12.降雨及び降雪に伴う空中電場の擾乱 - huscap12....

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Instructions for use Title 12.降雨及び降雪に伴う空中電場の擾乱 Author(s) 織笠, 桂太郎 Citation 北海道大学地球物理学研究報告, 9, 123-160 Issue Date 1962-03-06 DOI 10.14943/gbhu.9.123 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/13843 Type bulletin (article) File Information 9_p123-160.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Instructions for use

Title 12.降雨及び降雪に伴う空中電場の擾乱

Author(s) 織笠, 桂太郎

Citation 北海道大学地球物理学研究報告, 9, 123-160

Issue Date 1962-03-06

DOI 10.14943/gbhu.9.123

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/13843

Type bulletin (article)

File Information 9_p123-160.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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12. 降雨及び降雪に伴う空中電場の擾乱

織笠桂太郎

(北海道大学理学部地球物理学教室)

一昭和 36年 8月受理一

序論

降水物体及び雲の帯電機構lζ関する理論を大別するとJ欠の 2つのグループに別けられる。

その 1つは既存する大気中のイオンに依存する Wilson')のイオン捕捉説, Vonnegut")の対流説

などが主なもので,その 2として,気象擾乱に助けられて降水物体が自ら帯電する Reynolds3)

の氷粒摩擦説, Simpson')の水滴分裂説, W orkman and Reynolds5)の凍結説, Dinger and Gum6

)

の融解説などが主なものである。如何なる場合lζ於ても之等の過程が多少なりとも影響し合っ

ていることは疑いないが,どの様な気象条件に於て何れの過程が最も効果的かをきめる要素を

つかむ事が本研究の第 1の目的である。 次lと雷雲の中の電荷分布l乙関する研究は SimpsonぺKuetter町などが代表的なものであるが,之lζ対する理論的な説明は,今のところ実験室の結果

をいきなり当はめる域を脱していない様に思われるので,以上の様な実験室の結果と実際との

橋渡しを行なう中間の仕事をする事が本研究の第 2の目的である。その第 1段階として空中電

位傾度(地上附近)と降水の荷電の同時測定によって, 電位傾度と降水荷電の符号の逆相闘を

確認し,しかも大気中のイオンに依存する帯電機構によってこの逆相関を説明するにはあまり

にも矛盾する点が多すぎるので,此の逆相関の問題をもう少し深く掘下げて考えてみる必要が

1) Wilson, C. T. R., 1929; Some thunder cloud problem. F. Franklin lnst., Vol. 208, pp. 1-12.

2) Vonnegut, B. and C. B. Moore, 1958; Preliminary attempts to influence convective electrifica・

tion in cumulus clouds by the introduction of space charge into the lower atmospher巴.

Rec巴ntadvances in atmospheric electricity, pp. 317-331.

3) Reynolds, S. E., M. Brook and Mary Foulks Gourley, 1957; Thund巴rstormch司rg巴 separation.

Jour. Met., Vol. 14, No. 5, pp. 426-436.

4) Simpson, G. C. 1909; On the electricity of rain and its origin in thunderstorm. Phil. Trans., A. 209, pp. 397-413.

5) Workman, E. J. and S. E. Reynolds 1950; Electric丑1phenomena occurring during the freezing

。fdilute agueous solutions and their possible relationship to thunder storm electricity. Phys.

Rev., 78, pp. 254-259.

6) Dinger, J. E. and R. Gunn, 1946; Electrical e任ectsassociated with a change of state of water.

Terr. Magn. Atmos. Elect., 51, pp. 477-494.

7) Simpson, G. C. and F. J. Scrase, 1937; The distribution of electricity in thunderclouds. Proc.

Roy. Soc. Lond., Vol. CLXI (161), pp. 309-352.

8) Kuettner, J. 1950; The electrical and llleteorological conditions inside thunder clouds. J. Met.,

7, pp. 322-332.

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124 織笠桂太郎

生じた。 第2段階に於いて空中電位傾度,降水の電荷,降水強度,降水物体の形態(雨滴なら

ば大,小,雪片ならば結晶形,大きさなど)の同時測定を行ない,特l乙定常的降雨時に於いて,

電位傾度と降雨強度との聞に鏡像関係がある事が発見され,雲の帯電機構として降水の落下に

よる荷電輸送が大きな役割を来している事を確認し,此の結果電位傾度と降水の荷電の符号の

逆相関が生ずるものである事がほぼ明らかになった。又冬期lと於ける降雪の観測及びテイネ UJ

頂の飛雪現象の観測から冬期積乱雲の電荷分離機構についての一つのモデルを誘導し,之を支

持する現象をとらえる事も出来た。

第 3段階l乙於いては,第 2段階で行なった 4要素の同時測定を積乱雲の通過線上の1.2km

離れた 2地点で行ない,乙の 2点聞を移動する聞に於ける諸要素の変化の模様を調査しラ第 2

段階で述べた降水の荷電愉送の理論を実証する現象を直接とらえる事に成功した。以下lζ順を

追って之を述べる事にする。

1. 測定及び測定装置

1956年から 1959年までの 1点観測では, 北海道大学理学部の地上約 15mの屋上にすべ

ての測器を setして行なった。電位傾度はぺンドノレフ自記電位計,雨や3の電荷は直流増幅に

よる真空管電位含1・町を使用し第 1図の左側

lと示した様な方法をとった。雨や雪の個数

や大きさは,water blueを附渚させたロシ

を図の如く真空管電位計の受JllLにのせ,落

下して来た雨滴や雪片の電荷を測定したの

ちに,その痕跡から丸山と同じ方法叫に依

って求めた。雪の結晶形は厚紙l乙黒のピロ

ードを張りつけ,之lと雪を受けて観察した o

降雨強度は第 1図の右側lζ示した様lζ直径

20 cmの受口から入る雨水を細いガラス管

にHi'i留させ,水位の上昇を 1分毎lと読んで

記録した。之は電位計が 1分毎l乙記録を打

つのでそれに同調した。又降雪強度は雨量

計の漏斗の部分をヒ戸ターで熱し一旦雪を

融解してから雨と同様Kして測定した。漏

斗の温度はサ戸ミスターに依って観測室で

i崖正氏雨量

riジ

4量皿

長空管電佐官f

第 1図

Fig. 1.

9) Magono, C. and K. Orikasa, 1960: On the surface electric field during rainfall. Jour. Met.

Soc. Japan, Ser. 1I, Vol. 38, No. 4, pp. 182-194.

10) 丸山晴久・浜美一, 1954: 雨滴や雪片の連続観測“天気"Vol. 1, No. 2, pp. 50~52.

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降雨及び降零tζ伴う空中電場の擾舌L 125

制御することが出来た。

11. 結果

11.1. 晴天の電位傾度

気象電気学的な晴天と云うのは気象学的lζ晴天であるばかりでなく,静電気的にも安定で

標準の状態でなければならない。この条件は風塵,媒煙,飛雪などが発生しておらなければほ

1957.4. 21

雪量 o 0 堂筋

天気 o 0 風向 職 It... Ilt.. Il..、

o 200f

AV

。O ∞

十。巴ヰー斗ニミ二1二三云正三平二三竺二戸煽刊5仁一ーし一一一一一一_1一一一一ーコピ入一一一一L一一一一J一一一一」一一ー鹿

2 6 10 14

第 2 図

Fig. 2.

18 22h

1959.7.29

Cc4 S臼 -5Sc東.JiIr.:Scjt明 CsCSIO宮周〈おお 10 ふ且晴

NWO.5 よ宣,tt晴 昼間Sc陽相主喝且泊,鳩おf,I.fO?J:-";l__向雪町ね

-1- + ~ +.t.t .j. キ「酬に川島財

止む

-----.電位傾度一-1富也

電 100

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。6れ 7n 8れ 9h 10h IIh

第 3 図

Fig. 3.

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126 織笠桂 太 郎

ぼ満される。理学部は札幌市の北西隅に位置しているので,この様な条件が満されるためには

快晴で北西から北東の聞の風向で 5mjsec以下の風速であればよい。 この状態の電位傾度は夏

冬を通じでほぼ 100Vjm前後である事が平面更正の結果明らかになった。第2図がその 1例

である。図中の 1時から 8時頃までは電位傾度はほぼ一定で 100Vjmよりやや少な目の値を示

している。 10時前後の負の値は風鹿の影響を受けたもので, 18時以後の強い正の値は煤煙の

影響によるものである。念のため平面更正を行なった時の平地の電位傾度と理学部屋上の電位

とを比較すると第 3図に示した様になる。実線で示したのが理学部屋上の空中電位,点線が平

地の電位傾度である。縦座標は空中電位(理学部)と電位傾度(平地)の両者を同時に表わして

いる。 5時から 8時頃までは上空lこは電位傾度に影響を与える様な雲はなくほぼ快晴に近いの

であるが,平地の電位傾度と理学部の電位との聞に相当の差があるが,以後わずかではあるが

雨が降ったり,雨雲が消えて日射によって地面が暖められ気温が上昇するにつれて両者の値が

ほとんど一致し,非常に良い比例相関を示すことが確認された。 5時から 7時頃にかけて平地

の電位傾度が大きな値になったのは,比の頃は気温が相当低くなっているので地上附近l乙凝結

水分が多く存在し,之lζイオンが吸着されて電気伝導度が悪くなり,電位傾度が大きくなった

ものと考えられる。理学部屋上はこの影響がない模様でほぼlOOV前後で一定である。 8時以

後は日射の影響で対流が起り上j習も下層も一様になったために良い比例相闘が得られる様にな

ったと考・えられ,降雨降雪を伴う様なはげしい気象擾乱の場合は問題なしに良い相関を示す事

が予想される。更に都合の良い ζ とに,偶然ではあるけれども 8時以後は両者の値が殆んど一

致しているので理学部屋上の空中電位をそのまま平地の電位傾度の値と見倣すことが出来た。

11.2. 煤煙に伴う電位傾度の変化

南東から南西にかけての範囲の風向で風速の非常に弱い時は,札幌市の中心は勿論,全市

の煤煙が観測点のJHu聞に充満し近くの藻岩山や手稲山は勿論,上空の青空まで全く見えなくな

る様な状態を生ずることがある。

こんな時は空には一点の雲もない晴天であっても +700Vjm以上に達する電位傾度が生

ずることがある。第 4図がその一例で即時 30分頃から煤煙が薄くなりはじめたがまだ観測点

19~7. 11. 18

。 o

V"'I~SE SSE 曳

124 2O- o. 600

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瞳a。量向晶理

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17h 18"

第 4図煤 煙

Fig. 4. Smoke.

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127 降雨及び降雪i乙伴う空中電場の擾乱

から約 6.5km離れた藻岩山が全く見えず, 12時 10分頃になってやっと藻岩山の輪郭が見える

15時頃再び煤煙が濃くなり電位傾度は 600V/m以上様になり電位傾度はほぼ最小となった。

新鮮な空気が流れ込み充満してlζ達した。 12時から 14時の間は風向が北東lζ変ったために,

いた煤煙を薄めると同時lζ観測点、の南西の方向に押し流したためと考えられる。

この様な現象は夏季lζ於いてはさほどでもないが,秋から春にかけての冬期聞が最も著し

い。煤煙がある時の電位傾度と風速の相関を見たのが第5図である。(実線は電位傾度, },~~線は

1958.11. 10

M/S

周auwRJV

4

3 j!邑

7

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o 12h

NW,NE

i¥ iV1i h 八 ji.liAA

j¥ν¥j V Vi i-EE--j L一一一一一一--~

w 周向 SW

V/M

400

篭 300

傾 2∞度

100

50 40 30 20 10

第 5 図

Fig. 5.

Ilh 50 40 ぬ

o 10h 20

電イ立{頃度は 130風速を示す)10時 15分から 10時35分頃までは平均して風速が比較的強し

V/m前後でほぼ晴天の電場lζ近い。以後は大体比較的風が強いところでは電位傾度が弱く,風

特lζ11時5分から 11時 10分頃の風速の弱いところでは電位傾度が強くなる傾向が見られ,

11時 30分以後は風向が北西乃至の弱いところと電位傾度の強いところが良く一致している o

との影響が大きいから何とも云えない。北東lζ変っているので,

以上の事から煤煙の電位傾度l乙及ぼす影響を考える場合は風速も考慮に入れなければなら

畠山口)tま機関車の煙が主として正電場を発生し,稀lζ負電場を与える事をない事が判明した。

報告しているが,著者の煤煙の観測ではまだ負電場は確認されていない。此の現象を微視的に

解析するのには煙の粒子の電荷及ひ事空気中の ionなどの測定を行なわなければならない事は勿

同時l乙実験室l乙於いてもやってみなければならないが,之は今後の課題としてお論であるが,

く。

風塵に伴う電位傾度の変化11.3.

4月頃になると支那大陸l乙発生した移動性高気圧が徐々に発達し乍ら日本々土を横切り,

幾日も晴天が続いて異常乾燥が起り此の移動性高気圧が太平洋に去る頃lζ本道の北側を温帯性

畠山久倫・菊地武徳, 1946: 機関車の煙による空中電位傾皮の変化.中央気象台附属技官養成所研究報

告,第 1 巻,第 1~2 号,空中電気特輯,第 1~2 号, pp. 9~13.

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128 織笠桂 太郎

ばふんかぜ

の優勢な低気圧が通過して南東の強風を伴い(札幌では俗に馬糞風と云われる)著しい風塵が

札幌の全市に充満する。之は市中を走る自動車などによって更に著しくなる。第 6図は今まで

に観測したうちで最も烈しいもので -2000V/mを越えている。 風向は南東乃至南々東の範囲

で平均風速は 13m/sec程度である。その次に強かったのは第 7図の例で,之も南東乃至南々東

の範囲で平均風速は 11m/sec,電位傾度は最大一700V/mとなっている。第 8図は煤煙と風塵

が交互に現われた例で,両者の限界をきめるのに好都合なので例示した。第 8図の 6時から 18

1961. 4.20

OAc 6Ci,4Cs

匂C。L4 雲形

o 10 雪量SSE SE SE ESE SE 風向13.0 .13.4 16.3 12.4 1/.2 周置量

SE 13.2

XIOOV/M

5

12h 13n 電

01 IIh

度寸O

"120

第 6 図 風 盛

Fig.6. Dust.

1957. 4.30

10Cs 10Cs 10Cs 1O0ACc s tSO ACc s 170ACc S CH

2Ac;IOAs BAc,IOk.s 7Ac,I0IIs Cw雷形ct.

10 10 10 10 10 10 10 10 10 雪量

Xl0VIM SSE SE SE SE SSE SSE SSE SSE SSE 園向

96 110 13.0 12.4 10.3 12.0 9.8 10.8 11.7 周百邑

30

16n

第 7図風 盛

Fig. 7. Dust.

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". '0。

20。

2Ci 8CI

S2E 4

降雨及び降雲IL伴う空中電場の擾舌L

9ZACE1.CS94A Cc .Cs a4cAE .1BC39b 2CI.ecs 6C1.6Cs IOes

2OACc u OC, ocω OC, 10 10 10 。 10 10 ,。NIS NE wl' sw E6Sl E S6S9 E vs i

129

19d7 6 18

IOC5 。oc, EObCCH M4E酔

oc, 2Sに ISc CL

。。 10 10 ~量

S6E 3 S3E 2 E4S8 E 圃匝同薗

・200

第 8図煤煙と風塵

Fig. 8. Smoke and Dust

時までの主風向は南東乃至南々東で煤煙も風塵も何れも発生し易い状態にある。 6時から 10

時頃までは平均風速が1.5m/sec程度で煤煙の条件lζ適合する範囲内にあり正電場が卓越して

おり, 11時から 15時までの聞は平均風速 7m/sec程度で負電場が卓越し平均一50V/m程度の

電位傾度を示しているので,風速 6m/sec程度が風塵を発生して電場に影響を与える限界では

ないかと思われる。勿論地面の乾燥程度やその他の条件lζ左右されるので正確なものではな

い。 15時以後は次第に風速が衰え,正の電場が卓越しはじめている。畠山12)は前橋iζ於ける風

塵を観測し,lE負両符号の電位傾度が卓越する事を発見し,之が季節に関係する事を述べている

が著者の観測ではまだ正の電位傾度が卓越した例は確認されていない。畠山の調査によると風

塵l乙関する研究は沢山あって, W. A. Douglas Rudge凶は南アフリカでー10000V/mと云う

大きな値を得ており,彼は土質によって電位傾度の符号が異なることを擁認した。しかし何れ

積乱雲

10

NW8'S

安形

~ -t }il向lili玄

報乱事T

10

Nw'.4

1;;60. 3. 2.i . 幸責乳雪?

1Q

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第 9図静かな弱い降雪

Fig. 9. Light snowfall.

12) 畠山久倫・久保持夫, 1946: 風墜による空中電位傾度の変化.同 11),pp. 1-8.

13) Douglas Ruclge, W. A. 1912: Phil. Mag. 23, 1913: Phil. Mag. 25, 1914: Proc. Roy. Soc. 90.

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織笠佐 太郎130

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の研究l乙於いても風塵の場合は負の電位傾度が卓-一一一一一_....-r-宰一一一一一一一一

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越し易い傾向がある様だ。

降雪に伴う電位傾度の変化11.4.

前節まで述べた如く,煤煙及び風塵の影響の

確認によって純然たる気象擾乱のみによる電位傾

乙の煤限,風度の変化を知る事が容易になった。o

'" a睦ト

ョ z0

鹿及び後で述べる飛雪現象による影響以外は,特

lζ降雨や降雪を伴わない限り如何なる雲でも晴天

の電位傾度より目立った変化を示さない事が明ら

かになった。降雪に伴う電位傾度の変化に関して

'" 2B8

はすでに著者叫によって報告されているがそのあ

らましを述べてお乙う。

E色町

EE2z、,EEE

由。マd凶帥的

。-

第 9図は積乱雲からの静かな弱い降雪を伴う

時の例である。実線は電位傾度,点線は降雪強度

破線は晴天時の平均電位傾度を夫々示し,左側の

縦軸は電位傾度,右側は降雪強度を表わし,横軸 h

司は時刻を表わしている。

• 実線の上lと重ねて記入したOは正の雪が,一寸

=帥 Oは負の雪が夫々記入された時刻に数回観測された

乙の例では 1回毎l乙ロシを交換してことを示す。

N

l

↓干la

{回数を測定しなかった。図の上部lと記入した雲形'" N

w 一‘

空白芯雲量,風向風速は札幌管区気象台の測定値をイ昔用

Z D

したものである。

図から明らかな様に静かな弱い降雪では電位制

.N国的冊一

傾度は正に増加し,降雪の電荷は負が圧倒的に多

Z同制

《宮昨

EEEz、医亘同

由-

0.NM

o-く10%程度の正電荷を持った雪が混合していた。

従って此の程度の正電荷の混合を一応無視すれば

電位傾度と降雪の電荷符号との聞に明瞭な逆相関

(差

X)

∞-

@同凶凶一凶D

-

第 10図は優勢な低気圧が本道があると云える。£NN

の南海上を通過した時lζ得られたもので 21時 20

世噛!剣国側園間

@: ." tr 桝匝型車

.J一一ー よき~!'!ω 。??宇x 岨, 1;3 .,.岨

分から O時 20分までは低気圧の前面の乱層雲か

らの定常的な降雪で,電位傾度はやはり正に増加

正が 21回

観測された。従って此の場合もほぼ逆相関になっ

し,降雪の電荷はこの聞に負が 81回,

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131 降雨及び降雲!c伴う空中電場の擾乱

ているが,雪片の帯電機構と乙の逆相関とを結び付けて考える時はもはやこの程度の混合でも

目視観測では徐々に降雪強度この例では降雪強度の測定は行なわなかったが,無視出来ない。

しかも降雪強度の増加に従って電位傾度も徐々に増加していっが増加するのが認められた。

た。之は図の上部lζ示した気象台の観測による平均降雪強度及び視程の記録からも明らかであ

O時 20分から 3時 50分lと至る部分は低気圧の中心部分が特に接近した時で平均降雪強度る。

乙の様l乙電位傾度が週期的に符も最大となり,図の様な典型的な wavepatternが発生した。

しかし乍ら良く注意してみると,号を変える場合でも上述の様な逆相聞はほぼ成立している。

之電位傾度の符号の変化時刻と降雪の電荷符号の変化時刻の聞に進み遅れの現象が見られ(j)

又 2時 30分頃は電位傾度は正も雪片の帯電機構を考える場合には無視出来ない現象である。

であるが,符号を変えずに電位傾度が減少しただけで,負から正の電荷をもった降雪lこ変っ

一般に電位傾度の増減だけでた。之と符号lζ関して全く逆の現象も他の例でしばしばみられ,

或る符号の一連の降雪から他の符号の降雪に変る現象が起り得る@。第 10図の例は 1回毎l乙ロ

A シを交換し個数も測定しであるので,降雪の 1個当りの符号-別の平均電荷を求めてみると,

Bの部分では+1.3 X 10-4 esu K対しての部分では+1.3 X 10-4 esu IC::対して -2.5X 10-4 esu,

乙の様な傾向は積乱雲からの降雪-2.1 X 10-4 esuで,負電荷が正電荷の約2倍になっている。

この様な傾向は電位傾度の強さ及び符号一般に雪片の電荷iま負が正より大きく,でも見られ,

に全く無関係である@。又電場が強い時は相対的lと雪片の電荷が大きくなる傾向も確認された o

第 11図は活滋な積乱雲が次ぎ次ぎlと観測点之については更めて別の報告で述べる事にする。

この様な数分から十数分にまたを通過して出来た比較的週期の短い wavepatternであるが,

195812.6

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第11図 多数の近接した積乱雲の通過による wavepattern

Fig. 11. Wave pattern caused by many Cb clouds passing over head.

織笠俊太郎, 1961 ;降雪に伴う空中電位の援舌L.“雪氷"Vol. 23, No. 3, pp. 1-10. 14)

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132 織笠桂 太 郎

がる短い週期の電位傾度の変化iと対応して降雪の電荷の符号も変化しており,両者の符号・の聞

の逆相関々係もほぼ成立しているのは面白い。この様な速い変化をする時は 1回毎にロシを

交換していたのでは符号の変り目をとらえる事が出来ないので第 l図に示した遮蔽板を開け放

して連続的に入って来る雪片の荷電符号と電荷量の大きさのみを記録した結果,一連の閉じ符

.号の降雪から反対符号の一連の降雪lこ変るに要する時間は遅くて 1分位,早くて 20秒前後で

あり,との変り際lこ於いては正負の雪片が多数混合する傾向もあるが非常に明瞭に分離されて

いる場合もある。雪片やアラレの落下速度から判断して之は空間のわずか数十米の間隔で正負

の符号に明瞭に分離された雪片とアラレの集団或いは雪片と雪片の集団が存在することを示し

ている@。更に注怠すべき事は,正電位傾度は比較的小さく負電位傾度が圧倒的に大きい。 し

かも小さな正電位傾度の場合には小雪片(又は粉雪),又大きな負電位傾度ではアラレが降って

おり,従って降雪強度は正電位傾度では弱く,負電位傾度では強くなっている。しかも小雪片

が負電荷,アラレが正電荷をもっ傾向も明瞭にみられる事は非常に興味ある現象と云わねばな

るまい。

19時 40分以後は殆んどアラレだけしか降っていないがやはり正負の符号lζ明瞭に分離さ

れている。積乱雲からの降雪では一般的にアラレ及び大雪片は正電荷をもっ場合が多いが負電

荷をもっ場合もしばしば見られ,小雪片は負に帯電していることが多い@。第 12図は独立に発

達した単独積乱雲の通過によって生ずる電位傾度の変化で図中の Aj,B" Cj, Dj は基本裂で,

他の A2'B2' C2, C" D,は基本型に図の様な正或いは負の大きく急激な電位傾度の変化を伴

ったものである。 1個の積乱雲で乙の様な急激な変化を 5回以上も伴った例がある。一般に此

の様な電位傾度のピークの附近で降雪強度も急激に増大する⑥。例えば 1958年 2月初日, 1959

年 3月 16日の B2型及び 1959年 3月 16日の D,型の様に正のピークを生ずる場合は, この附

近で非常に短時間ではあるが正電荷を持った大雪片又はアラレが強く降っている。之に反して

負のピークの発生回数は正に較べてはるかに少ないが,しばしば発見され負電荷を持った強い

降雪を伴うことがある。(第 31図 1961年3月 3日7時 45分)更に注意すべき事は 1959年3月

16日の B2型,同 D,型lと於いて強度ははるかに弱いけれども強い正の降雪に前後して負の降

雪が観測されていることである。以上降雪時の観測の何れをみても,一般に正文は負の雪だけ

が単独で観測される事はなく如何なる場合と云えども多少なりとも両者が混合するか文は互に

前後して観測される@。

以上降雪時の観測で電位傾度と降雪の電荷の符号の逆相関々係が成立する乙とはほぼ確認

された。乙の逆相関の説明l乙主として用いられて来た Wilsonのイオン捕捉説が妥当であるか

否かは本説で述べて来た事を振かえって見れば明らかである。即ち以上の降雪の観測で得られ

た①から⑦までの一般的な結果のうち@を除いた他の 6つの結果は Wilsonのイオン捕捉

説ではどうしても説明出来ない事ばかりで, しかも之が説明出来なければ雪片の荷電機構のU~

1近似として Wilsonの説を適用出来ない様な大きな問題を合んでいる O 即ち Wilsonの説で

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133 降雨及び降雪lζ伴う空中電場の援活L

これらの結果は殆んどこの電場とは無関係は雲底以下の電場lζ依存しているにもかかわらず,

である乙とを暗示している。従って雪片の帯電機構として大気中のイオン及び既存する電場に

依存するものよりむしろ気象援古しに助けられて雪片自身又はお互の衝突による摩擦破壊などで

日a

-1.三CALEOUT

1959 3 16

XIOOVlM

6

との理由はあとで述べる o

Az 1958.321

帯電する機構が妥当であると考える。

::lfしXIOOVIM

20

8,

21.30

1958.12.21 B

2 0

9.30

-4

幽 8

SCAI.五 OUT--・・・えW--<DO・=一一一--..-

曲. .

t'-.-11f:I-一一回 94c抑制

伺9 悼 3

-6 降雪残虐量夫

'' Hu

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pE 'L A

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83

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C之16

-12

-16

12 C, 1959.2.7 XIOOV〆M

S

C. 1958. 12.10 日

4

-4

4

2

0"

16h 15

4

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2

D.

-8

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t

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¥円Lj¥ー

未定見の型

-6

12

-4

4

国 e

s

-4

SミALEOUT

同{事)←→t車戸 削閣一一→

単独積乱雲からの駿雪に伴う電位傾皮の擾乱の型

Typical pattern of potential gradient caused by snowfall from single Cb cloud.

ー6

第四図

Fig. 12.

-12

ー16

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134 織笠桂太郎

11.5. 降雨に伴う電位傾度の変化

降雪時の静かな弱い降雪lと対応するものとして霧雨が之に該当するものと思われるが,議

雨の荷電量が小さいために今回使用したエレクトロメータ戸では測定出来なかったので霧雨の

ときの電位傾度の記録だけをここに示しておく。 第 13図がその 1例であるが平均電位傾度は

晴天時の約 1/2以下で静かな降雪の場合とは全く正反対に電位傾度は負に増加する傾向があ

る。 i欠に第 14図は台風 21号の接近による定常的降雨によるもので第 10図の定常的降雪の A

及び Cの部分に対応するものとして取上げてみた。第 10図の Aの部分では降雪強度が徐々に

1951.6.3・4

雪 量 10 3FN .4 Cb

9 5S.c3 ,Cu 3FN.9 ,Cb 8,3

宮珂事 Cb 。J SC,Cu ヲE 気, v v v v、、、、・、・h .、.、 、『 O @ @

周向周市 f 久 「

V/M

電 200r

位 「一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一1

{tO Or ペー酌~一五一一… -h vγidh- Ib ian

度 I-200L

第四図言語 雨

Fig. 13. Drizzle.

NW 0.9

NW 1.3

WNW 1.1

NW 風風温向3.2

刷 IH 降

2 S.豊

""'"・庫

15h

V/M

包-但偏度

/パY・¥. _.,~内\/\山 /JA大。 いてい..-..1.,,;.... 寸 V¥叫 ....hi'.'V../.... ヘ112島,...--一、一___ 13h ~ 14~~-"'"

-400

一一億位傾度ー降的強度

第 14図定常的降雨 (1958.9. 19)

Fig. 14. Steady rainfall. (18. Sep 1958)

増すにつれて電位傾度は正に徐々に増加し, Cの部分では降雪強度が徐々に減少するにつれて

電位傾度も徐々に減少し,降雪強度と電位傾度との問に第 1近似として比例的関係がみとめら

れたのであるが, 第 14図の場合は降雨強度が 1時間位のなめらかな週期的変化をなし,電位

傾度も全く之に!順応してきれいな鏡像関係を示し,やはり第 1近似として電位傾度と降雨強度

との聞に比例的関係はみとめられるが比例常数は常に同じではない。 第 15図も定常的降雨の

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135

例で,降雨強度の外に降雨電荷も測定し,

いた棒線は正電荷を示し,下lζ引いたものは負電荷を示し,長短は相対的な大きさを表わして

図中の一番下に示した。即ち零線を堺にして上lζ引

降雨及び降雪((伴う空中電場の擾乱

山川

4M

M

1958. 9. 27

8,

x…-vijLlV ilv仇

O耐

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ωル明

白内品川

o 12n IIn 10n o

J』

4

-電位繍度ー降雨3!度

ト Llιマ..w...ーL.L..“品幽幽釦比4 品 ........

第 15図定常的降 雨

Fig. 15. Steady rainfall.

」品』ーー...L.-J.Hι1....!...I......t..IL, 所滴の

電待

量買事

1(1111)

+1.0

to.!S

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雪量聖

28 AUG. 1957

10 Ns

10 Ns

101 8

4

2

0

4

4

.

-6

-8

6

14n 13n 12h

非定常的な連続 降雨

Continuous rainfall.

第 16図

Fig. 16.

IIh

-10

-12

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136 織笠桂太 郎

いる。 1回毎の平均電荷は 5x 10-' esu (最大 5X 10-3 esu) であるから 1個当り 2X 10-4 esu程

度と思われるが荷電量については別の報告で詳しく述べる予定である。降雪の場合と異なる大

きな点は,電位傾度が負で降雨の電荷が正が圧倒的に多く,逆相関が明らかにみとめられるこ

とは同様であるが,符号に関して全く正反対になっている。乙こに乱層雲からの降雨及び降雪

の帯電機構を考える一つの糸口が存在すると考えられる。一般に積乱雲からの降雨及び降雪以

外は,雨は正電荷を帯び易く雪片は負電荷を帯び易い@。第 16図は乱層雲からの述統降雨によ

る wavepatternで,比の場合もやはり電位傾度と降雨電荷の符号の逆相闘がほぼ成立してい

るが 13時以後は少しみだれている。

図中lと点線で示した矩形の棒グラフは, 矩形の横の幅の|時間 (5分)内に降った降雨量を

矩形の高さで示したもので,札幌管区気象台の記録から求めたものである。観測点から南西方

向に約1.8km離れているけれども層雲から発達した乱層雲であるのでさほどの相違はないと

思われるので参照してみた。 これによると 10時 30分, 11時 50分, 12時 30分頃では降雨強

度はその前後に比較して強く, 特lζ10 時 30 分, 11 時 50 分頃だけが集中的に降ったためと,~、

われ,降雨強度が急増している。しかも此の時刻には降雪時と同様に電位傾度の急激な変化を

伴っている。従って一般に降雨降雪何れの場合でも降水強度に大きな急増がある時は電位傾度

の急激な変化が生じ,変化の方向はその時刻の降水物体の荷電符号と一致する⑨。おら 17図は結

i5L雲からの糠雨によって生じたやや不規則な変化の wavepatternであるが,正電場では殆ん

ど逆相関は成立しているが負電場では少々乱れている。 第四図は単独積乱雲からの糠雨によ

る電位傾度の変化の型を分類したもので第 12図の瞭雪の例l乙対応させて整理した結果, 第 12

図の A,i乙相当するものが観測されていない。 即ち雨漏の電荷が負で電位傾度が正の状態、が単

独では発生しにくい様である。他は降雪の場合と全く同じ型が得られており,良く発達した積

XIOOVlM

16

1958.11.10

12

5宝

au

必守

n

v

n『

au

-12

ー16 。→正電街・→負電侍-20

第 17図 積乱雲からの駿雨に伴う wavepattern

Fig. 17. Wave pattern caused by rainfall from some Cb c¥ouds passing over heitd.

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イ身

長・200

-400

V/M

600

400

電 200

位o

度 -200

-400

VJM

ゴ電

イ立 200

偏 。反

-200

-400

降雨及び降雪に伴う空中電場の擾乱

1957.8.5

'JIIJ,

200

電 200

イ立 。偏

-200

200 電

伯 400

fJ.語

電 800

Ilh

度 4∞

-

F

ハun

u

w

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U

6

e

o

137

V/M

600

600

1957.10.1

400

-400

11.30

-600

-800

VIM

400 195日 9.19

18t>

VlM 1200

-800

第四図 単独積乱雲からの駿雨に伴う電位傾皮の援乱の型

Fig. 18. Typical pattern of potential gradient caused by rainfall

from sing¥e Ch c¥oud.

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138 織笠桂太郎

乱雲に関する限り,電荷分離機構は夏でも冬でも全く同じものと考えられ,この主電荷分離は

主として Ooc以下で行なわれると推定される⑩。

11.6. みぞれに伴う電位傾度の変化

秋から冬, 冬から春へのシーズンの変り自にはみぞれがしばしば降るが, 第 19図がその

1例である。図lζ於いて 11時 40分頃lζ電位傾度は正から負lと変り,負の雪片から正のみぞれ

に変っている。 しかし猶 30%前後の負の電荷が混合しているので滋紙の痕跡に注意してみる

と,小粒で丸く数多い痕跡を示す時は正電荷,痕跡が不規則で大きく雪片の痕跡と判断される

ものは負電荷を持っていた。即ち雪片の形態を保っているものはそのまま負の電荷を保持し,

小雪片は融解して雨滴となってlElζ帯電した様な傾向が見られ,この場合は Dingerand Gum勺

の融解説が第 1近似として適用されて良いのではないかと考えられ,一般の乱層雲からの降雨

も warmrainでない限り一度比の過程を経なければならないので考慮すべき機構と考えられ

る。

't' JfH.

脅'一一一一+み せ・ 1t

舌L局安

1957. 12. 13

~

'w'量 10 10 10 10

N 4.2 1.0

犀I向贋l買 WNW1.5 NW 2.4 NW 5.2 キ見 主主 0.7 0.7 1.0

・ -令長一一一一一+モ一栄一一→・ 2争時

XIOOVlM -lt -lt 'V 6

古参

。豆電術

. ~電借

14n

必『

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--‘

第四図み ぞ オも

Fig. 19. Sleet.

11I. 定常的降雨による乱層雲の帯電機構

111.1.理論

降雨の場合でも II.4.の降雪の場合lζ得られた一般的結果のうち①,④,⑦と同様の事が

確認されているので Wilsonの説を全面的に第 1近似として受け入れることは依然として困難

である。 と乙ろが第 14図lと示した様lζ電位傾度と降雨強度との聞に鏡像関係がしばしば見ら

れ忍ので当然次の様な事が考えられそうである。即ち雨滴の,帯電機構には一応立入らないこと

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降雨及び降雪!c伴う空中電場の擾舌L 139

にして,雨滴は先ず雲の中で何らかの機構で帯電し,落下によって雲の中から或符号の電荷を

運ぶために,降雨によって運び去られた正味の電荷と逆符号の電荷が雲の中に蓄積されるため

に問題の逆相関が生ずるものと考えられる。但しここで述べた雲の定義であるが,之は雨滴の

帯電が行なわれる空間のすべてを意味しており,場合によっては地上附近まで含まれでも何等

差支えない。勿論以上の理論は降雪の場合に於いても適用されることである。この様lζ考えれ

ば,大気中のイオン並びに電場l乙依存する理論ではどうしても説明出来なかった第 1章で述べ

たような諸問題は全く解消される事は論をまたない。しかし乍ら次の様な大きな問題が考慮さ

れねばならない。即ち雨滴の帯電が主として雲の中即ち地上から高い所で行なわれるならば,

少なくとも雨の降りはじめは雨滴の空間電荷の影響で電位傾度と降雨電荷の符号が同じ状態が

適当な時間続かねばならない しかるに第 1章で述べた様に殆んどが逆相関を示した(勿論正

相関の例もあるが之は後で示す)。之はたまたま観測点に近づいてから雨を降らせる雲は極稀

にしかないと考えれば問題はない。 1932年 Banerjil5)は雷雲の雲底附近の負帯電の説明lζ之と

ほぼ同じ概念を持っていた様であるが,それ以後はほとんどこの様な考えは省みられていなか

ったようである。之について以下K吟味して見ょう。

III.2. 雨滴の空間電荷の影響を考慮した理論の検討

以上の理論を実際の場合l乙一歩近づけるために著者等16)は次の様なモデルを考えた。即ち

観測点に対して有効に影響を与える降雨域及び雲の範

囲を第20図の如く半径Rmの円筒で囲んだ部分で近

似し,雲及び降雨域の空間電荷密度を夫々 ρ ,P+とし

夫々の範囲lと一様に分布すると考え次の様な式を導い

7こ。

F=F十 +F-

4πρ+ (H+R-(ii可 R2)

+ 4..P-{H'-H + (H2+R2_(H万王R2) (1)

F+, F_は夫々雨滴のもつ正電荷及び雲の中に残され

た負電荷によって観測点(図の中の太い矢印で示した

←尺→

P

第 20図

Fig. 20.

CLOUD ιー REGION

RAIN ιREGION

所),ζ与える電位傾度である。上式の計算を行なうために実際の測定値に基づいて次の様な可

能な仮定を行なった。

雨滴の数の空間密度 (n) ……………...・ H ・.....・ H ・..…… 3XlO-'cm-3

雨滴の平均直径…………...・ H ・..…...・H ・..…...・ H ・..…… lmm

15) Banerji, S. K., 1932: The electric五eldof overhead thunder cloud. Phil. Trans., A, 231, pp.

1-27.

16) Magono, C. and K. Orikasa, 1961: On the surfac巴 electric五eldcaused by the s pace charge of

charged raindrops. Jour. Met. Soc. ]apan, Ser. II, Vol. 39, No. 1, pp. 1-11.

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140 織笠桂 太 郎

雨滴の落下速度 (v) 一…・…-………………υ ・・……… 4m・sec-'

雨滴 1ケ当りの電荷…………………………・・・………… 4x10-<esu

降雨強度………………………………・・・………… 2mm.hour-'

標準状態に於ける雨滴の空間電荷密度(九)……………1.2X 10-7 esu・cm-3

降雨域の半径 (R) ...………………・……・・・………… 500m

雲の半径 (R) …………・・・……………………… 500m

雲の厚さ…………………………………………… 1000m

雲底の高さ・・……………………・・………………… 500~1000 m

又雲の中iと残された電荷密度 ρ はイオン伝導によって減少すると仮定し, relaxation timeを

。とすれば

dρ一Idl= aー ρIs ( 2)

1=0で ρー =0とすれば積分の結果

ρー = as(l-e-仰) (3 )

(2), (3)式に於いて tは雨滴が雲から離れた時ーから経過した時間, aは正電荷を持った雨滴が落

下する事によって雲の中の単位体積中lこ負の電荷が発生する割合である。前述の仮定により

aπR2ρsvlV = 0.24ρs.esu・min.-'・cm-3

となる。 Vはc10udregionの休積である。又地上附近lζ於ける 8の値は 5-40分の範囲内に

あると考えられているので,今3の値として 10分及び 20分の二つの場合について計算すると,

ρ = 2.4・ん(1-e-t/IO)

ρ一=4ふん (1-e山つ)

( 4)

(5 )

今 s=20minの場合の (5)式を (1)式に代入し,雲底の高さをノξラメーターとして雨滴が雲を離

れはじめてからの観測点に於ける電位傾度の変化の模様を計算した結果が第 21図である。 但

し降雨域の電荷密度は最初の雨滴が地面に到達するまでは一様ではないが,之を一様と考えて

計弊した。実線で表わしたのが雨滴の空間'電荷による電位傾度の変化であるが,之ははじめ雨

滴が地聞に到達するまでは直線的に増加し,地面l乙到達すると同時に一定となる。雲の/:1:1{こ発

生した空間電荷による電位傾度の変化は破線で示した様l乙指数関数的lと負l乙増加する。之を合

成した実際の正味の電位傾度は鎖線で示した様になり, 雲の高さは 1000,750, 500 mの3つ

の場合について示した。図から明らかな様lこ雨滴の空間電荷の影響はかなり大きなものにな

る。又雲底が低ければ低い程早く負の電位傾度lζ変り第 1章で述べた様な逆相関の状態とな

る。しかし雲底が 1000mの高さにある場合は最早や電位傾度は負lとなり得ず逆相闘は見られ

なくなる。 乱層雲の場合は雲底が 1000m以下である事は間違いないから此れは問題にならな

い。今仮りに H=750m, s=20 minと仮定して節 14図の定常的降雨に適用してみたのが第

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降雨及び降雪l乙伴う空中電場の擾乱 141

V/M

2000

1000

1000 M + 1730

750 M + 1570

500 M + 1320

¥ -¥ • 、

¥ 、、、、、、、、1

1 1 -、.、:zEtO-M~ ¥

1-------一-~ +470 1 「¥¥ ¥

¥P旨'04(、、、

¥ .ー .‘、

h N目。、 i回d30i咽'"5"Õ'-'-60- ー.~ -AFTER SEPARATION IN MIN.

、\\弓hー;~句、'\W 、之弘、ー』ー争 -"1260

-.・司同~.

ーー-一.~

¥“、『 旬、~

込¥ーラ -1730

、¥ ト¥、、、、

、、、、句、、~きb -2760

RELAXATlON TIME 20MIN

F 0

-1000

-2000

vnv nv

建材

第 21 図

Fig. 21.

22図である。 図中の上に示したのは降雨強度曲線(実線)が破線で示した様な一定の降雨強度

を持ったいくつもの定常的な降雨域の通過によって生じた事を表わし,下の図は比の様な定常

的な降雨域によって与えられる定常状態l乙達した電位傾度(破線)と実際の電位傾度(実線)とを

比較したものである。雲底が 750mと云うのは少々高すぎるかも知れないが,かりに 500mと

しても雨滴の空間電荷の影響が 1000V/m程度もあるにかかわらず最大 200V/m (平均すれば

50 V/m)程度の誤差範囲で一致しているので,本軍で述べた降水の荷電輸送による乱層雲の帯

電機構は相当確実性を持っているものと考えられ,更に別の観点から之を確める必要があると

思う。之については更に第 4'1言lζ於いて述べる。

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織笠桂太郎142

19158 SEPT. 18 MM/H

r

↑zwZ凶しFZ-

」」4hhz-4E

V/M

+200

。F

h・.200

15 14 13

TlME (HOUR)

第 22 図

Fig. 22.

12 -400

向調

度 200

-400

-600

1>,文0<ミ,.握手配 ."げ

1957. 12.10

NW 6.9

g 軍事

NW 11

V/M

400

。位

i~自・ 400

度 -600

19d9. 3. 9

,普l‘マ

ー1200

度-400

-800

-1旬。

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23 図

23.

Fig.

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降雨及び降雪K伴う空中電場の擾乱 143

IV. 集中的な強い降水に伴う急激な電位傾度の変化

第3章で述べた様な空間電荷の影響は直接目lζ訴えるものではないので,直接認められる

様な現象がないか調べた結果, II.5で述べた一般的結果@が之に該当すると思われる。即ち

積乱雲からの強い膝雪, ~豪雨などに伴う尖鋭な電位傾度の変イじがそれである。 第 23図はその

一例であるが, 第 12図の単独積乱雲からの駿雪lと於いても之と全く同じ現象がすでに認めら

れており,しかもこんな時には必ず集中的な強い降雪又はアラレを伴っているので,之は集中

的K落下する雪片やアラレのもつ空間電荷によるものであるととは殆んど間違いないであろ

う。もし乙の予想が当っているとすれば,活液な積乱雲の通過線上の或適当な距離をへだてた

2つの観測点で,一方の観測点では降水強度が比較的強くて電位傾度の変化も大きく,他の観測

点では降水強度が比較的弱くて電位傾度の変化も比較的小さいと云う様な結果が得られる筈で

ある。そこで第24図に示した様lζ,今までの観測点 (D.S.)の北西約1.2km離れた道立農業試

REACH TO THE BAY Op lSHIKARl

第 24 図

Fig. 24.

験場 (A.E.S.)の露場lと更に観測点を設け,はじめに両地点の電位傾度の記録だけを記録して

みたのが第 25図である。 図の上の記録は農場 (A.E.S.)で下K示したのが理学部 (D.S.)であ

る。 図の最上欄lと0,1……IVと記したのは降雪強度を 5段階に分けて目視観測を行なったも

ので, 0はちらちら降っていると云うだけで雨量計では計れない。 1はやっと雪量計で計れる

程度で 0.1mm/hour程度, Vは3-5mm/hour又はそれ以上の強さに相当する。図の下lとは地

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144 織笠 桂 太 郎

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WNW2.4 WSWO.i

第 25 図

Fig. 25.

上の主風向及び雲の移動方向及び速さなどの札幌気象台の記録を記入した。地上の主風向は特

に地形の影響などもあって高い上空の主風向は勿論雲の移動方向と一致しないけれども凡その

目安のために記入した。 勿論目視観測では第 25図の記録をもたらした積乱雲の中心はほぼ上

述の 2地点を結んだ線上を農場から理学部の方向p:::通過している。以後述べる例は皆之に準ず

る。第 25図に於いて, 農場では 20時 25分頃は正の雪が降って非常に尖鋭な電場のピ{クが

発生しているが理学部では発生しておらず, 同様のことが 22時20分, 23時 06分頃lζ発生し

ている。 従って ζ の様な電位傾度の急変は予想外に局部的な現象である事が判明した。 第 26

図の 13時から 13時 02分まで約2分間強いアラレを伴い,強い電位傾度のピークが発生した。

アラレの電荷は正で 1X 10-1 esuと云う大きな値いを持っており, アラレの空間電荷の影響で

あることはほぼ確実である。理学部でとんなピークが全く現われていないのは,アラレの継続

時聞がわづ、か 2分前後であるから,農場でふりはじめて理学部の上空に達するまでに降り終っ

たものらしい。理学部の南西約1.8kmの札幌気象台爪1.0.)では勿論このアラレは観測されて

いない。第 27 図の 23 時 26 分頃にも正電荷を持ったアラレと雪片の集中的落下によって非~{-;~.

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145 降雨及び降雪に伴う空中電場の擾乱

A.E S FEB. 22, 1960

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+ NW7.8

26.

第 26

Fig.

理学部でもわづかにこの傾向が認められたが,l乙尖鋭な電位傾度のピ F クが発生しているが,

両地点、の他の要素の同時測定がないのが1昔まれる。以上の結果では乙の様な電位傾度のピーク

この原因につ理学部では殆んど発生していないので,が農場の観測点l乙於いてばかり発生し,

いて確めてみるために,積乱雲が近づいたときに理学部と農場の聞を往復して雪の降る状態を

観察した結果,農場附近で烈しい降'吉が終ってしまい,時には消滅してしまうものも相当ある

事が分ったので,上述の現象が起り得る可能性が充分にある事が判明した。又石狩川河口附近

降雪の終る地点が或特定の場所附近lζ限られていから上陸する乱層雲を観測点から眺めると,

る状態がしばしば見受けられた。

以上の様なわづか 2分乃至 3分位で終る尖鋭な電位傾度の変化が如何にして起り得るか考

今仮りに高度 1000mの上空を水平に点電荷 Q(ク日ロン)が移動し,観測点の真えてみよう。

此の Qの値は上l乙到達した時rc.1000 V jmの最大電位傾度を観測点tc.与えるものとすれば,

F=2HQj4πeo(H2十R2)山によって Q=1j18ク戸ロンとなる。 Fは観測点に与えられる電位傾

Rは点電荷 Qを地上lζ対して垂直に投影した点、と観測Hは点電荷Qの地上からの高さ,度,

今この 1/18クーロンの点電荷が R=4.6kmの上空lと到達したとすれば観

使用した電位計は之位の値が感知出来る限界であ測点に対してlOVjmの電位傾度を与える。

点との距離である。

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146

APR,I, 1960

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織笠桂太郎

APR. 2, 1960

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WNW45'

第 27 図

Fig. 27.

る様l乙調整しであるので,R=4,6 kmの上空に点電荷が近づいた時から電位傾度が増加しはじ

めると考えて良い。 今との点電荷が水平方向l乙観測点に向って 10mjsecの早さで進んで来た

と仮定すると,増加しはじめてから

最大電位傾度 1000Vjmを与えるま

での時聞は 7分 40秒であるから到

底 2分で終るピ戸クの説明は出来な

い。 第 28図に実線で之を示した。

又点電荷 Qが観測点の真上から落

下した場合には,観測点に対して

lOV/mの電位傾度を与えてから

1000 V;mの最大電場を与えるまで

の時聞は,アラレの場合には落下速

度を 1.6m/secとすると 19分もかか

るので増々具合が悪く,雪片ならば

更に落下速度が小さいから増々だめ

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第 28 図

Fig. 28.

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147

である。雨の場合でも落下速度が 5m/sec前後であるから 6分以上かかるので之も具合が悪い o

下降気流を考慮しでもまだ足りないと思われるが,之については更めて調査を進める必要があ

降雨及び降雪に伴う空中電場の擾舌L

そこで今点電荷 Qが高さ 200mの上空を 10m/secの速さで水平に移動する場合をると思う。

R=906mの上空に到達したときに電位傾度を増考えると ,Q=2/9 X 10-2 クーロントすれば,

加しはじめ,1分30秒で最大電位傾度 1000V/mを与える。第 28図lζ破線で示したのが之で,

出来之ならばほぼ説明出来る。以上の議論はすべて点電荷について行なったものであるから,

るだけ之に近い状態のものでなければならない。従って此の様な電位傾度のピークを与える原

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第 29

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148 織笠 桂 太 郎

因となるものは,比較的小さな空間的広がりを持ち,大きな空間電荷密度を持ったものが低い

所を水平方向に大きな速度を持って移動し乍ら落下する事によるものと考えられる。之lζ近い

現象は寒冷前線lζ伴って早い速度で移動して来る積乱雲からの燦雪(特lζアラレ)及び膝雨に

ほぼ限られるわけで,本論文l乙示した例は第 16図の乱層雲からの連続降雨による wave

pattermのときに現われたもの以外は全部寒冷前線に伴った積乱雲からの降水によるもので

ある。策29図の上に示した農場の記録l乙於いて 4時 59分, 5時 58分, 7時 19分, 7時 31分,

7時 37分のアラレを採集した結果 7時四分の場合が最も空間密度が大きく, しかも此の時

だけ電位傾度のピークが発生している。 比の外にも 10回程他の例でアラレの測定を行なった

が,何れもピークが出ておらず, しかも何れも第 29図の 7時 19分の場合よりもはるかに空間

密度が小さかった。同時に荷電量も測定出来るだけ測定し空間電荷密度を大ざっぱに当ってみ

ると半数以上が数千ポlレト以上のピ{クが現われでも良い位の電荷密度をもっているにもかか

わらず認められなかったのは,丁度うまく最大電位傾度を与える状態が観測点の位置で起る事

がいかにむずかしいかと云う ζ とを暗示しており,之からも非常に狭い範囲に起る局部的現象

であることが推定出来る。

v. 2点観測による冬期積乱雲の帯電状態の変化及び

その他の現象の推移についての検討

第 4章では 2つの観測点の中の 1点だけに観測者が付いていて電位傾度,降雪の電荷,降

雪強度,降雪の種類の同時測定を行なったのであるが,之では 2点観測の本来の目的は達成出

来ない。本章では両方の観測所lこ観測者が配置されて上述の 4要素を同時に観測した結果につ

いて述べる。第30図はその 1例であるが,少し図の説明をしておく。第 4寧と同様に上部lζ

農場の結果,下部lζ理学部の結果を示した。実線は電位傾度,破線は降雪強度を示している。

農場の結果の下lζ示した補正値と云うのは,雪量計の捕捉率が悪いので目視観測によって補正

した値で,矢印で示した範囲内の降雪強度は示した数値丈けの補正を施した事を意味してい

る。理学部の方はそれが出来なかったので生の値をそのまま記入した。雪の結晶形の記号の下

Jと+ーと記したのは降雪の荷電符号ーである。 WINDと記した所は風が強かった事を示す。欠

測と記したのは矢印の部分だけ電位傾度以外の 3要素の測定を一時中止した事を示す。一番下

に示したのは札幌気象台のゾンデによる地上から高度 3000mまでの風向風速の測定値で, そ

の上に同気象台lζ於ける地上の風向風速を示しておいた。 第 30図の結果は述続的にいくつも

の積乱雲が通過したために得られたもので特に注目すべき点は, 6時40分頃から 8時頃に至る

まで農場の方は電位傾度と降雪の荷電符号の間に非常に明瞭な逆相関が成立しているにもかか

わらず,理学部では之とは反対に正相関を示している。つまり両地点とも同じ負の降雪である

にもかかわらず電位傾度の符号が正反対になっている。降雪強度l乙注意してみると,農場の方

は補正値を加えたにもかかわらず理学部よりも弱く 1)2以下である。此の積乱雲はやはり農場

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降雨及び降雪Iこ伴う空中電場の擾乱 149

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第 30 図

Fig. 30.

から理学部lζ向って移動しているのであるから,農場ーではほぼ定常的な降雪l乙近かったのが理

学部の上空lζ来て急に降雪強度を増したために降雪の空間電荷の急増で正相関となったものと

考えられ,第 3章lζ於いて予言した事がこの例によって明確に実証されたと言えるであろう。

次lζ第 31図は単独積乱雲の通過に於ける結果を示したもので,一番上lζ農場,二番目に理

学部の結果を示し,三番目は参考のため両者の電位傾度の変化を重ねてみたものである。理学

部の方は述絡不充分のため 9時 15分から 9時35分にまたがる唯一つの積乱雲だけしか測定

出来なかったが,此の唯一つの測定は非常に興味ある結果をもたらした。即ちこの降雪 cellの

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150 織笠桂 太 郎

前半の部分が農場を通過した時は負の降雪をもたらし,電位傾度は正iζ増加して最大に達し,

後半に移るところで電位傾度は急lと半減し弱い正の降雪lζ変り電位傾度は徐々に減少した。理

学部ではこの cellの前半は正の電位傾度が農場より更に大きくなっているだけで他は皆同じ状

態であるが,後半の部分は降雪は依然として正であるが電位傾度は負になっておりすでに逆相

闘を示している。即ち cellの後半の部分は農場では正相関であったものが理学部に到達するま

でに逆相関になっている。乙れは農場では正の雪が降りはじめたばかりで,空間電荷の影響で

正相闘をなし,理学部lζ達するまでに正の降雪が相当量あったために電位傾度が負になって逆

相闘を示した事になる。 第 30図の場合の理学部lζ於ける正相関は降雪強度の急増によるもの

であるに反して,この場合の農場lと於ける正相関は降りはじめに起る正相関である事を明瞭に

示している。しかもこの例は明らかに正の降雪がはじまった後に電位傾度が負になった事を示

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第 31 図

Fig. 31.

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降雨及び降雪に伴う空中電場の擾舌L 151

しており,第 3章で述べた理論の根本概念が正しい事を証明している。猶この研究は降雪又は

降雨強度を正確にとらえる必要があるので今後更に駿雨について観測を行なえば面白い結果が

得られるであろう。理学部の方では雪の結晶形の記録がないが農場では正の雪が降りはじめる

までは負の樹校の単結晶と樹校の雪片であったが,正の雪が観測された時のロシを調べると小

さなアラレ状の雪と判断されたので理学部で多量に観測された正の雪も多分アラレ状の雪と思

われる。乙の単独積乱雲は目視観測では勿論2つの観測点を結んだ線上を通過した事は勿論で

あるがゾンデによる 500-1000mの上空の風向は此の例が最も良く 2つの観測点を結んだ方向

と一致している。両地点の電位傾度の記録を重ねてみると各々の降雪 cellによって与えられた

電位傾度の擾乱の継続時間はほぼ同じであって,平均 3分前後の位相差が認められ,この降雪

cellの移動速度は 7mjsec程度である。 従って最初の正の雪が降り出してからわづ、か 3分佼の

聞に電位傾度が負に変った事を示しており,第 3章の班論から雲!底が 500m以下と推定され,

冬期積乱雲の電所分離過程は雪片

やアラレの落下r~1/こも行なわれる

と考えられる o 之は大小の雪片戒

いはアラレなどの相互の衝突によ

る摩際電気の発生lこ依る所が大き

いのではないかと考えられる。次

lこもう一つ注目しておかねばなら

ない乙とがある。即ち第,第 31図

lζ於いて明らかな様に, 7時 20分

から 8時 8時から 8時 30分, 9

時 10分から 9時 35分, 9時 37分

から 10時 20分までの 4個の単独

積乱雲の中で,第 2番目の 8時~

8時 30分lと通過したものを除い

て全部が,農場では II.4.の第 12

図に示した A,型の状態であり,

理学部lと到達した時には C,型lと

変っている。従って第 1章で分類

した A,型は積乱雲の発達の過程

で現われる一時的なものである事

が判明した。まだはっきりしない

のは C,と D,型の区別である。弱

い正電場を与える部分の位置が

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第 32 図

Fig. 32.

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152 織笠桂太郎

actJve centerの風上になったり風下になったりすることなので,積乱雲の中の気流の状態にも

関係すると思うが,電荷分離機構を考える上Jこ考慮すべき問題であると思う。第 32図はこの日

の3時に発生した雷雲であるが Dl型を示し actJvecenterの風上lこ正電荷の部分が出来てい

る。正電場は両地点とも全く同じ強さに観測されているにもかかわらず,負電);%7;は理学部では

半分以下l乙減少している。従って正電荷の部分は負電荷の部分より安定であり,与える電場が

弱い ζ とから考えて比較的高いと ζ ろに位置しているのかも知れない。もし之が当っていると

すればとの正電荷は比較的軽い物質で構成されていることも予想される。又雷鳴を伴った時刻

には電位傾度が正に急激に増加しておりしかも強い正のアラレ又は大雪片が降っているので,

放電を伴う程の帯電が行なわれるためにはアラレや雪片の集中的な落下に依って短い時間で多

量の電気量が運ばれる事が必要である事を暗示しているものと思われる。

VI. 冬期の手稲山頂での 2点観測

今までは平地に於ける観測だけで種々議論を進め

て来たのであるが,一歩進めて高度差に依る相異

Jえがあるかないかを調べることは興味ある事であ

る。 以下簡単に 1960年 1月lζ手稲山頂及び、その

下のパラダイスヒュッテの 2地点で行なった結

果を述べよう。 第 33図lζ示した手稲山は海抜

1023.7 mで乙の山頂に観測点を一つ設け,その北

東約l.3km,海抜 500mのパラダイスヒュッテに

もう一つの観測j点を設け空中電位傾度と降雪の電

荷の同時測定を行なった。 第 34図はその一例で

積乱雲からの強い燦雪を伴ったものである。図の

上に示したのが手稲山頂(M.T.)で下に示したのが

パラダイスヒェッテの記録である。縦軸が晴天の

THE 13M OF rSHIKARI

第 33図

Fig. 33.

電位傾度を 1とした電位傾度の値で,破線で示したのが晴天の電位傾度であるがこの絶対値は

平田更正を行なう事が出来なかったので不明である。図の上lζ示した+,ーの記号は降雪の

荷電符号である。図から電位傾度と降雪の荷電符号-との逆相関はほぼ成立し,両者共平地の結

果とはあまり変りはなく,正電荷が多く観測されると電位傾度が減少する傾向も顕著に現われ

ている。 次lζ第 35図l乙於いて山頂の正の電場はパラダイスの正電場の約2倍以上, 逆lこ負電

場はパラダイスの方が2倍以上大きく観測されている。この積乱雲の帯電状態が両地点の上空

附近を通過する聞にあまり変らなかったとすれば,明らかに正電荷は高いところに,負電荷は

かなり低いところを通過したと考えられる。之は単独積乱雲であるから, 第 32図の雷雲の場

合の様に負電場-が非'ií~' ~と変化し易いので疑問は残るが少なくとも正電場の相違は明瞭に現われ

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降雨及び降雪1<:伴う空中電場の擾乱 153

JAN.29, 1960

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WEAK

50 16.h

附Eo.4T

第 34図 手稲山に於げる 2点観測

Fig. 34. Tow points observation at the Mt. Teine.

ていると,思われる。従って積乱雲の正に帯電した部分は軽い物質で構成され負に帯電した部分

よりも高い所にある事は確かと思われる。 又第 36図は積乱雲からの弱い降雪を伴った場合で

電位傾度は正で降雪の電荷は負が圧倒的に多く,全く平地l乙於ける結果と変らない。しかも比

の例ではしばしば正の降雪が観測されているが,その様なときには電位傾度が減少する傾向が

明瞭lと示されており, 晴天の電位傾度を堺Iとして wavepatternを形成しているのも面白い

(山頂9時から 10時の間L以上海抜 1000mの山頂と平地の結果l乙目立つた相違が発見されなか

ったことから,雪は主としてそれ自身が生成される所で帯電すると解釈する乙とも出来るし,

もう一つ生成から地面K到達するまでの空間が帯電の過程lζ含まれると云ふ解釈の仕方がある

と考えられ,之についてはいくら ζ こで議論しでも結論は得られないので更に今後の研究がま

たれる事である。強いて述べれば第 3章の理論からは後者l乙平配が上りそうである。

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154 織笠佐太郎

JAN.29、1960

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ESE2.8 E2.0 SI.7 10-ClIW09

第 35図 手稲山に於げる 2点観測

Fig. 35. Tow points observation at the Mt. Teine.

SE2.2

JAN27, 1960

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第 36図 手稲山に於げる 2点観測

Fig. 36. Tow points observation at the Mt. Teine,

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降雨及び降雪lζ伴う空中電場の擾乱 155

VII. 冬期積乱雲の帯電機構に関する一つの提案

雷雲の帯電機構については多くの研究者によってしばしば論ぜられているが,冬期積乱雲

だけlとしぼって論ぜられた例は殆んど見当らない。それで今までの観測事実だけをもとにした

一つのモデノレを考えて見る事にする。先ず第 1I乙夏冬を通じて積乱雲が最も強い電荷分離を行

なう乙とは明らかであるが,この積乱雲の中でもあまり活滋でないものは普通の層雲からの降

雪lζ伴う現象と全く変らない。従って普通の層雲や乱層雲より異常な強い帯電が行なわれるた

めには,強い上昇気流を持ち強い降雪を伴うものでなければならない。既存するイオンや電場

lζ依存する理論以外に乙の特別な条件を特に必要とする様な電荷分離機構としては Reynolds

の氷粒摩擦説,吉田町の氷の摩擦破壊の実験, Kahlar川の雪片の摩擦実験などがある。 乙の

様な氷粒の摩擦機構を支持する様な筆者の観測事実を以下に述べる。

第 27図の 23時 26分頃にはアラレと雪片が混合して強く降っており 1個当り 1xlO-1

esu程度の大きな値の電荷を持ったアラレが観測されたが, 23時 40分以後に正電荷を持った

大きさの揃った小粒のアラレだけが単独で showerの様l乙降る事がしばしばあったが, このア

ラレの電荷は非常に小さく+10-4 esu以下であり, ζの様な時はあまり目立った電位傾度の変

化もない。之は雪片とアラレの摩擦が強い帯電には必要である事を示している。第 37図はテ

JAN. 29, 1960 φφ t t ト Hφ • t t← ttt争ト t +ト+++++HH ++ + -++ +H-Hド+

12

10 M.T.

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20. 10 20 30 40 50 21. 10 ト-0120 30 I 40 50 22. MAX.2XIO-'-5XI0-' WIND DROPS

M1N.2X由1-4E.S.u

++ + + P.H

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20 10 20 30 40 ω 21. 10 20 30 40 50 22. f

NO WIND STOPPED MEASURING

SEI.7 ENEI.I SE 1.1 IOCb,X.09

第 37図 手稲山に於げる飛雪による正電場

Fig.37. Positive五eldpattern caused by blowing snow at Mt. Teine.

17) 吉田順吾, 1944: 氷の摩擦破壊に依って生ずる電気並びに雷の電気の発生機構.低温科学,第 1輯, pp.

149~187.

18) Kahlar und Dorno, 1925: Ann. d. Phys., Bd 77, 71 S.

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156 織笠極太郎

イネ山頂lと於ける飛雪の観測で, 地上の軽い新雪が強風で 50m以上も高く舞い上った時に生

じた電位傾度の擾乱で,図の見方は第 6章で述べた通りである。図から明らかな様l乙山頂だけ

lと起った現象である事は間違いない。電位傾度は正で晴天の時の 12倍にも達している。落下

して来る雪片の電荷は明らかに負が多く一般の降雪時と同様な逆相闘を示しており,正電荷が

多く観測されると電位傾度が減少する傾向もみられることは非常に興味ある現象と云わねばな

らない。乙の現象は単に地上の積雪が舞上って落ちて来ただけであるから,帯電機構を之に当

はめるとすれば,今のと乙ろ雪片の摩擦及び破壊以外にない。しかも負電荷が多く観測された

のであるから負電荷を持った雪片が多く舞い上ったと考えられるので負の電位傾度を与えそう

なものであるが,逆に強い正電場を与えている事から,負電荷を持った雪片よりはるかに軽い

正電荷を持ったイオン状のものが空聞に残らなければならない。吉田の実験を考慮lζ入れて之

は正のイオンと考えた。即ち大小の積雪片の摩擦によって比較的大きな雪片は正に比較的小さ

な雪片は負に帯電すると同時に正イオンが発生すると考えた。これを考慮して,もう一度現象

をふりかえって見ると,大きな雪片は小さな雪片に比較して舞い上る数が少ないのは当然であ

るから負の雪が正の雪よりも多く観測される乙とが説明出来る。又同時に正イオンが発生する

ので之は最も長時間空中lζ浮遊しているので正電場を与える事も説明出来る。落下して来る雪

片の電荷を調べてみると 1回毎の電気量を平均してみると負の方が正の1.5倍以上になって

いるので 1個当りの電荷も多分負の方が大きいであろうから,上述の吉田の実験をもとにし

た飛雪時の電荷分離の機構のモデルは相当の可能性を持っていると言わねばなるまい。しかし

実際にまだ飛雪時のイオンの測定がなされていないので,之を行なって確認しなければならな

い。次に実際の降雪の 1個当りの電荷の測定結果を吟味してみよう。第 10図の Aの部分では

正が1.25x 10-' esu,負が 2.5x 10-' esuで負が正の 2倍, sの部分では正が1.3X 10-' esu,負

が2.1X 10-4 esuで負が正の1.6倍, 1957年 12月 20日(雪氷川第 7図)の単独積乱雲では正が

6 X 10-3 esu,負が 9.1X 10-3 esuで負が正の1.5倍になっており何れも負電荷が正電荷よりも大

きい事を示しており,摩擦の際に同時にイオンを発生する吉田の実験結果を,もう一度普通の

雪片について同様の実験を行ない吟味してみる価値が充分にあると思う。この機構がもし実際

lと行なわれているとするならば第 2章で述べた一般的な結果の中で,雪片が負に帯電し易いと

云うのは上述の機構で説明出来る。次ぎにあげられる事は,第 2章で述べた様l乙大雪片が正lζ,

小雪片が負lζ帯電する傾向がある事は Kahlarの雪片の摩擦実験と一致し, 雪片が負でアラレ

が正の電荷をもっ傾向がある事は, 符号は一致しないが Reynoldsの氷粒の摩擦実験とほぼ一

致する。それはアラレは'n~ に正であるとは限らず負になる場合もあるからである。以上の結果

を総合して,冬期積乱雲の主電荷分離機構は雪の摩擦破壊によるものと考えるのが妥当であろ

う。以上の結果を用いて冬期積乱雲の帯電機構に関する一つのモデlレを考えてみよう。

積乱雲の中心部の上昇気流の烈しいJiJTで雪片やアラレなどが衝突した際tc,大雪片やアラ

レなどは正lと相;電してほぼその中心附近に集り,小雪片やその他の小粒のものは負lζ帯電して

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降雨及び降雪に伴う空中電場の擾乱 157

上昇気流で更にその上方や外周lζ運ばれ,更にその外周Iζ正のイオン状の軽いものが吹き上げ

られて広がるととが予想される。 乙の結果,夏期の雷雲についての Simpsonの雷雲のモデJレ

とほぼ同様の電荷分布が得られる。且つ又正の比較的重いものは軽い負の雪よりも早く落下し

雲底附近では次第に負電荷が優勢lζなる。又前述の様lと負電荷が正電荷よりも大きいとすれば

増々雲底附近の負電荷は優勢となり強い負電場を与える乙とが予想される。実際の例では一般

に正電場よりも負電場が強い事が多いので,之で一つの問題は片附いた。又積乱雲の中心附近

でも負の降雪が見られ,正の降雪と明瞭に分離されて降る場合とばらばらに混合して降る場合

とがあるが,何れの場合も正の大雪片や正のアラレの量に較べたら遥かに少ないので,之も上

述のモデjレの予想、と一致する。正電荷を運ぶ降雪が大粒のアラレであるならば此の電荷分離は

最も効果的に行なわれる事になる。以上の様lζ考えると積乱雲の両端では電場は比較的弱い正

で負の小雪片が多く降り,降雪強度は弱い。文中心附近では常に正の大雪片かアラレが強く集

中的に降るので降雪強度が強く,電場は強い負を示すことが想像される。この様な状態の積乱

雲が次ぎ次ぎと連続的l乙通過する場合lζは第 38国の上の様なモデJレが考えられ, 之によって

『レ/実線……電位傾皮1第38図 冬期積乱雲の電荷分離機構についてのモテ)V (点線 降雪強度)

Fig. 38. The model of charge separation mechanism

for Cb cloud in winter.

その下lと示した様な結果が得られると予想、される。そ乙で実際にこの結果と一致する例が観測

されていれば上述のモデノレが生きて来るのであるが,之に最も近いと思われる例をあげると,

第 11図の例が比較的之lこ近いものと思われる。即ち 11図をふりかえってみると,負電荷を持

った小雪片が比較的弱い正電場で観測され,正電荷を持ったアラレが強い負電場で観測されて

おり,正電場では降雪強度が弱く負電場では圧倒的lζ強い。しかも此の負の電場は著者が観測

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158 織笠桂太郎

したものの中で最も強かったものに属し, scale outのため不明だが,多分 5COOV/m lC達して

いるものと思われる。 第 29図の 2点観測の場合にも正電荷を持ったアラレが強く降った時l乙

-5000 VJm以上の強い電位傾度を示しており, しかも正電場ーよりも負電場が強い傾向が明瞭

に見られた。以上の事から積乱雲の強い帯電にはアラレが必要である事を暗示しており,之は

アラレの落下速度が最も早い事から中心附近の正電荷が最も早く持ち去られ,電荷分離が速や

かに行なわれるので当然のことと考えられる。その証拠と思われる一つの例を次lζ述べる。冬

期の雷雲について 2回程観測されているが,之は札幌では実にめずらしい乙とでひと冬に l四

位しか発生しないもので全く発生しない年の方が多いのである。 1958年 1月18日及び第 32図

の 1961年 3月3日の何れの場合も強いアラレが降りはじめると同時に或いは降っている最中

に雷鳴が発生している。

本軍:のはじめで述べたように上昇気流の弱い不活滋な積乱雲からの降雪は,一般の層雲か

らの降雪と同じ様なf告電をしている事や負電荷が正電荷よりも優勢だと云う観点、から,一般の

層雲や乱層雲中の電荷分離機構も本質的には積乱雲と同じものと考えられ,氷片のお互の摩擦

lと起因しているものと考えられる。即ち氷晶が或程度大きくなると互に衝突して大小の氷品が

夫々正負に帯電し同時に正イオンも発生するならば,この大小の氷品が結合して次第に雪片と

して成長するにつれて,正電荷は負電荷より小さいために正電荷をもった氷品が次第に減少し

負の雪片が多くなるととが想像される。乙れが特lζ効果的に行なわれるためには乙れらの氷品

の築団と発生した正イオンを分離する程度の上昇気流があれば良いのでこの程度の上昇気流な

ら一般の層雲や乱層雲でも充分に伴う可能性がある。以上の事から一般の層雲や乱層雲からの

降雪が負が圧倒的に多い事の説明が氷粒の摩擦理論で説明出来たのであるが,この様にして出

来た静電気は,一旦分離した電気が再結合し小さな方が打消されて大きなものが残り,発生し

たイオンによって持ち去られた分の何%かがこの氷品の集団l乙残されて出来たものであるから

非常に小さなものであるに違いない。そこで発達した積乱雲からの強い降雪の場合の降雪の電

荷と一般の層雲や乱層雲からの降雪の電荷を比較してみると前者の方が後者の 10-100倍又は

それ以上大きい場合がある。一般の乱層雲からの降雪では雪片が大きい程負電荷量が大きくな

る傾向があるが,之は前述の氷品の摩擦理論でも説明できる。しかし積乱雲からのはげしい降

雪の場合はもはや ζ の傾向は陰をひそめるのが通例である。これは一旦成長して大きくなった

雪片やアラレなどが特に強く衝突し合って摩擦ばかりでなく破壊も起り,更に強い上昇気流を

伴う様なときは比較的多くさんの氷品が出来るからお互の衝突のチャンスも大きくなるので帯

電量が大きくなる。こんな事が一般の層雲や乱層雲と積乱雲との相違点ではないかと考える。

上昇気流が強ければ一旦発生した静電気は速やかに三つのグループ(即ち中心の正, その周囲

の負, 更にその外周の正イオン)iζ分離され異なった符号の雪片が再結合するチャンスが少な

くなる。之も一般の層雲や乱層雲と異なる見逃しではならない特徴である。

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降雨及び降雪K伴う空中電場の擾liL 159

結論

電位傾度と降水の荷電の符号の逆相関々係は降水が地上lζ運んだ正味の電気量と逆符号l乙

雲が帯電するために見られる現象で,降水の始め又は降水強度が急増する場合は降水の持つ空

間電荷の影響で正相関になり得るもので,常にしかも何れの場所でも乙の逆相関が成立するも

のではない。

雨滴や雪片の帯電機構は大気中のイオンや電場に依存する機構が第 1近似として作用する

ものでなく,雨滴及び雪片それ自身が気象擾乱lと助けられて帯電する,雨滴の分裂,雪片の融

解,雪片の摩擦などの機構が妥当である。

積乱雲からの強い降水を伴う場合は,降雨の場合も降雪の場合も全く同じ電位傾度の変化

の型が得られており,主電荷分離機構は両者全く同じものと考えられる。しかも冬期lζ発生す

る雷雲によって示される電位傾度の擾乱の型も上述の型と全く同じものである事が確認された

ので,夏期l乙於ける一般の雷雲の主電荷分離機構も OOC以下の氷相が存在する範囲で主として

行なわれるものと予想される。一般の層雲や乱層雲の帯電は主として降水の荷電輸送lζ依存し

ているが,積乱雲の場合は強い上昇気流に依存している所が多いので,この効果を合理的且つ

有効に作用させる事が出来る氷粒の摩擦破壊理論が最も有力な雷雲の主電荷分離機構と考えら

れる。

降水lこ伴う降水物体のもつ空間電荷の影響は相当大きなものである事が確認され,地上観

測だけに頼って雲の中の電荷分布を定量的に扱うことは非常に困難である。

ζ の研究を更に一歩進めるためには更に数多くの観測点を増設し雲の帯電の変化の模様を

更に詳細にとらえる事が必要である。

謝辞

比の研究は終止北大理学部孫野長治教授の懇切な指導のもとに行なわれたもので,著者は

同教授に深甚なる謝意を表する。又2点観測のために露場を提供して下さった道立農業試験場

並びに観測に協力していただいた旭川学芸大学助手桜井兼市,北大理学部地球物理教室修士課

程木村忠志の両君lζ深く感謝の意を表する。終りに種々の気象観測データ F を提供された札幌

管区気象台lと対し厚く御礼を申し上げる。

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160 織笠桂太郎

12. On the Disturbance of the Surface Electric Field

Caused by Rainfall and Snowfall

By Keitaro ORIKASA

(Department of Geophysics, Faculty of Science, Hokl王aidoUnivers町)

Simultaneous observations of the surface electric fields, the charg巴 onraindrops and

snow particles, the form of snow particles and intensity of rain and snowfall were carried

out from Mar. 1956 to Apr. 1960 at Hokkaido University, Sapporo, Japan. In the winter

of 1960 and, 1961, similar observations were carried out simultaneously at two stations

l.2 km apart by two observers.

Analysing the data of these records, the fol1owing conclusions were reached. When

the rainfal1 was light or steady, positive field patterns relatively smal1er than those of fine

weather and negative field patterns were observed, but when there was light or steady

snowfall, positive五eldpatterns wer巴 observed.

During continuous heavy rain or snowfall, and heavy continuous rain or snow shower,

wave patterns of the五巴ldwere oft巴nobserved.

When various form of snow particles alternately fell from Cb cloud, some relation

between th巴 formof snow particles and the sign of the charge on them wer巴 found.

In the almost all the cases of positive or negative fields and in the wave patterns of

五eld,roughly inverse r巴lationswere found, between the sign of五eldand of the charge on

rain or snow particles. In contrast with this, when rapid increase of intensity of rain or

snowfall occurred, the same sign of the field and charge on particles were found

But the time at which the field changed its sign did not exactly coincide with that of

change in sign of the charg巴sof snow particles, that is, the changes in the field preceeded

or follow巴dthe charges of the particles. It was observed that continuous fall of snow

particles of the same sign changed suddenly to that of particles having the opposite sign.

The time interval required for such a change was about 10-30 sec. Furthermore, when a

remarkabl巴 depressionor convexity in the field pattern suddenly occurred with out changes

in sign, the sign of charge on snow particles often changed.

Thus Wilson's ion capture theory can not always be applied to explain the inverse

relation mentioned above.

To explain the invers巴 relationmentioned above, the author considered that the rain

or snow particles were mainly electrified in the cloud and carried both positive and nega-

tive charges simultaneously down to the ground, consequently the cloud may be electrified

to the sign opposite to the net charge which was carried down to the ground by the parti-

cles. This theory was confirmed by calculation and by the results of the simultaneous

observations at two stations

Considering many results which are described in this paper the author concluded that

the electrification of snow particles may be caused mainly by friction of the snow particles

with each other.