2021 年度 名古屋大学大学院理学研究科 大学院入学...
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2020年5月30日
研究室別説明物質理学専攻(物理系)
細胞情報生物物理研究室(K研)
2021年度名古屋大学 大学院理学研究科
大学院入学試験
シナプス伝達とカルシウムイオン (鈴木直哉)
蛋白質の構造形成・機能の研究(槇亙介)研究テーマ
シアノバクテリアの概日リズム
Kai A
Kai B
Kai C
生物時計
・DNAから生物機能に到る遺伝暗号発現の最終段階・生命現象に見られる自己組織化の最も基本的なもの
蛋白質のフォールディングは、生命現象を理解する上で本質的
特異的な構造を持たないポリペプチド鎖が天然の立体構造を形成する過程
蛋白質のフォールディング
・・・では、フォールディングと物理学との関係は?
Asp-Lys+
Lys+ Lys+
AspLys+
Lys+ Lys+
pH:蛋白質のプロトン化・脱プロトン化を通じてフォールディング・アンフォールディングを引き起こす
- 「原理的には」単純: 蛋白質分子への電荷の付加・解離→電気
水素結合
天然状態
中性pH
H+
低pH
水素結合
Lys+
Asp
Lys+
Lys+
ほどけた状態
熱力学に基づいた二種類のモデルが存在する
例:pH(プロトン)によるフォールディングの統計力学モデルによる解析
プロトン化(電荷なし)
天然状態(不安定)
H+
H+
H+
H+
ほどける
pHによるフォールディングについての従来の二つのモデル
天然 (MWCモデル)と非天然 (LLモデル)状態が関わるpHフォールディング:どちらのモデルも単独では表すことができない
1. 統計力学に基づく、2. 従来のモデルを含むモデルが必要
熱力学由来のモデル: 分布やゆらぎを表現できない
Monod-Wyman-Changeux(MWC) モデル
Lindstrøm-Lang (LL)(電荷分布モデル)
𝛥𝛥𝛥𝛥 = −𝑅𝑅𝑅𝑅 log1 + 10pK𝑎𝑎N−pH
1 + 10pK𝑎𝑎U−pH
𝛥𝛥𝛥𝛥 = 𝛥𝛥𝛥𝛥 0 − 𝑤𝑤(𝑟𝑟ap,𝑘𝑘)𝑅𝑅𝑅𝑅𝑍𝑍2
プロトン化:特異的なリガンド結合
非天然状態
天然状態
非天然状態
天然状態
p𝐾𝐾𝑎𝑎N
p𝐾𝐾𝑎𝑎U+ H+
+ H+
H+
H+
分子表面に電荷が分布している
特異的な立体構造
動的でゆらぐ
+Zerap,U
Zerap,N
H+
H+
𝐻𝐻𝑘𝑘proton = ∑𝜌𝜌=1
𝑁𝑁0H𝑝𝑝𝑘𝑘,𝜌𝜌
(H)𝑢𝑢𝑘𝑘,𝜌𝜌
k-状態における(脱)プロトン化のハミルトニアン:
𝜌𝜌 1, … ,𝑁𝑁0H : プロトン化サイト
𝑝𝑝𝑘𝑘,𝜌𝜌H = 0 or 1, プロトン化状態
𝑢𝑢𝑘𝑘,𝜌𝜌: プロトン結合エネルギー
分配関数
Ξ𝑘𝑘 𝑅𝑅, pH = ∑ 𝑋𝑋𝑘𝑘 exp −𝛽𝛽 𝐻𝐻𝑘𝑘proton − ∑𝜌𝜌=1𝑁𝑁 H 𝑝𝑝𝑘𝑘,𝜌𝜌
H 𝜇𝜇H
= ∑ 𝑋𝑋𝑘𝑘 exp −∑𝜌𝜌=1𝑁𝑁 H 𝑝𝑝𝑘𝑘,𝜌𝜌H 2.30 pH − p𝐾𝐾𝑎𝑎,𝑘𝑘,𝜌𝜌 + 𝑒𝑒2
4𝜋𝜋𝑘𝑘𝐵𝐵𝑇𝑇𝜖𝜖aq
𝐷𝐷 𝑍𝑍min+∑𝜎𝜎>𝜌𝜌 𝑝𝑝𝑘𝑘,𝜎𝜎H
𝑟𝑟ap,𝑘𝑘 𝑟𝑟ap,𝑘𝑘+𝐷𝐷
特異的な結合 クーロン相互作用
MWC および LL モデルを含む
Mizukami, Sakuma, and Maki, JPCB 2016
𝑤𝑤 𝑟𝑟ap,𝑘𝑘 : クーロンポテンシャル
𝑟𝑟ap,𝑘𝑘: 平均分子半径
+ 2𝑘𝑘𝐵𝐵𝑅𝑅∑𝜌𝜌=1𝑁𝑁0
H𝑝𝑝𝑘𝑘,𝜌𝜌H 𝑍𝑍min + ∑𝜎𝜎>𝜌𝜌 𝑝𝑝𝑘𝑘,𝜎𝜎
H 𝑤𝑤(𝑟𝑟ap,𝑘𝑘)
𝜇𝜇H: プロトンの化学ポテンシャル
LL
特異的な結合 非特異的なクーロン相互作用
pHによるフォールディングを表す統計力学モデル (プロトン化)
MWC
統計力学モデルから評価したp𝐾𝐾𝑎𝑎 / 𝑟𝑟ap(アン)フォールディングのpH依存性 速度定数のpH依存性
State (k) ∆G0 (kcal/mol) pKa (H24) pKa (HisAve) pKa (carboxyl) rap (Å) Fluo. (pH 6)
U 0 6.0 6.0 3.6 29.7 1.24 ± 0.01TS1 1.3 5.98 ±0.01 6.00 ±0.01 3.60 ±0.01 26.9 ±0.1I -0.7 5.95 ±0.02 5.99 ±0.01 3.59 ±0.01 24.6 ±0.3 0.80 ± 0.01TS2 1.6 5.94 ±0.02 5.99 ±0.01 3.58 ±0.01 23.8 ±0.1M -2.7 5.90 ±0.03 5.99 ±0.01 3.58 ±0.01 23.7 1.90 ± 0.02TS3 4.4 5.83 ±0.04 5.90 ±0.02 3.55 ±0.01 23.6 ±0.1N' -1.7 1.99 ±0.01 5.90 ±0.02 3.54 ±0.02 23.3 ±0.1 1.58 ± 0.01TS4 1.4 0.99 ±0.01 5.89 ±0.02 3.52 ±0.02 21.3 ±0.1N -3.5 <4.0 5.78 ±0.02 3.43 ±0.03 18.2 1.32 ± 0.01
最近取り組み始めている研究ー蛋白質のみからなる生物時計制御
概日リズム:活動や代謝に見られる凡そ24時間周期で変動するリズム
生物時計:時計遺伝子の周期的な遺伝子発現に由来
実験的手法を用いて、Kai蛋白質系による概日リズムの機構を調べる
シアノバクテリアの概日リズム
Kai A
Kai B
Kai C
リン酸化促進 リン酸化抑制
Kai蛋白質が示す概日リズムの観察・リン酸化状態の変化
Kai C : T/S -> pT/S -> pT/pS -> T/pS...
緩和ではなくて周期的にリズムを発振
どんなしくみで起こっているのか?
分光学的手法などを用いて調べ始めている
時間 0 3 6 9 12 12 15 18 21 24 24 27 30 33 36 36 39 42 45 48
pT/pSpT/ST/pST/S
グラフにすると・・・
濃 淡 濃 淡
濃 淡 濃 淡
シナプス前神経末端の情報伝達機構とその可塑性の機構
シナプスとは神経細胞同士あるいは神経と他の細胞(感覚細胞や筋肉細胞)との接続部のことである。化学シナプスにおける情報伝達は、神経伝達物質の拡散を介して行われる。神経軸索を伝播してきたパルス状の活動電位(デジタル的信号)は、シナプス前神経末端の細胞膜を脱分極させ、そこに存在する電位依存性Ca2+チャネルを開ける。開いたチャネルからのCa2+
流入がトリガーとなって、Ca2+チャネル近傍のシナプス小胞が細胞膜と膜融合し、小胞内に蓄積されていた神経伝達物質が、シナプス間隙と呼ばれる細胞間の隙間に放出される。放出された伝達物質は、間隙を拡散してシナ
プス後細胞膜に存在するレセプターチャネルに結合してチャネルを開く。開いたチャネルをNa+イオンが流れ、後細胞側にシナプス後電位(アナログ的信号)が生ずる。このようにシナプスを介してデジタル的活動電位をアナログ的シナプス後電位に変換することで時々刻々入力される情報の統合を可能にしている。
活動電位はデジタル信号シナプス電位はアナログ
また、細胞内に流入するCa2+は、シナプスにおける伝達効率の変化であるシナプス可塑性に対しても重要な役割を担っている。シナプス可塑性は記憶・学習等の基礎となる。
私たちは、カエル神経筋接合部シナプスを用いて、神経伝達物質の放出機構そのものや、刺激依存的に引き起こされるシナプス前由来の伝達物質放出増大の短期可塑性等の放出量の調節機構の解明を目指して研究している。Ca2+等の二価陽イオンがこれらの機構にどのように関与しているのかを、シナプス前末端内イオン動態イメージング法(イオン結合性蛍光色素を用いて、細胞内イオン濃度変化を可視化する方法)や伝達物質放出量をモニターするための電気生理学的測定を通じて明らかにしてゆく。
紐状太さ2mm長さ100~200mm
・スタッフ槇 亙介(准教授)鈴木 直哉(助教)
・学生博士前期課程二年 三名博士前期課程一年 三名
研究室について
みなさまお待ちしております