035-086p h250618 三校 ·...

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71 椛 島 成 利 平成 24 年 7 月 7 日(土曜日)に北九州国際会議場において第 2 回血液浄化心不全治療研究会を大会長・尾辻豊教授、事務局長・ 椛島成利で開催いたしました。本研究会は心・腎連関のうちで特 に腎不全患者の心不全の病態と治療に注目し、広く知見を得るこ とを目的とし、発足した研究会です。第 1 回研究会を岡山大学救 急医学講座 ・ 氏家良人教授が開催され、第 2 回研究会を北九州で開催いたしました。 今回は特別講演に東邦大学大橋医療センター教授 長谷弘記先生に『CKD 患者における心血管合併症 の特徴と治療戦略』、基調講演に名古屋バスキュラーアクセス天野記念診療所所長 天野泉先生に『透析 患者の心不全治療総論』を頂きました。また、ランチョンセミナーでは産業医科大学第 2 内科准教授 竹内正明准先生に『腎不全症例におけるUCG用いた心不全の診断とその特徴』のご講演を頂いきました。 さらに、10 題という一般演題のご応募も頂きました。医局員の先生・同門の先生・関連施設の医療関 係者の皆様のご参加をいただき、活発な討議が得られ、盛会のうえに研究会の開催を終えることができ ました。これもひとえに医局・同門の先生方のご協力のおかげだと感謝いたしております。 産業医科大学第 2 内科の臨床・研究・教育のテーマである循環器疾患と腎臓疾患は相互に影響を及ぼ していることから心・腎連関とよばれることを諸先生方はご存じと思います。研究会プログラム集の巻 頭言に尾辻教授の興味深い一言がありました。この巻頭言をご紹介し研究会開催のご紹介とさせて頂き ます。 「心疾患例の透析療法を行う専門家がいない。腎臓内科医と循環器内科医が知恵を併せて行うべき診 療が腎臓内科医に丸投げされています。また、疾患・病態においては心・腎連関が重要な役割を果たし ていることが判明していますが、診療においては心・腎連関(循環器内科医と腎臓内科医が共同で診療 する)が果たすべき役割を行っていない(心・腎連関の病態・診療体制ギャップ)のが現状と思います。 血液浄化心不全治療研究会は正にこの問題を克服するためのユニークな研究会と言えます。多くの先生 方に参加していただき、診療の心・腎連関を発展させる一助となるよう願っています。」 16.医局関連行事 基調講演:天野 泉 先生 ランチョンセミナー:竹内正明 先生 特別講演:長谷弘記 先生 第 2 回血液浄化心不全治療研究会

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Page 1: 035-086p H250618 三校 · とを目的とし、発足した研究会です。第1回研究会を岡山大学救 急医学講座・氏家良人教授が開催され、第2回研究会を北九州で開催いたしました。

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椛 島 成 利 平成 24 年 7 月 7 日(土曜日)に北九州国際会議場において第2 回血液浄化心不全治療研究会を大会長・尾辻豊教授、事務局長・椛島成利で開催いたしました。本研究会は心・腎連関のうちで特に腎不全患者の心不全の病態と治療に注目し、広く知見を得ることを目的とし、発足した研究会です。第 1 回研究会を岡山大学救

急医学講座 ・ 氏家良人教授が開催され、第 2 回研究会を北九州で開催いたしました。 今回は特別講演に東邦大学大橋医療センター教授 長谷弘記先生に『CKD 患者における心血管合併症の特徴と治療戦略』、基調講演に名古屋バスキュラーアクセス天野記念診療所所長 天野泉先生に『透析患者の心不全治療総論』を頂きました。また、ランチョンセミナーでは産業医科大学第 2 内科准教授 竹内正明准先生に『腎不全症例における UCG 用いた心不全の診断とその特徴』のご講演を頂いきました。さらに、10 題という一般演題のご応募も頂きました。医局員の先生・同門の先生・関連施設の医療関係者の皆様のご参加をいただき、活発な討議が得られ、盛会のうえに研究会の開催を終えることができました。これもひとえに医局・同門の先生方のご協力のおかげだと感謝いたしております。 産業医科大学第 2 内科の臨床・研究・教育のテーマである循環器疾患と腎臓疾患は相互に影響を及ぼしていることから心・腎連関とよばれることを諸先生方はご存じと思います。研究会プログラム集の巻頭言に尾辻教授の興味深い一言がありました。この巻頭言をご紹介し研究会開催のご紹介とさせて頂きます。 「心疾患例の透析療法を行う専門家がいない。腎臓内科医と循環器内科医が知恵を併せて行うべき診療が腎臓内科医に丸投げされています。また、疾患・病態においては心・腎連関が重要な役割を果たしていることが判明していますが、診療においては心・腎連関(循環器内科医と腎臓内科医が共同で診療する)が果たすべき役割を行っていない(心・腎連関の病態・診療体制ギャップ)のが現状と思います。血液浄化心不全治療研究会は正にこの問題を克服するためのユニークな研究会と言えます。多くの先生方に参加していただき、診療の心・腎連関を発展させる一助となるよう願っています。」

 16.医局関連行事

基調講演:天野 泉 先生

ランチョンセミナー:竹内正明 先生

特別講演:長谷弘記 先生

第 2 回血液浄化心不全治療研究会

Page 2: 035-086p H250618 三校 · とを目的とし、発足した研究会です。第1回研究会を岡山大学救 急医学講座・氏家良人教授が開催され、第2回研究会を北九州で開催いたしました。

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芹 野 良 太 平成 24 年 8 月 25 日にラマツィーニホールにおいて、第 298 回日本内科学会九州地方会を主催しました。演題も 117 題と集まり、特に循環器部門は 31演題と一番多く集まりました。当日は、沖縄では台風が接近となり、2 名ほど発表者が参加出来ずに残念でしたが、会場は好天に恵まれました。福山さん

をはじめ、秘書の方々や医局員全員に仕事をしていただき、無事に終了することができました。また循環器のセッションは 6 セッションもあり、同門の先生方に座長をしていただき、大盛況のうちに終了しました。皆様,ご協力いただきまことにありがとうございました。

ラマツィーニホール 受付ホール

第 1 会場 大ホール

第 2 会場 小ホール 第 3 会場

第 298 回日本内科学会九州地方会

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 2012 年 9 月 30 日(日)に北九州国際会議場で第 22 回日本超音波医学会九州地方会が開催されました。九州・沖縄の人口は全国の約 10% ですが、九州地方会の参加人数は全国地方会合計の13% です。全国 8 つの超音波地方会の中で、関東甲信越地方会、関西地方会につぎ第 3 位と活発な地方会です。今回は、尾辻豊教授を会長とし、参加者 651 名と大盛況でした。 特別講演は大阪大学の中谷敏教授に「大動脈弁狭窄症の診断と

治療」、川崎医科大学の畠 二郎教授に「腹部救急の超音波診断」と題してご講演をしていただきました。YIA(循環器)では、大谷恭子先生が最優秀賞を受賞され、また、技師さん専用のセッションでは多数の施設から「この画像で患者さんの運命を変えた !」というような内容でインパクトあるエコー画像を発表していただきました。ハンズオン(エコー実技)や今回の地方会で心臓外科の先生方のご協力のもと始めて行ったウェットラボ

(豚の心臓を解剖したり手術し、解剖の勉強をする)は非常に好評でした。 本大会を通じて、技師、医師ともに日々の検査や診療を見直し、超音波検査は有用かつ意義のある検査である一方で、奥深い検査であるため、日々の研鑽が大切であることを再認識いたしました。沢山の方にご協力をいただき、本当にありがとうございました。

岩瀧麻衣(文責:竹内正明)

第 1 会場

第 2 会場

北九州看板娘さんによる受賞と     北九州市のアピール

第 22 回日本超音波医学会九州地方会

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尾 辻   豊 開業の先生たち向けの心エコーの実技講習会ですが、年に 4 回、通算 27 回行っています。6 回で 1シリーズになり、現在は第5シリーズの最中です。毎回10~12人ぐらいの参加者に、1)簡単なレクチャーを 10 分程度して、2)実際に心エコーの機械に触っていただき基本断面を描出していただく(心エコーの機械を 3 台使いますので、一人 10 ~ 15 分程度)、3)その基本断面で得られる典型的な異常画像(例えば僧帽弁逆流、急性心筋梗塞等)を 15 分程度で私が提示する、以上のような 3 部構成で 90 ~ 120 分程度という基本は変わりません。金曜日の夜 7 時から産業医大の 3 階カンファレンスルームと心エコー検査室を使って行っています。心エコーの機器を購入され、実際に始める先生が年に 1 人ぐらいでしょうか?また、この講習会が御縁となって症例の御紹介をいただくこともあります。心エコーは非侵襲的で安全に行え、得られる情報は多いので、多くの先生方が心エコーをするようにこの連携会は続けようと思ってます。興味のある先生方は是非ご参加をお願い申し上げます。

平成 25 年 1 月 18 日 医生ヶ丘循環器病診連携会

医生ヶ丘循環器病診連携会

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竹 内 正 明田 村 雅 仁

第 19 回 産業医科大学 循環器腎臓病診連携会(平成 24 年 9 月 7 日)[ 症例検討 ] 1.「急性薬剤性間質性腎炎を発症した 1 例」

産業医科大学病院 循環器内科、腎臓内科 坂東 健一郎 先生 2.「心房中隔欠損症に僧帽弁逸脱症を合併した症例」

産業医科大学病院 循環器内科、腎臓内科 岩瀧 麻衣 先生[ 教育講演 ]  「CKD 患者における食事療法の評価 - 外来築尿の有用性」

産業医科大学病院 循環器内科、腎臓内科 学内講師 宮本 哲 先生

[ 特別講演 ]  「日常診療でみる胸部 X 線所見:CT による解析」琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学  教授 村山 貞之 先生

  平成 24 年 9 月 7 日にホテルクラウンパレス北九州で開催されました。症例検討では、腎臓病症例と循環器病の外科症例の報告、教育講演では腎臓病に関連した講演が行われました。特別講演では、琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学の村山貞之教授に「日常診療でみる胸部 X 線所見:CT による解析」と題しご講演していただきました。内科医にとって、診断や治療経過を評価するために重要な胸部 X 線を、放射線科医の視点から、CT 画像と臨床経過とも対比していただきながらわかりやすくご講演していただきました。

岩瀧麻衣(文責:竹内正明)

坂東 健一郎 先生 岩瀧 麻衣 先生 宮本 哲 先生

産業医科大学循環器・腎臓病診連携の会

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第 20 回 産業医科大学 循環器腎臓病診連携会(平成 25 年 1 月 11 日)[ 症例検討 ] 1.「プレッシャーワイヤーを用いて physiological PCI を施行した 2 症例」

産業医科大学病院 循環器内科、腎臓内科 北川 めぐみ 先生 2.「eGFR 59, 検尿異常なしで紹介受診した 30 歳代女性の CKD の 1 例」

産業医科大学病院 循環器内科、腎臓内科 上条 将史 先生[ 教育講演 ]  「心臓リハビリテーションと運動療法」

産業医科大学病院 循環器内科、腎臓内科 診療教授 岡﨑 昌博 先生

[ 特別講演 ]  「糖尿病性腎症における栄養管理」慶応義塾大学医学部 血液浄化・透析センター 准教授 菅野 義彦 先生

北川 めぐみ 先生 上条 将史 先生 岡﨑 昌博 先生

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岡 﨑 昌 博第 2 回若松循環器・腎臓病カンファレンス (平成 24 年 6 月 14 日) 若松地区にてご開業の先生方と産業医科大学若松病院循環器内科・腎臓内科との学術交流の機会を設けるために発足させた第 2 回若松循環器・腎臓病カンファレンスは平成 24 年 6 月 14 日若松区医師会館で開催されました。循環器内科と腎臓内科の症例 3 題を発表し、長井先生にミニレクチャーをしていただきました。長井先生は日常臨床で注意すべき心電図について症例を紹介しながら説明され出席の先生方に好評でした。参加者は 11 名でした。

紹介症例の報告 1.「腎臓教育入院で腎機能が改善した 1 例」

産業医科大学若松病院 循環器内科・腎臓内科 古野 由美 2.「たこつぼ心筋症の経過中に脳梗塞を発症した 1 例」

産業医科大学若松病院 循環器内科・腎臓内科 長井 善孝 3.「診断に難渋した急性心筋梗塞の 1 例」

産業医科大学若松病院 循環器内科・腎臓内科 岡﨑 昌博ミニレクチャー 『日常臨床で注意すべき心電図』 

産業医科大学若松病院 循環器内科・腎臓内科 長井 善孝

第 3 回若松循環器・腎臓病カンファレンス (平成 24 年 11 月 29 日) 第 3 回若松循環器・腎臓病カンファレンスは平成 24 年 11 月 29 日に第 11 回と同じ旧河鉱業若松ビルで開催されました。循環器内科と腎臓内科の症例 2 題の発表と岡﨑がミニレクチャー行いました。今回新たに開業医の先生方から質問を募り、それに答えるという≪Q&Aコーナー≫を設け、大変好評でした。参加者は 13 名でした。

紹介症例の報告 1.「心臓リハビリにより心肺機能の改善が認められた心不全の 1 例」

産業医科大学若松病院 循環器内科・腎臓内科 安田 悦子 2.「高 Ca 血症により腎不全を来した 1 例」

産業医科大学若松病院 循環器内科・腎臓内科 古野 由美ミニレクチャー 『循環器疾患における包括的心臓リハビリテーションの必要性』 

産業医科大学若松病院 循環器内科・腎臓内科 岡﨑 昌博

産業医科大学若松病院循環器・腎臓病カンファレンス

安田 悦子 先生 古野 由美 先生 岡﨑 昌博 先生 長井 善孝 先生

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第2内科セミナー

講義年月日:平成 24 年 10 月 26 日

講 師:鹿児島大学病院 臨床技術検査部門 主任 水上 尚子 先生

演 題 名:診療に役立つ心血管エコー

平成 24 年 10 月 26 日に鹿児島大学病院検査部

水上尚子先生に講義をしていただきました。水上

先生は、鹿児島大学病院検査部の技師で、専門は

心エコーと血管エコーです。世界の技師さんの中

でもっとも優秀だと思っています。産業医大の技

師さん達のあこがれの的でもありまして、御紹介

も兼ねて来ていただきました。「最近の症例の中

でどのように考えて検査をすると良い検査となっ

たか?」を中心の発表でした。内容は素晴らしく、

「ここまでエコーで診断できるのか!」とビック リするような画像を見せてもらいました。水上先生は

努力の人です。内胸動脈を冠動脈バイパス手術に 使いますが、この血流の検出が最初はできませんでし

た。しかし、解剖アトラスを見て外科医と話をし て「術後の内胸動脈はこの辺りにある筈だ」というコ

ンセプトを頭に入れて検査をすると内胸動脈が見 えてきたようです。ソウルの友達から「内胸動脈の

記録ができる技師を講演と実技に派遣して欲しい」 と頼まれて彼女を紹介しました。数百人の聴衆の

前でバイパス術後の人に検査をしたそうです。左内胸 動脈がバイパス血管として使われたという主治医

からの説明を受けて、彼女は左内胸動脈を検出しまし た。しかし、それはバイパス閉塞パターンでした。

「この波形は閉塞あるいは高度狭窄を意味している」 と発言したところ、「この症例は手術後に本当に

良くなっている。閉塞や狭窄は考えられない」と外科 医から反論され、場内は騒然となったそうです。

その中で彼女はふと閃いて「もう一度検査をさせて下 さい。」と言って、右内胸動脈を見ました。する

と使われていない筈の右内胸動脈血流波形が良好なバ イパスパターンになっていました。彼女は、「左

内胸動脈のバイパスと説明がありましたが、右内胸動 脈ではないでしょうか?」と反論したところ外

科医が主治医と韓国語でいろいろしゃべり、外科医が主 治医の頭をコツンと叩いたそうです。場内の技

師さん達から絶賛の嵐がおこったそうです。また、彼女 は研究も行い、素晴らしい論文を作っています。

バイパス吻合部狭窄をエコーで診断し、造影による狭窄重症度ときれいに相関するという研究を Journal

of Cardiology に発表し、年間最優秀賞(上田賞)を もらいました。また、社会人大学院に進み、「右内

胸動脈と左内胸動脈の血流速度パターンからの吻合部狭窄診断は異なる基準を使うべきである」という

知見を Journal of the American Society of Echocar diography に掲載し、学位(医学博士)を獲得して

います。このように水上先生は努力する実力者です。 産業医大の技師さん達も私達医師も彼女の姿勢を

見習わねばならないと実感しました。

(文責:尾辻 豊)

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講義年月日:平成 24 年 9 月 28 日講   師:日本医科大学多摩永山病院内科・循環器科 教授 井川 修 先生演 題 名:循環器診療に役立つ心臓構造学

 井川先生は、臨床不整脈に関連する心臓の解剖学の新しい領域を開拓した国内でもめずらしい解剖学を専門にする研究者である。井川先生自身、臨床電気生理研究者であり循環器専門医としてカテーテルアブレーション治療やデバイス植込み手術を行っておられるため、臨床に則した心臓解剖学は、我々臨床医にとって非常に判り易く、理解し易い。今回当科の大学院講義では心臓壁運動のねじれに関して心臓構造と心臓電気現象との関連について講義いただいた。            (文責:安部治彦)

講義年月日:平成 24 年 10 月 1 日講   師:琉球大学大学院医学研究科薬理学 教授 筒井 正人 先生演 題 名:循環器・腎臓病における N0 合成酵素系の意義

 平成 24 年 10 月 1 日に琉球大学薬理学教授の筒井正人先生に大学院講義をしていただきました。皆さん御存じのように筒井正人先生は、第 2 内科の OB です。基礎医学研究に情熱と才能を発揮され、第 2 内科から当大学の薬理学教室に移り、そこで准教授となり、有名な NO トリ プ ル ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス を 作 製 し、Circulation, PNAS 等に次々に論文を発表して行かれています。その仕事を評価されてコネがあった訳ではないにもかかわらず琉球大学に教授として赴任されました。琉球大学でも次々と良いお仕事をされておられます。産業医大の薬理学教室とは今でも共同研究を続けておられる関係で、第 2 内科医局員に基礎研究に興味を持っていただきたいと思い、沖縄から来ていただきました。私自身は臨床研究しかしたことはありませんが、若い時期に基礎実験をする機会があった方が良かったと現在思っています。基礎実験を長く続けるのは困難かもしれませんが、基礎医学の背景を持って臨床をするとバランスのとれた深みのある臨床ができると思います。筒井先生は動脈硬化を中心に魅力的な研究を継続されておられ、若手医局員も基礎研究に興味を持った人も出てきたのではないかと期待しています。基礎医学をすると留学した時に給料をもらえる可能性が高くなり、この点でも有利です。基礎医学の背景を持ちながら高度臨床ができる医局員が育ってくれることを期待しています。                (文責:尾辻 豊)

大 学 院 講 義

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講義年月日:平成 24 年 10 月 5 日講   師:九州大学大学院医学研究院循環器内科学 教授 砂川 賢二 先生演 題 名:うそ、ほんと 心不全四方山ばなし

 平成 24 年 10 月 5 日に九州大学循環器内科教授の砂川賢二先生に大学院講義をしていただきました。砂川賢二先生は、数学や物理学に強く、心力学の研究をたくさんされて、現在では壮大なスケールの医学的工学的な研究をされています。例えば、「ペースメーカの大部分は電池である。血液の中からエネルギーを取りこめるタイプのペースメーカを作れば相当小さいものができて、カテーテルで右心室に植え込めば手術の要らないかつ電池交換も必要ない「恒久」ペースメーカを開発できるというような発想を持っていらっしゃる方です。この砂川先生が「血圧とは何か?」「立位時の足の静脈圧は脳の動脈圧よりも高い」というような話から「心不全とは何か?」「圧容積曲線による心機能評価」「左室動脈カップリングとは?」というように私達が日常的に見ている心不全例の物理学的な意味を解りやすく講義していただけました。大学近くの白浜で夕食をいっしょにいただきましたが、世界の情勢にも詳しく、「シーメンスは本当にしたたかな企業です。ドイツの原発は全てシーメンス製です。原発で莫大な利益を得た筈です。現在は脱原発で莫大な利益を得ています。」というようなことまで教えていただきました。あまりにお話しに魅力があるので、無理を言って今年も来ていただく予定です。関連病院の若手医師の先生達、是非参加して下さい。こんな話は本当に聴けません。           (文責:尾辻 豊)

講義年月日:平成 24 年 10 月 19 日講   師:川崎医科大学循環器内科 准教授 大倉 宏之 先生演 題 名:血管内イメージングによる不安定プラークの診断

 この度の大学院講義は、川崎医科大学の大倉先生にお願いしました。川崎医科大学は岡山県倉敷市にありますが、病院の環境は当院と非常によく似ています。第 1 に近くに心血管カテーテル治療で非常に有名な倉敷中央病院(当院は近くに小倉記念病院)があること、第 2 に教授は心エコーで著名な吉田清先生(当院はもちろん尾辻豊教授)、また心血管カテーテル治療件数も 200 例前後とほぼ当院と同数のようです。現在准教授としてご活躍中ですが、心血管カテーテル治療だけでなく心エコーの分野でも多くの業績を上げられており、まさに超人的な仕事ぶりで、いつも色々な事を優しく教えて頂いています。 今回の講義テーマは不安定プラーク診断ということでしたが、ご存じのように急性心筋梗塞の責任冠

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動脈は必ずしも高度狭窄ではなく、約7割は50%以下の狭窄部位から発症します。このため不安定プラーク(vulnerable plaque)の診断は非常に重要な課題となります。急性冠症候群における不安定プラークのカテーテル診断としては、血管内超音波(IVUS)や光干渉波断層法(OCT)があり、菲薄化した繊維性被膜、マクロファージ等の炎症細胞の集族や陽性血管リモデリングの存在を画像で捉え診断することが可能となります。特に OCT では、近赤外線を利用して約 10 μm という高解像度でプラーク形態を描出可能なため、厚さが 65 μm 未満のプラーク:thin-cap fibroatheroma(TCFA)や微小管腔構造(マイクロチャネル)の増生を観察することにより、急性心筋梗塞患者の責任病変を未然に発見して、その予防をすることが可能となる訳です。 川崎医科大学では IB-IVUS を用いた冠動脈組織性状診断とこの OCT を組み合わせることにより、TCFA 診断における冠動脈プラーク内 lipid 成分のカットオフ値の同定をしたり、IVUS で描出された冠動脈周囲の管腔構造と TCFA の関連を検討しており、それらのデータを詳細にご紹介頂きました。その他、不安定プラーク診断に関する冠動脈イメージング関連のデータのアップデートや、次世代のIVUS、OCT、スペクトロスコピー等のデバイスについてわかりやすく解説していただき、臨床の現場ですぐに役立つ知識として理解することが出来、非常に充実した講義でありました。 最後に後日談として、講義中やその後の質問時間には聴講されていた竹内先生から質問が来たらどうしよう、、、とハラハラ、ドキドキしていたと仰っていました(笑)。

(文責:園田信成、樫山国宣)

 中谷敏先生は国立循環器病センターで 20 年間臨床医として勤務された後、平成 20 年 4 月より大阪大学大学院医学研究科保健学専攻機能診断科講座の教授として着任されました。心エコーを用いて心血管系の病態生理を追求する研究を行っておられ、今回は「Structural Heart Disease と心エコー」という演題で大学院講義をして頂きました。Structural Heart Disease(構造的心疾患)とはあまり聞き慣れない単語ですが、弁膜症や先天性心疾患などの非冠動脈心疾患を包括的に表現する用語です。近年は低侵襲治療が盛んであり、心房中隔欠損症のみならず大動脈弁狭窄症などもカテーテルで治療を行うようになっていますが、この治療の際には心エコー検査による評価が必須となっています。講義では三次元心エコー法を用いた評価などについて詳しく講義して頂きました。

桑木 恒(文責:竹内正明)

講義年月日:平成 24 年 11 月 16 日講   師:大阪大学大学院医学研究科保健学専攻機能診断科講座

教授 中谷 敏 先生 演 題 名:Structural Heart Disease と心エコー

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講義年月日:平成 24 年 11 月 29 日講   師:九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 助教 谷口 正智 先生演 題 名:慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)をめぐって

 九州大学の谷口正智先生をお招きし大学院講義が行われました。谷口先生はラサール高校を御卒業後、九州大学医学部に御入学されました。1996 年に御卒業後は九州大学医学部第 2 内科に御入局され、腎臓研究室に配属となりました。副甲状腺についての研究が御専門で、2006 年には Kidney Internationalに論文を御発表されるなど、顕著な業績をこれまでに多数あげておられます。2007 年に現職である九州大学大学院 医学研究院 病態機能内科学 助教に御就任され、2009 年からは日本透析医学会 CKD-MBD ガイドラインワーキンググループ委員も任命され、CKD-MBD の領域では我が国のトップエキスパートのお一人です。今回は血管石灰化の原因としての CKD-MBD や、病態生理学として FGF-23 やKlotho の役割、CKD 患者における血清リン管理の実際などについて最先端のお話をお伺いすることが出来ました。                                (文責 田村雅仁)

講義年月日:平成 25 年 2 月 1 日講   師:筑波大学医学医療系循環器内科 准教授 瀬尾 由広 先生演 題 名:心不全における心臓非同期評価

 平成 25 年 2 月 1 日に筑波大学循環器内科准教授の瀬尾由広先生に大学院講義をしていただきました。瀬尾由広先生は、日本の心エコーの若手医師として最も頑張っています。筑波大学は不整脈の青沼和隆教授のもと不整脈診療の一大拠点となっていますが、瀬尾由広はその中で心エコーを中心に活動しています。記憶に新しいこととしては、「血栓ができやすい左心耳の形態」「ペースメーカーリードが三尖弁の交連部を通ると逆流の原因にはならないが交連部以外を通過すると逆流を起こす」等の不整脈関連の心エコー研究をしています。この大学院講義では左脚ブロックに対する再同期療法に関連した発表をしていただきました。刺激伝導系の解剖や生理を知っていないと複雑な再同期療法を理解できません。瀬尾先生は、刺激伝導系の深い理解に基づく心エコーを行っていました。3 次元心エコーで、収縮の伝搬をマッピングして、それを治療に生かしたり、心磁図で電気の伝導をみて、心エコーによる収縮の伝導と差異がないか検討したり、最先端のことをやっていました。私は「心エコーを通して不整脈疾患を見る」というのは本当に大事なことだと思っています。不整脈疾患を専門とする先生方は主に心電図を通して

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不整脈疾患を見ています。これが王道だと思いますが、しかし心エコーでしか見えないことも重要です。心房細動から洞調律になった時に心房の収縮は低下し、洞調律が続けば徐々に回復して行きますが、これは心エコーでしか解りません。洞調律になった後に左心耳血栓ができてもおかしくないのです。頻拍が続くと左室機能が低下しますが、これも心エコーで見るのが重要です。「不整脈を心エコーで診る」ことに関して日本でもっとも良く頑張っているのが瀬尾由広先生です。必ずやもっと飛躍していただける先生だと思っています。                          (文責:尾辻 豊)

講義年月日:平成 25 年 2 月 8 日講   師:鹿児島大学医学部・歯学部附属病院心臓血管内科 医員 窪田 佳代子 先生演 題 名:鹿児島大学病院の肺高血圧診療への取り組み

 平成 25 年 2 月 8 日に鹿児島大学心臓血管内科の窪田佳代子先生、内匠拓朗先生に大学院講義をしていただきました。窪田佳代子先生は、私から見ると鹿児島大学心エコーグループの後輩になります。私と一緒にした仕事で学位を取得しました。虚血性僧帽弁逆流例ではテザリングのために僧帽弁の閉鎖も開放も低下しています。逆流はしばしば重症になりますが、開放低下のための狭窄は有意なレベルまではなりません。しかし、外科的に弁輪を縮小させると弁輪サイズ縮小と拡張期の弁尖テザリング(開放低下)により有意な僧帽弁狭窄となります。弁尖の器質的な疾患はあまりありませんので、これを「機能性僧帽弁狭窄」であると提唱しました。この仕事を通じて窪田先生が優秀であることは解っていました。私が産業医大にきて約 7 年ですが、この間に彼女はインターベンションの内匠先生と組んで肺高血圧診療を確立していました。鹿児島では全く誰もやっていなかった肺高血圧の診療を開拓して、患者さんも増えてきており、予後も改善しているというような内容の発表でした。私が特に聴きたかったのは「どのようにして始めたのか?第一例目をどのようにして成功させたのか?」という点でした。岡山医療センターの松原先生に支援してもらっていましたが、看護師さん達との共同作業を見事に成功させており、私の後輩ですが、「大したものだ」と思いました。第 2 内科でも芳谷先生や園田先生を中心に肺高血圧診療を高めて行こうとしていますが、大変参考になったと思います。第 2 内科で高度の肺高血圧診療ができる日を楽しみにしています。                                    (文責:尾辻 豊)

講義年月日:平成 25 年 2 月 8 日講   師:鹿児島大学医学部・歯学部附属病院心臓血管内科 助教 内匠 拓朗 先生演 題 名:慢性血栓塞栓性肺高血圧症に体する肺動脈拡張術について

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内科合同クリニカルカンファレンス

第 412 回内科合同クリニカルカンファレンス 平成 24 年 9 月 18 日

腎機能低下を来す遺伝性腎疾患

産業医科大学病院 腎センター 上条 将史 先生

石松 菜那 先生 第 417 回内科合同クリニカルカンファレンス 平成 25 年 2 月 19 日

急性冠症候群に体する最近の治療 - 心臓リハビリテーションを中心に -

産業医科大学病院 循環器内科、腎臓内科 荒木 優 先生

鈴木 義之 先生

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医 局 関 連 行 事 写 真 集

************** 平成 24 年 7 月 第2内科同門会 **************

黒岩賞古野由美  先生

特別講演 吉田 宏 氏

黒岩賞春木伸彦  先生

同門会名誉顧問黒岩昭夫 先生

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************** 平成 24 年 12 月 第2内科忘年会 **************

******* 平成 25 年 3 月 4 月異動の医師・看護師長・訪問研究員 送別会 *******