2019年3⽉5⽇(⽕) 常葉⼤学准教授、⽇本テレワーク協会...

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テレワークをめぐる最新動向と経営者の役割 2019年3⽉5⽇(⽕) 常葉⼤学准教授、⽇本テレワーク協会アドバイザー ⼩⾖川 裕⼦ 総務省 経営者向け働き⽅改⾰セミナー 〜『働く、が変わる』テレワーク〜

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テレワークをめぐる最新動向と経営者の役割

2019年3⽉5⽇(⽕)常葉⼤学准教授、⽇本テレワーク協会アドバイザー

⼩⾖川 裕⼦

総務省 経営者向け働き⽅改⾰セミナー〜『働く、が変わる』テレワーク〜

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本⽇の構成

1 はじめに

2 テレワークの経営効果

3

4 おわりに

経営者の役割-持続可能な成⻑発展を実現する個⼈・企業・社会に向けて

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はじめに

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テレワークの定義と意義

※テレワークとは「tele = 離れたところで」 + 「work = 働く」をあわせた造語

所属オフィス

モバイルワーク在宅勤務

移動中や顧客先、カフェなどを就業場所とする働き⽅

サテライトオフィス勤務

専⽤型⾃社・⾃社グループ専⽤として利⽤されるオフィススペース

共⽤型複数の企業がシェアして利⽤するオフィススペース

⾃宅を就業場所とする勤務形態

ICTを活⽤し、時間や場所を有効に活⽤できる柔軟な働き⽅在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の総称徹底したICT利活⽤により、社会課題解決と社会変⾰を促

す。

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テレワークの効果

⽣産性の向上 優秀な⼈材の確保・離職抑⽌ コスト削減 BCP(事業継続性)の確保

ワーク・ライフ・バランス 多様で柔軟な働き⽅の確保 通勤時間の削減

労働⼒⼈⼝の確保 地域活性化 環境負荷の軽減

持続可能な成⻑・発展

社会

企業 個⼈

働き⽅改⾰の推進(⽣産性向上、

ワーク・ライフ・バランス、BCPなど)

地⽅創⽣の実現(移住・定住・地域活性化)

テレワークによる「働き⽅改⾰の推進」「地⽅創⽣の実現」で個⼈・企業・社会の持続可能な成⻑・発展に期待。

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労働⼒⼈⼝の減少と働き⽅改⾰の関係

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(万⼈)

⼈材の維持・確保 ワーク・ライフ・バランス ⽣産性向上++

働き⽅改⾰が重要

(出展)厚⽣労働省雇⽤政策研究会「雇⽤政策研究会報告書概要」2012年8⽉企業の経営課題

従来の働き⽅では解決できない少⼦・⾼齢化 育児・介護

対策

労働⼒⼈⼝は950万⼈減少

(⽇本の製造業相当)

出典︓総務省「平成30年度テレワークエキスパート講習テキストブック」

労働市場の障壁を排除、現在の労働者の継続・離職防⽌、双⽅対策が必要。 出産・育児期に加え、⽼親等の介護・看護、本⼈の疾病による離職危機への対

応策も求められる

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テレワークの普及状況︓未だ道半ば

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制度等のある雇⽤型テレワーカーの割合

備考︓総務省「総務省におけるテレワーク推進施策について」テレワーク推進⼤型セミナー 産官学連携セミナー資料 2018年11⽉2⽇

国⼟交通省「平成29年度 テレワーク⼈⼝実態調査 -調査結果の概要-」2018年3⽉

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テレワーク普及促進に向けた施策体系と政府全体の連携

テレワーク推進に関する政府⽬標を設定「世界最先端デジタル国家創造宣⾔・官⺠データ活⽤推進基本計画」(内閣官房IT室)

テレワークの普及状況やテレワークの意識・実態調査を実施(総務省・国⼟交通省)

インフラ整備や、適正な労働条件(勤怠管理・⼈事評価等労務管理等の課題)の検証、ICT環境の技術的課題(セキュリティ、マネジメント、コミュニケーション等)の検証を踏まえた、テレワーク関係のガイドラインの改定・周知等(総務省・厚⽣労働省)

⽬標設定現状把握

環境整備

普及展開

⼥性活躍、ワークライフバランスを推進(厚⽣労働省・内閣府)

国家公務員のテレワーク導⼊を推進(内閣官房・内閣府)

意識改⾰

テレワーク普及拡⼤の担い⼿の育成(総務省)

テレワーク導⼊の専⾨家を企業へ派遣(総務省・厚⽣労働省)

相談センターによる助⾔等を実施(厚⽣労働省)

テレワーク推進に向けた相談拠点整備(国家戦略特区事業)(厚⽣労働省・東京都)

ノウハウ⽀援

⺠間企業等に対して導⼊機器等の費⽤を助成(厚⽣労働省)

導⼊補助

表彰事業、セミナー、事例周知の開催(総務省、厚⽣労働省、経済産業省)

好事例集の作成・周知(総務省、厚⽣労働省)

テレワーク推進フォーラム(産官学連携)、テレワーク⽉間(11⽉)活動(産官学連携)、テレワーク・ディ、テレワーク・デイズの創設(関係府省)

周知・啓発

ふるさとテレワークのICT環境整備、建物改修等の補助(総務省・国⼟交通省)

備考︓各種官庁資料をもとに作成8

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テレワークの経営効果

出典︓総務省「平成30年度テレワークエキスパート講習テキストブック」

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テレワークの経営効果

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経営層を始めとする社内の理解を得るためには、テレワークの効果の定量的数値指標での説明が有効。 導⼊時︓他社事例の参照 トライアル時や導⼊後︓⾃社で効果検証を実施

※ただし、少なくとも3ヶ⽉期間でテレワークの効果把握について、現状では、

指標として理論的に確⽴したものはない。※テレワーク単体で効果が導出できない。各社が⼀定の指標で効果把握を⾏っている• 社内データ(例)所定外労働時間、ペーパーコストetc.• アンケート調査(例)ES(従業員満⾜度)、ワーク・ライフ・バラ

ンスの実現度、通勤負担度etc.

出典︓総務省「平成30年度テレワークエキスパート講習テキストブック」を元に加筆修正

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テレワークの効果把握の例(1/2)

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①生産性向上

■所定外労働時間の減少■⼀⼈あたりの総労働時間の減少■テレワークの導⼊前後で社員⼀⼈あたりの売上がどれくらい向上したか■移動や出張回数の減少による旅費/交通費の削減

②ワーク・ライフ・バランスの向上■年次有給休暇の取得率が向上したか■家族と過ごす時間が確保できているか■仕事と⽣活のバランスが取れているか

③仕事に対するやりがいの向上

■この会社に勤めて良かったと感じるか■⾃分の仕事に対して働きがいを感じられるか出典︓総務省「平成30年度テレワークエキスパート講習テキストブック」

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⑤事業継続計画(BCP)対策■地震等の⾃然災害、パンデミック、インフルエンザ流⾏等の際に、

仕事を継続できたか

④顧客満⾜度の向上

■顧客からの満⾜度が向上したか■顧客への訪問回数はアップしたか

⑥その他の指標

■離職率の低下■採⽤率の向上(応募者数の増加)■企業イメージの向上■オフィスコストの削減 等

出典︓総務省「平成30年度テレワークエキスパート講習テキストブック」

テレワークの効果把握の例(2/2)

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経営課題に対するテレワークの有効性

13出典︓総務省「働き⽅改⾰のためのテレワーク導⼊モデル」2018.6

テレワークの導⼊・普及拡⼤で解決

テレワーク先進企業は、①⽣産性向上、②外部環境変化への対応、③⼈材確保、④BCPの経営課題への対応として、テレワークを導⼊している。

⼤企業は、特にBPR施策とあわせて⽣産性向上、グローバル化対応、優秀な⼈材の確保、中⼩企業は、離職防⽌、採⽤強化の⾯で、効果を上げる事例が⾒られる。

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⽣産性の向上

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テレワークの導⼊では、業務の棚卸をはじめとして、業務フローの⾒直しや資料の電⼦化などが必要となるため、テレワーク導⼊が結果的に業務効率改善を実現

在宅勤務やサテライトオフィス勤務の際は資料作成や企画検討といった作業に専念し、割り込みを発⽣させない業務運⽤とすることで、従業員1⼈1⼈の⽣産性が向上

<事例>社内WGが働き⽅・業務⾒直しのテーマで着⽬。経営トップのコミット「⾃社の働き⽅改⾰推進と社会への提供」により、働き⽅改⾰の取り組みが活性化し、残業時間前年度⽐10%減など効率化における⼀定の効果につながった(株式会社NTTドコモ) 。

業務効率改善

従業員の⾃宅勤務や⾃宅近くのサテライトオフィス勤務による直⾏直帰の実現により、移動時間の削減、もしくは報告作業に要する残業発⽣を防⽌することが可能。

テレワークを実施する社員が上⻑の許可を得る際及び実施後に、テレワーク対象業務の予定と実績を報告させることにより、緊張感を⾼め、より短い時間での業務遂⾏が可能。

<事例>実施者の8割が⽣産性が⾼まったと回答。「業務に集中できた」「通勤時間を削減できた」「中抜け制度を利⽤し学校⾏事に参加出来た」など、公私にわたる時間の有効活⽤が可能となった(東京ガス株式会社) 。

労働時間削減

出典︓総務省「働き⽅改⾰のためのテレワーク導⼊モデル」2018.6より抜粋、加筆修正。

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テレワーク導⼊と労働⽣産性

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610730

599 611

791922 957

877

0

200

400

600

800

1000

1200

平成26年 平成27年 平成28年 平成29年

1.4倍テレワーク導⼊あり

テレワーク導⼊なし

※労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷従業者数

出典︓ 総務省「平成29年通信利用動向調査」(平成30年5月)

テレワーク導⼊企業、未導⼊企業では労働⽣産性で1.4倍の差。

テレワーク導⼊有無と1社当たりの労働⽣産性

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ICT利活⽤×働き⽅改⾰により労働時間が削減

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ICTを活⽤することによる労働時間の削減効果

出典︓情報通信総合研究所 https://www.icr.co.jp/press/press20190117.html

⾼度に ICT を利活⽤している(遠隔会議システムの導⼊等)企業で且つ働き⽅改⾰(在宅勤務制度の導⼊等)に積極的に取り組んでいる企業では、ICT利活⽤によって約3割(29.0%)の従業員に⽉間20.9時間の労働時間削減効果

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事例紹介︓ネットワンシステムズ株式会社

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コスト削減の効果は、「移動、出張費」「ペーパレス化による費⽤(紙の削減)」「インシデント対応費⽤」「座席減によるオフィスコスト」を算出し、評価を実施。

出典︓ネットワンシステムズ株式会社、総務省「平成30年度テレワークエキスパート講習テキストブック」

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外部環境変化への対応

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時差のある海外とのやりとりもテレワークを活⽤することで、早朝出勤や深夜残業をしなくても、在宅での対応が可能。

<事例>2010年に債務超過に陥り経営破綻した際、事業全体を⾒直す必要もあり、翌2011年にはグローバルHR⽅針に着⼿し、国を超えて活躍することを推進した(⽇本航空株式会社)

グローバル対応

「指⽰待ち」「変化を嫌う」といった組織⾵⼟の改⾰のための制度・仕組みの刷新に対して、テレワーク実施に必要となる各従業員への⾃律性や主体性の醸成が貢献。

企業⽂化刷新

出典︓総務省「働き⽅改⾰のためのテレワーク導⼊モデル」2018.6より抜粋、加筆修正。

地⽅に暮らしながらテレワークを活⽤し都会と同じ仕事を⾏うことができる。都市部から地⽅への⼈や仕事の流れを創出し、地⽅創⽣の実現に寄与する。

地⽅創⽣

拠点が離れている企業が合併した場合に、テレワークを活⽤することでコミュニケーション促進(拠点間の遠隔会議)や業務効率化(他拠点でのスポットオフィス利⽤)を図ることが可能。

合併対応

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⼈材確保

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テレワークはフレキシブルな働き⽅ができるため、育児や介護などをしながらも継続して勤務が可能となり、優秀な従業員の離職を防ぐことができる。

就業意欲があっても家庭の事情などで⼗分な労働時間を確保できなかった⼈材にとり、柔軟な働き⽅ができるテレワークは、仕事への意欲を向上させることに役⽴つ。

<事例> 企業の基本⽅針としてて「⼥性活躍推進」「多様な働き⽅、ワーク・ライフ・バランスの推進」「多様な

⼈材の活⽤」を3つの柱とする「⼈材サステナビリティ」を宣⾔したことがきっかけとなった。時短勤務を取得する社員の多くが中核⼈材となっており、在宅勤務の導⼊により仕事時間を確保でき「仕事の幅を広げる」ことになった。 本⼈はもとより、上司も当取組みについて⾼評価である。(積⽔ハウス株式会社)

離職防⽌

積極的に従業員の働きやすさを向上させようとする企業の姿勢は、従業員からの信頼感の向上にもつながる

<事例> 経営理念である『働く』に笑顔を︕」の実現として経営者⾃らテレワークツールを試し導⼊した。そのツー

ルが当社の商材でもあり、活⽤事例とテレワークの良さを説明し営業していた。その結果として中途採⽤も応募者が1.8倍となった(株式会社WORK SMILE LABO)

採⽤強化

出典︓総務省「働き⽅改⾰のためのテレワーク導⼊モデル」2018.6より抜粋、加筆修正。

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BCP(業務継続)対応

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停電や公共交通機関の混乱の中でも、復旧を早めることが期待され、在宅勤務などにより事業継続が実現でき、テレワーク環境はBCPの観点で⾮常に有益である。

新型インフルエンザなどのパンデミック発⽣時には、他⼈との接触を防ぐことにより感染拡⼤を抑⽌できる。BCP(事業継続)の作成・実現に関しては、⾮常時に速やかにテレワークが実施できるように、平常時からテレワークを⾏い働き⽅に慣れておくことが重要である。

<事例> 制度化当初(2008年度)は、ワーク・ライフ・バランス推進の観点から、妊娠、育児及び介護を⾏

う社員のみに適⽤してきたが、その後2016年度より対象を全社員に拡⼤、災害時やパンデミック時に滞りなく事業継続できることも⽬的とし、まずは1回試してもらうように推進している。

社内イントラサイトやWEB研修等による啓発活動、幹部会議での組織毎の実施状況報告、 エントリー⽅法の簡略化、実態に応じて環境要件の⾒直し、どこからでもリモートアクセスできる ツールの配布等により確実に浸透が進み、現時点では約8割の社員が在宅勤務にエントリーして いる。交通遅延や天災時には、会社として積極的にテレワークを活⽤するよう呼びかけを⾏い、 2017年の台⾵(10⽉)・⼤雪(1⽉)の際には、合計して約400名が在宅勤務を実施した。 (NTTテクノクロス株式会社)

BCP対応

出典︓総務省「働き⽅改⾰のためのテレワーク導⼊モデル」2018.6より抜粋、加筆修正。

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経営者の役割-持続可能な成⻑発展を実現する個⼈・企業・社会に向けて

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情報社会の次の段階へ︓Society5.0

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Society 5.0とは「デジタル⾰新と多様な⼈々の想像・創 造⼒の融合によって、社会の課題を解決し、価値を創造する社会」。

出典︓⼀般社団法⼈⽇本経済団体連合会「Society 5.0-ともに創造する未来」2018.11.13

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テレワークで実現する、Society 5.0

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テレワークは、「さまざまな制約から解放され、誰もが、いつでもどこでも、安⼼して、⾃然と共⽣しながら、価値を⽣み出す社会」を実現する有効な⼿段の⼀つ。

出典︓⼀般社団法⼈⽇本経済団体連合会「Society 5.0-ともに創造する未来」2018.11.13

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テレワークは、SDGsの実現のための重要な取組の1つ

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SDGs︓2030年に向けて世界が合意した「持続可能な開発⽬標」 SDGsへの取組を企業戦略とし、トップがメッセージ等で表明する企業も増加

テレワークは、No8を中⼼に、3,11,17が関連。

注︓ SDGs︓2015年に国連で採択された世界共通の17の⽬標出典︓国際連合広報センターhttp://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/

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「健康経営」の推進

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健康経営銘柄に選定されている企業は、テレワークを推進。

出典︓経済産業省「健康経営銘柄2018選定企業紹介レポート」http://www.meti.go.jp/press/2017/02/20180220002/20180220002.html

健康経営銘柄の選定ステップ

健康経営銘柄2018」選定企業(26業種26銘柄、銘柄コード順

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トップ&ボトムアップの推進体制、しくみづくりが重要

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推 進 体 制

全社的な理解促進・納得感の醸成

現場の声を取り⼊れた制度設計

経営トップの理解とコミットメント、強いリーダーシップの発揮 組織横断的な体制構築、WGによるボトムアップの取組

テレワークの効果の把握(定量・定性両側⾯) 説明会の開催等による理解促進やスキル向上(Q&Aの共有も) 管理職の実践による理解促進(実感評価の収集) 実施困難と思われる部⾨でのトライアル実施と検証 否定的な経営幹部層等の理解獲得(客観データ、他社事例で丁寧に説明)

トライアルによる現場の声の反映(例)メリット・デメリット、⼯夫 社員の声を反映した導⼊後の制度の改善(例)社内SNS、⽬安箱 会社の状況に応じた制度運⽤

重要︕

出典︓⼀般社団法⼈⽇本テレワーク協会 荒⽊浩⼀⽒「テレワークの導⼊・推進に向けて」⽇本テレワテーク協会ミニセミナー配布を元に加筆修正

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企業事例︓経営理念をベースに内外へメッセージ発信

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味の素 ・トップ⾃らが社内外に広くメッセージを発信・新しい働き⽅を率先垂範

ヒアリング、推進賞

カルビー ・経営トップの強⼒なリーダーシップ⇒意識改⾰、成果主義導⼊、フリーアドレスの導⼊、

直⾏直帰や在宅勤務の推進

ヒアリング、推進賞

⽇本航空 ・経営破たん⇒トップダウンでワークスタイル変⾰を推進・「経営者が本気でないと進まない」

モデル、推進賞、セミナー

NTTドコモ ・社⻑が 「⾃社の働き⽅改⾰推進と社会への提供」 を対外的にコミット⇒働き⽅改⾰の取組、在宅勤務の活⽤が広まる

モデル

WORK SMILELABO

・経営理念である「『働く』に笑顔を︕」の実現⇒経営者⾃らテレワークツールを試し導⼊

モデル、セミナー

SCSK ・「どこでもWORK」を“経営重点実施事項”と位置づけ⇒トップダウンで推進

ヒアリング、推進賞

出典︓⼀般社団法⼈⽇本テレワーク協会 荒⽊浩⼀⽒「テレワークの導⼊・推進に向けて」⽇本テレワテーク協会ミニセミナー配布を元に加筆修正

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企業事例︓トップ&ボトムアップの体制により全社展開

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味の素 ・「働き⽅改⾰」担当役員の下、「働き⽅改⾰事務局」(20名の会社組織横断チーム)を設置し取組を推進

・現場の声を聞くため、若⼿や⼥性など幅広い構成に

ヒアリング、推進賞

NTTドコモ

・⼈事部ダイバーシティ推進室、働き⽅改⾰に関⼼のある社員によるワーキンググループでボトムアップの取組

⇒現場の声やアイデアを在宅勤務の推進施策に反映

ヒアリング

SCSK ・トライアル時、コーポレート部⾨の全部⾨が参加の⼩委員会を組織

・全社展開に向け、経営会議の諮問委員会である「どこでもWORK推進委員会」を設置(役員クラスが参

加)⇒全社推進スキームを構築⇒推進上の課題・対策を委員会で議論、経営会議に報告

モデル、推進賞

出典︓⼀般社団法⼈⽇本テレワーク協会 荒⽊浩⼀⽒「テレワークの導⼊・推進に向けて」⽇本テレワテーク協会ミニセミナー配布を元に加筆修正

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<参考>経営トップ層の「ワークスタイル⾰新」メッセージ

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ここ数年、「仕事と⽣活の調和(ワークライフバランス)」「コンプライアンスの徹底」「⼼⾝の健康」を基本的な考え⽅に据えて、⻑時間労働の改善に向けた取組を継続してきました。

今年は、これらの取り組みを更に⼀歩進め、思いきったワークスタイルの⾰新、「S流仕事術の創造」にチャレンジしていきます。

S流仕事術とは、「ITのパワーを最⼤限に活⽤し、働く場所と時間の概念を⼤きく変え、決めた時間で最⼤の成果を出す仕事術」であり、「ムダのないSlimな仕事」「Speedyな仕事」「時代に先駆けたSmartな仕事」を⽬指してサントリー(Suntory)が創造していく仕事の進め⽅です。

具体的には、進化したITツールの活⽤(Web会議やテレワークなど)、フレキシブルな働き⽅を実現する制度の活⽤(在宅勤務やフレックスの拡⼤)などを通して、Face to Face のコミュニケーションを守りつつ、「時間配分の適正化(効率的な時間の使い⽅)」「時間あたりの労働⽣産性向上」「タイムマネジメントの強化」を⽬指していきます。

個々の施策の利⽤にあたっては、部⾨・部署により向き不向きがあるでしょうが、フレキシビリティに富んだ、タイムマネジメント重視の考え⽅は、どの部⾨・部署にも必ず役⽴つと考えています。

S流仕事術は、8⽉から全社に展開します。それに先駆けて4⽉より、◆各社・各部⾨から選定したテスト部署での先⾏実施◆意識・⾵⼟の醸成を図るための「S流仕事術ナレッジBOX」の⽴ち上げ

を⾏い、テスト部署での取り組み事例、活⽤事例等、随時「S流仕事術ナレッジBOX」で紹介していきます。S流仕事術により世の中から⼀歩進んだワークスタイルを創りだすことで、サントリーグループの成⻑(Growing

Company)、仕事をふくめた個⼈のライフ全体の充実(Good Person)を実現していきます。従来の発想を⼤きく変え、仕事の時間も個⼈の時間も充実させていきましょう。

2010年4⽉5⽇ 常務執⾏役員 ⼈事本部⻑ 神⾕ 有⼆

出典︓サントリーホールディングス株式会社、総務省「平成30年度テレワークエキスパート講習テキストブック」

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おわりに

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持続可能な個⼈・企業・社会を実現するシステム

⾃⼰啓発の時間が増える

過剰労働の抑⽌・健康維持・向上

地⽅創⽣、地域社会との連携が強化

育児・介護期だけでなくライフステージの様々な変化も対応できる

⽣産性の向上

コスト削減

貴重な⼈的資源の確保・離職防⽌

イノベーションの創出

⾃律性・主体性の確⽴ 業務プロセスの削減及び短縮

他者配慮・相互⽀援の組織⾵⼟

適正な⼈事評価・業績評価

適正な勤怠管理業務の可視化、知識・情報の共有

組織⾵⼟の⾰新 労務管理制度・ルールの整備業務プロセスの⾰新

テレワーク環境(リモートアクセス⽅式)

情報通信環境の整備コミュニケーションツール 管理ツール デバイス

持続可能な・個⼈ ・企業 ・社会

の実現

テレワークによる働き⽅改⾰

個⼈の持続的な成⻑(個⼈の豊かな⼈⽣の実現)

組織の持続的な成⻑(組織の競争⼒の確保・発展)

gABW︓Activity Based

Working

知識創造を⾼める「場」づくり

オフィスの改⾰

31注︓ABW︓Activity Based Working ⾃由に場所を選択し働くことによってより成果を出す仕組み出典︓各種資料をもとに⼩⾖川が作成

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テレワークは出産・育児・介護等の特定層から、全社規模の取組へ-「ICTインフラの整備」「組織⾵⼟の⾰新」「業務プロセスの⾰新」「労務管理制度・ルールの整備」、できれば「オフィスの改⾰」のセットで推進

単⾝赴任者の帰省、⽼親の介護、ワーケーションなど、時間・頻度・場所の利⽤の選択肢が拡がる

企業がさまざまな制約を取り除く動きも

地域、中⼩企業者は、特に離職防⽌、優秀な⼈材確保に効果早い段階での着⼿が成⻑発展のトリガーに

経営者の強いトップダウンで、企業の競争戦略として位置づけ、施策を実装。⽣産性向上、ワーク・ライフ・マネジメントを通じて

持続可能な個⼈・企業・社会の実現へ

実践・拡⼤段階に⼊ったテレワーク

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ご静聴ありがとうございました︕