2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動...

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2011年1月 仙台管区気象台 2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動 ・2月27日(日本時間)にチリ中部沿岸で発生した地震(Mw8.8)により津波を観測。 ・3月14日福島県沖の地震(M6.7)により震度5弱を観測。 ・6月13日福島県沖の地震(M6.2)により震度5弱を観測。 ・8月14日(日本時間)にマリアナ諸島南方で発生した地震(Mw6.9)により小さな津波を観測。 ・9月29日福島県中通りの地震(M5.7)により震度4を観測、現地調査により震央付近では震度5弱相当 と推定。 ・12月22日父島近海の地震(M7.4)により小さな津波を観測。 ・「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震活動は収まってきている。 ・宮城県沖の地震活動は概ね平常からやや活発なレベルで経過。 1.2010年(平成22年)の概況…p.3~6 2010年の1年間に東北地方とその周辺(p.3図1の範囲)では39,497回の地震が観測された。このうち、 地震の規模(マグニチュード、以下M)が4.0以上の地震は141回(2009年は153回)あった。最もMの大き かった地震は3月14日に発生した福島県沖のM6.7(深さ40㎞、最大震度5弱)であった。 また、東北地方で震度1以上を観測した地震は394回(2009年は350回)、震度3以上を観測した地震は47 回(同30回)、震度4以上を観測した地震12回(同9回)であった。 2010年に東北地方で観測した津波は3回(2009年は1回)あった。 「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震の数は減少してきているが、時折震度1以上を観測す る地震が発生する(2010年は43回)など、余震活動は継続している。 2.東北地方に影響を及ぼした主な地震…p.7~14 (1)チリ中部沿岸の地震による津波(2月28日)…p.7~8 2月27日15時34分(日本時間)にチリ中部沿岸でMw8.8(気象庁によるモーメントマグニチュード)の地 震が発生した。この地震により津波が発生し、日本を含む太平洋沿岸諸国で津波を観測した。日本ではこの 津波により住家浸水、養殖施設の被害等が発生した。仙台管区気象台と盛岡地方気象台は気象庁機動調査班 (JMA-MOT)を派遣し、津波の状況の現地調査を実施した。現地調査により、海岸付近の建物に残された痕 跡などから各地で約1~2mの高さの津波があったと推定した。 (2)福島県沖の地震(3月14日)…p.9 3月14日17時08分に福島県沖の深さ40kmでM6.7の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震により軽 傷者1人、住宅一部破損2棟などの被害があった(総務省消防庁による)。この地震の発震機構は西北西- 東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。 (3)福島県沖の地震(6月13日)…p.10 6月13日12時32分に福島県沖の深さ40kmでM6.2の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震により土 砂崩落1か所の被害があった(総務省消防庁による)。この地震は太平洋プレートと陸のプレートの境界付 近で発生した。発震機構(CMT解)は北北西-南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。 (4)マリアナ諸島南方の地震による津波(8月14日)…p.11 8月14日06時19分(日本時間)にマリアナ諸島南方でMw6.9(気象庁によるモーメントマグニチュード) の地震が発生した。この地震の発震機構(気象庁CMT解)は北北西-南南東方向に張力軸を持つ正断層型で あった。この地震により、伊豆・小笠原諸島、東北地方から九州地方の太平洋沿岸、沖縄県で小さな津波を 観測したところがあった。 - 1 -

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Page 1: 2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動 ・2月27日(日本時間)にチリ中部沿岸で発生した地震(Mw8.8)により津波を観測。

2011年1月

仙台管区気象台

2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動 ・2月27日(日本時間)にチリ中部沿岸で発生した地震(Mw8.8)により津波を観測。

・3月14日福島県沖の地震(M6.7)により震度5弱を観測。

・6月13日福島県沖の地震(M6.2)により震度5弱を観測。

・8月14日(日本時間)にマリアナ諸島南方で発生した地震(Mw6.9)により小さな津波を観測。

・9月29日福島県中通りの地震(M5.7)により震度4を観測、現地調査により震央付近では震度5弱相当

と推定。

・12月22日父島近海の地震(M7.4)により小さな津波を観測。

・「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震活動は収まってきている。

・宮城県沖の地震活動は概ね平常からやや活発なレベルで経過。

1.2010年(平成22年)の概況…p.3~6

2010年の1年間に東北地方とその周辺(p.3図1の範囲)では39,497回の地震が観測された。このうち、

地震の規模(マグニチュード、以下M)が4.0以上の地震は141回(2009年は153回)あった。最もMの大き

かった地震は3月14日に発生した福島県沖のM6.7(深さ40㎞、最大震度5弱)であった。

また、東北地方で震度1以上を観測した地震は394回(2009年は350回)、震度3以上を観測した地震は47

回(同30回)、震度4以上を観測した地震12回(同9回)であった。

2010年に東北地方で観測した津波は3回(2009年は1回)あった。

「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震の数は減少してきているが、時折震度1以上を観測す

る地震が発生する(2010年は43回)など、余震活動は継続している。

2.東北地方に影響を及ぼした主な地震…p.7~14

(1)チリ中部沿岸の地震による津波(2月28日)…p.7~8

2月27日15時34分(日本時間)にチリ中部沿岸でMw8.8(気象庁によるモーメントマグニチュード)の地

震が発生した。この地震により津波が発生し、日本を含む太平洋沿岸諸国で津波を観測した。日本ではこの

津波により住家浸水、養殖施設の被害等が発生した。仙台管区気象台と盛岡地方気象台は気象庁機動調査班

(JMA-MOT)を派遣し、津波の状況の現地調査を実施した。現地調査により、海岸付近の建物に残された痕

跡などから各地で約1~2mの高さの津波があったと推定した。

(2)福島県沖の地震(3月14日)…p.9

3月14日17時08分に福島県沖の深さ40kmでM6.7の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震により軽

傷者1人、住宅一部破損2棟などの被害があった(総務省消防庁による)。この地震の発震機構は西北西-

東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

(3)福島県沖の地震(6月13日)…p.10

6月13日12時32分に福島県沖の深さ40kmでM6.2の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震により土

砂崩落1か所の被害があった(総務省消防庁による)。この地震は太平洋プレートと陸のプレートの境界付

近で発生した。発震機構(CMT解)は北北西-南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

(4)マリアナ諸島南方の地震による津波(8月14日)…p.11

8月14日06時19分(日本時間)にマリアナ諸島南方でMw6.9(気象庁によるモーメントマグニチュード)

の地震が発生した。この地震の発震機構(気象庁CMT解)は北北西-南南東方向に張力軸を持つ正断層型で

あった。この地震により、伊豆・小笠原諸島、東北地方から九州地方の太平洋沿岸、沖縄県で小さな津波を

観測したところがあった。

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Page 2: 2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動 ・2月27日(日本時間)にチリ中部沿岸で発生した地震(Mw8.8)により津波を観測。

(5)福島県中通りの地震(9月29日)…p.12~13

9月29日16時59分に福島県中通りの深さ8kmでM5.7の地震(最大震度4)が発生した。この地震により、

住家一部破損21棟(福島県天栄村)などの被害があった(総務省消防庁による)。福島地方気象台は気象庁

機動調査班(JMA-MOT)を派遣し、現地調査を実施した。現地調査の結果、震源に近いところでは局所的に

震度5弱相当の揺れがあったと推定した。この地震は地殻内で発生した。発震機構は東西方向に圧力軸を持

つ型であった。この地震の後、M4.0を超える余震が5回発生するなど、余震活動は活発であった。最大余

震は9月30日01時23分のM4.6の地震(最大震度3)である。

(6)父島近海の地震による津波(12月22日)…p.14

12月22日02時19分に父島近海でM7.4の地震が発生し、東京都小笠原村で震度4を観測したほか、東北地

方でも岩手県から福島県にかけて震度2を観測した。この地震により、太平洋沿岸を中心に東北地方の一部

及び関東地方南部から沖縄地方にかけて津波を観測した。

3.「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震活動…p.15

2008年6月14日に発生した「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」(M7.2、最大震度6強)の余震

の数は減少してきているが、時折震度1以上を観測する地震が発生しており、余震活動は継続している。

4.宮城県沖の地震活動(毎月の活動評価のまとめ)…p.16

宮城県沖地震が想定される震源域とその周辺海域での地震活動は、概ね、平常からやや活発なレベルで経

過した。

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東北地方とその周辺の地震(2010年1月1日~12月31日)

図1 震央分布図及び各領域の断面図 (M全て、深さ0~250km)

断面図は震央分布図の各領域の長辺に投影している。

太平洋プレート及び陸のプレート(ハッチ領域)は地震発生状況を考慮して描いた大まかなもの。

は大まかな陸地の位置を示す。

陸のプレート

太平洋プレート

山形・宮城県付近の断面図(E-F投影) 福島県付近の断面図(G-H投影)

青森県付近の断面図(A-B投影) 秋田・岩手県付近の断面図(C-D投影)

FG

震央分布図

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図2 M4.0以上の地震の震央分布図

吹き出しを付した地震はM5.0以上および震度4以上を観測したもの。

M4.0以上の地震の震央分布(2010年1月1日~12月31日)

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東北地方で震度4以上を観測した地震の表

2010年に東北地方で震度4以上を観測した地震は12回あった。このうち、震度5弱を観測した地震が2回

あった。2010年に東北地方で観測した最大の震度は震度5弱であった。

発生日時 震央地名 北緯 東経 深さ M 最 大 震 度

1月24日

16時19分 青森県東方沖 41度 12.5分 141度 38.7分 14km 4.5 4 青森県東通村

1月30日

01時43分 宮城県北部 38度 31.6分 141度 03.9分 15km 4.0 4 宮城県大崎市

1月30日

13時29分 宮城県南部 38度 03.5分 140度 40.1分 9km 4.1 4 宮城県蔵王町

3月13日

21時46分 福島県沖 37度 36.8分 141度 28.3分 78km 5.5 4

宮城県色麻町,栗原市,大崎市,

名取市,角田市,岩沼市,蔵王町,

大河原町,川崎町,丸森町,亘理

町,山元町,石巻市,塩竈市,大衡

村,山形県村山市,東根市,中山

町,米沢市,福島県福島市,郡山

市,白河市,須賀川市,二本松市,

桑折町,国見町,川俣町,鏡石町,

田村市,福島伊達市,本宮市,い

わき市,相馬市,福島広野町,楢

葉町,川内村,大熊町,双葉町,葛

尾村,新地町,飯舘村,南相馬市

3月14日

17時08分 福島県沖 37度 43.4分 141度 49.0分 40km 6.7 5弱 福島県楢葉町

6月13日

12時32分 福島県沖 37度 23.7分 141度 47.7分 40km 6.2 5弱 福島県相馬市,浪江町

6月28日

06時03分 苫小牧沖 41度 37.5分 141度 49.9分 57km 5.1 4 青森県東通村

7月04日

04時33分 岩手県内陸南部 39度 01.4分 140度 54.7分 7km 5.2 4 岩手県奥州市

7月05日

06時55分 岩手県沖 39度 39.4分 142度 39.1分 34km 6.4 4

岩手県陸前高田市,大槌町,盛岡

市,矢巾町,宮城県気仙沼市,涌

谷町,栗原市,登米市,石巻市

8月10日

14時50分 三陸沖 39度 20.9分 143度 29.6分 30km 6.3 4 宮城県栗原市

9月13日

14時47分 青森県東方沖 41度 27.3分 142度 07.3分 63km 5.8 4

青森県八戸市,野辺地町,青森南

部町,階上町,東通村

岩手県二戸市

9月29日

16時59分 福島県中通り 37度 17.1分 140度 01.5分 8km 5.7 4

福島県郡山市,白河市,須賀川

市,泉崎村,下郷町

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東北地方の震度観測地点で震度1以上を観測した地震の月別・最大震度別回数表

2010年に東北地方で震度1以上を観測した地震は394回で、2009年(350回)より若干回数が多かった。

2008年6月14日に発生した「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震の数は減少してきているが、

時折震度1以上を観測する地震が発生するなど、余震活動は継続している。

宮城県内の震度観測地点で震度1以上を観測した地震の月別・最大震度別回数表

2010年に宮城県内で震度1以上を観測した地震は161回で、2009年(173回)より若干少なかった。このう

ち、「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震により宮城県内で震度1以上を観測したのは33回

(2009年は36回)であった。

震度

月 1 2 3 4 5弱 5強 6弱 6強 7 合計 2009年

1月 13 7 1 3 24 36

2月 21 6 2 29 36

3月 19 7 1 1 1 29 18

4月 16 8 2 26 21

5月 23 5 1 29 25

6月 19 4 5 1 1 30 37

7月 21 7 1 2 31 26

8月 28 10 3 1 42 34

9月 38 7 7 2 54 32

10月 44 12 6 62 29

11月 12 5 5 22 24

12月 8 7 1 16 32

合 計 262 85 35 10 2 394 350

2009年 227 93 21 9

震度

月 1 2 3 4 5弱 5強 6弱 6強 7 合計 2009年

1月 6 4 2 12 15

2月 12 2 1 15 20

3月 9 3 2 14 12

4月 14 2 1 17 10

5月 11 1 12 9

6月 10 3 1 1 15 21

7月 7 1 2 1 11 11

8月 15 3 1 1 20 19

9月 8 3 2 13 12

10月 8 5 13 12

11月 5 1 2 8 14

12月 7 4 11 18

合 計 112 32 10 7 161 173

2009年 128 35 8 2

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Page 7: 2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動 ・2月27日(日本時間)にチリ中部沿岸で発生した地震(Mw8.8)により津波を観測。

2月28日チリ中部沿岸の地震による津波

2010年2月27日15時34分(日本時間)、チリ中部沿岸でMw8.8(気象庁によるモーメントマグニチュー

ド)の地震が発生した。この地震の発震機構(気象庁CMT解)は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、

南米プレートとその下に沈みこむナスカプレートの境界で発生した地震であった。

この地震により津波が発

生し、震源に近いチリの検

潮所で2mを超える津波を

観測するなど、日本を含む

太平洋沿岸諸国で津波を観

測した。2月28日14時頃に

は日本の太平洋沿岸に津波

が到達し、高いところでは

1mを超える津波を観測し

た。

この地震と津波により、

チリでは死者528人以上の

被害が発生した(2010年3

月8日現在、被害は米国地

質調査所[USGS]による)。

日本でも住家浸水、養殖施

設の被害等が発生した

(2010年3月10日現在、内

閣府による)。

震央分布図(1960年1月1日~2010年2月28日、

深さ0~200㎞、M≧5.0)

震源は米国地質調査所[USGS]、今回の地震のMwは

気象庁による。

検潮所で観測された津波の高さ(速報値)

国内の観測値は気象庁、海外の観測値は西海岸/

アラスカ津波警報センター(WC/ATWC)による読

み取り値。

日本国内で観測された津波の最大の高さ

観測値は気象庁による読み取り値。観測点には

内閣府、国土交通省港湾局、海上保安庁、国土

地理院、愛知県、四日市港管理組合、兵庫県、

宮崎県、日本コークス工業株式会社の検潮所を

含む。

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Page 8: 2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動 ・2月27日(日本時間)にチリ中部沿岸で発生した地震(Mw8.8)により津波を観測。

この地震に対し、気象庁は2月28日09時33

分に津波警報等を発表した。東北地方には青

森県太平洋沿岸から宮城県沿岸にかけて「大

津波」の津波警報、福島県沿岸、青森県日本

海沿岸に「津波」の津波警報、青森県陸奥湾

に津波注意報を発表した。

この津波では第一波到達から数時間後に

「最大の高さ」を観測している。また、2月

28日午後から3月1日早朝にかけて1m近い

津波が繰り返し押し寄せた。

仙台管区気象台と盛岡地方気象台は3月1

日から2日にかけて気象庁機動調査班(JMA-

MOT)を派遣し、現地調査を実施した。海岸

付近の建物に残された痕跡などを分析した結

果から、各地で約1~2mの高さの津波があっ

たと推定した。

2月28日09時33分発表の津波警報・津波注意報

赤:津波警報(大津波) 橙:津波警報(津波)

黄:津波注意報

検潮所(●)での津波の観測値と現地調査地点

(●)で推定した津波の高さ

(地震・火山月報(防災編)2010 年2、3月号より再構成)

国内の主な検潮所で観測した津波

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Page 9: 2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動 ・2月27日(日本時間)にチリ中部沿岸で発生した地震(Mw8.8)により津波を観測。

平成 22 年3月 地震・火山月報(防災編)

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3月 14 日 福島県沖の地震(プレート境界の地震) 震央分布図(1997 年 10 月1日~2010 年3月 31 日、

M≧2.5、深さ 20~120km) 2010 年3月1日以降の地震を濃く表示

2010年3月 14日 17時 08分に福島県沖の

深さ 40km で M6.7 の地震(最大震度5弱)が

発生した。この地震により軽傷者 1人、住宅

一部破損2棟などの被害があった(総務省消

防庁による)。

この地震の発震機構は西北西-東南東方

向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレー

トと陸のプレートの境界で発生した地震で

ある。余震は 14 日 17 時 52 分に M3.8 の地震

(最大震度1)を観測したものの、活動は収

まってきている。

1997 年 10 月以降の活動を見ると、今回の

地震の震源付近(領域b)は、M4~6程度

の活動が普通に見られるところで、2003 年

3月3日には M5.9(最大震度4)の地震が

発生している。

領域a内の断面図(A-B投影)

震央分布図(1923 年8月1日~2010 年3月 31 日、 深さ0~100km、M5.0 以上)

2010 年3月 1日以降の地震を濃く表示

1923 年8月以降の活動を見ると、今回の地

震の震央付近(領域c)では発震機構の似た

M6.4~6.7 の地震が 21~25 年に 1 回の間隔で

発生している。今回の地震は前回の地震の 25

年後に発生しており、これまでの4回の地震

の中で最大規模であった。

領域c内のM-T図

A B

今回の地震

今回の地震

領域b内のM-T図及び回数積算図

3月 10 日~31 日、M1.5 以上

最大余震

最大余震

CMT CMT

CMTCMT

今回の地震

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JMASNJISING
長方形
JMASNJISING
長方形
JMASNJISING
テキストボックス
(地震・火山月報(防災編)2010年3月号より)
Page 10: 2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動 ・2月27日(日本時間)にチリ中部沿岸で発生した地震(Mw8.8)により津波を観測。

平成 22 年6月 地震・火山月報(防災編)

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6月 13 日 福島県沖の地震

2010 年6月 13日 12時 32分に福島県沖の深さ 40km で M6.2 の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震により土砂崩落 1か所の被害があった(総務省消防庁による)。 この地震は太平洋プレートと陸のプレー

トの境界付近で発生した。発震機構(CMT 解)は、北北西-南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。震度1以上を観測した余震は発生しておらず、余震活動は収まりつつある。 1997 年 10 月以降の活動を見ると、今回の地震の震源付近(領域b)は、M5~6程度の地震が見られるところで、最近では 2007年 11 月 26 日に M6.0 の地震(最大震度4)が発生している。

領域a内の断面図(A-B投影)

震央分布図(1923 年8月1日~2010 年6月 30 日、 深さ0~100km、M≧6.0)

1923 年8月以降の活動を見ると、今回の地震の震央周辺(領域c)では、1938 年 11 月5日の M7.5を含む地震活動(福島県東方沖地震)や、1987 年2月6日の M6.7 を含む地震活動など、M6を超える地震が発生している。

領域c内のM-T図

A B

今回の地震

6月 10 日~30 日、M≧1.5

今回の地震

領域b内のM-T図及び回数積算図

a A

今回の地震

震央分布図(1997 年 10 月~2010 年6月 30 日、 深さ 20~120km、M≧2.5)

2010 年6月以降の地震を濃く表示

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(地震・火山月報(防災編)2010年6月号より)
Page 11: 2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動2010年(平成22年)の東北地方の主な地震活動 ・2月27日(日本時間)にチリ中部沿岸で発生した地震(Mw8.8)により津波を観測。

8月 14 日マリアナ諸島南方の地震による津波

2010年8月14日06時19分(日本時間)、マリアナ諸島南方でMw6.9(気象庁によるモーメントマグニチュ

ード)の地震が発生した。この地震の発震機構(気象庁CMT解)は北北西-南南東方向に張力軸を持つ正断

層型であった。

気象庁は08時17分に日本の太平洋沿岸に対して津波予報(若干の海面変動、被害の心配なし)を発表した。

今回の地震により、伊豆・小笠原諸島、東北地方から九州地方の太平洋沿岸、沖縄県で小さな津波を観測

したところがあった。

(地震・火山月報(防災編)2010 年8月号より再構成)

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平成 22 年9月 地震・火山月報(防災編)

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震央分布図(1997 年 10 月 1 日~2010 年 10 月6日、 深さ0~20km、M≧1.5)

2010 年9月以降の地震を濃く表示

9月 29 日 福島県中通りの地震

2010 年9月 29 日 16 時 59 分に福島県中通りの深さ8km で M5.7 の地震(最大震度4)が発生した。この地震により、住家一部破損 21 棟(福島県天栄村)などの被害があった(総務省消防庁による)。福島地方気象台はこの地震について現地調査を実施し、震源に近いところで局所的に震度5弱相当の揺れがあったと推定した(詳細は次ページ)。 この地震は地殻内で発生した。発震機構は東西方向に圧力軸を持つ型であった。今回の地震の震源

付近では、この地震発生の約5時間前の 12 時 01 分に M4.8 の地震(最大震度3)が発生した。余震活動は M4.0 を超える地震を5回観測するなど、3日程度活発であった。最大余震は9月 30 日 01 時23 分の M4.6 の地震(最大震度3)である(10 月6日現在)。

1997 年 10 月以降の活動を見ると、今回の地震の震源付近(領域a)は M4~5程度のまとまった地震活動が見られるところで、1998 年8月3日には M5.2 の地震(深さ8km、最大震度3)が発生している。

震央分布図(1923 年8月1日~2010 年 10 月6日、 深さ0~60km、M≧4.0) 1923 年8月以降の活動を見ると、今回の

地震の震央付近(領域b)は M5~6程度の

地震が時々発生しているところで、最大は

1943 年8月 12 日の M6.2 の地震(田島地震)

である。この地震により震央付近で負傷者が

出たほか、土蔵・住家の壁落ちや亀裂などの

被害があった(「最新版 日本被害地震総覧」

による)。

領域b内のM-T図

(9月 29 日~10 月6日、M≧1.0)

領域a内のM-T図及び回数積算図

今回の地震

今回の地震

田島地震

は評価された活断層を示す(地震調査研究推進本部による)

会津盆地東縁断層帯

会津盆地西縁断層帯

会津盆地東縁断層帯 会津盆地西縁断層帯

関谷断層

関谷断層

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平成 22 年9月 地震・火山月報(防災編)

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9月 29 日の福島県中通りの地震の現地調査

最大震度は震度4であったが、福島県天栄村で被害が出ているとの情報が得られ、また天栄村が避難

勧告を発令していたことから、地震動の状況等を把握するため、福島地方気象台は9月 30 日に気象庁

機動調査班(JMA-MOT)を天栄村へ派遣し、現地調査を実施した。

田良尾地区では、湯本小学校の屋根瓦の破損やガラス・壁のひび、河内川堤防の盛土部分の亀裂、国

道 118 号線の路面の亀裂(写真左)などの被害が認められた。一部の木造住家や土蔵・石蔵では瓦の落

下や破損が認められ、重い家具のずれや食器等が落下した住宅もあった。また、動くのが困難と感じた

人もいた。

湯本地区では、湯本体育館の軒裏ボードの落下、高齢者コミュニティセンターの棚の食器類の破損(写

真右)、墓石のずれや転倒等の被害のほか、グラス等が落下した住宅があった。

震源に近い田良尾地区と湯本地区の一部では、建物の被害(壁のひび)や道路の亀裂などが見られた

ことから、場所によっては震度5弱に相当する揺れがあったものと推定される。

なお、福島地方気象台は調査結果について、9月 30 日及び 10 月7日に報道発表を行った。

国道 118 号線の路面の亀裂 高齢者コミュニティセンターの食器類の破損

田良尾地区 湯本地区

震央

郡山市湖南町(震度4)

南会津町田島(震度3) 白河市大信(震度3)

天栄村下松本(震度3)

須賀川市長沼支所(震度4)

須賀川市岩瀬支所(震度4)

下郷町高陦(震度4)

下郷町塩生(震度4)

震度計の所属 :気象庁 :地方公共団体 :(独)防災科学技術研究所

国道 118 号

福島県 地図領域

被害写真の例

現地調査実施地区と震央周辺の震度観測点の位置

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(地震・火山月報(防災編)2010年9月号より)
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12月22日父島近海の地震とその津波

12月22日02時19分に父島近海でM7.4の地震(最大震度4)が発生した。発震機構(CMT解)は北東-南西

方向に張力軸を持つ正断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。

気象庁は02時28分に小笠原諸島に津波警報(津波)を、伊豆諸島から奄美諸島・トカラ列島にかけての太

平洋沿岸に津波注意報を発表した。この地震により、東北地方の一部及び関東地方南部から沖縄地方にかけ

ての太平洋沿岸で津波を観測した。

(気象庁発表資料より)

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図4 図3の領域a内の地震活動経過図

図3 平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震の余震域周辺の震央分布図 期間:2008年6月1日~2010年12月31日、M2.0以上、深さ20km以浅 灰色○は2009年12月31日まで、赤色○は2010年1月1日以降の震央を示す 吹き出しは2010年のM4.0以上と2008年の本震、活断層は地震調査委員会による

図5 図3の領域a内の月別地震回数(棒グラフ、左縦軸)および積算地震回数(折れ線、右縦軸)

「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震活動

2010年に「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震により震度1以上を観測したのは43回(2009

年は50回)あった。このうち最大のものは7月4日の岩手県内陸南部の地震(M5.2)で、岩手県奥州市で

震度4を観測した。

領域a

北上低地西縁断層帯

横手盆地東縁断層帯

(回) (回)

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2010年の宮城県沖の地震活動(毎月の活動評価まとめ) 仙台管区気象台

の領域は想定されている宮城県沖地震の震源域(地震調査委員会による)

領域aの地震活動経過・回数積算図

領域aの月別 地震回数

領域bの地震活動経過・回数積算図

領域bの月別地震回数

領域cの地震活動経過・回数積算図

領域cの月別地震回数

2010年の地震活動評価(毎月の活動評価のまとめ) 領域a:M2.5以上の地震は123回(2009年は89回)あった。地震活動は3月までは「やや活発」なレ

ベルであったが、その後7月にかけて「やや低調」から「活発」へと変動し、8月以降は概

ね「平常」で経過した。

領域b:M2.5以上の地震は49回(2009年は42回)あった。地震活動は「平常」レベルで経過した

が、11月に一時的に「活発」となった。

領域c:M2.5以上の地震は106回(2009年は89回)あった。地震活動は「平常」レベルから「やや活

発」なレベルを繰り返しながら経過した。

震央分布図(2010年1月~2010年12月、深さ0~75km、M2.5以上)

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