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2018年度 大学院「先進構造材料特論」講義
鉄鋼材料学
第4回(5/24) 鉄鋼材料の製造
京都大学 大学院 工学研究科 材料工学専攻
辻 伸泰
May 24, 20168 @京都大学
鉄鋼の製造プロセス
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原始的な製鉄法
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鉄鉱石
赤鉄鉱 Fe2O3(酸化第二鉄)
褐鉄鉱 Fe2O3・nH2O(酸化第二鉄・水和物)
磁鉄鉱・砂鉄 Fe3O4 → FeO・Fe2O3
菱鉄鉱 FeCO3(炭酸第一鉄)
黄鉄鉱 FeS2(二硫化鉄)
1)炭素の燃焼: 2)COの発生: 3)酸化鉄の還元:
3/2C + 3/2O2 → 3/2CO2 3/2C + 3/2CO2 → 3CO Fe2O3(赤鉄鉱)+ 3CO → 2Fe + 3CO2 Fe2O3 + 3C + 3/2O2 → 2Fe + 3CO2
上記化学反応に必要な温度は400〜800℃程度で、鉄鉱石は溶けなくても鉄に変わる。温度が低ければ、固体のまま還元されて酸素を失った孔だらけの海綿状の鉄になり、温度が高ければ粘いあめ状の塊(錬鉄)になる。錬鉄は不純物を含んでいるので、赤熱状態で打ちたたいて不純物を絞り出す(鍛える)。
http://fnorio.com/0056history_of_iron_manufacture1/history_of_iron_manufacture1.htm �
日本:たたら製鉄 たたら:多々良、蹈鞴、鑪
鞴=ふいご鑪=いろり、ひばち、ふいご�
高炉法の発明
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• 14〜15世紀ごろドイツで高炉法が始まる。 • 水車の利用により炉内に大量の空気を送り込み、炉内の温度を上げることが可能に。
• 還元された鉄が炭素を吸収し、3~4wt%の炭素を含むと融点は1200℃程度となり、鉄は溶融して液体となり、炉底に溜まる(銑鉄)。
• 森林資源の枯渇により16世紀終わり頃より木炭から石炭の利用に転換。
• 石炭の高温軟化溶融による空気循環の阻害を避けるために、石炭を乾留してコークスとして利用する必要が生じる。
• 石炭中からの硫黄、リンの混入も問題に。 • 石灰石を加え、SiO2などのコークスの不純物を取り除く。
• スラグが高温で石灰分が高いと硫黄も十分除去できることが見出される。
• コークスは燃えにくいので、より強力な送風装置が必要となり、蒸気機関の利用が始まる。(ニューコメンの蒸気機関の発明:1712年)
• 高炉法の最大の問題は、炉内が高温になり、融解鉄に炭素が大量に溶け込むようになったこと。
16世紀イギリスの高炉の想定図
http://fnorio.com/0056history_of_iron_manufacture1/history_of_iron_manufacture1.htm �
高炉(和) Blast Furnace(英:送風炉) Hochofen(独:高炉)
Fe-C系状態図 鋼(Steel)は鉄(Fe: Iron)と炭素(C)の合金
5 鋼 (Steel)� 鋳鉄 (Cast Iron)�
純鉄 (Iron)�
反射炉とパドル法
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• 18世紀はじめより、反射炉で鋳鉄・銑鉄を再溶解する方法が工業化。 • 火焔の中に過剰の酸素を送ると、銑鉄中の炭素や不純物のリン・硫黄を燃焼除去できる。 • 鉄は炭素量が減ると溶融点が高くなり流動性を失うので、鉄の棒(パドル)を差し込んでかき回し(パドリング)、反応を進行させた。
• ただしこれらの方法は、大規模生産には向かなかった。
反射炉
http://fnorio.com/0056history_of_iron_manufacture1/history_of_iron_manufacture1.htm �
パドリング
ベッセマーの転炉法(1856年)
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• ベッセマーが、溶けた銑鉄にそのまま空気を吹き込めば、燃料の熱源なしに銑鉄中の炭素やケイ素を除去できることを発見。
• 転炉(converter)とは、銑鉄を鋼にconvertするという意味。
• 転炉法は、燃料を用いることなく短時間で多量の鋼を作ることができる効率の良い製鋼法で、鋼の大量生産を可能にした。
http://fnorio.com/0056history_of_iron_manufacture1/history_of_iron_manufacture1.htm �最初のベッセマー傾注式転炉と取り鍋
初期の固定式転炉
• ベッセマー転炉法により炉内温度が1500〜1600℃という高温になり、リンや硫黄が溶鉄中に残ってしまうことになった。
• その結果、欧州産のリンや硫黄を含む大部分の鉱石では良質な鋼が得られず、低リン、
低硫黄のアメリカ、旧ソ連、北欧産高品位鉱石が必要となった。�
現在の高炉
8 新日鐵住金君津第四高炉
現在の高炉
9
奥野嘉雄:NIPPON STEEL MONTHLY, 1-2 (2004), p.11.
現在の転炉
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現在の転炉
11 松宮 徹:NIPPON STEEL MONTHLY, 5(2004), p.11.
連続鋳造
12 松宮 徹:NIPPON STEEL MONTHLY, 7 (2004), p.5.
鉄鋼の製造プロセス
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吉江:NIPPON STEEL MONTHLY, 2007.6, p.7.
熱間圧延に伴う組織変化
合金元素の添加によるTTT線図の変化 焼き入れ性(hardenability)は一般に向上する ベイナイトが個別のCカーブに分離する場合がある�
合金元素の添加による焼入れ性の向上
15 鋼の焼入性を向上させる元素�=�C, Ni, Mn, Si, Cr, Mo, B �
鉄鋼材料の良い点悪い点
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u 幅広い特性を実現できる
u 安価である
ü 資源が豊富 ü 大量生産に適している
v 高いと売れない
v 巨大な設備産業(あらゆる工学を内包)であり、材料創製がプロセスに律速される