150708 教育学特殊xiv(学級規模) 第12講

55
慶應義塾大学教育学特殊 XIV(12 ) 学級規模を研究する 7. 分析結果の考察 文部科学省 国立教育政策研究所 総括研究官 やま もり こう よう (教育心理学) [email protected] 2015 7 8 この内容は個人的見解であり 国立教育政策研究所の公式見解ではありません

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慶應義塾大学教育学特殊 XIV(第 12講)学級規模を研究する

7. 分析結果の考察

文部科学省国立教育政策研究所

文部科学省

国立教育政策研究所

総括研究官やま山もり森

こう光よう陽

(教育心理学)[email protected]

2015年 7月 8日

この内容は個人的見解であり国立教育政策研究所の公式見解ではありません

Page 2: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

はじめに

本日の出席とスライド

本日の出席

https:

//questant.jp/q/150708

本日のスライド

http://www.slideshare.net/

koyoyamamori/cs150708

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 2 / 28

Page 3: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

はじめに

今回の内容

1. 現在取り組んでいる内容

2. 各班の分析・集計結果

3. 分析結果から言えること

4. 最終課題について

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 3 / 28

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現在取り組んでいる内容

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現在取り組んでいる内容

研究の一般的手順問題 これまでの研究史に基づき,明らかになっていること

といないことを特定し,必要性の有無を判断し,問題を特定する。

目的 特定された問題から,研究の目的を定義する。

方法 研究目的を達成するために適合的な方法によってデータを収集するとともに,研究目的とデータの性質に見合った手法による分析を行う。

結果 研究の目的に沿いつつ,主観を排して結果を提示する。

考察 結果を研究目的に沿って解釈し,特定された問題に再投入して考察を行い,自身あるいは他者による次なる研究につなげる。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 5 / 28

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現在取り組んでいる内容

最終課題の内容

課題学級規模が児童生徒や教師に与える影響について,先行研究をレビューした上で問題を設定し,目的を明らかにした上で,適切な方法によってデータを分析し,その結果を考察しなさい。以下の5節によって構成し,各々の内容を満たすように執筆しなさい。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 6 / 28

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現在取り組んでいる内容

最終課題の内容 I

第 1節:問題▶ 第 1節には「問題」というタイトルをつけなさい。▶ 以下の内容を満たすように執筆しなさい。

1. 和文,欧文文献をそれぞれ 5本以上引用し,学級規模研究の動向をまとめなさい。

2. 上記 (1)の内容をもとに,どのようなことを明らかにする必要があるか,またどのような点に注意して調査や分析を行えばよいかを論じなさい。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 7 / 28

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現在取り組んでいる内容

最終課題の内容 II

第 2節:目的▶ 第 2節には「目的」というタイトルをつけなさい。▶ 以下の内容を満たすように執筆しなさい。

3. 第 1節の内容との関連をが分かるように,研究の目的を明示しなさい。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 8 / 28

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現在取り組んでいる内容

最終課題の内容 III

第 3節:方法▶ 第 3節には「方法」というタイトルをつけなさい。▶ 以下の内容を満たすように執筆しなさい。

4. どのようなデータを分析するのか,どのようにして取られたデータなのか,対象校や対象者の属性や件数,人数を明らかに示しなさい。

5. どのような分析や集計を行うのかを,第 2節の内容との整合性を持たせて明示しなさい。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 9 / 28

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現在取り組んでいる内容

最終課題の内容 IV

第 4節:結果▶ 第 4節には「結果」というタイトルをつけなさい。▶ 以下の内容を満たすように執筆しなさい。

6. 第 3節に示した内容との整合性を持たせ,図表を用いて結果を示しなさい。

7. 結果を単に図表だけで示すのではなく,各々の図表がどのような分析・集計の結果なのかを説明しなさい。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 10 / 28

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現在取り組んでいる内容

最終課題の内容 V

第 5節:考察▶ 第 5節には「考察」というタイトルをつけなさい。▶ 以下の内容を満たすように執筆しなさい。

8. 第 4節に示した結果を,第 2節の内容と整合的に結果を解釈しなさい。

9. 結果の解釈の結果を,文献を引用しながら考察しなさい。10. 考察に当っては 4本以上文献を引用するとともに,この講義で講読したもの以外の文献を 2本含めなさい。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 11 / 28

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現在取り組んでいる内容

最終課題の内容 VI

引用文献▶ レポートの最後に,節番号は振らずに「引用文献」というタイトルをつけなさい。

▶ 以下の内容を満たすように執筆しなさい。

11. ライブラリーオリエンテーションで指導された形式の引用文献一覧を作成しなさい。

その他▶ レポートの本文においては,以下の内容を満たしなさい。

12. 本文中における引用は決められた形式で適切に行いなさい。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 12 / 28

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現在取り組んでいる内容

最終課題の評価と注意事項評価

▶ 上記の上記の満たすべき項目のうち,7項目満たしてC,9項目満たして B,11項目満たして Aの評語を与える。

提出期限や注意事項▶ 提出期限は平成 27年 7月 13日 (月)厳守▶ 学習支援システムの最終課題に関する掲示に添付のテンプレートを用いるか,その内容に即した様式で執筆すること。

▶ PDFファイルで提出すること。他の形式だとファイルの内容が破損し採点できないことがある。

▶ 今まで取り組んだ課題の成果は大いに利用すること。基本的にはこれまで取り組んだ課題を一本の研究論文形式にまとめると,評価が Aとなるようにしてある。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 13 / 28

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各班の分析・集計結果

Page 15: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

各班の分析・集計結果

TIMSS2011データ:1班

分析・集計の結果▶ 学年学級数の多少×学級規模の大小で理科テストの標準偏差の学校平均と学級規模との相関を検討

▶ 各々のセル内で相関を検討した結果,学年学級数が多い場合において,学級規模が大きいほど標準偏差 (ばらつき)が小さい。

アドバイス▶ セル内での相関を求めるのは適切とは言えない▶ 他の班のように学校平均点をセルごとにまとめたり,あるいは学校標準偏差の平均を求めてみる。

▶ 参考までに学級規模小・学級数少:62.33,小・多:57.87,大,少:62.33,大・多:57.64

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 15 / 28

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TIMMS 2011データ:1班 •分析対象:調査対象学級の児童数、

理科の学校標準偏差

•対象数:127校

•分析・集計の方法:相関分析

•分析・集計の結果:

学年学級数2~3 学年学級数4~5

学級規模33人以上 0.06 -0.48(相関あり)

学級規模34人以下 -0.04 -0.38(相関あり)

Page 17: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

考察

・学級規模と理科の学力の 間には全体で見たときには相関はあまり見られなかった

・学級規模が33人以上で学年学級数が4~5のとき、および学級規模が34人以下で学年学級数が4~5のときは、相関が見られる。

Page 18: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

各班の分析・集計結果

TIMSS2011データ:2班分析・集計の結果

▶ 学年学級数の多少×学級規模の大小で教師の共同作業の頻度の関係を検討

▶ 学級規模小・学年学級数少>大・小>小・多>大・多

アドバイス小・少 小・多 大・少 大・多

教え方話し合い 2.66 2.68 2.66 2.64計画準備協同 2.47 2.50 2.40 2.18指導経験共有 2.59 2.73 2.69 2.18授業参観 1.78 1.55 1.57 1.91

新アイディア 1.93 1.82 1.91 1.91▶ 学力に寄与しそうな取組に限定してみるとよい。慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 16 / 28

Page 19: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

教育学特殊XIV

データ分析課題の結果(2班)

Page 20: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(1)分析対象:TIMSS2011データ

・t.kyodo.1-t.kyodo.5

・cl.n.pupil

・gr.n.cl (学級数が1のサンプルは排除する)

以上3つを使って分析することで学級規模と教師の共同作業の頻度の関係性を

調べる。

(2)対象数

学年学級数が2~5クラスである115校

Page 21: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(3)分析・集計の方法

TIMMS(2011)で得られたデータを用いてまず、はじめにグループ分けを行った。

①33人以下の学級規模かつ、学級数が2~3

②33人以下の学級規模かつ、学級数が4~5

③34人以上の学級規模かつ、学級数が2~3

④34人以上の学級規模かつ、学級数が4~5

以上4つのグループに分けた。なお、学級数6つの対象は外れ値として排除した。

次に、他の教師との共同作業の頻度についての質問5つ(t.kyodo.1-t.kyodo.5)についてそれ

ぞれ四件法で得た回答を和得点とし換算した。それぞれのグループ①~④で、ここで算出し

た和得点の平均を出し、比較した。

Page 22: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(4)分析・集計の結果

TIMSS2011の結果データのうち学年学級数が1,6クラスの学校を排除し、学級規模を33人以下、34人以上、学年学級数を2〜3クラス,4〜5クラスとして対象校を4つのカテゴリに分けて、教師の共同作業の和得点の平均点を算出した結果、以下の表が得られた。

表から教師の共同作業量が最も多いのは学級規模が小さく、学年学級数も少ない学校であり、次いで学級規模が大きく、学年学級数が少ない学校、次に学級規模が小さく、学年学級数が多いクラス、最も少なかったのは学級規模が大きく、学年学級数も多い学校であったことが分かる。また、学級規模の小さい学校と大きい学校それぞれの共同作業量の和得点平均は、学級規模が小さい方が大きい方よりも約0.16点高く、

学年学級数が少ない学校と多い学校それぞれの教師の共同作業量の和得点平均は、学年学級数が少ない方が多い方よりも約0.62点高かった。

Page 23: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(5)考察

• クラス数が多いとき、学級規模が大きいところよりも学級規模が小さい方が頻繁に共同作業を行っている。また、クラス数が少ないところにおいても、学級規模が小さい方がやや共同作業に与える影響が大きい。以上のことから、学級規模が小さい方が教師の共同作業に与える影響がおおきいと言える。理由としては、学級規模が小さいという点から個人間でのコミュニケーションをとりやすかったり、ひとりひとりに目が届きやすかったりするといったことが考えられうる。

• 学年学級数が多く、かつ各学級の生徒が多い環境では、全体として面倒を見ないといけない生徒数が多くなってしまうため、教師はたくさんの生徒への対応に追われ、あまり共同作業をする余裕がないと考えられる。

• 学級規模が大きい時と小さいときの両方において学級数が少ない場合の方が学級数が多い場合よりも教師の共同作業が多かったことから、学級数が少なく、教員の数が少ないほど教員同士の関係が密であると考えられる。

• 学年学級数に関わらず、学級規模が小さい方が教師の共同作業は多いため、面倒を見ないといけない生徒が少ないほど教師は共同作業にあてる時間が取りやすいと考えられる。

Page 24: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

各班の分析・集計結果

TIMSS2011データ:3班

分析・集計の結果▶ 所得水準中程度の学校に限定し,単学級サンプル (gr.n.cl¿1)を除外し,学級規模を 33人以下,34人以上,学年学級数を 2~3学級,4~5学級として対象校を 4つのカテゴリに分けて理科テストの学校平均を比較

アドバイス▶ 学級規模小・学級数少が最も低く,大・多が最も高い。▶ 学級編制基準を上下させることで変動が起こると考えられる学級規模大・学級数少と小・多を比較すると後者の方が高い傾向は見られる。

▶ 所得の扱い:水準 1と 3の nの少なさが問題。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 17 / 28

Page 25: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

教育学特殊X

IV

(1)

分析対象

timss

の調査対象学級の児童を対象に①調査対象学級の児童数、②学校がある地域

の平均の所得水準、③理科の学校平均、④学年学級数に焦点を置いて分析した。②に

関しては、「1

:

高い、2

:中くらい、3

:

低い」の三件法での回答を求め、他は具体的な数

値での回答を求めた。

(2)

対象数

児童4

054

(3)

分析・集計の方法

分析は2回行い、それぞれの条件下の、理科の学校平均の平均を求めた。またいず

れにおいても、分析・集計にはR

を用いた。

分析①

調査対象学級の児童数の中央値をとったところ3

2

となったため、32人以上を大規

模学級、3

2

人未満を小規模学級と定義した。そして学校がある地域の平均の所得水

準を「1

:

高い、2

:

中くらい、3

:

低い」で分類し、それぞれにおける大規模学級・小規

模学級の理科の学校平均の平均を調査した。

分析②

学年学級数を、単学級と6

学級は外れ値として除外し、学級数2

~3

と4

~5

に分

類した。また学校がある地域の平均の所得水準1

~3

において、1

,3

は2

と比べてサ

ンプル数が少ないため、レベル2

の中のみでの分析とした。そして分析①の学級規模

の定義を引き続き用い、学年学級数の2

~3,4

~5

、それぞれにおいて大規模学級・小規

模学級の理科の学校平均の平均を調査した。

Page 26: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(4)

分析・集計の結果

分析を行ったところ、次のような結果が得られた。

分析①

分析②

576.927

562.6915555.871

596.6838

555.0269

537.0789

500

510

520

530

540

550

560

570

580

590

600

610

学級規模&所得水準ごとの

理科の学校平均の平均

560.1727

564.3953

556.0973

563.6346

550

552

554

556

558

560

562

564

566

学級規模&学年学級数ごとの

理科の学校平均の平均

Page 27: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

分析①より、大規模学級においても小規模学級においても所得水準が高くなるほど理

科の学校平均の平均が高くなる傾向にあった。また所得水準ごとに見ると、所得水準1

では小規模学級の方が大規模学級よりも点数が高く、所得水準2・3では大規模学級の

方が高い傾向にある。6

つの分類の中で最も点数が高かったのが小規模&水準1で、最

も点数が低かったのが小規模&水準3であった。

分析②より、大規模学級においても小規模学級においても、学年学級数が多い方が点

数が高くなる傾向にあった。また学年学級数に焦点を当てると、学級数2

〜3,4

〜5

のい

ずれにおいても大規模学級の方が高い傾向にあった。ただし学級数2

〜3

は学級規模の

大小では約4

点の差があるのに対し、学級数4

〜5

では約1

点の差で、ほとんど差のな

い結果であった。

(5)結果に対する考察

分析①より、所得水準によって理科の学校平均が高くなる、すなわち学力の差が生ま

れることが分かった。これは家庭内で教育にかけられるお金の差であると考えられる。

裕福な家庭であれば塾へ通ったり、主要科目の授業数が多い私立の学校へ通ったりと、

勉強をする時間が多くなると推測される。また学級規模を小さくすれば学力が高くなる

とは限らないことが分かった。高所得家庭の児童は小規模学級の方が学力が高い傾向に

あり、平均的・低い所得家庭の児童は大規模学級の方が学力が高い傾向にあった。高所

得家庭の児童は小規模学級にて細かな指導を受ける方が学力が高くなり、平均的・低い

所得家庭の児童は大規模学級にて多くの人に関わりながら学ぶ方が学力が高まると考

えられる。

分析②より、大規模学級においても小規模学級においても、学年学級数の多い方が学

力が高いということが分かった。学年学級数が多いということは、その地域に子どもが

多いということであり、より都会であると考えられる。したがって都会の学校の方が学

力が高くなりやすいといえる。これは都会では塾や私立学校などに通いやすいというメ

リットがあり、勉強する機会が多くなるからだと推測される。また学年学級数ごとに見

ると、いずれの場合も大規模学級の方が学力が高かった。しかし学年学級数が少ない条

件では点数の差が見られたものの、多い条件ではほとんど差が見られなかった。したが

って学年学級数が多い学校では大規模・小規模による学力の差はほとんど生まれず、少

ない学校では大規模学級の方が学力が高くなるといえる。

Page 28: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

各班の分析・集計結果

TIMSS2011データ:4班分析・集計の結果

▶ 学年学級数の多少×学級規模の大小で新しいアイディアを取り入れているか否かに相関関係があるのかを検討

▶ 学級規模小>大

アドバイス小・少 小・多 大・少 大・多

教え方話し合い 2.66 2.68 2.66 2.64計画準備協同 2.47 2.50 2.40 2.18指導経験共有 2.59 2.73 2.69 2.18授業参観 1.78 1.55 1.57 1.91

新アイディア 1.93 1.82 1.91 1.91▶ 学力に寄与しそうな他の変数についても検討してみるとよい。慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 18 / 28

Page 29: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

教育学特殊 分析4班

Page 30: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(1)分析対象

•  学校児童数と新しいアイディアを取り入れているか否かに相関関係があるのか。  

Page 31: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(2)対象数

•  学級数が2クラス以上の教師115人  

Page 32: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(3)分析・集計の方法

•  単学級と6学級のサンプルを除外し、学級規模を33人以下、34人以上、学年学級数を2〜3学級、4〜5学級として対象校を4つのカテゴリに分けてクロス集計する。  

Page 33: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(4)分析・集計の結果

〈グラフ1〉各カテゴリーの割合

Page 34: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

•  1.    どの4つのカテゴリーとも、それぞれの円グラフにおいて、「月に2~3回」がもっとも多く半数以上を占め、二番目に「全く/ほぼない」が、三番目に「週に1~3回」が多かった。  

•  2.  「毎日/ほぼ毎日」という回答が存在したのは、1学年2~3クラスで、学級規模が33人以下のカテゴリーのみであった。その他3つのカテゴリーには回答が見られなかった。  

•  3.  「全く/ほぼない」の割合が最も高かったのは、1学年4~5クラスで、学級規模が34人以上のカテゴリーであった。  

Page 35: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(5)結果に対する簡単な考察

•  結果1より、学年のクラス数や学級規模の大小に関わらず、大半のクラスが新しいアイディアを取り入れるということを行っていると考えられる。その中でも、結果2と3より、学年のクラス数が少なく、学級規模が小さい方が、より新しいアイディアを取り入れる傾向があり、反対に学年のクラス数が多く、学級規模が大きい方が、より取り入れないという傾向があると考えられる。よって、学校児童数が少ない方が、より新しいアイディアを取り入れ、学校児童数が多い方が、より取り入れないと考えられる。  

Page 36: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

各班の分析・集計結果

TIMSS2011データ:5班

分析・集計の結果学級規模と教師の協同 小規模学級>大規模学級

学級規模・学年学級数と学力 学級規模小・学年学級数多>大・少教師の協同と学力 協同多>協同少

アドバイス▶ 学級規模が児童に及ぼす影響に迫っている。▶ 2班に対するアドバイスで指摘したように,学力に寄与しそうな取組に限定してみるとよい。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 19 / 28

Page 37: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

教育学特殊Ⅹ

5班分析結果

(

1)

分析対象

TIM

SS

20

11

(

小学校4年生、中学校2年生が対象)

のデータより学年学級数、理科の学校

平均、教師の授業に対する工夫(t.k

yod

o 1

~5

)

、調査対象学級の児童数

(

2)

対象数

12

7

校の1

27

学級

(

3)

分析方法

1、「学級数」及び「学級規模」が「先生の工夫」に与える影響

①学年学級数が2~3クラスの学校と、4~5クラスの学校に分類する

②学級規模が33

人以下の学校と、34

人以上の学校に分類する

③「他の教師と特定のトピックについての教え方について話し合う」「教材の計画

や準備に一緒に取り組む」「自分の指導経験で得たことを共有する」「よりよい指

導を行うために他の先生の授業を見学する」「新しいアイディアに一緒に取り組

む」の5つの項目について、「まったく、または、ほとんどない」を1点、「月に

2~3回」を2点、「週に1~3回」を3点、「毎日またはほとんど毎日」を4点

とし、学校ごとの和得点を求める

④①及び②の分類ごとに、和得点の平均を求める

2、「先生の工夫」が「学力(

理科の学校平均)

」に与える影響

1と同様に①及び②の分類ごとに学力(

理科の学校平均)

を求める

3、「先生の工夫」が「理科の学校平均」に与える影響

先生の工夫についての和得点を11

点以下、12

点以上に分類し、それぞれの理科

の学校平均を求める。

Page 38: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

(

4)

分析・集計の結果

分析を行ったところ次のような結果が得られた。

1、学級規模の小さい方が、先生の工夫は多い。

2、学級規模を小さくし、学年学級数を増やすことで、理科の学校平均は高くなる。

3、先生の工夫が多い方が、理科の学校平均は高くなる。

(

5)

考察

学級規模が小さいほうが教師の授業に対する工夫は多く、教師の工夫が多いほうが理

科の学校平均は高くなる。また、学級規模を小規模化し、学年学級数を増やすことで理

科の学校平均は高くなる。

今回の研究では学力について、T

IMS

S

の結果には学級平均がなかったので学校平均を

用いたが、学級平均を用いればさらに正確な結果が得られることが考えられる。

Page 39: 150708 教育学特殊XIV(学級規模) 第12講

各班の分析・集計結果

形成的評価データ:6班分析・集計の結果

▶ 表現物や成果物を仕上げるような機会におけるフィードバック▶ 小規模>中規模>大規模▶ 目標の提示>達成状況の提示

▶ 机間指導におけるフィードバック▶ 課題レベル,過程レベルのフィードバックともに「いつも・ほとんど」に着目すれば小規模学級ほど実施しやすい傾向が見られる。

アドバイス▶ 達成状況の提示や過程レベルのフィードバックともに小規模学級ほど実施しやく,大規模学級ほどしにくい傾向が見られるのはなぜか。

▶ フィードバックについての文献が少ないが慶應通信の「教育心理学」テキストの教育評価の章に若干の記述があるので参考にするとよい。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 20 / 28

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【6班 分析結果】      (1)分析対象  形成的評価等の実施状況データにおける教師の児童に対する個別具体的な指導の状況  初任1年目の教職員に対するある県における悉皆調査  低学年にのみ着目し、フィードバックレベルによっての実施状況を学級規模の比較を通じて  分析(Q1-­‐1、 Q1-­‐2、 Q3-­‐2  、Q3-­‐3を検討)    (2)対象数  73人    (3)分析・集計の方法  ①SPSSによるクロス集計・度数分布    「いつも、またはほとんど実施」と「半分くらい実施」の回答率が各々どれほどなのか    わかるように分析・記載  ②低学年(1,  2,  3年)に絞って分析  ③学級規模(小規模学級・中規模学級・大規模学級)別の分析    ※1.  調査対象数の関係により、「低学年」に絞って分析した       2.学級規模(低学年,  高学年):小規模(24人以下,  20人以下)・中規模(25-­‐29人,  21-­‐29人)・      大規模(30人以上,  30人以上)とした    

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(4)分析・集計の結果  

(5)結果に対する簡単な考察 ・全体として学級規模が小さいほどフィードバックの実施率は高く、学級規模が大きいほど低いという結果は、今回のフィードバックレベル別分析においても概ね表れた。即ち、フィードバックがより詳細になってゆくほど、大規模学級の実施率は下がる。  ・また今回実施者の頻度に着目してみると、小規模学級でもフィードバックが詳細化すると「いつも・ほとんど」から「半分」へと変化している?    ・ただし、机間指導場面に関する3グラフを比較してみると一概に「学級規模が小さいほど実施率が高い」とは言い難い。大きな傾向としては当てはまるが、特に「児童への説明」と「児童に説明させる」の2グラフを比べてみ

ると、この2つのどちらがより詳細なフィードバックと捉えるかにもよるが、後者の方が実施率が高い場合もある。また「いつも・ほとんど」と「半分」の実施頻度がほぼ五分五分であることも興味深い。  ・「説明する」行為は実際の場面では常にセットの相互的なものなのかもし

れない。  ・またこの2グラフにおいては中規模学級の方が大規模学級よりも実施率が低い。  

20.8   10.7   9.1  

45.8  42.9  

27.3  

0.0  

20.0  

40.0  

60.0  

80.0  

小規模 中規模 大規模

いつも・ほとんど 半分

8.3   7.1   9.1  

50.0  39.3  

13.6  

0.0  

20.0  

40.0  

60.0  

80.0  

小規模 中規模 大規模

いつも・ほとんど 半分

50.0   39.3   36.4  

41.7   42.9   59.1  

0.0  

50.0  

100.0  

150.0  

小規模 中規模 大規模

いつも・ほとんど 半分

45.8   39.3   40.9  

45.8   46.4   40.9  

0.0  20.0  40.0  60.0  80.0  

100.0  

小規模 中規模 大規模

いつも・ほとんど 半分

児童へ正誤の指摘や採点 児童へ具体的な目標の提示

児童へ目標に対する  具体的な達成状況の提示

児童に考え方のプロセスを説明させる

児童へ課題解決の考え方や正誤の理由を説明

83.3  50.0   59.1  

16.7  46.4   36.4  

0.0  

50.0  

100.0  

150.0  

小規模 中規模 大規模

いつも・ほとんど 半分

・課題に取り組む機会における教師との対話(フィードバックレベル別比較)                 ↓机間指導場面  

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各班の分析・集計結果

形成的評価データ:7班方法

▶ 学級規模と教師の協同との関係を検討

▶ 学級規模との関係は見られないが,学年学級数が多く同学年の先生が多ければ教師は協同しやすい。

アドバイス▶ 平均を求めているが反転処理等はどうしたか。

▶ 他班の分析結果を組みあわせて最終的なレポートに。

●● ●

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●● ●

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● ●

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学級規模

実施状

20 25 30 35

全く~半分くらい

いつも・ほとんど

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7班分析結果

• (1)分析対象 某県に勤める小学校教諭

• (2)対象数 公立小学校教諭97名

• (3)分析・集計の方法

20人未満→ 超小規模学級

20人以上26人未満→ 小規模学級

26人以上31人未満→ 中規模学級

(4)分析結果①

⇒ 学級規模と教師の協同

には相関がなかった

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q6の回答平均学年学級数1 2 ≦3

学級規模 26人未満 3.86 3.5626人以上 2.86 2.81

q7の回答平均学年学級数1 2 ≦3

学級規模 26人未満 3.33 3.24 3.0826人以上 3.15 3.04

q8の回答平均学年学級数1 2 ≦3

学級規模 26人未満 1.67 1.71 1.9626人以上 1.77 2.23

(4)分析結果②学年学級数を用いて層化

⇒ 学年学級数が多くて学級規模が小さいほど、

先生同士の協同が増える傾向にある

(5)結果に対する簡単な考察

結果①から、教師が協同をする場合は他の学年の先生よりも同じ学年の先生と行うことが多いことがわかっている。学年学級数が多く同学年の先生が多ければ教師は協同しやすいのではないか。

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各班の分析・集計結果

形成的評価データ:8班

分析・集計の結果▶ 机間指導,宿題,答案返却におけるフィードバック▶ 大規模学級ほど実施しにくい

アドバイス▶ 「被験者」→「対象者」▶ 「フォロー」→学術的に用いられている用語に▶ グラフの作り方

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<結果>

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

A B C D

3.1 3.2 3.3

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

A B C D

4.1 4.2 4.3

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

A B C D

5.1 5.2 5.3

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<結果>

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

A B C D

3.1 3.2 3.3

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

A B C D

4.1 4.2 4.3

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

A B C D

5.1 5.2 5.3

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<結果>

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

A B C D

3.1 3.2 3.3

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

A B C D

4.1 4.2 4.3

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

A B C D

5.1 5.2 5.3

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<考察>

分析を始めるにあたって、我々は「学級規模が小さい方が、学級規模

の大きい場合と比べて担任のチェック・フォローの割合は高い」とい

う仮説を立てたが、Q4 について分析を行ったところ、学級規模が大き

くなるにつれ担任のフォローの度合いが小さくなるという傾向がみら

れ、仮説が支持された。

この結果に加えて、前述の関係性の有意性を高めるために Q3、Q5 に

ついても分析を行ったところ、同様の傾向がみられ、仮説の有意性が

強調された。

以上の結果から、学級規模が小さい方が、学級規模の大きい場合と比

べて担任のチェック・フォローの割合は高いということが有意に示さ

れた。

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分析結果から言えること

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分析結果から言えること

学級規模が教師と児童生徒に与える影響学級規模・学級数→教師

▶ 小規模学級→フィードバックのしやすさ。▶ 小規模学級・多学年学級数→計画準備の協同や教え方の話し合いなどの頻度高 (ただし,形成的評価データからは言えないが)。

学級規模。学級数→児童▶ 小規模学級ほど学力が高いとは言えず,むしろ逆。地域規模などが反映されている可能性。

▶ 学級編制基準を上下させることで変動が起こると考えられる学級規模大・学級数少と小・多を比較すると後者の方が高い傾向→学級編制基準を引下げることの意義。

▶ 学級編制基準を動かすと何が起こるのかを記述する必要

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 24 / 28

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最終課題について

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最終課題について

最終課題の取り組み方▶ 自分のグループの結果ももちろんだが,他のグループの分析結果も取り入れた考察を行うと,より考察の内容が深まる。

▶ 学級編制基準を動かすと何が起こるのかを,教育心理学的に考察してみる。一般的な教育心理学のテキストの目次や索引を眺めながら,どのような説明がつきそうかを考えてみること。

▶ 考察では理論的な整合性も一定程度必要だが,先行研究では議論されてこなかったような側面に着目したりすることも期待。

▶ 理論的な整合性と独自性を明らかにするためにも引用を適切に行うこと (本文での引用形式と引用文献リスト)。

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 12 講 2015 年 7 月 8 日 26 / 28

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最終課題について

参考となる資料など

▶ 「問題」のセクションについては自身が,あるいは他の班が作った文献レビューを参考にすること。成果物は授業支援システムの「教材配布」にある。

▶ これまで提示したスライドも授業支援システムの「教材配布」に圧縮ファイルでおいてあるので参考にすること。

▶ slideshareにもおいてある。 http:

//www.slideshare.net/koyoyamamori/presentations

▶ とにもかくにも,〆切を厳守すること。

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出席の登録

本日の出席とスライド

本日の出席

https:

//questant.jp/q/150708

本日のスライド

http://www.slideshare.net/

koyoyamamori/cs150708

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