平成23年度水道分野海外水ビジネス 官民連携型案件発掘形成 ... · 2018. 6....

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平成 23 年度水道分野海外水ビジネス 官民連携型案件発掘形成事業 (アジア諸国)報告書 神栄リビングインダストリー(株) 平成 24 年 3 月

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Page 1: 平成23年度水道分野海外水ビジネス 官民連携型案件発掘形成 ... · 2018. 6. 2. · 3 1. 調査概要 1.1 アゼルバイジャン共和国の概略 1991年にソ連邦崩壊によりアゼルバイジャン共和国として独立。90年代半ばから、カスピ海

平成 23 年度水道分野海外水ビジネス

官民連携型案件発掘形成事業

(アジア諸国)報告書

神栄リビングインダストリー(株)

平成 24 年 3 月

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はじめに ............................................................................2 1. 調査概要........................................................................3 1.1 アゼルバイジャン共和国の概略 ................................................3 1.2 調査の背景と目的.............................................................4 1.3 現地調査の行程と内容.........................................................4 1.4 調査体制.....................................................................5

2. 現地調査........................................................................5 2.1 非常事態省水資源局...........................................................5 2.2 水道公社 AZERSU(JSC) .......................................................8 2.3 ジェイランバタン貯水池および浄水場 ..........................................8 2.4 浄水場内の水質検査室........................................................11 2.5 AZERSU 本庁舎内の水質試験所(研究所).......................................17 2.6 中央水質試験所..............................................................20

3. 文献調査(水資源管理).........................................................21 3.1 水資源管理の改善に向けた国際的な取り組み ...................................21 3.2 水資源に関する機関と役割 ...................................................22 3.3 関係法規....................................................................23 3.4 国際河川の水資源管理に向けた取り組み .......................................24 3.5 国内分析機関の現状..........................................................29 3.6 水質基準....................................................................31

4.調査結果のまとめ................................................................34 4.1 水源(水質)の管理状況と改善の方向性 .......................................34 4.2 新水質基準の設定と管理方法 .................................................34 4.3 試験所認定の方向性..........................................................35 4.4 精度管理の技術的課題........................................................35 4.5 水道公社 AZERSU の中央水質試験所の方向性 ....................................36

5.事業形成の可能性について........................................................36 5.1 基本的考え方................................................................36 5.2 想定される事業内容..........................................................37 5.3 事業形成へ向けての今後の作業方向性 .........................................38

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はじめに

神栄リビングインダストリー(株)を始めとする神栄(株)グループでは、阪神・淡路大震災の

経験と教訓を生かし、国際貢献も視野に入れ、日本の優れた防災・減災技術の海外諸国への紹

介を行っており、アゼルバイジャン共和国に対しては、駐日大使館の全面協力を得て、副首相

を始めとして関係省庁にプレゼンテーションを行ってきている。

同時に、水・インフラ整備に関する「官」のノウハウを反映させるべく、神戸市と「水・イ

ンフラ事業の海外展開等に関する相互協力協定書」を 2011 年 1 月に締結し、「民」のみでは限

界のある上下水道事業の基本計画や管理運営に関する技術・ノウハウ等の提供についても提案

可能な体制にあることを示し、防災・減災のみならず広い観点でアゼルバイジャン国でのイン

フラ整備に資する官民連携事業の提案を行ってきたところ、アゼルバイジャン国非常事態省よ

り、現行複数の官庁に分散されている水質検査業務が非常事態省に集約されることとなり、つ

いてはダムに貯蔵されている水(上水利用も含む)の水質検査の実施体制を整備することとな

ったため、これに関して諸外国に提案を求めているところであり、日本からの提案を求めると

の情報を得るに至った。

これを受け、海外における水・インフラ事業に関して相互協力関係にある神戸市は、上水用

のダムを保有・管理し、ISO9001(品質マネジメントシステムの国際規格)および ISO/IEC

17025(試験所認定の国際規格)を持つ水質試験所を保有して水質管理体制を整えている

ことから、アゼルバイジャン国に対し、官民連携して、水質検査機器の提案のみならず、水質

管理体制づくりや水質検査場の運営ノウハウを含めた総合的な提案の可能性を示したところ、

アゼルバイジャン国側が非常に興味を持ったため、アゼルバイジャン国非常事態省の体制が整

った今般、案件形成への取り組みを進めるため、神戸市の水質試験体制の紹介および現地の水

質監視体制等の調査、アゼルバイジャン国のニーズ等の調査を行った。

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1. 調査概要 1.1 アゼルバイジャン共和国の概略 1991 年にソ連邦崩壊によりアゼルバイジャン共和国として独立。90 年代半ばから、カスピ海

への石油投資ブームを背景に経済は好転、10%前後の高成長が継続し 2006 年には 34%の成長

率を遂げたが、近年では伸び率は鈍化し 2010 年の GDP 成長率は 5.0%(IMF)である。外交政

策は、米露とのバランスに配慮しつつ、伝統的友好国のトルコ、隣国イランとも等距離善隣外

交を継続して行ってきた。最近は、トルコ・グルジアとの地域協力や GUAM(グルジア、ウクラ

イナ、アゼルバイジャン、モルドバ)内の協力も進めている。

表-1 アゼルバイジャン共和国の基礎情報

国土・社会

正式国名 アゼルバイジャン共和国(Azerbaijan Republic)

首都 バクー(Baku)

国土面積 8 万 6,600km2(日本の 23%、北海道よりやや大きい)

総人口 890 万人

民族 アゼルバイジャン人(90.6%)、レズギン人(2.2%)、ロシア人(1.8%)など

宗教 イスラム教(シーア派)

言語 アゼルバイジャン語(公用語)、ロシア語

政治

政体 共和制、大統領制

独立 1991 年 10 月 18 日

現憲法 1995 年に制定

元首 イルハム・アリエフ大統領

経済

名目 GDP 91(10 億 US ドル)

一人当たり GDP 6008US ドル

インフレ率 7.88%

実質経済成長率 5.0%

国際収支 15.04(10 億 US ドル)

主要産業 石油産業、農業

主要輸出品目 石油及びガス、機械、綿花、食料品

主要輸入品目 機械設備、石油製品、食料品、金属、化学製品

主要輸出相手先 トルコ、イタリア、ロシア、イラン、インドネシア

主要輸入相手先 ロシア、トルコ、ドイツ、ウクライナ、イギリス

通貨 マナト(100 円=1 マナト、2012 年 2 月)

対日関係

政治関係 国家承認日:1991 年 12 月 28 日

外交関係承認日:1991 年 9 月 7 日

対日輸出 75.7 億円(2010 年) 機械類、輸送用機器、鉄鋼等

31.7 億円(2010 年) 石油及び同製品

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1.2 調査の背景と目的 神戸市と神栄グループの官民連携体制をベースに、水質検査所の運営ノウハウの提供と受託、

水質検査機器等の提供を目指し、更には、アゼルバイジャン国では水質検査の所管の統一を機

にその検査基準・検査項目等も非常事態省が更新する模様であることから、アゼルバイジャン

国の水質検査に関連する基準づくりへの参画を目指した、官民連携型案件形成を目的とする。

1.3 現地調査の行程と内容 調査は、現地調査(2 章)およびインターネットから入手した報告書等に基づく文献調査(3

章)により行った。現地調査の行程を下記に示す。

渡航日程:2012 年 1 月 29 日(日)~2 月 5 日(日) (移動日含む全日程 8 日間)

現地調査行程・訪問先・調査内容:表-2のとおり

表-2 訪問先および調査内容

月 日 訪 問 先 実 施 内 容

1 月 31 日(火) 非常事態省水資源局

局長他

・非常事態省プレゼンテーション、懸案事項の説明

・神戸市側プレゼンテーション

・質疑応答、意見交換

日本大使館

一等書記官

・水インフラ整備に関する神戸市と神栄の取り組み内容の説明

・神栄のアゼルバイジャンにおける企業活動の説明

・現地の水事業に関する情報収集

2 月 1 日(水)

AZERSU

ジェイランバタン浄水場

同 水質試験所

非常事態省水資源局

ジェイランバタン貯水池

・浄水処理方法、管理体制等の現地視察調査

・水源および浄水の水質基準および水質管理状況等の現地視察

調査

・貯水池の管理状況等の現地視察調査

AZERSU

副局長に面談

・現行の水質基準や検査体制の確認

・新たな水質試験所整備状況の確認

2 月 2 日(木)

AZERSU 本社内

水質試験所(研究所)

・現行の水質基準や検査体制の確認

・使用機器等の現地視察調査

非常事態省水資源局

水資源局長他と面談

・調査のまとめと相手国の要求事項等の確認

AZERSU

中央水質試験所

・水質検査体制や使用機器の現地視察調査

・神戸市水道局の検査状況を DVD にて紹介

・水質管理責任者や検査員との意見交換

2 月 3 日(金)

非常事態省(AZERSU)

水質試験所新築現場

・建築状況の確認

※訪問先は全て、首都バクー市内。

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1.4 調査体制 現地調査は、神戸市水道局計画課課長、水質試験所主査、神栄(株)産業資材部営業第 2 グ

ループ課長他の 4 人で行った。

2. 現地調査 2.1 非常事態省水資源局 水資源局長の挨拶のあと、神戸市水道局計画課長から、厚生労働省水道課の親書を手渡し、

友好ムードの中で会議が始められた。

非常事態省水資源局は、これまで様々な部署で行われていた水資源管理を行うために発足し

た機関で、今後は水道水源の水質管理も水道公社の AZERSU を監督下に置いて水資源局が行うこ

とになっている。以下に非常事態省が行った水資源に関するプレゼンテーションの概要を記す。

・河川、貯水池、治水、灌漑用等水資源の利用状況および土地利用等に関する状況の説明。

・特に近年多発している洪水対策に注力している。

・水資源の 7 割が海外からの流入河川水で汚染を懸念している。

・洪水対策のためにオランダの会社と 1 年契約し技術者が常駐している(今回会議にも出席)。

・法律関係の変遷(農業用水法、水道法、水の管理の法律等)

・国際河川の管理について、クラ川はグルジアと、アラス川はイランと整理できている。カラ

川はアルメニアに支配されており水の管理が不可能である。8 カ所の貯水池があり、高いダ

ム(標高 150m)がある。地下水のモニタリングは環境省、灌漑用水は農水局、AZER エナジ

ーが水力発電を管理している。

・施設は長期にわたり投資せず管理問題が発生している。

・洪水が 2002、2003、2007、2010 年に農耕地のクラ川で発生し多大な被害が発生した。洪水の

原因を分析調査し、貯水池管理計画を立てた。情報集約されていないこと、モニタリングが

できていないこと、古いポンプ場等が課題と分かった。

・2000 年から調査したが 1/18 年の流下能力しかないことが分かり、レーダースキャンで砂の

堆積状況を確認し、浚渫してきた結果、2011 年には対策工をした貯水池では洪水にならなか

った。

・オランダ企業から 4000m3/時浚渫できる船を購入。水位計も電子観測システムで行う。トル

コの企業からも船を購入した。

・洪水の緊急対応できるシステムを構築、リスク評価し、計画を立て国に報告していく。

この後、神戸市側から以下の内容のプレゼンテーションおよび説明を行った。

・神戸市における上下水道事業プロモーション用 DVD の視聴(デザイン都市 KOBE の DVD 供与)

・神戸市水安全計画(WSP)のプレゼンテーション

・アゼルバイジャンと日本の水質基準比較表(表-3)の配布と説明

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表-3 日本とアゼルバイジャンの水質比較表

(青:アゼルバイジャンに基準値の設定なし、ピンク:日本に基準値の設置なし)

J/A No Water quality item JAPAN AZERBAIJAN(GOST2874-8) Remarks

J 1 Standard plate count bacteria The number of colonies formed in a1 ml sample must be 100 or less.

The number of colonies formed in a1 ml sample must be 100 or less.

J 2 Escherichia coli Must not be detected >3(Total coliforms MPN)J 3 Cadmium or cadmium compounds 0.003 -J 4 Mercury or mercury compounds 0.0005 0.01)

J 5 Selenium or selenium compounds 0.01 0.001J 6 Lead or lead compounds 0.01 0.03J 7 Arsenic or arsenic compounds 0.01 0.05J 8 Hexavalent chromium compounds 0.05 0.01)

J 9 Cyanide ions or cyanogen chloride 0.01 0.01)

J 10 Nitrate nitrogen or nitrite 10 102)

J 11 Fluoride or fluoride compounds 0.8 1.5J 12 Boron or boron compounds 1 -J 13 Carbon tetrachloride 0.002 -J 14 1,4-Dioxane 0.05 -J 15 Cis-1,2-dichloroethylene or trans- 0.04 -J 16 Dichloromethane 0.02 -J 17 Tetrachloroethylene 0.01 -J 18 Trichloroethylene 0.01 -J 19 Benzene 0.01 -J 20 Chloric acid 0.6 -J 21 Chloroacetic acid 0.02 -J 22 Chloroform 0.06 -J 23 Dichloroacetic acid 0.04 -J 24 Dibromochloromethane 0.1 -J 25 Bromic acid 0.01 -J 26 Total trihalomethane 0.1 -J 27 Trichloroacetic acid 0.2 -J 28 Bromodichloromethane 0.03 -J 29 Bromoform 0.09 -J 30 Formaldehyde 0.08 -J 31 Zinc or zinc compounds 1.0 5.0 ColorJ 32 Aluminum or aluminum 0.2 0.5J 33 Iron or iron compounds 0.3 0.3J 34 Copper or copper compounds 1.0 1J 35 Sodium or sodium compounds 200 170 TasteJ 36 Manganese or manganese 0.05 0.5-1.03) ColorJ 37 Chloride ions 200 350 TasteJ 38 Calcium, magnesium, etc. 300 2204)

J 39 Evaporated residue 500 1000J 40 Anionic surfactants 0.2 - FoamingJ 41 Geosmin 0.00001 -J 42 2-Methyl-isoborneol 0.00001 -J 43 Non-ionic surfactants 0.02 - FoamingJ 44 Phenols 0.005 - OdorJ 45 Organic substances (amount of

total organic carbon, TOC)3.0 105) Taste

J 46 pH From 5.8 to 8.6 From 6.0 to 9.0J 47 Taste Must not be abnormal -J 48 Smell Must not be abnormal <2 threshold odor numberJ 49 Color 5 color units 20J 50 Turbidity 2 NTU 1.5 NTUA 5 HCO3 - >3A 9 Polyphostate residual (PO4

- - 3.5A 11 Mineralization - <1000(1500)A 13 N2O5 - 29.0A 16 NH4 - tracesA 33 SO4

2- - 100A 28 Be - 0.0002A 29 Mo - 0.25A 31 Sr - 7.0A 33 H2S - 0.0

1) GOST No.34: Hg, Ba, hexavalent Cr and other poison contaminants 0.0mg/L2) GOST No.14: NO2 traces, No.15: NO3 10.0 mg/L3) GOST No.21: Total content of Fe+ and Mn 0.5-1.0 mg/L4) GOST No.6: Ca2+ 180 mg/L, No.7: Mg2+ 40 mg/L No.10: Hardness 7.0 mg-eqv5) GOST No.22: Oxidation O2 2.5-3.0 mg/L, KMnO4 10.0mg/L

Maximum allowable concentrations (MAC mg/L) in drinking water in Japan and

Odor

Fundamentalproperties

Inorganicchemicals andheavy metals

Index ofpathogenicorganisms

Disinfectionby-products

Organicchemicals

Disinfectionby-products

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非常事態省水資源局庁舎 厚生労働省水道課からの親書の手渡し

右側:アゼルバイジャン、左:日本調査団 水安全計画のプレゼンテーションの状況

左、水資源局長、左から 2 番目は洪水対策を請

け負ったオランダの会社から派遣技術者

日本側調査団と水資源局長

写真-1 非常事態省水資源管理局における会議の状況

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2.2 水道公社 AZERSU(JSC) AZERSU 本庁舎では、副局長と面談し水質管理状況について以下の説明を受けた。

・バクー市の水源は 5 箇所あり、そのうち2つは表流水を使用している。

・バクー市の送配水管延長は 4,770kmで、材質は鋼管であり、給水に鉛管は使っていない。

・浄水場では、1 年に 1 回掃除しており、適切な浄水処理を行っている。

・水源から蛇口まで水質検査しており、基準よりも残留塩素が低下している場合は、追加塩素

を実施している。

・水質検査は、水質基準に従って 24-30 項目の検査を行い分析技術の向上にあわせて、新しい

方法で分析している。

・この度、アゼルバイジャン政府の支援を受けて 120 項目の検査が出来る水質試験所(中央試

験所)を市内に建設している。また、350 万市民の水道水の検査が出来るように、十分な大

きさの試験所を作っている。1 ヶ月前から建設を始めており、5 月に建物が完成し、設備は入

札を実施して決定する予定である。技術者をヨーロッパ、トルコ、イギリスの試験場に派遣

し参考にする予定である。日本からの提案があれば、ぜひ提案してほしい。

・水質基準は決まっていないので、国際基準に合うように決めたい。

AZERSU 本庁舎 副局長との面談前(副局長室の会議机にて)

写真-2 AZERSU 副局長との面談

2.3 ジェイランバタン貯水池および浄水場 今回、視察したジェイランバタン貯水池および浄水場は首都バクー中心部から北西約 25km

(車で 30 分程度)の位置にある。浄水場の入口は城壁のようなゲートで門番がおりセキュリテ

ィ監視が非常に厳重であった。ジェイランバタン貯水池(自然の窪地を利用した人工湖)の水

源は、185km 先のロシア領のサムル川から運河により貯水池に運ばれている。貯水池容量は 1

億 8,600 万 m3で、湖岸から 140m 沖合の水深 14.5m地点から、3m3/S あるいは 12m3/s(夏期)

の原水を 2 系統で浄水場へ導水しているほか、浄水場付近の 1,000ha の森林や街区公園の散水

にも使われている。元々森林だった広大な敷地(斜面地)に浄水場があり、裸地には若木を植

樹し回復を図っている。

浄水場は現在 3 系統(1961 年竣工、1966 年竣工、1978 年竣工)で高速凝集沈殿、砂ろ過(急

速)を行っており、浄水処理能力は、648,000m3/日(7.5m3/s)あり、バクー市内の 50%を賄っ

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ている。施設の建屋内での写真撮影は許されず、外壁のみの撮影しか出来なかった。

水質は、春から夏にかけてロシアの融雪とともに濁度が高くなるが、浄水処理に影響を及ぼす

ほどではない。浄水システムは、ソ連時代のクルーガーエフタイプということであった。凝集

剤は、ポリアクリルアミド(Magnafloc LT31)で、0.05mg/L の注入率で定量注入している。ろ

過池はろ過棟内に6槽×2列で3系統あり、ろ過砂 6-8mm が 20cm、0.8-1.2mm が 90cm の複層

ろ過の設計となっている。ろ過速度は、240m/日で 24 時間ごとに逆洗している。消毒剤は塩素

ガスを使用している。人口増加に伴い、4 系統目、324,000m3/日の膜ろ過システムをトルコと

アゼルバイジャンの会社が建設中で、工期は 18 か月以内ということであった。現在の浄水場の

職員数は 17 人で、そのうち 9 人が浄水場管理、残り 8 人のうち 4 人が水質分析に従事し、それ

以外の 4 人はエンジニア(機械、電気の維持管理)と思われる。ポンプ場も古いままで、設備

も当時のものを補修しながら何とか使っている様子であった。送水ポンプのすぐ後の送水管に

検水管があり、1 時間に 1 回、送水管(水道水)残留塩素の測定を行い、遊離塩素として 0.3mg/L

~0.5mg/L となるように管理している。

なお、ロシアから流下してくる河川水は汚染が懸念されるため、アゼルバイジャン国内の河川

から新たに導水する計画がある。この計画は、新たにバクーの近くに貯水池を作り、その規模

はジェイランバタンの 2 倍の容量で 2013 年には完成予定である。

首都バクー中心部から北西約 25km(車で 30 分程度)にあるジェイランバタン貯水池

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ジェイランバタン浄水場全景 右側がジェイランバタン貯水池

ジェイランバタン浄水場管理棟 ジェイランバタン貯水池取水口(140m 先)

高速凝集沈殿池内部 ろ過池棟

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ろ過池の模型 簡単な浄水フロー図

浄水場フロー図および施設配置図 ろ過池説明図

送水ポンプ場 送水管(φ2,000mm×6 本)

写真-3 ジェイランバタン貯水池および浄水場

2.4 浄水場内の水質検査室 ジェイランバタン浄水場内の水質試験所では、浄水場から送水する水の水質検査を行ってい

る。浄水場管理棟内の試験室は、微生物、化学、滅菌室の 3 部屋である。水質分析には、化学

部門および微生物部門でそれぞれ 2 名が従事し、交代制で 1 名ずつが勤務している。

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浄水場から送水する浄水毎日検査項目は、濁度、色度、pH、細菌、臭気(官能)検査である。

臭気検査は、20℃と 60℃の温時、冷時臭で確認している。このほか、上記項目を含め 25 項目

を、定期的に検査している(写真-4、表-4)。

試験室は簡素で、基礎的なビーカーやフラスコ、ピペットなどのガラス器具も少ない。試験

室の両方の側面にはドラフトが設置されているがドラフトは用いられていない。電子天秤が用

いられているが、秤量皿の周囲に試薬が落ちているなど管理状態に課題が見られる。試験方法

は、1985 年に制定されたソ連の水道水規格の GOST が用いられており、現在でもその規格書を

日常的に使用している。

化学試験では、分光光度計を用いた分析を行っている。ソ連時代に製造されたと思われる分

光光度計が用いられている一方、米国 HACH 社の DR/2010 分光光度計も用いられている。試薬を

確認すると、DR/2010 を日常的に使用していると思われた。なお、DR/2010 は適切な前処理後、

試料水に発色試薬を加えて反応させて吸光度を測定することにより、70 項目以上を分析するこ

とが可能な簡易分光光度計である。また、電池でも動作するため、我が国では水質事故時の簡

易測定で広く用いられ、神戸市においても水質事故時のシアン分析計として水質試験所に配備

している。極微量分析および自動分析には向かないものの、米国では環境保護庁の EPA メソッ

ドにも掲載されており、信頼性の高い方法である。本機種は、1996 年に発売の旧モデルで我が

国ではランプ以外の部品供給はなされていない状態にある。pHはハンディ型のpHメーター

を使用している。pHメーターの傍らには標準液が置かれており、定期的に校正して使用して

いると思われた。このほか、電気伝導率計、水温計もハンディ型が使用されている。理化学試

験に用いられるろ過器とフィルターセット(細菌用以外)、遠心分離器、振盪器等の前処理用汎

用機械は見あたらなかった。

細菌検査項目は、大腸菌群、糞便性連鎖球菌および一般細菌である。大腸菌群検査は、フィ

ルター法で 100mL をろ過し、平板プレートの m-Endo 培地を用いて、培養温度 36℃、培養時間

48 時間で判定している。フィルター法では、1 検体ごとにステンレスフィルターホルダーを火

炎滅菌してろ過している。糞便性連鎖球菌検査では、グラム染色およびカタラーゼ活性試験を

行っている。糞便性連鎖球菌および腸球菌の試験は複雑であるが、推定陽性の場合の顕微鏡検

査も行われており、手順通り試験しているようであった。なお、腸球菌検査も行っているとの

ことであったが、腸球菌の確定検査を行っている様子は認められなかった。塩素消毒により、

大腸菌群および糞便性連鎖球菌は不検出であるため腸球菌検査まで進むことはほとんどないた

めと思われる。一般細菌はポリペプトン培地を用いた寒天培地平板プレート法で我が国の方法

と同等と考えられた。高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)および恒温培養庫(4 台)は、サン

ヨー製であった。なお、国内においてもこれらの機械はサンヨーが高いシェアを持っている。

精製水蒸留装置はソ連時代の物が現在も使用されている。

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写真-4 試験所内に掲示されていた管理表

表-4 管理表の項目および基準

1 温度 1-27℃2 臭気 2度 以下3 味 2度 以下4 色度 20unit 以下5 濁度 2度 以下6 pH 6-97 塩化物イオン 350mg/L 以下

8アンモニアおよびアンモニウムイオン

2.0mg/L 以下

9 亜硝酸イオン 0.1mg/L 以下10 硝酸イオン 45mg/L 以下11 酸度 15mg/L 以下12 硫酸イオン 500mg/L 以下13 マンガン 0.1mg/L 以下14 ミネラル 1000mg/L 以下15 炭酸水素イオン 30mg/L以上16 粒子量 2.0mg/L 以下17 硬度(粗さ) 7mg-eqv/L 以下18 鉄 3mg/L 以下19 ポリリン酸イオン 3.5mg/L以下20 銅 1.0mg/L 以下21 毒物 不検出22 遊離塩素 0.3-0.5mg/L23 結合塩素 0.7-1.5mg/L24 大腸菌群 3 CFU以下25 一般細菌 100CFU以下

浄水管理棟本館 水質試験所入口

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化学・微生物試験室 化学試験室全景

化学試験室内のドラフト 化学試験員

試験室棚の基礎試薬 電子天秤

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GOST 規格書 GOST 規格書拡大図

分光光度計 分光光度計

HACH 社の DR/2010 型分光光度計 ハンディ型pH計

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電気伝導率計および水温計 細菌試験に用いるろ過器とポンプ

微生物試験室全景 微生物試験に用いる試験管

培養室、4 台のサンヨー製恒温培養庫 サンヨー製高圧蒸気滅菌器

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高圧蒸気滅菌器 精製水蒸留装置

写真-5 ジェイランバタン浄水場内の水質試験室の分析機器など

2.5 AZERSU本庁舎内の水質試験所(研究所) AZERSU 本庁舎内の水質試験所は、教授および博士課程の学生達がおもに研究のために使用し

ている。AZERSU の 1 階は、ソ連時代に浄水処理研究に使用されていたため、跡地(建屋内)にプ

レハブ様の簡易構造の水質試験室を設けている。什器類は比較的新しく、簡単なクリーンベン

チもある。水質試験室の機材は、HACH 社の DR/2010 のほか、ソ連製のpH 計、分光光度計が使

用されている。細菌試験も、ジェイランバタン浄水場で用いている試験方法と同じである。試

験室には、GOST ISO/IEC 17025-2009(注)のロシア語の規格書があった。規格書の序文部分に

は、アゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス、ロシア、トルクメニスタン、ウズベキスタ

ン、ウクライナの国名があり、2012 年 1 月 1 日の日付が付されていた。担当者は今年から発効

になったと話していた。

(注) ・ ISO/IEC 17025:2005 が国際規格の正式名称、GOST ISO/IEC17025-2009 の規格は、

CIS 諸国版の規格(GOST)に翻訳・整合させたものと思われる。

・ CIS 諸国(独立国家共同体):旧ソ連邦構成国で構成されるゆるやかな国家連合体で、

次の国家が含まれる。ロシア、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キ

ルギス、ベラルーシ、アルメニア、アゼルバイジャン、モルドバ(客員参加国)、

トルクメニスタン(客員参加国)、ウクライナ(事実上の客員参加国)。

・ GOST は CIS 諸国の規格であり、ロシアだけに適用する場合は、GOST-R の規格名が

用いられている。

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AZERSU 本庁舎 AZERSU 本庁舎に併設されている水質試験所

水質試験室 水質試験室内部

水質試験室薬品棚 右から 3 番目が教授

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HACH 社の DR/2010 ロシア語表記のpH 計

ロシア語表記の分光光度計 分光光度計

簡単なクリーンベンチ 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求

事項 GOST ISO/IEC 17025-2009)

写真-6 AZERSU 本庁舎内水質試験所(研究所)における分析機器など

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2.6 中央水質試験所 AZERSU 給水区域の水道水および水道原水の水質試験は、市内中心部の一般ビル内にある中央

水質試験所で行われている。中央水質試験室は、5 部屋あり化学分析および微生物検査を行っ

ている。勤務は土日を含めたシフト制で化学分析に 9 名、微生物検査に 2 名が従事している。

このほかの職員を含めて総勢 19 名である。責任者以外の分析に従事する職員は、大学などで専

門的な教育を受けた女性である。採水および瓶洗いは別の職員が行い、神戸市のように水質試

験職員が採水瓶の洗浄から採水・検査・分析・報告まで一貫して作業することに抵抗感がある。

分析機械、および分析方法はジェイランバタン浄水場水質試験所および AZERSU 庁舎内水質試験

所とほぼ同様である。今後、新設の水質試験所が建設されることや ISO 規格が要求されている

ことをよく理解しており、神戸市水道局水質試験所の分析機器と分析の様子を写した映像に強

い興味を持っていた。

水質試験室入り口(古いビルの1階) 細菌試験用ろ過器など

サンヨー製恒温培養庫 HACH 社の DR/2010 用試薬が陳列されていた

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ロシア語表記の分光光度計 神戸市の分析機器と分析の様子の紹介

写真-7 中央水質試験所における分析機器など

3. 文献調査(水資源管理) アゼルバイジャンにおける水資源管理に関する報告書等をインターネットから入手し、有用

な情報を整理した。

3.1 水資源管理の改善に向けた国際的な取り組み アゼルバイジャン独立後の混乱期には、ほとんど水資源管理は行われてこなかったが、2000

年以降、国際河川の流域国と様々な国際的調査が展開されてきた(図-1、表-5)。

図-1 アゼルバイジャンの水資源

(注) 赤線は主要道路幹線、青線が河川

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表-5 これまでの水資源管理の改善に向けた国際的な取り組み

TACIS Project “Joint River Management Program Kura basin ”(2001-2003, Armenia, Azerbaijan, Georgia)

クラ川流域の共同管理計画(2001~2003 年)

( EU の Technical Assistance for the

Commonwealth of Independent States :

TACIS、独立国家共同体への技術支援)

USAID project “Water Management in the South Caucasus”(2002-2004, Armenia, Azerbaijan, Georgia)

南コーカサスにおける水資源管理(2002-2004

年)(United States Agency for International

Development:USAID、米国開発援助)

UNDP/GEF/SIDA project “Reducing Transboundary Degradation in the Kura

Araks River Basin” (2004- 2007, Armenia, Azerbaijan, Georgia)

ク ラ ・ ア ラ川流域の越境 汚染の防止

(2004-2007 年アルメニア、アゼルバイジャン、グルジア)

(UNDP/GEF/SIDA:国連開発計画/地球環境ファ

シリティー/スウェーデン国際開発援助)

BMU Project “Development of the

Transboundary Cooperation for Hazard

Prevention in the Kura River Basin” (2003-2006, Armenia, Azerbaijan,

Georgia):

クラ川流域における危害発生防止のための越

境間協調への取り組み(2003~2006 年、アル

メニア、アゼルバイジャン、グルジア) (The

German Federal Ministry for the

Environment :BMU ドイツ政府環境省)

EU project “Creation of Enabling Environment for Integrated Management of

the Kura-Aras Trans- boundary River

Basin”(2007-2010, Azerbaijan, Armenia, Georgia)

国境を越えたクラ・アラ川流域の環境保全の

ための統合水管理手法の策定(2007~2010

年、アゼルバイジャン、アルメニア、グルジ

ア)(EU:欧州連合)

EU Project “Transboundary River

Management Phase II for the Kura river

basin” (2008-2011. Armenia, Azerbaijan, Georgia):

クラ川流域における越境河川管理フェーズ2

(2008~20111 年、アルメニア、アゼルバイジ

ャン、グルジア)、(欧州連合:EU)

ADB Project Proposed Multitranche

Financing Facility Republic of

Azerbaijan: Water Supply and Sanitation

Investment Program

アゼルバイジャンにおける水道および衛生改

善計画(アジア開発銀行中長期資金供与枠:

ADB)

TACIS Project “Water Governance in the Western EECCA Countries” (2008-2010, Belarus, Moldova, Ukraine, Armenia,

Azerbaijan, Georgia)

EECCA 諸国における水資源管理 (2008~2010

年、ベラルーシ、モルドバ、ウクライナ、ア

ルメニア、アゼルバイジャン、グルジア)

(EU:TACIS)

3.2 水資源に関する機関と役割 アジア開発銀行が行った「アゼルバイジャンにおける水道および衛生改善計画」の報告書は、

2011 年 10 月に発行され、アゼルバイジャンの水資源管理に係わる官庁や法律などが整理され

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ているため、その一部を抜粋して記載する。

水資源の保護および管理・運営には、おもに 4 つの機関が担っている。環境保護および天然

資源省(Ministry of Environment and Natural Resources : MENR)、健康省(Ministry of Health :

MOH)、非常事態省(Ministry of Emergency Situations : MES)、水道公社(首都圏の水道公社:

AZERSU、地方の水道公社:SAWMA)である。それぞれの機関の役割は、表-6の通りである。

表-6 水資源管理に関係する機関と役割

機 関 おもな役割

環境保護および天

然資源省(MENR)

全ての天然資源保護に関する法律の施行を行う。州の環境保護専門委員

会はこの省において定められた環境影響評価計画に従って活動する。

健康省(MOH) 公衆衛生に関することは、健康省の管轄である。主要業務は、衛生の向

上、疫学の規程、そして衛生基準の設定である。水質基準の設定も健康

省の仕事である。

非常事態省(MES) 安全管理に関する規程や基準の設定を行う。特に下水管から漏水、下水

処理場からの安全な排水、そして下水処理場と浄水場の安全な運転管理

を管理している。

水道公社(AZERSU)

および地方水道公

社(SAWMA)

それぞれの管理地域で上下水の施設管理および上水の配水、下水の収集

を担っている。また、浄水場・下水処理場の運営と管理も行う。それぞ

れの管理地域における安全な水の配水(運搬水含む)および衛生改善の

ための施設整備を行う。

3.3 関係法規 本項においても、アジア開発銀行が行った「アゼルバイジャンにおける水道および衛生改善

計画」の報告書に基づいて記載する。

環境管理・監視計画(Environmental Management and Monitoring Plan)に組み入れられる

上水道・下水道の施設・設備に関係する法律は以下の通りである。

① Environmental Protection and Utilization of Natural Resources (1992)

環境管理および天然資源の利用(1992)

② Environmental Protection (1999)

環境保護 (1999)

③ State Ecological Expertise (1996)

国家環境保護専門委員会 (1996)

④ Environmental Safety (1999)

環境保全 (1999)

⑤ Water Code of the Azerbaijan Republic (1998)

アゼルバイジャン水法

⑥ Water Supply and Wastewater (2000)

上水道および下水道(2000)

⑦ Health Protection (1999)

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健康保護(1999)

⑧ Sanitary-Hygienic State (1992), part of GOST

衛生改善(1992)、一部は GOST に基づく

⑨ Water quality, air and noise standards: GOST (various years)

水質、大気、騒音基準(各々GOST の成立年による)

⑩ Program on Strengthening Financial Discipline in the Water Sector (2002)

水道分野における財政規律強化(2002)

⑪ Improvement of Water Supply Management (2004)

水道配水管理改善(2004)

⑫ Construction Norms and Regulations: SNiP

建築基準および規制の制定

⑬ Rule for Use, Protection and Preservation of Trees and Bushes (No 173; September,

2005) 草木の使用上の保護および保全規程(2005)

⑭ The Land Code (25 June 1999)

土地法

⑮ European Economic Community Directive on Wastewater 91/271/EEC (1991)

下水における欧州指令 91/271/EEC(1991)

この中で、特に上下水道に関係に深い法律の概要を下記に記す。

⑤The Water Code(1998) 水法は、アゼルバイジャンにおける表流水、地下水、国境水の保護

と利用に係わる法律を統制している。この法律は、水の利用と保護のための監視と保護に関す

る計画と管理の枠組みについて記述している。この中には、1)ボトル水と上水道、2)特別に保

護された水源の利用、3)下水放流水としての水源の利用に関する項目がある。

⑧The Law on Sanitary-Hygienic State(衛生に関する法律)は、GOST 17.13.07-82 である。

この法律は飲料水の水質基準の根拠となっており、衛生に関する化学的、生物学的専門知識に

基づくこととされている。同様に、騒音基準については GOST12.1003-83 に記載されている。し

かしながら、GOST は下水処理場の放流水質の規程については定められていない。このため、ア

ゼルバイジャンは、EEC(European Environmental Commission)指令 No.91/271 を GOST に採用し

た。この規程は、下水の生物学的、化学的項目の放流水質基準を定めている。

⑮The European Economic Community Directive on Wastewater (1991) 欧州経済共同体指

令は、国内の下水、工場排水の流入、処理、放流に関して規定している。この指令では、処理

場の能力や流入水の監視についての要求事項が規定されている。また、汚泥の廃棄や再利用お

よび下水処理水の再利用における測定についても指示している。

3.4 国際河川の水資源管理に向けた取り組み 欧州連合の TACIS が行った「EECCA 諸国における水資源管理」の 2010 年 6 月の報告書には、

表流水水質基準の草案が掲載されている。プロジェクトの概要とその基準の草案を下記に記す。

EECCA 諸国における水資源管理改善機構(EECCA Component improve water management in the

Eastern Europe, Caucasus and Central Asia )は、欧州連合の水戦略(EUWI:EU Water

Initiative)に基づき、EECCA 諸国(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、

カザフスタン、キルギス、モルドバ、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン、ウクライナ、

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ウズベキスタンの 12 カ国)の安全な飲料水と衛生環境の確保に向け水管理政策を支援する機構

である。安全な飲料水の確保には、水資源管理および水質管理が重要との認識のもと、表流水

水質管理に重点を置いた内容となっている。

この機構の方針に従い、EU の Technical Assistance for the Commonwealth of Independent

States (TACIS)が、国際河川で生じる水資源および水質問題解決のための体制作りおよび解決

プログラムの作成支援を行っている。アゼルバイジャンは、西 EECCA 諸国(ベラルーシ、モル

ドバ、ウクライナ、アルメニア、アゼルバイジャン、グルジア)における水管理プログラム支

援に含まれ、2008 年から 2010 年まで技術支援を受けた。このプログラムにおいて越境河川の

水資源および水質管理を統合的に行うために、統合水資源管理(Integrated Water Resource

Management :IWRM)の導入を促し、各国の実情に応じた法制度、組織、監視体制の再構築の提

案が行われている。また、国際河川における監視方法、監視項目、表流水水質基準の共通化の

草案が提案されている。

表流水水質基準は、経済開発協力機構(OECD)の分類をもとにモルドバをモデル国に作成さ

れ、アゼルバイジャンにおいてもこの基準を採用するよう提案されている(表-7、表-8)。表流

水水質基準のうち、WFD 優先微量物質とは、EU の水枠組み指令(Water Frame Directive:WFD)

によって設定された環境中から減らし、監視する必要のある微量有機化学物質である。これら

の物質は、毒性、生体蓄積、生態濃縮などの観点からヒトおよび生態系に危害を与えるとされ、

その幾つかは、すでに製造禁止および使用禁止措置が取られている。また、その他の物質も排

出量や使用量を減らし、環境中へ放出されないことが求められている化学物質である。我が国

においても、これらの物質に対して同様の措置が講じられ、水質基準項目、水質管理目標設定

項目、環境基準項目として測定している項目である。 なお、表流水水質基準の値により 5 分

類され、使用用途の目安が示されている。

アゼルバイジャンは、プログラム開始当初の問題として、1)多くの計画が異なった方針で無

目的に立てられている、2)水質に関心がない、3)関係者の参加が優先されない、4)水法に統合

水資源管理(IWRM)の考え方が入っていない、5)関係機関の連携がない、6)水資源開発は、ソ

連時代に行われ、流域管理がなされていない等の問題点が指摘されていた。しかし、プログラ

ム終了の 2010 年の報告では、水に関する法律の制定、多くの部署に分かれていた水資源管理組

織の統合、水質監視体制の構築に取り組み始めたことなど、課題は概ね解決に向かっていると

されている。

現在、2010 年報告後の取り組みとして、改善プログラムに沿った各国の体制確立とともに水

質監視体制の強化が求められている。特に水質監視体制に関しては、アゼルバイジャンを始め

として西 EECCA 諸国が、近代的な検査設備を持っていないこと、検査に必要な技術者がいない

こと、精度管理がなされていないこと等が問題点とされており、高度な分析機関を設立し

ISO/IEC 17025 の認定取得が望ましいとされている。

本プログラムは、水道原水のための水質保護に加え、流域全体における水の健全な利用を目

的としているため、表流水水質監視に重点を置いた内容である。しかし、アゼルバイジャンで

は新規設立予定の水質試験所で水道水質監視と表流水水質の測定を行う予定であるため、本プ

ログラムが提案する精度管理が強く求められると思われる。

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図-2 アゼルバイジャンの主要河川

北側のロシアのサムル川から 186km の運河を南に下り、ジェイランバタン貯水池に貯水し、首都バクーの水

道水の約 50%を賄っている。アゼルバイジャン東北側のグルジアからは、Kura 川、南側からのイランから Araks

川がアゼルバイジャンに流入しており、河川水の 70%は他国から流入している。

表-7 表流水水質基準の分類と用途

使用/機能 ClassⅠ ClassⅡ ClassⅢ ClassⅣ ClassV生態学的機能 ✓ ✓魚類繁殖保護 鮭科 ✓ ✓

コイ科 ✓ ✓ ✓水道水 簡易処理 ✓ ✓

通常処理 ✓高度処理 ✓

水浴、水遊び ✓ ✓ ✓灌漑 ✓ ✓ ✓ ✓工業用水(処理工程水、冷却水)

✓ ✓ ✓ ✓

発電用 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ミネラルの抽出 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓輸送 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓

ジェイランバタン貯水池

サムル川からの運河

クラ川

アラ川

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表-8 表流水水質基準の分類と基準値

単位 Class I Class II Class III Class IV Class V

水温 [oC] 自然の水温

冷たい水: 20oC 夏, 5

oC 冬

温かい水: 28oC 夏, 8

oC 冬

冷たい水: 20oC 夏, 5

oC 冬

温かい水: 28oC 夏, 8

oC 冬

冷たい水:

>20 oC 夏, >5

oC 冬 温かい

水: >28 oC 夏,

>8 oC 冬

冷たい水:

>20 oC 夏, >5

oC 冬 暖かい

水: >28 oC 夏,

>8 oC 冬

酸素条件

溶存酸素 [mg O2/l] ≥7 (or BG ) ≥7 ≥5 ≥4 <4

BOD [mg O2/l] 3 (or BG ) 5 6 7 >7

COD [mg O2/l] <7 (or BG) 7 15 20 >20

栄養塩

全窒素 [mg N/l] 1.5 (or BG ) 4 8 20 >20

硝酸態窒素 [mg N/l] 1 (or BG ) 3 5.6 11.3 >11.3

亜硝酸態窒素 [mg N/l] 0.01 (or BG ) 0.06 0.12 0.3 >0.3

アンモニア [mg N/l] 0.2 (or BG ) 0.4 0.8 3.1 >3.1

全リン [mg P/l] 0.1 (or BG ) 0.2 0.4 1 >1

リン酸態リン [mg P/l] 0.05 (or BG ) 0.1 0.2 0.5 >0.5

塩等

塩化物イオン [mg/l] 200 (or BG ) 200 350 500 >500

硫酸イオン [mg/l] <250 (or BG ) 250 350 500 >500

硬度(全ミネラル) [mg/l] <1000 (or BG ) 1000 1300 1500 >1500

酸性指標

pH [-] 6.5-9.0 6.5-9.0 6.5-9.0 6.5-9.0 <6.5 or >9.0

その他の指標

浮遊物 目視 無し 無し 無し 無し 有る

全鉄 [mg/l] <1 (or BG ) 1 3 5 >5

マンガン [mg/l] <0.1 (or BG ) 0.1 1 2 >2

臭気 [point] <2 (又は自然

な臭いl) 2 2 4 >4

色度 [grade] <35 (又は自

然な色) 35 120 200 >200

フェノール [mg/l] 0.001 (or BG ) 0.001 0.005 0.1 >0.1

油分 [mg/l] 0.05 0.1 0.5 1 >1

微量金属

全カドミウム [μg/l] <1 (or BG ) 1 5 5 >5

溶解性カドミウム [μg/l] <0.2 (or BG ) 0.2 1 1 >1

全鉛 [μg/l] <50 (or BG) 50 50 50 >50

溶解性鉛 [μg/l] <2.5 (or BG) 2.5 2.5 2.5 >2.5

全水銀 [μg/l] <1 (or BG ) 1 1 1 >1

溶解性鉛 [μg/l] <0.2 (or BG) 0.2 0.2 0.2 >0.2

全ニッケル [μg/l] 10 (or BG ) 25 50 100 >100

溶解性ニッケル [μg/l] 8 (or BG ) 20 40

全銅 [μg/l] <50 (or BG ) 50 100 1000 >1000

溶解性銅 [μg/l] <20 (or BG ) 20 40 400 >400

全亜鉛 [μg/l] <300 (or BG ) 300 1000 5000 >5000

溶解性亜鉛 [μg/l] <70 (or BG ) 70 233 1163 >1163

注)BG とは、バックグランウンドレベルのこと

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単位 Class I Class II Class III Class IV Class V

微生物

乳酸分解細菌 [№/l] 1,000 10,000 50,000 >50,000 >50,000

大腸菌ファージ [№/l] 不検出 100 100 100 >100

蠕虫卵 [-] 不検出 不検出 不検出 不検出 検出

大腸菌群 [№/100 ml] 500 5,000 10,000 50,000 >50,000

糞便性大腸菌群 [№/100 ml] 100 2,000 10,000 20,000 >20,000

糞便性連鎖球菌(ストレプトコッカス) [№/100 ml] 20 1,000 5,000 10,000 >10,000

腸球菌(エンテロコッカス) [cfu/100 ml] <200 200 400 >400 >400

大腸菌 [cfu/100 ml] <500 500 1,000 >1,000 >1,000

WFD優先微量有機物

アラクロール [μg/l] 0.3 0.5 0.6 0.7 >0.7

アントラセン [μg/l] 0.1 0.25 0.34 0.4 >0.4

アトラジン [μg/l] 0.6 1.3 1.7 2 >2

ベンゼン [μg/l] 10 30 42 50 >50

ペンタジブロモフェニルエーテル [μg/l] 0.0005 0.001 0.0013 0.0015 >0.0015

クロロアルカン(C10-13) [μg/l] 0.4 0.9 1.2 1.4 >1.4

クロルフェンヴィンフォス [μg/l] 0.1 0.2 0.26 0.3 >0.3

クロルピリホス [μg/l] 0.03 0.065 0.086 0.1 >0.1

1,2ジクロロエタン [μg/l] 10 20 26 30 >30

ジクロロメタン [μg/l] 20 40 52 60 >60

フタル酸ジ(2-エチルヘキシル) [μg/l] 1.3 2.6 3.4 3.9 >3.9

ジウロン [μg/l] 0.2 1 1.5 1.8 >1.8

エンドスルファン [μg/l] 0.005 0.0075 0.009 0.01 >0.01

フルオランテン [μg/l] 0.1 0.55 0.82 1 >1

ヘキサクロロベンゼン [μg/l] 0.01 0.03 0.04 0.05 >0.05

ヘクサクロロブタジエン [μg/l] 0.1 0.35 0.5 0.6 >0.6

ヘキサクロロシクロヘキサン [μg/l] 0.02 0.03 0.036 0.04 >0.04

イソプロツロン [μg/l] 0.3 0.65 0.86 1 >1

ナフタレン [μg/l] 2.4 4.8 6.2 7.2 >7.2

ノニルフェニール [μg/l] 0.3 1.1 1.7 2 >2

オクチルフェノール [μg/l] 0.1 0.2 0.26 0.3 0.3

ペンタクロロベンゼン [μg/l] 0.007 0.014 0.018 0.021 0.021

ペンタクロロフェノール [μg/l] 0.4 0.7 0.9 1 1

ベンゾ(a)ピレン [μg/l] 0.05 0.075 0.09 0.1 >0.1

ベンゾ(b)フルオランテン [μg/l] Σ= 0.03 Σ= 0.06 Σ= 0.08 Σ= 0.09 Σ >0.09

ベンゾ(ghi)ピレン [μg/l]

ベンゾ(k)フルオランテン [μg/l]

インデノ(1,2,3-cd)ピレン [μg/l]

シマジン [μg/l] 1 2.5 3.4 4 >4

トオリブチルスズ化合物 [μg/l] 0.0002 0.00085 0.00124 0.0015 >0.0015

トリクロロベンゼン(全イソマー) [μg/l] 0.4 0.8 1.04 1.2 >1.2

トリクロロメタン(クロロホルム) [μg/l] 2.5 5 6.5 7.5 >7.5

トリフルラリン [μg/l] 0.03 0.06 0.078 0.09 >0.09

その他の特定汚染物質

全DDT [μg/l] 0.025 0.05 0.065 0.075 >0.075

p-p DDT [μg/l] 0.01 0.02 0.026 0.03 >0.03

アルドリン [μg/l]

ディルドリン [μg/l]

エンドリン [μg/l]

イソドリン [μg/l]

四塩化炭素 [μg/l] 12 24 31 36 >36

テトラクロロエチレン [μg/l] 10 20 26 30 >30

トリクロロエチレン [μg/l] 10 20 26 30 >30

Σ= 0.010 Σ= 0.020 Σ= 0.026 Σ= 0.030 Σ >0.030

Σ= 0.002 Σ= 0.004 Σ= 0.005 Σ= 0.006 Σ >0.006

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3.5 国内分析機関の現状 アゼルバイジャンにおける水道水の分析は、水道公社(AZERSU)の水質試験所が担っている

が、この他にも水の分析機関として、環境保護および天然資源省(MENR)のカスピ海環境監視

部 Caspian Complex Environmental Monitoring Administration および民間の AZECOLAB があ

る。両機関とも、EU の TACIS プログラムの一つ、カスピ海共同環境監視プロジェクト(Caspian

Map Project)に参加している。このうち、MENR の環境監視部は、情報が少なく試験室の陣容、

設備などは不明であるが、2009 年、2010 年とカスピ海の海岸に沿って、おもに生態学的な環境

調査を大規模に行っている。

一方、民間分析機関の AZECOLAB は、2000 年に CRDF(おもに旧ソ連諸国の技術支援を行う米

国の NPO)、NATO(北大西洋条約機構)、OSCE(欧州安全保障協力機構)、IAEA(国際原子力機関)、

UNDP(国連開発計画)、の支援を受け、先進的な物理・化学分析を行うセンターとして設立され

ている。

AZECOLAB は、淡水、海水、土壌、下水、石油関係などの6部門を有し広範囲な分析を行って

いる(表-10)。また、ISO9001 を 2006 年に、OHSAS18001(労働安全マネジメントシステム)を

2008 年、ISO14001 を 2010 年に認証取得している。ISO17025 に関しては、2010 年 10 月中旬に

認定される予定が記載されているが、現時点で認定されたとする記載はなく申請中の可能性も

ある。ISO17025 の認定に向けた適用範囲の一覧によると、適用範囲は膨大で水分析の全てが含

まれている(土壌分析法も同様に掲載されているがここでは割愛)(表-9)。分析方法は、米国

環境保護庁(EPA)の方法や米国の上下水道の標準方法として知られるスタンダードメソッド法

(SM 法)、米国の ASTM 法(国際標準化・規格設定機関の方法)や、ISO 法が用いられている。

このほか、多環芳香族炭化水素等の分析方法に用いられている MADEP-EPH-98-1 は、マサチュー

セッツ州の環境庁の標準方法である。分析に用いる機器は、我が国とほぼ同じと思われるが、

液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS 法)の記載はない。個々の分析方法を確認してい

ないが、米国のスタンダードメソッド法の最新版は 2005 年版であり、EPA の方法も頻繁に改訂

されないことから、最新の分析方法の一つである LC-MS 法が用いられていない可能性がある。

精度管理も行っており、カスピ海共同監視プロジェクトの外部精度管理試験(アゼルバイジ

ャン2,カザフスタン2,ロシア2,トルクメニスタン2試験機関の計 8 機関)に参加した結

果が公表されている。試験は、土壌に添加された金属および多環芳香族炭化水素等を分析する

もので、AZECOLAB は土壌中の金属 14 項目中 12 項目で合格し、多環芳香族炭化水素においても

最も合格率が高く、参加した試験所の中でも非常に良い成績を収めている(土壌で 8 機関中 2

位)。この外部精度管理試験以後、カスピ海共同調査の分析機関として各国から 1 機関が推薦さ

れ、AZECOLAB はアゼルバイジャンの分析機関として分析に関する改善提案なしで選定されてい

る。同様に改善提案なしで選定されたのはロシアの分析機関(外部精度管理試験で AZECOLAB

と僅差で 8 機関中 1 位)で、カザフスタンおよびトルクメニスタンの分析機関は分析に関する

改善提案がつけ加えられて推薦を受けている。なお、アゼルバイジャンの環境保護および天然

資源省( MENR )のカスピ海環境監視部 Caspian Complex Environmental Monitoring

Administration が 2009 年度以降のカスピ海共同調査に参加している情報が見あたらないのは

精度管理試験以後、カスピ海共同調査の分析機関として選定されていないためと思われる。

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表-9 AZECOLAB が ISO/IEC17025 申請中の適用範囲および方法

Testing Field -TestedMaterials/Products

Name of Test

Testing Method (national,internationalstandards, in-housemethods)

Sampling Water sampling ISO 5667-1Soil Sampling EPA/600/R-92/128Sediment Sampling ISO 5667-19Water Sampling for Microbiological Analysis SM 9060

Water, Temperature (field and lab measurement) EPA 170.1Waste Water pH (field and lab measurement) ASTM D1293B

Conductivity (field and lab measurement) EPA 120.1Dissolved Oxygen (field, lab measurement) ASTM D888Turbidity (field and lab measurement) EPA 180.1Total Chlorine (field and lab measurement) SM 4500-Cl, GColor SM 2120BAlkalinity SM 2320BHardness SM 2340CPO4&Total Phosphorus EPA 365.3Nitrite EPA 354.1Ammonium EPA 350.2Anions-IC (SO4; Cl; NO3; NO2, PO4, F) ASTM D4327TDS EPA 160.1TSS EPA 160.2Sample PreparationHeavy Metals by AAS-FlameAluminum (Al), Antimony (Sb), Barium (Ba), Beryllium (Be), Cadmium(Cd), Calcium (Ca), Chromium(Cr), Cobalt (Co), Copper (Cu), Iron (Fe), Lead (Pb), Lithium (Li), Magnesium (Mg), Manganese (Mn),Molybdenum(Mo), Nickel (Ni), Osmium (Os), Potassium (K), Silver (Ag), Sodium (Na), Strontium (Sr),Thallium (Tl), Tin (Sn), Vanadium (V), Zinc (Zn)

EPA 3015AEPA 7000B

Sample PreparationHeavy Metals by AAS-GFAntimony (Sb), Arsenic (As), Barium (Ba), Beryllium (Be), Cadmium(Cd), Chromium (Cr), Cobalt (Co),Copper (Cu), Iron (Fe), Lead (Pb), Manganese (Mn), Molybdenum (Mo), Nickel (Ni), Selenium (Se),Silver(Ag), Thallium (Tl), Vanadium (V), Zinc (Zn)

EPA 3015AEPA 7010

Sample PreparationHg by CV-AAS

EPA 3015AEPA 245.1

Sample PreparationHeavy Metals by ICP-MSAluminum (Al), Arsenic (As), Antimony (Sb), Arsenic (As), Barium (Ba), Beryllium (Be), Cadmium (Cd),Calcium (Ca), Chromium (Cr), Cobalt(Co), Copper (Cu), Iron (Fe), Lead (Pb), Lithium (Li), Magnesium(Mg), Manganese (Mn), Mercury (Hg), Molybdenum (Mo), Nickel (Ni), Osmium(Os), Potassium (K),SelenThorium (Th), Uranium (U)ium (Se), Silver (Ag), Sodium (Na), Strontium(Sr), Selenium (Se),Thallium (Tl), Tin (Sn), Vanadium (V), Zinc (Zn), Thorium (Th), Uranium (U)

EPA 3015AEPA 6020AEPA 200.8

Sample PreparationTOG&TPH by IR

EPA 3510CASTM D7066

Sample PreparationTOG&TPH Gravimetric

EPA 3510CEPA 1664A

TPH by GC/FIDC9-C18 Aliphatics, C19-C36 Aliphatics, C11-C22 Aromatics, Total All Fractions(TPH) MADEP-EPH-98-1

PAHs by HPLCAcenaphthene, Acenaphthylene, Anthracene, Benzo(a)anthracene, Benzo(a)pyrene, Benzo(b)fluoranthene,Benzo(ghi)perylene, Benzo(k)fluoranthene, Chrysene, Dibenzo(a,h)anthracene, Fluoranthene, Fluorene,Indeno(1,2,3-cd)pyrene, Naphthalene, Phenanthrene , Pyrene

MADEP-EPH-98-1;EPA 610

VOC by GC/MS-HeadSpaceBenzene, Bromochloromethane, Bromodichloromethane, Bromoform, Bromomethane, Carbontetrachloride, Chlorobenzene, Chloroethane, Chloroform, Chloromethane, Dibromochloromethane, 1,2-Dibromo-3-chloropropane, 1,2-Dibromoethane, Dibromomethane, 1,2-Dichlorobenzene, 1,3-Dichlorobenzene, 1,4-Dichlorobenzene,Dichlorodifluoromethane, 1,1-Dichloroethane, 1,2-Dichloroethane,1,1-Dichloroethene, trans-1,2-Dichloroethene, 1,2-Dichloropropane, Ethylbenzene, Hexachlorobutadiene,Methylene chloride, Naphthalene, Styrene, 1,1,1,2-Tetrachloroethane, 1,1,2,2-Tetrachloroethane,Tetrachloroethene, Toluene, 1,2,4-Trichlorobenzene, 1,1,1-Trichloroethane, 1,1,2-Trichloroethane,Trichloroethene, Trichlorofluoromethane, 1,2,3-Trichloropropane, Vinyl chloride, o-Xylene, m-Xylene, p-Xylene

4300 In House Method

Sample PreparationChlorinated Pesticides and PCBs by GC/ECDAldrin, -BHC, -BHC, -BHC, -BHC, Chlordane, 4,4'-DDD, 4,4'-DDE, 4,4'-DDT, Dieldrin, Endosulfan I,Endosulfan II, Endosulfan sulfate, Endrin, Endrin aldehyde, Heptachlor, Heptachlor epoxide , ToxaphenePCB-1016, PCB-1221, PCB-1232, PCB-1242, PCB-1248, PCB-1254, PCB-1260

EPA3510CEPA 608

Escherichia coli QOST18963-73Total Coliform SM 9222BPlate Count SM 9215B

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表-10 AZECOLAB の部門と分析項目

分析部門 分析項目

一般理化common physical-chemical tests

pH、色度、電気伝導率、臭気、硬度、アルカリ度、イオンクロマトグラフィー法

原子吸光Atomic Absorption tests

Na, K, Ca, Mg, Si, Al, Fe, Ag, As, Ba, Be, Cd, Co, Cr, Cr6, Cu,Hg, Li, Mn, Mo, Ni, Pb, Se, Sb, Sn, Sr, Ti, Tl, V, Zn

特殊項目particulate study tests

流出地点分析、粘土、γ線、α線、ラドン分析、COD、BOD

有機物とクロマトグラフィーOrganics and Chromatography tests

TOG&TPH(全油及び全グリースと全石油系炭化水素)、VOC、多環芳香族炭化水素、GC?FID法、GC/ECD法、HPLC/FL法、HPLC/DAD法、GC/MS法微生物

Microbiological tests大腸菌、大腸菌群、一般細菌、レジオネラ

海洋生物と生態毒性Marine Biology and Eco-toxicological tests

海洋動物、プランクトンの分類、カスピ海の動植物プランクトンの生態毒性、魚類の分類、堆積物の修復処置

3.6 水質基準 水質基準に関する情報は幾つかあるが、有効な基準ははっきりしない。アゼルバイジャン国

のホームページ上では、英語で確認できる水質基準は見つからないが、アジア開発銀行のアゼ

ルバイジャンへの資金供与計画のプログラムのひとつ「Water Supply and Sanitation

Investment Program(水道および衛生改善計画)」の 2011 年 10 月の報告書に水質基準一覧表が

掲載されている。この表の出典は、健康省の水質基準 GOST 2874-82 とされており、ソビエト連

邦時代の水質基準である GOST 2874-82 がそのまま用いられている可能性が高い。GOST 2874-82

はソ連邦時代の 1985 年 1 月 1 日に発効され、ロシアでは、その後 1995 年 1 月 1 日に改訂され

ている。今回視察したジェイランバタン浄水場の水質試験室で使用されている GOST の規格書は

1990年発効版である。アゼルバイジャンが1991年に独立したことや、ロシアの1995年版のGOST

2874-82 にはあるアクリルアミドの項目がないことなどから、アゼルバイジャンでは、1990 年

版の GOST 基準が現在でも用いられていると考えられる。一方、水道公社 AZERSU のホームペー

ジには、DÜST 2874-82 の規格とともにその水質検査結果が掲載されている(表-11)。また、水質管理に関する説明では、CIS 諸国と同様に DÜST 基準で適正に水質検査を行っているが、将来的には WHO のガイドラインおよび EU 指令を参考に 75 項目以上を検査するとしている。

DÜST 2874-82 が GOST 2874-82 と同様の基準であるか判別できないが、項目および基準値が異なっており不可解な点が多い。なお、比較のため、表-12 に、アゼルバイジャンの基準値、

WHO 水質ガイドライン値および日本の水質基準をまとめた。

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表-11 AZERSU ホームページ上の水質基準値一覧

項 目 単位WHOガイド

ラインEU指令 DÜST

飲料水測定値

1 臭気 (20℃、60℃) 度 - - 2 0

2 味 度 - - 2 0

3 色度(塩化白金酸コバルト標準) 度 15 201) 20 0

色度(ニクロム酸コバルト標準?) 度 15 201) 20(35) 0

4 濁度 度 5(1) 42) 2.6 0

5 硬度(粗さ) mg-eqv/L - 1.23) 7.0 5

6 電気伝導率 μS/cm - 2500 - 450

7 炭酸水素イオン mg/L - >303) - 130

8 pH - 6.5-8.54) 6-9 7.5

9 アルミニウム mg/L 0.2 0.2 0.5 0.1

10 アンモニアおよびアンモニウムイオン mg/L 1.5 -5) 0.5 0-0.17

11 ヒ素 mg/L 0.01 0.01 0.05 0

12 鉄 mg/L 0.3 0.2 0.3 0-0.03

13 銀 mg/L - 0.013)

0.053) 0

14 硫化水素 mg/L 0.05 0.0036) 0

15 硫化水素イオン mg/L - - 33) 0

16 塩化物イオン mg/L 250.0 250.0 350.0 29-154

17 遊離塩素 mg/L - - 0.3-0.5 0.3

18 結合塩素 mg/L - - 0.8-1.2 0.5

19 塩素酸イオン mg/L 203) 10.0

20 カリウム mg/L 103) - 10

21 カルシウム mg/L 1003)

3507) 60

22 マンガン mg/L 0.1 0.05 0.1(0.5)8) 0.005-0.02

23 銅 mg/L 1.0 2.0 1.0 0-0.03

24 モリブデン mg/L 0.07 - 0.25 0.01

25 マグネシウム mg/L - 503)

509) 18.24

26 ナトリウム mg/L 200 200 20010) 45-97

27 ニッケル mg/L 0.02 0.02 0.1 0.01

28 硝酸イオン mg/L 50 11)45

12) 3

29 亜硝酸イオン mg/L 3 0.5 313) 0

30 ポリリン酸イオン mg/L - - 3.5 1.1

31 ストロンチウム mg/L - - 7.0 3

32 亜鉛 mg/L 5.0 5.03) 5.0 0.01-0.9

33 硫酸イオン mg/L 250 250 50014) 85-210

34 シアン mg/L 0.07 0.05 0.0353) 0.003

1)EU指令では、消費者に受け入れられ、異常な変化がないこと

2)EU指令では、消費者に受け入れられ、異常な変化がないこと、表流水処理の浄水では1NTU以下にする。

3)基準(EU指令、または、GOST)に項目がない

4)EU指令では、6.5-9.5

5)EU指令では、0.50mg/Lが与えられている

6)GOST基準では、0.0mg/Lが与えられている。

7)GOST基準では、180mg/Lが与えられている。

8)GOST基準では、鉄およびマンガンの総量として、0.5-1.0mg/Lが与えられている。

9)GOST基準では、40mg/Lが与えられている。

10)GOST基準では、170mg/Lが与えられている。

11)EU指令では、50mg/Lが与えられている。

12)GOST基準では、硝酸として10mg/Lが与えられている。

13)GOST基準では、微量(traces)が与えられている。

14)硫酸イオン100mg/Lが与えられている。 (アゼルバイジャン語版ホームページをそのまま翻訳)

注) 注意書き部分は、根拠となる基準と異なる内容

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表-12 アゼルバイジャンの水質基準(GOST2874-82)と WHO ガイドライン値と日本の基準値

項目  GOST 2874-82 WHOガイドライン値 日本の基準値

20℃での臭気 2TON以下 受けいられること(性状) 異常でないこと

色度 20度以下 15度以下 5 度 以下

濁度 1.5NTU以下 平均1NTU、単一サンプル5NTU 2 度 以下

pH 値 6.0 以上9.0 以下 設定なし 5.8 以上 8.6 以下

HCO3- 3以上

Ca2+ 180 mg/L以下

Mg2+ 40 mg/L以下

ナトリウム及びその化合物 170 mg/L以下 性状として記載 200 mg/L以下

ポリリン酸(Polyphosphhate residual) 3.5mg/L以下

Hardness (硬度) 7.0mg-eqv以下

ミネラル(Mineralization) <1000(1500) mg/L以下

蒸発残留物 1000 mg/L以下 1000 mg/L以下 500 mg/L 以下

5酸化2窒素(N2O5) 29.0 mg/L以下

亜硝酸態窒素 微量

硝酸態窒素 10 mg/L以下

アンモニア(NH4) 微量

Cl- (chlorine) 25-50 mg/L

Cl2 (chloride) 塩化物イオン 350 mg/L以下 塩化物イオン 250(性状・味)mg/L以下 塩化物イオン 200 mg/L 以下

硫酸イオン(SO42-) 100 mg/L以下

2価、3価鉄イオン(Fe2+and Fe3+) 0.3 mg/L以下 鉄及びその化合物 0.3(性状)mg/L以下 鉄及びその化合物 0.3 mg/L 以下

鉄イオンおよびマンガン

(total content of Fe+ and Mn)0.5-1.0 mg/L以下

酸化物量 O2

       KMnO4

酸素消費量として2.5-3.0 mg/L以下KMnO4消費量として10 mg/L以下

有機物(全有機炭素(TOC)量)3 mg/L以下

鉛及びその化合物 0.03 mg/L以下 0.01 mg/L以下 0.01 mg/L 以下

ヒ素及びその化合物 0.05 mg/L以下 0.01(暫定) mg/L以下 0.01 mg/L以下

銅及びその化合物 1.0 mg/l 以下 2 mg/L以下 1.0 mg/L 以下

フッ素及びその化合物 1.5 mg/L以下 1.5 mg/L以下 0.8 mg/L 以下

アルミニウム及びその化合物 0.5 mg/L以下 0.2(外観) mg/L以下 0.2 mg/L 以下

ベリリウム 0.0002 mg/L以下

モリブデン 0.25 mg/L以下 0.07mg/L以下

セレン及びその化合物 0.001mg/L 以下 0.01 mg/L以下 0.01 mg/L以下

ストロンチウム 7.0 mg/L以下

亜鉛及びその化合物 5 mg/L以下 3.0(外観) mg/L以下 1.0 mg/L 以下

硫化水素(H2S) 0.0 mg/L以下

水銀及びその化合物 0.001 mg/L以下 水銀及びその化合物 0.0005 mg/L以下

六価クロム化合物0.05(暫定) mg/L以下 六価クロム化合物 0.05 mg/l 以下

一般細菌 100CFU/mL以下 解説のみ1mLの検水で形成される集落数が

100以下であること。

大腸菌群 3MPN/1000mL以下大腸菌または糞便性大腸菌群100mL中

に検出されないこと大腸菌100mL中検出されないこと

Hg, Ba, Hexavalent Cr and otherpoison contaminations

カルシウム、マグネシウム等 (硬度)500 mg/L以下

カルシウム、マグネシウム等 (硬度)300 mg/L 以下

NO2は3、NO3は50(短期暴露)

NO2は0.2(暫定)(長期暴露)mg/L以下硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素

10 mg/L 以下

注) 項目欄で網掛けは、アゼルバイジャンの基準項目で日本で設定されていない項目

日本の基準項目でアゼルバイジャンで設定されていない項目は、表-3 の青ライン部分の 25 項目(揮発性

有機物質、消毒副生成物、界面活性剤、臭い物質など)を参照

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4.調査結果のまとめ 4.1 水源(水質)の管理状況と改善の方向性 今回、視察したジェイランバタン貯水池では、貯水池流入水および浄水場取水口における原

水水質試験が行われておらず、水源水質管理は行われていない状況に等しい。これから水源水

質監視を始める場合には、貯水池流入部などの重要地点や汚濁源付近での継続的な監視が必要

である。

アゼルバイジャンでは、ジェイランバタン貯水池のように、長大な運河によって人工的に貯

留された水源が多く、運河や河川の治水管理が行き届いていない。このため、運河や河川合流

部で洪水が度々発生している。非常事態省水資源局長が懸念しているように汚染された堆積物

による水質悪化が問題となる可能性が高い。運河や貯水池の底泥からの溶出や捲きあげなどの

汚染に対応した継続的な監視が必要である。汚染源の把握には、水安全計画を用いた手法が有

効である。水安全計画とは、WHO が提案する水源から消費者までの一貫した水道水の安全確保

の手法である。水源流域に適用すると、人に危害を与える水質項目と関係のある活動が行われ

ていたり、過去に行われていたりした地域の抽出作業と評価を行い、監視地点の選定に役立て

ることが出来る。例えば、あらかじめ鉱工業によって汚染された地域、農薬の使用量が多い地

域、農薬生産工場、農薬保管庫が存在していた地域、かつて軍事施設があった地域、下水処理

がなされていない地域などを抽出することにより、重点的で効率的な水質監視計画の立案が可

能となる。また、アゼルバイジャンは、水資源の約 70%を国外から流入する国際河川に頼って

いるため、危害抽出作業は国内と同様に国外の流域においても必要と考えられる。すでに隣接

する国々とは、幾つかの水資源管理のプログラムが行われており、これらの国際的な取り組み

を活用した情報入手が不可欠となる。

定期的な水質検査による水質監視方法のほかにも、連続自動分析装置の活用も有効と思われ

る。神戸市では、バイパス放流できる貯水池では、流入河川の濁度上昇時に貯水池への導水を

停止することにより貯水池の水源水質保護を図っている。また、COD(化学的酸素要求量)や全

リンを測定出来ることから、貯水池への汚濁物質の負荷量算定に役立てている。アゼルバイジ

ャンにおいても、同様な活用が期待できるほか、貯水池や運河の浚渫工事に伴う濁水の発生を

連続的に監視し、水道水源への影響を低減することが可能であると考えられる。

4.2 新水質基準の設定と管理方法 今回の視察で、将来的に新しい水道水質基準を設定しその項目に応じた検査を行うことは確

認出来たが、面会した担当者ごとに認識が異なっており、明確な新制度についての情報は得ら

れなかった。すなわち、AZERSU のホームページでのアナウンス通り、WHO 水質ガイドラインや

EU指令をもとにした水質項目および基準値を策定するのか、あるいはCIS諸国の制度を踏襲し、

最新の GOST 基準を拡充するのかなど、判然としない点が多い。

試験所の精度管理の仕組みとしては、水質試験所職員は、ISO/IEC 17025:2005 規格が導入さ

れることを認識して、「ISO 規格が導入される」としていたが、その CIS 諸国版 GOST ISO/IEC

17025-2009 規格書が用意されていることを考慮すると、GOST 規格とも考えられる。GOST 規格

は、今なお CIS 諸国において広く採用されているロシアを中心とした標準規格であることから、

精度管理と同様に水道水質基準および試験方法に GOST 規格が採用される可能性もある。その場

合、我が国における告示法と同様に基準項目ごとに GOST の試験方法が用いられることになる。

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GOST 規格の試験方法については、ロシアのホームページ上で部分的に公開されているが、英語

でアクセス出来る情報が少なくその全容を理解するのは容易ではない。

一方、水道公社 AZERSU が新規に設立予定の中央水質試験所は、アゼルバイジャン国内の水資

源管理を行う非常事態省から資金援助を受けることから、国内における多様な水資源全般の水

質分析も行われる予定である。この場合、ロシアを中心とした GOST 規格の項目や方法ではなく、

EU 指令に基づく方法を用いることになると考えられる。「3.4 国際河川の水資源管理に向けた

取り組み」に記載した通り、EU を中心とした水資源の水質管理方法が取り入れられ、表流水水

質基準の項目もすでに決定されているからである。

以上のことをまとめると、①試験所認定は GOST ISO/IEC 17025-2009 の規格書で行われる可

能性がある、②水道水質基準は EU 指令に準拠したものか、GOST 基準かどうか不明であるが項

目の変更および拡充が行われる、③水源水質測定では、EU 指令に準拠した表流水水質基準が採

用されて項目数は大幅に増加し微量分析が必要となる、の 3 点が明らかとなった。

4.3 試験所認定の方向性 今回の視察において、アゼルバイジャンの試験所認定では、ISO/IEC 17025:2005 あるいは、

同規格の CIS 諸国版 GOST ISO/IEC 17025-2009(注)の認定を取得する予定が明らかとなった。

ISO/IEC 17025 の認定取得には認定機関の選定が必要である。CIS 諸国版 GOST 規格で認定を得

る場合は、ロシアの認定機関になる。しかしながら、ロシアの認定機関で認定を受けるには慎

重に検討すべき点がある。例えば、①ロシアは国際的な試験所認定協力である ILAC

(International Laboratory Accreditation Cooperation) に加盟しておらず相互認証を得ら

れないため、国際的に ISO/IEC 17025 が認定されている試験所と表明できない、②ISO/IEC 17025

の認定取得に不可欠な国際標準へのトレーサブル可能な認証標準物質が容易に入手できるかど

うか不明である、③国際河川の共同水質調査において水質分析の精度管理が問題となっており、

将来的にはグルジアなど欧州と関係の深い隣国と精度管理を実施していくことが予想される等

の点である。これらのことを考慮すると、可能であれば国際的に通用する ILAC 加盟の認定機関

から ISO/IEC 17025 の認定を取得することが望ましい。その際には、これまで河川水質調査を

共同で行ってきた経緯から、欧州の EA (European co-operation for Accreditation) に加盟

する国の認定機関を選定すべきと思われる。

EA に加盟する認定機関から、ISO/IEC 17025 の認定を受けると仮定すると、分析方法は欧州

あるいは世界的に用いられている方法を採用することとなる。水源水質測定では、すでに EU

指令に準拠した表流水水質基準が採用される予定であることから問題はないが、水道水質基準

が GOST 基準で GOST 規格の試験方法となった場合には、同じ項目を異なった方法で測定しなけ

ればならない事態となりかねない。水道水質基準とその試験方法に関しては、GOST 基準をどの

ように扱っていくかを慎重に検討していくべきと思われる。

注:我が国においても、ISO/IEC 17025:2005 規格は、翻訳されて JIS Q 17025:2005 の規格となっているが、

原規格との違いはほとんどなく JIS Q 17025:2005 の規格に従って、試験所認定を受けるとそのまま、

ISO/IEC 17025:2005 認定を取得できる。

4.4 精度管理の技術的課題 現在、アゼルバイジャンで用いられている分析方法は、分光光度法が主体であり、微量分析

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の経験がない。このため、高度な機器分析を用いた微量分析を行うには多くの課題がある。機

器分析の操作方法は、機器の納入時に研修を行うとしても、運用面でのノウハウがないため得

られたデータの信頼性の判断に課題がある。例えば、異常値が出た場合に、試料採取の問題に

よるものか、不適切な前処理に起因するのか、分析を行う部屋で汚染(コンタミネーション)

を受けたのか、採取容器などに問題があったのか、分析者の技量の問題なのかなど、多くの要

因が考えられ、異常値の原因を突き止めるのは容易ではない。このため、出来る限りハードウ

ェアに起因する異常発生原因を取り除いた状態で、試験室を立ち上げることが必須である。そ

れには、神戸市が日常的に使用している機材をそのまま持ち込むことも解決法の一つと思われ

る。また、神戸市では職員が、試験器具の洗浄および試料の採水を行っているが、アゼルバイ

ジャンでは作業が分業化されている。このため、全職員に精度管理の仕組みを周知し、全ての

操作が分析精度に影響することの教育が重要となる。このほか、認証標準物質の入手方法や試

薬の管理、標準作業書の整備、適切な採水量の算定、採水現場での前処理作業の必要性の確認、

資機材の入手、データの解析、データ整理、水質事故時の体制などすべての部分において運用

ノウハウが必要と思われる。

4.5 水道公社 AZERSUの中央水質試験所の方向性 現在、市内に非常事態省の水資源管理局の支援を受け、AZERSU が中央水質試験所を建設中で

ある。すでに、建物の大部分が完成し、内装および試験機器の設置を待つ状態である。本水質

試験所では、完全に区切られた下水分析室も同建物内に設立される予定である。建物の延べ床

面積 3,500 ㎡、上水水質試験所部分で 1,800 ㎡から推測すると、下水分析室は 1,700 ㎡程度と

考えられる。出入り口も別で建物内でも区切られる予定であるが、下水と上水の分析値では桁

が大きく異なるため、下水試料や下水試験室からの試料の汚染を防ぐ工夫を考えなければなら

ない。このためには、試験室の配置、試料の保管方法、排気設備の設計、空調設備の設計など

を考慮する必要がある。

また、今回の視察では滞在中に時間の短いものではあったが度々停電が発生した。停電によ

り分析が途中で停止したり、分析プログラムが初期化されたりするなどの不具合が発生する可

能性が高く、無停電電源装置(UPS)などを設置することが望ましい。このほか、分析に必要な

高純度特殊ガスの配管を予め用意することにより、効率的で無駄のない試験室の配置を考える

ことが可能である。これら以外にも、水質試験室の設計および運用には、細かなノウハウが多

く、分析装置を納入する前から十分な検討を進めておくことが必要である。

5.事業形成の可能性について

5.1 基本的考え方 今回、視察全般を通じて、アゼルバイジャンでは旧ロシア時代の管理、運営、設備がそのま

ま使用されており、また、管理運営者の育成も課題であることが判明した。アゼルバイジャン

は、既に世界各国からのコンサルタントや水質検査等の情報を収集しているが、今回の案件発

掘調査で採った日本からのアプローチは他国には無い官民連携型でのソリューション提供とい

うアプローチであり、これを受けてアゼルバイジャンは、今後の継続的な関係維持を期待して

いる。従って、本調査の企画段階にて想定した事業形成スキーム、つまり、官である神戸市が

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保有する、水質管理、検査、運営における長年の実績、信頼性、ノウハウと、民である神栄グ

ループが保有する情報収集力、機動性、実務遂行力が、他国民間企業からの提案との差別化と、

今後の神栄グループの事業提案における競争力の源泉になり得、案件形成は可能であると考え

られる。本スキームをベースとして各課題の作業を落とし込み、事業化案形成の基本とする。

5.2 想定される事業内容 4.でまとめとした 5 項目についてそれぞれの課題から、そのソリューション提案として以下

の 2 点について事業の形成が考えられる。

①水質管理場運営に関するコンサルタント業務の請負と導入後の保守業務

②設備機器類の販売及びアフターメンテナンス契約

これらのソリューション提案における他国との差別化の中核は、①神戸市との連携を通じた

WHO 水安全計画を基礎とした水質管理運営者の育成補助と ISO 認証取得への手法アドバイス能

力、アゼルバイジャンの水質管理を向上させていく過程における神戸市水質試験場との連携

②アゼルバイジャンが目指す水質管理での最適な検査設備、機器の選定と、導入後の運営面を

考慮した中でのトータルコーディネート力、とする。実施体制面では、神栄㈱と神戸市の国際

貢献に資する「水・インフラ事業の海外展開等に関する相互協定書」の枠組みを神栄グループ

として活用し、試験機や設備の等の民間企業群と連携しコーディネートすることで、構築が可

能であると考える。

「事業モデル概念」

委託契約

コンサルティング

試験機メーカー等

民間企業群

神 戸 市

アゼルバイジャン

非常事態省

技術情報の

共有・支援 課題の優先順位の

整理

ソリューション提案

発 注

コンサルティング委託

資材・技術の発注

外郭団体

(整備公社など)

ノウハウ

支援

①コンサルティング

②資材の輸出

アフターメンテナンス ・商品提供

・アフターメンテ

提供

<神戸側チーム>

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5.3 事業形成へ向けての今後の作業方向性 以下のステップにて今後作業をし、事業モデルの具体化への作業を進めていく。

ステップ 1

<具体的事業化案の策定>

① アゼルバイジャン側各課題の優先順位の仮定 ② 課題毎に神戸市を始めとした事業化ワーキングチームの組成 ③ ワーキングチームにおける想定事業案の情報の共有と分析 ④ ワーキングチーム内での機能分担など神戸市との合意形成 ⑤ 将来導入されるべき設備、機器類を想定した民間企業群との連携体制の形成

ステップ 2

<F/Sの実施>

① ステップ1で構築した課題解決の具体的提案のプレゼンテーションをアゼルバイジャンへ申し入れ、実施

② プレゼンテーションをベースとして、アゼルバイジャンの神栄グループとの取り組みへの合意形成

③ 合意に基づく事業化案の財務面での実現可能性調査 ※ 本段階におけるF/Sでは調査費など助成金の獲得も視野に入れて進める。

ステップ 3

<事業化推進>

① アゼルバイジャン側の実施体制、予算化や実施スケジュールを明らかにし、個別に具体

的な契約を獲得

以上