平成2666年度6年度 女性に対する暴力防止フォーラ … · - 1 -...

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- 1 - 平成2 平成2 平成2 平成26年度 年度 年度 年度 女性に対する暴力防止フォーラム 女性に対する暴力防止フォーラム 女性に対する暴力防止フォーラム 女性に対する暴力防止フォーラム 「殴らなくても 殴らなくても 殴らなくても 殴らなくてもDV DV DV DV?」 ?」 ?」 ?」-精神的DV -精神的DV -精神的DV -精神的DV(モラルハラスメント モラルハラスメント モラルハラスメント モラルハラスメント)を学ぶ- を学ぶ- を学ぶ- を学ぶ- 講師: 講師: 講師: 講師:西山さつき 西山さつき 西山さつき 西山さつきさん さん さん さん DVとは DVとは DVとは DVとは DV 3 DV DV パワーとコントロール パワーとコントロール パワーとコントロール パワーとコントロール DV DV DV DV 暴力の種類 暴力の種類 暴力の種類 暴力の種類 DV

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平成2平成2平成2平成26666年度年度年度年度 女性に対する暴力防止フォーラム女性に対する暴力防止フォーラム女性に対する暴力防止フォーラム女性に対する暴力防止フォーラム とととと き:平成2き:平成2き:平成2き:平成26666年1年1年1年12222月月月月17171717日日日日((((水水水水)))) 11114444::::00000000~~~~11116666::::00000000 ところ:ところ:ところ:ところ:奈良県奈良県奈良県奈良県社会福祉総合センター大会議室社会福祉総合センター大会議室社会福祉総合センター大会議室社会福祉総合センター大会議室((((橿原市橿原市橿原市橿原市大久保町大久保町大久保町大久保町))))

「「「「殴らなくても殴らなくても殴らなくても殴らなくてもDVDVDVDV?」?」?」?」-精神的DV-精神的DV-精神的DV-精神的DV((((モラルハラスメントモラルハラスメントモラルハラスメントモラルハラスメント))))を学ぶ-を学ぶ-を学ぶ-を学ぶ-

講師:講師:講師:講師:西山さつき西山さつき西山さつき西山さつきさんさんさんさん((((NPO法人レジリエンスNPO法人レジリエンスNPO法人レジリエンスNPO法人レジリエンス 副代表理事副代表理事副代表理事副代表理事)))) � DVとはDVとはDVとはDVとは

DVはパートナー間の暴力です。内閣府の調査では 3人に1人が経験しており、よく起こっている事としてとらえる必要があります。若い恋人間でも問題となっています。 DVには暴力という特徴の他に二つの重要な要素があります。一つは、夫婦間、恋人間は平等、対等であるべきだが一方が力を持つことです。そして、もう一つの要素は力を持つ人がもう一方の人を支配しようとすることです。この支配を強力にするために暴力が用いられます。暴力は身体的暴力とはかぎりません。性暴力や精神的暴力や経済的暴力であることもあります。DVの背景にある社会の問題点は、社会に暴力容認の風潮があることです。家の中で暴力が起きていても穏便に済ませようという考えがあります。 暴力を止めることができないのは病気ですかと聞かれることがあります。病気は自分で調節ができません。暴力をふるう人は相手が誰かで調節ができる人が多くいます。ある一定の人の中では評価を得ていますが、見下してもいいと判断したときには横柄で暴力的な態度を取るという2面性を持っていることが多いのです。このことから被害者が相談したときに、加害者が周りの人の評価を得ていて信じてもらえない事がよくあります。

� パワーとコントロールパワーとコントロールパワーとコントロールパワーとコントロール パワー(権力)とコントロール(支配)が DV の特徴です。レジリエンスでは支配があるかどうかのチェックリストをつくっています。これを用いれば DV という言葉を使わずに相談につなげることができます。DVの被害者にとって専門的な相談につながっていくことは大切です。DVだけではなくパワハラや親子間でも活用できます。 � 暴力の種類暴力の種類暴力の種類暴力の種類 暴力のことを理解しやすくするために、身体的暴力、性暴力、経済的暴力、精神的暴力、そして昨今、特に若い世代に増えているインターネットや携帯を用いたデジタル暴力とに分けて説明していきます。 身体的暴力には、殴る、蹴るといったものの他、飲み物や食べ物を与えない、薬物を強要する、薬を飲ませてもらえない、眠らせてもらえないというような体の機能を低下させるような暴力も含まれます。 性暴力は夫婦間など身近な関係の中で繰り返し起きているものもあります。同意がない性行為は暴力であり、断ったら暴力をふるわれるかも知れないという同意は本当の意味の同意ではありません。性暴力は深いトラウマを残します。 いろんな経済層の中でも起こるのが DV の特徴です。お金に問題がない家庭でも、経済的暴力として、被害者が使えるお金が制限されることがあります。 精神的暴力は幅広いです。脅される、惨めな思いをさせられるなど、人権を取り上げ、

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生きる力を奪いむしばんでいく、とても怖いものです。 デジタル暴力は、携帯ですぐ返事をしないと因縁をつける、GPSによるストーカー、SNSにより出されたくない情報、画像を出す、リベンジポルノなどがあります。 � DVDVDVDVによる影響による影響による影響による影響 これらの暴力はどれも大きな心の傷、トラウマを残します。相手から離れたら暴力はなくなりますが、トラウマが残るため生きづらさを感じます。心の傷は何年たっても残ります。離れた後の個々とのケアが必要です。 支配と権力がある環境では、自分の意見がわからなくなり、暴力が起こらないような言葉を選ぶようになり、自分がどうしたいのかを言う力が奪われます。加害者は被害者がいきいきしていることを嫌います。暴力を振るわれている間だけでなく、常に緊張して過ごすことになります。 � DVDVDVDVが及ぼす子どもが及ぼす子どもが及ぼす子どもが及ぼす子どもへの影響への影響への影響への影響

DVの目撃は児童虐待であり、児童相談所に通報できます。子どもは、お互いを尊重しあう、暴力を使わずコミュニケーションをとるなど、家の中で健全な人間関係を学ぶことが難しくなります。DV、虐待の家庭を何とかしようと介入しようとすることは大事ですが解決には時間がかかります。そのときに地域の中で、その子どもに声をかけていくこと、その子どもを認めること、そして、良い生き方を見せることが、子どもたちが育っていくのに大事です。 暴力は遺伝ではなく学びです。家以外の場所でいい大人と接し、暴力ではない方法を吸収できれば暴力を使わない良い関係のあり方を学ぶことができるかもしれません。 妊娠・出産で DV がエスカレートする事が多いため、妊娠中の方に DV の情報をどう伝えていくか、母親学級や産婦人科などでの啓発が大切になります。また、子どもの身体的、性虐待は DV家庭の方が多く発生すると言われています。DV家庭では虐待は大丈夫かと疑わないといけません。 � DVDVDVDVのサイクルのサイクルのサイクルのサイクル

DVにはサイクルがあると言われています。暴力が起こった後に加害者が謝ったり優しくなったりする時期がありますが、優しい時間は長く続かず、緊張感が高まりまた暴力を受けます。それを何度も繰り返すのが DV の特徴です。優しく見せかけることで相手を思いどおりにコントロールしていく時間、それが暴力の直後にだけある優しさです。暴力の後にある優しさは本当の優しさではありません。 � なぜ離れられないのかなぜ離れられないのかなぜ離れられないのかなぜ離れられないのか

DVを受けたら別れた方がいいのではないかと思われますが、暴力がありながらも別れられなくなるのが DVの特徴であり、難しさです。「トラウマティック・ボンディング」という特殊な心理が関与してきます。暴力と優しさが交互に来ると、ここから離れられない、何とかここでうまくやっていこうという心理になります。また、被害者が別れない理由は社会の側にもあります。社会が離別を認めてくれないことです。サポートする体制が十分整っておらず、女性が一人で生きていくことがしづらい社会です。 また、家を出た直後数ヶ月の心理状況はよくなく、パニック症状がひどくなります。パニックに圧倒されて家に戻りたくなるということがあります。被害者が家を出た後にも手

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厚い支援体制を用意する必要があります。 � DVに対する誤解DVに対する誤解DVに対する誤解DVに対する誤解

DVやモラハラはコミュニケーションの問題で起こっているのではありません。2人で話し合った方がいいというアドバイスは DVで不均等な関係の中では危険です。 「別れなさい」と言って別れられないのが DVなので、「別れなさい」という言葉が有効でないことが多いです。 デート DV 予防啓発活動で、ロールプレイを使って束縛には尊重がないから愛情とは違うと時間をかけて説明していますが、若い人は束縛は愛情と思っている子が多いです。 � 相談を受けたときの対応相談を受けたときの対応相談を受けたときの対応相談を受けたときの対応 相談を受けたときに、「なぜもっと早く言わなかったの」ではなく、「よく話してくれたね」という言葉に置き換えていくことが大切です。 相談を受けたときはたくさんのトランプ(選択肢)を渡すことが大切です。相談機関の紹介、本、講座、ウェブサイトの情報を提供すること。また、別居の提案や、危なくなったら逃げることや逃げるときに何を持っていくかなどの安全プランを考えておくことは、被害者が自分自身のことを大切に考えるきっかけにもなります。一緒に考えていこう、という対等な関係で対応することが大切です。 回復には、専門機関の相談につながることは大切です。被害者が DV について学ぶための講座や本の情報、気持ちを吐き出すことができるピアサポートグループにつながることも大切です。 � DVの危険サインDVの危険サインDVの危険サインDVの危険サイン 「首を絞める」という暴力があったときにそうでないケースに比べ、その後殺害される確率は 8 倍高くなります。身体的暴力、性暴力、ストーカー行為、この 3 つを行っている加害者の危険性は非常に高いと言われています。 また、被害者にカッティング行為があるときはかなり追い詰められているということが見えてきます。生きているのもしんどいぐらいつらいときに、リストカットをすることでエンケファリンというホルモンが出て、麻痺させて一瞬つらさを忘れることができ生き延びることができます。死ぬためではなく生き延びるためにやっている行為です。 � PTG、グリーフケアPTG、グリーフケアPTG、グリーフケアPTG、グリーフケア

DV を経験したことで人生が大きく変わり予定していた人生を手放さなければならないことは、喪失感、グリーフという言葉で表されます。この悲しみを発散させていく過程が必要です。 DVを経験することで、PTSD(心的外傷後ストレス障害)というトラウマを経験することで体や気持ちに様々な影響がでることがあります。トラウマ経験は人を弱くするだけではなく、その人を成長させたり強くする PTG(心的外傷後成長)という力を伴います。虐待を受けた子どもも、DV家庭の子どももいろいろな被害者に共通することで、その人たちならではの強さを持っています。被害にあった人がPTGを感じられるような支援の場を増やして行きたいと思っています。