1.九州ブロックの現状と課題 - qsr.mlit.go.jp · 8 ②危機管理体制の充実...

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1 1.九州ブロックの現状と課題 自然災害の頻発の影響と豊かな自然環境の保全 (1) 九州地方は 我が国でも災害の多い地域であり 自然災害への対応が必要である また、豊かな自然環境を良好な状態で次世代に継承していくことが求められる。 ①災害に強い国土づくり 九州は、梅雨時に集中豪雨が多発するとともに、全国と比較して勢力の強い台風が 多く接近する台風常襲地帯であることから、河川の氾濫、高潮被害、土砂災害等自然 災害の発生が非常に多い。 また、地形が急峻で活火山が多いことや南九州のシラス等特殊土壌地帯が分布して いることも、災害を引き起こす一因となっている。 九州ブロックの水害による被害は全国と比較しても非常に多く、また、土砂災害は 全国で発生するうちの約6割が九州で発生しており、さらに、降雨による道路の事前 通行規制で頻繁に孤立する地域が発生している。 したがって、九州においては、河川の氾濫、高潮被害、土砂災害等の自然災害に対 する対策が必要である。 写真 遠賀川出水状況 (平成15年7月) 資料)国土交通省九州地方整備局

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1.九州ブロックの現状と課題

自然災害の頻発の影響と豊かな自然環境の保全(1)

、 、 。九州地方は 我が国でも災害の多い地域であり 自然災害への対応が必要である

また、豊かな自然環境を良好な状態で次世代に継承していくことが求められる。

①災害に強い国土づくり

九州は、梅雨時に集中豪雨が多発するとともに、全国と比較して勢力の強い台風が

多く接近する台風常襲地帯であることから、河川の氾濫、高潮被害、土砂災害等自然

災害の発生が非常に多い。

また、地形が急峻で活火山が多いことや南九州のシラス等特殊土壌地帯が分布して

いることも、災害を引き起こす一因となっている。

九州ブロックの水害による被害は全国と比較しても非常に多く、また、土砂災害は

全国で発生するうちの約6割が九州で発生しており、さらに、降雨による道路の事前

通行規制で頻繁に孤立する地域が発生している。

したがって、九州においては、河川の氾濫、高潮被害、土砂災害等の自然災害に対

する対策が必要である。

写真 遠賀川出水状況 (平成15年7月)

資料)国土交通省九州地方整備局

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写真 熊本県水俣市宝川内の土石流災害(平成15年7月)

写真 御笠川の出水によるJR博多駅前の浸水状況 (平成15年7月)

資料)国土交通省九州地方整備局

資料)国土交通省九州地方整備局

3

写真 台風による北九州港の高潮被害状況(平成11年9月)

資料)国土交通省九州地方整備局

資料)国土交通省九州地方整備局 資料)国土交通省九州地方整備局

写真 国道3号鹿児島市小山田地区(平成5年8月) 写真 国道10号鹿児島市花倉地区(平成5年8月)

4

図 特殊土壌分布状況

図 地域別台風上陸数( ~ )1971 2000

資料 (財)日本気象協会九州支社とりまとめ資料)

資料)日本地誌

5

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

北海道

東北

関東

北陸

中部

近畿

中国

四国

九州

沖縄

(億円)

25,979

3,158

15,271 15,29417,154

9,951

465

13,840

4,156

8,289

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

九州 北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 沖縄

(カ所)

図 過去 ヶ年の水害被害額( ~ の累計)10 H4 H13

図 急傾斜地崩壊危険箇所Ⅰ(H14年度)

資料)H15砂防便覧

資料)国土交通省河川局「水害統計」

6

図 全国の土砂災害発生件数( ~ )S62 H8

資料)全国地すべりがけ崩れ対策協議会

7

近年、東南海・南海地震等の大規模地震による九州への津波等の影響が懸念される

ことから地震防災の対策が必要である。

図 事前通行規制実施に伴う孤立地域分布図

図 海岸における津波の高さの最大値分布

資料)国土交通省 TURN 道の新ビジョン

資料)中央防災会議「東南海、南海地震に関する専門調査会」資料

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②危機管理体制の充実

頻発する集中豪雨と市街地の拡大による水害リスクの増大等のため、河川改修等の

ハード整備のみによっては自然災害の被害を回避できないことから、地域住民等への

。河川や道路等に関する情報の提供や避難体制の確立などソフト面の対策が必要である

16

0

30 7

07

2

40 6

017

4

32

11

2

30

0

5

10

15

20

25

(年間回数)

H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14

100mm/h以上

75mm/h~100mm/h

図 九州における近年( ~ )の集中豪雨発生状況H5 H14

図 市街地の拡大(筑後川・久留米市)

資料)国土交通省九州地方整備局

資料)国土交通省九州地方整備局

9

③安全で安心な水の確保

人口の集中している北部九州において、人口あたりの降水量が少ない上に貯留施設

等が充分でないことから渇水が頻発し、市民生活に大きな影響を及ぼすことが度々あ

る。

特に筑後川水系では、概ね2年に1回の割合で渇水調整が実施されるなど、利水安

全度の向上が必要である。

図 地域別人口あたり降水量

写真 渇水状況(寺内ダム)

資料)国土交通省九州地方整備局

資料)国土交通省九州地方整備局

人 口 1人 あ た り降 水 量

北 海 道

東 北

関 東

東 海

北 陸

近 畿

中 国

四 国

北 九 州

南 九 州

沖 縄

全 国5 , 0 3 1

3 , 6 9 8

1 2 , 2 5 2

3 , 9 9 1

9 , 6 2 1

7 , 3 5 7

2 , 3 9 6

9 , 8 7 2

5 , 3 1 0

1 , 3 9 5

9 , 3 1 4

1 7 , 0 8 6

0 5 , 0 0 0 1 0 , 0 0 0 1 5 , 0 0 0 2 0 , 0 0 0

(m 3 / 年 ・人 )

北 海 道

東 北

関 東

東 海

北 陸

近 畿

中 国

四 国

北 部 九 州

南 部 九 州

沖 縄

全 国

人 口 1人 あ た り降 水 量

北 海 道

東 北

関 東

東 海

北 陸

近 畿

中 国

四 国

北 九 州

南 九 州

沖 縄

全 国

北 海 道

東 北

関 東

東 海

北 陸

近 畿

中 国

四 国

北 九 州

南 九 州

沖 縄

全 国5 , 0 3 1

3 , 6 9 8

1 2 , 2 5 2

3 , 9 9 1

9 , 6 2 1

7 , 3 5 7

2 , 3 9 6

9 , 8 7 2

5 , 3 1 0

1 , 3 9 5

9 , 3 1 4

1 7 , 0 8 6

0 5 , 0 0 0 1 0 , 0 0 0 1 5 , 0 0 0 2 0 , 0 0 0

(m 3 / 年 ・人 )

北 海 道

東 北

関 東

東 海

北 陸

近 畿

中 国

四 国

北 部 九 州

南 部 九 州

沖 縄

全 国

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④陸・海の交通安全

近年、九州における交通死亡事故件数は減少傾向にあるが、一方で死傷事故件数は

増加傾向にあり年間約11万件に達している。また、交通死亡事故死者数のうち65

歳以上の高齢者が占める割合が増加する傾向で全体の約4割に達しており、このうち

事故要因の半数は「歩行中」の事故である。

このため、交差点改良、歩道整備等の交通事故対策を実施する必要がある。

図 九州における交通死傷事故件数と交通死亡事故件数の推移

図 九州における交通死亡事故死者数の年代別構成

資料)交通事故統計データ

資料)交通事故統計データ

70,000

75,000

80,000

85,000

90,000

95,000

100,000

105,000

110,000

115,000

H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14800

850

900

950

1,000

1,050

1,100

交通死傷事故件数交通死亡事故件数

交通死亡事故件数

交通死傷事故件数

(件) (件)

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九州は、国際海峡である対馬海峡や大隅海峡の他、外海から瀬戸内海に至る関門海

峡等重要な海上交通路に囲まれている。また、九州周辺海域は好漁場であり、海上交

通は輻輳し、海難が多発する海域となっており、航行船舶の安全性の確保等が必要で

ある。

図 九州における交通事故死者数 年齢層別状態別構成比( )H14

681

559 569607

568539

635708

661690

0

100

200

300

400

500

600

700

800

93 94 95 96 97 98 99 00 01 02年

隻数

図 九州周辺海域の海難発生数の推移

資料)海上保安庁

29%

68%

57%

19%

3%

12%

10%

2%

6%

14%

8%

12%

13%

3%

6%

15%

48%

3%

18%

53%

0%

0%

1%

0%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

15歳以下

16~24歳

25~64歳

65歳以上

年齢

比率(%)

自動車乗車中

自動二輪乗車中

原付乗車中

自転車乗用中

歩行中 その他

資料)交通事故統計データ

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⑤美しく良好な環境の保全と創造

九州は、温暖な気候と、世界最大のカルデラを有する阿蘇山や世界遺産に登録され

た屋久島など、豊かで美しい自然に恵まれている。

全国の国立公園28公園、国定公園55公園のうち、4つの国立公園と9つの国定

公園が九州に広がり、自然公園面積も全国の約13%を占める。

また 「棚田」や「里山」などそこに暮らす人々との関わりの中で守り育まれてきた、

自然も多く残されており、これらを良好な状態で次世代に継承していく必要がある。

■1人あたりの自然公園面積が広い九州■九州各地に広がる国立公園や国定公園

写真 阿蘇 草千里(熊本県)

図 1人当たりの自然公園面積

図 九州の国立公園・国定公園

資料)国土交通省九州地方整備局

資料)日本の統計

資料)熊本県 資料 (社)鹿児島県観光連盟)

写真 屋久島 縄文杉(鹿児島県)

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九州の河川の多くは良好な自然環境・景観を有し、人々が自然にふれあうことので

きる貴重な空間としての役割を持っているが、一部の河川において、治水を重視した

ことにより、河川環境への配慮が十分ではなかった事例もあり、良好な河川環境を保

全・再生することが必要である。

写真 棚田(田染荘:大分県豊後高田市)

写真 コンクリートで固められた河川

■治水を重視してきたため、コンクリートで固められ、人々や生物を遠ざけてきた。

資 料 ) 北 九 州 市

14

都市の景観は、電柱・電線等により景観を損ねている状況が多く、電線類の地中化

等の対策が必要である。さらに、沿道の緑化など積極的な景観形成を推進することが

必要である。

九州地域の河川や海域における水質に関する環境基準の達成率は、河川(BOD)

で88%、海域では(COD)で76% (窒素)80% (りん)79%である。こ、 、

のうち海域の環境基準未達成地点の中で、有明海や八代海等の閉鎖性水域については

富栄養化に伴う水質悪化が顕著となっている。

また、閉鎖性水域は全体的に汚水処理整備率が低い状況であるが、汚水処理整備率

が比較的高い博多湾でも環境基準は達成されていないことから、良好な水域の保全等

が必要である。

図 九州地域における河川・海域の環境基準達成状況

■歩道には電柱が占用し、道路上空には蜘蛛の巣のように電線が張り巡らされている。

写真 国道34号(長崎市)

単位:基準点数

資料)国土交通省九州地方整備局

資料)環境GIS公共用水域水質測定結果(H13)

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※生活環境保全に係る海域の環境基準(水産 級) l以下1 2mg/資料:公共用水域水質調査

旧環境庁が海洋植物プランクトンの著※着色部分:

しい増殖の恐れがある海域として定めたもので,面積が

100km2以上の海域「主な閉鎖性海域」。

九州の主な閉鎖性海域図

汚水処理整備率と環境基準の達成状況図

図 有明海と八代海の の推移COD

汚水処理整備率以上75%

50 75%~

25 50%~

資料:環境GIS公共用水域水質測定結果(H13)

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、地球温暖化やオゾン層の破壊などの地球規模に及ぶ環境問題がクローズアップされ

このうち、運輸部門においては、自動車からの を抑制する必要があり、また、CO2民生部門においては、住宅・建築物における環境負荷低減化をすすめる必要がある。

九州における沿道環境は 自動車から排出される 二酸化窒素 で約89% H、 ( ) (NO214 、 (浮遊粒子状物質)で約19%(H14)しか環境基準を満たしておら) SPMず、また、夜間の騒音レベルが環境基準を達成してない箇所が約7割に達している。

自動車からの や の排出量は適正速度での走行時に最小となることから、NO2 SPM道路構造対策等による沿道環境改善の取組みにあわせ自動車交通の円滑化促進や環境

負荷の少ない交通体系の形成等をすすめる必要がある。

31%

25%

64%

34%

29%

67%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

昼間 ※1

夜間 ※1

夜間要請限度達成(971km)

(517km)

(1,023km)

(436km)

(389km)

(480km)

H13H14

-2.5

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

平年差

(℃)

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000

平年差

5年移動平均

回帰直線

注:平年差とは、各年の平均気温-平年値(1971-2000年平均)

図 騒音レベル超過状況

図 福岡の年平均気温平年差の経年変化

図 環境基準等達成延長割合(九州地方整備局)

※1 昼間:午前6時~午後10時、 夜間:午後10時~午前6時

資料) 国土交通省

資料)気象庁福岡管区気象台

資料) 国土交通省

17

⑥循環型社会の形成

九州の建設副産物のうち建設廃棄物については平成 年度現在で約83%の再資12源化率、また、建設発生土については平成 年度現在で約66%の再資源化率とい12ずれも平成 年度目標値に達していない状況であり、より一層建設廃棄物の発生抑17制・リサイクルの促進に取り組む必要がある。

83% 85%88%

66%

54%

75%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

建設廃棄物 建設発生土

平成12年度(九州)

平成12年度(全国)

平成17年度目標

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

アスファルト・コンクリート塊 コンクリート塊 建設汚泥 建設混合廃棄物 建設発生木材

平成12年度(九州)平成12年度(全国)平成17年度目標

※建設混合廃棄物の目標は

対H12年度排出量の25%削減

図 建設副産物の再資源化率等

図 建設廃棄物の内訳

資料) 国土交通省

資料) 国土交通省

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1 DS-t %九州では 日あたり下水汚泥が約468 発生しているが このうちの78、 、

しか有効利用できておらず、さらに、将来予測される年間汚泥発生量は平成 年12度現在の約1.8倍に達すると推計されており、下水汚泥の減量化、リサイクル化

をすすめる必要がある。

図 産業廃棄物の再生利用率、減量化、最終処分量の推移

図 将来予測される下水汚泥搬出量

図 下水汚泥の利用状況( 年度実績)H14

倍1.8

88

6 17 22 11 12 14

170

724 17 9 10 8 14

133

0

50

100

150

福岡県

佐賀県

長崎県

熊本県

大分県

宮崎県

鹿児島県

九州全体

有効利用量発生汚泥量

千DS-t/年

DS:固形物または蒸発残留物

のこと。加熱により水分を蒸発

させ乾燥させた汚泥

資料) 国土交通省九州地方整備局

資料) 国土交通省九州地方整備局

資料) 国土交通省九州地方整備局

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循環型社会の形成に向けて北九州市、大牟田市、水俣市が認定されている「エコタ

ウン事業」を支援し、また、このうち北九州市、大牟田市については「リサイクルポ

ート」に指定して総合的な静脈物流拠点の形成をすすめ、あわせて物流コストの低減

及び環境負荷の低減を主眼においた静脈物流システムを構築する必要がある。

0

100

200

300

400

500

600

700

91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01年

輸出

量(万

トン

図 リ サ イ ク ル ポ ー ト イ メ ー ジ

図 九 州 の 静 脈 物 流 拠 点

図 日本の鉄スクラップ輸出量

資料) 国土交通省九州地方整備局

資料) 国土交通省九州地方整備局

資料) 財務省「貿易統計」