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平成26年度事務職員の海外研修報告書 平成26年11月27日 事務局長 殿 所 属 企画・学務部企画課 職 名 課長補佐 氏 名 武藤 英幸 渡航期間 平成 26 年 10 月 29 日(水) ~ 平成 26 年 11 月 1 日(土) 4 日間 研修タイプ及び番号、訪問国 A-1 中国 参加者氏名等(本人含む) 氏 名 所 属(部・課、掛・担当等) 職 名 武藤 英幸 企画・学務部企画課(総合企画室) 課長補佐 中川 貴子 創薬科学研究科・細胞生理学研究センター事務掛 事務職員 研修テーマ 海外拠点の存在意義とその可能性を探る(国際化に関わる観点から) 中国における大学の運営組織と国際化の取組に関する調査 訪問機関等 訪問機関等名:名古屋大学中国交流センター 対応者及び 担当者氏名 所 属 役 職 名古屋大学中国交流センター 副センター長 馮 佳妮 名古屋大学中国交流センター 事務補佐員 (現地採用者) 訪問機関等名:南京大学 対応者及び 担当者氏名 所 属 役 職 蔡 丹丹 国際協力・国際交流室 学生交流課 留学プログラム コーディネーター 索 文斌 学生工作所 学生課 副課長 戦略企画・法規開発室 副主任 訪問機関等名:上海交通大学 対応者及び 担当者氏名 所 属 役 職 戦略企画室 博士 研究員 許 萬國 国際協力・国際交流室 副研究員 室長代理

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平成26年度事務職員の海外研修報告書

平成26年11月27日 事務局長 殿

所 属 企画・学務部企画課 職 名 課長補佐 氏 名 武藤 英幸

① 渡航期間

平成 26 年 10 月 29 日(水) ~ 平成 26 年 11 月 1 日(土) 4 日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国

A-1 中国

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、掛・担当等) 職 名

武藤 英幸 企画・学務部企画課(総合企画室) 課長補佐

中川 貴子 創薬科学研究科・細胞生理学研究センター事務掛 事務職員

④ 研修テーマ

海外拠点の存在意義とその可能性を探る(国際化に関わる観点から)

中国における大学の運営組織と国際化の取組に関する調査

⑤ 訪問機関等

訪問機関等名:名古屋大学中国交流センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

劉 蕾 名古屋大学中国交流センター 副センター長

馮 佳妮 名古屋大学中国交流センター 事務補佐員

(現地採用者)

訪問機関等名:南京大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

蔡 丹丹 国際協力・国際交流室 学生交流課 留学プログラム

コーディネーター

索 文斌 学生工作所 学生課 副課長

馮 帆 戦略企画・法規開発室 副主任

訪問機関等名:上海交通大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

楊 頡 戦略企画室 博士 研究員

許 萬國 国際協力・国際交流室 副研究員

室長代理

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⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

Ⅰ 名古屋大学中国交流センター(上海市)【訪問日:10 月 29 日】 (1) 概要

平成 17 年 11 月に中国の高等教育・研究機関等との学術交

流の推進,中国における広報及び海外同窓会の中国における

連絡窓口となること等を目的として,旧上海事務所が開設さ

れた。今年度,本学の海外拠点認定規程及び設置要項等が整

備されたことで,中国交流センター(平成 26 年 6 月に名称

変更)として,中国の機関等との共同研究,学術交流,留学

交流及び産学連携活動の促進・支援,情報収集及び情報発信,

連絡調整等の役割を担うこととなった。

(2) 立地・設備等

上海市内の上海交通大学(徐匯キャンパス)に近い申通信

息広場の 27 階にオフィスがある。周囲は地下鉄 10 号線,9

号線,1 号線という 3本の路線が走り,交通アクセスは至便

である。154 ㎡の広さに 20 名ほど収容できる研究・会議スペ

ースがあり,テレビ会議システムやプロジェクターなどが備

えられている。

(3) 構成員

センター長(本学工学研究科教員が兼任),副センター長(本学国際開発研究科 OG が常

駐)1名,事務補佐員(現地雇用)1名

※勤務態様は,日本と同じ。センター長は月に 1回程度センターを訪れる。

(4) 活動内容

①中国における教育・研究等の学術交流活動の促進に対する支援

a)既存業務(旧上海事務所時代から引き継いだ業務)

・中国大学・教育研究機構との交流活動の促進

・駐中国の日本の大学・教育研究機構との交流

・本学の中国での学術活動への現地サポート

(AC21 国際フォーラム,学生フォーラム,キャンパスアジアフォーラム,各種研究調

査のサポート等)

・学内各種依頼対応

(職員研修,各種情報収集の依頼等の対応)

b)新規業務(中国交流センターとしての新規業務)

・さくらサイエンス事業展開のサポート

・環境分野を中心とする諸活動の準備・展開

(AC21 国際会議,市民講座,協定大学におけるデリバリーレクチャー)

②学生派遣・留学生受入れ等の支援活動

a)派遣

・南京大学及び同済大学において短期中国語研修の企画・運営

・中国語スピーチコンテストの実施準備

・キャンパスアジアへの現地サポート

(インターンシップ受け入れ先の斡旋,中国語会話の指導)

b)留学生受入れ

・中国留学基金委員会の派遣留学生(CSC)への対応

・G30 選抜実施の後方支援

・南京大学法学部における本学法学部サマースクール参加者募集業務

・名大留学への問合せに対する日常的対応

③広報・リクルート支援活動

・現地において HP を通じた名大情報の発信,名大のオンライン紹介サポート

27 階に中国交流センターがある

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・合同大学説明会への参加,留学フェアへの参加

・各地の高校に対する G30 リクルート支援

④海外同窓会ネットワークの中国における連絡窓口

・会員登録(2014 年現在 119 名),HP の更新・情報提供

・幹事会の企画

・各種イベントの企画・運営

・定期的に名大トピックス及び全学同窓会ニュースレターを送付

(5) 現状と課題

・本学と中国国内を結ぶ海外拠点であり,業務内容も幅広い。国土が広い中国におい

て通信網のみに頼れない業務(例えば,各種交流事業あるいは研修事業)などは精

力的な対応が求められることが多いが,現有スタッフ 2名のマンパワーのみに依存

している感もあり,厳しい運営状況を知った。

・中国に拠点を置く日本の国公私立大学の多くは北京市に集中しており,中国に事務

所,拠点,同窓会組織等を持つ日本の大学,政府系機関,研究所等を中心に組織さ

れた JSPS(日本学術振興会北京研究連絡センター)が事務局を務める団体「希平会」

(日中高等教育交流連絡会)に本学中国交流センターからも 2か月に 1回参加し,

日本の他大学の動向に関する情報収集や G30 関係のリクルート支援など奮闘努力し

ているが,本学の中国展開を進める上では,同センターの拡充が必要と考える。

・これまでも本学の意を酌んで可能な限り依頼事項に応えるべく,中国国内の連絡調

整に奮闘している様子が見受けられるが,本学からの依頼の中には,中国事情・文

化を考慮しない依頼が安易に出されることもあるらしく,後日,センター長からも

その点の業務改善について要望があった。

・中国交流センターは,上海都心に在り,オフィスには研究・会議スペースやテレビ

会議システム,プロジェクターなども揃っており,中国を拠点にした国際連携事業

等に利用するなど,更なる有効活用を図った方がよい。

中国交流センター入口

本学の各部局の概要等が閲覧用として配置 副センター長の劉さんから活動状況を聴取

スタッフの劉さん(左)と馮さん(右)

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Ⅱ 南京大学(南京市)【訪問日:10 月 30 日】

(1) 概要

南京大学は,国家教育部直属の重点大学であり創立は 1902 年,中国で最も著名で歴史あ

る大学の一つである。1902 年に「三江師範学堂」として設立され,1906 年に「両江師範学

堂」,1914 年に「南京高等師範学校」,1921 年に「国立東南大学」,1927 年に「第四中

山大学」,1928 年に「国立中央大学」と名称が変遷し,1950 年に「南京大学」となった。

大学は鼓楼・浦口・仙林の 3つのキャンパスがあり,理科と文科 28 学院を擁し,教員

2,300 人,学生は 33,000 人を抱え,教育及び科学研究のいずれの領域も全国のトップレベ

ルに位置している。

1994 年に国家「211 プロジェクト」に入選し,1999 年に国家「985 プロジェクト」にも

選定された。2006 年から教育部と江蘇省が共同運営する重点大学になっている。

《211プロジェクト(211工程)》

「21世紀」へ向けて中国全土に「100余り」の重点大学を構築することから名付けられた

国家プロジェクトである。1993年に教育部が主管部門となって実施が決定した。10年以上

の年月を通して,一部の大学と学科に重点的に投資を継続することによって優秀な高等知

識人材を育成するとともに,国家建設および社会発展の中で生じる様々な問題を科学技術

力によって解決することができる専門的人材の基盤を構築することを目標としている。

《985プロジェクト(985工程)》

1998 年 5 月 4 日,江沢民が北京大学創立 100 周年大会において,「現代化の実現のため,

中国は世界先進レベルの一流大学を持つべき」と提言した。これを受け,教育部は「21 世

紀に向けた教育振興行動計画」を実施する中で,「985 プロジェクト」として世界一流の大

学とハイレベルの大学を目指す一部の大学を重点的に支援することとなった。

(2) 調査事項(業務運営・企画評価関係事項を中心に)

・中国の大学のほとんどは国立である。各学長及び院長(日本の学部長相当)の選考

に中国共産党が強く関与しており,基本的に選挙制ではなく,大学を所掌する党委

員会の組織部が行う任命制である。

・国が設置する高等教育機関は,中国共産党の指導の下で校長責任制を実施すること

が「中華人民共和国高等教育法」で規定されおり,党の意思は学長を通じて直接大

学へ反映する仕組みとなっている。

・理科と文科 28 学院の教務・学生関係の事務を本部学生課 15 人と学院約 110 人の事

務職員で行っている。

・日本の国立大学職員は,基本的に統一選抜試験の合格者の中から大学職員を選考し,

日常業務と OJT(On the Job Training)を重ねて総務・財務・学務・国際などの専

門スキルを磨き,専門得意分野が絞られていくが,一方,中国の国立大学職員は,

はじめから国際や法務など専門分野ごとに修士修了以上の学歴を有する者を対象に

南京大学のシンボル北大楼 南京大学の正門

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スペシャリストとして選考する。そのため,日本のように統一選抜試験はない。

・最初から専門スキルを求めて職員の採用を行うため,採用後の職員には定期的な人

事異動はなく,採用後特に異動を希望する場合は,個別に申し出ることとなる。

・国際部門に勤務する職員の英語力向上のための研修として,①大学で外国人講師を

招へいして夜間に職員向けの授業を実施する,②事務職員を大学の経費で海外に派

遣するという 2種類のプランがある。後者は,例年 6~8人を対象に 3~6 か月程度

派遣している。研修先としては,米国や英国へ派遣することが多い。

・南京大学においても,事務職員の専門性が求められており,人件費抑制の観点から

も,最近では常勤職員よりも特定分野の専門スキルを有する派遣職員・契約職員が

増える傾向にある。以前は,大学運営に関しては教員よりも事務職員が重用された

感があるが,最近はますます教育・研究面が重要視されてきたため,教員の権限が

強化されてきている傾向にある。

・現在,企画事務部門が行っている業務な主なものは,教務や入試に関する企画であ

る。例えば,入試あるいは学生獲得に関する将来計画に携わり,時期を見計らいな

がら学生数をコントロールしている。中国共産党の方針が直接反映される国立大学

である南京大学では,大学独自の業務改善や経営の観点からの「企画」という発想

はない。

調査風景 名大側(左)・南京大側(右) 南京大学校史博物館

南京大学の礼堂(右写真)

南京大学担当者との集合写真(左写真)

左から、馮氏(南京大)、武藤、索氏、

中川さん、蔡氏、馮さん(名大)

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Ⅲ 上海交通大学(上海市)【訪問日:10 月 31 日】

(1) 概要

上海交通大学も,南京大学と同様,国家教育部直属の重点大学で,理工系の伝統が強く,

清華大学,北京大学に次ぐ難関校である。同大学の高等教育研究院世界一流大学研究セン

ターは,毎年「世界大学学術ランキング」を発表していることで知られる。1896 年に上海

に創立された「南洋公学」を起源とし,1910 年代後半に「南洋大学」,さらに「交通部上

海工業専門学校」と改称される。1921 年に「北洋政府が各地の国立工業専門学校」を統合

した際,「交通大学上海分校」となる。1956 年に国務院決定に基づき,中国西北地域の教

育支援のため大学の一部を西安に移転させ,「交通大学上海分校」と「西安分校」に分離し

た。1959 年 7 月に国務院の認可を得て上海,西安それぞれ独立組織とし,上海分部は「上

海交通大学」の校名の使用を始める。1999 年に「上海農学院」を統合し,2005 年に「上海

第二医科大学」を統合して,完全な総合大学となった。

閔行,徐匯,法華,七宝,盧湾の 5 つのキャンパスがあり,25 学部 64 学科を擁し,教

員 3,000 人,学生は 37,400 人以上を抱える。学部の入学生数は年々減少傾向にあり,入学

する学生の質を維持・向上させるため,計画的に数を絞っているようである。

4 年間で 2つの大学の学位(ダブルディグリー)を取得できるプログラムである「上海

交通大学-ミシガン大学ジョイント学院」や,トップレベルの学生を選抜して数学・物理

学・生命科学・コンピュータ科学を横断的に教育する「至遠学院」,起業に必要な内容を

主カリキュラムとした「創業学院」なども含まれる。

上海交通大学も,国家「211 プロジェクト」,国家「985 プロジェクト」に選定された。

(2) 調査事項(業務運営・企画評価関係事項を中心に)

・午前中,上海市街地に在る徐匯キャンパス(旧キャンパス)を訪問し,上海市文化

財保護部門に入選した歴史建築群と緑の多いキャンパスを見学した。その後,1 時

間ほど郊外へ移動し,午後から,現在の大学本部がある閔行キャンパス(新キャン

パス)において,調査を実施した。

・中国の近代的な大学の歴史は,1950 年代初期の大学改革が起源となっており,旧ソ

連をモデルにした社会主義の大学制度が採用された。中国では旧ソ連に倣い,経済

運営や事業計画について,5年の期間で達成すべき目標とその手法について定めた

「5カ年計画」という長期的な計画が導入され,現在は第 12 次 5 カ年計画期に在る。

・大学の将来構想は,この「5 カ年計画」に基づく政府の資金投入計画によるところ

が大きく,特に 1980 年代以降,大学改革が加速した。

・上海交通大学では,学内の目標管理を行い,それに対する評価システムも有してい

る。いわゆる IR(Institutional Research)機能があり,大学評価に必要な情報収

集能力や分析能力を持っているため,これらのノウハウを活用し,中国における大

学改革あるいは将来構想等について政府へ進言する役割も担っている。

・中国では,世界大学ランキングにおいて,政策的に清華大学と北京大学のトップ 30

上海交通大学新キャンパス(閔行)の正門 広大な閔行キャンパス

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以内へのランクインを目指しており,上海交通大学もこの両大学に続くべくランキ

ングの上昇に向けた目標管理を行っている。

・上海交通大学の高等教育研究院世界一流大学研究センターでは,毎年「世界大学学

術ランキング」を発表するに当たり,KPI(重要業績評価指標: Key Performance

Indicators)を重要視しており,約 2,000 項目に及ぶ評価ポイントを総合的に分析

している。現在では,大学評価そのものが事業化している。

・海外の大学との国際交流協定の締結数も多く,日本では,本学以外に京大,阪大,

東工大,神戸大,早大,慶大などと締結している。今後,協定期間満了後に同一大

学と協定を更新するかどうかは,双方の大学間に「実質的な交流」が存在するか否

かを判断材料として重視することになる。「実質的な交流」の展開が期待できない大

学とは,協定の更新をしない予定である。

・「実質的な交流」とは,単に双方の教職員が相手大学を訪問したり講演したりする単

発なものではなく,例えば,ダブルディグリーや連合研究など制度や研究面での相

乗り,あるいは学生同士の積極的な交流などの可能性を追求するレベルを指す。

・多くの学生が協定校へ留学をしているが,言語の問題から,最近は日本よりも欧米

(英語圏)への留学が多い。中国での英語教育は幼稚園から始まるが,小学校から

大学に至るまで基本的に必修制となっている。

・日本との国際交流を進めるに当たってのポイントは,双方が協同しての取り組むこ

とができるテーマが存在するかどうかである。その点において,最近では日本との

間より欧米との間のテーマが多くなっている。

新キャンパスのモダンな事務局管理棟(左写真)

調査風景(右写真)

名大側(左)・上海交通大側(右)

交通大担当者との集合写真(左写真)

左から,許氏,楊氏,武藤,中川

さん,馮さん

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《徐匯キャンパス(旧キャンパス)の見学(上海市文化財の歴史建築群と緑地)》

上海交通大学の旧正門 旧図書館(現在は上海交通大学校史博物館)

体育館と保健管理施設 新上院(現在は社会科学系教室と図書室)

緑豊かなキャンパス 上海交通大学が世界一の大学となることを願う

江沢民による碑

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⑦ 研修により得られた成果

⑧ 本学への提言

これまで,海外拠点の果たす役割もよく理解しておらず,「上海事務所」から「中国交流

センター」へと名称変更されたのも出発間際まで知らなかったが,このたび直接中国を訪

れ,実際に中国交流センターのスタッフから業務内容等について話をうかがい,また,訪

問先の各大学へ同行願ったことで,同センターが本学における中国国内の連絡調整の最前

線として,誠実かつ精力的に業務遂行されていることを知った。

また,個人的には,当初,中国の有力大学における企画業務の実態把握を調査課題とし

ていたが,中国に存在する大学のほとんどは国立であり,中国共産党からの直接指導の下

で運営されている情況もあって,同じ国立でも法人化された我が国の国立大学で使われて

いる「企画」あるいは「大学経営」等の言葉の意味が通じない場面が多かった。やはり,

双方の国の社会事情や設置背景などの違いから,大学運営体制や意思決定手続にも相違が

見られることが分かった。

さらには,日本でも各大学が注目している上海交通大学の「世界大学学術ランキング」

の舞台裏を少しだけでも知ることができ,本学の計画・評価業務に関する事務の一端を担

う者として,非常に有意義な調査となった。

海外研修旅行に出発する前は,昨今の中国に関する陰性な報道が多いことに影響されて

か,必ずしも良いイメージを持っていなかった。最近では,関係の濃淡にかかわらず,安

易に横のつながりを「連携」と呼ぶことが多い気がするが,その「連携」は「交流」に裏

打ちされている。すなわち,「交流」の成果が芽を出し,育って定着してこそ「連携」の土

壌は確固たるものになるものと考えるが,おそらく,日本と中国との間には,相互理解に

必要な「交流」が絶対的に不足しているのではないかと感じた。

《提言1》

本学の海外拠点としての中国交流センターでは,わずか 2 名のスタッフが実に幅広い業務

を精力的に遂行していることに驚くとともに,日本への留学生確保に資する企画・運営や中

国の主要大学とのネットワークの維持など,重要な国際交流事業を展開しており,それらが

更なるグローバル化を目指す本学の事業の実績に直結していることを考えると,せめて,中

国交流センターに業務の依頼をするときは,適時,中国国内の情勢と同センターの業務事情

を把握しておくべきと考える。

《提言2》

最近は,日本でも大学運営に資する IR 機能の必要性について議論が活発化している。IR

機能導入のためには,企画・評価・分析等を一体として取り扱う研究者及び事務職員から成

る大学経営に係る専門組織,すなわちスペシャリストとジェネラリストから適切に構成され

る総合的な企画部門が必要になってくるものと思われる。学術的な自由を欲する教員と専門

分野への理解に欠ける事務職員との間で利害が相反する場面も見られるかもしれないが,大

きな将来構想を掲げながら詳細かつ具体的な数値目標も掲げ,業務達成を積み上げていく教

職協働が図られることが望ましく,総合的な企画調整の成否がポイントになるものと考えら

れる。

《提言3》

近年,日本の大学では全国的に中国からの留学生数が減少している。中国の学生が選択す

る留学先は日本から欧米へとシフトしている傾向が見受けられるが,上海交通大学において

日本への興味が薄れたのかどうか尋ねてみたところ,決して日本に対する興味が薄れたので

はなく,事実,日本への留学需要はあるとの回答を得たが,同時に,次の 2点について本学

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⑨ 感想

向けに提言があったので,参考までに紹介する。

(1) 中国から日本への留学に当たって,最も大きな障壁は「言語」である。中国国内では,

広範な英語圏への進出を意識したグローバル化対応として,幼稚園から英語教育が行われ

ている。一方で日本語は,使用地域も限定され習得も難しい。したがって,名古屋大学へ

の留学に当たり,準備期間を設けて名古屋大学が中国において日本語研修を実施し,日本

語を習得させた上で,名古屋大学へ留学させる仕組みができれば,中国からの留学生が増

える可能性はある。

(2) 名古屋大学はノーベル賞受賞者を多く輩出しているが,中国の学生も名古屋大学に注目

しており,できることならノーベル賞学者の講義・講演等を拝聴したいと思っている者は

多い。名古屋大学の配慮をもって,中国の協定校へ高名な学者を派遣願い,講演やセミナ

ーの実施が実現すれば,名古屋大学に興味を持つ学生は増えるものと考えられる。

中国訪問中,4日続けて雨降りであった。それが幸いしたのか,日本を発つ前に心配して

いた PM2.5 の影響はほとんど感じられなかった。

このたびの海外研修旅行では,海外の大学事情を調査する上で,先方大学を訪問するだけ

では不十分であり,訪問の最中及びその前後においても,幅広い情報収集をすることが一層

研修成果を高めるものと痛感した。

例えば,今回,中国の高等教育制度に関する文献を読み,多少でも歴史や諸制度を調べる

ことで,中国の大学事情の背景を知ることができた。また,表玄関である空港施設や駅舎な

どは,日本を圧倒するほど巨大にして豪華であり,現在の中国の勢いを誇示するものではあ

るが,一方で,帰国前の調整時間を使って上海市内の有名観光地を巡りながらも,大通りか

ら一本路地に入れば,高層ビル群を背景に,大国中国の表玄関からは想像しがたい,昭和日

本の高度経済成長期の路地裏風景さながらの貧民窟を目の辺りにした。そこでの商店の軒先

に並ぶ食材は,現在の日本ではおよそ馴染みのない珍品・奇品の数々で,中国国民の心身の

頑丈さを思い知るとともに,それがまた民族的な永い歴史とあいまって,底知れぬパワーを

感じざるを得ない。

また,中国政府によるインターネット等の情報統制は厳しく,Google,Gmail,Twitter,

Facebook,LINE 等による国外への情報発信は基本的にできない。さらに,日本と中国は同じ

漢字圏の国とはいえ,1950 年代に中国政府が制定した「簡体字」(従来の漢字を簡略化した

文字)が街の至る所に氾濫して,威圧感すら放っており,国民の「繁体字」(従来の漢字)

の読解力低下が始まろうとも,はたまた書の伝統美術が忘れ去られようとも,整然とマイペ

ースを保っているようでもある。そんな中でも,高層ビル・マンションの建設はラッシュを

極め,ルールやマナー返上の車社会は全盛で,大気汚染と騒音は当分止みそうもない。こう

いった日常からも,急速な近代化への道がもたらした大国の縮図を見ることができ,これら

上海の有名観光地「豫園」前の広場 「豫園」周辺の路地を一本中へ入れば・・・

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は,所期の目的達成には欠くことのできない要素となり得るものである。

かつて日本も歩んで来たであろう経済成長の過程を改めて見ているかのようでもあるが,

しかし,中国のそれは日本よりも格段のスピードで進んでいる。その「ひずみ」が貧富の差

となって顕在化し,富裕層のエリート意識が更に大学発展を押し上げているように感じなく

もない。いずれにしても,広い国土,永い歴史,世界一の人口,豊富な資源など,現在の中

国の躍進を裏付ける潜在的要素はいくつもある。教育,文化,経済等の諸事情に少しずつ触

れながら,中国の奥深さと膨大なエネルギーを肌で感じることができたことが一番の収穫で

あり,貴重な体験をすることができた。

また,研修初日の南京では,南京師範大学へ留学している袴田悠太君(本学文学部 3年,

中国文学)と,研修 3日目の上海では,中国交流センター長の張教授はじめスタッフの方々

とそれぞれ懇親を図り,人的ネットワークをつくることができたことも大きな財産である。

最後に,今回の研修に当たって御支援いただきました竹下事務局長はじめ国際企画課,中

国交流センターの皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

上海浦東空港にて(左写真)

中川さん(左)と武藤(右)

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平成26年度事務職員の海外研修報告書

平成 26 年 11 月28日 事務局長 殿

所 属 創薬科学研究科・細胞生理学

研究センター事務掛

職 名 事務職員 氏 名 中川 貴子

① 渡航期間

平成 26 年 10 月 29 日(水) ~ 平成 26 年 11 月 1 日(土) 4 日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国

A-1 中国

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、掛・担当等) 職 名

武藤 英幸 企画・学務部企画課(総合企画室) 課長補佐

中川 貴子 創薬科学研究科・細胞生理学研究センター事務部事務掛 事務職員

④ 研修テーマ

海外拠点の存在意義とその可能性を探る(国際化に関わる視点から)

中国における大学の運営組織と国際課の取組に関する調査

⑤ 訪問機関等

訪問機関等名:名古屋大学中国交流センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

劉 蕾 名古屋大学中国交流センター

副センター長

馮 佳妮 名古屋大学中国交流センター

事務補佐員(現地

採用)

訪問機関等名:南京大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

蔡 丹丹 国際協力・国際交流室 学生交流課 留学プログラム コー

ディネーター

索 文斌 学生工作所学生課 副課長

馮 帆 戦略企画・法規開発室 副主任

訪問機関等名:上海交通大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

許 萬国 国際協力・国際交流室 副研究員・室長代

楊 頡 戦略企画室 博士・研究員

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⑥調査・学習内容等(1 ページ以上)

【Day1】 (10月29日) 訪問先:中国交流センター いままでの呼称「上海事務所」から、よりグローバルに活躍の幅を広げるということで今年度改称さ

れた「中国交流センター」を訪問した。上海地下鉄10号線交通大学駅から至近距離にあり、アクセス

は抜群。高層ビルの27階に位置し、眺望は素晴らしい。名古屋大学の OG である副代表の劉氏、現地

採用の馮氏の2名が常駐する。センター長である張教授(本学工学部)は、月に一度はセンターを訪れ、

サポートを行っている。

オフィスはテレビ会議システムを備え、20名ほど収容できる研究・会議スペースを持ち、拠点として

十分に機能できる広さと設備を備えている。名古屋大学の広報関係の冊子が整然と配置され、壁に並べ

られた写真類も、フレームの枠の色によって種類を分類するなど、利用しやすく親しみやすいオフィス

にするための工夫が随所に感じられた。

劉副代表より、中国交流センターの概要と最新の活動内容について、説明を受けた。

主な業務内容

・中国における教育・研究等の学術交流活動の促進に対する支援

総長を始め名古屋大学の教職員が中国を訪れた際の通訳や、名古屋大学の依頼による翻訳業務、今回

の職員研修のような名古屋大学からのニーズに応えた現地訪問先のアレンジメント、また、早稲田・大

阪・筑波・上智・熊本大学など駐中国の日本の大学と中国の大学との交流をサポートすること。以上が

主な既存の業務である。さらに新しい試みとして、環境分野を中心としたデリバリーレクチャーを今年

度から行っている。

・学生派遣・留学生受入等の支援活動

毎年行っている、同済大学への夏季中国語短期研修の企画/運営。定員 40 名で、2年前は定員をオー

バーするぐらい盛況であったが、尖閣問題で激減し、今年の参加者は 10 名であった。しかし、きめ細

かなプログラムで構成され、毎年受講者からは大好評を得ている。また、南京大学での春季短期中国語

研修、中国語スピーチコンテストの実施、キャンパスアジアへの現地サポートなども行っている。留学

生の受入業務としては、テレビ会議システムを利用しての G30 選抜実施の面接サポートをはじめ、名大

への留学に対する問合せ応対、中国留学基金委員会の派遣留学生に関わる対応等があげられる。

・広報/リクルート活動支援

現地の HP,教育研究サイトを通して名大情報を発信。また留学フェアや合同大学説明会への参加、高

校に対して G30 のリクルート支援を行うなど、実際に足を運んでの精力的な活動を行っている。

・海外同窓会ネットワークの中国における連絡窓口

名大上海同窓会は現在 119 名の会員数である。幹事会企画、各種イベントの企画・案内、専用 HP に

よる情報提供、名大トピックス&全学同窓会ニュースレターの送付などを定期的に行っている。

<中国交流センターの現状と課題>

・今までの「上海事務所」から、「中国交流センター」と名称変更し、ますますその活動を広げ、アジ

アのハブ大学をめざす名古屋大学の、海外拠点の中核を担っていくことは間違いないであろうが、現状

としてかなりの幅広い業務をカバーしており、新規事業の展開も視野に入れると、正直二人体制では厳

しい面があるかもしれない。

・夏の短期中国語研修(同済大学)では、現地スタッフが日本からの学生を手厚くフォローし、受講学生

が研修終了後に中国語スピーチコンテストで入賞するなど、言語の習得状況にもかなりの成果をあげて

いる。15 日間の研修期間はもちろん、何か月も前からの事前準備など現地スタッフの苦労は計り知れな

いものがあると思うが、受講者の満足度も高く、是非、これからも長く続けていっていただきたい。尖

閣問題で受講者が減ってしまったことは残念であるが、質の高い研修だけに、名古屋大学側ももっと周

知に力を入れるべきであろう。

・名古屋大学の教員が、現地の協定大学にて講義を行う「デリバリーレクチャー」を今年度初めて行っ

たとのことであるが、学術交流の実質化を図る意味においても、今後の海外拠点の新しいあり方を模索

する意味においても、非常に有意義な企画であると思う。実施時期、使用言語など、今後検討が必要な

面もあるが、単発で終わらずに、来年度以降も是非継承していただきたい。

・事務所はかなりの広さを持ち、テレビ会議システムも完備している立派なオフィスであるが、名古屋

大学からの利用はさほどないようであるので、もっと有効に活用できればと思う。産学連携、技術移転

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の分野で、拠点として利用するなど、まだまだその利用について、発展の余地があるといえる。

(左:劉副センター長、右:現地スタッフ馮さん) 明るく広々としたオフィス

【Day2】 (10月30日) 訪問先:南京大学 (大学の概要)

教育部(日本の文部科学省に相当)の直轄重点総合大学であり、中国で最も歴史のある大学のひとつで

ある。

中国のアイビーリーグと呼ばれるC9(九校連盟。世界的一流大学。北京大学・清華大学・復旦大学・

浙江大学・ハルビン工業大学・上海交通大学・南京大学・中国科学技術大学・西安交通大学)のひとつ

であり、1902 年の創設以来、文理にわたって常に全国のトップレベルに位置している。また、21 世紀

に向けて、中国全土に「100 余り」の重点大学を構築する国家プロジェクト「211 プロジェクト」、及び

世界一流の大学とハイレベルな大学を目指すために一部の

大学を重点的に支援する「985 プロジェクト」に選定されて

いる。

南京市内3ヶ所のキャンパスに 28 学院(学部・研究科)を

持ち、学生数 33,000 人、教職員 5,000 人(教員 2,300、職員

2,700)にのぼる。名古屋大学とは 1982 年に大学間学術交流

協定を締結。

(訪問内容)

国際協力・国際交流室学生交流課の蔡氏、学生工作所学生

課の索氏、戦略企画・法規開発室の馮氏の 3名に 1時間にわ

たってお話を伺った。

南京大学は、中国の名門大学の集団であるC9の一員でもあることから、エリートの育成を目指して

いる。中国教育部からは、米国のプリンストン大学を目指せと具体的な指標を与えられているが、現在

は大学が独自に特色を出して運営していく方向になっている。南京大学はまた、学術・研究重視の大学

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のため、大学院生の数は年々増加している。その代わりに学部生の数を抑え、全体の学生数のコントロ

ールを行い、教育の質の高さの維持を図っている。

教務関係は、全体の部署である学生工作所(学務部に相当)と、各学部・研究科に分化し、全部で 125

名ほどのスタッフが従事している。学生工作所は大学院担当、就職指導担当、メンタルヘルス担当、各

種イベント担当などの役職があり、少ない人数ながら大学全体の教務を掌握している。

南京大学の事務職員は、修士以上が原則となる。それぞれの専攻を活かした配属となり、同じ部門の

仕事をずっとやっていくことになる。例えば、国際関係の部署の場合は、英語科出身の職員がほとんど

である。人事異動は申告制であるので、他部門に異動を希望する場合は自ら申告する。正規職員のほか

に、非常勤職員、派遣職員も雇用しており、その割合は年々増加傾向にある。

国家プロジェクト「211 プロジェクト」、「985 プロジェクト」に採択されているため、世界のトップ

レベル大学になるために事務職員の国際化が必須となっているが、そのための研修も充実している。年

に一度、大学負担で職員を3か月~6か月の期間、語学修得を主目的として米国か英国等に派遣する。

おおよそ1年に6人~8人の職員を派遣している。また、英語圏から英語教師を招へいし、業務終了後、

英語を学べるような制度もある。

以前は事務職員が教員人事等の決定権を持っていたが、現在は学術と事務が分離され、事務は学術の

領域に関しては決定権をもたなくなってしまった。中国の国立大学の事務体制も、現在過渡期で、さま

ざまなことが改革中であるとのこと。

(キャンパス見学)

南京大学は伝統校らしく、歴史の感じられる重厚な建築の建物が随所に見られた。

緑が多く、歴史的な建物との調和が美しい。雨の日だったため、傘をさす学生が多かったが、

中国には傘立がなく、廊下にたくさんの傘が広げて干してある光景が、日本との風習の違いで興味深か

った。

また、古い建物には中国古来の繁体字の美しい書で建物名が刻印されていた。しかし中国の若い世代

は簡体字で育ったため、昔ながらの書道には縁がないとのこと。先祖から受け継いできた素晴らしい伝

統文化が廃れてしまうのは、非常に残念なことだと思った。

南京大学 礼堂 閑かな森に囲まれた「鼎(かなえ)」

青銅器の鼎は古来、権力の象徴であった。

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【Day3】 (10月31日) 訪問先:上海交通大学 (大学の概要)

上海交通大学は 1986 年創立の、教育部直属の全国重点大学である。理工系を中心に、全国でも最優

秀校の一角とされ、北京大、清華大に次ぐ難関校として位置づけられ、江沢民元国家主席など多彩な人

材を輩出してきた。1978 年の改革開放政策以降は大胆な改革を推し進め、米国ミシガン大学など各国の

大学との間に協力関係を結んでいる。

現在、上海交通大学は 5つのキャンパスを持ち、25 学部 64 学科、学生数 37,452 人(学部生 16,099

人、大学院生 19,632 人,留学生 1,721 人)および約 3,000 人の教職員を有する総合大学で、理工系で特

に大きな業績を残している。中国初の内燃機関、原子力潜水艦、人工衛星などは上海交通大学が手がけ

たものである。

(訪問内容)

上海市郊外にある上海交通大学の新キャンパスにおいて、国際協力・国際交流室の許氏、戦略企画室

の楊氏の両名に、1 時間にわたりお話しを伺った。両氏とも日本語が堪能で、通訳を介することなく直

接対談することができた。

同校の高等教育研究院世界一流大学研究センターは毎年世界大学学術ランキングを発表しているこ

とで知られるが、そのためもあってか大学側は常にランキングを意識し、ランキング 100 以内に入るこ

とを目標に日々邁進している様子が伺えた。現在、世界大学ランキングの上位は欧米の大学が占めてい

るが、中国政府は清華・北京の両トップ大学を、なんとかトップ 30 にという強い目標を掲げている。

上海交通大学は、現在のところ清華・北京の後塵を拝しているが、単位互換協定を結んでいる米国のミ

シガン大学をめざしており、理工系の雄として、虎視眈々と世界を見据えている前向きな姿勢が、ひし

ひしと感じられた。

現在、中国政府は来るべきグローバル社会を見据え、幼稚園から英語教育を導入しているが、上海交

通大学は、国際的なリレーションシップにおいても顕著な活動を修めている。

海外の主要な大学との学術協定、連合学院、ダブルディグリー、共同研究等で着実に実績を上げている

が、許氏曰く、実質的な交流という意味では、満足な成果とは言えないとのこと。学術協定を結び、互

いにセミナー等を大学間で開催することはあっても、そこから後が続かないことが多い。一過性のつな

がりではなく、永続的に両者が交流をもたなければ、それは実質的な交流とは言えない。ただ単に協定

校の数を増やせばいいというものでもなく、5 年間何も交流がなければその協定は終結したと考えてよ

い、という許氏の言葉に、うわべだけの協定では何の意味も成さないのだということを強く認識した。

許氏はさらに、中国人学生の日本への留学は今後も需要があるため、中国において日本の大学側が留学

準備の予備校(予科)的な、語学修得のできるコースを設置することで言葉の壁を取り除けば、米国や

欧米に眼を向けがちな中国人学生に対し、日本への留学に眼を向けさせることができ、両者間の留学は

より容易になるであろうと提言した。

また、理工系が強い大学ゆえに、産学連携にも非常に力を入れている。企業との委託研究が盛んに行

われ、オムロンとの委託研究では顔認識技術などの画像センシングや知識情報制御(コントロール)技

術を開発している。

許氏の属する国際協力・国際交流室は、学生間の交流はもとより、学術交流から産学連携まで、幅広

く国際関係をカバーしており、大学における許氏の果たす役割はかなり大きいと言える。上海交通大学

は、平野元総長の「平野材料創新研究所」が創設されるなど、名古屋大学と縁の深い大学であるが、や

や保守的な印象を受けた南京大学と比べ、非常にアグレッシブで先進的な気概を感じた。

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⑦ 研修により得られた成果

(キャンパス見学)

午前中は上海オフィスに程近い、徐匯にある旧キャンパスを見学した。留学生に中国語教育を行う国

際教育学院はここにある。都心とは思えないほど緑にあふれ、赤いレンガ造りの建築物が、歴史と伝統

を感じさせる。

上海では、大学は都心から郊外へと移転している傾向であるとのこと。少し前の日本のようである。

いずれまた都心に回帰することがあるのであろうか・・・。

午後からはタクシーで 1時間ほどの郊外にある新キャンパスへと移動した。新しいキャンパスであり

ながら、贅を尽くした重厚な門が眼前に迫る。キャンパスは広大で、キャンパス間の移動のため、無料

のシャトルバスが運行している。ゆとりあるレイアウト、延々と続く並木道を見るにつけ、中国のスケ

ールの大きさを改めて再確認させられた。

【旧キャンパス】

風格のある図書館 ビル群の中にあるとは思えないほど緑が多い

【新キャンパス】 壮大な門に広大なキャンパス ヨーロッパ風のモダンな建物が多い

スーパーグローバル大学に採択され、高い国際競争力を構築する必要に迫られている今、アジアの中

核として躍動する中国を訪れることができたことは非常に有意義であった。以前、米国の産学連携拠点

である NU Tech を何度か訪問したことがあるので、中国の拠点との違い等の検証も今回の主目的であっ

たのだが、単なる名古屋大学の広報、連絡窓口業務だけではなく、実に幅広い活動を、少ないスタッフ

で精力的にこなしていることに驚きを感じた。海外拠点としてのワンストップサービスはもとより、海

外実務研修の実践サイトとして、また同窓会活動を支援することにより現地のOBとの持続的な協力関

係を保つ架け橋として、中国交流センターの担う役割は大きく、今後の更なる可能性を秘めている。

また今回、中国のトップ 5に入る名門大学を訪問できたことも貴重な体験であった。世界の一流大学

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⑨ 感想

となるための明確なミッションを持ち、南京大学はプリンストン大学、上海交通大学はミシガン大学と

具体的に目指す大学名を掲げ、それに向かって邁進する姿勢に、目標達成に対するモチベーションの高

さを感じた。現在、世界ランク的には両大学とも目標の大学に遅れをとってはいるが、これだけの経済

成長を短期間に遂げてきた中国だけに、今後着実に躍進を遂げていくものと思われる。大学院を重視す

る教育方針、潤沢な研究資金、エリート校をさらに世界レベルのエリート校に養成するための国家プロ

ジェクトなど、日本とはシステムの異なる面もあるが、世界のトップレベル校を目指すその意気込みと

達成に向けての効率的なプロセスにおいては、両校から学ぶべき点は多々あると感じた。

⑧ 本学への提言

今回大学を訪問するにあたり、訪問先からなかなか回答が得られず、最終的に訪問部署や訪問対応者の

詳細な情報が得られたのは上海に到着してからであった。中国では前日まで決定しないということはよ

くあるとのことだが、そのためにこちらの事前準備が十分とはいかず、またそれぞれの大学で1時間ず

つの会談ということで、通訳を介すため時間に十分な余裕がなかったことが残念であった。南京大学は

昨年も訪問しており、訪問先からすれば「また同じことを聞きに来たのか」という思いを持ったかもし

れない。昨年研修に参加された方の意見にもあったが、こちらから一方的に質問をして回答を得る形式

ばかりではなく、双方がメリットとなるようなギブ&テイクの研修ができれば理想的であると思う。

今回お話しを伺った国際交流室の方の話では、国際関係の部署の職員はほとんどが英語専攻の学部出

身で、流暢に英語を話すとのこと。中国では資質の高い専業化された職員が、異動することなくプロフ

ェッショナルとして自身の得意分野を受け持つということである。名古屋大学でも国際関係を始め、特

化した能力が必要な部署に関して、職員を2~3年で異動させることなく固定させ、その部署のオーソ

リティーとして長い期間養成していくことが必要なのではと思った。

研修中、ホテル以外の街中では、英語が全く通じなかった。やはり中国語は国際社会において今後習

得を迫られる言語のひとつであると強く感じた。同済大学で毎年行われている学生向けの短期中国語研

修を、大学負担で職員にも受講させてみてはどうかと思う。

中国交流センターに関しては、かなりの範囲をカバーする海外拠点に成長したと思うが、まだまだ活

用の幅を広げることはできると思う。上海には日本企業も多く進出しているし、中国の大学は産学連携

に非常に熱心であるので、コーディネーターを随時派遣することにより、技術移転の分野にももっと力

を入れてもよいのではないかと思う。今年度から始まったデリバリーレクチャーなどの新規事業をはじ

め、中国交流センターは更なる可能性を見いだそうとしている。過去の活動を通して築き上げてきたネ

ットワークをフル活用し、今後の大学のグローバルな展開のため、アジアの base(基地)として、ます

ますの発展を期待したい。

初めて訪れた中国大陸は、想像をはるかに超えたスケールの大きさで迫ってきた。新幹線に乗るため

に立ち寄った駅舎は、空港と見まごうばかりの巨大なものであった。また、タクシーに乗るための行列

はいつ順番が回ってくるのかといぶかしく思うほど果てしなく続き、レストランに入っては、「中国で

は、足のついたもので食べられないものは机と椅子ぐらい」という言い伝えが納得できるほど、何百種

類ものメニューが用意されていた。また大学訪問の合間に立ち寄った南京の博物館では、太古の時を経

て発掘された黄河文明の遺物を通し、中国四千年の悠久の歴史を感じることができた。島国日本では絶

対に経験できない雄大な空間と、大陸が発する底知れない力強いパワーを体感することができたことは

非常に有意義であった。

かつては「東洋の魔都」と呼ばれた国際都市上海。中国最大の都市であり、世界屈指の金融センター

でもあり、中国の経済発展の象徴的存在でもある。街は建設ラッシュで、中国で最も高い「上海タワー」

が今年度完成予定であり、巨大アミューズメントパークの「上海ディズニーランド」は来年末に完成す

る。まさに飛ぶ鳥を落す勢いであり、人々は活気に満ちあふれている。上海の街を歩く若者は、日本の

都市で見かける若者と見た目も何ら区別がなく、一瞬、ここが中国であることを忘れてしまいそうだ。

がしかし、一歩路地に入ればスラム街がいまだに存在し、億ションを買う富裕層との間に格差社会を形

成している。交通マナーも劣悪で、クラクションは止むことがない。偽ブランド品の横行など、モラル

の面では眉をひそめてしまう事もまだまだ見受けられる。急成長の裏の影の部分を垣間見た気がした。

尖閣問題をはじめ、日中関係は良好とは言い難い。お隣の国ではあっても、「近くて遠い国」と言え

るかもしれない。しかし同じアジアの国として、お互いの良いところを吸収し互いに刺激し合いながら

協力し、切磋琢磨しながらともに「世界のトップクラス」を目指すことこそ必要であると強く感じる。

最後に、このような素晴らしい研修の機会を与えて下さったことと、中国交流センターの方々に現地

で親身にお世話になったことに対し、心からお礼を申し上げたい。