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262 外 科 施 設 に お け るMRSA腸 炎の現況 とその対策 ―全国ア ンケー ト調査 (第1報)― 和歌山県立医科大学消化器外科 落合 谷村 梅本 善哉 山本 村上 浩一 石本喜和男 (平成6年10月27日 受 付) (平成6月12月7日 受 理) Key word: MRSA enteritis, questionnaire survey, nosocomial infection control, postoperative infection 1990年7月 か ら1992年6月 ま で の2年 間 の 外 科 施 設 に お け る 術 後MRSA腸 炎 の現 況 をア ンケ ー ト調 査 した.279施 設 中144施 設(51.6%)で 合 計831例 のMRSA腸 炎 が 発 症 し て い た.症 例数の多さで る と,消 化 器 外 科 お よ び 一 般 外 科 施 設 で 全 体 の95%を 占 め て い た.小 児 外 科 お よ び胸 部 外 科 で は 多 発 症 例 は認 めな か った.ま た,手 術 件 数 が 多 い 施 設 ほ どMRSA腸 炎 を経 験 してお り,と くに悪 性 疾 患 を 多 く 手 術 し て い る施 設 に 多 い こ とが 判 明 した.院 内感染対 策 は,ほ とん どの 施 設 で 行 わ れ て い た(92.1%). そ の 実 施 率 は,術 前 お よ び術 中 予 防 対 策 と し て は,少 な く と も23.8%の 施 設 が,術 後抗生剤の使用制限 が56.7%以 上,環 境 対 策 が65.5%以 上,医 療 従 事 者 に対 す る対 策 が70.5%以 上,院 内感染拡散防止対策 が42.9%以 上 とか な りの 施 設 で 本 格 的 な対 策 が 実 施 さ れ て い る こ とが 判 明 した .ま た,MRSA腸 炎が発 症 して い な い施 設 で もか な りの 対 策 を 講 じて い る こ と は,MRSA肺 炎 な ど の腸 炎 以 外 のMRSA感 染症 が 全 国 的 に 広 が っ て い る こ とが 示 唆 さ れ た. 外 科 領 域 でMRSA(Methicillin-resistant Sta- phyloccus aureus)感 染 症 が 全 国 的 問 題 とな り始 め て か ら10年 以 上 経 過 し た が,依 然 と し てMRSA 感 染 症 は各 施 設 で 猛 威 を振 る っ て お り,な かでも 外 科 領 域 で 術 後 にMRSA腸 炎 が 発 症 し1)2),時 は死 亡 す る症 例 も あ る3)~5). こ のMRSA腸 炎に関する全国的な実態調査 は,1980年 か ら1987年 までの期間に関しては名古 屋 市 立 大 学 第1外 科3),ま た1988年 か ら1990年6 月 ま で の 期 間 に 関 し て は 日本 大 学 第3外 科4)に よ って 行 わ れ た.そ の 後,MRSAに 有 効 なvan- comycine(VCM)とarbekacin(ABK)が 認可 されて2年 が 経 過 して い る が,な おMRSA腸 は各地で報告されている. 今 回,こ の 問題 を常 に正 確 に把 握 す るた め,外 科 領 域 に お け る最 近 の 術 後MRSA腸 炎の現況を 把 握 す る と と もに,MRSA感 染 に対 す る各 施 設 の 対 策 に対 す る考 え 方 とそ の実 施 状 況 を調 査 し た の で報 告 す る. 材料 と方法 調 査 期 間 と して は1990年7月 か ら1992年6月 で の2年 間 とし,調 査対象施設 は日本外科学会認 定 医 関 連 施 設1,126診 療 科 に ア ン ケ ー トを送 付 し た. 調査項 目は, I.全 国 の外 科 領 域 に お け るMRSA腸 炎 の発 症 別 刷 請求 先:(〒640)和 歌 山県 和 歌 山市 七 番 丁27 和歌山県立医科大学消化器外科 落合 感染症学雑誌 第69巻 第3号

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Page 1: 262journal.kansensho.or.jp/.../fulltext/69/262-271.pdf262 外科施設におけるMRSA腸 炎の現況とその対策 ―全国アンケート調査 (第1報)― 和歌山県立医科大学消化器外科

262

外科施設 にお けるMRSA腸 炎の現況 とその対策

―全 国 ア ンケー ト調査 (第1報)―

和歌山県立医科大学消化器外科

落合 実 谷村 弘 梅本 善哉

山本 基 村上 浩一 石本喜和男

(平成6年10月27日 受付)

(平成6月12月7日 受理)

Key word: MRSA enteritis, questionnaire survey,

nosocomial infection control,

postoperative infection

要 旨

1990年7月 か ら1992年6月 までの2年 間の外 科施 設 に お ける術 後MRSA腸 炎 の現 況 をア ンケ ー ト調

査 した.279施 設 中144施 設(51.6%)で 合計831例 のMRSA腸 炎 が発症 して いた.症 例 数 の多 さで比 べ

る と,消 化器 外科 お よび一般 外科 施設 で全 体 の95%を 占め てい た.小 児外 科 お よび胸 部外 科 で は多発症

例 は認 めな か った.ま た,手 術件 数 が多 い施設 ほ どMRSA腸 炎 を経 験 してお り,と くに悪 性疾 患 を多 く

手術 してい る施 設 に多 い こ とが判 明 した.院 内感染対 策 は,ほ とん どの施 設で行 わ れて いた(92.1%).

その実施 率 は,術 前お よび術 中予 防対 策 として は,少 な くとも23.8%の 施 設が,術 後 抗生 剤 の使用 制 限

が56.7%以 上,環 境 対策 が65.5%以 上,医 療従 事者 に対 す る対 策 が70.5%以 上,院 内感染 拡散 防止 対策

が42.9%以 上 とか な りの施設 で本 格 的 な対策 が 実施 されて い る ことが判 明 した.ま た,MRSA腸 炎 が発

症 して いな い施 設 で もか な りの対 策 を講 じて い る ことは,MRSA肺 炎 な どの腸 炎以 外 のMRSA感 染症

が全 国的 に広 が って いる こ とが示 唆 され た.

序 文

外 科 領 域 でMRSA(Methicillin-resistant Sta-

phyloccus aureus)感 染 症 が 全 国 的 問 題 とな り始

め て か ら10年 以 上 経 過 した が,依 然 と し てMRSA

感 染 症 は各 施 設 で 猛 威 を振 る っ て お り,な か で も

外 科 領 域 で 術 後 にMRSA腸 炎 が 発 症 し1)2),時 に

は死 亡 す る症 例 もあ る3)~5).

こ のMRSA腸 炎 に 関 す る 全 国 的 な 実 態 調 査

は,1980年 か ら1987年 まで の 期 間 に 関 し て は名 古

屋 市 立 大 学 第1外 科3),ま た1988年 か ら1990年6

月 ま で の 期 間 に 関 し て は 日本 大 学 第3外 科4)に

よ って 行 わ れ た.そ の後,MRSAに 有 効 なvan-

comycine(VCM)とarbekacin(ABK)が 認可

されて2年 が経過 しているが,な おMRSA腸 炎

は各地で報告されている.

今回,こ の問題 を常に正確 に把握するため,外

科領域における最近の術後MRSA腸 炎の現況を

把握するとともに,MRSA感 染に対する各施設の

対策に対する考え方 とその実施状況を調査したの

で報告する.

材料 と方法

調査期間 としては1990年7月 から1992年6月 ま

での2年 間 とし,調 査対象施設 は日本外科学会認

定医関連施設1,126診 療科 にアンケー トを送付 し

た.

調査項 目は,

I.全 国の外科領域 におけるMRSA腸 炎の発症

別刷請求先:(〒640)和 歌 山県和歌山市七番丁27

和歌山県立医科大学消化器外科

落合 実

感染症学雑誌 第69巻 第3号

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外科施設 におけるMRSA腸 炎の現況 とその対策 263

状況の調査

1.施 設 におけるMRSA腸 炎症例数

2.糞 便 よりMRSAが 検出された症例数(非 発

症例 も含む)

3.当 該施設における2年 間の手術件数

1)そ のうちの消化器手術症例数

2)良 性疾患 と悪性疾患の症例数

II.外 科施設における院内感染対策の状況調査

1.院 内感染対策の実施の有無 とその具体的内

2.MRSA腸 炎発症例 の治療方針 とした.

外科診療施設 を5科 に分類 した(Table 1).こ

こでいう,消 化器外科 とは 「消化器外科を標榜 し

ている施設 または全手術件数に占める消化器外科

手術の割合が70%以 上の施設」 と定義し,消 化器

外科手術 が70%未 満の もの は一般外科施設 とし

た.胸 部外科,救 急外科および小児外科はそれぞ

れ専門を標榜している施設 とした.

MRSA腸 炎の発症 については,MRSA腸 炎ゼ

ロの施設 と,腸 炎 として発症 していないが糞便 よ

りMRSAが 検出された症例のある施設 を0(+)

として区別 し,2年 間に1~4例 とごくわずかの

症例の施設,お よび5例 以上 と明 らかにMRSA

対策が必要 と思われる施設の4群 に分類 した.

MRSA腸 炎に対 して各外科施設は,1992年7月

現在 どのような対策 を講 じているのかの調査で

は,ア ンケー トの回答が具体的に文章で詳細 に書

くよう依頼 したので,MRSA感 染対策の現況 とし

てその最大公約数的項目をまとめることにした.

具体的記載のあった項 目で,比 較的多 く取 り上

げられた項目として,発 症予防,環 境対策,発 症

時の対策,お よびMRSA腸 炎症例の実状の一部

を検討 してみた.

成 績

全国的調査 として十分解析に耐 えうる前回調査

より多い施設数279施 設 より回答 を得た(回 答率

24.8%).診 療科別には,消 化器外科104施 設,一

般外科136施 設,胸 部外科24施 設,救 急外科10施 設

および小児外科5施 設であった.

1.地 域別にみたMRSA腸 炎の発症状況

1990年7月 か ら1992年6月 まで の2年 間 に

MRSA腸 炎は,北 海道で28例,東 北で39例,関 東

で470例,中 部・北陸で34例,東 海で31例,近 畿で

113例,中 国で50例,四 国で9例,九 州で57例 と,

2年 間 に全 国279施 設 の うち144施 設 で831例 の

MRSA腸 炎が発症 していた(Fig.1).MRSA腸

炎は全国1施 設あた り年間平均1例 程度(2年 間

に2例)で あったが,関 東地区は1施 設あた り約

3例(2年 間で5.8例)と 多かった.

多発施設が どの程度存在するかを地域別に検討

Fig. 1 Distribution of MRSA enteritis in Japan

(July, 1990-June, 1992)

Table 1 Cooperative facilities of Questionnaire survery

平成7年3月20日

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264 落合 実 他

Table 2 Faxilities with MRSA enteritis by regional group

(answer rate 24.8%; 279/1,126 facilities)

*: There was no symptoms of enteritis but MRSA strain was detected from the patient's stool.

Table 3 Surgical facilities with MRSA enteritis in recent 2years

(July, 1990^-June, 1992)

*: There was no symptoms of enteritis but MRSA strain was detected from the patient's stool.

した.全 国的にはMRSA腸 炎ゼロの施設が115施

設(41.2%),0(+)が20施 設(7.2%),1~4

例が102施 設(36.6%),2年 間で5例 以上の経験

が42施 設(15.1%)で あった(Table 2).地 域別

には,関 東地区では5例 以上の施設が21(26%)

あったが,他 の地域ではMRSA腸 炎の発症施設

の比率に差 を認めなかった.

2.診 療内容別 にみたMRSA腸 炎

消化器外科では56(53.8%)の 施設で,一 般外

科では73(53.7%)の 施設で,全 体 として51.6%

の施設がMRSA腸 炎 を経験 していた.一 方,胸 部

外 科 で は8(33.3%)の 施設 で,救 急外科 で は

5(50%)の 施設で,小 児外科では2(40%)施 設

でMRSA腸 炎が発症 しており,と くに5例 以上

と多発 している施設 は消化器外科で26施 設 と多

かった(Table 3).ま た,術 後腸炎そのものの少

Table 4 Number of MRSA enteritis on the medi-

cal speciality of the facility

ない胸部外科や小児外科ではMRSA腸 炎の多発

施設はなかった.

さらに,MRSA腸 炎の実際の症例数が どの診療

科に多いかを調査 してみると,消化器外科が423例

(50.9%),一 般外科が371例(44.6%)で 全体の95%

を占めていた(Table 4).先 の消化器外科26施 設

感染症学雑誌 第69巻 第3号

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外科施設 におけるMRSA腸 炎 の現況 とその対策 265

Table 5 Frequency of MRSA enteritis after surgical operation in recent 2years

(at present in July, 1992)

* : We researched only abdominal operations in the department of abdominal surgery .

** : No . of case/one facility*** : 2facilities were no anser

Table 6 Frequency of MRSA enteritis in relation to the number of operation with malignant

disease in recent 2years

(at present in July, 1992)

We excluded some facilities without resport of malignant operation.

では1施 設平均14例 であり,最 高70例 というのも

あった.逆 にいえば,胸 部外科や救急部および小

児外科 を併せてもMRSA腸 炎全体 の5%未 満 に

すぎなかった.や はり,消 化器外科手術 を扱う施

設にMRSA腸 炎の発症が多い ことがわかった.

3.手 術件数 とMRSA腸 炎

っぎに,2年 間の外科手術件数によるMRSA

腸炎の発症頻度 を,発 症例が多い消化器外科 と少

ない胸部外科 とで比較 した.

消化器外科では,2年 間で手術が200か ら400件

とそれ ほ ど多 くない施 設 で も48.7%の 施 設 で

MRSA腸 炎 を経験 していた.ま た,2年 間で1,000

件以上の手術 を行っている大病院では8施 設中7

施設でMRSA腸 炎 を経験 している.最 も頻発 し

ている施設の外科 としての規模 は2年 間で手術 を

600~800件 行っている施設であった(Table 5).

ここで注目すべきは,消 化器外科の48.1%の 施

設では,MRSA腸 炎は全 く発生していない とい う

事実である.し か も,2年 間800件 以上の手術 を

行 っている消化器外科を専門 とする大 きな外科施

設で も約1/3(35.3%)の 施設ではMRSA腸 炎の

発生はゼロであった.一方

,胸 部外科では,全 体 として腸炎症例数は

少ないが,2年 間で800件 以上の手術 を行 う施設で

MRSA腸 炎を経験 している施設が5施 設中4施

設 と多 くなっている.

一方,2年 間で200件 以下の小規模の外科施設で

はMRSA腸 炎の発症はなかった.

4.悪 性疾患の手術 とMRSA腸 炎

MRSA感 染症 はCompromized hostに 起 こり

平成7年3月20日

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266 落合 実 他

易い6)といわれている.そ こで,手 術内容を悪性疾

患の手術件数に限定 してMRSA腸 炎の発症頻度

を消化器外科 と一般外科で検討 した.

Table6に 示す ように,消 化器外科では悪性疾

患の手術件数が多いほど,MRSA腸 炎を経験する

確率が高い傾向を示 した.こ のなかで,悪 性腫瘍

の手術が2年 間で400~600件 の大学病院クラスで

MRSA腸 炎の経験は1施 設あたり,2年 間で平均

10例 もあ り,他 の中小規模 または特殊センター病

院の平均6例 よりも多かった.

このように,悪性腫瘍の手術件数に限定すれば,

2年 間で800件 以上の3施 設 ではすべ てMRSA

腸炎が発生 してお り,先 のMRSA腸 炎ゼロの大

きい施設は良性疾患を多数取 り扱っている特殊な

病院であった といえる.

II.外 科施設におけるMRSA腸 炎に対する感染

対策の現況

この調査項 目については,全 国261施 設 より回答

を得た.MRSA腸 炎ゼロの施設99,腸 炎発症はな

いが糞便中MRSA検 出例の経験施設19, 4例 以

下の施設101,2年 間で5例 以上の施設42施 設で

あった.そ れぞれ回答率は86.1%, 95%, 99%,

100%と 一部未経験施設 を除いて,ほ とんどの外科

施設 におけるMRSA対 策 を調査できたことにな

る.

1.院 内感染対策の実施状況

まず,MRSA感 染に対 して院内感染対策を実施

Fig. 2 Answer rate to do their infection controlconcretely for the MRSA infection

(at present in July, 1992)

No answer

4 facilities

(1.4%)

している施設 は1992年7月 現在すでに261施 設中

257施 設(92.1%)で 何 らかの対策を実行 していた

(Fig. 2).MRSA感 染対策はいまや全国的に確立

されたことが確認 された.

2.術 前および術中の予防対策

手術予定患者に対す るMRSA感 染の予防手段

として,術 前にイソジン含漱や喀痰 ・咽頭などの

細 菌培養検査 を前 もって積極的 に行っている施

設,お よび術中対策 として,胃 管挿入時の清潔操

作を行っている施設をみると,1992年7月 現在で,

少なくとも24 (23.8%)施 設および18 (42.8%)

施設 もあった.な かで も,こ の2年 間でMRSA腸

炎 が 全 く発 症 して い な い 施 設 で も全 国 で

14(14.1%)施 設および6(31.6%)施 設でこの

ような術前 ・術中予防対策 を積極的に行 っている

(Table 7).

3.術 後感染予防 としての抗菌薬の使用制限

Table 7 Preventive control on the preoperative and intraoperative periods

(at present in July, 1992)

* : There was no symptoms of enteritis but MRSA strain was detected from the patient's stool .

** : Including plural answer

感染症学雑誌 第69巻 第3号

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外科施設 におけるMRSA腸 炎の現況 とその対策 267

Table 8 Restrict and forbid the antibiotic prophylactic usage for postoperative infection

(at present in July, 1992)

* : There was no symptoms of enteritis but MRSA strain was detected from the patient's stool .

Table 9 Enviromental control in the onset of postoperative MRSA enteritis

(at present in July, 1992)

* : There was no symptoms of enteritis but MRSA strain was detected from the patient's stool.

** : Including plural answer

MRSA腸 炎の症状発現の誘引'として,術 直後か

ら投与する第3世 代セフェム剤の使用制限が強調

されている.術 後感染予防投与 といわれるこれら

注射用抗菌薬の選択 については,Table 8に 示す

ようにMRSA腸 炎のない施設では半数以上の施

設で第1世 代および第2世 代セフェム剤を使用す

るよう院内で規定 している.

少な くとも全国の外科の56.7%の 施設では,第

3世 代セフェム剤の使用制限を実行に移 している

ことが判明した.

興味あることに,こ の対策 に最 も熱心なのは,

糞便か らはMRSAを 検出したが,腸 炎 を発症 し

ていない施設の68.4%で あ り,次 いでMRSA腸

炎ゼロの施設では,64.6%に 積極的に行っている.

逆 にいえば,MRSA腸 炎の発生が多い施設 で

は,そ の抗菌力からいって第3世 代セフェム剤を

選択せざるをえない患者が多い といえる.

4.MRSA患 者発症時の環境対策

MRSA感 染患者がいったん発生 した時の環境

対策 としては,患 者の隔離,院 内感染対策委員会

への報告 ・相談,専 用創交換台の設置,汚 染物の

別途廃棄,手 指消毒薬の設置,回 診を最後 にする

などの対策が採用されている(Table 9). 61.3%

の施設では,現 状の苦 しいベットの遣 り繰 りのな

かで,そ れぞれMRSAの 排菌患者を隔離す るよ

う努力 している.

MRSA腸 炎がゼロか少数例の施設では,それぞ

れ61.6%お よび78.9%が 積極 的 にMRSA腸 炎

患者の隔離 を行 っている.MRSA腸 炎多発施設の

隔離への努力は52.4%と その症例数の多さから,

隔離が十分 にし得ない施設 もかなりあることがわ

かった.

MRSA腸 炎が発症 していない施設でも,か なり

の対策を講 じている事実は注目に値する.これは,

平成7年3月20日

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268 落合 実 他

Table 10 Prevention control for MRSA infection to medical staffs

(at present in July, 1992)

* : There was no symptoms of enteritis but MRSA strain was detected from the patient's stool .** : Including plural answer

Table 11 Enviromental prophylactic control for preventing the expansion of MRSA

infection

(at present in July, 1992)

* : There was no symptoms of enteritis but MRSA strain was detected from the patient's stool.

** : Including plural answer

今 回 の 調 査 対 象 か ら除 い たMRSA肺 炎 や

MRSA創 感染な ど他のMRSA感 染症 を経験 し,

その院内対策を余儀な くされているものと思われ

る.

5.医 療従事者 に対する予防対策

医療従事者への予防対策 としては,手 洗いの励

行,イ ソジン含漱,手 指の消毒,ガ ウンテクニッ

ク,保 菌者調査があげられている(Table 10).

MRSA腸 炎経」験の有無 と各施設問の差 はほと

んどない.と くに,医 療従事者の手洗い励行およ

び手指消毒など積極的対策が講 じられていること

がよくわかる.も ちろん,こ れは医療従事者の手

を介しての伝幡防止対策で もあるし,イ ソジン含

漱 は医療従事者への健康対策で もある.

6.MRSA感 染の院内拡散防止のための環境対

MRSAの 院内伝幡防止ないし拡散予防のため

の環境対策 としては,院内感染対策委員会の設置,

病棟の数カ所にアルコール噴霧器などの手指の消

毒液の設置,ペ ーパータオルの使用,デ ィスポ製

品の使用,病 棟の定期消毒が行われている(Table

11).し か し,MRSA感 染の多 くが院内感染による

ものであることを考えると,こ の方面の対策の実

施率は平均42.9%と まだ まだ不十分であることが

わかった.

感染症学雑誌 第69巻 第3号

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外科施設におけるMRSA腸 炎の現況 とその対策 269

考 察

1980年 になってMRSA感 染症が増加 し始 め,

なかで もMRSA腸 炎がクローズアップ されたの

は1985年3)で あり,そ れか らで も9年 がすでに経

過しているが,依 然 として終息 していない.

術後MRSA腸 炎は,術 後7日 までの早期に発

症することが多 く,大 量の緑色水様 あるいは米の

研 ぎ汁様の下痢便,高 熱,頻 脈,腹 部膨満などの

症状が特徴である7).重症の場合,胃 管からも同様

の性状の液体が多量 に排出され,ま たイレウス症

状や乏尿から脱水症状 を呈するなどさまざまな臨

床症状を呈 してくる.と くに,コ アグラーゼII型

お よびエ ンテロ トキシンC型 でTSST-1産 生 の

MRSAに 腸炎が多いが8)9),コ アグラーゼII型 の

MRSAが 全国的に増 えてきていることは十分注

意が必要である8).

MRSA腸 炎の実態調査は,全 国の外科施設に対

し,過 去2回 アンケー ト調査が行われた.第1回

の調 査3)で は,回 答 の あった370施 設 中25施 設

(6.8%)で 術後感染性腸炎67例 を経験 してお り,

そのうち35例 がMRSA腸 炎であ り,1施 設 あた

り1.4例 にすぎなかった.第2回 調査4)では169施

設中53施 設(31.4%)にMRSA腸 炎が126例 に発

症 し,1施 設あた り2.3例であった.今 回の調査で

は,279施 設中144施 設(51.6%)と 外科診療科の

半数はMRSA腸 炎を経験するようになってきて

お り,MRSA腸 炎が831例,1施 設平均5.8例 と倍

増 していた.

また,地 域別にみたMRSA腸 炎の発症状況は,

前回 と同様に,関 東地区に多い傾向を認めたが,

MRSA腸 炎の61.1%は 関東以外の地 区で も発生

しており,MRSA腸 炎が全国的に広まっている事

実を示す.

さらに,今 回はじめて診療内容別に検討 したが,

その結果,MRSA腸 炎は消化管の手術に携わって

いる消化器外科および一般外科の施設で発症例が

全体の95%を 占めていることが判明した.す なわ

ち,消 化器外科手術後に明 らかに発症 していると

いえる.

年間300か ら400件 の手術 を行 っている診療科に

多 く,と くに悪性疾患手術が多いほ どMRSA腸

炎が多いことが再確認できた.こ の事実は,悪 性

腫瘍の手術件数が2年 間で400か ら600件 とかなり

多 く,ま た主治医 として外科医が極端 に多い大学

病院クラスの外科施設では,多 数の医師がMRSA

と接触する機会が多 くな り,い ったんMRSA感

染症が発症 した患者がでると病院自体が大規模な

ため徹底 した院内感染対策ができず,MRSAが 根

強 く蔓延する可能性 も示唆された.一方,胸 部 外科や小児 外科 で は少 な く とも

MRSA腸 炎 に関 しては多発 を経験 した施設 はな

かった.こ の事実は,胸 部外科では術後早期に経

口を開始でき,ま た消化管 をほとんど触 らないこ

とが関係 しているのであろう.

今回の調査では,過 去2年 間にMRSA腸 炎 と

しての発症はなかったが糞便 よりMRSAが 検 出

された症例 を経験した施設が20施 設あった.幸 い

にして発症 しなかったことは,MRSA感 染対策の

結果なのかどうかは不明であるが,今 後便 の監視

培養の成績 にも注目する必要がある.一般 にMRSA感 染症 は第3世 代セフェム剤の

乱用 により発生する と基礎学者達 は強調 してい

る2)~4).その結果,少 な くとも半数以上の外科施設

では,す でに抗生剤の使用制限を実施 しており,

この対策法が広 く浸透 してきていることが今回証

明された.興 味あることに,こ の対策 に最 も熱心

なのは,糞 便か らはMRSAを 検出したが,腸 炎を

発症 してい ない施設 の68.4%で あ り,次 いで

MRSA腸 炎ゼロの施設では,64.6%に 積極的 に

行っている.逆 にいえば,MRSA腸 炎の発生が多

い施設では,そ の抗菌力か らいって第3世 代セ

フェムを選択せざるを負えない患者が多いといえ

る.

術後MRSA腸 炎 は早期 に発症 し,重 篤 な状態

に陥 り易 く,と くに汚染手術が多い消化器外科で

は注射用抗菌薬の選択を慎重 にしなくてはならな

い9)10).しかし,あ まりMRSA感 染症に神経質に

な りすぎ,本 来の術後感染予防または治療 として

投与すべ き抗菌薬 を著 しく制限 を設 けることは

誤 った考えであろう.MRSA感 染症が発症 した場

合,ま ず第一 にそれ以上に院内に拡散 させない努

力が必要であ り,院 内感染対策を徹底 して行 うこ

平成7年3月20日

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270 落合 実 他

とがなによりも優先すべ き課題であろう.何 らか

の院内感 染対 策 を実施 してい る施設 がすで に

92.1%も あることはこのことを裏付けている.

院内感染対策 については,す でにさまざまな報

告がある.厚 生省 も院内感染対策マニュアルを作

成 し全国に配布 している11).ま た各病院独 自のマ

ニュアルを作成し,MRSA感 染対策に懸命に努力

している施設 もある11)12).

その一つとして,手 術室 における術前の胃管挿

入 時の清潔 操作 が取 り上 げ られ る.と くに,

MRSA腸 炎 を多 く経験 した施設では,こ れ らの対

策 を何 らかの形で術前 ・術中対策 として実施 して

いる施設 がすでに42.8%に 達 してい ることは,

MRSA腸 炎にかなり苦慮 している結果であろう.

MRSA腸 炎が胃癌な ど上部消化管手術 に多い

とされている3)13).理由として,胃 液の低酸状態が

MRSAの 腸内発育を助長するといわれている.し

かし,下 部消化管手術例 にも認 められることか

ら14),術後の腸蠕動の低下による胃内への胆汁逆

流 により,低 酸状態になるためと考 えられる.第

1回 の全国調査で もMRSA腸 炎を起 こした症例

に全例 胃管が挿入されてお り,低 酸状態に加えて

MRSAの 咽頭か ら胃内への運搬経路 としての胃

管の存在が大 きく関わっている もの と推測 され

る.

一方,MRSA感 染症が発症 した場合の隔離は極

めて大切である.全 体で6割 以上の施設が,現 状

の苦 しいベ ットのや り くりの 中で,そ れぞれ

MRSAの 排菌患者 を隔離するよう努力 している

ことは,多 くの施設がMRSA腸 炎の脅威 を実感

していることにほかならない.し か し,隔 離が十

分であって もそこに携わっている医療従事者の保

菌状況 を常に把握すべきである15).MRSAを 病棟

内で拡散させないことの重要性 をとくに強調した

い.

MRSA感 染症 に対す る注射用Vancomycinの

適応が認可され,患 者のlife saving drugと して

広 く使用されるようになってきた.そ こで,現 在

最 も有効 な薬剤 とされているVancomycinを 便

培養の結果を待って投与するか,早 期診断を行 っ

て培養の結果を待たずに投与を開始するかの治療

方針を質問した結果,1992年7月 の時点で,全 体

として,MRSA腸 炎 に対す るVancomycinの 使

用は少な くとも半数の外科施設で必要 と考 え,細

菌培養の結果を待たずに投与すると積極的投与の

方針 をとっている施設が70%以 上 もあった.こ の

結果は,重 症のMRSA腸 炎 を経験 し,そ の時の恐

怖が身 に滲みているか らであろうと推測 された.

小西 ら16)は全国の27施 設を対象に,MRSA腸 炎 と

診断された患者あるいはMRSA腸 炎が強 く疑わ

れた患者 に対 して,Vancomycin経 口投与 による

臨床研究 を行 い,MRSA腸 炎が疑われ るならば

MRSAが 検出 され る前か ら早期 にVancornycin

の経口投与を開始することが望 ましいと報告して

いる.

最 後 に,今 回 の ア ンケー ト調 査 で831例 の

MRSA腸 炎の発生 を認めたが,こ の うち消化器外

科581例 の詳細な報告があ り,そ の一部 を報告す

る.消 化器外科で手術対象 となった基礎疾患は悪

性疾患が80.3%,良 性が19.7%で あった.ま た,

MRSAが 関連 したと推測される死亡は581例 中53

例(9.1%)で あり,第2回 目の全国アンケー ト調

査4)の14.3%よ り減少 していた ことが判明 した.

なお,こ の事項の詳細な解析は第2報 で行 う.

結 語

第1回,第2回 の全国調査時 よりMRSA腸 炎

は全国的に倍増 してお り,日 本外科学会認定施設

の外科施設のうち,す でに半数の病院でMRSA

腸炎が発症 し,対 処 していることが今回の調査で

判明 した.と くに,消 化器外科手術の うち悪性疾

患に対する手術の場合にはMRSA腸 炎の発症防

止に厳重な監視 と予防対策が必要であることを明

らかにした.

稿を終えるにあたり,本調査にご協力頂いた施設の先生

方に深く感謝します.

文 献

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Current Occurrence and Infection Control of MRSA Enteritis forSurgical Patients in Japan (First Report)

Minoru OCHIAI, Hiroshi TANIMURA, Yoshiya UMEMOTO, Motoki YAMAMOTO,Kouichi MURAKAMI & Kiwao ISHIMOTO

Department of Gastroenterological Surgery, Wakayama Medical College

We investigated the current occurrence and the infection control of MRSA enteritis in the

surgical facilities in Japan from July 1990 to June 1992. In this two years, MRSA enteritis wasencountered in 831 cases in 144 of 279 facilities (51.6%) which had replied to our survey.

Frequency of onset of MRSA enteritis in the surgical speciality was 95% in abdominal

surgery and general surgery. Nosocomial infection controls for MRSA infection were done in

92.1% of 261 facilities who replied to our questionnaire. Preventive control in the preoperativeand postoperative periods were performed in 23.8%. Various controls for MRSA enteritis were

recognized and enforced in 56.7% with restriction of postoperative antibiotics, 65.5% withenviromental controls, 70.5% with preventive control for the medical staff and 42.9% with the

control for the expansion of nosocomial MRSA infections.

平成7年3月20日