2011 後期 課題演習 a2
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2011 後期 課題演習 A2. オルソポジトロニウムの寿命測定. 京都大学理学部 石黒陽太郎 井上陽裕 梅田直弥 川井大輔 金子雅紀 平岡友基. 実験 の概要. オルソポジトロニウム( o-Ps )の寿命を測定し QED の理論値と比較する。 例年 と は異なった検出器の配置 , 回路を用いてより精度の高い測定を目指した。. 発表の流れ. 理論 実験原理及びセットアップ 結果と解析 考察. 1. 理論. ポジトロニウムとは. 電子と陽電子の束縛系 形状は水素原子に近いがすぐに崩壊して γ 線を出す 系のスピンの状態によって崩壊の過程が異なる - PowerPoint PPT PresentationTRANSCRIPT
2011 後期 課題演習 A2
オルソポジトロニウムの寿命測定京都大学理学部石黒陽太郎 井上陽裕 梅田直弥 川井大輔 金子雅紀 平岡友基
実験の概要オルソポジトロニウム( o-Ps )の寿命を測定し QED の理論値と比較する。例年とは異なった検出器の配置 , 回路を用いてより精度の高い測定を目指した。
発表の流れ1. 理論2. 実験原理及びセットアップ3. 結果と解析4. 考察
1. 理論
ポジトロニウムとは• 電子と陽電子の束縛系• 形状は水素原子に近いがすぐに崩壊して γ線を出す• 系のスピンの状態によって崩壊の過程が異なる• 略称(元素記号):
Ps
ポジトロニウムの崩壊過程• p-Ps ( spin singlet )
-> 偶数個の γ 線に崩壊• o-Ps ( spin triplet )
-> 奇数個の γ 線に崩壊これらの性質は荷電共役変換の対称性より導かれる。
p-Ps の平均寿命• p-Ps の崩壊過程は右図の
Feynmann Diagrams で表される。• 運動量保存により 2 光子のエネルギーは等しい。摂動論による p-Ps の平均寿命の理論値は
である。
o-Ps の平均寿命• o-Ps の崩壊過程は p-Ps の崩壊過程よりも複雑である。• 3 光子なので光子のエネルギーは連続的に分布する。
文献による o-Ps の平均寿命の理論値は
であり、 p-Ps に比べて非常に長い。
予想される誤差とその影響• pick-off 反応• スピン交換反応• Compton 散乱
pick-off 反応• Ps が束縛電子以外の電子と衝突し、対消滅する• pick-off 反応により寿命は短く見える• 衝突電子のスピンに関わらず起きる⇒ 観測される γ 線は 2 本または 3 本
予想される誤差とその影響• pick-off 反応• スピン交換反応• Compton 散乱
スピン交換反応• Ps が他の物質と衝突してスピンの状態が変わる反応• p-Ps は他の物質と衝突する前に崩壊するため、 o-Ps → p-Ps の反応のみ起こる• したがって、観測される γ 線は 2 本であり、エネルギーも単一である
予想される誤差とその影響• pick-off 反応• スピン交換反応• Compton 散乱
Compton 散乱• Ps の崩壊によって放射された γ 線が物質と衝突してエネルギーを落とす• 散乱によって同じエネルギーの γ 線でもそれ以下のエネルギー域に統計的に分布する• 観測するエネルギー域は狭く、エネルギー依存性はほとんどないとみなせる
寿命の測定方法• 誤差の影響が全くなければ、 o-Ps は一定のレートで崩壊する⇒o-Ps の崩壊による γ 線の検出数の時間分布は指数関数的な振る舞いをする
この Γtotal が観測できる崩壊幅であり、求めたい結果は τ3γ である。
寿命の測定方法• セットアップの段階で pick-off 反応などの発生を抑える (真空を引く・試料を乾燥させるなど )• ポジトロニウムの崩壊で放射される γ 線を検出し、タイミングとエネルギーを測る• 511keV よりも小さなエネルギー域の結果について、 Compton 散乱等の影響を補正して Ps生成からの経過時間と検出数の関係を見る• 指数関数的な減少が見える
参考文献• A. Ore and J. L. Powell, 「 Three-Photon
Annihilation of an Electron-Positron 」 , The American Physical Society, 1949
• Michael E. Peskin and Daniel V. Schroeder, 「 An Introduction to Quantum Field Theory」 , Chapter 5
• J. J. Sakurai, 「 Advanced Quantum Mechanics 」 , Chapter 4
ポジトロニウムの崩壊過程(補足)a†b†|0> は C 変換により b†a†|0> = - a†b†|0> に移るスピンの入れ替えに対して triplet は対称、 singlet は反対称である⇒triplet,singlet の C 変換に対する固有値は
1,-1光子の C 変換のパリティは奇である⇒ 崩壊で C 変換対称性は保存するのでtriplet は奇数個、 singlet は偶数個の光子に崩壊する。
2. 実験原理及びセットアップ
実験原理及びセットアップ• 実験原理• 検出器のセットアップ• High Voltage の設定• ADCキャリブレーション• TDCキャリブレーション
実験原理• 実験では、 Na の b+ 崩壊によって出てきたポジトロンがシリカパウダー (主成分: SiO2) 内で電子を奪いポジトロニウム( Ps )を生成し、崩壊するまでの過程を観測した。• Ps が生成する時刻を知るために b+ 崩壊で出る b 線をプラスティック・シンチレータで検出。• Ps が崩壊した時刻を知るために Ps の崩壊で出る g 線を NaI シンチレータで検出。• この検出時間の差から Ps の寿命を求めた。
22
実験装置図と留意点
2g
3g
実験装置の写真
これに暗幕をかけて実験を行った
回路図
High Voltage の設定
NaI1 NaI3
NaI2
各 NaIシンチレータにかける HV の設定 .それぞれなるべく同じ条件にしたい .
High Voltage の設定HV[V] Pedestal 511keV 差
NaI1 (ADC2) 1155 127 1346 1219
NaI2 (ADC3) 1185 106 1314 1208
NaI3 (ADC4) 1280 106 1318 1212
各 NaIシンチレータにかけることになった HV の値 . 22Na の 511KeV ピークと Pedestal の ADC の値を測り , その差が同じになるように HV を設定した .
ADC のキャリブレーション
Energy ADC
0 (pedestal) 210
511 1251
1275 2076
ADCカウントとエネルギーの対応を調べた .本実験での 22Na の 511keV, 1275keVと pedestal の 3点での ADC の値を用いた .
本実験での ADC の分布 (ADC2)
各 ADC での係数 a, b
ADC のキャリブレーション
a b
ADC2 (NaI1) 0.512±0.00083 -115±14
ADC3 (NaI2) 0.510±0.015 -84±25
ADC4 (NaI3) 0.522±0.010 -99±17
Energy = a×ADC + b
ADCカウントとエネルギーの対応 .22Na の 511keV, 1275keV と pedestalの 3点を用いた .
ADC-Energy (ADC2)
各 ADC での係数 a, b
TDC のキャリブレーション
TDCキャリブレーションの回路図 .ケーブルディレイを用いて様々な時間差を作り ,時間差と TDCカウントの対応を調べた .
TDC のキャリブレーション
c d
TDC1 (PS) 0.24813±0.00037 -13.50±0.70
TDC2 (NaI1) 0.24864±0.00069 -13.0±1.3
TDC3 (NaI2) 0.25028±0.00069 -14.2±1.3
TDC4(NaI3) 0.24859±0.00070 -14.1±1.3
TDCカウントと時間差の対応 .120, 235, 350, 580, 700 ns の5点を用いた .
TDC-Time (TDC2)
Time= c×TDC + d
各 TDC での係数 c, d
3. 実験結果と解析
実験結果と解析• 各 NaI の観測したイベント数• Total 349115• NaI1 339301• NaI2 18715• NaI3 333947P- ポジトロニウムを観測したイベントがほとんど。
NaI1のヒストグラム
511keV かつ 200ns のあたりにイベントが集中P- ポジトロニウムの崩壊イベントをとらえている。
各領域にあるイベントの種類分け
NaI2/NaI3 のヒストグラム
NaI2 のヒストグラムにも NaI1/NaI3 のヒストグラムと同じ傾向がみられる。
シグナルの遅れによる ADC減少の補正 ADC の Gateシグナルに遅れたシグナルは減少する o- ポジトロニウムの崩壊などを想定
ただし、Gate Generator のシグナルは十分に長い
o- ポジトロニウムの崩壊と Gate Generator
補正する E の幅はそれほど大きくない。低次の関数で補正できるはず
補正理論pick offやスピン交換反応により生成された p- ポジトロニウムの崩壊
理論的には任意の T[ns] でE[keV] のプロファイルは変わらないはず。傾きが現れれば、それはシグナルの遅れに依存しているはず
補正関数が計算できる。
補正手法先ほどの領域を取り出し、 T[ns]についてのプロファイルを作成
明らかに傾きが存在する。 * ただし、その値は非常に小さい
一次関数 ΔE[keV] = - a× T[ns] + b[keV]
で Fitting する。
NaI2 と NaI3 のプロファイル
NaI2 についても同じようなイベントが入っている。 ⇒ 同じ手法を用いて補正をかけた。
Fiiting 結果a b
NaI1 0.151±0.011 549.46±3.34
NaI2 0.136±0.0084 549.38±2.50
NaI3 0.107±0.0086 547.64±2.54
取得したデータをE = Eraw + a×(T - 200 ) で補正
補正結果 NaI1境界が時間的に一定
NaI2 の補正結果
NaI3 の補正結果
t-Q補正立ち上がりから threshold を超えるまでの時間だけTDC に記録される時間は遅くなる。⇒ その時間は E[keV] に依存 波形を三角形と近似
Δ𝑇=𝑎
√𝐸+𝑏+𝑐
で ΔT を近似
データについて
1275keVγ 線と p- ポジトロニウムの崩壊⇒ 本来は水平になるはず。
基本的な補正手法1.先ほどのデータで見た p- ポジトロニウムと 1275keVγ のイベントを抜き出す。2. E[keV] についてのプロファイルを作成。3. で fitting
Δ𝑇=𝑎
√𝐸+𝑏+𝑐
どのようにイベントを抽出するか• NaI1/NaI3 かつ 相手側がのイベントを抽出⇒ p- ポジトロニウムの崩壊イベントだけを取り出せる。
• NaI2 ヒストグラムの傾向からしてP- ポジトロニウムのイベントを捉えている。
このテールを t-Q補正に用いるただし、どのようなイベントから入っているのか分からないところは用いたくないので、線源の 1275keVと Coincidenceが取れているイベントだけを抽出した。
かつ NaI1/NaI3 がのイベントを抽出
・ NaI1
511keV と 1275keV のプロファイル
補正関数の fitting 結果a b C
NaI1 1410 ±24.5 190.3 ± 9.4 155.3 ± 0.6
NaI2 1039 ± 6.1 64.0 ± 28.2 163.5 ± 1.5
NaI3 1373 ± 48.3 212.7 ± 17.0 152.7 ± 1.2
NaI1 T-Q補正結果
NaI2 T-Q補正結果
NaI3 T-Q補正結果
NaI2 についての検証必要性配置的に、 p- ポジトロニウムの崩壊によるイベントは取れないはず。 しかし、明らかにNaI1/NaI3 と同じようなヒストグラムになっている。
寿命を測定する前に、どういうイベントなのかを評価する必要がある。
NaI1/NaI3 の Compton 散乱NaI3 の p- ポジトロニウム崩壊イベントと Coincidence をとれているイベントを抽出したときの、 NaI1 のヒストグラム
P- ポジトロニウムの崩壊イベントが 100[ns] ほど遅れたところにも観測されている。p- ポジトロニウムから出た 511keVγ が多重にCompton散乱を起こしているのでは ?
Compton 散乱の検証・の領域のエネルギーヒストグラム ・ NaI3 が p- ポジトロニウムを捉えたときのエネルギーヒストグラム
Compton 散乱のピークに似ている
また、遅れてきているイベントは非常に少ない
Compton 散乱 仮説以上のデータから非常に遅れているイベントはCompton 散乱した結果であると考える。
NaI2 に入っているイベントの解釈先ほどの Compton 散乱の仮説によれば、Compton 散乱された γ 線が NaI2 で観測されてもいい
Compton 散乱が混じる 配置により o- ポジトロニウムと p- ポジトロニウムを判別するのは困難。
τtotal の測定Compton 散乱についての解釈のデータからすべての NaI で [ns] の領域を取り出せば、 o- ポジトロニウムと pick off などによるイベントだけを取り出すことができる。・ NaI1 の全データ ・ NaI3 がのときのデータこれを除く。
τtotal の測定前ページの条件で NaI1 のデータを抽出
スピン交換反応などの 511keVγ の影響を取り除くため の領域を取り出す。
Time に関する 1次元ヒストグラムを取り出す。
で fitting する。
NaI1 の Fitting
NaI3 の Fitting
τtotal の計算結果30ns 40ns 50ns 60ns 70ns
NaI1 95.5±7.9 102±9.7 102±14 112±22 118±33
NaI3 102.8±8.9 104±11 100±13 96±15 101±23
の計算手法• 純粋な o- ポジトロニウムの寿命と今回観測できる寿命には以下の関係式がある⇒ を求めれば、が求められる。
の測定NaI3 ののときの NaI1 の E のデータを取れば p- ポジトロニウムの崩壊のスペクトルが出せる。
の測定を計算したときの領域の E のデータを取れば o- ポジトロニウム +pick off などの崩壊のスペクトルが出せる。
このうち、 pick off に対応する部分は p- ポジトロニウムの崩壊のヒストグラムと同じプロファイルになる。 また、 o- ポジトロニウムの崩壊から出る γ 線は 511keV にはならないので、 511keVγ のプロファイルは pick off によるものである。
の測定511keV のピークで高さをそろえるp- ポジトロニウムのヒストグラムが pick off のヒストグラムに対応する
二つの面積の比をとればが測定できる。
との測定Tmin 30ns 40ns 50ns 60ns 70ns
NaI10.227 0.268 0.274 0.268 0.275
124 ± 10 130 ± 13 140±19 153±30 163±46
NaI30.281 0.291 0.288 0.282 0.285
142 ± 12 146 ± 15 140 ± 18 134 ± 21 142± 32
結論• NaI1 の結果はを大きくするにしたがってが急激に大きくなることから、 Compton 散乱などの現象をうまく除外できていなかった可能性があり、結果の信ぴょう性に疑問がある。• NaI3 でもが大きいとき誤差が大きくなりデータの信ぴょう性に疑問がある。こういったことから、結論としてのときの NaI3 の値を採用し
4. 考察
考察• ROOT の解析による o-Ps の寿命への誤差伝搬• back-to-back gamma-ray の
Coincidence が取れなかった原因• TDC start の評価• その他、改善点
誤差の伝搬
22
1i
N
i i
xxqq
一般式
誤差伝搬の対象• ADC Calibration• TDC Calibration• ADC の減衰• t-Q補正 寿命 fitting (後、 pick off を評価)NaI1,NaI3各々に対して誤差の伝搬を考える。
一般式を用いて・・・
響を与えない。系統誤差はそれほど影誤差の方が支配的。であり、
では、一方、
3 1
fittingnsfitting
nsns
tqcortdct
][3.12exp
NaI56.3NaI60.222
考察• ROOT の解析による o-Ps の寿命への誤差伝搬• back-to-back gamma-ray の
Coincidence が取れなかった原因• TDC start の評価• その他、改善点
NaI3 NaI12SiOp-Psdecay
511KeV back-to-back gamma-ray が検出されない !?
back-to-back
Na22
b
なんで?• geometry• set up• o-Ps,p-Ps の生成率 ( ortho:para=3 : 1 )• 511keV gamma-ray の Compton 散乱• Ps の崩壊位置• 3 coincidence は難しそう・・・
なんで?PMT+NaI×2 Coincidence →PMT+NaI Coincidence に変更。• 511keV gamma は一応取れている。 が、一本だけ検出される event が・・・ NaI1,NaI3 の Coincidence が取れず、 511keV が一本だけ入る・・・もう一本どこ行った ? →おかしい!
NaI3 NaI12SiOp-Psdecay
511KeV back-to-back gamma-ray が検出されない !?
back-to-back
Na22
b
なんで? 511keV が一本だけ入る・・・• Compton 散乱で検出できない角度へ散乱• Accidental event ?• Ps の崩壊が 2つの NaI を結ぶ中心軸から 外れたところで起きている上 2つの event rate なんてたかが知れてる・・・
NaI3 NaI12SiOp-Psdecay
Ps の生成、崩壊位置は?の物質中の飛程・・・MeV 当り、約 2mm⇒ もっと早い段階で Ps生成?
Na22
b
b
p-Psdecay
Back-to-back
観測される gamma のほとんどが back-to-back に!
→26万 /30万( event )
考察• ROOT の解析による o-Ps の寿命への誤差伝搬• back-to-back gamma-ray の
Coincidence が取れなかった原因• TDC start の評価• その他、改善点
TDC start
Tmin [ns]=30~ 70
511keV pick off
o-Ps or 511keV Compton ( para , pick off , spin exchange )
結果は・・・Tmin 30 40 50 60 70
95.52±7.93
96.06±9.73
101.8±14.0
118.8±21.7
118.2±33.5
123.6±10.3
129.9±13.3
140.3±19.2
152.7±29.6
163.1±46.2g 3
• NaI1
total
結果は・・・Tmin 30 40 50 60 70
102.76±8.87
103.5±11.0
99.7±12.7
96.1±15.4
101.4±23.0
143.0±12.3
146.0±15.4
140.0±17.8
133.9±21.4
141.7±32.2g 3
• NaI3
total
結果は・・・• NaI3 からは・・・ ortho 以外の効果が見られず、時間に対する関係はほぼないと考えられる。• NaI1 は・・・• Tmin↘ なら、寿命↘、↗なら寿命↗• Tmin が早い領域では、 pick off , spin exchange
effect が大きい。逆に、遅い領域では、 Compton 散乱が支配的になっている?
反省• 試料のシリカパウダーが多すぎたので、もっと少ないほうが pick-off などを減らせる。• Compton 散乱らしきものが原因で NaI2 が解析に使えなかったので、セットアップの工夫をすべき。• 解析する部分の TDC の値が START+30ns~と短かったので、 TDC の Delay の調整を工夫したほうが良い。
ご清聴ありがとうございました。
僕たち何なの( ns) ?