10no. 378 010. 9 no. 378 010. 9 すべての命はつながり合う カシオ計算機株式会社...

2010 9 月号 発行 378 No. 雨乞い©Mohammad Golchin(イラン) 2 ESD3 ESD8 9 10

Upload: others

Post on 08-Apr-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

2010年 9月号発行 378No.

雨乞い©Mohammad Golchin(イラン)

ア ジ ア 太 平 洋 の 人 を つ な ぎ 学 び を 育 て る

巻頭言 

木曽 

功氏・・・・・・・・・2

特集E

SDへの

とりくみ・・・・・・・・・3

教材紹介と活用事例

ESD日米教員交流プログラム

奈良文化遺産

交流プログラム・・・・・・・・・8

女性のための識字

花王アジエンスとの

合同プロジェクト・・・・・・・・・9

事業カレンダーと活動メモ・・・・・・・・・10

イー・エス・ディー

�No. 378 �010. 93 No. 378 �010. 9

ESDがめざすもの

ESDの源流は識字事業に遡る

 絵本の読めない人がいる。

 

アジア諸国と「子どもの本の共同出版事業」を進

めるうちに、こんな問題が浮かび上がりました。そ

こで識字事業を始めたのが、約30年前のことです。

良い資料や試みがあればみんなで共有し、教材制作

や研修につなげ、地域協力として行ってきました。

その結果、識字に関する制作物は67言語665点に

のぼりました。

 

識字事業で目指したのは、教育の機会に恵まれな

い人でも質の高い教育が受けられることと、近隣諸

国が互いによく知り合うこと。これらの視点は、い

ま振り返ると、実にESD的です。

ESDはどこでも可能だ

ということを実証したい

 ESDという概念を持ち込むと、そこに住む人た

ちの意識が変わります。例えば、マレーシアでマイ

ノリティに識字を教えていた人が「我々の識字を少

し変えて、自然に関す

る昔話を少数言語で絵

本にしよう」となったり、

教材制作

の際に「テーマが環境問題と

なっているも

のの、文化的な背景も考えよう」となったりしたの

です。

 ESDは、先進国だけで考えるものではなく、世

界中で行うべき課題です。そこでACCUでは、今

まで培ってきたノンフォーマル分野も機軸に置き、

どうすればよりESDなのか、常に意識して事業を

進めています。ESDというのは、ある意味では哲

学であり、ある意味では運動であり、ある意味では

方向性なのだと考えられます。

教材作りがネットワークを生む

 ACCUはアジア太平洋の国々と協力して、環

境アニメ「プラネット」など良質なESD教材を

制作してきました。2年前には日本国内でも事例集

「ESD教材活用ガイド」を作り、ユネスコスクー

ルをはじめ教育関係者から大変好評を得ています。

 

一方で、セミナーやプログラム、フォトメッセー

ジコンテストなどを通じてESDの理解を広め、

ESDを牽引し伝えていく人を増やしていくことに、

力を入れています。ユネスコスクールへの支援は、

この延長にあります。

 

このように、教材づくりと人づくりを地道に進め

てきたことで、一朝一夕では決してできないネット

ワークが築かれACCUの大切な財産となっていま

す。

 ACCUは、個人の気づきが次なる行動へとつな

がる一助になりたい、と考えています。地域性から

生まれるコミュニティのサイクルが、世界とつながっ

て大きな円を描き、ESDが横のつながりの中で進

んでいく。これからも、文化を基礎に、ESDの3

領域「社会・経済・環境」に包括的にとりくんでい

きます。

2005年から始まった「国連ESDの10年」が、いよいよ後半にさしかかりました。

昨年はドイツのボンで「ESDユネスコ世界会議」が開かれて、今までの総括と今後の展望が論議

され、ACCUもセッションでESD評価手法に関する報告を行いました。

ACCUはESDをどのように捉えて活動しているのか特集します。

初めてESDという言葉を耳にした

方は、この言葉が何を示しているのか

まったく分からないかと思います。正

直、私もユネスコ国内委員会の事務総

長に就任する前はESDを知りません

でした。ESDとは「Education for

Sustainable Developm

ent

」の頭文字

をとった略語であり、持続可能な社会

の担い手を育む教育を意味します。環

境問題をはじめとする諸問題が山積み

する中、経済情勢にしても、社会の仕

組みにしても、大きく変わろうとして

おります。人が仕事を求めて移動する

現在のグローバル化した社会におい

て、このままではサステイナブル(持

続可能)な社会が築けないのではない

かという懸念がいたるところで指摘さ

れております。

このような状況の中で、日本も含め

国際社会では持続可能な社会、つまり

どうすれば環境や経済、そして文化を

次の世代に受け継いでいけるか、を考

える人間を育むための教育の必要性が

強く求められています。そういった意

味でもESDは非常にポテンシャルの

大きい概念です。ESDは、環境教育、

国際理解教育、ジェンダー教育といっ

た個別の○○教育といったものではな

く、それらを包括した視点であります。

文部科学省及び日本ユネスコ国内委

ESDの基本的な考え方持続可能な発展のための知識、価値観、行動等

環境教育

国際理解教育

エネルギー教育

その他関連する教育

世界遺産や地域の文化財等に関する教育

ユネスコスクールのリーフレット

ESD の概念図関連する様々な教育を“持続可能な社会の構築”の観点からつなげ、総合的に取り組むことが必要です

「ユネスコスクールと持続発展教育(ESD)について」(2010年3月 日本ユネスコ国内委員会)より作成

員会では、ユネスコスクールをESD

の推進拠点として位置づけ、その加盟

校増加に取り組んでおります。ユネス

コスクールは、ユネスコ憲章に示され

たユネスコの理念を実現するため、平

和や国際的な連携を実現する学校で、

ユネスコが認定するものです。日本に

は207校のユネスコスクールがあり

ます。2014年のDESD(国連持

続可能な発展のための10年)最終年ま

でには500校以上の加盟を目標にし

ております。ユネスコスクール加盟校

からは、持続可能な社会の実現のため

に、地球規模の課題を自分たちの地域

の連携の中で解決しようという意識が

子どもたちの中に生まれ、学びの中に

自信や誇りが育っているという声も届

いています。

ESDに該当する活動は、ユネスコ

スクール加盟校以外でも既に多くの学

校で取り組まれていると思います。自

分たちの活動を一度、ESDの視点で

見つめ直してみてください。

私たち人類の未来を賭けた取り組み

としてESDが、世界の大きな流れに

なることを期待しています。

前文部科学省国際統括官

木曽 功

FOREWORD巻頭言

�No. 378 �010. 9� No. 378 �010. 9

すべての命はつながり合う

カシオ計算機株式会社CSR推進室では、

2004年から企業の社会貢献活動として子どもた

ちへの企業施設見学・授業をおこなってきました。

ところが社会状況が変化し、子どもたちの不登校、

いじめ、自殺などの悲しい出来事が起きてきました。

社会構造が変わり、環境破壊や貧困などの社会的課

題が山積する今日、子どもたちへの授業で何をすべ

きなのか? 私なりに到達した結論が「命

の大切さを伝えること」でした。

こうして2007年6月から始まった

「命の授業」は、命の大切さを伝え、気づ

きと行動を促す体験型の出前授業です。

90分授業は、命の大切さの理解、環境に

配慮した商品技術の体験学習、環境保護

などで構成しています。2010年7月

までに55校2,501名の子どもたちと

触れ合いました。

「ミナ」に見入る子どもたち

命の大切さを伝える……それは簡単で

はなく、相当しっかりした教材が必要に

「命」を視覚的に訴えるアニメ教材の力

若尾 

久(わかお・ひさし)

 

子どもたちに向けた「命の授業」が反響を呼び、全国

各地の学校からの要望が増えている。カシオ計算機株式

会社CSR推進室担当課長、環境経営学会理事

楽しみながら学ぶ環境アニメーション教材PLANET(Package Learning Materials on Environment)

バラエティに富んだ日本の事例集

日本各地の小・中学校で実践されているESD事例を

募り、その中から13例を取材し、教材を切り口に紹介し

ているガイドブックです。

地場産業から消費者教育を学ぶ「松阪もめん」、輸入が

ストップした時を想定し自給自足の生活を体験する「は

らぺこ体験」、ユニバーサルデザインを通して国境を越え

た他者理解を考える「ピクトサイン」など、様々な教科

に対応したユニークな事例を集めました。

自然を題材とする教材が多いなか、気仙沼市面瀬小学

校の事例「面瀬川」は、6年間一貫して、多彩なアプロー

チで環境教育に取り組む好事例です。年に数回フィール

ド調査を行い、外部の専門家や保護者の厚いサポート、

教師を支えるしくみなどが充実のカリキュラムを支えて

います。

発行年:2009 年印刷部数:12,000 部日本のユネスコスクールや教育関係者に配布

未来へのまなざし

興味深いアジアの事例を掲載

アジア太平洋地域で行われている草の根の活動を

ESDの視点で捉え直し、広く紹介することを目指した

一冊。

2006年に開かれた「ACCU|UNESCO 

アジア太平洋地域持続可能な開発のための教育推進セミ

ナー」(ACCUとユネスコ・バンコク事務所が共催)で

の基調講演、事例発表、そして視察現場の実践事例をま

とめたものです。

ESD事例は、パキスタンのジェンダー問題、フィリ

ピンの貧困削減への取り組み、バングラディシュの防災

対策、日本のコミュニティ開発と文化の多様性、ニュー

ジーランドの環境教育の5件で、Q&Aや専門家によ

る講評も収録しています。

「命の授業」を主宰し、教材に「プラネット」を使用している若尾久氏に

その魅力とESDについてお話をうかがいました。

PLANET 1「ミナの村と川」(17 分)PLANET 2「ミナの村と森」(18 分)PLANET 3「ミナの村のごみ騒動」(22 分)PLANET 4「ミナの防災村づくり」(20 分)

DVD 日本語・英語同時収録 各 2,500 円(税込み)(1、2 はシナリオ入りガイドブック付き)詳しくは ACCU ショップへ。http://www.accu.or.jp/jp/shop/

ESDACCUの教材

ESDACCUの教材

なってきます。2009年、私はさらに良いプロ

グラム作りを目指し、自然を題材にした視覚的に

訴える教材をHPで検索してみました。その中で、

ACCUのHPに、自然を題材にし、植物・動物

そして人間の相互に関連する「命」を主体としたア

ニメ「ミナの村と森」を発見しました。「求めている

教材はこれしかない」と直感しました。

実際に授業で使用してみると子どもたちの反応は

大変なもので、100名の子どもたちがわき目もふ

らず、歓声をあげながら

アニメに見入る姿は、予

想を大きく超えるもので

した。「ミナの村と森」は、

「命」を子どもたちの視覚

に訴えることで、心に強

く刻む役割を果たしてく

れています。また、立場

の違うさまざまな人たち

が環境の専門家の指導を

受け、力を合わせて失わ

れた自然を復活させるス

トーリーは、子どもたち

の意識の醸成のみでなく、

主人公はアジアに住むミナとその家族。村で起こる様々な環境問題にぶつかり、村人たちと一緒に学び、活動していくことで問題を解決していきます。

行動への導きを確実にするものとなっています。

「命の授業」は、〝真実を伝えることで子どもたち

に多くの気づきを提供し〟、〝本気で語りかけること

で子どもたちの意識の高揚を図り〟、そして〝変革を

促すことで子どもたちの行動を喚起します〟。「ミナ

の村と森」はこの循環を促す役割の一端を担ってく

れています。

ESDACCUの教材

「命の授業」風景

特国

算理生 音

図家

道外総

ESD対応教科・領域小学4年

各事例がどの教科・領域に対応するか、この図で一目瞭然!

発行年:2007 年定価:1,050 円(税込み)

ESD教材活用ガイド

ESDの10年に向けた

アジア太平洋の試み

持続可能な未来への希望をこめた

�No. 378 �010. 97 No. 378 �010. 9

言葉や文化を超えた活発な交流

ユネスコが世界的に取り組んでいるESD(持続

発展教育)。その推進の鍵を握るのは、子どもたち

を「持続可能な社会づくりの担い手」として育む立

場にいる教職員ひとりひとりです。

「ESD日米教員交流プログラム」は、アメリカ

と日本の先進2カ国の教員がESDをテーマに相

互交流し、それぞれの国でESDの推進役を担うと

いう、まさに時宜を得たプログラムです。

今回参加したのは、米国派遣日本教員47名、日本

招へい米国教員48名、計95名です。それぞれの国で

2週間にわたり、ESD実践校での子どもたちの

生き生きした笑顔との出会い、ESDベストプラク

ティス(好事例)の共有、心ふれあうホームステイ

体験と、多角的かつ実践的な交流をしました。

5月に開催されたサンフランシスコでの合同会議

に続き、7月3〜4日には日米教員全員が一堂に会

し、東京でワークショップ形式の合同会議が開かれ、

フルブライト・ジャパン

ESD日米教員交流プログラム

今年から開始された「ESD日米教員交流プログラム」。日

*1

米両国政府の共同提案と資金提供により、フルブラ

イト・ジャパン(日米教育委員会)が主催する特別教育交流プロジェクトです。

ACCUは日本側協力パートナーに選ばれ、本プログラムを運営しました。

フルブライト・ジャパン(日米教育委員会)フルブライト交流事業を通し日米間の教育・文化・学術交流を推進するため、日米両国間の協定により 1951年に設立された国際機関。以来、フルブライト交流事業に加え、米国高等教育に関する情報提供、ならびに日米教員交流プログラム事業を実施している。http://www.fulbright.jp

ESD教員交流

最終日には「環境」、「食育」、「エネルギー・資源」、

「国際協力」のテーマに分かれ、グループごとに活発

な討議がくりひろげられました。グループ発表では、

日米共同のESD活動を提案するなど、交流の成果

が早くも結実した内容が多く見られました。そこに

は日米教員が言葉や文化を超えてつながりあう一体

感とESD実践への使命感が感じられました。

道を開け。日米共通のアジェンダ

プログラムを総括してデビッド・H・サターホワ

イト

フルブライト・ジャパン事務局長は、「日米2

カ国は世界のGDP大国として地球の未来に責任が

あります。私たちひとりひとりにも教育者として、

リーダーとして、特別な責任があります。このプロ

グラムは両国民の貴重な税金により実現しました。

ここから成果をうみだすのは皆さんの両肩にかかっ

ています」と参加者への期待を語りました。

夜の日米合同会議レセプションでは、ジョン・

V・ルース

駐日米国大使、木曽

文部科学省国際

統括官、日本ユネスコ国内委員会事務総長、日米教

育委員会委員長、張

富士夫ACCU会長、クリスト

ファー・パワーズ

I*2

IEスチューデントエクスチェ

ンジダイレクターが挨拶し、草原

克豪

フルブライ

ト・ジャパン委員、拓殖大学名誉教授、日本ユネス

コ国内委員会委員が乾杯の音頭をとりました。

木曽

日米教育委員会委員長からは、「ESDは

はじまったばかりです。教員の皆さんは新しいムー

ブメント(動き)を起こせる立場にいます。皆さん

はESDのパイオニアです、道を開く人です」との

激励がありました。

*1 日米両国政府(文部科学省と米国国務省)*2 IIE:Institute of International Educationの略。1919年設立。教育文化交流事業を通して国際相互理

解の促進を目的とする米国内で最も古い歴史を誇る非営利団体。フルブライト・プログラムの協力機関として米国内においてフルブライト研究員(大学院生)の派遣・受入業務を行っている。

DATA

選抜方法(日本教員の場合)応募資格:・ ESD の一部として日米交流を含む国際相互理解、また ESD のカリキュラ

ム開発や教授法などに教員として強い関心を持ち、プログラム参加中ならびに参加後にも積極的に ESD に関連した国際相互理解を深める活動に取り組む姿勢を持つ者

・小中高等学校で ESD に取り組んでいる教職員、あるいは環境教育、国際理解教育、エネルギー教育、防災教育、世界遺産や地域の文化財などに関する教育、その他、持続可能な社会作りのための担い手づくりに向けた教育を実践している、または実践に関心がある者

応募方法:学校ごとに学校長名で応募 1 校 2 名まで選考方法:書類選考募集方法:各県・政令指定都市教育委員会、首長部局などを通じた告知、フルブライト・ジャパンのウェブサイト、ACCU のウェブサイトで告知

プログラム内容 

<日本教員米国派遣>

2010 年 4 月 24 日(土)〜 5 月 8 日(土) 47 名・アメリカ社会と教育についてのオリエンテーション(ワシントン DC)・ 3 グループに分かれて地方都市へ移動。ESD 関連機関と学校を訪問、ホー

ムステイ体験。今回の訪問先は、コネチカット州ニューへイブン、ミネソタ州ミネアポリス、オレゴン州ポートランド

・第一回日米合同会議(サンフランシスコ)

<米国教員日本招へい>

2010 年 6 月 23 日(水)〜 7 月 6 日(火)48 名・日本社会と教育についてのオリエンテーション(東京)・ 3 グループに分かれて地方都市へ移動。教育委員会と ESD 実践学校・関連

機関などを訪問、ホームステイ体験。今回の訪問先は、北海道石狩郡当別町、宮城県気仙沼市、愛媛県松山市

・第二回日米合同会議 (東京)

ESDというテーマならではの深まりをみせた

日米教員交流。参加者の方がたは、このプログラム

を通じて築いた国際交流を持続発展させ、次なる

ESD実践に向かって飛び立っていきました。

文中の所属および役職はレセプション当時のものです。

ESD日米教員交流プログラムは、フルブライト・ジャ

パン(日米教育委員会)の主催のもと、ACCU(日本側)、

IIE(米国側)の協力により運営されました。

小学校 2 年生で英語の歌を歌う(気仙沼)

ルース 駐日米国大使草原 フルブライト・ジャパン委員

張 ACCU 会長

東京での合同会議にて

小学校で一緒に給食(松山)

道民の森野外活動で(当別)

今回参加した先生方は、2010 年 1 月からの公募への応募者の中から選ばれました。次回の募集については追って告知されます。

8No. 378 �010. 9No. 378 �010. 99

セン チャンダ SENG Chanda日本大学大学院文学研究科教育学専攻 博士前期(修士)課程二年生

カンボジアでは戦争の影響により様々な分野が悪化状況になった。カンボジアの開発には国際支援が不可欠になっており、特に日本の開発協力が目覚ましいです。教育分野には日本の支援が多く見られて、日本に教育学専攻で留学したかった。そして、2007 年に文部科学省の国費留学生として、日本に参りました。現在、日本大学大学院の教育学専攻の修士課程二年生になりました。

カンボジアでは社会・経済問題などにより、基本の識字スキルが習得できないまま大人になった成人たちがまだ存在しており、それらの成人特に女性に対する識字教育の取り組みに関心を持ち、それを修士論文のテーマにしました。修士論文に必要な情報や資料を手に入れるために大学院の先生に ACCU を紹介していただいて、そのきっかけ

で、SMILE ASIA プロジェクトという女性のための識字プログラムを知って、そして、もっとそのプログラムを理解するために、ACCU の教育協力課でボランティアをすることになりました。ボランティアの仕事では、SMILE ASIA プロジェクトのほかに、多くの識字教材も理解できるようになって、修士論文にも非常に役に立ち、カンボジアにおける識字の取り組みも日本の教育協力も理解できるようになりました。

@ACCUACCUで働くスタッフ&ボランティアによるリレーコラム

世界遺産を前に、みんなの目が輝く

ACCU奈良事務所は、文化遺産保護について

の多彩な研修やワークショップを行っています。

当プログラムは指導者を対象としたもので、毎年

開催し、今回で11回目を数えます。

研修内容を紹介すると、文化遺産の保護・保存

と活用、文化財と環境汚染などについての講義が

行われました。また、日本における文化遺産保護

の実際を体験してもらうために、世界遺産の法隆

寺や平城宮跡、京都の金閣寺のほか、登録を目指

している明日香村の文化遺産を訪問しました。

この事業の大きな特徴として、文化遺産保護に

携わる専門家だけでなく、地域の大学生や高校生

と交流して相互理解を図るということがあります。

今年も奈良大学や京都ノートルダム女子大学の学

生との意見交換、奈良市立一条高校の生徒との交

流が積極的に行われました。

横の連携を深めていこう

研修に参加した12名は、とても熱心に取り組み、

短い滞在ながら多くの学びがあったようです。

「このプログラムで文化遺産を訪れることがで

き、とても素晴らしい経験になりました。建築家

としていつもこれらの場所を訪れたいと思ってお

り夢が叶いました。また、若い世代の日本人や他

のアジア諸国との交流は良い機会でした(ブータ

ン 

Ms. Pem

a

/ブータン政府自治文化省文化遺産

保存局、建築家)」

「このコースはとても成功だったと思います。特

に日本や他の国の同僚と一緒に経験を分かち合え

たことはとても良かったです。このプログラムは

文化遺産保護の過程においてとても重要な役割を

果たしていると思っています。他国のことや、他

の研修生がどのように考えているのかを学び、お

互いに学び教え合うことができました。もっとも

重要なのは、私たちの関係を未来のために続けて

いくことだと思います。それぞれ国へ帰っても、

お互いコンタクトをとることは簡単にできるので、

お互いの文化遺産保護のために連絡を取り続ける

べきだと思います(ウズベキスタンM

r. Sukhrob

Tuygunovich Babaev

/文化遺産保護活用ブハラ

地方調査局文

化遺産活用課、

上級専門官)」

文化遺産保

護のため、互

いに学び、共

に活動してい

くことが大切

だと改めて感

じました。

奈良から発信、文化財保護

今年もACCU奈良事務所では、指導者のための文化財保護プログラムを実施しました。

アジア太平洋各地から同じ志を持つ参加者たちが集い、交流し、絆を深めました。

文化遺産保護指導者研修・交流プログラム

文・小林 

謙一(文化遺産保護協力事務所 

研修事業部長)

留学して識字を学ぶようになりました

石舞台古墳にて、臨地講義

DATA正式プログラム名:2010 年度国際教育交流事業学者・専門家招へいプロジェクト−文化遺産保護指導者研修・交流プログラム−期間:2010 年 6 月 21 日(月)〜 7 月 1 日(木)参加者:アジア太平洋地域の 11 ヶ国 11 名と中国からのオブザーバー 1 名

*1 識字:日常生活で読み書きができること。いま世界では、約7億5900万もの人(EFAグローバルモニタリングレポート2010、ユネスコ調べ)が、文字を読んだり書いたりすることができないとされている。その多くはアジア地域に集中し、半分以上は女性たちである。識字率の低い地域では乳幼児の死亡率が高い。

*2 SMILE ASIA PROJECT スマイルアジアプロジェクト:アジア女性への母子保健教育と識字環境の構築を推進するプロジェクト。アジア各国の「女性のための識字教育センター(LRC)」と協力して実施。ACCUの教育協力事業のひとつ。 

アジエンスとACCUの合同プロジェクトA

ア ジ ア ン

sian Bビ ュ ー テ ィ

eautyS

ス マ イ ル

MILE Aア ジ ア

SIA Pプ ロ ジ ェ ク ト

ROJECTが始動

2010 年度に発足した Asian Beauty SMILE ASIA PROJECT(アジアン ビューティ スマイル アジア プロジェクト)は、花王株式会社様のヘアケアブランド、アジエンスと ACCU のSMILE ASIA PROJECT による、アジアの女性の識字*1 能力の向上を支援する合同プロジェクトです。アジア 7 つの国と地域で展開するアジエンスならではの社会貢献活動です。 

ACCU は 2007 年から SMILE ASIA PROJECT*2 を展開していますが、今回新たにアジエンスからのご寄附による合同プロジェクトが立ち上がり、アジア 3 カ国(インドネシア・カンボジア・フィリピン)での女性の識字能力の向上と母子保健活動が一段と強化されることになりました。

・母親を対象とした識字クラスを運営・オリジナルの識字教材パッケージの提供・識字クラスの先生のトレーニングを実施・母親たちのコミュニティ作りをサポート

ACCU ニュースでは、こうした活動の進捗について随時お知らせする予定です。下記のサイトもごらんください。http://web.kao.com/asience/jp/http://www.accu.or.jp/jp/activity/education/02-03a.html

Pick up Information

活動内容

花王株式会社 アジエンスの社会貢献活動

編集部から一言

センさんは学業の合間に月 2 回 ACCU でボランティアをしています。来日してから日本語を勉強し、修士論文も日本語で執筆の予定だそうです。

エー

シー

シー

ユー

ニュ

ース

378号

 2010

年9

月号

(季

刊)

表紙写真

「雨乞い」©Mohammad Golchin(イラン)2007年ACCUアジア太平洋ESDフォトメッセージ・コンテスト入賞作品

[フォトメッセージ]イラン北部では米の栽培がもっとも大切な仕事です。多くの米を収穫するには、

植え付け時期にたくさんの雨が必要です。ほとんど雨が降らなかったり、干ばつのときは、スプーンや皿など特別のものを使って子どもたちが雨乞いをはじめます。これはその祈りの行事のひとつです。

[ウェブサイト]http://www.accu.or.jp/esd/photomessage/jp/

編集後記

今号にご紹介した『ESD教材活用ガイド』を制作したときのこと。ESDに関心を持ってもらおうと、担当者が苦心の末、「エッ(E)、そ(S)れ、ど(D)んなこと?」

「いい(E)ね、そ(S)れなら で(D)きそう!」というキャッチをひねり出した。単なる駄洒落? いえいえ、その奥には、設立以来職員の間に引き継がれてき

たACCUの事業モットー「わかりやすい、ためになる、おもしろい」がある。もっと多くの人たちとESDで協働できるよう知恵を集めていきます。みなさん

のご協力をお願いします。(T)

What's

こんな活動をしています

ACCU??

人物交流事業

中国・韓国との教職員交流中国と韓国の教職員と日本の教職

員や子どもたちとの交流を通じ、日本の教育制度・現状への理解を深める事業。このプログラムの成果が評価され、中国・韓国両政府による日本の教職員の招へいも始まり、相互交流が深まっています。

学者専門家交流教育、文化などの分野の学者と専

門家を招へいし、パートナー団体との協力のもと、国際会議やシンポジウムを実施しています。

ESD 日米教員交流日米両国政府の提案により、フ

ルブライト・ジャパン(日米教育委員会)が 2009 年度から開始した ESD * 1 教員交流事業。協力団体として実施を担当しました。ライブラリー

の運営アジア太平洋地域各国の絵本、教

科書や識字・ノンフォーマル教育教材* 3 を収集、閲覧(予約制)に供しているユニークなライブラリー。

教育協力事業

ESD*1推進事業 「 国 連 ESD * 1 の 10 年 」(2005 〜2014 年)の活動として、ACCU はESD モデルプロジェクトの育成やその評価、教材開発と普及、途上国における ESD 推進の拠点育成などに取り組んでいます。

EFA*2推進事業文字を読めないまま大人になった

人たちの教育支援事業。読み書き計算能力の向上や生活技術の獲得に結びつく教材の共同制作や人材養成、ネットワークを軸とした識字教育事業、ノンフォーマル教育事業*3を展開しています。

ユネスコスクール推進事業世 界 180 か 国・ 地 域 で 8,500 校

以上が参加するユネスコスクール。ESD の推進拠点であるユネスコスクールの活動を支援しています。

識字教育センター(LRC)・ ネットワーク事業

今日、成人非識字者(読み書き計算が十分にできない人)は世界に 7 億 5,900 万人と推計され、その半分以上が女性といわれています。ACCU は、アジア太平洋地域に「女性のための識字教育センター(LRC: Literacy Resource Centres for Girls and Women)」を設立し、教材制作、人材養成などをすすめています。また、識字学習と母子保健教育をむすびつけ、家庭やコミュニティでの識字環境を向上させる SMILE アジアも実施しています。

文化遺産 保護協力事業 奈良事務所

ユネスコや ICCROM( 文化財保存修復研究国際センター)などの国際機関と連携しながら、文化遺産の保存・活用のための人材育成事業を行っています。

*1 Education for Sustainable Development:持続発展教育、持続可能な開発のための教育*2 Education for All:すべての人に教育を、万人のための教育*3 学校外教育。学校教育以外で、ある目的をもって組織される教育プログラム

発行…

財団

法人

ユネ

スコ

・ア

ジア

文化

セン

ター

 〒

162-8484 東

京都

新宿

区袋

町6 

日本

出版

会館

TEL 03-3269-4435 FAX 03-3269-4510 

E-mail general@

accu.or.jp U

RL http://ww

w.accu.or.jp

発行

日…

2010年

9月

10日

 編

集発

行人

…田

村哲

夫 

©ACCU

 無

断掲

載を

禁ず

編集

協力

・デ

ザイ

ン…

有限

会社

サザ

ンカ

ンパ

ニー

 印

刷…

株式

会社

千代

田グ

ラビ