用×期待する 光熱費削減メリットに対応した導入割合

既築

PV初期投資費用:万円/kW

25万円/kW

20万円/kW

15万円/kW

10万円/kW

10万円/kW 未満

光熱費 削減

メリット:万円/年

10万円/年 0.2% 4.6% 6.2% 14.6% 19.8%

15万円/年 0.4% 6.0% 8.2% 17.2% 22.8%

20万円/年 0.8% 7.4% 9.6% 20.4% 26.2%

20万円/年 以上 1.0% 8.4% 11.0% 23.0% 29.4%

蓄電池 初期投資費用×期待する 光熱費削減メリットに対応した導入割合

蓄電池 初期投資費用:万円/kW

15万円/kWh

10万円/kWh

5万円/kWh

5万円/kWh未満

光熱費 削減

メリット: 万円/年

5万円/年 1.8% 3.8% 23.0% 33.6%

10万円/年 6.2% 10.2% 41.2% 55.6%

15万円/年 7.6% 12.2% 46.6% 61.2%

15万円/年以上 8.8% 14.2% 51.6% 67.6%

<新築戸建住宅にPVを導入するケース>

蓄電池の初期投資費用が10万円/kWhに低下し、かつ光熱費削減メリットが10万円/年を超えれば、10%超の人が蓄電池を導入し、かつメリット額にも満足する。

蓄電池の初期投資費用が5万円/kWhまで低下すれば、光熱費削減メリット額に関わらず、蓄電池を購入する人の割合は大きく増加する。

<既築戸建住宅に、蓄電池を導入するケース(PVは既所有)>

Page 167: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 166

(2)調査結果 ③初期投資費用×光熱費削減メリット

設備初期投資費用として支払う意思のある金額と、期待する光熱費削減メリットに対応した導入割合を整理した。

(初期投資費用がX万円、かつ光熱費削減メリットがY万円であるとき、設備を購入し、メリット額にも満足する人の割合)

PV+蓄電池 初期投資費用×期待する光熱費削減メリットに対応した導入割合

既築

PV+蓄電池 初期投資費用:万円

250万円 200万円 150万円 100万円 50万円 50万円未満

光熱費削減メリット:万円/年

10万円/年 0.0% 1.0% 1.8% 3.6% 8.2% 10.2%

15万円/年 0.0% 1.0% 2.8% 5.6% 11.4% 14.0%

20万円/年 0.0% 1.8% 4.0% 8.2% 14.6% 17.2%

25万円/年 0.2% 2.2% 5.0% 9.6% 16.4% 19.0%

30万円/年 0.4% 2.6% 5.6% 10.4% 17.4% 20.0%

30万円/年以上 0.4% 2.6% 5.8% 11.2% 18.8% 21.8%

<既築戸建住宅にPV+蓄電池を導入するケース>

PV+蓄電池を導入することにより得られる1年当たりの光熱費削減メリットが、

PVと蓄電池の合計初期投資費用が200万円まで低下し、光熱費削減メリットが25万円/年 を超えると、2.2%程度の人がPVと蓄電池をセットで購入し、光熱費削減メリットにも満足する。

Page 168: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 167

(2)調査結果 ③初期投資費用×光熱費削減メリット

設備初期投資費用として支払う意思のある金額と、期待する光熱費削減メリットに対応した導入割合を整理

(初期投資費用がX万円、かつ光熱費削減メリットがY万円であるとき、設備を購入し、メリット額にも満足する人の割合)

新築

PV 初期投資費用×期待する 光熱費削減メリットに対応した導入割合

PV+蓄電池 初期投資費用×期待する 光熱費削減メリットに対応した導入割合

PV初期投資費用:万円/kW

25万円/kW

20万円/kW

15万円/kW

15万円/kW 未満

光熱費削減メリット:

万円/

10万円/年 5.4% 22.2% 27.4% 41.4%

15万円/年 6.8% 27.6% 34.0% 51.0%

20万円 8.0% 32.0% 39.0% 58.0%

20万円/年 以上

9.2% 37.2% 45.2% 66.8%

PV初期投資費用:万円/kW

250万円 200万円 150万円 100万円 50万円 50万円未満

光熱費削減メリット:

万円/

10万円/年 3.8% 7.0% 10.2% 16.4% 21.4% 26.0%

15万円/年 4.8% 9.6% 14.6% 22.4% 28.2% 33.0%

20万円/年 7.0% 15.4% 22.8% 32.6% 39.0% 44.8%

25万円/年 7.8% 17.4% 25.4% 35.4% 42.2% 48.0%

30万円/年 9.0% 19.8% 28.4% 39.8% 46.8% 52.6%

30万円/年 以上 10.2% 23.4% 33.0% 46.0% 53.8% 60.6%

<新築戸建住宅にPVを導入するケース>

PVの初期投資費用が25万円/kWから20万円/kWに低下すると、光熱費削減メリット額に関わらず、PVを購入する人の割合は大きく増加する。

PVと蓄電池の導入による光熱費削減メリットが、20万円/年 を超えると、設備を購入し、メリット額にも満足する人の割合が増加する。

<既築戸建住宅に、PV+蓄電池を導入するケース>

Page 169: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 168

(3)考察 設備導入へのハードルの比較(現状)

PVおよび蓄電池を購入しても良いと答えた価格の単純平均値を、現在の機器価格と比較すると、

既築戸建住宅にPVおよび蓄電池を導入するケース(②、③)は、新築戸建住宅に導入するケース(④、⑤)よりも、価格受容性が厳しい。

PVのみ導入するケース(②、④)よりも、PV+蓄電池をセットで導入するケース(③、⑤)の方が、価格受容性がわずかに厳しい。

光熱費削減メリット期待額を、現在の光熱費削減メリット額と比較すると、

新築・既築戸建住宅にPVのみ(②、④)、またはPV+蓄電池のセットを導入するケース(③、⑤)では、現在のメリット額の9割程度である。

PV既設置の既築住宅に蓄電池のみ追加導入するケース(①)では、現在の約2倍の光熱費削減メリットが期待された。

以上より、現状では、新築戸建住宅にPVまたはPV+蓄電池を導入するケース(④、⑤)が最も設備購入が期待される。次に、既築戸建にPVのみ導入するケース(②)、次いで、PV+蓄電池を導入するケース(③)が続く。PV既設置の既築住宅に蓄電池のみ追加導入するケース(①)が、最も設備購入へのハードルが高い。

既築戸建住宅 新築

戸建住宅 PV既設置 PV未設置

PVのみ (6kW、175万円)

- ② 62万円 (35%)

④ 86万円 (49%)

蓄電池のみ (5kWh、150万

円)

① 46万円 (31%)

- -

PV+蓄電池 (6kW+5kWh、

325万円) -

③ 93万円 (28%)

⑤ 146万円 (45%)

既築戸建住宅 新築 戸建住宅 PV既設置 PV未設置

PVのみ (6kW、15.6万円/

年) -

②14万円/年 (91%)

④14万円/年 (87%)

蓄電池のみ (5kWh、4.4万円/

年)

①8.9万円/年 (203%)

- -

PV+蓄電池 (6kW+5kWh、20

万円/年) -

③17万円/年 (86%)

⑤19万円/年 (94%)

初期投資許容額と現在の機器価格の比較 光熱費削減メリットの期待額と現在のメリットの比較

※ 括弧内は、現在のPVおよび蓄電池価格(工事費含む)に対する比率を示す。

数字が小さいほど、許容額に比べて実際の価格が割高であることを表す。

※ 括弧内は、同一スペックのPVおよび蓄電池設置による年間の光熱費削減

メリット期待額に対する比率を示す。

数字が大きいほど、期待額に比べて実際の削減額が少ないことを表す。

Page 170: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 169

(3)考察 設備導入へのハードルの比較(2020年)

2020年ごろを想定し、PV価格が20万円/kW、蓄電池価格が9万円/kWh(別途工事費用10万円)、電気料金が29円/kWhとなり、PV既設置世帯においては余剰電力の買取が終了した場合(買取価格8円/kWh)についても、同様に示す。

このとき、 PV既設置の既築住宅に蓄電池のみ追加導入するケース(①)のみ、 PVおよび蓄電池を購入しても良いと答えた価格の単純平均値が、機器価格を上回る。

PV既設置の既築住宅に蓄電池のみ追加導入するケース(①)では、2倍近くの光熱費削減メリットが期待される。新築・既築戸建住宅にPVのみ(②、④)では6割増し、PV+蓄電池のセットを導入するケース(③、⑤)では、3~4割増しの光熱費削減メリットが期待される。

以上より、2020年ごろには、初期投資許容額の点で、PV既設置の既築住宅に蓄電池のみ追加導入するケース(①)の、設備購入へのハードルが低くなる。

既築戸建住宅 新築

戸建住宅 PV既設置 PV未設置

PVのみ (6kW、120万円)

- ② 62万円 (52%)

④ 86万円 (72%)

蓄電池のみ (5kWh、55万円)

① 46万円 (83%)

- -

PV+蓄電池 (6kW+5kWh、

175万円) -

③ 93万円 (53%)

⑤ 146万円 (83%)

既築戸建住宅 新築 戸建住宅 PV既設置 PV未設置

PVのみ (6kW、8.6万円/

年) -

②14万円/年 (165%)

④14万円/年 (159%)

蓄電池のみ (5kWh、4.6万円/

年)

①8.9万円/年 (194%)

- -

PV+蓄電池 (6kW+5kWh、13.2万円/年)

- ③17万円/年 (130%)

⑤19万円/年 (143%)

※ 括弧内は、2020年のPVおよび蓄電池価格(工事費含む)想定に対する

比率を示す。

数字が小さいほど、許容額に比べて実際の価格が割高であることを表す。

※ 括弧内は、2020年の、同一スペックのPVおよび蓄電池設置による年間の光熱費削減メリット期待額に対する比率を示す。

数字が大きいほど、期待額に比べて実際の削減額が少ないことを表す。

初期投資許容額と将来の機器価格の比較 光熱費削減メリットの期待額と将来のメリットの比較

Page 171: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 170

Ⅲ.ソーラーシンギュラリティのインパクトに係る分析

1. 住宅用太陽光の導入ポテンシャル

2. 蓄電池等による自家消費の拡大トレンド

3. 蓄電池等による自家消費拡大が系統全体に与えるインパクト

Page 172: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 171

蓄電池等による自家消費拡大が系統全体に与えるインパクト

前章「II.ストレージパリティの定義を元にした、再生可能エネルギー電気の自家消費の意義に係る定量的分析」を参照のこと。

Page 173: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 172

Ⅳ.ストレージパリティの到達時期に係る分析

1. 太陽光パネル及び蓄電池等の蓄エネルギー機器、エネルギーマネジメントシステムの価格低下トレンド

2. 再エネ賦課金、託送料金等を含む系統電気料金上昇/下落トレンド

3. ストレージパリティの到達時期

Page 174: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 173

(1)PVシステム価格見通し ①文献総括

各国際機関等が近年公表したPVシステム価格の見通しについて、家庭用PVとユーティリティ用PVそれぞれを下表に整理した。

家庭用PVのシステム価格見通し($/kWdc)

出所)各種資料より作成

2015 2020 2025 2030 2035

DOE/EIA AEO

(2016) 3,400 2,200 1,800 1,700 1,600

BNEF

(2015)

3,000-

4,000

2,200-

3,100

1,800-

2,700

1,300-

2,000

1,300-

2,000

DOE/SunShot

(2015) 3,000 2,900 2,800 2,700

Rocky Mountain

Institute (2015) 3,900 3,000 2,400 2,300 2,200

BNEF

(2013) 2,500 2,000 1,800 1,700 1,700

2020年:$2,000-3,100 /kWdc 2030年:$1,300-2,300/kWdc

予測価格

ユーティリティ用PVのシステム価格見通し($/kWdc)

2015 2020 2025 2030 2035

IRENA

(2016) 1,800 1,200 800

BNEF

(2016) 1,300 970

GTM Research

(2016) 1,360 990

IEA WEO -EU

(2016) 1,300 1,100 1,000 900 900

IEA WEO -US

(2016) 2,400 1,800 1,500 1,300 1,200

BNEF

(2015)

1,500-

2,400

1,200-

1,900

1,000-

1,500

800-

1,200

800-

1,200

2020年:$1,000-1,900/kWdc 2030年:$800-1,300/kWdc

予測価格

Page 175: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 174

(1)PVシステム価格見通し ②DOE/EIA AEO (2016)

U.S. Department of Energy / Energy Information Administration, “Annual Energy Outlook 2016”

住宅用のPV設置価格(インバーター等周辺機器、工事費含む)について、2040年までの見通しを公表。

AEO 2016の想定

<住宅>

• $2,200/kWdc( 2020年)

• $1,800/kWdc( 2030年)

出所)EIA, Renewable Generation Technologies: Costs and Market Outlook, 2016

DOE/EIA AEOによる見通し

Page 176: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 175

(1)PVシステム価格見通し ③Rocky Mountain Institute(2015)

Rocky Mountain Institute, “The Economics of Load Defection”(2015)

住宅用PVのシステム価格について下図のとおり予想している。

<Rocky Mountain Institute>

• $3,000/kWdc( 2020年 )

• $2,300/kWdc( 2030年)

The PV costs use total installed costs, and therefore

include a grid-tied inverter.

A grid-tied inverter is not capable of islanding or

providing other off-grid capabilities.

In contrast, an off-grid inverter can operate without

a grid connection and includes a battery charging

system, additional control capabilities, and

additional

hardwire and wiring (but not batteries). An off-grid

inverter is 25–30% more expensive than a grid-tied

inverter. Using this as our basis, we applied a 25%

increase to the commercial inverter cost curve and a

30% increase to the residential inverter cost.

<BNEF 2013>

• $2,000/kWdc( 2020年)

• $1,700/kWdc( 2030年)

Rocky Mountain

Instituteの想定

出所)The Economics of Load Defection, Rocky Mountain Institute(2015)

住宅用

システム価格

Rocky Mountain Instituteによる見通し

Page 177: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 176

(1)PVシステム価格見通し ④DOE/SunShot(2015)

U.S Department of Energy, SunShot Initiative, “Photovoltaic System Pricing Trend 2015 Edition“

ユーティリティ用/コマーシャル/住宅用のPV設置価格(インバーター等周辺機器、工事費含む)について、2035年までの見通しを公表。

出所)U.S Department of Energy, SunShot Initiative , Photovoltaic System Pricing Trend 2015 Edition(2015)

DOE/SunShotの想定

<ユーティリティ用>

• $2,100/kW(2020年)

• $2,000/kW(2030年)

<コマーシャル>

• $2,500/kW(2020年)

• $2,200/kW(2030年)

<住宅用>

• $3,000/kW(2020年)

• $2,800/kW(2030年)

AEO2015のPV価格見通しは、2020年-2030年は、BNEFとIEAの見通しに極めて近い。2030年以降の価格減少は、ほぼフラットであり、BNEFとIEAに比較すると、保守的な見通し

なお、BNEFの(1)PVシステム価格見通し(2015)は、

<ユーティリティ用>

• 1,200-1,900/kW(2020年)

• 800-1,200/kW(2030年)

<住宅用>

• $2,200-3,100/kW(2020年)

• $ 1,300-2,000/kW(2030年)

Sources: International Energy Agency, “World Energy Outlook 2014,” November 2014 (New Policy & 450 Scenarios for utility-scale & commercial-scale); Bloomberg New Energy Finance, “H1 2015 North American PV Outlook” (01/16/15); U.S. Energy Information Administration, Annual Energy Outlook 2015 (June 2015). In years where projection was not made, most recent projection used.

住宅用

ユーティリティ用

コマーシャル

DOE/SunShotによる見通し

Page 178: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 177

(1)PVシステム価格見通し ⑤IRENA (2016)

IRENA, “Power to Change: Solar and Wind Cost Reduction Potential to 2025” (2016)

IRENAは、ユーティリティ用のPV価格(インバーター等周辺機器、工事費含む)について、2025年までの見通しを公表。

<ユーティリティ用>

• $1,100/kW(2020年)

• $800/kW(2025年)

IRENAの想定

出所)IRENA, Power to Change: Solar and Wind Cost Reduction Potential to 2025 (2016)

ユーティリティ用

IRENAによる見通し

Page 179: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 178

(1)PVシステム価格見通し ⑥BNEF (2016)

Bloomberg New Energy Finance(BNEF), “INTPOW SOLAR DAY 2016 PV Market Outlook”(2016)

BNEFは、ユーティリティ用のPV価格(インバーター等周辺機器、工事費含む)について、2020年までの見通しを公表。

出所)BNEF, INTPOW SOLAR DAY 2016 PV Market Outlook(2016)

<ユーティリティ用>

• $1,300/kWdc(2015年)

• $970/kWdc(2020年)

BNEFの想定

ユーティリティ用

BNEFによる見通し

Page 180: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 179

(1)PVシステム価格見通し ⑦IEA WEO(2016)

IEA, “World Energy Outlook 2016”

2040年までのユーティリティ用のPV導入コスト(インバーター含む)について下図のとおりの見通しを公表。

出所)IEA, World Energy Outlook 2016

<ユーティリティ用>

EU・中国・インド

• $1,100/kW(2020年)

• $900/kW(2030年)

米国

• $1,800/kW(2020年)

• $1,300/kW(2030年)

日本

• $1,700/kW(2020年)

• $1,300/kW(2030年)

This strong growth supports technology gains that

reduce both the costs of solar modules and other

costs, driving down the global average capital costs

of utility-scale projects in some major markets to

below $800/kW in 2040 .Regional variations diminish

over time but remain, to some extent, largely due to

local, non-module costs, which include other

hardware (cabling, racking and mounting, and grid

connection), installation (including

inspection) and “soft costs” (largely financing,

permitting and customer acquisition).

WEO2016の想定 ユーティリティ用

IEA WEOによる見通し

Page 181: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 180

(1)PVシステム価格見通し ⑧GTM Research(2016)

GTM Research, “U.S. Solar PV Price Brief H1 2016: Pricing, Breakdowns and Forecasts”, 2016

GTM Researchは、ユーティリティ用のPV導入コスト(地面置き、インバーター等周辺機器含む)について、 2020年までの見通しを公表

<ユーティリティ用>

• $990/kWdc(2020年)

GTM Research estimates the price for a utility-scale fixed-tilt ground-mount PV system to hover around $1.25 per

watt today. Modules represent half of the cost, additional hardware such as inverters and balance-of-system

components represent 22 percent, and the remaining 28 percent is made up of soft costs.

GTM Researchの想定

出所)GTM Research, U.S. Solar PV Price Brief H1 2016: Pricing, Breakdowns and Forecasts

ユーティリティ用

GTM Researchによる見通し

Page 182: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 181

(1)PVシステム価格見通し ⑨参考

資源エネルギー庁 太陽光発電競争力強化研究会におけるPVシステム価格の目標価格は、非住宅PVについては、2020年20万円/kW、2030年10万円/kW。住宅用PVについては、2020年以降できるだけ早い時期に20万円/kWの達成を目指す。

出所) 資源エネルギー庁、電源種別(太陽光・風力)のコスト動向等について(平成28年11月)

<参考>資源エネルギー庁 太陽光発電競争力強化研究会 PVシステム目標価格

太陽光発電競争力強化研究会によるPVシステム目標価格

Page 183: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 182

(2)蓄電池システムの価格見通し ①文献総括

各国際機関等が近年公表した、EV向け蓄電池と定置用リチウムイオン池の価格見通しを、それぞれ下表に整理した。

2030年の定置用リチウムイオン電池 バッテリーパックの価格の予測値は、約150~250$/kWhと幅がある。

定置用リチウムイオン電池の価格見通し($/kWh)

出所)各種資料より作成

2015 2020 2025 2030 2040 2050

BNEF (2016) 384 262-

289

182-

223

147-

188 推計値:次頁参照

IRENA (2015) 350

Rocky Mountain

Institute (2015) 550 400 300 250 200 99

Navigant (2013) 400 300 250 200

BNEF (2013) 700 350 250 200

BCG (2010) 360-

440

McKinsey &

Company (2016) 200

160

以下

Navigant (2014) 550 200

EV向け蓄電池の価格見通し($/kWh)

2015 2020 2025 2030 2035 2040

IEA WEO

(2016) 210 125 100

BNEF

(2016) 350

200-

250

120-

180

80-

120

IRENA

(2015)

300-

410 200

DOE/EIA

(2012) 275 200 150 125

GM

(2015) 145

(2016) 120

100 (2022)

2020年:約200$~275$/kWh 2030年:約80$~150$/kWh

予測価格 (モジュール)

2020年:約260~400$/kWh 2030年:約150~250$/kWh

予測価格 (バッテリーパック)

バッテリーパック

セル

モジュール

セル

Page 184: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 183

(2)蓄電池システムの価格見通し ①文献総括 《参考》

2025年までの定置用リチウムイオン電池のバッテリーパック価格について、Bloomberg New Energy Finance (BNEF) が2016

年に公表している最新の見通しでは、Conservative ForecastとAggressive Forecastを下図のとおり予想している。

上記見通しのバッテリーパック価格(2015年-2025年)より、2030年の価格を推計。

2030年の定置用リチウムイオン電池のバッテリーパック価格は、147~188$/kWhと推計される。

出所)https://www.bloomberg.com/gadfly/articles/2016-09-04/battery-assault

リチウムイオン電池(バッテリーパック)の価格につき、Conservative

forecastとAggressive forecastを実施 • $384/kWh(2015年) • $262-289/kWh(2020年) • $182-223/kWh(2025年)

BNEFの想定

定置用リチウム

バッテリーパック

リチウムイオン電池(バッテリーパック)2030年価格推計

(BNEFの見通しに基づく)

y = 0.575 x2 - 2,337.070 x + 2,376,604.392

R² = 0.999

y = 0.807 x2 - 3,277.877 x + 3,330,622.189

R² = 0.999

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

2015 2020 2025 2030

$/kW

h

BNEF(2016) Conservative Forecast BNEF(2016) Aggressive Forecast

$147/kWh

$188/kWh

BNEF(2016)の見通し

Page 185: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 184

(2)蓄電池システムの価格見通し ②本調査で使用する見通し

資源エネルギー庁調査では、2020年蓄電池システム目標価格9万円/kWhのうち、バッテリーパック分を3.4万円/kWhと見込む。

蓄電池メーカーへのアンケート調査を実施(左下図参照)して、目標価格を設定。

目標価格9万円/kWhに向けて電池部分、PCS、筐体、流通コストそれぞれでコスト6割減が必要。

コスト低減に向けて、具体的には販売戦略や設計変更、標準化などが検討されている。

2030年のリチウムイオン電池 バッテリーパックの価格を、各国際機関等が近年公表した価格見通しから、150$/kWh、200$/kWh、250$/kWhの3パターン想定。

2030年の蓄電池システムの価格構成要素割合が、2020年度の目標価格の内訳と同一とすると、対応する蓄電池システム価格は、それぞれ4.6万円/kWh、6.1万円/kWh、7.6万円/kWhとなる。(1$=115円として試算)

バッテリーパック価格

(2030年)

対応する蓄電池システム価格

(2030年)

150$/kWh 4.6万円/kWh

200$/kWh 6.1万円/kWh

250$/kWh 7.6万円/kWh

家庭用蓄電池システムの価格内訳 2030年における蓄電池システム価格見込

出所)資源エネルギー庁 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査(定置用蓄電池の普及拡大及びアグリゲーションサービスへの活用に関する調査)

(バッテリーパック)

Page 186: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 185

(2)蓄電池システムの価格見通し ③IEA WEO(2016)のEV向け蓄電池の価格見通し

IEA, “World Energy Outlook 2016”

IEAが毎年公表しているWEOにおいては、EV向けBatteryの価格目標について下図のとおり分析をしている。

EV向けであることから、モジュールの価格の見通し。

Costs have also fallen to less than $270/kWh for batteries used in plug-in

hybrid vehicles (PHEVs) and about $210/kWh for battery electric vehicles

(BEVs).

in the New Policies Scenario brings projected average battery costs for BEVs

down to around $125/kWh by 2025 and just above $100/kWh by 2040.

WEO2016の想定

出所)World Energy Outlook 2016, IEA

$/kWh

EV向け

モジュール価格 270

210

125

100

2015 2025 2040

IEA WEOによる見通し

Page 187: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 186

(2)蓄電池システムの価格見通し ④BNEF(2016)のEV向け蓄電池の価格見通し

Bloomberg New Energy Finance (BNEF)

2016年、EV用 リチウムイオン電池(バッテリーパック)の価格見通しについて、下図のとおり発表している。

出所)左図:https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-06-13/batteries-storing-power-seen-as-big-as-rooftop-solar-in-12-years 出所)右図:Bloomberg New Energy Finance Summit プレゼン資料, BNEF(2016 April)

BNEFの想定

EV向け

モジュール価格

<Moderate Scenario>Learning rate=14%の場合、

2020年には、約$250/kWh

2025年には、約$180/kWh

2030年には$120/kWhまで価格が低下する

<Aggressive Scenario> Learning rate=22%の場合、

2020年には、約$200/kWh

2025年には、約$120/kWh

2030年には$80/kWhまで価格が低下する

BNEF(2016)による見通し

Page 188: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 187

(2)蓄電池システムの価格見通し ⑤BCG(2010)のEV向け蓄電池の価格見通し

The Boston Consulting Group, “Batteries for Electric Cars Challenges, Opportunities and Outlook to 2020”(2010)

2010年のレポートで、2020年時点のEV向けバッテリーの価格について、下図のとおり分析している。

NCA(リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物)系のリチウムイオン電池を想定。

出所)Batteries for Electric Cars Challenges, Opportunities and Outlook to 2020, The Boston Consulting Group (2010)

From 2009 to 2020, the price that OEMs pay for

NCA batteries will decrease by roughly 60 to

65 %. So a nominal-capacity 15kWh NCA

battery pack that currently cost $990/kWh to

$1220 /kWh will cost $360/kWh to $440/kWh

in 2020.

The price to consumers similarly fall, from

$1,400/kWh to $1,800/kWh in 2009 to

$570/kWh to $700/kWh in 2020.

The Boston Consulting

Groupの想定

EV向け

モジュール価格

BCGによる見通し

Page 189: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 188

(2)蓄電池システムの価格見通し ⑥DOE/EIA (2012)のEV向け蓄電池の価格見通し

U.S. Energy Information Administration, Energy Information Administration, “Annual Energy Outlook 2012 “

米国 が公表したAnnual Energy Outlook 2012 においては、EV向けBatteryの価格について、下図のとおり分析している。

EV向けであることから、モジュールの価格の見通し。

Reference case 及びHigh Technology Battery caseの2ケースについての見通し。

<High Technology Battery case>

・$150/kWh(2030)

<Reference case>

・約$500/kWh(2020)

・約$300/kWh(2035)

The AEO2012 High Technology Battery case examines the

potential impacts of battery technology breakthroughs by

assuming

the attainment of program goals established by DOE’s

Office of Energy Efficiency and Renewable Energy (EERE)

for high-energy

battery storage cost, maximum depth of discharge, and

cost of a nonbattery traction drive system for 2015 and

2030.

Annual Energy Outlook

2012の想定

出所)Annual Energy Outlook 2012, EIA

EV向け

モジュール価格

DOE/EIAによる見通し

Page 190: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 189

(2)蓄電池システムの価格見通し ⑦GM(2015)のEV向け蓄電池の価格見通し

General Motors

2015年、General Motorsは、Chevrolet Bolt搭載のバッテリーセルコストの価格見通しについて下図のとおり公表。

Chevrolet Bolt搭載のバッテリーセル価格

• $145/kWh(2016年実値)

• $120/kWh(2020年予測値)

• $100/kWh(2022年予測値)

General Motorsの想定

GMによる見通し

EV向け

セル価格

Page 191: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 190

(2)蓄電池システムの価格見通し ⑧BNEF(2016)の定置用リチウムイオン電池の価格見通し

Bloomberg New Energy Finance (BNEF) (2016)

2025年までの定置用リチウムイオン蓄電池(バッテリーパック)の価格について、下図のとおり予想している。

出所)https://www.bloomberg.com/gadfly/articles/2016-09-04/battery-assault

リチウムイオン蓄電池(バッテリーパック)の価格につき、Conservative forecastとAggressive forecastを実施 • $384/kWh(2015年) • $262-289/kWh(2020年) • $182-223/kWh(2025年)

BNEFの想定

定置用リチウム

バッテリーパック

BNEFによる見通し

Page 192: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 191

(2)蓄電池システムの価格見通し ⑨IRENA(2015)の定置用リチウムイオン電池の価格見通し

Renewables and Electricity Storage A Technology roadmap for Remap 2030 (2015)

2020年の定置用リチウムイオン蓄電池(バッテリーパック)及びEV用蓄電池(モジュール)の価格について、下図のとおり予想。

出所)Renewables and Electricity Storage A Technology roadmap for Remap 2030, IRENA (2015)

Based on discussions between utilities and

vendors, the storage costs will have reduced

to USD 525/kW or USD 350/kWh by 2020.

Assuming around 6 000 cycles for these

types of systems, the costs of storing 1 kWh

are around USD 0.06/kWh.

In comparison, the current costs for battery

packs for electric vehicles are between

USD 300- 410/kWh, and are expected to

reduce to around USD 200/kWh in 2020.

IRENAの想定

EV向け

モジュール価格

定置用リチウム

バッテリーパック

IRENAによる見通し

Page 193: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 192

(2)蓄電池システムの価格見通し ⑩Rocky Mountain Institute(2015)の定置用リチウムイオン電池の価格

見通し

Rocky Mountain Institute, “The Economics of Load Defection”(2015)

米 Rocky Mountain Instituteが発行した The Economics of Load Defection(2015)では、定置用リチウムイオン電池(バッテリーパック)の価格について下図のとおり予想している。

BNEFの価格見通し(2012-2030)のうち、2021-2030の予想価格を基に、価格下落率を1.9(%/年)と設定して、2050年までの価格を予想している。

In order to perform our modeling

through 2050, we conservatively

held the battery price reduction

percentage constant year-over-

year through 2050. Our final

projection applied a 1.9% reduction

to each year’s price, resulting in

$99/kWh by 2050.

We chose to use only the 2021–2030

data (BNEF’s battery projections )

for our 1.9% annual price reduction

since this range presented a steady

and much more conservative

outlook, compared to 2012–2020,

which varied by 4–15% each year

Rocky Mountain

Instituteの想定

出所)The Economics of Load Defection, Rocky Mountain Institute(2015)

定置用リチウム

バッテリーパック

Rocky Mountain Instituteによる見通し

Page 194: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 193

(2)蓄電池システムの価格見通し ⑩Navigant(2013)の定置用リチウムイオン電池の価格見通し

Navigant

2013年時点で、リチウムイオン蓄電池(バッテリーパック)の価格について、下図のとおり見通している。

2014年時点で、リチウムイオン蓄電池(セル)の価格について、下図のとおり見通している。

出所)“The Lithium Ion Inflection Point: Advanced Batteries and the Coming Boom

in the Global Li-ion Market.” Navigant Research. November 5, 2013 webinar.

大容量リチウムイオン電池の価格は、2020年に約$180/kWhまで低下する

ユーティリティスケールで利用されるリチウムイオン電池のセル価格は、

2017年に$300/kWh、2020年に$200/kWhまで低下する

Navigantの想定

出所)Navigant Research (Jaffe and Adamson, 2014)

定置用リチウム

バッテリーパック

定置用リチウム

セル

Navigantによる見通し

Page 195: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 194

(2)蓄電池システムの価格見通し ⑪NEDO 二次電池技術開発ロードマップ 2013

自動車用二次電池ロードマップによると、自動車用二次電池の価格は、2020年頃に約2万円/kWh、2030年頃に約1万円/kWh(Battery Management Unit等を含むパックでの表記)。

自動車用二次電池ロードマップ

出所)NEDO 二次電池技術開発ロードマップ 2013

Page 196: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 195

(2)蓄電池システムの価格見通し ⑫NEDO 二次電池技術開発ロードマップ 2013

定置用二次電池ロードマップによると、定置用二次電池の価格は、2020年頃に約2.3万円/kWh(PCSを含む電池システムでの表記)。

出所)NEDO 二次電池技術開発ロードマップ 2013

定置用二次電池ロードマップ

Page 197: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 196

(3)HEMS価格見通し

HEMSの価格見通し(時系列)は公表されていないが、総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会では、HEMSの生産台数と価格低下の関係、投資回収年数と導入率の関係を示している。

これによると、量産時点(年間生産台数1,000,000台)では、HEMS価格は約2万円/台 まで低下の見通し。

出所)総合資源エネルギー調査会 第3回省エネルギー部会 配付資料 資料3-3 今後の省エネルギー対策の概要(案)

※エコーネットコンソーシアムからのヒアリング結果に基づく住環境計画研究所推定

※ 量産時点は、年間生産台数が 100万台に達した時点

※ Analysis of the Climate Change Technology Initiative(DOE) と 我が国における

1998 年度のプリウスの導入状況から省エネ型製品に対する需要家側の導入曲線を推定

年間生産台数(台/年)

価格

(万円

/台)

導入

率(

%)

単純投資回収年数(年)

HEMSの生産台数と価格低下の関係 HEMSの投資回収年数と導入率の関係

Page 198: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 197

Ⅳ.ストレージパリティの到達時期に係る分析

1. 太陽光パネル及び蓄電池等の蓄エネルギー機器、エネルギーマネジメントシステムの価格低下トレンド

2. 再エネ賦課金、託送料金等を含む系統電気料金上昇/下落トレンド

3. ストレージパリティの到達時期

Page 199: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 198

系統電気料金の見通し ①総括

系統電気料金の内訳としては下図のとおり、卸電力、託送料金、小売マージン、その他に分類できる。

2020年度の発送電分離に向けて需給調整市場(リアルタイム市場)等の市場整備が進み、各種電力価格に影響を及ぼす見通し。

これらを総合的に考えて、現在の系統電気料金26円/kWhから+3円/kWh程度の小売の低圧電気料金の上昇の可能性があるとして、「I. ストレージパリティの定義の設定」の分析を行った。

円/kWh

卸電力価格

託送料金

小売マージン

その他注

現在 2020

注 再エネ賦課金、燃料調整費等

▲ 電力供給過多によるネガティブプライス(↓)

2030

▲ 再エネ拡大に起因 する系統増強 (↑)

▲ 自家発自家消費促進

による系統利用率低下 (↑)

▲ 需給調整市場 の創設 (↑↓)

▲ ストレージパリティ

の影響 (↓)

▲ 発送電分離による

システム導入等 (↑)

賦課金の ピーク年度(↑)

2040

▲ 原子力の賠償・廃炉費の負担 (↑)

▲ 化石燃料価格は 上昇傾向(↑)

*()内の矢印は変化の方向性。 (↑)はコスト(料金)上昇、(↓)はコスト(料金)減少、(↑↓)はどちらも起こりうる。

平均11 円/kWh

(6円~16円)

8.7 円/kWh

約4 円/kWh

1.58 円/kWh

最大

+3円/kWh

合計:

26 円/kWh

※ 現在の数値は2015年度平均より。託送料金、小売マージン等は低圧を想定。託送料金は2016年度平均値より。小売マージンは合計小売価格との差分より作成。

資源エネルギー庁では、長期エネルギー需給見通しで「2030年度における電力コストを現状よりも低減する」旨を公表している。ここでは、送電力コストではなく需要家に

提供される場合の価格についての分析を行っている。

系統電気料金の見通し

Page 200: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 199

系統電気料金の見通し ②卸電力料金の見通し(1/2)

電力システム改革を受けて、貴省の貫徹小委および電力・ガス基本政策小委傘下の制度検討作業部会において、各種市場の制度設計が進められている。

これらにより、市場参画者の増加に伴う価格競争による低減効果が一定程度見込まれる。

出所)市場整備WG

電力システム改革を受けた各種市場の制度設計

Page 201: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 200

系統電気料金の見通し ②卸電力価格の見通し(2/2)

WEO2016においては、どのシナリオにおいても概ね

燃料費は上昇傾向であり、全体的な卸価格は上昇となる。

2015年7月に公表された長期エネルギー需給見通しでは、

電源構成にしめる化石燃料由来の火力発電の割合は

減少するため、送電力コスト自体は低減される見通し。

出所)World Energy Outlook 2016,IEA

WEOによる燃料費の見通し(原油)

WEOによる燃料費の見通し(上:天然ガス、下:石炭)

Page 202: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 201

系統電気料金の見通し ③託送料金の見通し

各種市場創設に当たり、その費用負担のあり方について検討が進められている。

原子力事故に係る賠償への備えに関する負担については、その一部を託送料金において回収する場合も検討されており、仮にそのような場合は託送料金の押し上げとなる可能性がある。

現状の託送料金の回収方法も一部見直しが検討されており、場合によっては託送料金の押し上げになる需要家が発生することもありえる。

出所)電力システム改革貫徹のための政策小委

託送料金での費用回収対象の検討状況

Page 203: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 202

系統電気料金の見通し ④賦課金の見通し(1/2)

電力中央研究所において、2015年2月にFIT賦課金の見通しを分析。

試算の前提として以下を想定している。

賦課金単価 = 見込み総需要電力量

(買取見込み額-回避可能費用)+事務費見込み注

賦課金単価の計算方法

減免措置

以下の2つの要件を満たす事業所に対しては、事業所が支払う賦課金の8割が減免される。減免については国の予算(エネルギー特別会計)により補填。ドイツのFITのように、需要家等によって穴埋めをする形式は取っていない。

①売上高1,000円当たりの電力使用量(原単位)が、

以下の事業を行う事業所であること

• 製造業では平均値(0.7kWh/千円)の8倍を超える

• 非製造業では平均値(0.4kWh/千円)の14倍を超える

②年間の電気使用量が100万kWh以上であること

試算の諸元

(1)買取価格

新規認定分(2012-2014年度)は実績値。

移行認定分は非住宅PV30円、風力17円。

2015年度以降は、PV住宅用は2円、

PV非住宅用は4円分を毎年引き下げと想定

PV以外は2015年度以降も同じと想定。

(2)回避可能費用

回避可能単価は2014年9月の加重平均値

2012・2013年度認定分:9.66円/kWh、

2014年度以降認定分:11.88円/kWh

(3)費用負担調整機関の事務費見込み

この試算では想定せず

(4)見込み総需要電力量

2014年度賦課金算定時の値(8,670億kWh)を使用

注 費用負担調整機関の事務費

出所)「太陽光発電・風力発電の大量導入による固定価格買取制度(FIT)の賦課金見通し」(電中研、2015.2)より作成

賦課金の見通し(電力中央研究所における試算方法)

Page 204: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 203

系統電気料金の見通し ④賦課金の見通し(2/2)

ピーク年度における賦課金単価は、最大ケース(③)で4.72円/kWh(2032年度)、最小ケース(①)で2.57円/kWh

(2020年度)。

出所)「太陽光発電・風力発電の大量導入による固定価格買取制度(FIT)の賦課金見通し」(電中研、2015.2)より作成

2.57円/kWh

4.72円/kWh

最大ケース 第9回新エネ小委の想定を踏まえて、2030年度の累積導入量がPVで1.4

億kW、WTで1,140万kWに達すると想定

最小ケース

(接続可能量)

PVは中三社は2014年10月末時点の新規認定分まで、その他7社は接続可能量までと想定。

WTは2014年10月末時点の新規認定分までと想定。

賦課金の見通し(電力中央研究所における試算結果)

Page 205: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 204

Ⅳ.ストレージパリティの到達時期に係る分析

1. 太陽光パネル及び蓄電池等の蓄エネルギー機器、エネルギーマネジメントシステムの価格低下トレンド

2. 再エネ賦課金、託送料金等を含む系統電気料金上昇/下落トレンド

3. ストレージパリティの到達時期

Page 206: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 205

ストレージパリティの到達時期

ストレージパリティの到達時期は蓄電池および太陽光発電の価格にも依存するが概ね2020年、2020年代後半頃。

FIT買取期間終了後のPVに対して蓄電池を導入する場合は2020年頃となる見通し。

PVと蓄電池を新規導入する場合は2020年代後半頃となる見通し。

蓄電池追加(FIT買取期間終了後に蓄電池追加導入) PV+蓄電池(新規で太陽光発電と蓄電池を同時導入)

時期 2020年頃 2020年代後半

価格見通し

国内の蓄電池の価格目標は9万円/kWh

諸外国では2020年で定置用蓄電池パック(PCS、筐体等含まず)で3~4万円/kWh程度となる見通し

PVは4.5kWが導入されているものがFITにより設備償却済みと想定。このときの最適蓄電池容量は6kWh

系統電気料金は燃料費増加に伴う卸価格の上昇や賦課金の上昇により、3円/kWh程度の増加を見込む

蓄電池の価格は7万円/kWh程度まで低下していると想定。PVは各種目標・見通し等から20~30万円/kW程度と想定

諸外国では2030年で住宅用PVが15~25万円/kW、定置用蓄電池パック(PCS、筐体等含まず)で1.5~2.5万円/kWh程度となる見通し

系統電気料金は燃料費増加に伴う卸価格の上昇や賦課金の上昇により、3円/kWh程度の増加を見込む

備考

自家消費の増加や昼夜間値差による収益を元に需要家のメリットを想定。系統への貢献などによる収益は見込まず。

自発的な蓄電池の活用による系統への貢献は限定的であり、その効果を増大させるためには、需要家に何らかのシグナル・報酬を与えて運転パターンを変化させる工夫が必要

PVや蓄電池の価格次第では、何も設備を入れない状態より、PVのみ、もしくはPVと蓄電池を入れた方が経済的メリットが出る

VPP等により制御を行うことで収益増大、系統への貢献向上に資する可能性がある

+ +

Page 207: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 206

Ⅴ.ソーラーシンギュラリティ実現の必要性について

ストレージパリティの実現がエネルギーミックスに与える影響

Page 208: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 207

ストレージパリティの実現がエネルギーミックスに与える影響

蓄電池価格が十分低下し、太陽光発電を保有する低圧需要家において自発的な蓄電池の導入・運用が進むことが、2030

年のエネルギーミックスに与える影響について、以下の観点から考察する。

① マクロ系統運用への影響

② 設備形成への影響

③ FIT買取費用への影響

エネルギーミックス

出所)経済産業省、長期エネルギー需給見通し、同参考資料(平成27年7月)

Page 209: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 208

①マクロ系統運用への影響

2030年に需要家が自発的に導入・運用する蓄電池は、蓄電池の導入が全くないときと比較すると、短周期変動の抑制と余剰電力の発生を緩和することができる。

これにより、再エネの出力制御を削減し、また火力発電の稼働を削減することができる。これは、3Eにおいて、燃料費111億円、CO2排出量54万トン削減、自給率0.06ポイント上昇に相当する。

このような影響は、蓄電池の価格が低下し、蓄電池の導入量が増加するほど大きくなる。

長期エネルギー

需給見通し

231万戸

(4万円/kWh)

131万戸

(6万円/kWh)

63万戸

(8万円/kWh)

発電量

石炭火力 約2,800億kWh ▲0.4億kWh ▲0.9億kWh ▲1.4億kWh

天然ガス火力 約2,900億kWh ▲3.4億kWh ▲7.1億kWh ▲11.2億kWh

石油火力 約320億kWh ▲1.0億kWh ▲1.8億kWh ▲2.6億kWh

再エネ 約2,400億kWh +5.5億kWh +11億kWh +17億kWh

Energy

security 自給率増加 24.3%

+0.09 [%ポイント]

(0.36%)

+0.06 [%ポイント]

(0.23%)

+0.03 [%ポイント]

(0.12%)

Environm

ent CO2削減 3.6億-tCO2

▲83 [万-CO2トン]

(0.23%)

▲54 [万-CO2トン]

(0.15%)

▲27 [万-CO2トン]

(0.07%)

Economic

efficiency 燃料費削減 5.3兆円

▲169 [億円]

(0.32%)

▲111 [億円]

(0.21%)

▲55 [億円]

(0.10%)

蓄電池導入量

※ ()内の%はそれぞれ2030年の目標値(長期需給見通し)に対する比率

自発的に導入された蓄電池が2030年のマクロ系統運用へ与える影響

Page 210: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 209

②設備形成への影響

2030年に需要家が自発的に導入・運用する蓄電池は、蓄電池の導入が全くないときと比較すると、電力系統上の設備の合理化や必要対策量の削減を通じて、電力コストを削減できると期待される。

例えば、住宅地区において、蓄電池導入が増加すれば逆潮流量を削減できる。しかし、配電電圧の逸脱の最大値を緩和するには至らず、電圧対策費の削減効果までは見られなかった。この効果を発現させるためには、定額の電気料金下で需要家が自身のメリットを最大化する運転ではなく、何らかのシグナル・報酬を与えて運転パターンを変化させる工夫が必要となる。

その他の効果も、2030年までに想定される住宅のみでの蓄電池の導入では、量的・制度的に電力コストの削減効果まで至らないと考えられるが、低圧需要家でのストレージパリティをきっかけとして蓄電池価格低下・導入がさらに進み、系統側でも積極的に需要家側蓄電池を活用する工夫を行うことで、これらの効果も発現すると考えられる。

期待される設備削減効果 2030年の自発的導入・運用による効果 効果を発現させるための条件・方策

送配電

配電網電圧対策設備の削減 • 住宅地区において、蓄電池導入量自体はインパク

トを持つ量だが、需要家が自身のメリットを最大化する運転では効果なし

• 需要家に何らかのシグナル・報酬を与えて運転パターンを変化させる工夫

送配電線潮流制約・バンク逆潮流対策設備の削減

• 住宅のみでの蓄電池の導入では、量的にも効果は小さいと考えられる

• 上記に加え、低圧需要家でのストレージパリティをきっかけとして蓄電池価格低下・導入がさらに進展

離島・へき地等、高供給コスト地域への供給の合理化

• 需要家が自発的に導入する程度の蓄電池設備容量では、オフグリッドに至らない

• 送配電事業者の協力による設備導入等

系統需要減による送配電設備のスリム化、投資繰延べ効果

• 偏った地域に導入が進むとその経済効果が十分にならない可能性

• 電気事業収益の確保のための料金体系の変更

• 送配電事業者における需要家の自発的な蓄電池導入を、ロングタームの設備計画に反映させる

発電

老朽火力発電設備の削減 • 需要家の判断に運転が任されており、ディスパッチ

可能な火力と価値が異なると考えられる • VPP等を通じた効果の確実化

大型電源投資困難化の中での電源設備の確保

• 電力市場整備が進む中で大型電源投資が困難化する中で、小規模かつ短いリードタイムの導入が可能

• 電源の固定化の対策が必要(寿命や優遇措置期間終了後の離脱防止)

自発的に導入された蓄電池が2030年の設備形成へ与える影響

Page 211: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 210

③FIT買取費用への影響

余剰電力買取による買取費用は、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギー導入量の制約になっている。

余剰電力の自家消費の拡大は、買電価格が高くなれば、需要家にとってもメリットの拡大につながる。

住宅PVの導入促進策を、余剰電力買取から、蓄電池併設による余剰電力自家消費に誘導することができれば、買取費用・賦課金を抑制することにも寄与する。

余剰電力買取から蓄電池併設への誘導のイメージ

余剰電力買取なしのPV導入

初期投資: PV 25万円/kW×4.5kW

売電率: 60%

買電価格(自家消費メリット):29円/kWh

余剰電力買取価格:8円/kWh(卸電力価格)

⇒15年間のメリット総額:約20万円

余剰電力買取ありのPV導入

初期投資: PV 25万円/kW×4.5kW

売電率: 60%

買電価格(自家消費メリット):29円/kWh

余剰電力買取価格:11.5円/kWh

⇒15年間のメリット総額:約37万円

余剰電力買取なし時のPV+蓄電池導入

初期投資: PV 25万円/kW×4.5kW

+ 蓄電池:6万円/kWh×6kWh

余剰電力の蓄電可能比率: 60%

充放電効率: 90%

買電価格(自家消費メリット):29円/kWh

売電価格:8円/kWh

⇒15年間のメリット総額:約37万円

※設備利用率は13.7%で算出

Page 212: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 211

Ⅵ.海外調査

Page 213: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 212

1.海外調査の目的

本調査に関連する、以下に関する文献内容を整理した。

I. ストレージパリティの定義の設定/IV. ストレージパリティの到達時期に係る分析

III. ソーラーシンギュラリティのインパクトに係る分析

なお以降、以下の概念を「グリッドパリティ」「ストレージパリティ」と呼ぶ(文献によって呼び方が異なる場合がある)。

「グリッドパリティ」:PVコストが、系統電気料金と等しくなる状況。

「ストレージパリティ」:PV+蓄電池コストが、系統電気料金と等しくなる状況。

発行機関 文献名 発行年 対象国 概要

本調査との関連項目

ストレージパリティの定義

ストレージパリティの到達時期

ソーラーシンギュラリティのインパクト

a) Tam Hunt SOLAR ―Why our Energy Future

is so Bright 2015 米国 再生可能エネルギーのなかで最も普及

し重要な役割を担うPVについて議論。 ○

b) Martine

Ammon (EuPD.

Research)

Status Quo ―Storage systems

and PV in a global context 2013 独国

欧州 グリッドパリティとストレージパリティの到達時期について分析。 ○ ○

c) Germany

Trade & Invest

The energy storage market in

Germany 2016 独国 ストレージパリティの到達時期について

分析。 ○ ○

d) Rocky

Mountain

Institute

(2014)

The Economics of Load Defection ―When and where distributed solar

generation plus storage competes with

traditional utility service ―

2014 米国

州別 オフグリッドを前提としたストレージパリティについて感度分析を行い、パリティ到達による需要家の「グリッド脱落」の影響を評価。

○ ○ ○

e) Rocky

Mountain

Institute

(2015)

The Economics of load Defection ―How grid-connected solar-plus-battery

systems will compete with traditional

electric service, why it matters, and

possible paths forward―

2015 米国 需要家の「グリッド脱落」による影響を評価し、「統合されたグリッド」を提言。

調査対象文献

Page 214: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 213

2.ストレージパリティの定義と到達時期

ストレージパリティの定義として、オングリッド(系統接続)のまま一定容量・稼働率のPV+蓄電池導入を想定している文献(b,

c)と、オフグリッドを想定している文献(d)に大別される。

前者の定義では、欧州諸国でも既にストレージパリティに達している国がある。後者の定義では、電気料金の高い米国ハワイ州でも2022年以降である。

発行機関 ストレージパリティ等の定義 グリッドパリティ到達時期と条件 ストレージパリティ到達時期と条件

a) Tam Hunt PV価格が非常に安くなり、(火力発電含めた)電源のコストと同等になることを「ソーラーシンギュラリティ」と呼ぶ。

• 記載なし • 記載なし

b) Martine

Ammon (EuPD.

Research)

グリッドパリティをPVのLCOEが家庭用系統電気料金と同等となること、ストレージパリティをPV+蓄電池のLCOEが家庭用系統電気料金と同等となることと定義。

• 2011年

• 電気料金 0.26 €/kWh

• PV価格 2,200 €/kW

• 2016年

• 電気料金 0.32 €/kWh

• PV価格 1,300 €/kW

• 蓄電池価格 1,500€/kWh(6kWh)

c) Germany

Trade & Invest

同上 • 2011年

• 電気料金 0.26 €/kWh

• PV価格 BSW* 2015システム価格

• 2017年

• 電気料金 0.29 €/kWh

• PV価格・蓄電池価格 BSW* 2015システム価格 (蓄電池容量不明)

*BSW: Bundesverband Solarwirtschaft; ドイツ太陽光工業協会

d) Rocky

Mountain

Institute

オフグリッドを前提として、ストレージパリティをPV+蓄電池のコストが家庭用系統電気料金と同等になることと定義。

• 記載なし ハワイ州

• 2022年

• 電気料金 0.5$/kWh

• PV価格 1.8~3.8

$/W

• 蓄電池価格

250~500 $/kWh

(蓄電池容量不明)

カリフォルニア州

• 2037年

• 電気料金 0.35

$/kWh

• PV価格 1.8~3.3

$/W

• 蓄電池価格120~380 $/kWh

(蓄電池容量不明)

ニューヨーク州

• 2049年

• 電気料金 0.65

$/kWh

• PV価格 1.8~3.0

$/W

• 蓄電池価格100~380 $/kWh

(蓄電池容量不明)

各文献におけるストレージパリティの定義と到達時期

Page 215: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 214

3.各文献の内容 a)Tam Hunt, “SOLAR ―Why our Energy Future is so Bright”(2015)

本文献は、PVの価格が非常に安くなり世界の大部分でデフォルトの電源となる状態を「ソーラーシンギュラリティ」と呼んでいる。

「シンギュラリティ(特異点)」 は、Ray Kurzweil, “The Singularity is Near” (2005)によると、技術革新が加速し、その影響によって人類の生活が不可逆的に一変する未来の一点として定義されている。これとの類似で「ソーラーシンギュラリティ」の概念を提唱している。

米国では、2030年代後半~2040年代に電力供給の半分以上が太陽光になるときが「ソーラーシンギュラリティ」のイメージである。

PVや風力発電といった再生可能エネルギーが系統電力の大半を占めるようになると、大量のエネルギーストレージが必要となることは明確であるとしている。

エネルギーストレージのなかでも、比較的小型で、モジュール性があり、急速に価格の低下する蓄電池(特にリチウムをベースとした電池)が着目されている。

カリフォルニア州の政策が蓄電池市場の成熟化を促進し、急速なコストダウンをもたらすと期待されている。

カリフォルニア州の蓄電池政策の例

電気事業者のプログラムの例

出所)Tam Hunt, “SOLAR ―Why our Energy Future is so Bright”(2015)

<AB 2514エネルギーストレージ調達プログラム> 2010年、CPUCは電気事業者に対してエネルギーストレージの調達を義務づけるよう定めた。

<Decision 13-10-040> 2013年10月、CPUCはAB 2514を受けて、 電気事業者に対して2024年までに新規のストレージ1.325GWを調達することを要請した。

この大量のストレージは、カリフォルニア州の100万世帯の電力需要のピークに対応できる。

2014年12月以降2年ごとに、電気事業者は各RFOのメガワット目標を定めたRFOを発行する必要がある。 目標は1)送電網相互接続; 2)配電網相互接続; 3)EVやPV用家庭用蓄電池システムのようなbehind-the-meter(メータの裏側;電気事業者ではなく需要家側)プロジェクトの3つである。

<SCEの予備電力要請RFO(Request for Offer)> 本プログラムは2020年まで継続し、その間SCEは多くのRFO(Request for Offer;オープンなプロセスに基づいて、買い取り先の候補となる再生可能エネルギーの

発電所やエネルギーストレージシステムを募集すること)を実施する。

SCEは2020年までにエネルギーストレージを50MW調達しなければならない。

<自家発電インセンティブプログラム(Self-Generation Incentive Program)> たったひとつのbehind-the-meterストレージプロジェクトであり、新規エネルギーストレージシステムの所有者に払い戻しを行う。

電気事業者にとってのインセンティブは、behind-the-meterストレージがAB 2514の定めるストレージ調達に加算されることである。

Page 216: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 215

3.b)Martine Ammon(EuPD Research), “Status Quo- Storage systems and PV in a global context”

EuPD Researchは、再生可能エネルギーを専門とするコンサルティング及び調査を実施する企業である。

本文献では、グリッドパリティを”Grid Parity of Photovoltaics”、ストレージパリティを”Grid Parity of PV-storage”と呼んでいる。それぞれ家庭用電力料金と、LCOE PV、LCOSPVが同等になることを指す。

LCOE: Levelized Costs of Electricity;均等化発電原価、LCOS: Levelized Costs of Storage;均等化蓄電原価

LCOE PVはPVシステムの発電電力量(kWh) 当たりの投資・維持管理・廃止費用の和(¢)である。

LCOS PVはPVシステムの発電電力量から蓄電池システムの損失分を差し引いた電力量(kWh)当たりの、PVシステムと蓄電池システムの投資・維持管理・廃止費用の和(¢)である。

この定義において、ドイツでは2011年、グリッドパリティに到達した。

LCOE PVは0.26 €/kWh。このときのPV価格は2,200 €/kW。

欧州では、ほとんど全ての国でグリッドパリティに到達している。

2013年 PVシステム価格1,600 €/kWp以上:キプロス、デンマーク、ドイツ、ベルギー、イタリア、ポルトガル、スペイン、マルタ、アイルランド、オーストリア、スウェーデン、スロバキア、ハンガリー、ギリシャ

2016年 PVシステム価格1,300 €/kWp ~1,600 €/kWp :オランダ、ルクセンブルク、スロバニア、イギリス、チェコ、フランス、ポーランド

2016年以降 PVシステム価格1,300 €/kWp以下:フィンランド、ラトビア、ルーマニア、リトアニア、エストニア、ブルガリア

項目 2011年

PVシステム

システム価格[€/kW] 2,200

システム容量[kW] 5.0

設備容量当たりの発電量[kWh/kW] 900

劣化率[%] 0.25

寿命[年] 20

PVシステムの維持管理[%] 1.5

取り外し費用[€] 800

工事費用[%] 20

割引率[%] 4.00

インフレ率[%] 2.00

LCOEPV_2011 0.26 €/kWh

ドイツにおけるグリッドパリティの条件 ドイツのグリッドパリティ(2011年)

出所)Martine Ammon(EuPD Research), “Status Quo- Storage systems and PV in a global context” (2013)

Page 217: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 216

3.b)Martine Ammon(EuPD Research), “Status Quo- Storage systems and PV in a global context”

ドイツでは、グリッドパリティから5年遅れて2016年に、ストレージパリティに到達すると予測される。

LCOS PVは0.32 €/kWh。このときのPV価格は1,300 €/kW、蓄電池価格は1,500 €/kWhであった。

再生可能エネルギーによる電力が増加すると、EEG割増(再生可能エネルギー優先に関する法律Erneuerbare- Energien- Gasetzの賦課金)の上昇が見込まれる。本文献ではEEG割増が今後も引き上げられると想定されている。

キプロスが、EU内で初めてストレージパリティに到達すると見られる。

キプロスに次いで、日射量が多く、電力料金の比較的高いイタリアとポルトガルがストレージパリティに到達する。

ドイツやデンマークでは、日射量は少ないが、家庭用の電力料金が高いために、比較的早くストレージパリティに到達する。

2013年 蓄電池価格2,300 €/kWh以上:キプロス

2016年 蓄電池価格1,500 €/kWh~2,300 €/kWh:イタリア、ポルトガル

2018年 蓄電池価格1,200 €/kWh~1,500 €/kWh:デンマーク、スペイン、マルタ、ドイツ

項目 2016年

PVシステム

システム価格[€/kW] 1,300 システム容量[kW] 5.0

設備容量当たりの発電量[kWh/kW] 900 劣化率[%] 0.25 寿命[年] 20

PVシステムの維持管理[%] 1.5 取り外し費用[€] 800 工事費用[%] 20 割引率[%] 4.00

インフレ率[%] 2.00

蓄電池

蓄電池価格[€/kWh] 1,500 蓄電池容量(名目)[kWh] 5.0

放電の深度[%] 80 蓄電池容量(有効)[kWh] 4.0

蓄電池効率[%] 92 寿命[年] 20

維持管理[%] 1.0 取り外し費用[€] 575 工事費用[%] 10

LCOSPV_2016 0.32 €/kWh

ドイツにおけるストレージパリティの条件 ドイツのストレージパリティ(2016年)

出所)Martine Ammon(EuPD Research), “Status Quo- Storage systems and PV in a global context” (2013)

Page 218: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 217

3.c)Germany Trade & Invest, “The energy storage market in Germany”(2016)

Germany Trade & Investはドイツの貿易・投資振興機関であり、投資企業の誘致、経済・投資・技術立地としてのドイツのマーケティングを業務内容とする。本報告書はエネルギーストレージチームによって執筆されている。

本文献では、グリッドパリティを”Grid Parity”、ストレージパリティを”Battery Parity”と呼んでいる。

グリッドパリティを、PVの電力コストが家庭用電力料金と同等になるときと定義している。

PV:年間発電量802 kWh/kW(フランクフルト)を想定。ファイナンシング100% 、利益率6% 、寿命20年間、維持管理費用年間2%と仮定。

電力料金:2007-2015年は実績、2016-2020年は0.29€/kWhと予測。

ストレージパリティを、PV+蓄電池コストが家庭用電力料金と同等になるときと定義している。

蓄電池:5,000サイクル、充放電効率87%

ドイツでは、2011年にグリッドパリティに到達しており、2017年にストレージパリティに到達すると予測される。

2016年以降の電力料金の想定を0.29€/kWhで一定と想定しているため、上昇する想定の文献b) よりもストレージパリティ到達に1年遅れる。

(€/kWh)

― 家庭用電力料金(年間2.5-5 MWh)

― PVの電力コスト

― PV+蓄電池の電力コスト

予測

グリッドパリティ2011年

ストレージパリティ

2017年

ドイツにおけるグリッドパリティとストレージパリティ

出所)Germany Trade & Invest, “The energy storage market in Germany”(2016)

Page 219: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 218

3.d)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Grid Defection” (2014)

ストレージパリティを、オフグリッドを前提としたPV+蓄電池システムのコスト(LCOE)が、予測される家庭用電気料金の上限と同等になることと定義している。(なお、商業建物についても分析を行っている。)

電気料金の下限はEIA*の地域小売価格予測。

電気料金の上限は、近年の設備投資傾向に基づいて年率3%増を想定(需要が伸びないため、電気料金は継続的に上昇するとの想定)。

HOMERという分析モデルを用いて、建物の年間電力需要を満たすシステム運用を決定するための、1時間ごとの電力バランスを考慮した年間最適計算を実施している。

設備コスト、運用データ、日射量や燃料の資源データ、効率をもとに、最適な設備導入量を決定。

分析対象の地域は、米国内5州(ニューヨーク(NY)/ケンタッキー(KY)/テキサス(TX)/カリフォルニア(CA)/ハワイ(HI))の代表都市。

日射量、電力料金、現在のPV導入量といったストレージパリティに影響する条件がばらつくように選択された。

地域ごとの特徴によって、ストレージパリティの到達時期は様々であるものの、遠い将来ではないとされている。

ハワイでは、電気料金の高さから早くも2022年にストレージパリティに到達する。

カリフォルニアでは、現段階でのPV導入が進んでいることから、2037年に到達する。

ニューヨークも2049年に到達する。

ケンタッキー、テキサスでは電気料金が安く、2050年までに到達しない。

ウエストチェスター (ニューヨーク

;NY)

ルイビル (ケンタッキー

;KY)

サンアントニオ(テキサス

;TX)

ロサンゼルス (カリフォルニア

;CA)

ホノルル (ハワイ;HI)

日射量 [kWh/m2/日]

4.5 4.5 6 6 5.5

2012年平均電力料金(家庭用)[$/kWh]

0.20 0.08 0.09 0.17 0.34

導入済PV [MW] 122.02 2.92 131.16 2074.53 27.33

市場構造 自由化 規制下 自由化 規制下 規制下

2012$/kWh

LCOE 電力料金

ルイビル(KY) ― ---

ウエストチェスター(NY) ― ---

サンアントニオ(TX) ― ---

ロサンゼルス(CA) ― ---

ホノルル(HI) ― ---

分析対象とした米国内5箇所と特徴

家庭のストレージパリティの到達(ベースケース)

*EIA: U.S. Energy Information Administration; 米国エネルギー情報局

出所)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Grid Defection” (2014)

Page 220: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 219

3.d)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Grid Defection” (2014)

前頁のベースケースに加えて、技術改善と需要改善を見込んだ3つのケースについても感度分析が行われている。

ベースケース(BC)は、現状のPV+蓄電池技術の進展を踏まえた保守的な想定である。

技術改善ケース(ATI)では、PVと蓄電池のコスト減を見込んでいる。

住宅用PVコストは、米国エネルギー省(DOE)の”SunShot Initiative” (2010)における、2020年の想定価格1.50$/Wを採用。

蓄電池コストは、同イニシアティブの、目標蓄電池価格125$/kWhを採用。

これは、主な国内研究所、エネルギーストレージシステムインテグレータ、蓄電池技術企業の専門家に対して、インタビューを実施した結果49$/kWh~300$/kWhと整合性がある。

需要改善ケース(DSI)では、エネルギー効率の改善と、供給力が不足する時間で負荷プロファイルをシフトすることを想定する。

エネルギー効率の改善効率指標は、ローレンスバークレー国立研究所の”U.S.Building –Sector Energy Efficiency Potential”(2008)記載値。

デマンドレスポンスマネジメントで需要家が負荷プロファイルのシフトを可能にすること(負荷フレキシビリティ)を想定。

さらに住宅では、日射量の少ない冬期には電力が不足するため、数日間にかけて合計約170時間の負荷を下げることも想定。

複合改善ケース(CI)ではATI・DSIを共に考慮している。

ベースケース(BC) 技術改善ケース(ATI) 需要改善ケース(DSI) 複合改善ケース(CI)

シナリオ内容

建物需要を100%満たしたシステムのコスト予測の平均を用いる場合

PV+蓄電池システムが大きくコストダウンし、米国エネルギー目標に達する場合

エネルギー効率や需要負荷をシフトする負荷フレキシビリティが向上する場合

ATI・DSIを共に考慮した場合

PVコスト[$/W] 選択された予測の平均 DOE 2020 Sunshot目標1.50$/W

選択された予測の平均 DOE 2020 Sunshot 目標1.50$/W

蓄電池コスト[$/kWh] 選択された予測の平均 DOE目標125$/kWh 選択された予測の平均 DOE目標125$/kWh

需要 電力消費量に変化なし 電力消費量に変化なし

0.029$/kWhのコストと2%の負荷フレキシビリティで、電力使用量を30%削減

0.029$/kWhのコストと2%の負荷フレキシビリティで、電力使用量を30%削減

電力料金 [$/kWh] 電気料金の下限はEIA*の地域小売価格予測。上限は、近年の設備投資傾向に基づいて年率3%増を想定。

想定する4ケース

出所)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Grid Defection” (2014)

Page 221: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 220

3.d)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Grid Defection” (2014)

技術進歩の加速や需要改善への投資など、より積極的な前提のもとでは、ストレージパリティにはより早く到達する。

ベースケースでは、ハワイでは2020年代前半、ロサンゼルスでは2030年代後半、ニューヨークでは2040年代後半に到達する。ケンタッキーとテキサスでは、2050年までに住宅システムはストレージパリティに達しない。

技術改善ケース(ATI)では、ベースケース(BC)から数年~十数年早くストレージパリティに到達する。

需要改善(DSI)では、ストレージパリティ到達時期はより早くなる。すなわち、需要家側のエネルギー効率向上やデマンドレスポンスの応用などは、ストレージパリティ到達を早める。

ハワイは複合改善(CI)、 需要改善(DSI)ケースでは、2015年段階でストレージパリティに到達する。

ロサンゼルスでは2020年代初頭、ニューヨークでは2020年代後半に到達する可能性がある。

ルイビル(KY) ―

ウエストチェスター(NY) ―

サンアントニオ(TX) ―

ロサンゼルス(CA) ―

ホノルル(HI) ―

ベースケース(BC)

技術改善ケース(ATI)

需要改善ケース(DSI)

複合改善ケース(CI)

パリティに既に到達している、

あるいは10年以内に訪れる

時間

が経

つに

つれ

て多

くの

需要

家が

パリテ

ィに

到達

する

ストレージパリティに到達するタイムライン

出所)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Grid Defection” (2014)

Page 222: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 221

3.d)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Grid Defection” (2014)

ストレージパリティ到達によるGrid Defection(グリッド脱落)の可能性により、米国の電気事業者は従来のビジネスモデルの課題に直面する一方で、電力系統やビジネスモデルに価値を付加する機会であるとも言える。

以下5つの要因により、オフグリッドのPV+蓄電池システムの活用が増加する可能性がある。

信頼性とレジリエンスへの関心

よりクリーンなエネルギーの需要

より良い経済性の追求

電気事業者と電力系統に対する失望

規制の変更

30年以内にストレージパリティに到達する。

保守的な想定では、2024年にPV+蓄電池システムが供給された負荷の価格上位20%の電力小売価格を下回る。

より積極的な仮定の下では、10年後に、オフグリッドシステムは電気事業者が販売するどの電力よりも安価になる。

電気事業者は、従来のビジネスモデルでは投資回収ができなくなる。

電気事業者は系統インフラの維持と近代化に投資が必要な一方、電力量の売上減が懸念される。

投資コスト増と売上の減少は、電力小売価格の高騰を促す。これは需要家に対してエネルギー効率向上と分散電源(PV、蓄電池)への投資を促すことになり、「電気事業者のデススパイラル(The utility death spiral)」と呼ばれるサイクルを作り出す。

電力サービスと需要家の関係性

出所)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Grid Defection” (2014)

Page 223: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 222

3.d)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Grid Defection” (2014)

(Rocky Mountain Institute(2014)に対する反論と再反論)

RMI “Why We Still Need to Discuss Grid Defection”(2017) によると、Rochester Institute of Technology (RIT)はRMI(2014)の結果について以下の反論を行っている。

RITはRMI(2014)を踏襲して、詳細な技術オプションを追加し、米国内の他地域についても検討した。

グリッド脱落はPV+蓄電池価格の低下により魅力的なものになるが、経済的に実行可能にはならないとしている。

需要家がPV+蓄電池を購入してグリッドから脱落するよりも、電気事業者や第3の事業者がPV+蓄電池システムを購入し、需要家に導入し、運転する方が、需要家にとってより経済的であるとしている。

一方、RMIはグリッド脱落の重要性を示しつつ、統合されたグリッドで需要家は重要な役割を果たすと主張している。

RMI(2014)は、需要家のオフグリッド化が経済的である可能性について分析した。

費用対効果の高い分散電源オプションによって、需要家は、新しい電力システムを先導する積極的な役割を果たすとしている。

広範なグリッド脱落によってもたらされる電力システムの課題を挙げ、需要家側の分散電源を統合したグリッドへの移行を提唱している。

項目 Rochester Institute of Technology(RIT) Rocky Mountain Institute (RMI) (2014)

想定

PV・蓄電池/系統電気料金 現在のコストのみを考慮している。 今後PVや蓄電池のコストは減少し、系統電気料金は上昇することを考慮している。

需要家のオプション 全てについては考慮していない。 需要のフレキシビリティやbehind-the-meterの蓄電池の価値についても考慮している。

結果の解釈

「グリッド脱落」の重要性 グリッド脱落は将来の経済的観点から重要であっても、現在は重要でない。

グリッド脱落が生じると、電気事業者の代わりに需要家が脱炭素化、小売価格の変化、電力系統への投資のペースを決定することになる点から、重要な課題である。

PVのネットメータリング PVのネットメータリングが常に最も好ましい。 個々の需要家にとってはネットメータリングが最適かもしれないが、電力システムとしてはPVや他のDERの価値を適切に評価し、報酬を与えるほうがよい。

PVやDERの所有者 電気事業者が常に所有すべきである。 電気事業者は、DERを所有または直接導入しなくても、需要家やアグリゲータに正しい価格シグナルを渡すことで利益を得られる。

RITとRMIの主張の違い

Page 224: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 223

3.e)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Load Defection”(2015)

前述したRMI(2014)で議論の中心となった「グリッド脱落」について、引き続き検討したもの。

RMI(2014)では、数十年後には多くの家庭と商業の需要家が、オフグリッドでPV+蓄電池システムから電力を供給することが経済的になることがわかったとはいえ、実際にグリッド脱落を選択する需要家は少数と見られる。

当面、グリッド接続のPV+蓄電池システムは多くの需要家にとって経済的であり、今後ますます多くの電力を供給するポテンシャルとなる。

実際にグリッド脱落が起きれば、電気事業者に大きな影響を与える。

例えば、米国北東部で2030年までに失う可能性のある売上の最大ポテンシャルは以下のとおり。

年間最大5,800万MWh(家庭向け売上の50%)

960万人の需要家

収入最大150億$

PV+蓄電池が普及した際、電力システム市場参加者及び他のステークホルダーが受ける影響は下表のとおりである。

電力システム市場参加者及びステークホルダー

PV+蓄電池システムの普及が与える影響

需要家 ○ • PV+蓄電池システムに投資をする需要家にとって、選択できることは好ましい。

配電事業者 △ • 分散型のPV+蓄電池システムが出現することは好ましい。 • PV+蓄電池システムは、更新投資の繰り延べ、混雑緩和、アンシラリーサービス等、配電網に対する価

値を提供できる可能性がある。 • しかしこれらの機会を活かすために、新しい価格設定、規制、ビジネスモデルが登場し、成熟しなければな

らない。

集中型電源と送電の

所有者とオペレータ × • PV+蓄電池システムの普及は好ましくない。 • PV+蓄電池システムは集中型電源からの売上の減少を加速し、卸電力市場におけるピーク価格の高騰

を低減し、アンシラリーサービスの市場を縮小させると予測される。

垂直統合型の

電気事業者 × • 現在のビジネスモデルを圧迫するものである。 • 電気事業者がPV+蓄電池システムの普及を最大限に活用するためには、調整が必要になる。

PV+蓄電池システムの普及がステークホルダーに与える影響

出所)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Load Defection”(2015)より作成

Page 225: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 224

3.e)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Load Defection”(2015)

電力システムは、「統合されたグリッド」か「グリッド脱落」かの分岐点にあり、慎重かつ迅速な検討が求められている。

統合されたグリッド:系統にとって最適化に運用されるスマートなPVや、トランザクティブ(取引可能な)PV+蓄電池システムが普及。従来の電力システム設備とともに、電力系統に貢献する。

グリッド脱落:逆潮流しないPVやbehind-the-meterに導入するPV+蓄電池システムが普及。その結果、電力系統側には過剰な設備が残る。

パス決定の時間軸は、PV+蓄電池市場のフェーズの進展によって定められる。

フェーズ1:実証の機会

PV+蓄電池システムより系統電気料金のほうが安く、PV+蓄電池システムを導入する需要家は限られる。

このフェーズにおいて、電気事業者と規制当局は、グリッド接続されたPV+蓄電池システムの可能性を最大限引き出す方法を検討できる。

フェーズ2:統合の機会

PV+蓄電池システムが、系統電気料金よりも経済的になる。

このフェーズは、PV+蓄電池システムが、需要家と電力系統の双方に対して付加価値を創出する理想的な期間である。

フェーズ3:調整の機会

系統電気料金が上昇し、PV+蓄電池システムコストが低下することで、需要家にとってオフグリッドも経済的な選択肢になる。

このフェーズに達したら、電気事業者と規制当局は、迅速にこの新しい市場環境に対応すべきである。

実績ベース規制、NYREV、CA More than Smart 、Energiewende

価格設定・料金構造 ビジネスモデル 規制モデル

パス1: 統合されたグリッドへ

• 逆潮流(ネットメータリング等) • 時間帯別料金・リアルタイムプラ

イシング • 特性に基づいた価格(エネル

ギー価値/容量価値/アンシラリーサービス価値を区別)

• NRG/E.ON/RWE/ConEd BQDMなどのビジネスモデル

• 持続可能な長期DER市場

• 公正かつ公平な需要家アクセスを維持・強化

• PVや蓄電池等のDERが創出できる利益と費用の認識、定量化、適切な収益化

• 全ての需要家を公平に扱う

パス2: グリッド脱落へ

• 逆潮流しないPV • 固定料金

• 集中型電源 • 垂直統合電気事業者

• 需要家へのサービス提供のコストに基づいた従来の電気料金規制

• 「座礁資産」の発生

パス1:統合されたグリッド

パス2:グリッド脱落

電気業界が迅速に検討すべき3つの分野

出所)Rocky Mountain Institute, “The Economics of Load Defection”(2015)より作成

Page 226: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 225

Page 227: 平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソー … 2 4 6 8 10 千円 Wh 蓄電池容量 kWh 割引率0% 割引率3% 9万円 /kWh 日充電回数 0.924回/日

(様式2)

頁 図表番号111112112129135136174175176177178179180183185186187188189190191192193200200202203215215216216217218218220221

Rocky Mountain Instituteによる見通しNavigantによる見通し

WEOによる燃料費の見通し(原油)WEOによる燃料費の見通し(上:天然ガス、下:石炭)

電力サービスと需要家の関係性

ドイツにおけるグリッドパリティの条件ドイツのグリッドパリティ(2011年)

ドイツにおけるストレージパリティの条件ドイツのストレージパリティ(2016年)

ドイツにおけるグリッドパリティとストレージパリティ

分析対象とした米国内5箇所と特徴家庭のストレージパリティの到達(ベースケース)ストレージパリティに到達するタイムライン

二次利用未承諾リスト

平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査)

平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査)報告書

株式会社三菱総合研究所

BNEF(2016)の見通し

DOE/SunShotによる見通しIRENAによる見通しBNEFによる見通し

DOE/EIA AEOによる見通し

タイトル既存文献による停電影響調査

停電時間に対する平均被害額および停電コスト単価2006年 首都圏大停電による一般家庭の金銭的被害額

賦課金の見通し(電力中央研究所における試算方法)賦課金の見通し(電力中央研究所における試算結果)

BNEFによる見通しIRENAによる見通し

IEA WEOによる見通し

IEA WEOによる見通しBNEF(2016)による見通し

BCGによる見通しDOE/EIAによる見通し

GMによる見通し

GTM Researchによる見通し

ストック住宅数の築年別割合推移住宅空室率の実績推移と将来予測

Rocky Mountain Instituteによる見通し

屋根形状