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2050年 老人大国
一橋大学経済学研究科及び 国際・公共政策大学院
渡辺智之
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数十年のタームで考える • 経済社会の長期的趨勢として、「高齢化・国際化・情報化」が指摘
されて久しい。 • このうち、「高齢化」は、長期的かつ具体的な予測がかなりの精度
で可能である。今後数十年の間に起こる「人口減少・超高齢化」を前提に、今後の医療・介護のあり方を考える必要がある。
• 今後2050年までに、我が国の人口は減少する。高齢者比率としては、70歳以上が3人に1人。75歳以上が4人に1人となることが見込まれる。
• 前期高齢者は約1400万人で現状とほぼ変わらないと予測されているが、後期高齢者が約2400万人になる事が見込まれている。後期高齢者を対象とした医療費・介護費が莫大にふくれあがる。
• このような中で、ICTをどのように活用するのか。蓄積されたデータを活用し、国民の健康増進、医療費抑制に資する具体的な取り組みを進めることが重要ではないか。
• 生活保護費の増大も懸念される。万遍なく給付しようとすれば今後莫大な費用となる。また、生活保護者が高齢化するに伴い、医療介護費用の増大も加速する。
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3,389 3,249 2,287
6,250 7,590
7,497
512
892 1,517 221
597 1,407
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
1947 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
75歳以上
65~74歳
20~64歳
0~19歳
図1:日本の人口構造の変化(1)
高齢者数の増加
(出所)厚生労働省「人口動態統計」 3
2,287 1,698 1,297 1,105
7,497
6,278
4,643 4,105
1,517
1,407
1,383
1,128
1,407
2,278
2,385
2,336
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060
75歳以上
65~74歳
20~64歳
0~19歳
図2:日本の人口構造の変化(2) 高齢者の高齢化
若年者の減少
(出所)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成24年1月推計)、厚生労働省「人口動態統計」 4
図3:人口ピラミッドの長期的変化
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1950年 1980年
2010年
2025年 2050年
(出典)国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口』(2012)
図4:1人当たりの平均医療費(2010年度)
(出所)厚生労働省「国民医療費」 6
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
1100千円
72.6 72.7
89.1
107.7
113.2
0
20
40
60
80
100
120
岩手 新潟 全国平均 高知 福岡
(出所)厚生労働省「医療費の地域差」(平成22年度) (注)老人医療費は、後期高齢者医療制度の医療費を指す。
図5: 老人医療費の状況 < 1人当たり医療費の若人との比較> < 都道府県別1人当たり老人医療費>
(出所)「後期高齢者医療事業年報(平成22年度)」等より (注)老人は、後期高齢者医療制度の加入者。若人は後期高齢者(75歳以上)以外
の医療保険の加入者。
(万円)
※諸外国の一人当たり医療費の老若比率 ・ドイツ 3.7倍(2006) ・アメリカ 3.7倍(2004) ・フランス 3.3倍(2006) (注)上記3か国における老人は65歳以上の者
19.7万円
90.5万円 (4.6倍)
若人 老人
1.6倍
7 7
図6:health spending伸び率 国際比較
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高齢化に伴う社会保障費の膨張
• 年金・医療・介護の全分野にわたって、今後、必要となる経費が膨張していくと見込まれる。(さらに、将来的には貧困な高齢者の増加により、生活保護費の膨張も懸念される。)
• 年金は、基本的に所得移転であるから問題が比較的単純だが、医療・介護に関しては、サービスの内容も問題になるので、より複雑。
• 1990年から2010年の間に、GDPは約500兆円でほぼ横ばいであるのに対し、社会保障給付費は、50兆円から100兆円以上に2倍増。
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持続可能性確保のための効率化 • 年金支出の抑制(デフレ下での物価スライド、マクロスライド
の実施、支給年齢引き上げとその加速化)。 • 医療・介護の効率化は不可欠(現状のままで持続できると考
えている関係者はいないのではないか)。そのためのICTの活用として、例えば、
①個々の患者・利用者の情報を関係者が共有する(事務量の削減や利用者の状態把握・確認に要する行為削減等の効果)仕組みを通じたサービスの効率化
②統計データの分析による現状把握・問題点の摘出 • 患者・利用者のコスト意識による選択の合理化のために
は、価格情報の活用(自己負担率の適切な設定)。 • 番号制度の活用による、高齢者医療費の死後精算の検
討。
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(付)税・社会保障番号の活用
• 医療情報についても、独自に医療IDを検討するのは重複投資となりかねない。マイナンバーの活用を考えるべきではないか。(個人情報保護の仕組みはマイナンバーにもある。)
• ①マイ・ポータルを通じた個人情報の自己コントロール
• ②医療情報のデータ分析の促進 • ③医療費の自己負担金額の集計が容易になれば、医療費控除申告の利便性が向上
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平 25. 11. 28
マ D 2 - 3
税制調査会(マイナンバー・税務執行DG②)
〔厚生労働省説明資料〕
平成25年11月28日(木) 厚生労働省
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結論:There is no free lunch. • 医療・介護により多くの資源を用いると、それに応じた社会的費用
が生じる。 • 医療・介護サービス提供者に対する対価は、自己負担・保険料・
税のどの方式であろうと国民全体としては同じ負担が生じる。 • ・社会保障コストの現状と将来の動向を現実的に考えれば、現状
の低負担・中福祉を中負担・中福祉としてもそのレベルで中長期的に維持することは難しく、中負担・低福祉あるいは超高負担・中福祉のいずれかを選択せざるをえないのではないか。
• 将来的なビジョンに関しては、「こうすべきだ」ではなく「何が実現可能か」という観点から検討せざるを得ないのではないか
• これらの状況を踏まえ、医療・介護の効率化に向けて、ICTの活用によるサービス供給体制の効率化を具体的なマイルストーンを定めて推進する(必要であれば法改正も実施すべし)とともに、需要側に価格情報が正確に伝わる仕組みが重要。
• 医療・健康情報のデータ分析成果をどのように政策に活かしていくのか。
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