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生命倫理学の始まり

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1 生命倫理学の始まり

1 生命倫理学とは• 倫理学Ethicsは哲学の1部門

善、道徳を追求する学問

• 規範倫理学normative ethics義務論

功利原理

• 生命倫理Bioethics生命科学の知識を利用する際に派生する問題を検討する学問

生命倫理学の原則

• 自立性尊重原理principle of respect for autonomy

• 無害性原理principle of nonmaleficence• 善行原理principle of beneficence• 公正原理principle of justice

• 問題点=原理間の衝突• 決疑論Casuistry

医療倫理成立の背景

• 伝統的医師患者間関係の変化• 非人道的な人体実験への反省• 疾病構造の変化• 高度医療技術の発達• 権利意識の高揚

• 1970 Van Rensslaer Potter の提唱

2 生命倫理学の成立

• 1974年 これを受け国家研究規制法制定

• 主にヒトを対象とする研究の際の人権保護が目的

•人権運動から:1964 ヘルシンキ宣言•タスキギーTusegee事件 1972アラバマ州メイコン郡 黒人梅毒患者399人(コントロールとして正常人201人)を1932-1972まで40年間、観察放置していた

ヒトを用いる実験の規制

• 1964 ヘルシンキ宣言 以後改訂を重ねて

いる

• 1974 タスキギー事件を受けて「国家研究法」が成立、委員会の設置を義務つける

2 規制

生物災害Biohazard

• 生命科学や医学の研究に伴う危険、研究室内の安全も遺伝子組み換えなどバイオ技術に伴う危険も含まれる

• 研究者の感染は病原菌の発見とほぼ同時• 例:1883 コッホ コレラ菌の発見 1894年 ピペットによる感染

• マーブルグ事件1967がきっかけ• 危険回避には環境破壊も含まれる

DNA組み換え実験• 1974 Berg実験の一時停止を提案• 1976 NIHが指針(ガイドライン)を制定• 1979 日本のガイドライン• 2004 現在はカルタヘナ法• 異種間の組み換えで増殖能がある場合が規制の対象、同種間は対象でない

• 物理的な封じ込めP1-4 生物学的封じ込めB1-2

• 届け出るので実験のアイディアが盗まれるおそれがある

カルタヘナ法

• 正式には「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」

• [1]生物多様性の保全、[2]生物多様性の構成要素の持続可能な利用及び、[3]遺伝資源の利用から生ずる利益の公正な配分、を目的とする

• 2000年、「生物の多様性に関するバイオセーフティに関する条約のカルタヘナ議定書」が採択、これに基づき6月にカルタヘナ法が公布、翌年(平成16年)2月から施行

カルタヘナ法ー概要ー• 執るべき拡散防止措置が定まっている場合、それにしたがって実験

• 執るべき拡散防止措置が決まっていない場合には、大臣の確認を受ける(大臣承認実験)

• 遺伝子組み換え生物の輸出入の規制、実験等の違反者への罰則

• 実験計画の提出と承認手続き• 教育、健康診断、安全委員会(出来れば文系と医系委員の参加)、記録の保管

遺伝子組換え実験の分類1.機関届出実験

同定済み核酸

P1レベルの拡散防止措置 (物理的封じ込め)

2.機関承認実験同定済み核酸 P2レベル

未同定核酸 P1レベル

3.大臣確認実験同定済み核酸 P3レベル同定済み核酸 病原性を高める遺伝子未同定核酸 病原性不明

P1、P2、P3は各々 クラス1、2、3の生物の拡散防止措置

物理的封じ込め(P1レベル)P1レベルに必要とされる設備①実験中は、実験室の窓及び扉は閉じておくこと。(閉鎖系)

②実験台は、毎日、実験終了後消毒すること。また、実験中汚染が生じた場合には、

直ちに消毒すること。(なるべく、他の実験台と区別)

③実験に係る生物に由来するすべての廃棄物は、廃棄の前に滅菌すること。その他

の汚染された機器等は、洗浄、再使用又は廃棄の前に消毒又は滅菌すること。

(実験室内にオートクレーブを設置)

④口を使うピペット操作は行わないこと。(なるべく機械式ピペットの使用)

⑤実験室内での飲食、喫煙又は食品の保存はしないこと。(表示をする)

⑥組換え体を取扱い後又は実験室を出るときは、手を洗うこと。

物理的封じ込め(P2レベル)P1レベルの設備に以下のものを加える

①安全キャビネット(クラス安全キャビネット(クラスⅠⅠ、、ⅡⅡ))

②機械式ピペット

③実験が進行中の場合には、実験室の入り口にP2 レベル実験中の旨を表示す

④組換え体を保管する冷凍庫、冷蔵庫等にもその旨(P2レベル)を表示すること。

⑤安全キャビネットのHEPAフィルターについては、その交換直前及び検査時に、安全キャビネットを密閉し、10 g/m3 のホルムアルデヒド燻蒸により汚染を除去すること。

⑥封じ込めレベルがP 1 でよいとされる他の実験を同じ実験室で同時に実施する場合は、明確に区域を設定して注意深く行うこと。

物理的封じ込め(P3レベル)

• 独立隔離した実験室で安全キャビネット(定期点検)を備える

• 機械ピペットの使用が必要• 前が開かない専用の実験着、手袋を着用• 更衣室を備えた前室をおく

微生物取り扱いに関する規制

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」

1999年4月 施行

バイオセーフティについて微生物によるバイオハザード(生物災害)を未然に防ぐ安全対策である.

バイオセーフティの主な対象は感染症を起こす病原体や毒素である.

バイオ実験室

BSL1:通常のバイオ実験室

BSL2:安全キャビネットが設置された実験室

BSL3:バイオセーフティ実験室

BSL4:完全隔離された実験室

生命科学研究の規制ーその他の例

動物実験

苦痛を与えない 数を減らす 代替を考える 魚、微生物、培養細胞に代える

法律「動物愛護に関する法律」、「大学等における動物実験について」文部省通達委員会を設置し、実験計画の承認を得る。

ヒトを対象とする実験の規制

5原則 自発的同意、説明と同意、無償の提

供(交通費などは別)、個人情報の保護、倫理委員会の設置

• ゲノム情報ではDNA提供者の人権保護、「知りたくない権利」の設置

生命科学研究の規制(続)

• 臓器移植は臓器移植法(1997.10) 脳死については各個人が決める

• 生殖医療は指針作成中• 日本ドイツは代理母Surrogate Mother禁止、英は金銭授受を禁止、

生命科学研究の規制(続)

• クローン動物;1997.2.28 英国ロスリン研究所 ドリー

• クローン人間はドイツ、日本などが禁止• 理由:男女両性が関与する、偶然性が介在することが各個人の唯一性が確保される=人間の尊厳

• 胚性幹細胞は研究のみ承認

安全と科学研究• 遺伝子組み換え作物• 安全の問題:例 透析アミロイドーシス 人工透析が原因の病気 β2ミクログロビンが血中に沈着

• 科学の暫定性:パラダイムが崩れると安全でなくなる

• 科学者の説明責任accountability• 技術の中立論:技術は善でも悪でもない使う者による

• 国民のための科学

3 科学とは何か

1 科学の成立

1-1 大学の始まり

大学は西欧から始まった

• Universityの語源はuniveitus• 大学は自治組織• 初めScola学を教えた 用語はラテン語

• 今も学名はラテン語• その語源はscole=ひま• 英語のschool、scholarshipは皆同じ語源に由来

Scola学

• ギリシャ哲学とキリスト教教義の融合をはかった

• 神は二冊の書を書かれた:聖書と自然• 自由7科 3科は文法(正しい論理で)修辞学(適切な用語で)弁証法(相手を論破)

• 東洋では「学び」 まねびから由来

科学Science

• science ラテンscientia知識の意に由来初出は1794(Oxford辞典)

• Scientist科学者 William Whewell の造語1937 "History of Inductive Science"

• それまでは自然哲学natural philosopher今もPhD

• 専門領域化 訳語「科学」は幕末 西周

• やがて科学は「ほめ言葉」となった

科学革命

• 17世紀頃から科学の特性がはっきりする• 科学革命Science Revolution コペルニクス、ニュートン、ベーコン、デカルト、ガリレオ

• 18世紀 フランス啓蒙思想が神から解放 「科学を使ってパンを増やすこと パンを平等に分けること」 技術と結合して世界を制覇

• 産業革命以降 科学の制度化、産業化が進む

科学の特性

• 1 客観性 価値やイデオロギー、先入観とは無縁

• 2 普遍性 誰が見ても同じ

• 3 経験主義 データ中心 datum(ラ) 与えられたもの

• 4 定量的 数式であらわさられる 定量的取り扱いは正確さを増す

• 5 唯物論 物質の動きですべてが理解できる

パラダイムParadigm

• パラダイムとは ある集団における支配的な考え方(例 Samner 酵素はタンパク質である)

• 科学教育はパラダイムの教育(酵素の構造と機能をタンパク質構造に基づいて教育)

• 科学の進歩はパラダイムを転換すること(Chech リボザイムを発見)

現代科学の問題点(1)

• 産業化 例はナイロン

• 機密化 特許の問題

• 軍事化 兵器に取り込まれた

• 体制化 多くの科学者が原爆の開発に協力

• 巨大化 加速器 放射光 ゲノム

• 科学は力、金、徳である 「知識は力であり、無知は無力である」

• その結果、反科学思想が生まれた

現代科学の問題点 その2• 科学技術と危険遺伝子やクローンに対するすばやい応答 利益→科学の権威、不利益性→否定 科学技術とは危険なもの

• 科学がつまらなくなった好奇心から「国民のための科学」へ

過度の競争

技術優先から秘密主義へ

巨大化のため「顔」が見えなくなった

科学の規制

• テクノロジーアセスメントTechnology Assessment 技術評価

• 環境評価Environmental assessment 開発技術の環境への影響の評価

• 科学研究は好奇心から「国民のための科学」

• 科学者は善でも悪でもない• 科学者は社会に対し説明責任

Accountabilityがある。

4 ヒトとは何か

微生物の分類と命名

分類学はカール・フォン・リンネ(Carl von Linné 1707-1778)がはじめた 牧師の息子で「神の意思」を探るのが目的だった

2名法 属名+種名(形容語)Homo sapiens

Escherichia coli=大腸菌

Bacillus subtilis=枯草菌

昔の分類学2界法(生化学者が好む)

生物界を細胞内に核を持つ真核生物と持たない原核生物に分ける

真核生物:バクテリア以外すべて

原核生物:バクテリアのみ

5界法(生物学者が好む)

モネラ界:バクテリア

プロティスタ:原生動物

菌界:カビ、酵母

植物界

動物界

新しい分類法:リボソーム小サブユニットのRNAの塩基配列の相同性により分類→3つの領域(ドメイン)に分ける:バクテリア、アーキア、それにユーカリア

分類は「領域Domain」から

ヒトの生物分類学上の位置

• ユーカリア(真核生物)領域(細胞に核がある)• 動物界 後生動物亜界(多細胞)

• 脊索動物門(中枢神経)脊椎動物亜門(内骨格を持つ)

• 哺乳動物綱(乳腺・胎生・温血・異歯性)有胎盤亜綱

• 霊長目(サル目ともいうprimate)(掴む手、手が長い、鎖骨の発達、爪)霊長亜目(尾長猿を含む)

ヒトの生物分類学上の位置(続)

• ヒト上科(類人猿)• ヒト科(オランウータン、チンパ、ゴリラ、ヒト)• ヒト亜科(チンパ、ゴリラ、ヒト)• ヒト属(猿人、原人、旧人、新人;人類

hominidともいう)• ヒト種(旧人、新人;例ネアンデルタール、ここからヒトsapiens)

• ヒト亜種Homo sapiens sapiens(新人)

ヒトの特徴

• 二足歩行

• 脳の大きさ

• 歯並び、発声、無毛

• (皮肉な見方)家畜化

ヒトへの進化

• 下等なほ乳類のうち食虫類が祖先• 下等霊長類の発生は6500万年前のツパイ• 6000万年前 原猿類 目が前面へ

• 4000万年前 新世界猿

• 3000万年前 旧世界猿

• 新猿類を経て古類人猿ドリオピテクスなど• 1800万年前 プロコンスル

猿人->原人->旧人->新人

教会の燭台説、すべてアフリカ起原

人類の起源は東アフリカから

ヒト化homonization

• 二足歩行:森林が消えサバンナ(草原)がひろがった。

• 歩くことが手を自由にし脳を刺激、歯並びも変えた

• 脳の発達や火、石器の使用は原人から• 二足歩行が発声を可能にし、言語が発達• こうして人間性、社会性が成立した

チンパンジーとの遺伝子の比較

全体では1.23%の違い(3700万塩基対)、ヒトの個人間では0.1%

チンパンジーの第22番染色体とこれに対応するヒトの第21番染色体の間では1.44%。たんぱく質レベルでは231種類のたんぱく質のうち83%

チンパンジーのY染色体1200万塩基対のうち、ヒトにも対応する1100万塩基対弱の領域では1.78%

第8染色体ではその一方の端近い領域で差が大きく平均2.1%、部分的には3.2%も違う。この領域には脳の大きさに関連する遺伝子や、免疫に関連する遺伝子が含まれている。

5 生命科学の進展:遺伝子を中心として

1 研究小史

• 19世紀中葉をすぎると、核の中に染色体chromosomeが発見された

• 1869 Miescher バーゼルの病院で膿=白血球からDNAを発見、核酸nucleic acidと命名

• 1865 Mendelが遺伝の基本法則を発見し、遺伝子の概念を提唱

• 1900 メンデルの再発見、変異体の作成など実験遺伝学が始まる

• 20世紀前半は酵素の研究が主、核酸は重要とされなかったが、DNAとRNAがあるとわかった

研究小史(続)

• 1944 Averyはニューヨークの病院で遺伝子の本体はDNAであることを証明(ほとんど無視された)

• 1950頃 Todd(英)が核酸の化学構造を決定• Chargaff(米)は塩基組成の間にA=T、G=Cが成立することを発見

• 1952 Harshey、Chaseがファージを使い遺伝子はDNAであることを証明

• 1953 WatsonとCrickによるDNA二重らせん構造の発見、X線回折像と並んでChargaffの法則がカギだった

研究小史(続々)• 1964 HollyがtRNAの塩基配列を決定することに成功(初の核酸の一次構造決定)

• 1975 Sanger ファージΦX174の遺伝子DNAの全塩基配列を決定

• 1982 transgenic遺伝子移入型動物、 マウス受精卵の核にラットの成長ホルモンの遺伝子DNAを注入

• 1972 遺伝子工学• 1974 DNA組み換え実験の停止

• 1990 ヒトゲノム計画開始• 2001 2月 ヒトゲノム計画の事実上の完了

2003 4月 ヒトゲノム終結宣言

ゲノムサイズの比較

生生生物物物名名名 塩塩塩基基基対対対(((文文文字字字)))数数数 長長長さささ 印印印刷刷刷ににに必必必要要要なななペペペーーージジジ数数数 肝肝肝炎炎炎ウウウィィィルルルススス 333000000000 111 μμμmmm 111 TTT444 フフファァァーーージジジ 111...777222XXX111000555 555000 μμμmmm 555777 マママイイイコココプププラララズズズマママ 000...555888XXX111000666 000...222mmmmmm 222000000 大大大腸腸腸菌菌菌 444...666 XXX111000666 111...444mmmmmm 111555000000 シシシアアアノノノバババクククテテテリリリアアア 333...666 XXX111000666 111...111mmmmmm 111222000000 酵酵酵母母母 111...333 XXX111000777 444 mmmmmm 111000000000 XXX444冊冊冊 ハハハエエエ 111...444 XXX111000888 444...222cccmmm 111000000000 XXX444777冊冊冊 ニニニワワワトトトリリリ 111...222 XXX111000999 333666 cccmmm 111000000000 XXX444000000000冊冊冊 イイイモモモリリリ 222 XXX111000111000 666 mmm 111000000000 XXX777000000000000冊冊冊 イイイネネネ 444...777 XXX111000888 111444 cccmmm 111000000000 XXX111666000冊冊冊 ユユユリリリ 111 XXX111000111111 333000 mmm 111000000000 XXX333333000000000000冊冊冊 ヒヒヒトトト 333...222 XXX111000999 111 mmm 111000000000 XXX111111000000000冊冊冊

2 ゲノム計画=ゲノム解析ゲノムとはある生物の持つ全遺伝子のセットのこと、ゲノム計画はゲノム全体の塩基配列を決めること

ヒトゲノム計画

• 2001 2月 ヒトゲノム計画の事実上の完了

2003 4月 ヒトゲノム終結宣言

• 当初の予想より小さく32億塩基対からなる• 遺伝子の総数も3万-3万5千と推定• 個人差は0.1%、300万塩基• 胃潰瘍の治療薬オメプラゾールはシトクローム

P450の遺伝子のG→A変換で副作用が違う• β3アドレナリン受容体 Trp64は肥満しにくいが

Arg64は倹約型

3 遺伝子操作・遺伝子工学

• 1 切り出す:制限酵素

• 2 つなぐ:リガーゼ

• 3 増幅する:PCR法(DNAポリメラーゼ)

• 4 導入する:ベクター(プラスミド、ウィルス)

PCR法

210=1,000

PCR法の利用

• 基礎研究に不可欠な研究手法である配列決定、遺伝子操作に不可欠

• 遺伝子診断• 遺伝子治療• 新品種の作成• 親子判定• 生物分類学、生態学• 犯罪捜査• 遺跡研究

問題点

• 1 感度がよすぎる=汚染の問題 かって恐竜の遺伝子DNAと思われていたのは実験している人のDNAだった?

• 2 塩基対のエラーが生じる いろいろな手法が開発され改善されきている

• 3 試料毎に最適条件が異なる

4 遺伝子診断ーガン遺伝子• 1976 Vamusらラウス肉腫ウィルスから単離• 1982 Weinberg Ras遺伝子の単離• ガン遺伝子H-rasはヒト膀胱ガンを起こす 1塩基置換

• どんな遺伝子がガン遺伝子か• 1)増殖因子 2)増殖因子受容体(チロシンキナーゼ) 3)GTP結合タンパク質 4)セリントレオニンキナーゼ 5)核内転写調節因子

• ガン抑制遺伝子• p53、 Rb ともに細胞周期の調節因子

遺伝子診断

• PCR法による遺伝子DNAの増幅• Blot法による変異の検出• SNPS 一塩基多型 個人ごとの遺伝子の

違い

• テーラーメイド医療• 病気の予防

5 遺伝子治療

• 1980 Klein 初の遺伝子治療• 1990 正式に遺伝子治療開始 NIH

ADA症• 1995 北大ADA欠損症の治療

• 問題はベクター

6 クローン

作り方は2種

1 受精卵の分割

2 体細胞クローン

体細胞クローン

全く同一の遺伝子を持つ個体が作れる

ドリーで初めて成功

出産した

短命だった

下等動物では体細胞クローンは簡単にできる

植物のクローン

植物は体細胞クローンが簡単に作れる

挿し木などはクローン

中には種を作らない植物もある

7 再生医学:細胞死と形態形成

再生とは

幹細胞

再生医療

• 幹細胞 未分化の細胞のこと

• 胚性幹細胞=ES細胞 全能性がある細胞、

胚からとる→クローンから作りたい→韓国の葉教授

• 例 造血細胞

再生不良性貧血

白血病・骨髄異形性症候群

先天性免疫不全症など

iPS細胞

• iPS=人工多能性幹細胞• 体細胞を幹細胞に戻すことに成功した:皮膚の細胞を遺伝子操作して幹細胞を作る

• 将来にヒトになりうる胚を使わずに幹細胞が得られる

• 本人の細胞なので免疫の拒否反応がない

IPS細胞の問題点

• 安全性 ガン化の危険性

• 生命倫理上の問題 iPS細胞から生殖細胞を作る 日本ではiPS細胞から作った胚を子宮に移植することを禁止

• 比較的簡単に作ることも問題

先端医療・先端技術と生命倫理

• 安全か:患者だけでなく、医療従事者の安全、さらに他の生物にも安全か

• 他の生物を犠牲にしていないか

• 個人情報

• 生命観に影響を与えないか

6 生命科学の進展:タンパク質と酵素を中心として

1 研究史

• 科学的研究の始まり• 16世紀初め レオナルド・ダ・ビンチ 人体を解剖した

• 1543 ヴェサリウス 「人体の構造」

• 1628 ハーヴェイ 血液循環の発見

病原菌への道

• 1665 フック 「ミクログラフィア」• 1683 レーヴェンフック 微生物の発見• 1882 コッホ 結核菌、コレラ菌などの発見

• 1885 パスツール 狂犬病ワクチン開発

消化を巡る発見

• 1713 レオミュール タカの消化の研究

• 1825 ボーモント ヒトの胃の観察• 1833 ジアスターゼの発見• 1878 クーン 酵素の命名Enzyme

発酵を巡る発見

• 紀元前6000年 ワインを作りパンを焼いた

• 18世紀 ラボアジエ アルコール発酵の化学式 グルコースC6H12O6 → エタノール

+CO2• 1856 パスツール 発酵は生命現象

• 1897 ブフナー兄弟 生命なき発酵 →in vitroへの道を拓く

Buchnerの功績

• 「生命なき発酵」

• 生命現象を試験管内で再現する→in vitro

20世紀の進歩• タンパク質はアミノ酸の重合体• 1926 サムナー 酵素はタンパク質

• 1955 サンガー タンパク質のアミノ酸配列の決定

• 1957 ケンドリュー、ペルツ タンパク質の立体構造決定

• 1962 アンフィンゼン、スタイン、ムーア 酵素のアミノ酸配列の決定

• 1963 フィリップス 酵素の立体構造の決定

• 1980頃から タンパク質工学の進展

2 酵素• 酵素は生体の触媒 活性化エネルギーを下げる

• 触媒は化学反応を早くするが自身は変化しない

• 例• H2O2 -鉄イオン→ H2O + ½O2生体組織ではカタラーゼが触媒

• 酵素反応の反応物質=基質substrate• 大腸菌は3000種の酵素を持つヒトは3-10万

3 酵素工学

• 酵素の特徴• 1 能率が高い 例 窒素固定

• 2 反応が選択的• 基質特異性、 反応特異性

• 例 グルコースオキシダーゼ

• 3 本体がタンパク質なので捨てても無害• 多くの金属触媒が公害を引き起こした

工業と酵素の窒素固定の比較

N2 + 3H2 ー> 2NH3

ニトロゲナーゼ(Feを含む酵素)

常温常圧=省エネルギー

Fe触媒(Haber・Bosch法)

高温高圧(500oC、350気圧)

酵素利用の例• 診断薬• 血糖値の測定

• Glc → グルクロン酸+H2O2

グルコースオキシダーゼ

H2O2+色素 → H2O+色素の酸化

ペルオキシダーゼ (変色)糖工業

でんぷんー(アミラーゼ)→グルコース

グルコースー(グルコースイソメラーゼ)→フルクトース

洗剤

病気と酵素

• 酵素の遺伝子が変異すると多くの遺伝病• 例 フェニルケトン尿症

• 鎌形赤血球貧血、海洋性貧血

• フルクトース不耐症

• 肺気腫 エラスターゼの阻害タンパク質であるα1アンチトリプシンの欠損症

狂牛病

• プリオン病と総称する• ヒツジ スクレーピー

• ウシ BSE 牛海綿状脳症• ヒト ヤコブークロイツフェルト病• ゲルストマン・ストロイヤー・シャインカー

• クールー病

• 致死性家族性不眠症

プリオンタンパク質

• 253アミノ酸のタンパク質• ヒトでは第20染色体上に遺伝子があり、脳内でいつも作られている

• ノックアウト・マウスは正常に見える 発症しなくなる

• 動物間で感染が起こる• 安定で加熱してもこわれない• 立体構造の変化で病原性プリオンに変化

事故が起こったら

• 日ごろから危機管理体制と危機管理教育を整備しておく

• 第3者を含めた調査委員会の設置• 速やかに事態を公表する• 再発防止策の策定