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平 成 16 年 度 水中音響通信の高度化による海洋産業の発展と 新事業創出等効果に関する調査研究報告書 平成 17 年3月 社団法人 日本機械工業連合会 社団法人 海洋産業研究会 日機連 16 高度化-15

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Page 1: 平成16年度 水中音響通信の高度化による海洋産業の発展と · 向等の調査補助事業(機械産業高度化対策及び産業協力)」の一環として、社団法人海洋

平 成 16 年 度

水中音響通信の高度化による海洋産業の発展と

新事業創出等効果に関する調査研究報告書

平 成 17 年 3 月

社団法人 日本機械工業連合会

社団法人 海 洋 産 業 研 究 会

日機連 16 高度化-15

Page 2: 平成16年度 水中音響通信の高度化による海洋産業の発展と · 向等の調査補助事業(機械産業高度化対策及び産業協力)」の一環として、社団法人海洋

戦後の我が国の経済成長に果たした機械工業の役割は大きく、また機械工業

の発展を支えたのは技術開発であったと云っても過言ではありません。また、

その後の公害問題、石油危機などの深刻な課題の克服に対しても、機械工業に

おける技術開発の果たした役割は多大なものでありました。しかし、近年の東

アジアの諸国を始めとする新興工業国の発展はめざましく、一方、我が国の機

械産業は、国内需要の停滞や生産の海外移転の進展に伴い、勢いを失ってきつ

つあり、将来に対する懸念が台頭しております。

これらの国内外の動向に起因する諸課題に加え、環境問題、少子高齢化社会

対策等、今後解決を迫られる課題が山積しているのが現状であります。これら

の課題の解決に向けて従来にもましてますます技術開発に対する期待は高ま

っており、機械業界をあげて取り組む必要に迫られております。我が国機械工

業における技術開発は、戦後、既存技術の改良改善に注力することから始まり、

やがて独自の技術・製品開発へと進化し、近年では、科学分野にも多大な実績

をあげるまでになってきております。

これからのグローバルな技術開発競争の中で、我が国が勝ち残ってゆくには

この力をさらに発展させて、新しいコンセプトの提唱やブレークスルーにつな

がる独創的な成果を挙げ、世界をリードする技術大国を目指してゆく必要が高

まっております。幸い機械工業の各企業における研究開発、技術開発にかける

意気込みにかげりはなく、方向を見極め、ねらいを定めた開発により、今後大

きな成果につながるものと確信いたしております。

こうした背景に鑑み、当会では機械工業に係わる技術開発動向等の補助事業

のテーマの一つとして社団法人海洋産業研究会に「水中音響通信の高度化によ

る海洋産業の発展と新事業創出等効果に関する調査研究」を調査委託いたしま

した。本報告書は、この研究成果であり、関係各位のご参考に寄与すれば幸甚

であります。

平成17年3月

社団法人 日本機械工業連合会

会 長 金 井 務

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はじめに

本報告書は、日本自転車振興会から自転車等機械工業振興事業に関する補助金の交付を

受けて、社団法人日本機械工業連合会が行った「平成16年度機械工業に係る技術開発動

向等の調査補助事業(機械産業高度化対策及び産業協力)」の一環として、社団法人海洋

産業会が受託した「水中音響通信の高度化による海洋産業の発展と新事業創出等効果に関

する調査研究」の成果をとりまとめたものである。 21世紀の海洋の開発・利用・保全は、地球的規模から身近な沿岸域規模に至るまで、内外の

きわめて重要な課題となってきている。わが国でも、科学技術学術審議会が取りまとめた「長

期的展望に立つ海洋開発の基本的構想及び、推進方策について」の諮問に対する答申(平成14

年 8月)において、持続可能な海洋利用を目指した政策を究極的な目標として「海洋を守る」

「海洋を利用する」「海洋を知る」のバランスのとれた政策の必要性を打ち出している。

ところで、「海洋を守る」「海洋を利用する」あらゆる活動の基礎を提供するのが、「海洋

を知る」こと、すなわち海洋の調査・観測である。現在、各種の機器、システムにより調査・

観測活動が行われているが、これらの水中での通信はケーブルを介して行うことが多いため、

海底機器の設置ポイント、水中ロボットの行動範囲等に制約が大きいという課題がある。さ

らに、地震や津波等の災害予知や港湾等でのセキュリティ確保のためのシステムを構築する上

でも、機動性に富んだ通信手段が必要と考えられる。そこで、本調査研究では、水中音響通信

に関して、内外の技術動向の調査を行うとともに、水中音響通信技術の技術発展の方向と利

用効果、その課題と技術的期待事項、さらには水中音響通信を活用した新たな事業創出の可

能性について調査した。

その作業過程で浮き彫りにされてきたのは、まさに「水中音響通信」が21世紀の海洋の開

発・利用・保全のうえでの根幹技術として位置付けられますます重要性を増してくるであろう

こと、そして、その技術の発展は、海洋の調査・観測活動の効率や利用範囲、機動性を高める

だけにとどまらず、広く海洋利用の諸活動に新しい地平を切り拓くものとして大いなる発展可

能性を秘めていること、という点である。

したがって、本調査は、全体としてみれば予備的調査、頭出し調査の段階として認識される

べきものであり、継続的な調査検討なしにはせっかくの成果が宙に浮いた状態のままとなりか

ねないことを強調しておきたい。海外におけるこの分野の急速な発展を見ても言えることだが、

引き続いての調査拡大は、わが国海洋関係者にとってさらに有用な成果を生み出していくこと

は間違いないところであり、次年度以降の発展的取り組みを望んでやまない。

最後に、本事業を実施するにあたり格別のご指導をいただいた有識者、関連企業等に対

して心から謝意を表するとともに、今後のわが国水中音響機器関係産業ひいては機械工業

の更なる発展に寄与しるよう、本報告書が関係各位の大いなる参考になれば幸甚である。

平成17年3月

社団法人 海洋産業研究会

会 長 武 井 俊 文

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目 次

はじめに

要約 ······································································· 1

1.調査研究の概要 ························································· 2

1.1 調査研究の目的····················································· 2

1.2 調査研究の概要····················································· 2

1.3 調査研究の体制····················································· 3

2.水中音響通信技術とは···················································· 4

2.1 音波と電波の違い··················································· 4

2.2 水中音響通信システムの構成········································· 6

2.3 送受波器の特性(感度、指向性)····································· 8

2.4 海水中を伝搬する超音波の特性(音速、減衰)························· 9

2.5 海中の雑音························································· 11

2.6 ドップラ効果の影響················································· 12

2.7 音響データ通信における通信距離、データ伝送速度····················· 13

2.8 モデム(変復調器)の方式··········································· 13

2.8.1 アナログ変復調方式············································ 13

2.8.2 デジタル変復調方式············································ 15

2.8.3 スペクトラム拡散通信·········································· 17

2.9 誤り検出と誤り訂正機能············································· 18

3.水中音響通信技術の現状·················································· 20

3.1 アナログ変調方式の水中通話装置····································· 20

3.1.1 潜水調査船用水中通話機········································ 21

3.1.2 ダイバー用水中通話機·········································· 22

3.2 バイオテレメトリー用の片方向データ伝送装置························· 23

3.3 デジタルデータ通信方式の双方向のデータ伝送装置····················· 24

3.4 水中音響通信技術の利用例··········································· 29

3.4.1 有人潜水調査船からの映像データ伝送···························· 29

3.4.2 AUV(無索式水中ロボット)との通信······························· 31

3.4.3 海底津波計からのリアルタイムでのデータ伝送···················· 33

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3.4.4 ドップラ流向流速計(ADCP)からの観測データの伝送·············· 34

3.4.5 波高計や水質センサによる観測データの伝送······················ 35

3.4.6 吊下式観測装置や曳航式観測装置からの観測データ伝送············ 36

3.4.7 海底石油ライザー管の振動や立上がり部の曲げ歪みの計測データの伝送 · 37

3.4.8 水中音響通信ネットワーク······································ 38

4.水中音響通信技術の今後の研究開発動向···································· 39

4.1 国内における研究開発動向·········································· 39

4.2 国外における研究開発動向·········································· 39

5.水中音響通信に関するアンケート調査結果·································· 42

5.1 我が国における水中音響通信装置の利用状況··························· 42

5.1.1 水中音響通信装置の認知度······································ 42

5.1.2 水中音響通信装置の使用目的・使用環境・不満事項················ 42

5.2 現状の水中通信技術の問題点········································· 46

5.3 水中音響通信技術の高度化による利用が拡大する分野··················· 48

5.4 水中音響通信技術の高度化による利用方法・産業発展の見通し··········· 50

5.5 水中音響通信技術についてのコメント································· 54

6.水中音響通信技術の高度化による新事業の創出の可能性······················ 57

6.1 アンケート調査結果が示す水中音響通信技術の高度化に対する期待······· 57

6.2 水中音響通信技術の高度化に対するニーズと技術課題··················· 58

6.3 水中音響通信技術を身近なものに····································· 59

7.まとめ:今後の課題······················································ 60

参考文献 ··································································· 61

付属資料 ··································································· 63

資料1 アンケート一式···················································· 65

資料2 水中通信関連論文リスト①(Oceans2000~2004)························ 75

資料3 水中通信関連論文リスト②(UDT2000~2004)··························· 83

資料4 水中通信関連論文リスト③(日本音響学会、米国音響学会、MTS、その他) ···· 87

資料5 第1回委員会:話題提供関連資料<水中音響通信、日本電気(株)>······ 91

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要 約

21 世紀の日本の発展にとって海洋開発が果たす役割はますます大きなものとなってき

ている。平成 13 年 4 月の文部科学大臣からの諮問「長期的展望に立つ海洋開発の基本的

構想及び、推進方策について」を受け、科学技術学術審議会が平成 14 年 8 月に取りまと

めた答申においては、「持続可能な海洋利用」を目指した政策を究極的な目標として「海

洋を守る」「海洋を利用する」「海洋を知る」のバランスのとれた政策に転換することと

述べられている。また、最近の動きとして、国連海洋法条約に基づき、わが国の大陸棚に

ついても 200海里を超えて拡張できる可能性があることから、大陸棚の限界の設定に必要

な調査活動の強化も指摘されているところである。

これらの施策の実施には、海洋環境の継続的モニタリング、海中・海底資源調査、未知

のフロンティアとしての海洋の動態、生物活動、海底地殻変動等の調査が必要であり、現

在船舶による観測のほか、海底設置型センサ、水中ロボット、観測用ブイ等各種計測手段

により計測・調査が行われている。これら水中の機器と海上又は陸上基地との聞の通信は

ケーブルを介して行うことが多いため、海底機器の設置ポイント、水中ロボットの行動範

囲等に制約が大きい。更に地震等の災害予知や近年脅威となっている不審船、テロリスト

等から重要港湾を防備するためのセンサシステムを構築する上でも機動性に富んだ通信手

段が必要と推定される。

水中音響通信は、伝搬速度、音波の減衰、屈折による伝搬距離の制限等物理的特性から

の制約があるため、これまで、限定された条件下のみで利用されているが、その技術の発

展は、海洋調査・モニタリング・海洋開発等における事業の効率、利用範囲、機動性を高

めるものと予想される。 以上の状況を踏まえて、本調査研究では、水中音響通信に関して、

内外の技術動向の調査を行うとともに、今後の技術的発展性の見通しを検討した上で、水

中音響通信技術が発達した場合の海洋調査・海洋開発事業について水中音響通信を利用す

る効果、その課題と技術的期待事項、また水中音響通信を活用した新たな事業創出の可能

性について調査した。

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1.調査研究の概要

1.1 調査研究の目的

本調査研究では、水中音響通信に関して、国内外の製品の現状技術および市場、また国

内外における水中音響通信技術の研究開発動向を調査し、今後の技術的発展性の見通しを

明らかにする。水中音響通信技術が発達した場合の海洋調査・海洋開発事業について水中

音響通信を利用する効果、その課題と技術的期待事項、また水中音響通信を活用した新た

な事業創出の可能性について調査する。

1.2 調査研究の概要

本調査研究では、資料・文献調査の他に、水中音響機器の国内における利用状況を調査

するためアンケート調査を実施し、以下の調査検討を実施した。

1)水中音響通信技術とは

本調査報告書の技術的な理解に資するため、水中音響通信技術の基本を簡単に説

明した。

2)水中音響通信技術の現状

国内外で実際に販売されている製品や実用されている機器について、仕様につい

て調査・比較した。

3)水中音響通信技術の今後の研究開発動向

国内外の大学等の研究機関やメーカで実施されている研究開発について、ここ5

年間に発表された論文を調査分析し、今後の技術開発動向や技術的発展性の見通し

を明らかにした。

4)水中音響通信の利用状況

国内外で販売されている製品や実用されている機器が、実際に利用されている用

途、市場を調査した。また本調査研究で独自に実施したアンケート調査から得られ

た利用状況および問題点についても示した。

5)水中音響通信技術の適用分野について

本調査研究で独自に実施したアンケート調査結果および論文調査結果から、水中

音響技術の発展により、今後の適用分野拡大の可能性について分析した。

6)水中音響通信技術の高度化による新事業の創出の可能性の検討

今後の水中音響技術の発展による適用分野拡大を前提とした、新しい事業創出の

可能性および問題点について検討した。

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1.3 調査研究の体制

水中音響機器メーカ、ユーザ、学識研究者の10名による「水中音響通信の高度化によ

る海洋産業の発展と新事業創出等効果に関する調査研究委員会」を当海洋産業研究会内に

設置し、調査研究を行った。

委員長 竹内倶佳 電気通信大学名誉教授

委 員 橋本 猛 電気通信大学電気通信学部教授

越智 寛 (独)海洋研究開発機構海洋工学センター

海洋技術研究開発プログラム

海洋観測技術研究グループサブリーダー

酒井 浩 (独)港湾空港技術研究所施工・制御技術部制御技術研究室長

赤松友成 (独)水産総合研究センター 水産工学研究所水産情報工学部

行動生態情報工学研究室 主任研究官

倉本茂樹 (社)海洋調査協会 理事兼事務局長

小島淳一 (株)KDDI 研究所主幹研究員

深山哲夫 日本電気(株)電波応用事業部エキスパートエンジニア

高沖達也 三井造船(株)NGH プロジェクト室室長

白崎勇一 (有)マリン・エコ・テック 代表取締役

事務局 中原裕幸 (社)海洋産業研究会 常務理事

大貫麻子 (社)海洋産業研究会 主任研究員

河崎秀雄 (社)海洋産業研究会 研究員

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2.水中音響通信技術とは

水中音響通信技術は、水中音響技術とデジタル通信技術がベースとなっており、専門用

語を含めて一般的に理解しやすい技術とは言えない上、一般向きの適当なテキストが無い。

ここでは、本報告書の理解に 低限必要となる水中音響通信技術について整理する。

2.1 音波と電波の違い

陸上では、携帯電話や無線 LAN のように電波による無線通信が盛んであるが、水中で

の無線通信は音波で行なわれている。これは音波が電波に比べ水中での減衰が著しく少な

く遠くまで届くからである。図2.1は、海中における音波と電磁波(電波、光)の吸収減

衰を示したものである(1)。水中音響通信で良く使用される周波数帯(10kHz~100kHz)

で、例えば 10kHz の音波は、20m伝搬する間の減衰は無視できるほど少ないが、電波は

20m伝搬する間に信号の強さが 1/1000 に減衰することが分かる。なお、光波は、可視光

域の吸収減衰が極めて小さいが、海水中の浮遊物による散乱減衰が大きいため、水中通信

には適さない。

図2.1 海中での音波と電磁波(電波・光)の減衰(1)

電波は、電磁界が振動した波動で真空中でも伝搬するのに対し(空気中の電波の伝搬速

度は 30 万 km/s)、音波の伝搬には媒質となる物質が必要で、伝搬速度(水中では約 1500

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m/s)も電磁波に比べ5桁遅い。また水中音波は、電波に比べて、使用できる周波数帯域

が狭いため、単位時間当たり伝送できる情報量が少ない。

図2.2は、水中音響技術の利用例を使用周波数帯で示したものである(1)。音響通信に

ついては、100Hz~1MHz の周波数帯で示されているが、本調査で対象としているデータ

通信での周波数帯は、10kHz~100kHz である。魚類への影響については、多くの海産魚

類の可聴範囲が 1kHz 以下であるとされている(8)ことから、本調査で対象としているデ

ータ通信の影響はないと思われる。

図2.2 水中音響技術の利用例と使用周波数帯(1)

電波による無線通信技術では、携帯電話や無線 LAN に見られるような高速大容量デー

タ通信や、地球周回衛星との長距離通信、火星や土星衛星「タイタン」に送り込んだ探査

ロボットとの超長距離通信も実現されている。一方、水中音響通信では、通信の高速・大

容量化、長距離化は依然として開発課題である。

波動を利用するという点では同じであるのに、何故、水中音響通信技術は開発が遅れて

いるのであろうか?

その原因は、電波と音波の性質の違いにあり、水中を伝搬する音波の反射、吸収、屈折、

散乱などの複雑な振る舞いが技術開発を難しいものとしている。

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通信が成立するためには、送った信号を誤り無く確実に聞き分ける(受信する)必要が

あるが、受信点周囲の雑音が大きいと聞き取るのが難しくなる。また送った音が途中でそ

の周波数が変化するような作用(ドップラ効果)を受けた場合にも、どのように周波数が

変化したのか分からないと、聞き分けるのが難しくなる。

電波の場合には、使用周波数が規制されているため、電波雑音や反射波に対しては対策

が取りやすく、また電波の伝搬速度が極めて速いため、飛行機、ロケット、衛星のように

高速移動するものとの通信を除けばドップラ効果の影響は無視できる。

一方、音波は物質の中を伝わるという性質があるため、水中では、不規則に変動する自

然雑音や人工的な雑音が常時存在している。また音波の伝搬速度が遅いため、不規則なド

ップラ効果の影響を受けやすい。水中音響通信では、このような電波の場合とは異なる音

波の不規則な変動(変動のモデル化が難しい)に対して効果的な信号処理技術の開発が大

きな課題となっている。

2.2 水中音響通信システムの構成

図2.3は、水中音響通信システムの基本構成を示したもので、この図でセンサや観測機

器のデータが、どのようにして水中を伝送されるのか説明する。

水中音響通信では、観測機器からのデータは、 初にデータ符号器で、無駄な情報を送

らないようにデータを効率よく符号化する。これは、例えば、メールで大きなサイズのフ

ァイルを送る時に、圧縮ファイルにして送る作業に相当する。特に、画像データのように

大きなものは、JPEG や MPEG などの圧縮形式で送る必要がある。データ量が少ない場

合は、符号器による処理が不要である。

次に、通信路符号器で、通信路で発生する誤りを訂正する仕組みを原データに付加する。

ここでは、通信するデータに誤りが発生した場合、受信側でデータが誤っていることを検

出したり、またその誤りを訂正することができるような仕組みをデータに組み込む。

通信路符号器からデータは、デジタル変調器(モデム)で、超音波信号として水中を効

率良く伝送するに適した信号に変調され、送波回路で電力増幅された後、送波器から水中

に送出される。送波器は超音波を水中に出すデバイスで、スピーカに相当する。

一方、受波器は、超音波を受けるマイクに相当する。受波器で受信した信号は受波回路

で必要な大きさまで増幅され、また不要なノイズを除去するフィルタ処理が行なわれた後、

デジタル復調器(モデム)で復調され、デジタルデータが取り出される。

通信路復号器は、復調されたデジタルデータに誤りがないか調べ、誤りを検出した場合、

誤り訂正処理を行い、元来の送信データに復旧させる。但し、誤りの割合が多い場合には、

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復旧できない。

データ複合器は、例えば圧縮データファイルを伸張処理し、オリジナルデータ(センサ

や観測装置から送られたデータと同じ形式)を取り出す。

以上のように、水中音響通信によるデータ伝送では、水中という伝搬路の複雑な特性か

ら、長距離高速伝送ができない、データエラーを発生しやすい等の問題があるため、様々

な複雑な信号処理が必要になる。 近、CPU や DSP 半導体技術の進歩により、小型の回

路でこの信号処理が可能となったことにより、小型で低消費電力の実用的な水中音響デー

タ通信装置が実現してきた。

データ符号器

通信路符号器

デジタル変調器 送波回路

送波器

データ復号器

通信路復号器

デジタル復調器 受波回路

受波器

データ

データ

ノイズ多重反射波

信号 拡散減衰

ドップラシフト

図2.3 水中音響通信システムの基本構成

なお、母船と有人潜水調査船やダイバーとの通信に利用されている水中通話機は、デー

タが音声であり、構成も図2.3と異なり、2.8で述べるようにアナログ変復調器が主と

なっている。

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2.3 送受波器の特性(感度、指向性)

送波器、受波器には、通常、電気音響変換効率の良い圧電セラミック振動子が用いられ、

その寸法・形状は、必要な感度や指向性によって決められる。なお、圧電セラミックは、

圧力を加えて歪みを与えると電界を発生し、逆に電界を印加すると歪みまたは応力を発生

する性質(圧電効果)を有する材料で、同じものが送波器としても受波器としても使用で

きるので、送受波器と呼ぶことが多い。

送受波器の感度特性として送波感度(印加した電圧に対する送波音圧の比)と受波感度

(受波した音圧に対して発生する電圧)があり、圧電セラミックの材料や振動子の設計で

決まる。通常、圧電セラミック振動子は、機械的な共振特性を利用して感度を上げている

ため、感度の良い周波数の範囲が狭くなり、通信帯域が狭くなる。これは、データ伝送速

度を早くできないことにつながる。このため、高速データ通信用には、広帯域で高感度な

特性が得られる特殊構成の振動子が採用されている。

送受波器の指向性は、振動子の振動面の面積と波長との関係で決まり、波長に対して

振動面の面積が大きいほど、また、波長が短いほど鋭い指向性が得られる(図2.4)。

送受波器小 大

図2.4 指向性の比較(同一周波数の場合)

通常の水中音響通信用途では、ほぼ無指向性の送受波器を用いるが、長距離通信では、

送受波器に指向性を持たせることで音響パワーを一方向に集中させ(指向性利得を稼ぐ)、

無駄な電力消費を抑えるために指向性をつけた送受波器が使用される。

また図2.5に示すように、浅海域での水平方向の通信を行う場合、広い指向性の送受波

器を用いると、送波器から出た音波は海面や海底面で多重反射する。受波されるのは、同

図(a)のように送波器からの直接波と複数の多重反射波が重なったものとなるが、高速通信

のためには悪影響を及ぼす。このため、同図(b)のように音響パワーを一方向に集中させ

ることで、不要な反射(海面や海底での反射)を減らし多重反射の影響を軽減するため、

指向性をつけた送受波器が使用される。

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図2.5(a)

図2.5(b)

2.4 海水中を伝搬する超音波の特性(音速、減衰)

超音波が海水中を伝播する際の速度(音速)は、水温、圧力、塩分濃度に関係し、それ

ぞれの値が大きいほど音速は早くなる。図2.6は、水深によって、音速が変化している例

である。ただ通常は音速 1500m/s として扱うことが多い。

図2.6 海中での音速の変化の例(4)

音速が、図2.6に示すように、深さによって変化していると、音波は屈折するため、そ

こを伝搬する超音波は直進しないことになる。図2.7は、その例であり、シャドウゾーン

送波器 受波器

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(音が到達しない領域)が出来ることが分かる。これは、特に長距離通信する場合に注意

する必要がある。

図2.7 海中での音の伝搬(4)

超音波は、海水中を伝播する間に、拡散され、吸収されて減衰していく。拡散による減

衰は、一点から送出された超音波が球面状に広がりながら伝播していく場合(球面拡散と

いう)、距離 R 離れた点での拡散損失(dB)は、20logR で与えられ、1/R の大きさに減衰し

てしまう。つまり 1000m離れた点では、超音波の大きさが 1/1000 になってしまう。ただ

し超音波が浅い海を遠距離伝搬していく場合には、拡散は球面状ではなく円筒状に広がる

ため、その損失(dB)は 10logR で与えられる。

一方、超音波は、伝播する海水の物理的化学的特性に関係して減衰し(吸収損失という)、

吸収減衰率 αは超音波の周波数が高いほど減衰は大きくなる(図2.8)。例えば、50kHz

の超音波が 1000m伝播する間の吸収減衰だけで大きさが 1/10 となるのに対し、周波数が

20kHz の超音波では、6/10 で済む。

従って、超音波が海水中における伝播損失 TL は、拡散損失と吸収損失の和で、次式で

与えられる。

TL = 20logR + αR (dB)

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図2.8 海水中における音波の吸収減衰(1)

2.5 海中の雑音

通信できるかどうかは、受信点での雑音の大きさに対し、受信信号がどの程度大きいか

に関係する。従って、水中音響通信装置の設計に当っては、雑音の大きさ・周波数帯をど

のように想定するかが、非常に重要になる。想定した雑音レベルが、実際に使用する環境

より小さいと、受信データの誤り率が大きなものとなり、「これは使い物にならない!」と

失望を招く一因となる。

海中雑音の原因として、風波、降水、生物、航行船舶や沿岸近くの人工雑音等の周囲雑

音と、送受波器を設置している船舶が出す騒音や他の音響機器からの雑音、送受波器が水

を切ることによって発生する雑音等、大きさも周波数帯も様々である。また雑音としては、

この他に、受信機内部の電気的な雑音や、船舶無線を含む船舶の電子機器からの電磁干渉

ノイズもある。

図2.9は、船舶航行雑音の他に、海中雑音として波高や風速などによる雑音を示したも

のである。

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図2.9 海中の雑音

2.6 ドップラ効果の影響

ドップラ効果とは、音源が移動すると、実際の周波数の音とは異なった音に聴こえる現

象で、例えば、救急車のサイレン音が、近づいてくる時は、実際の音よりだんだん高くな

るように聞こえ、遠ざかるときにはだんだん低くなって聞こえる現象である。

送信点や受信点が船に装備されている場合、船の移動や動揺により、音波は不規則なド

ップラ効果の影響を受け、周波数が僅かに変動する(ドップラシフト)。もし、2.8で

後述する位相変調方式のモデムを使用している場合には、送信側も受信側も位相は同じ周

波数に対して決められているから、受信した信号の周波数が変化していると、受信波の位

相検出の際に、送信側での送信位相と異なるものとして認識されることになる。

ドップラシフトが大きくなく規則的であれば、受信側で、周波数の変動を自動的に補償

してやることで、位相検出に及ぼす悪影響を軽減することができる。しかし、ドップラシ

フトが不規則な場合には、補償は難しい。

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2.7 音響データ通信における通信距離、データ伝送速度

次に、どこまで通信できるのか(通信距離)は、どのようにして決まるのかを簡単に考

える。送波器から出た超音波(大きさ Pt)は、距離 L伝播する間に、TL 減衰し、受波器に

到達する。その時の超音波の大きさは Pr、

Pr = Pt - TL

である。この時に受信点での雑音の大きさが Nであったとする。Pr が N より、どの程度大

きければ、受信後にデータを誤りが少なく取り出せるのかは、どのような変調方式を用い

るのかで異なってくるが、Pr/N が大きいほど、誤り率は小さくなる。実際問題として、使

用する周囲環境の雑音には減らすことができないものもあるので、それ以外の対策可能な

雑音(船のエンジンやプロペラからの雑音等)の低減を図ることになる。なお送信する超

音波の大きさ(Pt)を大きくするのも有効であるが、その分、送信側での電力消費が多く

なる。

一方、どの程度、データを速く伝送できるかというデータ伝送速度は、毎秒当りに伝送

するビット数であるが、これは、使用する周波数帯域と変調方式に関係する。広く周波数

を使用すれば、高速でデータ伝送ができる(いわゆるブロードバンド通信)が、2.2で述

べたように、超音波送受波器の特性(感度・周波数特性)は、通常、使用する周波数の数

分の一であるため、簡単な変調方式では、データ伝送速度は速くできない。このため、様々

な変調方式が導入され、高速化が図られるようになってきた。

以上のように、水中音響によるデータ伝送装置における 大通信距離、データ伝送速度、

データ伝送品質(データ誤り率)等の主要仕様は、実際に使用される環境(ノイズ、多重

反射、フェージング、ドップラシフトなど、安定した通信を行なう上で大きな支障となる

ものが存在する)が十分考慮されて決められる必要がある。しかし、カタログ製品の多く

は、このような使用環境条件が明示されていないため、仕様に記載された性能が得られな

い場合もあり、ユーザに水中音響通信装置の有用性に対する誤解を与える一因となってい

る。

2.8 モデム(変復調器)の方式

データや音声信号を超音波周波数に乗せるための変調器と、受信した超音波信号から元

のデータや音声を復元する復調器には、アナログ方式とデジタル方式がある。

2.8.1 アナログ変復調方式

水中音響通信で用いられるアナログ通信は、機器の簡便性及び規格の統一性の観点から

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SSB-AM(Single Side Band – Amplitude Modulation:片側波帯振幅変調)方式を用い

ているものがほとんどである。

船舶用水中通話機を例にとって、SSB-AM 通信の原理を図 2.10 に示す。送受波器の感

度の良い周波数の信号(搬送波)は、マイクから入力された音声信号により図2.10(a)の

ような振幅変調される。それにより、搬送波が除去され、さらに搬送波を中心に上下の周

波数に側波帯が生じる。情報を伝送する場合は、側波帯の片側しか必要がないため、片側

(この場合下側波帯)がバンドパスフィルタにより除去された後、電力増幅器と送波器に

より音響信号として海中に送波される。受信側では、搬送波が加えられ、検波された後、

フィルタを通って音声が復調される。

図2.10(a) アナログ振幅変調波形

LPF BPF

平衡変調

搬送波

音声

出力

受信信号送受波器

f復調波  f

搬送波

f

搬送波

LPF BPF

平衡変調

搬送波

音声

入力

送信信号増幅器・送受波器

下側波帯 上側波帯 f変調波  f

搬送波

上側波帯 f

搬送波

復調器

変調器

図2.10(b) SSB-AM 変復調の原理

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2.8.2 デジタル変復調方式

データデジタル伝送では、図2.3に示すように、伝送するデジタルデータ系列を変調し、

通信路に送出したものを受信機で受波・復調を行って、元のデータ系列を復元する。受波

した信号は、通信路において様々な外乱により歪みを受けているため、この歪みを補償し

て、元のデータ系列を復元できるようにするために様々な変調・復調方式が考案されてい

る。

一般に広く使われているデジタルデータの変調方式として、

振幅変調方式: Amplitude Shift Keying(ASK)

周波数変調:Frequency Shift Keying (FSK)

位相変調:Phase Shift Keying (PSK)

直交振幅変調:Quadrature Amplitude Modulation (QAM)

が挙げられる。

図2.11 に、ASK、FSK、PSK の各変調方式での変調波形を示す。

図2.11 ASK、FSK、PSK の各変調方式での変調波形

ASK 方式は、送受波器の感度の良い周波数帯域から1つの周波数を選択し、デジタル信

号の‘1’または‘0’に応じて、この周波数の信号を‘ON’、‘OFF’させて伝送する方式である。

FSK 方式は、同じ周波数帯から 2 つの周波数を選択し、‘1’または‘0’に応じて、この二つの

周波数を切り替えて伝送する方式である。4つ以上の周波数に割り当てて使用する場合は、

MFSK (Multiple FSK)と呼ばれる。

PSK は、一つの周波数の信号の位相を、デジタル信号の‘1’または‘0’に応じて変

えて伝送する方式である。PSK の場合も多値化が可能で、多値数 M を用いて、M 相 PSK

と呼ぶ。2 値及び 4 値の場合は、BPSK・QPSK と呼ぶことが多い。M=4 の場合の QPSK

の波形例を図2.12 に示す。

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45°3

(11)

135°1

(01)

225°0

(00)

315°2

(10)

開始角度割当符号(2進表現)

図 2.12 QPSK の波形例

また、M=2,4,8 の場合の信号空間ダイヤグラムを図 2. 13 に示す。

I (同相成分)

Q (直交成分)

3

20

1

I (同相成分)

Q (直交成分)

3

2

0

1

4

5 6

7

(a) BPSK

I (同相成分)

Q (直交成分)

0 1

(b) QPSK

(c) 8-PSK

図2.13 PSK の信号空間ダイヤグラム

一方、QAM は、デジタル信号を位相・振幅の異なる信号点にマッピングし、受信側で

は、その位相と振幅両方を検出して元のデータを復元する方式である。多値数 M を頭につ

けて M 値 QAM という呼び方をする。16 値 QAM の信号空間ダイヤグラムを図 2. 14 に示

す。水中では、8 値・16 値 QAM が報告されている。

図 2. 14 16-QAM の信号空間ダイヤグラム

0

1

2

3

4 5

6 7

89

1011

12

13

14

15

I(同相成分)

Q(直交成分)

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PSK、QAM 共に、多値化すると共に必要とされる SN 比が増大するが、使用する周波

数帯域は同じで済むので、帯域制限される水中通信路で伝送速度を高速化するために、使

用されることが多い。

また、PSK では、ドップラ効果によるドップラシフトは、位相変化を引き起こす検出エ

ラーを発生させることになるため、通常は、復調方式では,PSK および QAM の位相を用

いた変調方式に対しては,アダプティブフィルタを用いる。これは、送受波器及び通信路

の特性の逆特性をフィルタで形成することによって、元のフラットな特性を得るために使

用される。

2.8.3 スペクトラム拡散通信

現在のデジタル伝送技術の中核をなすのが拡散スペクトラム技術で、少ない電力で高速

かつ遠距離へのデータ伝送が可能となっている。これは、デジタル信号を拡散符号と呼ば

れる信号によって元の信号より広い帯域に拡散させた上で送信し、受信側で同じ拡散符号

によって元のデジタル信号を復元する技術で、陸上では、無線 LAN の IEEE 802.11 シリ

ーズや、近距離無線通信規格のBluetooth、CDMA方式の携帯電話などで使用されている。

この方式は、情報を含めて広帯域に拡散するため情報の冗長度を増したことになり、伝

搬中に受けた干渉波や雑音は受信側の逆拡散で除去されるため、周波数利用効率が高い、

耐干渉性と耐雑音性(雑音に強い、マルチパスやフェージングに強い)、秘匿性が高いな

ど優れた特徴がある。

図 2.15 スペクトラム拡散方式(SS方式)の基本原理

この技術は変調の方式により次の3方式に分かれる。

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・直接拡散変調(DS DirectSequence)

・周波数ホッピング変調

・チャ-プ変調

近、このスペクトラム拡散通信技術の特徴が、従来、水中データ伝送で問題となって

いた電力効率の問題や妨害干渉対策に有効なことが注目され、周波数ホッピング変調方式

およびチャープ方式が、水中データ伝送でも導入されている。なお、拡散スペクトラム変

調は、図 2.12 に示すように、BPSK・QPSK などの従来方式の一次変調に加えて適用され

る。

直接拡散方式は、元となる信号に擬似雑音をまぜ、元信号より広い周波数にデジタル信

号を拡散させ、受信側では拡散信号を使い拡散信号を合成する事により元信号を再現する

方式である。

周波数ホッピング方式は、 元信号を非常に短い間隔で別の周波数上を切り替えてゆき時

間的に別々の周波数に拡散させるもので、次々に送信周波数を変更していくため、特定周

波数でノイズが発生した場合も他の周波数で通信したデータによって訂正が可能で、ノイ

ズの少ない周波数を選択して送信することもできる。この方式は直接拡散方式より回路が

単純で低消費電力化可能である。

チャ-プ方式は周波数ホッピングと考え方は似ているが、周波数を乱数ルールにより連

続的に変化させている。

2.9 誤り検出と誤り訂正機能

水中通話機のようなアナログ通信では、 終的に情報を受け取るのは、人間であるため、

通話機に誤り検出や誤り訂正機能は不要である。一方、デジタルデータ通信では、受信し

たデータの誤りが許されない用途がある。例えば、受信データで何らかの機器を制御した

りする場合がそうである。このような高信頼度が要求されるデータ伝送では、誤り検出や

誤り訂正機能が不可欠である。この場合、送るべきデータビットに、余分なビット(誤り

検出や誤り訂正を行なうために必要となる)を付加して送ることになるため、実データの

伝送効率は悪くなる。

デジタル通信路の品質はビット誤り率(BER)で表される。例えば、BER=10-3とは、

1000 ビットのデータを受信した時に、誤りとなったビット数が1つという意味である。

誤りには、ランダム誤り(伝送ビット列中で、ばらばらに不規則に発生する誤り)と、

バースト誤り(伝送ビット列中の一部に集中して連続的に発生する誤り)があり、それぞ

れに対応できる誤り検出方式が考案されている。良く知られているのがパリティチェック

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や CRC(Cyclic Redundancy Check)符号で、パリティチェックはランダム誤りに効果的

で、CRC はバースト誤りに効力がある。

双方向でのデータ伝送が出来る場合、確実なデータ伝送を実現するため、受信データに

誤りが無ければ ACK(肯定応答)を送信側に送り返し、次のデータの受信に移る。誤りが

ある場合は、NAK(否定応答)を返し、そのデータの再送を要求するという再送要求(ARQ:

Automatic Repeat Request)方式が採用される。但し、この方式は、データ更新の効率は

良くない。

一方、一方向のデータ伝送しか出来ない場合や、伝送遅延を少なくするためには、誤り

訂正符号を付加した信号を送信することにより、受信側で誤りの訂正を行なう誤り訂正

(FEC: Forward Error Correction)方式が採用される。受信側で、誤り訂正符号を利用

してデータ列の中の誤りが発生した場所を特定し誤りを修正し正しいデータに復旧させる。

誤り訂正符号としては、2 つ以上のランダム誤りに対する誤り訂正可能な BCH 符号や、

バースト誤りに対する誤り訂正可能なリードソロモン(RS)符号等、多くの符号が考案さ

れ、使用されている。ただし、あらゆる種類・長さの誤りに対応できる符号は無い。

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3.水中音響通信技術の現状

水中音響通信技術を製品化したものとしては、(1)アナログ変調方式の水中通話装置、

(2)バイオテレメトリー用の片方向データ伝送装置、(3)デジタルデータ通信方式の双方向

のデータ伝送装置がある。本章では、国内外で、製品として販売されているもの、および

特注品ではあるが実際に使用されている機器を中心に調査した結果を整理した。また、そ

れらの機器が使用されている例についても整理した。

3.1 アナログ変調方式の水中通話装置

水中通話機は、水中での音声信号の伝送に音波を利用した無線送受信システムである。

水中の潜水船或いはダイバーと、船上との連絡手段として使用される。

水中通話機の開発は、1970 年代初頭に潜水艦の通信の確保のために、米海軍が UQC や UWC

と呼ばれる装置を開発したことに始まる。開発された水中通話機は、やがて製品化され,

民間の潜水調査船用として一般にも販売されるようになった。その後、水中通話機は、潜

水調査船の作業者間の作業指示や緊急時の連絡のためには、不可欠なものとなり、潜水調

査船の運航規則でも必ず装備しなければならない装置に定められた。

一方、スキューバ潜水の普及に伴い、レジャーダイビングや潜水業務の事故防止のため

に、簡便な水中通話機の開発が望まれてきたが,近年,安価な市販品を入手することが容

易になった。水中通話機は、トランシーバと同様の単信方式である。変復調方式について

は2.6で述べたように SSB-AM 方式を用いるものがほとんどであるが、デジタル方式の

ものも研究されている。

音声増幅 変調

通話

呼出

送受信器

送受波器

送話器

呼出ボタン

受話器

送信増幅

呼出発信

音声増幅 復調 受信増幅

送話器

呼出ボタン

受話器

送受波器

図3.1 水中通話機の構成(1)

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3.1.1 潜水調査船用水中通話機

有人の潜水調査船と母船との間の通信に使用されている水中通話機は、潜水船の運航に

は不可欠な装置である。潜水調査船(軍事用の潜水艦も含む)では、遭難時に救難を相互

に行うことが国際的に取り決められており,搬送波周波数 8.08751kHz,変調方式 SSB-AM

(上側波帯),伝送帯域 2.5kHz という仕様で統一されている。

(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「しんかい 6500」システムでは、大深度,広

範囲のサービスエリアをカバーする必要があるため、母船側の通話器のビーム(送受波指

向性)を鋭くし、ビームを切り替えて潜水船に向けることにより,音響出力を増加させ,

潜水船側での S/N の向上を図っている(図3.2)。この装置の仕様を表3.1 に示す。

母船

潜水船

図3.2 潜水船用水中通話機の通信範囲(1)

表3.1 「しんかい 6500」用水中通話機の仕様(1)

項 目 仕 様

種 別 母船側 潜水調査船側

搬送波周波数 8.0875kHz±5Hz

8.0875kHz±5Hz

変調方式 SSB-AM

(上側波帯)

SSB-AM

(上側波帯)

伝送帯域 2.55kHz 2.55kHz

潜水船

母船

90。

2,000m

4,000m

6,500m

φ4,000m

「しんかい2000」システムの通信指定範囲

「しんかい6500」システムの通信指定範囲

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送受波器指向角 32°±5°x 9 本 ±45°

送波レベル 208dB (re 1µPa at 1m)以上 208dB (re 1µPa at 1m)以上

潜水調査船用の水中通話機の運用に際しては、様々な場所からの反射や残響が残るため、

聞き取りにくくなる場合が多く、海底と海面間での反射の影響で更に長い(数秒間にわた

る)残響時間が生じる。そのため、通話は簡潔に行い、更に相手の信号が受信された後、残

響が消えるまで、十分な受信時間を空ける必要があり、円滑な通信のためには、多少の熟

練が必要である。

3.1.2 ダイバー用水中通話機

1980 年代から、スキューバ潜水の普及が急速に進んだことに伴い、事故防止の観点から

小型簡便な水中通話機の開発がなされてきた。表3.1に、市販されている製品例を示す。

その装置の中から例として、米国 OTS 社の AQUACOM の外観を図3.3に示す。通信範

囲は静穏海域で 3km、シーステート 6 で 200m(共に公称値)となっている。ダイバーが携

帯する装置は、小型軽量なバッテリ駆動のものであり、通常、ウェイトを取り付けるベル

ト或いは肩に装着される。支援船に搭載される装置の送信電力はダイバー側よりも大きい

ため、通信範囲の違いからダイバー側では傍受可能でも船上では不可能な場合もある。ま

た、地形によって音響的な陰になり、通信が途絶する場合もあるので、ダイバーの行動範

囲には十分な配慮が必要である。また、潜水調査船用の水中通話機と同様に、通話に際し

ては、簡潔な言葉ではっきりとしかもゆっくり繰り返し行うことが肝要である。

図3.3 Aquacom® SSB-2010(OTS 社)

(出典:http://www.oceantechnologysystems.com/ssb_2010.shtml)

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3.2 バイオテレメトリー用の片方向データ伝送装置

バイオテレメトリーは、魚類や海産哺乳類等の水中生物の生態調査のために装着する小

型装置である。 も簡単なものは、識別パルス音(一定の周波数のバースト音)のみを発

信する超音波発信器(ピンガ)である。水中生物にピンガを取り付け、小型船の舷側に設

置した指向性のある受波器で受信音波(識別パルス音)の 大感度を求めながら、方向を

定めて追跡し、魚類の行動軌跡を推定することで、平均的な移動経路を把握することがで

きる。この装置に水圧センサ、水温センサ、心拍センサ等を追加して、それらの信号の大

きさを識別パルス音の間隔に変換して(パルス間隔変調方式)、水中生物の心拍や遊泳し

ている深度や水温を伝送するデータ伝送装置も開発されている。

ここでは、VEMCO 社(www.vemco.com)の超小型装置について調査した。

VEMCO 社は、様々な種類のピンガを製品化しているが、その中で も小型の V7 と も

大型の V32 について、図3.4(a)(b)に示す。

図3.4(a) V7 型の小型ピンガ

(周波数は 69kHz,バッテリ寿命は発信頻度に依存し 14 日~75 日)

図3.4(b) V32 型の小型ピンガ

(周波数は 28.5,30.0,31.5,33.0kHz の中の一つ)

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3.3 デジタルデータ通信方式の双方向のデータ伝送装置

本調査研究では、国内外で実際に販売されている製品や実用されている機器について、

国内2社、国外5社の技術・製品を調査・整理した。なお、国内については特注品が多く、

カタログ製品化されたものはないので、公表された論文および本調査研究委員が入手した

資料をもとに、仕様を調査した。

国外について、米国の LinkQuest 社, Benthos 社、英国の Sonardyne 社、フランスの

ORCA 社、ドイツの Evo Logics 社の製品について調査した結果を、表3.3、表3.4に

示す。なお、国外においても特注品はあるが、仕様の入手が困難であるため調査対象から

除いてある。一方、我が国においては、特注品がほとんどであるが、資料を入手した

JAMSTEC および(株)KDDI 研究所の装置の仕様を表3.5に示す(5)(6)。

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表3.2 ダイバー用水中通話機の製品

Divelink UnderwaterCommunications

ORCATRON CommunicationsLtd.

富士工業(株)

Aquacom® SSB-2010 Aquacom SSB-1001B COM-UC01 Scubaphone Model 2000D MODEL 102

最大通信距離1,000 m以上(静粛時).100m(Sea State 6)

1,500 m以上(静粛時).150m(Sea State 6)

300m 1000m 500m

最大使用深度 60m 100m 40m変調方式 SSB SSB SSB SSB SSB

使用周波数: 31 to 33 kHz. 25 to 31 kHz. 31.250kHz 28.5kHz 32.768kHz音声帯域 300-4,000 Hz 400-5000Hz 音声、ビープ音

通話チャンネル 4 8送信電力 3 W 10W 1W 1W

使用電源単三アルカリ電池8個/ニッ

カド電池パック単三アルカリ電池8個/ニッ

ケル水素電池パック充電式ニッカド電池 充電式ニッカド電池 9Vアルカリ電池(6LR61)1個

電池寿命送信率10%で連続12 H(アルカリ電池)/連続6H

(ニッカド電池)

送信率10%で連続12 H(アルカリ電池)/連続13H

(ニッケル水素電池)送信率 20%で連続4H以上 送信率 15%で連続14H以上 送信率10%で連続8H

寸法 193H×90W×46D mm 193H×90W×46D mm 45H×67W×80D mm

水中重量 750g 約530g(電池含まず)

URL http://www.divelink.net/ http://www.orcatron.com/sp1.html http://www.fuji-us.co.jp/sea/http://www.oceantechnologysystems.com/index.shtml

Ocean Technology Systems(OTS)

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表3.3 外国の水中データ伝送装置(製品-1)

LinkQuest Inc. UWM2000 UWM3000 UWM4000 UWM10000 ATM-885 ATM-887

音響データ伝送速度(bps)

17,800 17,800 5,000 8,500 5,500

使用周波数:(帯域)26.77~ 44.62 kHz(17.85kHz)

26.77~44.62kHz(17.85kHz)

7.5~12.5 kHz(5.0kHz)

12.75~21.25 kHz(8.5kHz)

8.25~13.75 kHz(5.5kHz)

変調方式

最大通信距離(m)

350 m 1,500 m (狭ビーム),1,200 m (無指向性)

3,000 m or 5,000m (ハイパワータイプ)

4,000 m 10,000 m記載無し 記載無し

狭ビーム:200 m(洋上ユニット),1000 m (海底ユニット)無指向: 2000 m

誤り訂正方式

伝送誤り率

1 W (広ビーム, 狭ビーム)

1 or 4 W (狭ビーム)

2 W (無指向) 2 or 8 W (無指向)

消費電力(受波時) 0.75 W 0.8 W 1 W 1 W 1 W

送受波器指向性

120° (広ビーム)210° (無指向),70° (狭ビーム)

60° (狭ビーム),210° (無指向)

210° (無指向) 70° 70°

使用環境温度

全長235.7 mm 249.7 mm 236 mm 286 mm 580 mm

775 mm 851 mm

直径: 87.2~126.2 mm 87.2~126.2 mm 126 mm 144 mm 150 mm 89 mm 127 mm

空中重量 4.2 kg 4.8 kg 4.1 kg 7.6 kg 21 kg 10.9 kg 16.3 kg

水中重量 2.3 kg 2.6 kg 1.9 kg 4.1 kg 5.0 kg 7.7 kg

URL www.link-quest.com www.benthos.com/

3,000m or 6,000m

周波数ホッピングスペクトラム拡散方式(FH-SS)

28W

10-9 以下

LinkQuest Inc.

-2 to 45 °C

消費電力(送波時)

3 ~ 12 W 7 W 50 W

最大使用水深

200 m 7,000 m2,000m or 6,000m

0.35W

無指向性

BENTHOS

2,000m 6,000m

10-7 以下

MFSK

100~2,400

9-14kHz, or 16-21kHz, or 25-30kHz (5kHz)

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表3.4 外国の水中データ伝送装置(製品-2)

Sonardyne

MATS12 MATS53 TIVA2000 TIVA6000 Type 8057 S2C M1 Modem S2C 280

音響データ伝送速度(bps)

20~2,400 20~4,800 19,200 9,600 1,200 33,333 20,000

使用周波数:(帯域)10~14kHz

(4kHz)50~58kHz

(8kHz) 53kHz(10kHz) 26kHz(5kHz) 14~19kHz (5kHz)48~78kHz

(30kHz)40~80kHz(40kHz)

変調方式 スペクトラム拡散

最大通信距離(m) 記載無し 記載無し 記載無し 記載無し 記載無し 2000m 2000m

誤り訂正方式

伝送誤り率

消費電力(受波時) 3.5W 2.5W

送受波器指向性±90°(浅海用)±30°(深海用)

使用環境温度

全長 400mm 420mm

直径: 130mm 170mm

空中重量 70kg 7.3kg 27kg

水中重量 8 kg 50kg 3.2kg 12kg

URL www.sonardyne.co.uk

消費電力(送波時)

最大使用水深

ビタビ復号

16 kg

ORCA Instrumentation

PSK2 or PSK4

2000m 6000m

チャープ周波数ホッピングPSK2/PS

2,000m or 6,000m

無指向性タイプ or 有指向性タイプ

Evo Logics

www.orca-inst.com/

3000m

10-7 

以下

100m 6000m

700 mm

140 mm

Sweep-Spread Carriercommunication Method

www.evologics.de

±30°

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表3.5 我が国の水中データ伝送装置

うらしま搭載 AQUA EXPLORER 2 搭載

画像伝送用 コマンド用 低速データ通信 高速データ通信

データ伝送速度 16 kbps (4-DPSK) 2.4 kbps (MSK) 125/250bps 16 kbps

(変調方式) 24 kbps (8-DPSK) (FSK) (QPSK)

32 kbps (16-QAM)

48 kHz (母船→AUV)周波数 20 kHz 9.5 kHz

40 kHz (AUV→母船)55 kHz

帯域幅 16~24 kHz 8.3~10.7 kHz 50~60 kHz

通信距離 4100m 1500m 1600m

送受波器指向

性 80° 無指向性 ±45°

誤り訂正符号 リード・ソロモン

AUV→母船 母船→AUV 双方向 AUV→母船

(出典:文献(5)(6)より作成)

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3.4 水中音響通信技術の利用例

国内外で販売されている製品や実用されている機器について、実際に利用されている

用途、市場を調査した。その結果、以下の使用例が見られた(図3.5)。

1)有人潜水調査船からの映像データ送信

2)AUV(無索式水中ロボット)との通信(観測データ伝送、制御コマンド伝送)

3)AUV(無索式水中ロボット)間での通信

4)海底津波計や海底地震計からのリアルタイムでのデータ伝送

5)流向流速計(ADCP)からの観測データの伝送

6)波高計や水質センサによる観測データの伝送

7)長期間、海中や海底に設置している観測機器の定期的な点検(作動状態確認不要)

8)吊下式観測装置や曳航式観測装置からの観測データ伝送(特殊なケーブルが不要)

9)中層係留系による複数のセンサからの観測データの伝送

10)海底石油ライザー管の振動や立上がり部の曲げ歪みの計測データの伝送

11)魚網からのデータ(深度、水温、映像)の伝送

12)人工魚礁、定置網、生簀等の観測(水質、画像)データの伝送

13)バイオテレメトリ(潜水深度、水温データの伝送)による生態観測

14)ダイバーと監視船との間の通信、ダイバーの安全監視

15)ダイバー間での簡易通信(簡単な作業連絡等)

3.4.1 有人潜水調査船からの映像データの伝送(1)

画像伝送装置は,音響通信のデータに画像を使うもので、乗員数の少ない深海潜水調査

船から母船へ画像を送ってリアルタイムで多くの研究者と画像情報を共有することや、無

人潜水機の制御確認用に利用されることが多い。画像の伝送においては,情報量が極めて

多いので、伝送速度をいかに高速にするかということと、伝送量をどのように圧縮するか

ということが問題となる。テレメトリ等に比較すると求められる誤り確率は 1 桁から 2 桁

悪くても影響が少ない(10-4程度の誤り率が得られれば良い)という特徴がある。

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図3.5 水中音響通信技術の応用例

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(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)の有人潜水調査船「しんかい 6500」用の画像伝送

装置は、中心周波数 20kHz,帯域幅 8kHz

で,QPSK 変調を行うことにより、16kbps

の伝送速度を実現している。256x240ピク

セルのカラー静止画像を 8 秒に 1 枚の割合

で伝送が可能である。図3.6に本装置の

ブロック図を示す。テレビカメラで撮影し

た画像データをビデオメモリに取り込んで

静止画とした後、DCT(Discrete cosine

transform)符号化を行い約 1/12 に圧縮す

る。このデータを QPSK 変調し、パワーア

ンプで増幅した後、送波器から水中に送信

する。受信側では、受波器で受波した信号

を、増幅・フィルタリングし、AGC を通し

た後、アダプティブフィルタリングを行

う。

図3.6 「しんかい 6500」システム用画像伝送装置のブロック図(1)

アダプティブフィルタはフラクショナリ・スペース型のトランスバーサルフィルタと位

相補償回路の組み合わせで構成されている。更に、画像復号を施し、ビデオメモリ上に展

開して、モニタ画面に表示する。

3.4.2 AUV(無索式水中ロボット)との通信

AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律航行型水中ロボット)は、コンピュータと

動力源を内蔵し、装備した各種の航行用センサの情報をもとに、外界の状況を判断し自律

的に行動する水中ロボットである。AUV は、①内蔵コンピュータがほとんどの制御を行

うインテリジェントなロボットで、運用が簡単、②母船とロボットを結ぶケーブルが無い

のでケーブルウインチ等の船上設備が不要、③浅海用でも深海用でもほとんど変わらない

大きさに設計できる、④小型船での運用が可能なため、低運用コストでの各種調査を実現

できる等の特徴を有しており、科学研究・調査分野の他に、海底石油分野、海底ケーブル

分野では、商用 AUV が活躍している。このような AUV からの調査データの伝送、AUV

受信機(母船上)

TVモニタ

VTR

ビデオメモリ画像復号器

復調器(アダプティブフィルタ・位相補償器)

受波器

広帯域送波器

パワーアンプ

変調器

画像符号化器 ビデオメモリ

水中TVカメラ

送信機(潜水船搭載)

超音波伝送

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への制御データの伝送に水中音響通信装置が使用されている。AUV には音響雑音源とな

る他の音響機器(トランスポンダ、各種ソナー類)が狭いスペースに複数装備される上、

母船とは独立して自由に走行するためドップラ効果の影響も大きい等、水中音響通信装置

にとっては厳しい使用環境となっている。

1)JAMSTEC の深海巡航型 AUV「うらしま」の例(1)(5)

「うらしま」は、 大潜航深度 4,000m、航続距離 100km(燃料電池に換装後 300km)の

性能を有する AUV (Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人探査機)で、母船との

双方向の音響通信装置を装備している(図3.7)。AUV から母船へ(アップリンク)は、

高速で画像及び航法データを伝送する。母船から AUV へ(ダウンリンク)は、制御コマ

ンドを伝送する。アップリンクでは、画像データを伝送するため,高速(16/24/32kbps 切

り替え)で伝送が可能となっている。ダウンリンクでは、伝送速度 2,400bps の MSK 変調

(Minimum Shift Keying:CPFSK の 1 種)方式で、コマンドを伝送しており、スラスタの

回転数・舵角・浮量調整・観測装置の制御等が可能である。

図3.7 AUV「うらしま」の水中音響通信装置(1)

2)(株)KDDI 研究所の海底ケーブル調査用 AUV「AQUA EXPLORER」(株)KDDI

研究所の海底ケーブル調査用 AUV「AQUA EXPLORER」には、 大潜航深度 500mの実

用機「AQUA EXPLORER 2」(AE2)1 基と 大潜航深度 2000mの商用機「AQUA

EXPLORER 2000」(AE2000)2 基(図3.8)があり、それぞれ、低速データ通信用音

響通信装置(双方向)と高速データ通信用音響通信装置(片方向)が装備されている。

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低速データ通信用は、AUV の監視と制御を確実にするため、高速伝送は出来ないが、

多重反射やドップラシフトに比較的強いFSK変調方式を採用し、伝送速度を 125~250bps

に下げ、誤り訂正と再送による信頼性を上げている。

一方、高速データ通信用は、AUV が搭載している TV カメラの映像(静止画)を母船に

伝送するため専用であり、通信速度が 16Kbps、32Kbps、64kbps のものが開発されてい

る。TV カメラで撮影したフレームを画像圧縮(JPEG ファーマット)した後、誤り訂正

符号(リードソロモン符号)を付加し、QPSK 変調し伝送している(6)。

図3.8 海底ケーブル調査用 AUV「AQUA EXPLORER 2000」

3.4.3 海底津波計からのリアルタイムでのデータ伝送 6444E-mail: [email protected]

米国NOAAに所属する研究所であるThe Pacific Marine Environmental Laboratory

(PMEL)が、太平洋津波警報システムのための津波監視用に構築しているもので、沖合いの

水深3000m~4500mの海底に設置した津波計(精密水晶圧力センサ)で検知した津波デー

タを、水中音響通信装置で洋上ブイに伝送し、ブイからは衛星経由で研究所まで伝送する

システムとなっている(図3.9)。

使用している水中音響通信装置(Benthos社製)の使用周波数は9~14kHz、 大通信距

離は4500m、伝送速度は2400bpsであり、バッテリの交換は6~12ケ月毎に実施している。

津波計のために沖合いの深海底まで陸上からケーブルを敷設するよりは、低コストで観

測が可能となる。ただし、洋上係留ブイは紛失の可能性が常にある。

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図3.9 沖合い津波監視システム(http://www.benthos.com/pdf/Modems/noaa.pdf)

3.4.4 ドップラ流向流速計(ADCP)からの観測データの伝送

洋上から ADCP を用いて深度方向での流向流速が計測できるのは、せいぜい 1000mま

でであるが、例えば水深 2000m海底にその ADCP を設置し、そのデータを水中音響通信

装置で洋上ブイあるいはプラットホームにリアルタイム伝送することで、洋上からの計測

データと合わせて、一度に 2000mの深さ方向の流向流速のデータが得られる。

Shell Global Solution は、ADCP のメーカ RD Instruments 社、水中音響通信装置の

メーカ LinkQuest 社と共同で、この計測システムを開発している。

このシステムは、従来困難であった深海底直上の流向流速のリアルタイムに観測を可能

にするものとして注目されている。(図 3.10)

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図3.10 ドップラ流向流速計(ADCP)か

らの観測データの伝送

(出典:http://www.rdinstruments.com/news_specials/fullcurrent.html)

3.4.5 波高計や水質センサによる観測データの伝送

波高計の設置には、陸上からケーブルを敷設する必要があることから多大の費用が必要

であるが、水中音響通信装置を利用することで、大幅なコスト削減が可能となる。具体的

には、図3.11 に示すように、浅海域で海底から立ち上げた切離付き係留系に、波高計や

CTD を取り付け、それらのデータを一定時間間隔で洋上ブイに水中音響通信装置を利用し

て伝送している。洋上ブイから陸上へは、小電力無線や携帯電話を用いて伝送する。一方、

陸上から制御コマンドを水中音響通信装置経由で観測センサや切離し装置に伝送すること

で、センサの試験、測定パ

ラメータの変更、センサの

リセット、観測機器回収等

を行なうことができる。

図3.11 波高計データの伝送(http://www.benthos.com/pdf/Modems/telesonar.pdf)

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3.4.6 吊下式観測装置や曳航式観測装置からの観測データ伝送

Gardline Survey 社の着座式海底土質調査機は、コーンペンネトロメータ(CPT)で、

海底下 5mまでの土質の硬さを調査する装置で、船上へはコーンが貫入途中の圧力データ

(4つの歪ゲージデータ)と貫入長がリアルタイムで伝送される(図3.12)。船上からは、

貫入開始指令や貫入計測終了後のコーンの引き抜き指令などの制御コマンドを伝送する。

計測データがリアルタイムに得られるため、機器の動作状態の監視だけでなく、データの

内容を検討して、調査場所を変更する等の判断が的確に出来ることになる。

同社は、以前、専用の計測制御ケーブル(電線入りワイヤーロープ)を用いて同じ調査を

実施していたが、専用ケーブルのコストが非常に高いことから、無線式に変更したもので

ある。使用している水中音響通信装置(Benthos 社製品)の使用周波数は 9~14kHz、

大通信距離は 10000m、伝送速度は 400~500bps である。

このように水中音響通信装置を利用することで、高価な専用の信号線入りワイヤーロー

プを用いることなく、吊り下げ式や曳航式の観測装置からのリアルタイムにデータを得る

ことが可能となる。

図3.12 海底着座式土質調査機からの観測データのリアルタイム伝送

(http://www.benthos.com/pdf/Modems/gardline.pdf)

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3.4.7 海底石油ライザー管の振動や立上がり部の曲げ歪みの計測データの伝送

Petrobras社は、ブラジル沖水深900mの海域に係留された半没水型石油生産プラットホ

ームの風、波浪、流れ等の外力による挙動と、ライザーパイプへの影響を調査するため、

それぞれの位置や形状、振動、タッチダウン点でのパイプの応力(伸びや曲げ)を正確に

モニターするため、パイプの歪みや姿勢をモニターする計測器をパイプに取り付け、その

データを水中音響通信装置でリアルタイムでプラットホームに伝送するシステムを開発し

た。これらのデータを分析し、プラットホームの位置制御やライザーパイプのハンドリン

グの 適化プログラムを開発した。(図3.13)使用した音響通信装置(Benthos社製)の

データ伝送速度は 600bps.

図3.13 石油ライザー管の挙動のリアルタイムモニター

(http://www.benthos.com/pdf/Modems/petrobras.pdf)

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3.4.8 水中音響通信ネットワーク

海洋環境調査では、対象とする海域全体で、海洋物理、海洋化学、海洋生物を含む多様

な観測を行う必要がある。従来は、各分野の研究者が、個々に観測機器を海底に設置し、

一定期間後に回収してデータ解析を行なう方式が採られており、結果が出るのが遅くなる

だけでなく、他の分野の観測データと統合した分析も難しいという大きな問題がある。

そこで本来望ましい総合観測を実現するため、水中音響通信技術を活用してインターネ

ット的なネットワークを構築し、各観測機器をそれに接続するというシステムの開発が、

欧米を中心に行なわれている。観測機器は、他の観測機器と水中音響通信リンクを介して

接続されているが、一種のルータ的な機能も有しているため、他の観測機器から受け取っ

たデータを、目的の宛先(他の観測機器や、陸上に通信できる機能を有するノード)に転送

する(マルチホップ通信)。このような構成にすることで、陸上に通信できる機能を有する

主ノード(例えば洋上ブイ)に全ての観測データが集まりとともに、この主ノードを介し

て、陸上から個々の観測機器にアクセスすることも可能となる。この主ノードを2~3台

にすると、1台故障しても、残るノードでバックアップ可能となり、ネットワークの信頼

性が上がる。

なお、さらに進んだものとして、観測機器と観測機器の間の空間での調査を AUV で実

施し、その調査データを、AUV から近くの観測装置を介して主ノードまで転送するとい

う方式の開発も行なわれている。また特定の観測機能だけを有する AUV を複数航行させ

ることで、全体として、様々な内容の調査を実現するというシステムの音響ネットワーク

の研究も行なわれている。

図3.14 は、University of Connecticuit, US Navy SPAWAR System Center, Benthos

が共同で開発している FRONT 計画で、Long Island

海峡の海底に設置した7台の観測点(ADCP 装備)を

水中音響ネットワークで接続したものである。1つの

観測点の観測データは、隣の観測点に順次転送され、

2箇所の主ノードに送られる。主ノードの洋上ブイか

ら陸上の研究室に全ての観測点の観測データが伝送さ

れる。一方、研究室から、各観測点にアクセスするこ

とも出来る。

図3.14 FRONT 計画

(http://www.benthos.com/pdf/Modems/seaweblowres.pdf)

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4.水中音響通信技術の今後の研究開発動向

水中音響通信方式については、1980 年代から多くの理論的また実験的な検討が行なわ

れているが、研究された高度な信号処理を行なう装置の小型化が困難であったため、実際

に実用化されたものは、シンプルな変調方式のものであった。しかし、最近のマイクロプ

ロセッサ(CPU)やデジタル信号処理プロセッサ(DSP)の高性能化が急速に進んだこと

により、複雑で高度なデジタル変復調等のデジタル信号処理が可能となり、小型化された

実用装置が実現できるようになった。そこでこの点を考慮し、本調査研究では、ここ5年

間に発表された論文について調査することとした。

4.1 国内における研究開発動向

国内では、水中音響通信技術の研究開発に関する研究論文発表は従来から非常に少ない。

2000 年から 2004 年の 5 年間に海洋音響学会、日本音響学会、海洋理工学会、海洋調査技

術学会の本誌および学会講演会で発表されたものは、付属資料に示す 12 件である。この

うち 10 件が、(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)の AUV「うらしま」の音響通信技

術に関するもので、残りは(株)KDDI 研究所、電気通信大学である。

国内での研究開発動向は、主に、水中音響データ伝送の高速化と、浅海域でのデータ伝

送の高速・高信頼化である。データ伝送の高速化については、リアルタイムの動画像伝送

が可能となる 100Kbps の高速伝送システムの開発が JAMSTEC と(株)KDDI 研究所で

行なわれている。一方、浅海域での水平方向の水中音響通信は、海面と海底での多重反射

の影響が大きいため、送波器と受波器の位置が固定されている場合を除き、高速化は容易

ではない。しかし、浅海域での利用ニーズの方が多いため、時間反転波現象を利用した水

中音響通信技術として、浅海域での海洋擾乱やマルチパスに強い長距離(水平)音波通信の

実現を目指した研究が、JAMSTEC で実施されている。時間反転波現象を利用した水中音

響通信技術は、長距離無索航行を行う AUV 等とのデータ通信や浅海域での海洋工事、海

洋生物モニタリングなどへの応用が期待されている。

4.2 国外における研究開発動向

国外においては、水中音響通信技術の研究開発は盛んである。本調査では、米国電気・

電子工学学会の海洋工学部門(The Institute of Electrical and electronics Engineering

Inc., Oceanic Engineering society)の IEEE Journal of Oceanic Engineering、米国海

洋工学学会(Marine Technology Society)、アメリカ音響学会(Acoustical Society of

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America)の論文およびその関連の国際会議(OCEANS、UDT、UT 等)で 2000 年から

2004 年の間に発表された多数の論文から、付属資料に示す OCEANS の 86 件、UDT の

19 件を抽出した。OCEANS および UDT での発表国別の論文数は、米国 46、英国 18、韓

国 8、ドイツ 7、フランス 7、ポルトガル 4、日本 2、ウクライナ 2、台湾 2、オランダ 2、

スウエーデン 2、中国 2、ノルウエイ 1、香港 1、シンガポール 1 である。

研究開発動向としては、水中音響データ伝送の高速化、長距離化、浅海域でのデータ伝

送の高信頼化、および複数の機器間(例えばロボット等)での音響通信のネットワーク化

など、全般に渡っている。

JASA(the Acoustical Society of America), ECUA(European Conference on

Underwater Acoustics)範囲内での水中音響通信技術文献には、既存の各種変調方式によ

る海域実験報告もあるが、トレンドのキーワードとして、「スペクトラム拡散」「時間反転

波(位相共役波)」の2つが上げられる。

スペクトラム拡散通信方式は、2.6でも述べたが、陸上(空中)の無線通信分野において、

周波数資源の有効利用を図る上から既に市民権を得ている技術で、携帯電話などで良く耳

にする CDMA(Code Division Multiple Access;符号分割多元接続)や無線 LAN などにも

使用されている。

従来の水中音響技術では、なるべく必要な周波数帯域幅を抑え(狭帯域化)、フィルタリ

ング性能をあげることで、背景雑音や他のチャネルとの分離を図ろうとする方向があった。

その上で、例えば M 系列信号を利用したパルス圧縮などの技術により S/N 比を稼ぐ方法

が取られていた。しかし狭帯域化は、ノイズ耐性(通信路の雑音に対する耐久性)や耐干

渉性(他チャンネルの信号やマルチパスによって信号が歪むことに対する耐性)を劣化さ

せ、結果として海域での実力値が理論値よりも大幅に減少するといった現象を生じさせて

いた。特に浅海域においては、背景雑音やマルチパスの影響が大きく水中音響通信には大

きな課題となっていた。

昨今、水中においても、空中で広範囲に用いられているスペクトラム拡散通信方式が「ノ

イズ耐性の強さ」から研究が進められており、また同様に「同一帯域上で多くの通信が同

時並行的に行なえる」という特長からヨーロッパでは、マルチノード(多元)の観測点を結

ぶネットワークである ACME(Acoustic Communication Network for Monitoring the

Environment;環境モニタのための音響通信ネットワーク)の一つの技術として検討されて

いる。

一方、時間反転波(位相共役波)は、光学の分野や超音波でも AE 関連や医療映像関連分

野で研究が進められてきた現象で、伝搬経路が曲がっていたり、経路に波面を乱す物があ

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っても、(時間的に)逆から辿る位相共役波に変換すれば波面も最後には元のように修復さ

れるという性質を利用して、高品質な映像などを得ようとするものである。

水中音響通信の分野では、2000 年くらいから米国海軍などで研究が進められてきた現象

で、従来用いられていた適応フィルタによる復調処理に、時間反転波による音波の収束性

を合わせて利用することで、浅海域での海洋擾乱やマルチパスに強い長距離(水平)音波通

信の実現を目指している。

日本においても、JAMSTEC の志村研究員等が、海洋音響学会 2004 年度研究発表会に

おいて「Active Time Reversal による水中音響通信の基礎的検討」を発表し、優秀論文発

表賞を受賞するなど、水中音響通信技術の最先端分野の研究と言える。

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5. 水中音響通信に関するアンケート調査結果

本調査研究では、国内で、水中音響通信機器が実際にどのように利用されているか、あ

るいは、どのようなニーズがあるか等について調査するため、付属資料1により、以下の

アンケート調査を実施した。

1)アンケート調査期間 平成17年2月16日~2月28日

2)アンケート配布先および配布数

海洋調査・環境調査・海洋土木・造船等の海洋関連産業に関わる研究機関、企業

総配布数は、393

3)総回収数:91

5.1 我が国における水中音響通信技術の利用状況

5.1.1 水中音響通信装置の認知度

水中音響通信装置を「知っている」/「知らない」の質問に対し、全回答者の約 9 割が「知

っている」と回答した。その中で、実際に使用したことのある人は、その中の約 50%であ

った。調査対象者が何らかの形で海洋に関係している職業に従事していることから考えれ

ば、認知度および利用経験者の割合は妥当な範囲と言える。 5.1.2 水中音響通信装置の使用目的・使用環境・不満事項

水中音響通信装置を使用したことのある人に対し、使用目的・用途を質問した結果、表

5.1 に示す回答が得られた。 1)用途

主要な用途としては、 ・流速計等のセンサや画像情報等のデータ伝送 ・AUV との通信 ・ダイバー間の通話 ・水産生物生態調査 ・浚渫工事機器モニタリング ・トランスポンダ/リリーサ等のコマンド伝送 ・音響トモグラフィー等の音波伝搬時間計測 などに分類できる。このうち、トランスポンダの切離コマンド信号の伝送や音響ト

モグラフィーのような低速データ伝送を除いた、いわゆるデータ通信としての使用例

は 19 例程度である。

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使用目的: 使用海域および水深: 連続での使用期間: データ伝送距離、データ伝送方向(水平通信または垂直通信)、伝送速度:

使用した機器が具備していたら良かったと思われる機能があればお書きください。

使用機器について何か問題点や要望(望ましい水中音響通信装置の姿)がありましたらお書き下さい。

ⅰ) ⅱ) ⅲ) ⅳ) ⅴ) コメントトモグラフィー 33.4N,140.0E,3000m 8日間 水平,104km,16bps ○

水中機器の作動確認,データ通信 東京湾 1日 垂直10m,10bps ○ 測距機能、大容量データ伝送機能 大容量伝送、海象に左右されない、遠距離(100m)通信

ADCPデータの音響リンク 東京,水深25m 1月×4回、4点、 25m,9600bps ○ 通信速度が遅い,通信が途切れることが有る

スペックどおりであれば良い

魚網からのデータ伝送、魚網の水深、魚の入網状況、水温他

南氷洋 ○

AUVとの通信 日本沿岸、マリアナ海域、~2000m程度

12時間 直下、45°下向,8バイト/回。距離によって伝送速度変化

○ 比較的長距離通信をする割には、GYRO性能が悪く、誤差が大きくなる。価格に反映するので難しいか。

AUVの動きなども考慮した推論エンジン搭載。明らかにおかしい通信を除外する。

水中音響通信実験 沼津市内浦湾,数十m 水平60m,500kbps ○

発電所前面海域における魚類の行動追跡 長崎県沿岸の発電所前面海域10~20m

3ヶ月間 距離110m、全方位 ○ もっと小型・軽量化してほしい

水中接地型潮位計 港湾浚渫工事  1990頃 水深20m 3ヶ月間 水平200m ○ 高速通信と通信距離、気泡で通信遮断、周辺ノイズで通信遮断

浚渫バケット情報 広島水深15m 6ヶ月 水平50m ○

トランスポンダのコントロール 7000m 6ヶ月 垂直 ○ スペクトラム拡散方式による通信機能(伝送速度の向上、ノイズ耐性)

価格、耐ノイズ性能向上

BOP音響コントロール 4000m 6ヶ月 垂直 ○

AUVのデータ及びコマンド通信 琵琶湖。水深20~100m 6時間/日 斜下方1500m(仕様上)、250bps(最大)、現状125bpsで使用

○ 湖特有の使用環境のせいもあるかもしれないが、通信率が非常に低く正常に伝送できる距離は200~300mと低い

計算上の伝送距離に対して、実環境下での実力は半分以下では?理論値は全く無意味

深海底設置の長期計測装置(温度)のデータ管理 南部東太平洋海膨,水深2600m

30分程度 垂直,2600m,75bpsまたは300bps ○ もっと高速に

船上との通話 沿岸域,数m 1時間以内 10数m、音声(3kHz帯) ○ 簡易に使用可能 話す時の呼吸音の消去が望ましい

AUVとの通信及び測位 日本沿岸、マリアナ海域,0~2000m

12時間 直下あるいは45°斜下向,~2500m ○ 装置の大きさと重量、測位誤差

小型軽量化

藻場調査時の潜水士間連絡 広島湾,水深2m 2時間 全方位,5m ○ 全く音声内容が聴き取れなかった

咽喉の振動を明瞭に音声に変換する機能 簡単に装着可能な(マスク内装着型は大きすぎる)空気中で会話しているような快適な音声送受信

しんかい6500のTV映像を水上の母艦へ伝送する 特定海域ではない,6500m 3時間くらい 垂直、16kbps ○ 単品開発品であったため、非常に高価であった。

AUVとの通信、有人潜水船からの画像データ伝送、海底設置トランスポンダとの通信

水深3500m(AUV) 数日(AUV) 垂直, DL2.4kbps,UL24.0kbps(AUV) ○ S/N比の改善、反射波に強い通信方式

流向・流速のデータチェック 沿岸域10~100m 15日~45日 上方120°,800m ○ 受信確率約50% 伝送距離1000m以上、低消費電力、伝送確率90%以上

水生生物(魚類)の資源・生態調査 様々、~1000m,河川、沿岸、遠洋

様々、数時間~数日

海流流速観測装置 伊豆海嶺上,1000m 200日 水平10km垂直1km,1kbps,双方向 ○ 海底起伏で交信不能が生じやすい

ⅰ)満足している,ⅱ)まあまあ満足している,ⅲ)普通,ⅳ)やや不満,ⅴ)不満

表5.1 国内における水中音響通信装置の使用例

機器の性能(大きさ、重量、適用水深、連続稼動時間、伝送距離、データ誤り率、使い方の難易度等)は、使用目的を満足するものでしたか?

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2)使用した環境 実際に使用した使用海域、水深等は、当然の事ながら、用途によって様々であり、 (1)海洋土木工事などの浅海域では深度 50m 以浅。水平距離~1000m 程度。 (2)AUV や観測用途は大深度(最深部まで)、使用水深もそれに伴って深くなる傾向

が見られる。 AUV との通信用途や、深海底での流れ観測等以外は、100m以浅の海域での利用が

多い。 3)水中音響通信装置に対する満足度

実際に使用した水中音響通信装置に対する満足度を調査するため、5段階評価で満

足度を質問した結果、図 5.1のようになった。図5.1か

らは、利用した機器に対し

て、全般的に満足度が高い

ことが分かる。 しかし、満足度の高いも のと低いものとの違いを分 析すると、水深が非常に浅 い場所や AUV のような移 動するものとの通信に使用 図5.1 使用した水中音響通信装置に対する満足度 した場合の満足度が低いこ とが分かる。これは、2章でも述べた、多重反射やドップラシフトの影響が大きい環

境で使用された場合に相当する。

4)水中音響通信装置に対する不満や要望 使用した機器に満足している人も満足していない人も含めて、現状の機器に対する

不満としては、「装置が大きく・重い」や「操作(表示、作動時間、S/N の判定等)が難

しい」の他、「伝送速度が低い」「耐ノイズ性が不十分」等が上げられた。また、周辺

環境によって仕様上の機器性能と実働性能の差が大きいという意見もあった。 要望としては、海洋工事などの用途で、浅海域での耐ノイズ性(船舶・工作機械ノイ

ズ、砕波帯等での海洋ノイズなど)の向上、また、AUV 等の用途を含めて、遠距離・

無人観測のための長期高信頼性も求められている。海洋レジャーに近い意見では、安価

にすることで普及が進むと言った意見や、空中(陸上)の伝送路への簡易な接続・変換や

携帯電話の水中版を望む声もあった。高精度・高信頼性等の他に低価格や簡便性も今後

の開発のキーワードになると思われる。

満足

まあまあ満足

普通

やや不満

不満

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5)使用している機器メーカ 使用した機器のメーカについては、以下の回答があった。外国製はカタログ製品であ

るが、国産のものについては、特注品が多い。 国産品:日本電気(株)、沖電気工業(株)、海洋電子工業(株)、システム技研(株)、

古野電気(株)、島田理化工業(株) 自社製:(独)海洋研究開発機構(J AMSTEC)、(株)KDDI 研究所、五洋建設(株) 外国品:LinkQuest、Sonardyne、VEMCO、 Biosonics、 AANDERAA

6)考察

全体的に、水中音響通信機器は、陸上の携帯電話のように、電源を入れさえすれば、

いつでもどこでも簡単確実にメールが送れるような状況とはまったく異なり、高価で立

派な仕様になっていても、実際には簡単には使えない(使えこなせない)場合が多いこ

とに対する大きな不満が感じられる。この点で、現状の水中音響通信技術の完成度はま

だまだ不十分であるのは明らかである。 特に、雑音の多い浅海域で水平方向での使用を含め、多重反射やドップラシフトの影

響が大きい環境では、現状の機器による高速な水中音響通信は難しい。ただ難しい環境

であるが、水中音響に精通している人なら、使用環境に応じて、使用方法を工夫するこ

とで使いこなせるという側面もある。 5.3で示されるように、水中音響通信技術に対する期待度は非常に大きい。これに応

えるため、いっそうの技術開発が必要であるのと併せて、現状の機器でも使用環境に応

じた工夫次第で使用できることから、実際に機器を使用している先進的なユーザや潜在

的なユーザに対し、2章に示したような基本的な知識の普及活動も必要である。

5.2 現状の水中通信技術の問題点 アンケート調査では、「水中音響通信の利点は分かっていたが、使用したことはない」、

と回答した人が約 27%に上った。 その人達を対象として、「利用しなかった理由について」調査した結果は以下のようにな

った(図5.2)。

(1)性能・機能が不十分 10 (2)価格が高い 6 (3)使い方が難しい 2 (4)使用可能な機器の情報が無かった(得られなかった) 8 (5)その他 5

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・有線で十分、ROV が使用できたため ・深層水施設での装置の必要性の是非が未検討 ・機器販売の立場で推奨したが客先は価格面でケーブル伝送を選択

図5.2 水中音響通信装置を使用していない理由

また、その具体的な理由については、以下のような回答があった。

・通信速度、安定性、価格が満足できない ・有線もしくはメモリ一式のデータ通信で十分対応できる ・誤動作が多い。 ・浅海域では波浪の影響を受けやすい。 ・誤動作に対し新たに対応機器を購入する必要がある ・通信距離が短い ・水中同士の通信が出来ない ・通信データ量が少ない ・通常無線との連携が取れない ・リアルタイム情報の必要性が問われていなかった。 ・通信速度、データ伝送量の不足(例えば、数十 Gbytes を転送する事を考えれば、最低数

Mbps が必要) ・タグ(魚類、水生生物、河川の河床材の移動、海の岩の移動)として利用を考えている

が、現段階では可能性についての情報が得られない ・電池寿命が短くなるので断念 ・水中音響通信は水平に弱いので不十分。 ・制御信号通信に不安があり、確実性が無かったので使用しなかった

機能・性能が不十分(32.3%)

価格が高い(19.3%)

使い方が難しい(6.5%)

情報が無かった(25.8%)

その他(16.1%)

複数回答可

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・データを受信する中継装置の流出の懸念。流氷対策の方策が良くわからない。 ・超音波による生データの伝送に船上からハイドロフォンで試みたが困難(-50m、波高計)

ブイ3点係留方式なら可能と思う。また、計測器に装置する超音波伝送システムが 400~500 万円/セット位かかりそうなので我々から考えて 100 万円が限界と思う。

・泡や濁り等による影響を受けやすく、私の専門分野(海上土木)では使うのに注意が必

要。ただしニーズは多いと思われる。 以上の回答から、使用経験の無い回答者が懸念している、現状の水中音響通信装置に対

する課題は、以下のように整理される。 (1)通信の信頼性の向上 (2)通信距離の増大 (3)情報量の増大 (4)作動時間の増大 (5)低価格化 現状の水中音響通信装置に対する認識・不満については、使用経験を問わず共通してお

り、使用経験者の場合には、さらに「使用方法が難しい」という課題が追加されている。 同じような懸念を持ちながら、実際に使用している先進ユーザに対し、この回答を寄せ

た人は、懸念を持つほど関心があるという点から、潜在ユーザと見なせる。先進ユーザに

対するのと同じように、現状の機器でも使用環境に応じた工夫次第で使用できることから、

最新機器・技術に関する情報の提供と、2章に示したような基本的な知識の普及活動が必

要である。

5.3 水中音響通信技術の高度化による利用が拡大する分野

アンケートで、「今後、水中音響通信技術が高度化していった場合、どのような分野、用

途での利用が展開できるとお考えになりますか? 下記の分野ごとに展開可能性の有望度

について、該当すると思われるところに○印を付してください。別紙のイメージイラスト

も参照しながらお答えください。」という問に対する回答の結果は、表5.2のようになった。 また表5.2をグラフ化したものを、図5.3に示す。

この質問に対しては、水中音響通信機器の使用経験の有無を問わず、ほとんどの人が回

答を寄せた。このアンケート結果からは、水中音響通信技術の現状に問題があるにもかか

わらず、海洋環境調査、海底資源探査・開発、海洋土木工事、水産資源開発、防災・安全、

海上保安・セキュリテイの各分野での利用に高い期待があることが分かる。

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表5.2 水中音響通信技術が今後有望な分野

小 ← 有望度 → 大

1 2 3 4 5 計

1.海洋環境調査 0 1 12 31 43 87

2.海底資源探査・開発 0 4 18 16 42 80

3.海洋土木工事 0 2 22 25 29 78

4.水産資源開発 2 6 25 28 21 82

5.海洋レジャー 1 23 27 11 15 77

6.防災・安全 1 2 16 29 34 82

7.海上保安・セキュリティ (大

洋域・沿岸域・港湾域・その他)

0 3 18 27 30 78

8.その他(分野名: ) 0 0 2 5 4 11

※その他として挙げられた分野:(海底地盤調査、海洋科学、海底遺跡調査、防衛×2、地下空間利用、

密漁防止、漁業、軍事×2、調査機器設置)

図5.3 水中音響通信技術が今後有望な分野 (横軸は期待度:5が最も期待度が高い。縦軸は累積数)

12

34

5

ⅰ)海洋環境調査

ⅱ)海底資源探査・開発

ⅲ)海洋土木工事

ⅳ)水産資源開発

ⅴ)海洋レジャー

ⅵ)防災・安全

ⅶ)海上保安・セキュリティⅷ)その他

0

10

20

30

40

50

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5.4 水中音響通信技術の高度化による利用方法・産業発展の見通し

上記の設問で有望度が高いとした分野について、水中音響通信技術の高度化により、今

後どのような利用方法、産業の発展が見込まれるかとの質問に対しても、非常に多数の意

見が寄せられた。貴重な意見であるので、内容を少々まとめ、以下に列記する。

・海底の地盤調査は船位から海底の測定装置、サンプリング装置の位置が決定されており、

測定器の低廉化やハンドリングが改良されればすぐにでも適用される可能性は高い。ま

た、長期間の連続使用が可能になれば、モニタリング等も可能になるので、機器の開発

に期待している。 ・水深 50m 設置の調査機器収集データの海面への伝送。海面から陸までは 1km。連続 1 ヶ

月。セットで 20 万円以下。 ・多項目水質計、ADCP のデータ伝送手段として有効。水深 100m,到達距離 500m,1kbps,

連続 1 ヶ月,価格 100 万円,その他流出時位置探知機能。 ・鯨の生態、中国潜水艦の監視。 ・環境調査分野では、データ取得の信頼性向上に期待。水産資源開発分野では魚介類の生

態や回遊等の解明のための技術として期待。防災、安全面では潜水作業の安全性向上に

期待。 ・高信頼性、高精度の音響探査技術は特に海底資源並びに水産資源開発に貢献する。水中

音響通信技術は、海洋開発、保全全般に係る重要な基盤技術と位置づけられる。 ・魚礁の蝟集効果調査に有望。ROV を無線化し魚群に影響を与えず調査可能か? 装置へ

のエネルギー伝達がネックか。 ・土木施工箇所などの周辺海域で地盤変状のモニタリングデータ(傾斜、沈降)を確実に大量

に(高速に)伝送できれば、施工作業や航行船舶への影響を低減できる。周辺環境の音響ノ

イズ低減と多点データの確実な識別可能なシステムが望まれる。 ・反射法地盤探査への応用。より海底面付近で震源および受信機を曳航させ、データを水

中伝送させることで、分解能の向上、モニタリングおよびデータの実時間処理が可能と

なり、探査精度と効率が飛躍的に向上する。 ・資源管理、漁獲効率の向上につながる。海底に着く生物の資源状況、生態観察が容易に

なる。 ・深浅測量では今のところ利用する機会はないが、今後の業界動向には注目している。 ・海洋環境調査、海底資源開発、海洋土木工事、水産資源開発、海洋レジャー、防災・安全

何れの分野においても重要な位置付けもしくは要素技術である。 ・ 水中のエネルギー源(燃料電池等)の性能向上により、深海底での観測データを、音響

通信により中継しながら長距離にわたってリアルタイム送信すれば、広域の海中・深海

底観測データが飛躍的に充実する。

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・作業リスクの軽減が予想される。観測機器のデータ伝送を一番に望むが、安価で多機種に

対応した音響通信機器開発が発展につながると考える。映像系データのリアルタイム伝送

を望む。 ・防災目的他で使用する波高計、流向流速計、地震計等のデータ送信に用いる(海底ケーブ

ルに代わり)。 ・全ての分野で、海中・海底設置型観測機器,測定機器の使用方法にリアルタイム性及びリ

モートセンシングの長所(Coverage)を持たせることが可能となる。防災面での発展が見

込まれる他、海洋物理学、気象学、防衛などでの使用が進む可能性が高い。 ・海洋環境モニタリングとして、リアルタイムのデータ提供が可能になる。 ・コスト的に出来なかったことが簡単にできれば、先ず、調査分野で応用範囲は格段に広

がります。 ・手軽な価格で入手できれば沿岸海域のモニタリング業務で使用可能。沿岸での突発的な

現象を把握し、警報システムに使えるかもしれない。 ・水中センサからのリアルタイムデータ収集。(環境調査、土木工事などでの利用) ・海中の情報収集能力が向上し、未知の情報が入手可能となる。特に投資に値するレアメ

タル発掘や水産資源開発など。一方では、"安全"というキーワードで港湾関係の監視は必

要になる。 ・海底からの情報伝達など、大水深に有効。研究、調査、監視など無人で継続的使用が見

込まれるもの。産業としては軍事、海洋エンジニアリング、災害予防など。要望される

性能費用は事業により相当差があると思われる。 ・大水深海域を含む海底面状況調査が曳航体なしで可能となる。テレビカメラなどの映像

もリアルタイム伝送されれば、その場で確認できることとなる。 ・水質や成分の測定、津波や地盤変状のキャッチ、生態系等の調査、海域での侵入者のキ

ャッチ。 ・海中携帯電話。海中生物とのコミュニケーション(鯨などによる追込み漁)・レジャー。

アクティブソナーによる音響カメラ・ビデオ(対象内の骨格、空洞、硬軟の判別)、パッシ

ブソナーによる各種環境計測(地球の呟き)。沖ノ鳥島観測基地。 ・水中と陸上をシームレスに繋ぐユビキタスな水中通信ネットワークが構成できる。資源

開発や水産資源開発、防災のための海底地震観測、防衛のための観測データ(不審潜水艦

の侵入監視)、自国潜水艦の通信環境改善等。 ・地下空間を活用する場合、地下水内での空間構築作業が必要。その中でデータ通信・通

話が必要になる可能性は有る。遠隔操作・作業員との通話などが適用分野。トンネル掘

削機への応用として、破砕帯や洞窟などを事前に探査できる水中音響技術があればと考

える。 ・ トモグラフィーで得られた観測データを電子海図に直ちに入力。環境保護面から温排水

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の管理。音のバリアで養殖場や原子力発電所への侵入を未然に防ぐ。 ・S/N 改善、データレート向上で画像伝送や遠距離通信が改善。一般的に資源開発、海上保

安、防衛の分野はニーズ有り。 ・海洋工事に水中通信が自由に使えるようになれば、海中海底工事の可能な範囲が格段に

増える。そうなれば海中海底の利用が可能(容易)になり、産業利用進展の起爆剤となりう

る。 ・一定海域の時系的海況変化をリアルタイムで総合的に把握、海況情報の遊漁船、プレジ

ャーボート、定置網漁業等への提供。 ・動作確認データ取得が可能になれば点検作業などが省かれる。長距離でも映像が伝送で

きれば、ROV 等の探索範囲が広がり自由度が向上する。 ・機器性能の向上によって,海域における魚類行動の詳細が解き明かされることを望む。 ・ 潜水作業が制限される大水深(50m 以深)において水中音響通信技術を利用した作業ロボ

ットの開発は、危険作業の回避、信頼性の確保及びトータルコストの削減に繋がってい

く。精度、コスト、簡易度が向上すれば利用頻度も飛躍的に向上する。 ・大水深海洋土木工事:ROV による作業が主体。周辺状況の把握、制御等に水中音響通信

技術の高度化が大いに採用される。軍事:中国や北朝鮮の船舶潜水艦の音響データを取

得する AUV や海底固定式装置が水中音響通信技術の高度化でネットワーク化される。 ・水中作業機器の測位とデータ通信(画像含む)。水深 100m,通信距離 1000m、1200bps(画

像データは 4800bps 以上)、一ヶ月間連続使用、測位システムで 1000 万円、データ通信

200 万円、画像データ伝送 500 万円。大陸棚では大水深対応。地震計等のデータ伝送。

現在利用可能な機器がない。 ・海洋環境調査:海底設置、ブイ、AUV などによるセンサからの深度、水温、塩分等の環

境情報を大水深から浅海域までカバーする音響によるネットワークを構築し、リアルタ

イムに海洋開発の基礎データ参照が可能なシステム。海底資源探査:AUV が主流となる

と思われる。音響灯台のような AUV を広域で運用するための制御システム。 ・通信速度向上、データ伝送量増加は通信の制約を軽減させ、例えば有線が不必要になる

ことは海洋観測において革新的なことと考えられる。また、データの規格化はユーザが

データ受信部のコストや仕組みの把握を必要とせず、より安価な利用が可能となる。 ・生物生態行動の追跡に関する可能性として超小型化が必要。IC チップと連動させた音響

通信システムの開発を望む。また無機物(岩、石、礫)などに発信可能なチップを安価に取

り付けられれば波浪による移動などの監視が可能になり、新たなシミュレーションが出

来る。 ・海洋底において大規模な経済活動を行う場合、海洋環境への影響を評価するために長期

連続リアルタイムモニタリングが必要と予想する。水深~4000m、通信距離数 km~数百

km、3 時間おきに数十点の計測結果を送信可能(理想的にはリアルタイム画像データ伝送)。連続 1 年使用(理想的には 5 年間)。価格は海底ケーブル通信の 1/10 以下。

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・資源量推定の為に鯨類の鳴音録音マイクを海中に設置し、洋上の船舶で受信する。無人

魚探ロボットの回収に使用する。 ・今後AUVを主体とした海洋調査や探査が発展すると考えるが、そのときのキーテクノ

ロジーの一つとして広範囲の確実な行動を保証するための長距離且つ誤りの少ないデー

タやコマンド伝送、リアルタイムに近い画像の水中伝送が大きな比重を占めるようにな

る。 ・スキャニング映像通信装置(1Mbps、水深 100m、1000m 伝搬、連続 365 日、1000 万円

~2000 万円くらい、電力のみ有線で供給)。 ・海洋レジャー(ダイビングスポットの環境モニタ、ダイバーの位置・挙動を把握し警報通

知や海難救助に役立てる)、海上保安・セキュリティ(水中灯台、海上版 ITS)。 ・リアルタイム性が重視される部分に活用できる。浅海域で発生する雑音や音速変動に対

する対策が望まれる。無線やケーブル伝送との複合通信装置などトータルとして効率を

上げる方法があるのではないか。 ・ケーブルレス化した深海底計測ステーション。オンライン計測が理想であるが、音響通

信によるケーブルレス化が出来ればシステム構築費用を低減できるだろう。 ・レジャーのみならず、セキュリティにおいても水中活動は増加する。高度な技術が組み

こまれた漁労装置の応用などが使用目的にあわせて開発される。使用目的を明確にした

対応が必要 ・石油、天然ガス等炭化水素資源の開発促進、地震津波の予知。 ・海中における収集・収録データの空中伝送システムへの伝送ができるとよい。軍事分野

で各種水中兵器への通信技術の応用は期待される。 ・当社は水中バックホウを有しており、様々な情報を有線で送っている。今後の大水深化

に対して情報伝送は大きな課題。水深 200~500m、通信距離 1000m、伝送速度 38400bps、連続使用可能で、価格 200 万円~500 万円の物があれば検討可能。

・連続的に長期にわたりデータ観測する事例は需要が見込める。水深~100m、伝送間隔

0.1sec が最小、連続 60 日間。 ・携帯電話と準じた使用が海中でも可能となると需要は高まるだろう。 ・浅海域での遠距離通信や測位技術も必要。伝送方向の自動コントロール技術は今後必要。

港湾入出港の監視・沿岸海域の船の通行監視などに利用される。 ・水中における観察結果のリアルタイム伝達。水中で観察対象を音声で記録、船上と常時

双方向連絡が可能、水中の目的物との距離・位置・水深がわかる。水深 30m、価格 20~30万円藻場観察用。

・複数海中ロボットの協調作業が実現できるようになるので、海中工事の自動化などが可

能になるかもしれない。 ・全ての環境下で対応可能な水中位置計測技術の完成、津波観測や地盤移動監視などによ

り地震予測に発展。

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・資源・エネルギー・環境・国防・防災(地震予知)などがキーワード。無人計測機器からの情

報伝達方法として水中音響通信が使用される可能性は高い。 ・海洋土木工事の多くは目視計測にて現場状況(気温・水温・波高・風向・風力など)を把握し

ていて、普段は問題ない。荒天時等のデータ伝送に有効。状況監視、相互間通信、波浪

情報の陸、作業船への通信。最大 5km 通信。 ・海洋環境調査:リアルタイムで海底地盤高さを把握することで洗掘や堆砂の調査に有効。

海洋土木工事:出来高を随時観測できるので作業の効率化が図れる。海上保安・セキュリ

ティ:航路の海象を常に送信できるので、航行安全にも有効。 ・津波観測計や地震計の設置が容易となり、観測網が整備される。潜水作業時のダイバー

船間の通信及び安全監視、ダイバー間での連絡通信に利用される。 ・船上とダイバー間のやり取りが密になり作業効率化に繋がる。コンクリート礁に機器を

備え付けることで、潜水無しで調査海域の水温・水流等経時変化をより簡単に捉えられる。 ・超音波バイオテレメトリー技術の高度化によって魚群の生態解明につながり、また、絶

滅危惧種の海洋哺乳類に対しても効率的な保護対策に役立つ。 ・AUV 等を利用した様々な応用において水中音響通信の利用が増大すると思う。 ・海外では AUV の利用が積極的に進められており、この分野で必要不可欠な水中音響通信

技術の発展が見込める。 ・(エアガンは)ボーリングとの併用で、海底下の実像解明に必須の機器です。 ・海中係留機器のデータを海底ケーブルに付加したハイドロフォンに伝送してリアルタイ

ムモニタリングを実現すること。 ・磁気探査の曳航部センサからのデータ伝送に使えそう。水深 10~100m、5ch、サンプリ

ング 50Hz のデータ伝送。 ・海底構造物の姿勢データ(ピッチ、ロール、3 軸加速度など)の伝送。 ・海象観測において、海底 50m前後に例えば波高計、津波計等の信号をケーブルによって

陸上までもってくるとケーブル工事費だけで 1 億円くらいかかりますが、洋上 3 点係留

ブイであれば海底センサからケーブル無しでブイまで超音波信号伝送を行い、遠距離の

場合は衛星回線を利用すればかなり効果があると思う。 5.5 水中音響通信技術についてコメント

アンケートでは、水中音響通信技術について、一般的な意見・要望も記述できるように

したが、これに対しても、非常に多くの方から回答があった。図面を添付してアイデアを

提示された方もおられた。以下に列記する。 ・(海底電気探査法の特徴) ・社内研究費で検討中。「水中音響通信技術の応用例」。有線では確立済 ・民間では開発が難しい(コスト・マーケット)ので、官学民で今後も発展させなければ

ならない分野と思われます。

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・海洋の3次元的利用による海中音響通信の事業化が必要 ・コストでの有利性が見えてこないと実際の調査業務に導入することが難しい ・海洋資源開発に係って、水中音響通信技術の発展が寄与する余地は大きい。大容量デー

タの高速通信を可能とする技術開発に期待する ・安心料的位置付。トラポン等の技術と違い、必要性が絶対的であるとは言い難い ・海底地震計などの観測機器を設置し連続観測したデータの反映など防災面、安全面の充

実が急務 ・開発メーカ、現在の利用状況、使用状況の感想など具体的な内容を知りたい ・海中生物に与える影響のアセスメントが必要ではないか ・JAMSTEC の数年前の開発では、テスト用の装置は出来上がったが、残念ながら実際の

応用に至らず、開発終了となった。現在 Woods Hole で、水深数 1000m まで使用可能な

高速 Acoustic Link を開発中。回答者の印象では、装置そのものがまだまだ研究或は技術

開発段階にある。実際の応用例を増加させ、世の中に装置の存在及び機能を認知させな

いと、継続的な発展は困難と思われる。 ・機会があれば、装置を見てみたい。海洋調査は非常に高価な印象があるが、本装置の価

格、機能などを教えて欲しい。 ・一般ダイバーが使えるようなお手軽通話装置で海中でのコミュニケーションが可能にな

ると、楽しく安全なダイビングに貢献する。 ・大きな発展の為には技術的 Break through が必要であるという漠然とした感覚はあるが、

具体的な案はない。 ・この分野は今後の技術発展が期待されている。安価で耐久性があることが条件。 ・欧米の防衛産業では、日本の出版物で紹介されていない水中通信技術が多く存在すると

推察される。これらの最先端情報を取りまとめるのも面白いのでは。 ・深海底の状況をリアルな映像情報として、あたかも陸上を監視しているごとく得られる

事を期待する。海底地震や津波監視に有効と思われる。また、海底鉱物資源探査に有効

な手段となる。イルカ・鯨やマグロ等の回遊魚に取付け、生態調査、監視、養育に活用。

将来的にはイルカを飼い慣らして牧羊犬のような使い方が可能になるのではないか。 ・電源及び耐久性が課題と考えられる。 ・実際に測定することがないので実務は不明。 ・深層水取水施設等に通信システムを設置する場合の施工費用の概算などがありますか。

データを広範囲で集積した後、海況予測するソフト開発などは可能ですか。 ・沿岸域ノイズで制御不能にならないような対策が必要。海洋環境分野では、水質と音響

の比較データの積み重ねが必要。 ・米国では軍が主体になって開発していると雑誌などで紹介されている。日本では同様な

開発体制は難しいと考えられるが、海洋開発に不可欠な技術なので、官民挙げての支援

体制が出来れば望ましい。

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・最終的に安価なシステムを期待する。漁業者や市民ユーザが普通に使用できるといった、

全体的な普及を見据えた開発を期待する。 ・まだまだ研究段階と思われている。現状の技術レベルを示した資料があると大きく実用

が拡大する。魚や海洋哺乳類への影響がない事をしっかり評価する必要。信号処理手法

の開発により性能は飛躍的に増加すると思われる。 ・深浅測量、土質・地質調査、危険物探査、環境調査、海象調査いずれも調査手法そのもの

の改善、コスト等に直接影響がある。技術発達に期待する。 ・10 数年前に一度断念。ナローマルチビーム測深機の構築に尽力してきた。水中音響通信

は新たな取り組みが必要と考える。 ・水中において近距離では光の利用も可能と考える。 ・近年骨伝導携帯電話も市販されているので振動・音声変換技術は進んでいると思う。 ・海洋だけではなく、水があって人間が容易に行けないような作業において非常に有効だ

が、故障の無いシステムを安価に供給できるかどうかがキーポイントになると思う。 ・音響技術では外国製品が優位。水中音響通信が普及したら周波数の割り当てなどが必要

になる。アンケートによって要求されている音響通信技術が明確になり装置開発の普及

に繋がれば幸い。 ・海中生物への影響はないのか?今後解明が問われるのでは。 ・イニシャルやランニングコストが低ければ普及しやすく、用途も広がると思う。 ・水中において無線(無索)で情報伝送を可能とする手段として音響通信技術が唯一だが、実

際には多くの制約がある。通信路の不確立も想定した補助的な(またはそれを前提とした)応用に限定されると思う。

・魚探を除けば、通信技術に限らず、水中音響機器は単品開発品となりがちで、高価にな

り、広く利用される域に達しないのが現状と思われる。 ・水中音響全般の技術力は高いがコスト、スマートさで海外に劣っている。予算が少なく、

大きなプロジェクトで培われた技術が量産化に繋がらない。ゆえに水中音響機器は海外

カタログ製品か若干のカスタマイズ製品を使用するのが通例。業界の振興を願うと共に

官の指導力の発揮が望ましい。 ・水中音響通信技術は、今後掘削技術と併せて大きく発展することは明らかです。 ・海中部のデータを陸上無線データに変換する機器の恒久性に不安有り。実用例を知りた

い。冬の波浪や流氷などに対しても通信の安定性が確保できれば、官庁や研究機関に話

がしやすい。 ・水中音響通信技術は、水深もダイバーの潜水深度にもよる、50m前後と思われる。静穏

時は、超音波伝送は良いが、荒天海域の場合は、砕破による気泡が多発して乱反射して 通信不能になりやすい。いつも安定した状態で環境に左右されない方式が出来れば利用

価値はあると思う。

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6. 水中音響通信技術の高度化による新事業の創出の可能性

6.1 アンケート調査結果が示す水中音響通信技術の高度化に対する期待

これまで、国内で水中音響通信技術の利用状況について調査されたことは無いため、普

及度を含む利用実態について参照できるデータは皆無であった。そもそも水中音響通信技

術について、どの程度の認識度があるのかも不明であったため、アンケート用紙の作成に

当っては、できるだけ広い分野で実際に使用されている例を図にし、アンケートの参考資

料として添付した。結果的には、今回の本調査で実施したアンケート調査で、初めて、そ

の状況の一端が把握できるようになった。

現時点では、実用的な水中音響通信技術が開発されてからの歴史が浅いということも

あり、国内で利用されている分野や件数は、国外に比べて未だ少ないことが判明した。一

方、水中音響通信装置の存在は、アンケート回答者の約 90%の人が知っていたが、その中

で実際に使用したことがあるのは約 50%、知っていたが使用しなかった人が約 30%であっ

た。

知っていたが使用しなかった人は、使用していない理由として(1)性能・機能が不十分、

(2)価格が高い、(3)使用可能な機器に関する情報がなかった、(4)使い方がむずかしそう等

をあげている。このことは、水中音響通信技術の有用性に着目して使用可能かどうか検討

したことがあることを意味しており、水中音響通信技術の高度化により、これらの問題が

解消できれば、ユーザーになる可能性があることを示している。なお、使用未経験者があ

げたこれらの理由は、実際に使用した人が、現状機器の問題点としてあげた内容と同じで

ある。

水中音響通信機器の使用経験の有無にかかわらず、水中音響機器のかかえる問題点につ

いては同じ認識を有しているが、水中音響通信技術が高度化した場合の利用拡大について

の期待は大きく、特に海洋環境調査、海底資源探査、海洋土木工事、水産資源調査・管理、

安全防災、セキュリテイ(港湾域・沿岸域)の各分野で有望と予測している。また、その

場合の利用方法やコストについても、アンケート回答に具体的な提案やコメントが多数記

載されていることも、その期待の大きさを裏付けている。

水中音響通信技術の高度化は、海洋調査・モニタリング・開発事業の効率、範囲、機動

性を高め、コスト削減効果も期待されている。 また水中音響通信ネットワークが構築され

れば、これまで各機関が個別にケーブル等の接続で実施していたセンサと陸上基地との通

信が共通の回線で可能となる効果も期待されている。

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また、水中音響通信技術の高度化は、水中音響通信機器自体の市場の他に、水中音響通

信ネットワーク構築、水中音響通信を活用した新たな事業等、水中音響通信技術の波及効

果が生み出す関連市場での新しい事業創出・拡大の可能性も期待できるが、今回の調査で

は、そこまでは踏み込めなかった。今後のさらなる調査により、市場イメージと市場規模

について明らかにする必要があろう。

6.2 水中音響通信技術の高度化に対するニーズと技術課題

本調査から、水中音響通信技術の高度化に対するニーズは、以下のように整理される。

(1)通信の信頼性の向上

(2)通信距離の増大

(3)情報量の増大

(4)作動時間の増大

(5)低価格化

これらのニーズに対し、高度化のために着手すべき技術的課題との関係を表6.1に示す。

表6.1 水中音響通信技術に対するニーズと技術課題

課題

信号処理等

技術開発

標準化

(近距離用、

遠距離用)

ネットワーク化

(マルチホップ

通信等)

バッテリー等

高性能化

電力補充

手段

通信の信頼性向上 ○ ○

通信距離の増大 ○ ○ ○

情報量の増大 ○

作動時間の増大 ○ ○

ニーズ

低価格化 ○

ニーズと技術課題の具体的な目標レベル、および開発スケジュールについては、利用目

的・分野により異なると考えられるので、今後の調査により明らかにする必要がある。

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6.3 水中音響通信技術を身近なものに

水中音響通信技術の高度化に関するアンケート調査結果から、回答者の期待度の高さが

伺えるが、これは、水中音響技術の利用により、海洋調査・モニタリング・各種工事の効

率化コスト削減効果が期待されるからと言える。

しかし、水中音響通信技術とその効用については、今まで、情報発信が少なく、また分

かりやすくまとめられた資料が無かったこともあり、まだ一般的に広く知られてはいない。

本調査報告書は、水中音響通信技術の基本、国内外の技術の現状と研究開発動向、国内

外の利用状況について、初めてまとめられたものと言える。

従って、まず、今回のアンケート回答者に本報告書を配布することで、最新機器・技術

や利用例に関する情報、及び2章に示した基本的な知識をフィードバックし、また今後の

水中音響通信技術の高度化や利用拡大の具体化について、協力を仰ぐ必要がある。

また、アンケート回答者以外に対しても、本報告書をできるだけ広く公表し、水中音響

通信技術が、海洋環境調査、海底資源探査、海洋土木工事、水産資源調査・管理、安全防

災、セキュリテイ(港湾域・沿岸域)の各分野で、重要な役割を演じるものであることを

周知する必要がある。

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7.まとめ:今後の課題

今回実施した調査で、国内外における水中音響通信技術の現状と利用状況の一端が明ら

かになった。しかし、調査期間が制約されていたため、大学を含む研究機関や調査機関等、

まだ国内の関係者全体を網羅していないため、国内における水中音響通信技術の高度化に

対する具体的なニーズの詳細、高度化した場合に想定される市場および規模の推定には、

まだデータが不十分である。特に、需要(市場)と供給(水中音響通信技術)の関係から

の調査として、①各分野について利用者人口と希望購入価格等の把握、②各分野における

水中音響通信システムの理想モデルの把握とその実現可能性の調査等は、まだ不十分であ

る。

従って、水中音響通信技術の高度化の実現性の見通しと、海洋産業への大きな波及効果

を明らかにするため、今年度の成果を受け継いで、次年度、アンケート調査も併用するこ

とで、以下の調査・検討が必要である。

● 水中音響通信技術の最新動向を継続調査する

● 水中音響通信技術の高度化に対する具体的なニーズをまとめる

● 水中音響通信技術の高度化により創造可能な海洋産業を検討する

● 高度化のための技術開発目標および開発計画を作成する

● 高度化した水中音響通信技術の適用市場規模を予測する

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参考文献

(1)海洋音響学会編「海洋音響の基礎と応用」(成山堂、2004) (2)日本造船学会海中システム部会編「海中技術一般(改訂版」(成山堂、1999)の 9 章

「水中音響技術」 (3)超音波便覧編集委員会編:「超音波便覧」(丸善、1999)の 10.8 海中通信 (4)D.Pincock, F. Voegeli: Quick course in Underwater Telemetry Systems, VEMCO

Ltd.,Technical Report, Jan. 2002、(http://www.vemco.com/pdf/telemcourse.pdf で入

手可能) (5) 越智寛:海洋観測システムでの「音」の利用、日本音響学会誌 Vol.60, No.12, pp.735-740,

2004 (6)小島淳一:自律型水中ロボットと音響通信、海洋音響学会誌、Vol.28, No.4,

pp.17-23,2001 (7)武藤佳恭:無線アクセスのすべて、翔泳社、2000 (8) 社団法人日本水産資源保護協会 水産研究叢書「水中音の魚類に及ぼす影響」、1997

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付 属 資 料

資料1 アンケート一式

資料2 水中通信関連論文リスト①(Oceans2000~2004)

資料3 水中通信関連論文リスト②(UDT2000~2004)

資料4 水中通信関連論文リスト③(日本音響学会、米国音響学会、MTS、その他)

資料5 第1回委員会:話題提供関連資料<水中音響通信、日本電気(株)>

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資料1

ア ン ケ ー ト 一 式

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平成17年2月16日

関 係 各 位

社団法人 海洋産業研究会

(公 印 省 略)

水中音響通信技術の高度化による海洋研究・海洋産業の推進に関する

アンケートへのご協力のお願い

拝啓、時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

当会は、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の所管団体で、昭和 45

年の発足以来、海洋開発に関する調査研究を実施している団体です。

本年度、社団法人日本機械工業連合会委託事業として「水中音響通信の高度化によ

る海洋産業の発展と新事業創出等効果に関する調査研究」に取り組んでおります。本

調査では、水中音響通信技術の現状を踏まえ、その将来発展のあり方について検討す

るものです。水中音響通信技術を高度化することで、海洋環境調査、海底資源探査、

海洋土木工事、水産資源調査・管理、安全防災、セキュリテイ(港湾域・沿岸域)、マ

リンレジャー等の幅広い分野での利用や新しい事業の創出が期待されます。

今回のアンケートの目的は、水中音響通信技術の高度化も睨んで、今後、どのよう

な活用法が考えられ、産業としてどのような発展が見込まれるかを検討することにあ

ります。

ご多忙のところ誠に恐縮ですが、上記の趣旨をご賢察いただき、添付のアンケート

にご協力いただきたくお願い申し上げます。

短期間でのお願いで恐縮ですが、来る平成 17 年 2 月 28 日(月)までにご回答をお寄

せいただければ幸いです。 敬具

※ご回答をいただきました方には報告書を一部寄贈申し上げます。

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水中音響通信技術の高度化による海洋研究・海洋産業の推進に関するアンケート

《 実 施 要 領 》

1.アンケートの構成:本アンケートは、「依頼状」「実施要領」「アンケート記入用

紙」および「参考資料」で構成されています。

2.アンケートの対象:本アンケートは、全国の海洋関係の大学教員、試験研究機関研究

者、関係団体・NPO 等関係者、産業界民間企業関係者など、合計約 200 名を対象に実

施しています。アンケート受信者から、ご所属機関内外の関係者に転送、回送いただ

いて、その受信者から直接ご回答いただくことも歓迎いたします。

3.回答様式:本アンケートの「記入用紙」の部分は、回答者のお考えに一致するものを

選んでいただく「選択式」と、ご自由に書き込みをしていただく「記述式」の設問で

構成されています。「選択式」設問の回答だけで返信いただくことも歓迎いたします。

各種提案などをお伺いする「記述式」の設問については、文章のみでなく自由にイメ

ージ・イラストなど作図(free-hand writing も含めどのような形式でも可)なども

加えていただければなお幸いです。作図部分を別添にしていただいてもかまいません。

4.記名と事後お伺い:本アンケートは原則として記名回答をお願いいたします。回答者

個人の立場による回答提案のかたちでけっこうです。なお、集計、とりまとめの過程

で、ご記入内容についての確認や補足意見をお伺いさせていただく場合もありますの

で、その場合はよろしくご協力のほどをお願いいたします。

5.回答方法:本アンケートは、「記入用紙」に直接書き込んで FAX もしくは e-mail にて

返信ください

6.回答期限:来る平成 17 年 2 月 28 日(月)必着でお願いいたします。

<本件に関する問い合わせ・アンケート返送先>

社団法人 海洋産業研究会 大貫・河崎

Website:http://www2u.biglobe.ne.jp/~RIOE

〒105-0003 東京都港区西新橋 3-23-7 司ビル 6階

TEL:03-5401-1801、FAX:03-5401-2596

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水中音響通信技術について

水中音響通信技術とは、水中を良く伝播する音波(超音波)を用いて通信する技術

です。最近の電子技術の発達により、実用的なデジタル式データ通信装置が多数開発

され市販されるようになってきました。10km程度の長距離でも通信できる装置から、

映像を伝送できる装置まで、様々な用途に対応した通信装置が開発され、実際の海洋

で利用されています。

ところで、水中で通信する必要性はあるのでしょうか?

水温、水質、流向流速などを測定する観測装置を例にしてみます。このような海底

に設置する観測装置では、観測データを内部メモリに記憶しておき、一定期間後に回

収してデータを解析する方式が一般的です。このようなやり方ですと、回収前に故障

し欠測していたとしても分かりません。一方、波高計のようにリアルタイムの観測を

行う場合は、観測装置から陸上までケーブルを敷くための多額の資金が必要となりま

す。

ところが、水中音響通信装置を利用すると、随時、観測装置の作動状態を監視でき

るだけでなく、観測データを簡単に収集することができるようになりますので、従来

方式に比べ、観測の信頼性と経済性を大幅に改善することになります。

このような観測装置は水中音響通信技術の利用対象の一つにすぎません。現在、

様々な用途に利用されていますので、参考までに、次ページの図に紹介してみました。

この水中音響通信技術をさらに高度化することで、海洋環境調査、海底資源探査、

海洋土木工事、水産資源調査・管理、安全防災、セキュリテイ(港湾域・沿岸域)、

マリンレジャー等の幅広い分野での利用が期待できることから、新しい事業の創出が

可能となります。

今回のアンケートの目的は、水中音響通信技術の高度化も睨んで、今後、どのよう

な活用法が考えられ、産業としてどのような発展が見込まれるかを検討することにあ

ります。皆様のご協力をお願いいたします。

参考資料

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水中音響通信技術の応用例

(次頁図をご参照ください)

① 海底津波計や海底地震計からのリアルタイムでのデータ伝送

陸上へは、ブイから無線あるいは衛星経由でデータを転送する。

② 流向流速計(ADCP)からの観測データの伝送

③ 長期間、海中や海底に設置している観測機器の定期的な点検(作動状態確認不要)

④ 吊下式観測装置や曳航式観測装置からの観測データ伝送(特殊なケーブルが不要)

⑤ AUV(無索式水中ロボット)との通信(観測データ伝送、制御コマンド伝送)

⑥ AUV(無索式水中ロボット)間での通信

⑦ AUV(無索式水中ロボット)による観測データの伝送

⑧ 波高計や水質センサによる観測データの伝送

陸上へは、ブイから無線でデータを転送する。

⑨ 中層係留系による複数のセンサからの観測データの伝送

陸上へは、ブイから衛星経由でデータを転送する。

⑩ 人工魚礁、定置網、生簀等の観測(水質、画像)データの伝送

陸上へは、ブイから無線でデータを転送する。

⑪ バイオテレメトリ(潜水深度、水温データの伝送)による生態観測

⑫ ダイバーと監視船との間の通信、ダイバーの安全監視

⑬ ダイバー間での簡易通信(簡単な作業連絡等)

⑭ 海底石油ライザー管の振動や立上がり部の曲げ歪みの計測データの伝送

⑮ 魚網からのデータ(深度、水温、映像)の伝送

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返送先:社団法人 海洋産業研究会(担当:大貫、河崎)〆切:平成17年 2月28日(月) Fax:03-5401-2596 E-mail:[email protected]

水中音響通信の高度化による海洋研究・海洋産業の推進に関する

アンケート調査票 【ご回答者】 氏 名: (専門分野: )

ご所属機関:

役職部課名:

連 絡 先 :Tel= Fax=

E-mail=

************************************************************************************

現在、水中音響通信技術は、参考資料に示すように様々な用途に利用されています。この水

中音響通信技術をさらに高度化することで、海洋環境調査、海底資源探査、海洋土木工事、水

産資源調査・管理、安全防災、セキュリテイ(港湾域・沿岸域)、マリンレジャー等の幅広い分

野での利用が期待できることから、新しい事業の創出が可能となると考えられます。 この水中音響通信技術を活用して、上記の分野あるいは、皆様の担当分野において、どのよ

うなことに使われてきているか、また今後はどのように展開できるか、あるいは展開したいと

思われますか。以下の問いにお答えください。(選択式設問には該当のものに○印、記述式のも

のは自由記入) Q1.参考資料にあるように、水中音響通信装置が既に様々な用途に使用されていることはご

存知でしたか? ⅰ) 知っている --------->Q2へ ⅱ) 知らなかった --------->Q5へ

Q2.水中音響通信装置を使用したことがありますか。 ⅰ) 使用したことがある ---------- Q3へ ⅱ) 水中音響通信の利点は分かっていたが、使用したことはない---------- Q4へ

ⅲ) 必要がなかったので使用したことがない--------->Q5へ Q3.使用された代表的な水中音響通信機器についてお尋ねします。

3-1:その使用目的・用途、使用海域・水深、使用期間、伝送距離・方向、速度を教えてく ださい。

(1) 使用目的:

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(2) 使用海域および水深: (3) 連続での使用期間: (4) データ伝送距離、データ伝送方向(水平通信または垂直通信)、伝送速度:

3-2:使用された代表的な水中音響通信装置のメーカー名と製品名、性能、機能要望などに

ついてお答え下さい。 (1) 使用された機器のメーカーおよび製品名: (2) 機器の性能(大きさ、重量、適用水深、連続稼動時間、伝送距離、データ誤り率、

使い方の難易度等)は、使用目的を満足するものでしたか? 該当するものに○

印を付して、(ⅳ)(ⅴ)に○印を付した方は記入欄にコメントを具体的にお書きく

ださい。 ⅰ)満足している ⅱ)まあまあ満足している ⅲ)普通 ⅳ)やや不満 →記入欄に内容をお書きください。 ⅴ)不満 → 同 上

(やや不満、不満の理由) (3)使用した機器が具備していたら良かったと思われる機能があればお書きください。

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(4) 使用機器について何か問題点や要望(望ましい水中音響通信装置の姿)がありま

したらお書き下さい。

Q4.Q2で「(b) 水中音響通信の利点は分かっていたが、使用したことはない」、とお答

えの方にうかがいます。 4-1:使用しなかった理由を以下から選んでください(複数可)。

ⅰ) 性能・機能が不十分 ⅱ) 価格が高い ⅲ) 使い方が難しい ⅳ) 使用可能な機器の情報がなかった(得られなかった) ⅴ) その他( )

4-2:上記の理由を具体的にお教えください(例えば、不足している性能、価格の上限、

誤動作が多い等)。 Q5.今後、水中音響通信技術が高度化していった場合、どのような分野、用途での利用が

展開できるとお考えになりますか? 下記の分野ごとに展開可能性の有望度につい

て、該当すると思われるところに○印を付してください。別紙のイメージイラストも

参照しながらお答えください。 なお、全ての分野について回答をする必要はありませんが、専門外であっても、個人

的意見としてご回答いただければ幸いです。 (有望度:右方向に大)

1 2 3 4 5 ⅰ)海洋環境調査 + + + + +

ⅱ)海底資源探査・開発 + + + + + ⅲ)海洋土木工事 + + + + + ⅳ)水産資源開発 + + + + + ⅴ)海洋レジャー + + + + + ⅵ)防災・安全 + + + + + ⅶ)海上保安・セキュリティ + + + + +

(大洋域・沿岸域・港湾域・その他) ⅷ)その他(分野名 ) + + + + +

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Q6.上記の設問で有望度が高いとした分野について、水中音響通信技術の高度化により、今

後どのような利用方法、産業の発展が見込まれるとお考えになりますか?下の記入欄に

ご自由にお書き下さい。(イメージ図等でも結構です) <具体的に、性能、機能(使用水深、最大通信到達距離、データ伝送速度、連続運用日数、価格等を 記入いただいても結構です>

Q7.本アンケートの内容および水中音響通信技術についてコメントがあれば自由にお書き

ください。

<ご協力、大変ありがとうございました>

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資料2

水中通信関連論文リスト①

 (Oceans2000~2004)

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水中通信関連論文リスト①(Oceans2000~2004)

開催年場所

1 SP028 海洋での高速音響通信 垂直3000m以上での性能試験 WHOI 15,000bps:8-PSK、(BPSK,QPSK) 垂直3000mの通信2000 USA 周波数:15kHz、帯域幅:5kHz、指向性送受信、

適応ドップラ処理2 SP052 浅海域でのコヒーレント音響通信の時空間処理 Florida Atlantic 32,000bps:8-PSK、マルチパス浅海域での3200m通信

University 周波数:16~32kHz、マルチビーム受波アレイUSA 多ビーム適応でコーダ、AUV用映像データの伝送

3 SP053 NeMONet: 深海での実時間観測 NOAA/Pacific Marine 水中音響通信による映像データ伝送を用いたROVのNeMONet: A Near Real-Time Deep Ocean Observatory Environmental 海中海底観測システムの構想

Laboratory, USA4 SP060 高速音響モデムを使用した水中通信の品質 LinkQuest Inc. LinkQuest社の音響モデムの紹介

Wireline Quality Underwater Wireless Communication Using High Speed Acoustic Modems USA Example:Model4000 9600bps、水平4000m、垂直6000m周波数:17kHz、広帯域スペクトル拡散技術

5 SP114 浅海域での高信頼性通信のための改善したチャ-プFSKモデム Florida Atlantic 221~1172データbpsImproved Chirp FSK Modem for High Reliability Communications in Shallow Water University 56個の狭帯域FMパルスを使用、チャ-プFSK

USA 周波数:16~32kHz、AUVと遠隔センサ間のデータ通信6 SP127 非定常の水中プラットフォームの閉ループドップラ追尾と補正 University of AUV間の通信を可能とする水中通信のドップラ補正手法

Closed loop Doppler tracking and compensation for non-stationary underwater platforms Newcastle upon Tyne 速度~2.6m/sで~1/1000bit error rate UK

7 SP140 熱水口の海中映像の音響伝送のための低ビットレートビデオ圧縮 Instituto de Sistemas 水中音響伝送のための映像データの圧縮手法Portugal Gabor Filter Seg. + Codebook + DCT、圧縮率:~1/352

AUVからの映像信号の伝送8 SP163 高ビットレートBPSK信号の浅海域音響通信 TNO 4kbps、浅海域での移動ー固定局間通信 1~10km

Shallow-Water Acoustic Communication with High Bit Rate BPSK Signals Netherlands BPSK,2種の変位したキャリアを使用、データ信号の前方に擬似ランダム学習信号を付与

9 SP195 広帯域音響通信 DERA Winfrith 20.25kbps, 1.5km, 4kt doppler Dorchester 時空間適応処理(STAP)によるドップラ偏移の補正UK AUV,ROV,緊急展開システム(RDS)でのデータ通信

10 SP214 水中音響通信のための掃引-拡散関数の実行 State Oceanarium of 浅海域マルチパス対策として掃引拡散キャリア(FM波)をImplementation of a Sweep-Spread Function for Communication Ukraine

Ukraine11 SP215 シチリア海峡での低周波位相コヒーレント通信 Naval Reseach 周波数:950~1450Hz、QPSK、10km、海底設置音源、

Low Frequency Phase Coherent Communications in the Sicily Strait Laboratory 垂直受波アレイUSA 9時間の試験でbit error rate 10

-3、S/N 1dB

12 SP216 ランダム海洋における結合適応チャネル等化器と位相ロックループの連結の性能限界:初期試験とデータ Naval Reseach LaboratoryUSA

13 SP223 浅海域デジタル通信用のブラインド受信機 Ruhr-Universität 北海の浅海域でのデジタル水中通信A Blind Receiver for Digital Communications In Shallow Water Bochum 3kbit/s、距離 数km、Offset QPSK

Germany 垂直アレイを使用した自己訓練適応等化受信方式14 SP225 RSIC(多段階再帰連続型干渉除去)の適応化アルゴリズムの比較 University of

Comparison of Adaptive Algorithms Performances for a Multistage Recursive Newcastle upon TyneSuccessive Interference Cancellation (RSIC) Multiuser Detection Strategy UK

15 SP226 浅海域ネットワークチャネルの試験結果の解析と理論的チャネルモデル University of Analysis of Experimental Shallow Water Network Channel and Theoretical Channel Model Newcastle upon Tyne

UK16 SP272 非常に浅い海域での音響通信:1999AUVフェティバルの成果 WHOI

Acoustic Communication in Very Shallow Water: Results from the 1999 AUV Fest USAQPSK,BPSK,Reed Solomonコード、キャリア10kHz

17 SP285 時間反転鏡を使用した非対称水中音響通信 Instituto Superior 時間反転鏡を用いた位相共役法による焦点形成を水中

概 要 備  考番号論文番号

表          題 所    属

High-Rate Acoustic Communications for Ocean Observatories-Performance Testing Over a 3000m Vertical Path

SPATIO-TEMPORAL PROCESSING OF COHERENT ACOUSTIC COMMUNICATIONS DATA INSHALLOW WATER

Very Low Bit Rate Video Compression for Acoustic Transmission of Subsea Images ofHydrothermal Vents

Wideband Acoustic Communications Dispelling Narrowband Myths over Underwater AcousticChannels

Performance Limitations of Joint Adaptive Channel Equalizer and Phase Locking Loop in RandomOceans: Initial Test with Data

利用、 理論解析及び初期実験 40~80kHz 掃引4kHz/ms 4ポイント差動PSK、2kbps

シミュレーションモデルによる評価実験、結合適応チャネル等化器と位相ロックループ方式によるbit error rateの改善、音源のドップラによる位相ゆらぎを除去する前置

浅海域ネットワークの干渉除去のための適応化アルゴリズム及び可変ステップサイズ最小平均二乗法と改良型再帰最小二乗法、従来の方式との比較評価北海の浅海域環境での水中通信のための伝搬特性に関して、実際の計測とRayモデルを使った予察との比較評価深度3~8mの極浅海域において、REMUS AUVを用いて60~5000bpsで5kmの水中音響通信を実現できた。

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水中通信関連論文リスト①(Oceans2000~2004)

開催年場所

概 要 備  考番号論文番号

表          題 所    属

Asymmetric Underwater Acoustic Communication Using a Time-Reversal Mirror T ecnico 音響通信に応用して、音源と焦点間の干渉を低減する。Portugal 机上での比較評価

18 SP293 ネットワーク化された音響モデムを用いて分布器材からの沿岸海流計測センサの実時間投棄 University of 水中音響モデムを使用した実時間の海洋環境計測、Real-Time Delivery of Subsurface Coastal Circulation Measurements Connecticut 海底設置型、ブイ係留型from Distributed Instruments using Networked Acoustic Modems USA Benthos社製モデム、9-14kHz,300bps,244bytes Packet

19 SP363 水中音響通信の積分誤差補正機能を持ったブロック-適応決定フィードバック等化器 NUWC UUV-プラットフォーム間通信Block-Adaptive Decision Feedback Equalization with Integral Error USA エラーとSN比を改善できる決定フィードバック等化法Correction for Underwater Acoustic Communications 実海域での試験の結果従来に比べて約3dBの改善

20 SP402 水中音響ネットワークによって構築された海洋ウェブの進化 Space and Naval Evolution of Seaweb Underwater Acoustic Networking Warfare Systems Center

USA21 SP413 AUV用の指向性を旋回できる音響通信用送受波器のシステム設計手法 Physical Optics

System Design Aspects of a Steerable Directional Acoustic Communications CorporationTransducer for Autonomous Undersea Systems USA

22 SP456 シグナルエックス:環境音響と信号の連結計画 Scripps Institution of 海洋音響通信実験SignalExの概要SignalEx: Linking Environmental Acoustics with the Signaling Schemes Oceanography 洋環境による伝搬特性、各種変調方式(MFSK,DPSK,

USA QAM)、海中ネットワーク用モデム23 SP460 OFDMを用いた水中通信システムのパラメータの検討 Polytechnic University

Parameter Study of OFDM Underwater Communications System USAOFDM(orthogonal frequency division multiplexing)

24 SP462 中周波数帯のコヒーレント通信のための水中音響チャネルの調査と解析 WHOI キャリア2.25kHz、QPSK(2500bps)、最大距離44kmSurvey and Analysis of Underwater Acoustic Channels for Coherent USA 各種水深(浅海200m以下、大陸棚200-1200m、深海域Communication in the Medium-Frequency Band 2500m)で試験

25 p1573 マルチパス特性を持つ水中チャネルの音響通信用送波アレイ Korea Maritime University2001 Transmit Array for Acoustic Communications in Multipath Underwater Channel Korea

26 p1581 高周波位相共役アレイ Scripps Institution ofA High Frequency Phase Conjugation Array Oceanography

USA27 p2065 多種なUUV用の音響通信と航法の統合 WHOI

Integrated Acoustic Communication and Navigation for Multiple UUVs USAUUV搭載のための軽量小型化、低コスト化、低消費電力

28 p2076 海中通信ネットワークのためのプロトコル University of Newcastle 海中音響通信ネットワーク用のプロトコルの検討Protocols for Sub-Sea Communication Networks upon Tyne CDMA、TDMA

UK29 p2083 RTS/CTSの結合とARQ再送信を使用した海中音響ネットワークの性能 Space and Naval

Warfare Systems CenterUSA

30 p2087 性能に影響を与える伝搬遅延障害の有る水中音響ネットワークの階層的なプロトコル Naval Postgraduate School 完全同時送受信方式(Full Duplex)を実現する海中通信USA プロトコル

31 p2159 実時間高速音響データリンクの開発 ENST-BretagneDevelopment of a Real-Time High Data Rate Acoustic Link France

32 p2165 複数利用者用のマルチパス伝搬のある水中音響通信 Massachusetts Institute of 複数AUVとの通信を行なう海中ネットワークの方式Multiuser Undersea Acoustic Communications in the Presence of Multipath Propagation Technology Cambride Reed Solomon Code, BCH Code, QPSK

UK 1400bps,帯域5kHz33 p2177 多アクセスの浅海チャネルにおけるバースト通信のための2次元レイクMMSE受信機 University of Newcastle

upon Tyne

海中ネットワーク構築のための水中音響通信実験Seaweb 98,99,2000の概要報告、DADS(展開自律分布システム)通信モデムとネットワークプロトコル圧電重合材を使用した高能率、低コストの送受波器アレイ、指向性の旋回、駆動回路、プリアンプ

OFDMによる海中通信の実現のための設計限界と解析手順の検討、周波数/時間の選択性が強い

海中LAN用の位相共役(時間反転鏡法)の送受波アレイ、周波数3~4kHz、開口長78m、29素子、サンプリング12kHz 最大音源レベル180μPa時間及びコード分割多重化法を組み合わせてロングベースラインによる航法(位置計測)と双方向通信を実施

送受信間でハンドシェイク(RTS:request to send,CTS:clear to send)とARQ(automatic repeat request)を行なう海中音響 ネットワーク、海中通信プロトコル

水深20mの浅海域で伝送距離13km以上が可能な高速データ伝送を可能とする送信アレイ、シミュレーションによる評価

水上船舶とUAV間の音響高速データ通信、大きく特性が変化する伝搬路に対応するために選択された多チャンネル等化器が使用された。25kbps

浅海域のマルチアクセスを可能とする拡散スペクトル方式の提案、最小平均二乗誤差(MMSE)、受信エレメント数

Performance of Undersea Acoustic Networking Using RTS/CTS Handshaking and ARQRetransmission

A Network Layer Protocol for UANs to Address Propagation Delay Induced PerformanceLimitations

2D-Rake MMSE Receiver for Burst Communications Through Multiple-Access Shallow-Water

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水中通信関連論文リスト①(Oceans2000~2004)

開催年場所

概 要 備  考番号論文番号

表          題 所    属

UK34 p2201 浅海音響チャネルにおける反復等化器とデコード手法 Northeastern University 浅海域での音響通信方式

Iterative Equalization and Decoding Techniques for Shallow Water Acoustic Channels 決定フィードバック等化(DFE)、ターボデコーダ、最小平均二乗誤差(MMSE)、MAP等化

35 p2209 浅海域においてOQPSKで予めコード化された信号の送信を行なうブラインド多チャネルDFE受信機 Ruhr-Universität BochumA BLIND MULTICHANNEL DFE RECEIVER FOR PRECODED OQPSK SIGNAL GermanyTRANSMISSION IN SHALLOW WATER

36 p2220 水中音響モデム及びネットワーク用の通信プロトコルの設計 G.E.S.M.A 水中通信ネットワーク及びモデムの階層別プロトコルDESIGN OF A COMMUNICATION PROTOCOL FOR UNDERWATER ACOUSTIC MODEMS AND FranceNETWORKS

37 p2227 受動位相共役を用いた水中音響通信 University of WashingtonUnderwater Acoustic Communication Using Passive Phase Conjugation USA

38 p2231 時間反転を用いた水中音響通信 Scripps Institution of 時間反転法(位相共役法)を利用した海中音響通信Underwater Acoustic Communication Using Time Reversal Oceanography BPSK,QPSKによる実浅海域での試験評価

USA39 p2236 空間的に変調された音響通信のための位相共役アレイにおける波面分割

Portugal

40 p2250 水中音響チャネルにおける全二重通信の縮小モデル解析 Naval Postgraduate SchoolScale Model Analysis of Full-Duplex Communications in an Underwater Acoustic Channel USA

送受波方式、送受信間クロストークの低減41 p2256 湾内規模の音響通信:トモグラフィーMシーケンスを使用した手法の可能性検討 WHOI 超遠距離(3200km)、超低周波(75Hz)音響通信。

Basin-Scale Acoustic Communication : A Feasibility Study Using Tomography M-sequences USA トモグラフィー送信信号の利用、37.5bps、拡散スペクトル多チャンネル決定フィードバック等化方式

42 p2262 波打ち際のチャネル等化された音響通信の性能 Benthos Inc. 波打ち際の極浅海域で海洋環境観測のための音響テレPERFORMANCE of CHANNEL-EQUALIZED ACOUSTIC COMMUNICATIONS in the SURF ZONE メトリの実験結果。3220bps QPSK

決定フィードバック等化方式によりチャンネル等化を実施43 p2270 船底装備のコンフォーマルアレイを使用した小型UUVの音響通信 WHOI REMUSに搭載の通信用コンフォーマルアレイ、10-40kHz

Acoustic Communication with Small UUVs Using a Hull-Mounted Conformal Array USA 1-3モード圧電セラミックロッドをモールドした複合圧電材、感度、指向性などの計測データ

44 p2276 音響・電波混成のデータ伝送システムの概念と試験結果 BAE SYSTEMS 音響水中通信機能とRF通信機能を持ったブイ。Hybrid Acoustic and RF Data Telemetry Systems Concepts with Experimental Results UK

45 p2283 TALISMAN : 音響リンク性能を評価するために時間可変チャネルモデルを使用した革新的器材 G.E.S.M.ATALISMAN : An innovative tool using time varying channel model to evaluate performances of an Franceacoustic link

46 p2322 海底器材のためのデータ伝送 WHOIData Telemetry for Ocean Bottom Instrumentation USA

ADCP,μモデム(音響送信1ch、音響受信2ch)、FH-FSK47 p0203 音響の再方向、再取得及びCetusⅡAUVを使用した非常に浅い海の機雷状目標物の音響/光学的映像化 Lockheed Martin Perry

2002 Acoustic Redirection, Reacquisition, and Acoustic/Optical Imaging Technologiesof Mine-Like Targets in Very Shallow Water Using the CetusII AUV USA

48 p0581 水中音響通信システムにおいてドップラ差分と時間遅延とが連結された補正 Cranfield UniversityUK

49 p0594 水中通信におけるRAKEと仮説フィードバック直接シーケンスのスペクトル拡散手法の比較 NUWCPerformance Comparison of RAKE and Hypothesis Feedback Direct USASequence Spread Spectrum Techniques for Underwater Communication

海底での計測及び水中通信機能を有するデータテレメートリブイシステム。

の低減が可能、Channels

Wavefront Segmentation in Phase-Conjugate Arrays for Spatially Modulated AcousticCommunication

Combined Differential Doppler and Time Delay Compensation for an Underwater AcousticCommunication System

OQPSK(offset quadri-PSK)、適応化決定フィードバック等化(DFE)、ドップラ効果の補正、移動及び固定音源(送信)を使用した実験評価 EU-MASTⅢ、ROBLINKS

第1:物理的階層、第2:データリンク階層、第3:ネットワーク階層新通信方式(受動位相共役方式):最初に単一のプローブパルスを送信し、マルチパス信号が消滅した後にデータ信号を送信、受波器アレイ信号の相互相関処理→復調

時間反転鏡の概念に基づいて海洋に数多くの平行チャンネルを形成し、それを利用することにより通信の高速性と信頼性を向上させる。シミュレーションによって評価を実施

完全二重化通信方式の検討。通信の高速化、エラーチェック機能の付与

水中通信:決定フィードバック等化方式、LFMチャンネルプローブ、PSK、RF通信:VHF、FM、SSQ-47LOFARソノブイ

Rayモードをベースとして時間的に変化する物理的なパラメータの伝搬特性の予察モデルで、デジタル音響通信を評価するためのツールの紹介(TALISMAN)

CetusⅡAUVの紹介。音響レンズと物理的ビームフォーミングによる映像ソーナーを装備。浅海域MCM用、WHOI製の音響モデムUAMを使った音響リンクで、母船からAUVを管制

浅海域での高速デジタル音響通信のための信号のドップラ及び時間遅延拡散を補正する方式。時間及び周波数領域で高分解能な処理を行い、主要のマルチパスチャンネルを検出

妨害が少なくマルチアクセスが可能な直接シーケンス拡散スペクトル音響通信において、RAKEと仮説フィードバック等化の2つの受信方式のシミュレーション及びフィールド評価試験の結果

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水中通信関連論文リスト①(Oceans2000~2004)

開催年場所

概 要 備  考番号論文番号

表          題 所    属

50 p0604 多AUVの位置決定のためのネットワークプロトコル Massachusetts Institute of A Network Protocol for Multiple AUV Localization Technology

UK51 p0612 水中音響通信チャネルの多利用者用の強力なCDMAの検出 Manhattan college Parkway

Multiuser Robust CDMA Detection for Underwater Acoustic Communication Channels USA

52 p0627 水中DSSS音響通信におけるPNコード取得に基づく航法伝搬ニュ-ラルネットワークの応用 National Taiwan Ocean Application of BP Neural Network Based PN Code Acquisition System in UniversityUnderwater DSSS Acoustic Communication* Taiwan

53 p2395 2-5 kHzにおける広帯域チャネルインパルス関数と水中音響通信の時間的な揺らぎ NRLTemporal Fluctuations of Broadband Channel Impulse USAFunctions and Underwater Acoustic Communications at 2-5 kHz

54 p2416 各種の形状のチャネルにおいて仮想時間反転を用いた水中通信 SiPLAB, Universidade do Underwater Communications Using Virtual Time Reversal in a Variable Geometry Channel Algarve

Portugal55 p2422 水中音響通信のための受動位相共役に連結された決定手法 University of Washington 空間-時間のマッチドフィルタである受動位相共役法。

USA 複数素子からなる受波アレイを用いた水中音響通信直接的決定法を使った伝播のインパルス応答の推定

56 p2429 水中音響チャネルの適応化多チャネル超指数ブラインド等化器 Ruhr-Universität BochumAdaptive Multichannel Super-Exponential Blind Equalization of Underwater Acoustic Channels Germany

57 p2438 時空間ブラインド等化手法に基づく実時間高速音響リンク : トライデント音響システム ENST-BretagneREAL-TIME HIGH DATA RATE ACOUSTIC LINK BASED ON SPATIO- FranceTEMPORAL BLIND EQUALIZATION : The TRIDENT acoustic system.

58 p2444 2次元統計を用いた水中音響チャネルのブラインド適応等化手法 Ruhr-Universität BochumBlind Adaptive Equalization of Underwater Acoustic Channels Using Second-Order Statistics Germany

59 p2453 音響チャネル推定を用いた水中デジタル通信 Korea Maritime UniversityUnderwater Digital Communication Using Acoustic Channel Estimation Korea

60 p100 音響-光学通信の実験的検討 NUWC 水中-空中間コバート通信、音響-光学センサ、2003 Experimental Investigation of Acousto-Optic Communications USA レーザーセンサによって音波による海面の乱れを計測、

ビタビ コンボリュ-ション、61 p109 革新的なアルゴリズムを使用した2重拡散水中音響チャンネルの改善されたデジタル通信システム Cranfield University

An Improved Digital Communication System for Doubly-Spread Underwater UKAcoustic Channels using Evolutionary Algorithms

62 p273 多受信チャネルのための水中音波伝搬の非直線モデル化 Florida Atlantic UniversityNon-Linear Modeling of Underwater Acoustic Waves Propagation for Multi-Receiver Channels USA

63 p279 直接シーケンス拡散スペクトル音響通信信号の取得 Massachusetts Institute of Acquisition of Direct Sequence Spread Spectrum Acoustic Communication Signals Technology Cambride

UK64 p292 時間-周波数の拡散が大きいチャネルにおける受信器の性能 University of Kiel

Performance of a Receiver in Large Time-Frequency Spreading Channels Germany

65 p1368 多搬送波変調を用いた水中音響モデム City University of Hong KongUnderwater Acoustic Modem Using Multi-Carrier Modulation Hong Kong

マルチパス処理に適応化チャンネル等化とLSMを使用 66 p1382 適応時間変転鏡を有する水中通信のクロストークの零化 Korea Maritime University

2-5kHzの広帯域の音響チャンネルのインパルス応答関数の計測結果と音響通信に及ぼすインパクト。

複数のAUV間の音響通信ネットワーク構築のアルゴリズム。各AUVが高速のPSK信号を送受信し、受信信号の遅延時間から自己位置を決定する。マルチアクセスにおける干渉を除去できる水中通信の受信方式。MAI(multiple access interference),直接シーケンス拡散スペクトル(DSSS)、CDMA、PSK

Decision-Directed Passive Phase Conjugation for Underwater Acoustic Communication:Experimental Results

PNコード取得システムに基づく後方伝搬(BP)ニューラルネット。直接シーケンス拡散スペクトル(DSSS)

時間反転鏡技術によって水中通信のチャンネル安定性の時間が延長できる。チャンネルインパルス応答の時間反転レプリカでフィルターされた送信信号又は先行するプローブ信号を用いる。

タイミング回復、ブラインド多チャンネル等化器、超指数的アルゴリズム、ROBLINKS、QPSK

フランスのGESMA製のデジタル音響リンクTRIDENTの紹介。空間-時間ブラインド適応決定フィードバック等化器8-25kbps、10-40kHz、ブラインド多チャンネル等化器、キャリア位相回復、適応化マルチチャンネル等化器、ドップラ補正、ROBLINKS1999海上試験で評価受動位相共役法と類似の固有値分解アルゴリズム方法による伝搬チャンネル推定。

浅海域の高速音響デジタル通信、マルチパス信号の消去方法 ドップラの正確な推定の革新的なアルゴリズムを使って干渉を除去、FFT,MUSIC、Differential Evolution

浅海域で10kbps,1kmの通信、48のキャリア変調方式を使用データ信号yとして48の並列ビットを有するパケット方式

非直線性モデルを使って垂直ラインアレイの各ハイドロホン毎の受信信号ドップラを検出、モデルによる結果と浅海域での実測と比較、15.6~31.9kHz、MFSK、浅海域通信性能の予測

浅海域での時間的に変化する伝搬チャンネルを推定し、その結果を使って直接拡散スペクトル信号を抽出、低SN信号にも有効

時間遅延とドップラ拡散が大きく時間的に変化して周波数選択性の有る通信チャンネルにおける音響通信方式の検討、直接フィードバック等化法とカルマンフィルタを利用

チャンネルのクロストークを除去するために適応化時間反転

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水中通信関連論文リスト①(Oceans2000~2004)

開催年場所

概 要 備  考番号論文番号

表          題 所    属

Nulling crosstalk in underwater communication with an adaptive time-reversal mirror Korea

67 p1389 KRISOの水中無響水槽におけるパッシブアレイによる近接音場雑音の識別 Korea Research Institute Nearfield Noise Identification with a Passive Array in the Underwater Anechoic Basin at KRISO of Ships and Ocean

Engineering, Korea 近距離音場での計測68 p1532 空間的に変調された水中音響伝送信号の結合復調と連続復調の比較評価 Falmouth, MA 多入力、多出力の空間変調方式、

A Comparative Evaluation of Joint Versus Sequential Demodulation of Spatially Modulated USA 容量利得、電力低減、スペクトル効率Underwater Acoustic Telemetry Signals

69 p1533 浅海域における遠距離音響通信用の新多チャネル空間ダイバーシティ手法 Florida Atlantic UniversityA NEW MULTI-CHANNEL SPATIAL DIVERSITY TECHNIQUE FOR LONG USARANGE ACOUSTIC COMMUNICATIONS IN SHALLOW WATER 二重目的音響モデム、FH-FSK、ビタビコード

70 p1539 カオス直接拡散スペクトルの水中通信システムの海上試験結果 Télécommunications Sea trial results of a chaotic direct-sequence spread spectrum underwater communication system (UMR CNRS 6165)

France71 p1773 3箇所の浅海域における水中通信性能の実測結果とモデル評価の比較試験 Science Applications 浅海域の海域毎の通信性能評価、

Measurements and Modeling Comparisons of Underwater International Corporation, ノンコヒレントMFSK,Communications Performance at three Shallow-Water Sites USA 極浅海域(5m)、反射の大きな海域(水深80-150m)

72 p1780 水中音響通信の時間-周波数のコード化 Northwestern Poly-technical 浅海域でのマルチパス干渉対策、Time Frequency Coding in Underwater Acoustic Communication University モデルによる伝搬チャンネルの推定、2次元コーデング

China シミュレーション結果:25bps、5km、SN0dB、低誤り率73 p1781 水中通信用デジタルトランシーバ Korea Research Institute 位相コヒーレントな全デジタル送受信方式、

A Digital Acoustic Transceiver for Underwater Communication of Ships and Ocean PLLやDLL(遅延ロックループ)を使用しない直交受信方式Engineering, Korea 適応化等化器

74 p1793 環境知識を用いたブラインド適応等化器の性能向上 Ruhr-Universität Bochum 環境情報を利用したマルチチャンネル等化器を用いた受信方式

Performance Enhancement of Blind Adaptive Equalizers Using Environmental Knowledge Germany 伝搬路のインパルス応答、ペケリス(Pekeris)伝搬モデル伝搬の環境情報を加味した信号処理

75 p9 二重に拡散する音響チャンネルにおける強力なデジタル通信システム Cranfield University2004 A Robust Digital Communication System for Doubly-Spread Underwater Channels UK

OTO'0476 p14 DSSS音響通信信号のMMSE取得 WHOI

MMSE Acquisition of DSSS Acoustic Communications Signals USA

77 p20 深海域における水中音響データ伝送の実験 JAMSTEC 32QAM、搬送波80kHz、100kbps、通信距離50~100mAn Experiment of the Underwater Acoustic Data Transmission in Deep Sea Japan 駿河湾での試験強化、ケーブル無しのROV(AUV)の管制

多チャンネルDFE(Decision Feedback Equalizer)78 p26 空間-時間コーデングと処理を使用して向上された水中音響通信性能 Arizona State University

USA地中海でのデータを使用して本方式が優れていることを検証した。

79 p34 水中通信のためのブラインド適応等化器 National Taiwan OceanBlind Adaptive Equalizer for Underwater Communications University

Taiwan80 p40 中距離浅海域通信のための水中音響チャンネルの性質 National university of

Underwater acoustic Channel Characterisation for Medium-Range Shallow Water SingaporeCommunications Singapore

90 p748 PSKで変調された掃引拡散キャリア信号の位相誤差限界の推定 State Oceanarium of UkraineEstimation of Phase Error Limits for PSK-Modulated Sweep-Spread Carrier Signal Ukraine

数式上の検討91 p789 その場限りに形成される水中音響ネットワークの経路及びチャンネルアクセス手法 University of Birmingham

A Routing and Channel-Access Approach for an Ad Hoc Underwater Acoustic UK

Enhanced Underwater Acoustic Communication Performance Using Space-Time Coding andProcessing

UUV搭載の音響通信、音響航法システムに関して、水槽において雑音下での性能評価試験を実施

同期方式と最大尤度法によるシンボル推定を組み合わせたマルチチャンネル空間ダイバーシテイ法を用いた高速通信方式

データレートの高速化が可能な多送信、多受信送受波器を用いた水中通信用のコーディング方式→空間時間コーディング

マッチドフィルタを用いてPSKの掃引拡散キャリア信号の復調を行う。浅海域における効果的、経済的な通信方式

無線ネットワークで使用されているAODV(ad hoc on-demanddistance vector)アルゴリズムの利用した水中音響ネットワーク。

ブラインド適応等化器は、位相変調された搬送波の環状化安定性を利用して、過去のデータに依存せずに伝播チャンネルの等化を行う方式。QPSKに適用。高速収束性、低ビットエラー率

水深15-20mで距離1kmの浅海域通信を実現するために、海洋の伝播チャンネルの特性を調査した。問題は、時間的に変化するマルチパスと非ガウシャン性のえびのインパルス的雑音である。

鏡方式(ATRM)を利用、長距離音響通信、シミュレーション評価

同一周波数帯を同時に使用可能なカオス理論に基づく拡散スペクトル方式の海上試験結果、マッチドフィルタ方式と状態空間形成方式との2方式受信

水中通信の伝搬チャンネルは時間的に変化し、その影響で受信信号は歪を生じる。この歪を補正するために、パイロットトーンを付加し、さらに、ダイバーシティを用いる手法について評価したMMSE:最小二乗平均誤差、DSSS:直接シーケンス拡散スペクトル 空中での通信に使用されているCDMA方式は、水中でも多利用者通信には適している。水中特有のマルチパスについて配慮した。

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水中通信関連論文リスト①(Oceans2000~2004)

開催年場所

概 要 備  考番号論文番号

表          題 所    属

Network 衝突防止と認識機能を持った多アクセス。シミュレーション評

92 p1975 海底探査用の"MBARI"ブイの設計 Monterey Bay Aquarium 海底観測用の係維型ブイ。MBARI's Buoy Based Seafloor Observatory Design Research Institute

USA93 p1995 統合されて自律運用する通信モデムを装備した水中観測体の開発 Benthos Inc. Benthos社の海洋観測機器、音響通信機器の紹介

Development of Integrated, Autonomous, Modem-Based Underwater Observatories USA

94 p2219 水平に長いアクティブ時間反転通信の基礎研究 JAMSTECA Basic Research on the Long Horizontal Active Time Reversal Communication Japan

95 p2225 浅海域における多入力多出力の時間反転通信の手法 UCSDCoherent MIMO Time Reversal Communications in Shallow Water USA

TRMにより1個の送波アレイで複数のメッセージを複数の深度(同一距離)の浅海域で通信する実験。 3.5kHz、水深110m、距離9km、BPSK、QPSK、8-QAM  MIMO:Multiple-input Multiple-output

海底観測、海底ネットワーク、太陽電池及び風力発電電源、海面の観測

多素子アレイを使用した時間反転波と適応フィルタを用いた浅海域の長距離高速水中音響通信方式の検討

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資料3

水中通信関連論文リスト②

(UDT 2000~2004)

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水中通信関連論文リスト②(UDT2000~2004)

開催年場所

1 2000 2B2 直行系列乱数と実時間チャネル同定に基づくロバスト浅海域音響通信 Thomson Marconi Sonar, 浅海域通信Europe Robust shallow water acoustic communications based upon orthogonal sequences and real time 直交系列乱数

channel identification France2 2B3 広帯域音響通信ー環境の利用 DERA Winfrith, UK 浅海域通信

Wideband acoustic communications - exploiting the environment 位相コヒーレント技術

3 2B4 広帯域水中音響通信:海上試験 Simrad, Norway 広帯域通信High bandwidth underwater acoustic communication : at sea experiment QPSK

4 PⅠ1 浅海域水中音響通信用チャネル等化アルゴリズム Academia Sinica, PRC 浅海域通信A channel equalization algorithm for underwater acoustic communication in shallow water チャネル等化アルゴリズム

5 2001 PⅠ1 戦闘システムのデータハイウェイにCOTS技術を利用 BAE Systems 潜水艦内データリンク 論文なしEurope Exploiting COTS technology in a combat system data highway UK

6 9B1 潜水艦用統合通信システム Hagennuk 潜水艦内/外の通信Fully integrated communications system for submarines Marinekommunilation 論文なし

Gmbh, Germany7 2001 3A1 次世代(2015-2030)海軍における水中戦(USW) NUWC, (将来のUSWのC4ISR

Hawaii Surface undersea warfare in the Navy after next (2015-2030) USA の様相)

8 4A1 潜没潜水艦、展開型自律センサ及び陸上指揮センタと連結された無線ゲートウエイ・ブイから成る水中音響通信ネットワーク Naval PostgraduateSchool AUV用水中ネットワークNetworked undersea acoustic communications involving a submerged submarine,deployable autonomous USAdistributed sensors, and a radio gateway buoy linked to an aqshore command center

9 4A3 ネット中心の戦闘環境における潜水艦の効力半径の拡張:無人地上センサの展開、探知及び通信連絡の全体を通しての接続の増加 NUWC, 潜水艦による無人機Extending the reach of the submarine in a net-centric environment: increased connectivity through USA (UAV)の管制ネットワークunattended ground sensor deployment, contact detection, and communication

10 6A1 浅海域通信におけるマルチパスのコヒーレント積分 Academia Sinica 浅海域通信 論文なしCoherent Accumulation of mutipath in shallow water communication PRC 擬似ランダム符号化信号

11 6A3 水中センサシステム用高性能音響モデム Qinetiq, Winfrith 音響モデムULRICOM: A high performance dual band modem fpr subsea Sensor Systems Technology Center 水中ネットワーク

UK12 2002 7B1 浅海域で試験された適用可能な水中通信モデル Saab Bofors 浅海域通信

Europe Adaptive underwater communication model tested in shallow waters Underwater Systems, DPSK,非線形イコライザーSweden

13 PⅡ6 水中通信、デジタル通信への入り口 L3 Communications デジタル水中通信Underwater communication, the entry into digital systems Germany MFSK,MPSK

14 2002 10B1 音波を利用した水中画像伝送システムの開発 Ships and Ocean 水中画像伝送システムKorea Development of an acoustic-based Underwater image transmission system Engineering QPSK

Korea15 10B3 海中音響通信システムに対するフェーズコヒーレントな全デジタル送信機と受信機 Ships and Ocean 水中通信用の全デジタル

A phase coherent all-digital transmitter and receiver for underwater acoustic communication systems Engineering 送信機/受信機Korea

16 11A1 水中レンジのデータ通信 : 音響通信システムの技術と開発 NUWC, 水中レンジでの潜水艦と 論文なしUnderwater range data communications (URDC) USA 計測センタ間の水中通信The Development and technology of an acoustic communication systems

17 2003 2C3 音響システム「トライデント」の紹介、対機雷/対潜戦におけるリアルタイムコミュニケーションの重要性 ENST-Bretagne, 高速音響リンクEurope Presentation of the acoustic system TRIDENT : Interest of real-time Acoustic communication for mine and France ブラインド等化手法

概 要 備  考番号論文番号

表          題 所    属

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水中通信関連論文リスト②(UDT2000~2004)

開催年場所

概 要 備  考番号論文番号

表          題 所    属

antisubmarine warfare18 2C4 HAIL、戦闘空間マネージメントのための水中通信技術 Nautronix MariPro Inc., スペクトル拡散通信、

HAIL, Underwater Communication Technology for Battlespace Management USA ブロードバンド通信

19 PⅠ1 長距離水中通信における多重受信位置の自己等化のシミュレーション Agency for Defense 浅海域通信Simultaneous Self-equalization at Multiple Receiving Locations in Lond-range Underwater Communication Development, ATRM:Adaptive Time

Korea Reversal Mirror20 3C3 浅海域環境でのハイビットレートBPSK信号 TNO phsics and Electronics 浅海域通信

High bit rate BPSK signals in shallow water environments Laboratory, Netherlands イコライザー、BPSK

21 2004 2C2 浅海域における音響通信 Swedish Defence マルチパス、ドップラ対策Europe Acoustic communications in shallow Water Research Agency, 判定帰還形等化器(DFE)

Sweden 直交周波数分割多重(OFDM)22 2C3 ウルトラ社製FMモデム Ultra Electronics S&CS アナログFMモデム

The Ultra FM Modem UK 信号レベルに応じた変調定数位相変動への適応処理

23 3C1 軍用プラットフォームのための高性能デジタル水中電話 QinetiQ, UK 128素子のアレイを使用A High Performance Digital Underwater Telephone for Military Platforms COTSを利用した処理部

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資料4

水中通信関連論文リスト③

  (日本音響学会、米国音響学会、MTS、その他)

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水中通信関連論文リスト③(日本音響学会、米国音響学会、MTS、その他)

日本・学会関連番号 開催年

場所著者名 表題 発行機関 概要 論文番号など 備考

1 2000 越智寛(JAMSTEC) 他 3種類の変調方式を使用した実海域通信実験について 海洋音響学会 MSK,4値DPSK,16値QAMについてマルチパスの入った伝搬データの復調実験を実施した。QAMは復調できなかったが、MSK,DPSKはほぼ理論どおりのデータだった。

海洋音響学会平成12年度研究発表会講演論文集2000-1

2 2000 徳永浩二(沖電気) 他 16QAM方式による水中音響通信実験の報告 海洋音響学会 実海域実験で収録したデータで16値QAMの復調シミュレーションを実施。十分なSNRがある場合、SNRに対するシンボル誤り率が理論値に近いことを確

海洋音響学会平成12年度研究発表会講演論文集2000-2

3 2000 時田昌樹(電通大) 他 水中通信路におけるPer-Survivor Processingを用いた送信データの推定 海洋音響学会 相模湖においてDPLL(Digital PLL)+DFEとPSP(Per-SurvivorProcessing)+GVE(一般化Viterviアルゴリズム)との評価比較を実施した。結果、移動環境においてPSP+GVEが効果的であると確認された。

海洋音響学会平成12年度研究発表会講演論文集2000-3

4 2001 小島淳一(KDDI研) 平成13年度第1回談話会発表要旨自律型水中ロボットと音響通信

海洋音響学会 AE2に搭載されている音響通信装置の紹介。データ用(125/250dps,FSK,40kHz帯,双方向2重)、画像用(16kbps,QPSK,50~

海洋音響学会誌Vol.28No.4p.17

5 2001 Arata KANEKO(Hiroshima Univ.) et.

Acousitc monitoring of the Kuroshio Current system 海洋音響学会 音響を用いた黒潮観測についての説明内で、システム内のUACS(水中音響通信システム)を紹介。UACS間で100bps(10-15km)~約0.1bps(50km)の通

海洋音響学会誌Vol.28No.4p.30

6 2001 中村敏明(JAMSTEC) 自律航行型無人潜水機「うらしま」の音響機器 海洋音響学会 海洋音響学会平成13年度第2回談話会講演論文集7 2003 越智寛(JAMSTEC) 他 駿河湾における音響信号伝送実験について 海洋音響学会 海洋音響学会平成15年度研究発表会講演論文集03-188 2004 志村拓也(JAMSTEC)

他Active Time Reversalによる水中音響通信の基礎的検討 海洋音響学会 時間反転波による音響通信のシミュレーション検討。長距離高速通信の可

能性を示す。海洋音響学会平成16年度研究発表会講演論文集04-19

9 2001 月岡哲(JAMSTEC) 他 水中減速機ノイズ低減の一手法 海洋理工学会 海洋理工学会平成13年度秋季大会講演論文集A110 2001 中村敏明(JAMSTEC)

他M系列信号を用いたAUV「うらしま」の内部反射 日本音響学会 AUV内部の音波反射がダウンリンク用受波器に及ぼす影響の調査。

実際に「うらしま」に受波器を取り付け、母船からM系列信号を送信して実日本音響学会研究発表会講演論文集2001年春季1-2-17

11 2003 越智寛(JAMSTEC) 他 16QAM変調方式を用いた水中音響伝送実験について 日本音響学会 日本音響学会研究発表会講演論文集2003年秋季1-9-1312 2003 志村拓也(JAMSTEC) 時間反転波の水槽試験による検証 日本音響学会 日本音響学会研究発表会講演論文集2003年秋季2-9-1013 2004 志村拓也(JAMSTEC) Activeな時間反転波音響通信の基礎検討 日本音響学会 日本音響学会研究発表会講演論文集2004年秋季2-10-314 2004 越智寛(JAMSTEC) 他 海洋観測システムでの「音」の利用-自律型無人探査機(AUV)の水中通信

技術-日本音響学会 水中音響通信方式の説明と「うらしま」搭載の音響データ通信装置の紹介。

2.4kbps,MSK/32kbps,16QAM日本音響学会誌第60巻12号p.735

JASA関連番号 開催年

場所著者名 表題 発行機関 概要 論文番号など 備考

15 2004 Jong R. Yoon and Kyu-Chil Park(Pukyong Natl.Univ), DanielRouseff(Univ. ofWashington)

Examination of bit error characteristics due to a drifting source in passivephase conjugation underwater acoustic communications受動的位相共役波を用いた水中音響通信で音源移動によって生じるビットエラーの実験

ASA 位相共役波を用いた水中通信の復調誤りは、ドリフト率と搬送周波数、アレイ配列、及びソース受波器間距離によってその量が規程される。

The Journal of the Acoustical Society of America -- October2004 -- Volume 116, Issue 4, p. 2648

16 2004 M. McCord, J.Schindall, T. C. Yang, P.Gendron, and W.-B.Yang(Naval Res. Lab.,)

Underwater acoustic communication experimentation: The acousticcommunications and data storage (ACDS) system水中通信実験:音響通信及びデータストレージ(ACDS)システム

ASA 海軍研究所が開発したACDS(音響通信及びデータストレージシステム)の紹介。2-5kHzと15-25kHzの2周波帯、BPSK/QPSK、FH FSK、OFDM、CDMAの変調方式を持つ。

The Journal of the Acoustical Society of America -- May2004 -- Volume 115, Issue 5, p. 2507

17 2004 Yi Wang(Informationand Coding TheoryLab., Univ. of Kiel)

Design of a symmetric multicarrier modulation for underwater acousticcommunications水中音響通信のための対称的なマルチキャリア変調の設計

ASA 移動体の水中音響通信にはOFDMよりも時間及び周波数領域において対称的なガウシアンパルスをもったマルチキャリア変調が適していると主張する。

The Journal of the Acoustical Society of America -- May2004 -- Volume 115, Issue 5, p. 2506

18 2004 Jasdeep S. Dhanoa,Richard F. Ormondroyd,and Evan J.HughesDept. ofAerosp., Power andSensors, Cranfield

Reliable Doppler-spread estimation using an evolutionary algorithm forunderwater acoustic communications over channels with frequency-selective fading信頼しうるドップラー拡散の推定は、周波数選択の減衰を伴うチャネルを越えた水中音響通信の発展的なアルゴリズムに使用される

ASA The Journal of the Acoustical Society of America -- May2004 -- Volume 115, Issue 5, p. 2506

19 2004 Joel Trubuil and JoelLabat(ENST BretagneTechnopole BrestIrois),GerardLapierre(GESMA)

Information and data real time transmission acoustic underwater system:TRIDENT情報及び実時間伝送音響水中システム:TRIDENT

ASA Brest港で2002,2003年に実施された音響リンク。20,35kHzの2搬送波、10-20kbpsで浅海域において500m~4000m、数時間以上の接続に成功した。

The Journal of the Acoustical Society of America -- May2004 -- Volume 115, Issue 5, p. 2506

20 2004 T. C. Yang(Naval Res.Lab.)

Performance comparisons between passive-phase conjugation anddecision-feedback equalizer for underwater acoustic communications水中音響通信のためのパッシブ位相活用とデシジョンフェードバックイコライザの性能比較

ASA The Journal of the Acoustical Society of America -- May2004 -- Volume 115, Issue 5, pp. 2505-2506

21 2004 Paul Hursky, T. MartinSiderius, and Michael B.Porter The KauaiExGroup(SAIC)

Comparison of two underwater acoustic communications techniques formulti-user accessマルチユーザーのアクセスのための2 つの水中音響コミュニケーション技術の比較

ASA 単一レシーバで同時に多数のユーザ間で通信するための2つの異なった変調技術であるFHFSK(周波数hopped-FSK)とCDMAの比較。

The Journal of the Acoustical Society of America -- May2004 -- Volume 115, Issue 5, p. 2469

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水中通信関連論文リスト③(日本音響学会、米国音響学会、MTS、その他)

番号 開催年場所

著者名 表題 発行機関 概要 論文番号など 備考

22 2003 Wen-Bin Yang and T.C. Yang(Naval Res.Lab.)

High-frequency underwater acoustic communications using FH-FSKsignaling in a reverberant shallow water environment反響の有る浅海域環境で高周波水中音響通信が使用するFH-FSK信号

ASA 反響の有る浅海域環境での水中音響通信のために使用された20kHz(帯域4kHz)のFH-FSKの結果について記述する。

The Journal of the Acoustical Society of America -- October2003 -- Volume 114, Issue 4, p. 2407

23 2003 Karim G. Sabra andDavid R.Dowling(Department ofMechanical Engineering,University of Michigan)

Broadband performance of a moving time reversing array移動時間反転アレイのブロードバンド性能

ASA 理論値及びコンピュータシミュレーションからアレイの動きと浅海域での影響に関して検討している

The Journal of the Acoustical Society of America --September 2003 -- Volume 114, Issue 3, pp. 1395-1405

24 2002 Pierre-Philippe J.Beaujean andEmmanuel P.Bernault(Dept. ofOcean Eng., Florida

A new multichannel spatial diversity technique for long-range acousticcommunications in shallow water浅瀬の長距離音響通信のための新しい多重空間ダイバシティ技術

ASA FH-MFSKを用いた実験。Mills-clossアレイを用いる。4hops at 221cps、2hops at 442cps、0hops at 1172cps、16,31kHz、SL=192dB、1~5km、40ft。3km時、1172cpsのタイプはFER=0%。5kmでは221cpsのタイプはFER=0%。

The Journal of the Acoustical Society of America --November 2002 -- Volume 112, Issue 5, p. 2420

25 2001 Karim G. Sabra andDavid R.Dowling(Department ofMechanical Engineering,University of Michigan)

Shallow water performance of a moving time-reversing array移動時間反転アレイの浅海域性能

ASA 音源が停止し、TRAが移動しているときのドップラー効果による影響に対するシミュレーション結果

The Journal of the Acoustical Society of America --November 2001 -- Volume 110, Issue 5, p. 2708

26 2001 Byung-Chul Kim and I.-Tai Lu(Dept. of Elec.and Computer Eng.,Polytechnic Univ.)

Sea trial results of a robust and spectral-efficient OFDM underwatercommunication system強くスペクトラムに有効なOFDM水中通信システムの海上試験結果

ASA 直交周波数分割多重(OFDM)の直交性は、代表的な水中でのドップラー転移や拡散によって失われる。チャネル推定の技術を使用して海上試験を実施し、サブキャリア間を信号持続時間Tの逆数(1/T)と擦ることが出来た

The Journal of the Acoustical Society of America -- May 1,2001 -- Volume 109, Issue 5, p. 2477

27 2001 Michael S. Richman,Scott L. Whitney, andGeoffrey S.Edelson(AdvancedSystems, BAE

Performance analysis of an underwater acoustic communications timediversity receiver時間ダイバシティ受波器による水中音響通信の性能分析

ASA 空間ダイバシティベースのマルチチャネルDFE(SD-DFE;decision feedbackequalizer)と時間ダイバシティDFE(TD-DFE)との比較検討

The Journal of the Acoustical Society of America -- May 1,2001 -- Volume 109, Issue 5, p. 2476

28 2000 Karim G. Sabra andDavid R.Dowling(Department ofMechanical Engineering,University of Michigan)

Broadband performance of a time-reversing array in shallow water浅海域における時間反転アレイの広帯域性能

ASA 広帯域信号性能としてサウンドチャネルの特徴の効果を調査し、複数の音源・アレイ間距離で広帯域信号と狭帯域信号を比較する。

The Journal of the Acoustical Society of America --November 2000 -- Volume 108, Issue 5, p. 2606

29 2000 Azmi Al-KurdNavalRes. Lab.)

Coherent underwater digital communication during LWAD 99-1 experiment:Performance and analysisLWAD99-1実験を通じて収集されたコヒーレントな水中デジタル通信:性能と

ASA 位相変調信号を用いた水中音響通信データが沿岸戦先端開発(LWAD99-1)実験で得られた。沿岸海域での信号伝播の特徴を定め、コヒーレントなデジタル通信システムの設計に役立てられる。

The Journal of the Acoustical Society of America -- May2000 -- Volume 107, Issue 5, pp. 2859-2860

30 James C. Preisig andGrant B. Deane

Surface wave focusing and acoustic communications in the surf zone ASA The Journal of the Acoustical Society of America -- October2004 -- Volume 116, Issue 4, pp. 2067-2080

31 Karim G. Sabra andDavid R. Dowling

Broadband performance of a time reversing array with a moving source ASA 浅海域において移動音源から固定垂直TRAへ送信された、ドップラーの影響を受けた広帯域信号のTRAによる性能予測

The Journal of the Acoustical Society of America -- June2004 -- Volume 115, Issue 6, pp. 2807-2817

32 Kevin B. Smith, AntonioA. M. Abrantes, andAndres Larraza

Examination of time-reversal acoustics in shallow water and applications tononcoherent underwater communications

ASA 位相を活用した(phase-conjugated)アレイを利用したTRAにおいて、それぞれのアレイに異なったメッセージの焦点を結ばせることが可能になる

The Journal of the Acoustical Society of America -- June2003 -- Volume 113, Issue 6, pp. 3095-3110

33 M. Heinemann, A.Larraza, and K. B.Smith

Experimental studies of applications of time-reversal acoustics tononcoherent underwater communications

ASA TRAの考え方で、複雑な水中環境においてバイナリーコードを高速伝搬させるアルゴリズムを用いた水槽実験の結果の紹介。簡単な15シンボルのコードはアプローチの簡易性そして可能性の例を提供する。

The Journal of the Acoustical Society of America -- June2003 -- Volume 113, Issue 6, pp. 3111-3116

34 Thomas A. Wettergren,John P. Casey, andRoy L. Streit

A numerical optimization approach to acoustic hull array design ASA The Journal of the Acoustical Society of America --December 2002 -- Volume 112, Issue 6, pp. 2735-2741

35 Karim G. Sabra, SunnyR. Khosla, and David R.Dowling

Broadband time-reversing array retrofocusing in noisy environments ASA The Journal of the Acoustical Society of America --February 2002 -- Volume 111, Issue 2, pp. 823-830

36 Raymond Lim, Iris C.Paustian, and Joseph L.Lopes

Acoustic transmission across a roughened fluid‐fluid interface ASA The Journal of the Acoustical Society of America -- April2001 -- Volume 109, Issue 4, pp. 1367-1383

37 Sunny R. Khosla andDavid R. Dowling

Time-reversing array retrofocusing in noisy environments ASA The Journal of the Acoustical Society of America --February 2001 -- Volume 109, Issue 2, pp. 538-546

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水中通信関連論文リスト③(日本音響学会、米国音響学会、MTS、その他)

MTS関連番号 開催年

場所著者名 表題 発行機関 概要 論文番号など 備考

38 2004 Bruce M. Howe, JamesH. Miller

Acoustic Sensing for Ocean Research海洋観測のための音響センシング

MTS 海洋観測のための音響機器への要望。音響観測センサ及び音響リンクを含めた統合された音響システム

Volume 38, Number 2

その他諸外国など番号 開催年

場所著者名 表題 発行機関 概要 論文番号など 備考

39 2004 Hiroshi OCHI,Yoshitaka WATANABEand Takuya AHIMURA

Experiments on Acousitic Communication with Quadrature AmplitudeModulation in Multipath Environment

JapaneseJournal ofApplied Physics

Japanese Journal of Applied Physics Vol.43,N0.5B,2004,pp.3140-3145

40 2004 Takuya SHIMURA andHiroshi OCHI

Convergence Property of Time Reversal Waves under Noisy Environment JapaneseJournal ofApplied Physics

Japanese Journal of Applied Physics Vol.43,N0.5B,2004,pp.3180-3185

41 2004 Takuya SHIMURA A study on the focusing property of time reversal waves in shallow water Acoust. Sci. &Tech.

Acoust. Sci. & Tech. 25,5(2004),pp.364-372

42 2004 Oliver Hinton and JeffNeasham

UNDERWATER ACOUSTIC COMMUNICATIONS-HOW FAR HAVE WEPROGRESSED AND WHAT CHALLENGES REMAIN?

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1173-1178

43 2004 L..Freitag, M.Stojanovic,D.Kilfoyle, and J.Preisig

HIGH-RATE COHERENT ACOUSITC COMMUNICATION:A REVIEW OF ADECADE OF RESEARCH AND A PERSPECTIVE ON FUTURE

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1179-1184

44 2004 P.A.van Walree SPREAD-SPECTRUN COHERENT ACOUSITIC COMMUNICATIONBETWEEN A ZUBMARINE AND SERFACE SHIP

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1185-1190

45 2004 H.Ochi, Y.Watanabe andT.Shimura

RESULTS OF SEA TRIALS USING QUADRATURE AMPLITUDEMODULATION UNDER MULTI-PATH ENVIRONNMENT

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1191-1196

46 2004 F.Schulz, R.Weber, andJ.F.Bohme

MODEL-BASED INVERSE FILTERING FOR IMPROVING BLIND ADAPTIVEEQUALIZERS IN UNDERWATER COMMUNICATION

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1197-1202

47 2004 K.Kebkal, A.Kebkal,R.Bannasch, S.Yakovlev

PARAMETER ESTIMATION OF SWEEP-SPREAD CARRIER SIGNAL FORADVANCED ACOUSTIC COMMUNICATION VIA MULTIPATH SHALLOWWATER CHANNELS

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1203-1209

48 2004 E.Svensson, I.Karasaloand J.-P.Hermand

HYBRID RAYTRACE MODELLING OF AN UNDERWATER ACOUSTICCOMMUNICATION CHANNELS

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1211-1216

49 2004 Pierre-PhilippeJ.Beaujean and JoshuaProteau

A LONDG-TERM EXPERIMENT TO ACHIEVE HIGH-SPEED ACOUSTICCOMMUNICATION IN SHALLOW WATER USING COHERENTBEAMFORMING AND EQUALIZATION

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1217-1222

50 2004 Jean-MichelPasserieux

EXPERIMENTAL EVALUATION OF DS-CDMA MODULATIONS FOR USEIN A SHALLOW WATER ACOUSTIC COMMUNICATION NETWORK

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1223-1228

51 2004 A.E.Adams and G.Acar A MASTER-SLAVE PROTOCOL FOR UNDERWATER ACOUSTICCOMMUNICATION NETWORK

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1229-1234

52 2004 M.W.Nelisse NETWORKING CONSIDERAIONS FOR ACOUSTIC COMMUNICATIONWITHIN MULTI-NODE UNDERWATER SENSOR NETWORKS

ECUA Proceeding of the Seventh European Confarence onUnderwater Acoustic (ECUA2004),pp.1235-1242

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資料5

第1回委員会:話題提供関連資料

  <水中音響通信、日本電気(株)>

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水中音響通信

日本電気(株)

2

水中音響通信の概要 (1)歴史

1490年 : レオナルドダビンチ 水中音響の発見“もしあなたが船を止めて、細長い管の先端を水中に入れて管の他端を耳に当てたならば、はるか遠方の船舶の音を聴取できる”

1827年 : Daniel Colladon,Charles Strum 水中音速の測定

1840年代 : James Joule 磁歪効果の発見と測定

1880年 : Pierre Curie 圧電(ピエゾ)効果の発見

1890年代 : 水中音響の実用化 潜水ベル (Raytheon社)ベルの水中鳴音と霧笛との時間差により、灯台から自船までの距離を計測

1914年 : 第1次世界大戦勃発 軍事用ソーナーの実用化水中聴音機 (パッシブソーナー)水中反響測距儀(アクティブソーナー)

1940年~ : 第2次世界大戦 ソーナーと海洋音響技術の発展→ 水中音響通信の実用化

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水中音響通信の概要 (2)水中での音波伝播特性、雑音

1.水中の音波伝播

(1) 音波伝播速度約1,500m/sec電波の1/20万水温、塩分濃度、水圧により変化

(2) 伝播損失(TL)TL=20logR+αR+60 (dB)

R : 距離(km)α : 吸収損失(dB/km)周波数の2乗に比例して増加

(3) 雑音波浪、降雨、水中生物、航行 船舶などによる雑音

2.海中の音波伝播海面、海底での反射、散乱

利用可能な周波数帯域数kHz~数十kHz

波長 3~30cm

屈折

マルチパス伝播

海面

海底

反射

散乱

屈折

海中での音波伝播

音源

4

水中音響通信の概要 (3)動作原理と構成

変調回路*2

電力増幅回路

送波器

復調回路*2

前置増幅回路

受波器

信号*1 信号*1

水中音響信号

送信 受信

デジタル信号

音声信号

モールス信号

信号*1

各種(FSK,PSK)

AM SSB

キーイング

変復調*2

潜水艇(艦)、UUVとのデータ通信(今後)

潜水艇(艦)との通話

救難等の緊急通信

用 途

UUV:Unmanned Underwater Vehicle

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水中音響通信の技術動向

アナログ → デジタル伝送容量の拡大

無指向性 → 有指向性

ビームトラッキング技術

アレイ技術 パラメトリック送波等

【通信技術】

【送受信技術】

デジタル変調技術

海洋音響特性/環境伝播速度(低)、吸収損失(大)、マルチパス伝播、ドップラー変移、雑音(大)

水中ネットワークの構築

干渉の低減、秘匿性・ UUVの管制・ UUVからの画像/データ伝送

UUVの利用UUV : Unmanned Underwater Vehicle

・ 海洋資源探査・ 防衛(対潜戦、対機雷戦)

6

将来の水中音響通信 (1)用途 資源探査

東京大学生産研究所浦研ホームページより引用

自律海中ロボットTri-Dog1

AUV :AutonomousUnderwaterVehicle

水中音響通信

水中音響通信

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UDT2001Hawaii 3A1

将来の水中音響通信 (1)用途 防衛

UDT2002Europe 3C1

米海軍の将来構想

UAV : Unmanned Air VehicleUSV : Unmanned Surface VehicleUUV : Unmanned Underwater VehicleACOMM : Acostic CommunicationManta : 開発中のUUVの呼称

水中音響通信

UUVと水中音響通信

水中音響通信

8

将来の水中音響通信 (2)課題

【通信技術】

【評価設備】

・ デジタル変調方式・ ダイバーシティ方式

複雑な音響環境(特に、浅海域)における

・ 高速性・ 高信頼性

海洋評価設備 ・ 海域の移動評価・ 海洋音響環境パラメータの計測

【ニーズの再確認】海洋資源探査

防衛(対潜戦、対機雷戦)・ UUVの活用

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【新技術】Benthosと米海軍、400フィートの海中からのインターネット接続実験に成功

■URLhttp://www.benthos.com/

海中作業機器を開発販売しているBenthos社は米海軍との共同実験で、深さ400フィートの海中に潜行中の潜水艦の中と遠く離れた陸地の間で通信を確立し、インターネットにメールを送る実験に成功したことを発表した。潜水艦がこのような実用条件の下で浮上せずに通信に成功したのは初めてのこと。

この実験にはBenthos ATM 885 Telesonar Acoustic Modemが使用され、米海軍の潜水艦USS Dolphinが海中深さ400フィートから陸地の近くに設置されたブイにメ

ッセージを送り、そのブイが陸地にメッセージを転送してインターネットの接続が完了した。海中では電波が伝播しないため、搬送波には音圧が利用された。また、海中にいる潜水艦同士がAcoustic Modemを利用してお互いに通信することも可

能だった。潜水艦はこれまで通信を確立するために浮上してアンテナを海面に突き出す必

要があったが、そのために敵に位置を知られるおそれがあった。今回の実験の成功は海中における通信方法が確立したという意味で大きな意義があると思われる。(2000/6/12)[Reported by [email protected]]

参考

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海外メーカーのパンフレットより参考

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海外メーカーのパンフレットより

参考

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参考資料

(1) 「水中音響の原理」

R.J.ユーリック著 土屋明訳 共立出版株式会社(2) 東京大学生産研究所 浦研ホームページ

http://underwater.iis.u-tokyo.ac.jp/(3) UDT2000 Europe 3C1

“Manta Test Vehicle At-Sea Test Result and Technology Demonstration Plans” J.S.Lisiewicz et al. NUWC

(4) UDT2002 Europe PⅡ6“Underwater Communication, the entry into digital systems”Dr. Andreas Mues L-3 Communications ELAC Nautic GmbH

(5) UDT2002 Korea 8B3“Advanced Unmanned Vehicle Vison for the Future”Bernard J. Myers et al. NUWC

(6)科学技術政策研究所ホームページ(7)インターネットウオッチホームページ(8)Benthos ホームページ

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この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

非 売 品

禁無断転載

平成16年度

水中音響通信の高度化による海洋産業の発展と

新事業創出等効果に関する調査研究報告書

発 行 平成17年3月

発行者 社団法人 日本機械工業連合会

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東京都港区芝公園三丁目5番8号

電 話 03-3434-5384

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