20120312 magicc startup

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Project Magicc -Micro-Analysis on Green Innovation and Corporate Competitiveness- エエエエエエエエエエ エエエエエエエエエエ エエエエエエエエエエエエエエ 、、 エエエエ 2012.3.12 エエエエエエエエエエエエエエエエ エエエ

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Project Magicc -Micro-Analysis on Green Innovation and Corporate

Competitiveness-

エネルギーの安定供給、温室効果ガスの削減、産業競争力の確立をいかに両立させるか

2012.3.12

一橋大学イノベーション研究センター

青島矢一

日本が抱える3つ課題

• 温室効果ガスの削減

– 1990年比で 2020年までに 25%の削減を公言

• エネルギーの安定供給

– 原発の喪失 (福島第一&第二で 9.1GW)

• 経済成長の実現

– 長引く経済の低迷

温室効果ガスの削減

• 90年比で 25%削減するには・・・– 9基の原子力発電所の新設。稼働率は 81%に向上( 1.05億 t)。

– 太陽光発電を 20倍( 1,600万 t)– 新世代自動車の普及( 2,100万 t)– その他の省エネ対策( 8,400万 t)– これでやっと 90年比 8%減 – 残りは排出権の購入  (金子 , 2010)

• しかも、もはや原子力発電に頼ることはできない。

長期エネルギー見通し( 2009年時点)

資料:資源エネルギー庁「長期エネルギー見通し(再計算)」 2009年 8月において最大導入ケースとして想定されている目標数値

火力発電による原発の代替

• 2010年 11月に 230億 kwhであった原発により電力量は、 2011年 11月には 70億 kwhへと減少。

• 一方火力発電は、 363億 kwhから 493億 kwhへと増大し、総発電量の 68%を占めている。

• しかしこのまま CO2を排出し続けるわけにはいかない。

好景気で急落する付加価値率

1980

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23

24

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

5.5

全ての製造企業を含む出所:法人企業統計より筆者作成

付加価値率

売上高営業利益率

%%

経済への影響

• 火力発電の増大によって 2011年度だけで1.7兆円の追加燃料費が必要という試算(火力発電 10.2円 /kwhに対して、原発は 7.2円 /kwh)。電気料金の値上げ。

• 温室効果ガスの削減義務が課されれば、排出権の購入によって多大な富が海外に流出する。

• ただでさえ円高で厳しい日本企業に対するダメージは大きい。活動の拠点を日本から移さざるをえなくなる。

経済発展

温室効果ガスの削減

: 90年比 25%削減

原発に依存しないエネルギー供給

矛盾

矛盾

矛盾 矛盾を解決する新たな産業の発展可能性の探

新産業において日本企業の競争力を確保するための方策の探索

矛盾を含む複雑な方程式

矛盾を解決する方法

• 新しいグリーン産業の促進

• 新エネルギー、省エネルギーに関連する巨大な産業が生まれれば、「環境」、「エネルギー」、「経済発展」の3つは一気に解決できそうに見える。

• グリーンイノベーション、グリーン産業の拡大を狙った、様々な政策。大量の税金の投入。

• 本当にこれで矛盾は解決できるのか。

経営学者の心配ごとと役割

• 大量の税金を使って、温室効果ガスを削減し、エネルギー問題を解決したとして、新たなグリーン産業の拡大は、本当に長期的な日本経済の発展につながるのか。

• 短期的な市場拡大による恩恵はわかる。

• しかし新たな産業において日本企業(産業)が国際競争力をもち、長期的に日本経済を牽引できなければならない。

• 「ミクロの視点の必要性」:ここに経営学者の役割がある。

グリーン政策の罠:「グリーン家電普及促進事業」の事例

6,900億円の予算。 2011年 8月 31日時点で 6,390億円分のポイント発行済み。その内、 82%にあたる 5,217億円が省エネテレビ向けに発行された。

そもそもは温室効果ガス削減目標を達成するために、環境省を中心に進められてきた事業であったが、実質的には薄型テレビの購入促進事業。

エコポイント導入の省エネ効果( TV一台あたり年間消費電力: kwh)

導入前 導入後0

50

100

150

200

250

300

130.1

109.3

250

125

筆者推計当初の計画(朝日新聞 2011年 2月より)

エコポイントの経済効果

• 経済産業省は、予算額の 7倍におよぶ 5兆円の経済効果をもたらし、のべ 32万人の雇用を創出したと発表( 2011年 6月)– 産業連関表を使った計算のマジック

• 確かに国内市場は拡大した(エコポイント期間に4,000万台の販売)。消費者余剰は確かに増えた。

• 雇用も増えたかもしれない。しかし合理的な企業が、エコポイント終了後の影響を考えたとき、固定的な人材を雇うだろうか。

• しかし、 TV産業における日本企業の競争力に貢献したとはいえない。長期的な効果には疑問符。

2007.1

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2010.9

2010.11

2011.1

2011.3

2011.5

2011.70.00%

20.00%

40.00%

60.00%

80.00%

100.00%

120.00%

テレビ国内出荷台数に占める輸入台数の割合

注:国内出荷台数は JEITAの自主統計から、輸入台数は貿易統計のデータを使用しており、後者の方がカバーする範囲が広いため、実際の割合よりも高い値がでていると思われる。

エコポイント開始

エコポイント終了

そして、日本企業の TV事業の現状政府は5 千億円以上の税金を投入したのに・・・日立:国内生産撤退パナソニック : 全社で7,000億円の連結損失予測。

TV 事業で1000 人のリストラ。半導体事業で希望退職。

ソニー : TV 事業の縮小。 TV 事業で1650億円の赤字の予測。

シャープ:全社で2900億円の赤字東芝: TV 事業で450億円の赤字結局実現されたのはアナログ停波の影響を極小化したこと。しかしこれとて、エコポイントを必要としたのか?

なぜなら・・・薄型テレビにおける事業モデル(2009)

台湾ODM企業

ブランド企業

LCDパネル

標準 TV-IC設計

TPVAmtranCompalWistronProview

SamsungLG Display

AUO CMOCPT

Sharp

MediaTekTridentMStar

ST(Genesis)Zoran

TV-IC製造

TSMC 等半導体ファンダリ

世界シェア 20%強

専用 TV-IC( ASIC) ,内製 LCD パネルなど内部開発・内製

部材

専用部材

分業型

汎用部材

統合型

同床異夢の罠

省エネルギー /CO2削減:環境省

経済活性化:経済産業省

地デジへ化への対応:総務省

一石三鳥?それとも、同床異夢がもたらす罠

環境、エネルギーというマジックワード• 「エコ」という言葉をまとうことによって、

正当化された、経済省と総務省の事業。

• 環境対策、エネルギー対策に対して正面切って反対できる人は多くない。この状況は震災後、特に強くなっている。

• 長期的な経済発展に向けたシナリオの検討がおろそかになる危険性。特にミクロの知見をもとにしたシナリオ形成が軽視される危険性。

期待される太陽光発電

• 2009年 11月から住宅用余剰電力買い取り制度:当初は 48円 /kwh、 2011年度は 42円 /kwhで買い取り。

• 2012年度には全量固定価格買い取り制度のスタート。事業用設備に対して適用される可能性が高い。

• ドイツ、スペインの例からして、十分に事業採算が成り立つレベルに買い取り価格が設定されれば、普及は加速化する。→エネルギー・環境対策としては良いこと。

• 太陽光の普及によってGDPが減少しないという試算も(ただし全量日本で生産するという前提)

長期的な経済性向上の可能性

• 手厚い補助は太陽光がまだ技術的に未成熟である(コストが高い)という前提。普及にともなう量産効果で急速にコスト低下が起きるという前提– 2020年に14円 /kwh、2030年に7円 /kwh(NEDO)。現

状でも金利費用を除けば30円 /kwh程度。• パネルとしての量産効果はでにくい。結晶シリコン型の

場合、70%以上が材料にかかる変動費(その多くがシリコン材料)。現状の技術を前提にすると大幅なコストダウンは難しい。

• 結晶シリコン型のエネルギー変換効率の理論値は29%程度。すでに研究室レベルでは25%まで達成。– 未成熟なのか?枯れた技術なのか?

• しかし固定価格買い取りが進めば当面は現状で最も経済性の高い技術の普及が急速に進むだろう。

日本企業は競争力をもちえるか

• 主流の結晶シリコン型ではセル、モジュール生産の過半は中国企業が支配。

• 製造装置も欧米の TKS企業が支配• カバーガラス、バックシート、封止材で日本企業が強いが、そもそも中間部材が少ない製品。

• 現状の結晶シリコン型を普及させることは日本企業の国際競争力の低下を助長するようにみえる。

• 技術革新の余地の高い、 a-Si 薄膜、化合物型(CISなど )、有機薄膜、色素増感などの新技術の開発の足かせにはならないか?

PV cell production share (2010)

Suntech (China)6.6% JA Solar

(China)6.1%

First Solar (US)5.9%

Yingli (China)4.7%

Trina Solar (China)4.7%

Q-cells (Germany)

3.9%Gintech

(Tainwan)3.3%

Sharp (Japan)3.1%

Motech (Taiwan)

3.0%

Kyocera (Japan)

2.7%

Others56.0%

Source: Wikipedia

Top 10 PV production equipment manufacturer

Company Sales (M$)

Applied Materials( US) 455

Roth and Rau( Germany) 275

Centrotherm( Germany) 270

OC Oerlikon Balzers( Swiss) 250

Ulvac(Japan) 240

Manz Automation( Germany) 140

Schmid Gruppe Technology Systems( Germany) 125

Von Ardenne Anlagentechnik( Germany) 120

RENA Sondermaschinen( Germany) 85

3S Swiss Solar Systems( Swiss) 70

例えば、地熱発電の可能性

• 高い潜在性– >2,347万 KWe 以上の地熱資源(世界第 3 位)– まだ一部しか開発されていない (53.5万 KW). – カーボンフリーの技術

• 高い経済性の可能性– 基本的に燃料費はいらない – 九州電力の 2010年有価証券報告書データで 6.74円 /

kwh• まだ標準化された技術ではない

– 発電所の重要技術を日本企業が握っている– ドライスチームで 70%以上 , フラッシュで 80%以上のシェア

• 関連インフラ産業の誘発• にも関わらず、長い間軽視されてきた• 2003年には補助金の打ち切り、 10年以上新設なし、新エネルギーからの除外・・・。

発電単価の比較( 2006-2010年平均)

単位:円/ kwh出所 :日本エネルギー経済研究所( 2011)をもとに筆者作成

火力 原子力 地熱等0

2

4

6

8

10

12

10.2

7.2

8.9

地熱発電タービンのシェア(2010年、単位MW)

263024.6%

252523.6%

214620.1%

113810.7%

110010.3%

5505.1%

三菱重工東芝富士電機Ansaldo / Tosi ORMAT GE / NPAlstomAEIKalugaBTHOther (13)

出所:レイキャビクエナジー資料

障害はあるけど

• 国立公園問題

• 初期ファイナンスの問題:ハイリスクローリターン

• 温泉街との共存でも克服できない問題ではない。温水と組み合わせれば経済性はさらに向上

アイスランドの例

• オイルショックを契機に地熱開発を加速化(原発に向かった日本と対照的)

• 年間 4,600Gwhの電力を創出。総電力量の25%程度をまかなう(残りは水力)。

• コストはおそらく 2-3円 /kwh程度と思われる。• ただしタービンは一部の小型・旧型を除いて

全て日本製。• 経済性を確立する上での鍵は「合わせ技」

– 暖房用途にインフラを確立して、その上に、発電所を重ねる。

地熱発電普及の鍵は・・・

• 恩恵のバランス– 環境、コミュニティ、エネルギー、安全、経済

• 範囲の経済– 直接利用と間接利用– コジェネレーション

• 事業モデル– 市場拡大を企業の付加価値増大につなげる( Ormatの例)

他にも得意分野はあるはず

• たとえば、地中熱利用– 地中熱ヒートポンプは世界的には急速に成長しているのに日本ではほとんど普及していない。

– 四季のある日本に効果的な技術– ヒートポンプ技術の強み– 国内インフラ産業の発展

• 電力創出だけではなく、電力としての利用を減らすという、トータルな考えかたをもち、しかも日本企業が新たな産業で優位にたてる可能性を考慮することの必要性。

環境、エネルギー政策の危うさ

• 同床異夢の罠– 同床異夢は両刃の刃。強い目標意識が欠けると単なるもたれ合いになる。

• 「エネルギー」「環境」というマジックワードの力– 同床異夢の戦略にマジックワードの力が加わると、企業競争力の向上を通じた長期的な経済発展のシナリオがおざなりになる危険性

• 「普及=経済発展」という幻想– グローバリゼーション、技術の汎用化が進む世界では、国内市場の拡大政策は必ずしも長期的な富をもたらさない。

経営学者の出番

• ミクロの基盤の重要性• Project “Magicc” – Micro-Analysis on Green Innovation and

Corporate Competitiveness

懸念事項(1)

• 環境・エネルギー問題に経営学者が足を突っ込むのは危険?– 環境・エネルギーの専門家は数多く存在する。– この領域は客観的真実の追求だけでなく、価値・イデオロギー対立が大きい。論争に巻きこまれても対抗できる専門知識をもたない。

• われわれの「立ち位置」をはっきりさせる必要がある。

われわれの立ち位置

• 日本企業の競争力、日本経済の発展– 環境問題・エネルギー問題の解決を目指して振興されるグリーン産業における日本の競争力(日本企業の競争力とそれを基盤とした日本経済の長期的な発展・成長)に焦点をあてる。

– 現場調査にもとづくミクロの視点から競争力につながるメカニズムを明らかにする。

• グリーンイノベーションの長期的促進– ただしイノベーションとは「経済価値」をもたらす革新のこと。単なる技術革新のみを扱うのではない。

われわれが(勉強はするけど)やらないこと• 環境問題そのものの解決方法

– 本当にCO2削減が必要なのか?人為的問題なのか自然現象なのか?

– グリーン産業の発展は本当に環境問題を解決するのか?(GDPを減らした方がいい?)

• エネルギー政策そのもの– エネルギー自給率をどうすべきか?国家戦略として石油依存をどうすべきか?

• 上記に関連してライフスタイルの変革など、生活のあり方に関する議論– 結果としては扱うが、独立変数としては扱わない。

• マクロ的な分析– マクロデータを用いたエネルギー・環境投資と経済成長との関係– リスクの見積もり(原発のリスクの大きさなど)

懸念事項(2)

• 提言(問題解決)を1つの目的として研究を進めることの危険性– 提言を求めることによって、分析プロセスの客観性や詳細性が犠牲にならないか

– 学術論文になりにくいことが、特に若手の研究者にとって問題とならないか。

飽くまでも研究プロジェクト

• 提言はするけど、それは副産物であるという、従来の研究者としての姿勢を崩さない。– 飽くまでも現象を説明する詳細なメカニズムの解明とその一般化(理論化)が目的。

– そのメカニズムを適用することによって提言をするに過ぎない。

• 学術論文にする努力を継続する。– おそらく、なんでも書いたものをお互いに発表して、そこから学術論文としての可能性を一緒に探っていくという作業が重要(年に 3回くらい集まるのはどうか)

Magiccの現状の構成(要検討)• 新産業の創出

– 太陽光(延岡)– 水関連(三木、藤原、積田、松原)– 地熱(三木、木村)– 水素利用(松嶋)– スマートグリッド(斉藤・高)

• 既存産業の発展– 火力発電(タービン)(鈴木)– 鉄鋼(鈴木)– 日本のものづくり(鋳造 etc)(藤原、積田)

• 制度設計と政策決定– 排出権取引(和久津)– 政府 R&D投資(松嶋)– 環境・エネルギー政策、歴史的展開(清水)– 危機管理・ルール設計・組織設計(斉藤・谷口)

Magicc HPの基本思想

• オープンなコミュニティに発展させたい。– しかし中身の核ができるまではクローズな場とする。内容は公開するが、外部の人が参加できないようにする。

• 当面の核は、一橋大学イノベーション研究センターが担うが、それにこだわらない。– 様々な機関との連携をしていく。

• 様々な人々が参加するポータルとして、将来的にはプロジェクト自体をオープンなものにしていきたい。

Magicc HP

• ポータルにブログがぶら下がった構造。• 書き込みはブログに行う。キーワードでの分類を行う。

– Google アカウントが必要– 段落間は2 行空けるのがいい。– 写真は基本的には真ん中に配置するがよさそう。– スライドは Slideshare をつかって埋め込む– 長い文章(論文、講演録など)は別途保存されている場所にリンクを貼る。→現状は IIRのHPに置くので連絡して欲しい(いずれ別の方法を考える)。

• 管理者は一週間に1回のペースで書き込んで欲しい。• ピックアップ記事と注目記事は当面青島が選択する。