000 jsps57 full100 b-01 0900 2201 tnf-α誘導性破骨細胞形成におけるpkrの役割 篠原...

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一般演題口演 (B,D 会場) 5 月 23 日(金) B会場  9 :00 ~ 9 :40 B会場  9 :50 ~ 10:20 B会場 10:30 ~ 11:20 D会場  9 :00 ~ 9 :30 D会場  9 :50 ~ 10:20 D会場 10:30 ~ 10:50 5 月 24 日(土) B会場  9 :00 ~ 9 :30 B会場  9 :40 ~ 10:30 B会場 10:40 ~ 11:10 B会場 12:40 ~ 13:20 B会場 13:30 ~ 14:10 B 会 場 B-01 ~ 31 D 会 場 B-01 ~ 08

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Page 1: 000 jsps57 full100 B-01 0900 2201 TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割 篠原 宏貴 キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞 【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)は

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一般演題口演

(B,D会場)

5月23日(金) B会場  9 :00~ 9 :40 B会場  9 :50~10:20 B会場 10:30~11:20 D会場  9 :00~ 9 :30 D会場  9 :50~10:20 D会場 10:30~10:50

5月24日(土) B会場  9 :00~ 9 :30 B会場  9 :40~10:30 B会場 10:40~11:10 B会場 12:40~13:20 B会場 13:30~14:10

B 会 場

B-01~31

D 会 場

B-01~08

Page 2: 000 jsps57 full100 B-01 0900 2201 TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割 篠原 宏貴 キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞 【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)は

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B-0109002201

TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割

篠原 宏貴

キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)はTNF-α,LPSなどに応答し細胞の防御機構やアポトーシスに関与する蛋白質リン酸化酵素である。炎症性骨吸収においてTNF-αは破骨細胞の形成に重要な役割を果たしているが,その際のPKRの関与については不明である。そこで,今回我々は,PKR阻害剤(2AP)を用いてTNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの発現動態と役割について検討した。【方法】破骨前駆細胞はマウス骨髄由来非接着性細胞にM-CSFを3日間刺激したものとマウス前破骨細胞株RAW264.7細胞を使用した。上記の破骨前駆細胞をRANKLで24時間刺激した。次に,2APで前処理した後にTNF-α刺激を行い,細胞内情報伝達系と破骨細胞形成の解析をWB法,PCR法,TRAP染色にて行った。さらに,成熟破骨細胞でのTNF-α刺激によるNFATc1の核移行時のPKRの動態を観察するため,2APで前処理した細胞をTNF-αで処理し,NFATc1の局在を免疫蛍光染色を用いて解析した。【結果と考察】破骨前駆細胞においてTNF-α刺激によりPKRの発現が経時的に上昇し,破骨細胞形成が促進された。2AP添加により破骨細胞形成,分化マーカーの発現が抑制された。また破骨前駆細胞において2APはTNF-αによるPKRのリン酸化,およびMAPキナーゼやNF-κBの活性化を抑制した。さらに2APは成熟破骨細胞においてTNF-αによるNFATc1の核移行を抑制した。【結論】PKRはTNF-α誘導性破骨細胞形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。

B-0209102204

マウス上皮細胞株におけるCLCA遺伝子の発現制御機構の解明

廣松 亮

キーワード:CLCA遺伝子,転写因子,上皮細胞【目的】Ca2+活性化Cl-チャネル調節タンパクとして位置づけられているCLCAは腺上皮,表皮など上皮組織に発現する。当研究室ではラット表皮の未分化上皮細胞においてCLCAアイソフォームが細胞接着に関わっている可能性を明らかにした。しかし,CLCA遺伝子群の転写制御については不明である。本研究では,マウス上皮細胞に発現するmCLCA2遺伝子のプロモーター領域に着目し発現調節に関わる因子を明らかにした。【材料と方法】マウスケラチノサイト株Pam212を用いてmCLCA2mRNA発現をRT-PCRにより解析した。mCLCA2プロモーター領域についてはdeletion-変異体レポーターを用いてルシフェラーゼアッセイにて解析した。さらに転写因子NFκBの関与について,各種薬剤(阻害薬CAPE,促進薬TNF-α),そして結合配列変異体レポーターやRNAノックダウンを用いてルシフェラーゼアッセイにて解析した。NFκBp65の標的DNA結合はクロマチン免疫沈降法およびELISAにて検討した。【結果および考察】マウスケラチノサイトにてmCLCA2mRNA発現を認めた。mCLCA2遺伝子の転写開始点から-302bp~ -153bp領域がプロモーター活性に重要であり,JASPARデータベースにてinsilico解析を行いNFκB結合配列を見出した。NFκB活性化阻害薬CAPEを作用させるとプロモーター活性は減少,活性化促進薬TNF-αでは上昇,NFκB結合配列変異では減少を認めた。NFκBp65のノックダウンを行って解析した結果ではmCLCA2のプロモーター活性は減少した。以上の結果からmCLCA2遺伝子の発現調節にはNFκBp65が深く関与していることが示唆された。

B-0309202504

脳由来神経栄養因子は歯肉上皮細胞のアポトーシスを誘導するP75-JNKシグナルカスケードを制御する

柏井 桂

キーワード:歯肉上皮細胞,脳由来神経栄養因子,アポトーシス【目的】脳由来神経栄養因子(BDNF)が歯周組織再生を促進することをこれまでに明らかにしてきた。ビーグル犬の実験ではBDNFによる歯周組織再生過程で歯肉上皮の侵入は認められなかった。BDNFを歯周組織再生療法として臨床応用するためには,この重要な知見をより詳細に理解し再生のメカニズムを解明する必要がある。脳神経細胞においてBDNFがapoptosisを誘導するという事実がある。そこで本研究では歯肉上皮細胞においてBDNFがapoptosiscascadeを活性化すると仮説を立て実験を行った。【材料と方法】細胞は大阪大学村上教授から分与いただいた不死化ヒト歯肉上皮細胞株(OBA9),及び不死化ヒト歯周靭帯細胞株(HPLcells)を供試した。BDNF刺激後の細胞増殖をBrdUassaykitで,apoptosis細胞をTUNEL染色にて解析した。BDNF刺激によるTrkB,JNK,ERKのリン酸化,及びcaspase3の活性化をWesternblotting法によって分析した。またJNKのリン酸化阻害剤やp75,TrkBのsiRNAの導入によるBDNF刺激に対する影響を確認した。【結果と考察】BDNF刺激はHPLcellsの増殖を促進し,OBA9の増殖には影響を与えない一方でアポトーシスを誘導した。またBDNF刺激は,HPLcellsのTrkB,ERKのリン酸化を促進したのに対し,OBA9においてはJNKのリン酸化を促進した。さらにJNKのリン酸化が認められたOBA9ではBDNF刺激によってcaspase3が活性化し,この活性化はJNK阻害剤前処理により抑制された。またOBA9においてBDNF刺激によるJNKのリン酸化,caspase3の活性化がp75siRNA導入によって抑制された。【結論】BDNFは歯肉上皮細胞に対してp75を介したJNKシグナル伝達経路が優位に働き,caspase3を活性化させ,apoptosisを促進する可能性が示唆された。

B-0409302206

電解酸性機能水の作用によるhumanbeta-defensin2遺伝子発現を誘導するシグナル伝達経路の解明

五條堀 孝廣

キーワード:電解酸性機能水,ルシフェラーゼアッセイ,エヌエフカッパービー,ヒューマンベータディフェンシン2【目的】歯周病の治療に電解酸性機能水(FW)の有用性が報告されている。そこで我々は,口腔上皮細胞(HSC3)にFWを作用させたところ,抗菌作用をもつhumanbeta-defensin-2(hBD-2)の遺伝子発現が顕著に増強することが分かった。本研究は,FWの作用で増強するhBD-2のシグナル伝達経路の解明について検討し,FWの有用性について追及することを目的とする。【材料と方法】口腔扁平上皮癌由来の細胞(HSC3,Ca9-22)に(FW:pH2.7,酸化還元電位1,100mV以上,遊離有効塩素濃度30ppm,三浦電子)またはdouble-strandRNA(dsRNA)を作用させ,hBD-2の遺伝子発現の変化をreal-timePCR法で検討した。また,hBD-2の遺伝子発現に関与する転写調節因子の影響についてはLuciferaseassayを行い,シグナル伝達経路の検討を行った。LuciferaseassayはhBD-2遺伝子の5’-untranslatedregion(5’-UTR)約1.2kbをPCRにより増幅し,pGL4-basicvectorにsubclonigして用いた。また,転写因子結合部位を欠失させたmutantについてはquickchangeDNAmutagenesiskit(Stratagene)を用いた。NF-κBの関与について検索するため,NF-κBbindingsiteを直列に連結したpNF-κB-Lucplasmidを用いた。【結果と考察】FWを作用すると,dsRNAより顕著なhBD-2の増強が認められた。また,Luciferaseassayの結果,FWの作用はこの領域を介して遺伝子発現を増強させる可能性が考えられた。さらに,dsRNAの作用はNF-κB依存的にhBD-2の遺伝子発現を増強させるのに対し,FWの作用はNF-κB非依存的にhBD-2の遺伝子発現を増強させることが考えられた。【結論】FWの作用によるhBD-2の遺伝子発現はdsRNAの作用とは異なるシグナル伝達経路によって誘導されることが示唆された。

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B-0509502504

Wnt/β-cateninシグナルによる歯小嚢細胞アルカリフォスファターゼの発現誘導

向阪 幸彦

キーワード:Wntシグナル,歯小嚢細胞,アルカリフォスファターゼ【目的】Wnt/β-cateninシグナルは硬組織形成において重要な調節因子であり,細胞の分化レベルによって異なる作用を発揮することが知られている。我々はこれまでに同シグナルはセメント芽細胞に対して分化抑制作用および増殖促進作用を有すること(Bone2009),またセメント芽細胞のprecursorと考えられている歯小嚢細胞に対してアルカリフォスファターゼ(ALP)の発現を誘導することを報告してきた(日歯周誌総説2013)。しかし,セメント質形成におけるWntシグナルの役割については未解決な点が多く残されている。本研究では歯小嚢細胞に対する同シグナルのALP誘導作用についてさらなる検討を行なった。【材料と方法】マウス歯小嚢細胞株(Dr.SomermanM.より供与)をWnt3a(R&D)存在下で3日間培養を行い,以下の方法にて解析した。1)遺伝子発現:定量性リアルタイムPCR法,2)ALP活性:p-nitrophenylphosphateを基質とした比色法,3)細胞内シグナル分子のリン酸化解析:ウェスタンブロット法【結果と考察】Wnt3aはALP活性およびAlp遺伝子発現を誘導した。Wnt3aのアンタゴニストDickkopf-1前処理によりALP活性の誘導は抑制された。p38/MAPキナーゼ阻害剤の前処理によりALP活性の誘導は抑制された。Wnt3a刺激によりp38のリン酸化が誘導された。これらの結果から,Wnt/β-cateninシグナルはp38/MAPキナーゼの活性化を介して歯小嚢細胞の分化を促進することが示唆された。本研究の結果はセメント芽細胞への分化制御機構の解明につながるものであり,歯周組織再生学の発展に寄与するものと考えられる。

B-0610002504

未分化間葉系幹細胞の脂肪細胞分化における脂質メディエーターの役割

橋本 陽子

キーワード:未分化間葉系幹細胞,脂肪細胞,スフィンゴシン-1-リン酸【目的】骨芽細胞及び脂肪細胞は,いずれも未分化間葉系幹細胞から分化する。脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は,骨芽細胞分化促進ならびに破骨細胞分化抑制作用を持つことが明らかとなっているが,S1Pが未分化間葉系幹細胞の分化に及ぼす影響については明らかでない。そこで,相互に分化を阻害しあうとされる骨芽細胞と脂肪細胞のうち,特に脂肪細胞に着目し,S1Pが未分化間葉系幹細胞の脂肪細胞分化に及ぼす影響について検討した。【材料および方法】実験にはマウス未分化間葉系幹細胞株C3H10T1/2を用いた。S1P添加後,脂肪細胞分化誘導を行い,脂肪細胞分化マーカー(PPARγ,FABP4,C/EBPβ)のmRNA,タンパク質発現について,real-timeRT-PCR法,ウエスタンブロット法を用いて検討した。また,PPARγのアゴニストRosiglitazone及びアンタゴニストGW9662,proteinkinaseA(PKA)の阻害剤KT5720を使用した。【結果および考察】脂肪細胞分化に伴い,脂肪細胞分化マーカー発現は増加したが,S1Pの添加によりこれらの発現が抑制されたことから,S1Pの脂肪細胞分化抑制メカニズムについて検討した。PPARγアゴニスト及びアンタゴニストを用いたところ,S1Pによる分化マーカー発現への影響は認められなかった。すなわち,S1Pの作用点はPPARγより上流にあることが示唆された。次に,PPARγの上流に位置するPKA阻害剤を用いて検討を行ったところ,S1Pは分化マーカー発現に影響を及ぼさなかった。S1Pの作用点について,PKAよりもさらに上流のcAMPに焦点を当てた検討結果と併せ報告する。【結論】S1Pは未分化間葉系幹細胞においてPKAより上流に作用し,脂肪細胞分化を抑制する。

B-0710102504

Spry2を標的とした歯周組織再生療法確立を目指す基礎研究

田中 麗

キーワード:歯周組織再生,Spry2,塩基性線維芽細胞増殖因子,上皮細胞増殖因子【目的】Sprouty2(Sp1ry2)とは古典的MAPキナーゼであるERKにより誘導されるネガティブフィードバック制御因子であり,bFGFによるERKの活性化を抑制することが明らかになっている。また,bFGFは歯周組織再生に奏功するとの臨床試験から,新しい再生療法として期待されている。本研究ではSpry2が歯周組織の再生においてどのような役割を担っているのかについてinvitroにおける検討を行った。【材料と方法】MC3T3-E1マウス骨芽細胞およびGE1マウス歯肉上皮細胞にはマウスSpry2優性阻害変異体の遺伝子導入を行い,ヒト歯根膜細胞株1-17にはSpry2siRNAを導入しSpry2を抑制した。それぞれをbFGF+EGFにて刺激を行った後,Spry2がERKの活性,細胞増殖,骨分化に及ぼす影響について検証した。また歯根膜細胞については遊走能に及ぼす影響についても検討した。【結果と考察】Spry2を抑制しbFGF+EGF刺激を行うことで,骨芽細胞ではERK活性,細胞増殖能が亢進するとともに,骨分化能も亢進した。反対に歯肉上皮細胞では,ERK活性,細胞増殖能が低下した。歯根膜細胞においては,細胞増殖,遊走能が亢進したが骨分化は抑制された。【結論】歯槽骨吸収部位に対してbFGFとEGF,Spry2阻害剤を併用すると,歯肉上皮のdowngrowthが妨げられ,GTR法のように物理的なバリアを用いることなく生物学的に再生の空間が確保されることが期待される。また,同時に骨芽細胞の細胞増殖と骨分化が誘導され,歯根膜細胞において,骨分化は抑制され細胞増殖と遊走能力が亢進することから,Spry2は新たな歯周組織再生療法を確立する上で標的分子となる可能性が示唆された。

B-0810302499

マウスPorphyromonasgingivalis口腔感染で誘導される小胞体ストレス応答と歯槽骨吸収の関連

山田 ひとみ

キーワード:Porphyromonasgingivalis,小胞体ストレス応答,4-フェニル酪酸【目的】小胞体内腔に折り畳み不全のタンパクが蓄積した状態を小胞体ストレスといい,これに対する細胞の反応を小胞体ストレス応答という。小胞体ストレス応答は神経変性疾患,糖尿病など様々な疾患に関与すると報告されており,近年炎症との関連が注目されている。我々はこれまでに歯周炎患者の歯肉組織において,小胞体ストレス関連遺伝子発現の有意な上昇を報告したが,そのメカニズムは不明である。そこで歯周炎の病態形成における小胞体ストレス応答の役割を検討した。【材料と方法】6週齢のC57BL/6マウスにP.gingivalisW83株を3日毎に計10回口腔感染させた。感染後,歯槽骨吸収測定および歯肉での小胞体ストレス関連分子,炎症性サイトカイン,破骨細胞関連遺伝子発現をReal-timePCR法にて解析をした。また小胞体ストレス抑制剤である4-フェニル酪酸(4-PBA)を投与する群で同様の検討を行った。またinvitroにおいて4-PBAの破骨細胞分化に及ぼす影響をマウス骨髄細胞由来マクロファージを用いて,TRAP染色およびReal-timePCR法にて解析した。【結果と考察】P.gingivalis口腔感染により歯肉組織における小胞体ストレス関連遺伝子が上昇していた。一方で4-PBA投与により同遺伝子発現が抑制されるとともに歯槽骨吸収が抑制されたが,炎症性サイトカイン発現において大きな差は認められなかった。さらに同群では破骨細胞関連遺伝子発現が有意に減少したことより,小胞体ストレスは破骨細胞形成に直接的に関与している可能性が示唆された。またinvitroで4-PBAの添加がRANKL誘導性の破骨細胞形成を抑制した。【結論】歯周炎において小胞体ストレスは破骨細胞分化を促進し,歯槽骨吸収に関連する可能性が示唆された。

Page 4: 000 jsps57 full100 B-01 0900 2201 TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割 篠原 宏貴 キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞 【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)は

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B-0910402499

Porphyromonasgingivalis経口投与によるマウス腸内細菌叢の変動と内毒素血症の関連

有松 圭

キーワード:歯周病原細菌,腸内細菌叢,内毒素血症【目的】我々は先の第56回本学会において,口腔に投与したPorphyromonasgingivalisが歯肉組織にほとんど炎症を起こさず,耐糖能異常を発現し,脂肪・肝臓に炎症を誘導し,同時に腸内細菌叢を変化させることを報告した。今回,細菌叢の変化の詳細,並びに組織への影響を報告するとともに,そのメカニズムを検討する。【材料と方法】8週齢のC57BL/6マウスにCMセルロースに懸濁したP.gingivalisW83株あるいは基剤のみを週2回口腔より投与し,5週間後に回腸より採取した腸管内容物に対し,メタ16SrRNA解析を行った。また,肝臓,脂肪及び腸管における遺伝子発現解析を行った。さらに,P.gingivalisを1回投与後経時的に血液を採取し,血清中エンドトキシン活性の測定,P.gingivalis特異的16SrRNA,Universal16SrRNA遺伝子の検出を行った。【結果と考察】腸内細菌叢は投与群ではBacteroidales目に属する菌の比率が有意に上昇していることが明らかとなった。OTU解析からParaprevotellaxylaniphilaの相同種の増加が示唆された。遺伝子発現解析では脂肪・肝臓・腸管のいずれも投与群で炎症関連遺伝子の発現上昇,抗炎症性シグナル遺伝子発現の低下が示された。P.gingivalisを1回投与後に血清中エンドトキシン活性の上昇が認められた。血液中細菌遺伝子の解析から,血液中で検出された16SrRNA遺伝子はP.gingivalis以外の細菌に由来することが明らかとなった。【結論】P.gingivalis投与による内毒素血症,全身的な炎症の誘導には腸内細菌が関与している可能性が示唆された。

B-1010502504

TLRを介したPLAP-1の炎症制御機構

山羽 聡子

キーワード:PLAP-1,炎症,TLR【目的】歯周炎はプラーク中の歯周病原性細菌により引き起こされる慢性炎症性疾患であり,歯周病原性細菌の外膜を構成するLPSは宿主細胞のTollLikeReceptor(TLR)に認識されることで,免疫系を活性化する。歯根膜特異的分子PLAP-1は,その構造 よ りSmall leucine-richrepeatproteoglycan(SLRP)familyclassIに属し,同じSLRPfamilyclassIに属するDecorinおよびBiglycanと高い分子相同性を持っている。近年,DecorinおよびBiglycanは,TLRを介して炎症・免疫反応を促進することが報告されており,SLRPfamilyclassIタンパクによる免疫制御機構が注目されている。しかしながら,PLAP-1の炎症・免疫反応への関与については,未だ詳細は十分には解明されていない。そこで,本研究ではPLAP-1のTLRを介した炎症・免疫反応制御機能について解析を行ったので報告する。【材料と方法】PLAP-1発現アデノウイルス感染によりPLAP-1を強発現したマウス歯根膜細胞MPDL6を,TLR2のアゴニストであるPorphyromonasgingivalis(P.g.)LPS1000ng/mlにて刺激した。刺激後8時間までの全RNAを回収し,Il-6とCxcl10の遺伝子発現をreal-timePCR法にて解析した。【結果と考察】MPDL6にPLAP-1を強発現させることにより,対照感染MPDL6と比較しP.g.LPS誘導性の炎症性サイトカンIl-6,Cxcl10の遺伝子発現が抑制された。この事より,PLAP-1はP.g.LPSのTLR2を介した炎症反応を抑制することで,歯周組織の恒常性の維持のみならず,歯周病の発症・進行にも関与している可能性が示唆された。【結論】PLAP-1は,マウス歯根膜細胞においてTLR2を介した炎症反応を抑制した。

B-1111002206

血清アルブミンによって誘導されるLPSの物理化学的変換

小松 俊也

キーワード:血清アルブミン,LPS,disaggregation【目的】好中球のLPS応答には血清が必要である。血清に抗LPS-bindingprotein(LBP)抗体を添加すると好中球の応答は消失することは既に報告した。今回好中球のLPS応答における血清の作用はLBPの供給以外にもあることが示されたのでLPSが血清によって受ける変化を検討した。血清アルブミン(Alb)はLPSのdisaggregationを起こすことは報告されているが機序は明らかではない。【材料および方法】好中球のLPS応答:ヒト末梢血好中球にLPSを作用させた後の,fMLP-刺激による活性酸素産生能を測定。LPS:E.coliO111由来フェノール抽出標品。LPS disaggregationの測定:SepharoseCL-4B濾過における,LPSの溶出位置で判定。LPSと血清アルブミン(Alb)のinteraction:BSA-処理LPSに抗BSA抗体を反応させた後ゲル濾過にてLPSの溶出位置で判定。【結果と考察】LBP除去血清で好中球はLPSに無応答であった。ただ無血清の状態でLBPのみを加えても好中球は応答しなかった。LBP除去血清とLBPを共に用いると応答性は回復した。つまり,血清中にはLBP以外にLPSの作用に必須の因子が存在することが示された。そこでLPSが血清によって受ける作用を調べるためにAlbによるLPS-disaggregationについて調べた。Alb処理後のLPSをゲル濾過すると,低分子の位置に溶出されdisaggregationを起こしていることがわかった。これはAlbの濃度,作用時間および温度依存性に観察された。Alb処理LPSを抗BSA抗体と反応させてゲル濾過を行うと,LPSは>106Daの位置に溶出された。すなわちLPSはAlbと複合体を形成することが示された。現在Albに酵素様活性がある可能性と複合体形成の意味を検討中である。

B-1211102299

主導管結紮解除後のマウス顎下腺におけるCD49F,INHIBINβBとFOLLISTATINの 発 現局在

池田 淳史

キーワード:唾液腺,アクチビン,フォリスタチン【目的】唾液は,口腔感染制御を含めて口腔内環境を保つ重要な働きを持つ。しかし唾液腺は,自己再生能が低く,障害後の機能回復は難しい。近年,唾液腺内の排泄導管の上皮細胞にCD49F陽性の細胞が存在し,それが内胚葉系の細胞への分化能を持つと報告された。また我々は,CD49F陽性細胞がinvitroではINHIBINβA,INHIBINβB,FOLLISTATINを発現することを報告した。INHIBINのβ鎖はホモ二量体を構成し,ACTIVIN分子を構成する。一方,FOLLISTATINはACTIVINに特異的に結合し,その受容体への結合を阻害する。今回は,マウス顎下腺の主排泄導管を結紮後に解除すると顎下腺が再生することを利用し,invivoにおいて唾液腺組織再生中のこれら4分子の発現局在を解明した。【材料と方法】マウス顎下腺の片側の排泄導管を血管結紮用クリップで結紮し(他方は対照),6日後に結紮を解除した。結紮解除1,2,4,8,16日後の顎下腺を摘出し,パラフィン包埋切片作製の後,INHIBINβA,INHIBINβB,CD49F,そしてFOLLISTATINの局在を免疫組織染色法で検討した。【結果と考察】結紮解除後のどの日数においても,INHIBINβAは染色されず,INHIBINβBとCD49Fは染色された。また,結紮解除後8日目にはFOLLISTATINが染色された。さらに連続切片上で,CD49F,INHIBINβB,そしてFOLLISTATINが同部位で染色された。以上から,結紮解除後8日目以降の唾液腺組織再生に,CD49F陽性細胞でのactivin-follistatin相互作用の関与を想定できる。【結論】マウス顎下腺主排泄導管結紮解除後8日目の導管上皮細胞で,CD49F,INHIBINβB,FOLLISTATINが発現している。

Page 5: 000 jsps57 full100 B-01 0900 2201 TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割 篠原 宏貴 キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞 【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)は

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B-1309002207

異なる分子量を用いたDNA/プロタミン複合体の基礎的性質

森 南奈

キーワード:DNA/プロタミン複合体,生体分解性,DNA,プロタミン【目的】サケ白子由来のDNAとプロタミンを用いて新規生体材料の開発を行っており,DNA分子量の異なるDNA/プロタミン複合体を合成している。天然物を素材とした生体分解性生体材料の分解速度の調整は困難で,調節できればその用途は拡大すると言われている。そこで,平均分子量300bpDNA,7000bpDNA,およびオリジナルDNAを成分とした複合体を合成し,それらの性質から分解速度の調整が可能な新規生体材料としてのDNA/プロタミン複合体の有効性を検討した。【方法】DNA/プロタミン複合体粉末と水と混和してペーストにした材料を用いて基礎的実験(DNAとプロタミンの結合率,稠度,収率,細胞毒性など)を常法にて行った。また,ペーストディスクのラット皮下埋入実験より組織反応性と分解性を比較した。【結果】DNAとプロタミンとの結合率はいずれも0.1で,これは10塩基対のDNAに対し1つのプロタミンが結合していることを示す。細胞毒性はいずれも軽微で,組織反応性もマイルドであった。稠度はDNAの分子量が大きくなればなるほど粘性が高くなった。生体分解性は,DNAの分子量が小さいとより早く分解された。【考察】分解速度の差は複合体への分解酵素の浸透性の違いによるものと推察している。【結論】いずれの複合体も細胞毒性は軽微で,組織反応性もマイルドであった。しかし,分解速度はDNA分子量が大きくなると遅延した。以上の結果から,この複合体は生体分解性を調節することが可能な新規生体材料であると考える。

B-1409103103

間葉系幹細胞由来軟骨細胞(MSC-DCs)を用いた骨増生における骨化様式の解明

金子 正

キーワード:観葉系幹細胞由来軟骨細胞,乳酸グリコール酸共重合体,骨増生【目的】我々は第56回春季大会において軟骨分化した間葉系幹細胞(以下,MSC-DCs)が骨の増生に有用である事を報告している。本研究ではMSC-DCsを用いた骨増生における骨化様式を解明する事を目的とした。【材料および方法】4週齢F344ラット大腿骨・脛骨の骨髄から採取したMSCsをFGF-2存在下で増殖させ,φ9x2mmのPLGAscaffoldに播種後,軟骨分化培地で分化誘導を行い,3次元培養MSC-DCs移植体を作製した。10週齢の同系ラット頭蓋骨骨膜下に移植し,2,4,12週後に頭蓋骨(N=3)を回収し,µCTおよび組織学的評価(一般染色,免疫染色)行った。【結果および考察】MSC-DCs移植体は,頭蓋骨上で2週という早期から石灰化し,母床から連続性のある高さ約3mmの石灰化組織を形成した。アルシアンブルー,II型コラーゲン陽性の軟骨組織は移植後2週から減少し,I型コラーゲン陽性の骨組織に置換されていた。血管の侵入も早く,移植後2週には移植体内部まで入り込み,血球系の細胞の浸潤が多数観察された。軟骨と骨の境界部分では,移植後の経過日数に関係なく,TRAP陽性細胞が多数観察され,軟骨吸収細胞の存在が示唆された。以上の結果から,MSC-DCs移植による骨形成は軟骨内骨化の様式に類似した形で起こるものと考えられる。この現象は頭蓋骨だけでなく,大腿骨,上顎歯槽骨,皮下においても同様に観察されている。したがって,MSC-DCs移植は使用する部位に関係なく,軟骨内骨化に類似した様式で早期に骨を形成することができる新しい再生治療材料になりうるものと考えられる。

B-1509202504

臍帯組織由来幹細胞を用いた骨再生療法の検討

梶山 創太郎

キーワード:キーワード位置,キーワード位置,HUCPVCs,骨髄幹細胞,骨再生療法【目的】我々は骨再生療法の細胞ソースとしてヒト臍帯動静脈周囲の幹細胞(HUCPVCs)に注目している。この細胞は医療廃棄物である臍帯から採取でき,MHCclassⅠ・Ⅱの見られない細胞が確認されており,他家移植が可能である。しかし,これまでHUCPVCsの骨系への細胞誘導は困難であったが,我々は骨髄幹細胞(BMSC)の培養上清(BM-CM)を添加し培養する事で,HUCPVCsを骨系へと分化させる事を見いだした。本研究ではHUCPVCsをBM-CMを用いて培養し,invitroにおいて分化の状態を確認し,invitroにより分化させた細胞が骨再生への影響について検討する事を目的とした。【材料と方法】InvitroではBMSCとBM-CMで培養したHUCPVCsをALP染色とALPassayで評価する。Invitroではコラーゲンスポンジを用いて各細胞を1週間培養し移植試料とした。骨欠損モデルとしてラット頭蓋骨に骨欠損を作製し移植した。試料としてHUCPVCs/BM-CM,HUCPVCs/α-MEM,BMSC/α-MEM,BM-CM,Controlとした。移植後4,6週でµ-CTによる解析とHE染色,免疫染色による組織学的観察を行った。【結果と考察】Invitroでは,BMSC,HUCPVCsをBM-CMで培養した細胞においてALP染色で陽性の反応がみられた。ALPassayではHUCPVCsをBM-CMで培養した細胞はHUCPVCsより有意に高かった。Invitroでは,移植4,6週間後のµ-CT画像でもHUCPVCs/BM-CMの骨欠損領域に不透過像を認めた。移植4週間後のHE染色像ではHUCPVCs/BM-CMの骨欠損領域に骨芽細胞を伴った骨梁様組織が確認された。また,免疫染色像では移植片にヒト由来の細胞を確認した。【結論】骨髄幹細胞の培養上清で培養したHUCPVCsは骨芽細胞へと分化し骨再生能を有することが示された。

B-1609402504

米ペプチドCLの歯周病原細菌に対する抑制効果

高山 沙織

キーワード:米ペプチド,内毒素,炎症性サイトカイン,洗口剤【目的】米由来ペプチドCL(14-25)は,歯周病原細菌の増殖阻害やバイオフィルム形成阻害効果,タンパク質分解酵素ジンジパインに対する抑制効果をもつことが報告されている。本研究ではグラム陰性細菌内毒素がもつ炎症性サイトカイン誘導能に対するCL(14-25)の抑制効果を検討した。また,ヒト培養細胞に対する毒性の有無を評価した上で,口腔内におけるプラーク形成抑制効果を検討した。【材料と方法】内毒素として,歯周病原細菌Aggregat ibacteractinomycetemcomitansY4LPSに加え,EscherichiacoliのLPSおよびlipidAを用いた。ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)の培養液にCL(14-25)および各内毒素を添加し,培養上清中のIL-6量を測定した。またXTTassayにて細胞毒性が無いこと確認した上で,健常被験者に対しCL(14-25)水溶液を用いたクロスオーバー試験で3日間洗口させ,プラーク付着量を測定した。なお,本試験は東京歯科大学倫理委員会の承認を得て行った。【結果と考察】内毒素とCL(14-25)を同時に,またはあらかじめ両者を反応させてからHAECに添加した群で,内毒素のIL-6産生誘導活性に対しCL(14-25)は濃度依存的な抑制効果を示した。CL(14-25)は内毒素のリムルス活性を抑制することなどから,内毒素に結合してその活性を抑えるものと考えている。洗口試験では臼歯部において有意にプラークの付着量を低下させたことから,CL(14-25)は口腔内でもバイオフィルム形成阻害能を発揮することが示された。【結論】CL(14-25)は歯周病原細菌内毒素がもつ炎症性サイトカイン誘導能を抑制した。また洗口剤としてプラーク形成抑制効果をもつことが示され,歯周治療や予防への応用が期待される。

Page 6: 000 jsps57 full100 B-01 0900 2201 TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割 篠原 宏貴 キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞 【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)は

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B-1709502402

歯肉溝浸出液中グリコアルブミンおよびカルプロテクチンを指標とした糖尿病関連歯周炎の診断

梶浦 由加里

キーワード:糖尿病関連歯周炎,歯肉溝浸出液,グリコアルブミン,カルプロテクチン【目的】糖尿病(DM)は歯周炎のリスクファクターであり,糖尿病関連歯周炎(DM-P)の診断方法の確立は疾患の早期発見と治療に重要である。DMの診断には主に血糖値やHbA1c値が用いられているが,近年,グリコアルブミン(GA)が,比較的短期間の血糖コントロール状態を示す診断マーカーとして注目されている。一方,現在までに我々は歯肉溝滲出液(GCF)中のカルプロテクチン(CPT)が歯周病診断に有用なこと,またGCF中にGAが存在することを明らかにした。本研究では,GCF中のGAとCPTを指標としたDM-P診断の可能性および血液中のDMマーカーとの相関関係について検討を行った。【材料および方法】徳島大学病院を受診したDM-P,DM,歯周炎(P)患者および健常者(H)を対象として,GCFおよび血液を採取した。GCF量はぺリオトロンで,GCF中のCPTとGA量は市販のELISAキットで測定した。血中HbA1cと血糖値はBML社に測定を委託した。なお,本研究は徳島大学病院臨床研究倫理審査委員会の承認を得て行った。【結果および考察】GCF中のGA量および濃度は,DM群とDM-P群においてH群やP群よりも有意に高い値を示した。GCF中のCPT量は,P群とDM-P群においてH群やDM群よりも有意な高値を示し,CPT濃度はP群と比較しDM-P群で高いレベルを示した。また,GCF中のGA量および濃度と血中HbA1c値との間には有意な正の相関関係が認められた。【結論】糖尿病関連歯周炎の診断にGCF中のGAおよびCPTが有用な指標であることが示唆された。

B-1810002402

歯周基本治療が2型糖尿病患者のHbA1cに及ぼす影響 -臨床研究-

千葉 雅之

キーワード:糖尿病,HbA1c,歯周基本治療【緒言】近年,糖尿病患者における歯周基本治療がHbA1cの減少に有効であると言われている。昨年演者らは,第55回春期日本歯周病学会学術大会(東京)において,歯周基本治療によりHbA1cが著しく減少した鬱病を伴う糖尿病症例に関する報告を行った。しかし,歯周基本治療がHbA1cの減少に及ぼす影響については統計学的な有意差はないとの報告もあり,その詳細は明らかにされていないのが現状である。【目的】そこで演者らは,糖尿病患者における歯周基本治療がHbA1cの減少に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし臨床的研究を行ったところ興味ある知見が得られたのでここに報告する。【材料と方法】無作為に抽出した糖尿病患者(2型)30名を対象とし,徹底的な患者教育と歯周基本治療を行い,歯周精密検査データとHbA1cデータの経時的変化を記録し,統計学的有意差を求めた。【結果と考察】1.歯周基本治療により,HbA1cの値は初診時よりも有意に減少した。2.HbA1cの値が減少するまでの期間には個人差があった。3.セルフケアの動機づけが,HbA1cの減少に優位に関連した。【結論】歯周基本治療は,糖尿病患者におけるHbA1cの減少に有効であった。患者の生活背景を把握し,正しい情報提供で常に寄り添い,その声を聴きながらサポートし続ける歯周基本治療は,糖尿病患者におけるQualityofLifeを高め,結果的にHbA1cの減少をもたらす可能性が示唆された。

B-1910102105

齲蝕と歯周疾患のリスク評価の検討(第2報)

金子 至

キーワード:齲蝕,歯周疾患,リスク評価【目的】齲蝕と歯周疾患のリスク評価をデータベース化することで,個々の病態に応じた治療やメインテナンスの参考にする。【材料および方法】多変量解析(数量化理論1類)を用いて,齲蝕病態(DMF歯数),歯周病病態(平均PPD)のリスクを解析し,その結果に基づいて,MicrosoftOfficeAccessを用いてデータベース化を試みた。その際,臨床で簡潔に入力でき,かつ患者にわかりやすく表現することに留意した。なお,他に工夫した点として以下が挙げられる。①設問入力により,齲蝕病態及び歯周病病態の点数並びにリスク判定を,多変量解析から得られた数式に基づいて自動計算 ②設問入力モレ防止のため,未回答設問を色分け表示することで,オペレータへの視覚的アナウンスが可能 ③過去5回分の検査履歴(リスク評価,点数,検査担当者など)の確認&印刷が可能 ④検査結果印刷時,設問選択内容に応じてコメントの自動表示が可能【結果および考察】データベース化の利点として以下の点が挙げられる。①唾液検査等の資料が整理される。②履歴も含めて医療者が閲覧しやすくなる。③視覚的に説明することで患者の理解が得られやすくなる。④今後蓄積するデータを治療やメインテナンスにフィードバックできる。したがって,データベース化して管理することは,患者個々の病態に応じた治療やその後のメインテナンスを効果的に行なうために極めて有効と考えられる。なお,パラファンクションについては有効な評価方法がなく,上記数式から得られた結果に加味して,臨床実感として総合的にリスク評価することが現時点では実際的と考えられる。

B-2010202499

Porphyromonasgingivalis感染は関節リウマチモデルマウスにおいて関節炎症状を増悪させる

山川 真宏

キーワード:Pg感染,関節リウマチ【目的】Porphyromonasgingivalis(Pg)は歯周炎の主な原因菌であり,関節リウマチ(RA)などの全身疾患との関連が報告されている。近年,抗環状シトルリン化タンパク(CCP)抗体の陽性化が診断に重要なマーカーになっている。この抗体が認識するシトルリン化タンパクはPgによって生成されるという報告がある。本研究では,Pg感染がRA発症にどのように影響するかinvivoの実験系を確立し検討した。【材料および方法】RAモデルとして,SKGマウス(日本クレア)にLaminarin(LA,0.5µg/g/mouse)を腹腔内与したものを用いた。実験群は,PBSのみ(PBS群),LAのみ(LA群),Pg(4.0×106CFU/g/mouse,腹腔内注入)とLA(Pg+LA群),Pgのみ(Pg群)を42日後に解析した。関節炎の評価は,Arthritisscore(AS)を用いた。その後,関節組織を採取しmicroCTでの画像解析とHE染色にて各群を比較した。また,PgおよびCCPに対する血清抗体価と,血液中のMMP-3量をELISA法によって解析した。さらに,血清中のサイトカイン量はBio-PlexMouseCytokine23-plexassaykit(Bio-Rad)によって解析した。【結果および考察】Pg+LA群では,LA群およびPBS群と比較して,ASの有意な上昇がみられた。microCT解析ではPg+LA群で明らかな関節の破壊を認めた。組織像では,Pg+LA群で多数の炎症性細胞浸潤がみられた。Pgに対する血清抗体価は,Pg+LA群及びPg群が,他の群と比較して有意に上昇した。また,CCPに対する血清抗体価および血清中のMMP-3量は,Pg+LA群が他の群と比較して有意に上昇した。血清中のIL-6,CXCL1およびMIP-1α量は,Pg+LA群が特に高値を示した。以上から,Pg感染はRAマウスモデルにおいて,RAを誘導または増悪に関与する可能性が示された。

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B-2110403103

トンネルβ-TCP骨補填材を用いた歯槽堤保存術-イヌでの6ヶ月評価-

井川 貴博

キーワード:歯槽堤保存術,骨補填材,β-TCP【目的】抜歯後の歯槽堤吸収を防ぐ材料として骨補填材が研究されている。これまでに骨形成を促進するとされる孔径300µmのトンネル構造を組み合わせた,ブロック状のトンネル型β-TCPを作製し,顎堤保存に対する効果を2ヶ月の観察期間で評価し,早熟な骨形成を認めた事を報告した。本研究では長期経過について評価することを目的として実験を行った。【材料と方法】ビーグル成犬(オス)6頭を使用した。上顎左右第一前臼歯頬側に近遠心幅4mm,深さ6mmの歯根面に至る骨欠損を外科的に作製し,同歯を抜歯し抜歯窩を掻爬した。実験側ではトンネルβ-TCPを欠損部に補填し,対照側には何も補填せず縫合した。術後24週で標本を採取しmicroCT,脱灰切片(HE染色)で観察した。本研究は東京医科歯科大学動物実験委員会の承認を得ている。【結果と考察】術後の経過において両群ともに臨床的に著明な炎症所見は認められなかった。早期に1頭で補填材の脱落を認めた。臨床所見にて対照群では歯槽堤に嵌凹を認めたが,実験群では抜歯前と同程度の幅であった。microCT画像にて,両群ともにある程度の歯槽骨の再生が認められたが,骨欠損中央部および骨頂部で実験群の方が水平的骨幅が有意に大きかった。組織所見にて,実験群ではトンネルβ-TCPの周囲に緻密な骨形成および既存の歯槽骨と連続した像が観察された。また,2ヶ月の組織像と比べβ-TCPの歯槽骨への置換が多く認められ,成熟した新生骨所見が認められた。【結論】本材料が歯槽堤保存術に有用な材料であることが示唆された。

B-2210502504

ナノβ-TCPコーティングスキャフォールドとFGF2併用による歯周組織治癒

小川 幸佑

キーワード:ナノβ-TCP,スキャフォールド,FGF2,歯周組織治癒【目的】β-三リン酸カルシウム(β-TCP)をナノサイズ粒子にすることで,表面積が拡大され生体活性が上昇することが知られている。また線維芽細胞増殖因子(FGF2)は創傷治癒や血管新生を促進する報告がある。本研究ではナノβ-TCPでコーティングしたスキャフォールドを作製,FGF2と併用してイヌ1壁性骨欠損モデルへ埋植した場合の歯周組織治癒について検討した。【材料および方法】β-TCP(富田製薬)をナノサイズ(平均84nm)に粉砕後に分散液を作製,コラーゲンスキャフォールド(6×6×3mm,テルダーミス,オリンパステルモバイオマテリアルより提供)をコーティングして,ナノβ-TCPスキャフォールドとした。はじめにSEM観察,細胞および生体親和性の評価を行った。次にイヌ下顎前臼歯に1壁性骨欠損(幅3mm,高さ5mm)を作製して,露出根面をルートプレーニング後,EDTAで処理した。その後コラーゲンスキャフォールド,ナノβ-TCPスキャフォールド,及びFGF2(50µg/pcs,KCB-1D,科研製薬より提供)を含有させたナノβ-TCPスキャフォールドを埋入した。4週目に組織学的評価を行った。【結果および考察】SEM観察においてコラーゲン表面にナノβ-TCP粒子の均一な付着を認め,また細胞・生体親和性は良好であった。イヌ骨欠損モデルでは,ナノβ-TCPスキャフォールドの埋入によって歯槽骨,歯根膜,セメント質の形成が促進され,歯肉退縮を抑制した。FGF2を併用すると形成量がさらに上昇した。また骨性癒着,スキャフォールドの残存は認めなかった。以上の結果から,ナノβ-TCPコーティングスキャフォールドとFGF2の併用は歯周組織治癒に有効であることが示唆された。

B-2311002504

FGF2含有コラーゲンハイドロゲルスキャフォールドの根分岐部II級骨欠損への応用

百瀬 赳人

キーワード:FGF2,コラーゲンハイドロゲルスキャホールド,歯周組織治癒【目的】当教室ではコラーゲンハイドロゲルスキャフォールドが,骨再生療法に有用であることを報告してきた。また線維芽細胞増殖因子(FGF2)は創傷治癒や血管新生を促進する報告がある。そこで,FGF2とスキャフォールドを併用して,イヌ根分岐部II級骨欠損に埋入した場合の歯周組織治癒に与える効果を検討した。【材料および方法】コラーゲンハイドロゲルにFGF2(50µg,フィブラストスプレー。科研製薬)を混和後,コラーゲンスキャフォールド(テルダーミス,オリンパステルモバイオマテリアルより提供)に注入した。ビーグル犬の前臼歯部に高さ5mm,水平的深さ3mmの根分岐部II級骨欠損を作成,露出根面をルートプレーニングした。根面をEDTAで処理後,FGF2含有スキャフォールドを埋入した。またFGF2を含有しないスキャフォールド移植群,コントロールとして何も移植しない群を設定した。1週,4週後に組織学的観察および計測を行った。【結果および考察】1週においてスキャフォールドへの細胞のイングロースが観察され,FGF2は骨形成を促進した。コントロールでは肉芽組織の形成と上皮の侵入を認めた。スキャフォールド埋入後4週では歯槽骨,歯根膜,セメント質の形成が観察され,FGF2の添加は形成量を促進した。スキャフォールドは,ほぼ全て吸収置換されていた。また各項目について頬舌的に形成量を分析した結果,分岐部開口部付近の形成量はコントロールに比較して大きな差を認めた。骨性癒着は認めなかった。以上の結果から,コラーゲンハイドロゲルスキャフォールドの埋入は歯周組織治癒に有効であり,FGF2の併用によってその効果が向上することが示された。

B-2412402402

口腔衛生指標によるFRAX®の10年間骨折リスクの推定に関する検討

田口 明

キーワード:FRAX,骨折リスク,口腔衛生【目的】近年WHOを中心に「10年間骨折リスク評価ツール(FRAX®)」が開発されたが,これで計算される骨折リスクと口腔衛生指標の関係を検討した研究はない。本研究は,口腔衛生指標とFRAX®による骨折リスクとの関係の有無と口腔衛生指標による高骨折リスク群スクリーニングの可能性を検討した。【方法】対象は松本歯科大学病院歯周病科を受診し,同意の得られた40~87歳の187名(男性91名,女性96名)とした。被験者の現在歯数,歯周組織検査によるプロービングデプス(PD)およびクリニカルアタッチメントレベル(CAL)を口腔衛生指標とした。またFRAX®算出の必要項目について調査した。本研究は松本歯科大学倫理委員会の承認(129号)を受けた。単変量解析にて主要骨粗鬆症性骨折リスクおよび大腿骨近位部骨折リスクと口腔衛生指標との関係を,Pearsonの単相関,t検定にてFRAX®の各項目と口腔衛生指標との関係を,ROC解析にて口腔衛生指標による主要骨粗鬆症性骨折リスクが評価できるかを分析した。【結果】単変量解析では,主要骨粗鬆症性骨折は口腔衛生指標とは関連しなかった。大腿骨近位部骨折は現在歯数で有意となったが,年齢調整後は無関係となった。FRAX®の構成因子(11項目)と口腔衛生指標との関係では,現在歯数と年齢に関係が見られた。喫煙者ではPDおよびCALともに大きく,糖質コルチコイド使用者もCALが有意に大きかった。口腔衛生指標すべてにおいて,骨折リスクのどの閾値に対してもROC曲線下面積は0.7未満で,有用なスクリーニング指標ではないと示された。【結論】現在歯数および歯周病の指標はFRAX®による骨折リスクと関係はなく,高骨折リスク群をスクリーニングできないことが示された。

Page 8: 000 jsps57 full100 B-01 0900 2201 TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割 篠原 宏貴 キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞 【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)は

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B-2512502402

空気袋を用いた嚥下センサーの嚥下内視鏡を基準とした検査能力の解析

庄司 茂

キーワード:空気袋,嚥下,内視鏡歯周病問題の一つとして,摂食嚥下障害者での誤嚥性肺炎が指摘されている。このことは唾液とともに気管に入る口腔内細菌が問題となる。誤嚥性肺炎防止には,口腔内の衛生状態向上とともに,患者の摂食・嚥下障害の病態や食物の嚥下動態を評価し,把握することが極めて重要である。本研究の目的は,新たに開発した空気袋嚥下センサーが,水・唾液そして食物の嚥下動態を検出し,記録出来るかどうかを,嚥下内視鏡画像との比較で検討することである。「実験材料と方法」本研究は,東北大学大学院歯学研究科研究倫理専門委員会の承認を得て行った。空気袋嚥下センサーは,塩化ビニルシートに挟まれたスポンジによって形成される空気袋を頸部に貼り付けることにより,舌骨や喉頭隆起,喉頭蓋閉鎖音,そして頸部咀嚼筋群の動きを空気振動として捉え,この振動を圧電素子で電気信号に変える。この電流変化を記録する。嚥下内視鏡装置としては,オリンパス社製耳鼻咽喉ビデオスコープENF-VQを用いた。嚥下動態の観察は,嚥下能力検査で使われている「反復唾液嚥下テスト」「改訂水飲みテスト」「食物テスト(プリン)」に沿って行ったものを,画像とアナログデータを同時記録できるAQ-VU(TEAC)に記録し解析した。「結果」嚥下内視鏡観察での嚥下の開始からの咀嚼期(準備期)・口腔期・咽頭期・食堂期の一連の流れに沿って,空気袋嚥下センサーからのデータを記録出来た。「考察」今回の研究の被験者は嚥下機能に問題が無いと考えられる,若い男女7名であった。今後,半身麻痺やパーキンソン病などにより嚥下障害がみられる患者におけるデータを採取し,解析していきたい。

B-2613002402

高脂血症患者における高感度CRPに対する歯周病の影響

寺田 裕

キーワード:高脂血症,高感度CRP,スタチン【目的】高感度CRPは血清脂質とは独立した動脈硬化のリスクファクターであることが知られている。またスタチンは高感度CRPを低下させる最も有効な治療薬であることが知られているが,スタチン治療中の患者における高感度CRPに与える歯周病の影響についてはほとんど報告がない。そこで本研究はスタチン治療中の患者における高感度CRPに与える歯周病の影響を検討する目的で高脂血症患者の歯周組織検査を行った。【材料と方法】北海道医療大学病院内科に通院中の132名の患者を対象として,内科的検査とともに歯周組織検査を行った。全被験者のなかでスタチン投与を受けている患者を,スタチン投与群としてサブ解析を行った。全被験者およびスタチン投与群患者において高感度CRPとそれ以外の各変数の相関を検討した後,高感度CRPを従属変数,高感度CRPと有意な相関が認められた変数を独立変数として多変量解析(重回帰分析等)を行った。【結果と考察】歯科および内科検査値においてスタチン投与群患者では,総コレステロールおよびLDLコレステロールが全被験者群と比較して有意に低かった以外は,特記すべき差は認められなかった。多変量解析(重回帰分析)の結果,歯科検査項目では全被験者およびスタチン投与群患者のどちらも,4mm以上の歯周ポケットを有する割合(%)の存在が高感度CRPに対して有意に関連しているのが認められた。以上のことからスタチン治療と歯周病治療は,高感度CRPの改善に相加的な役割を果たすことが推測された。

B-2713102402

TNF抑制療法中の関節リウマチ患者における血漿アミノ酸と歯周状態

小林 哲夫

キーワード:関節リウマチ,TNF抑制療法,血漿アミノ酸,歯周状態【目的】腫瘍壊死因子alpha(TNF-alpha)は特定のアミノ酸の代謝酵素の発現を制御することや,TNF抑制療法は関節リウマチ(RA)と歯周炎の臨床症状を改善することが報告されている。そこで,本研究では,TNF抑制療法抑制の有無で血漿アミノ酸レベルと歯周状態が異なるかを比較・検証した。【材料および方法】インフォームドコンセントが得られ,TNF抑制治療中のRA患者(RA-TNF群)26名およびコントロールRA患者(RA-C群)26名を対象に,歯周検査,RA検査,血漿アミノ酸測定を行った。対照群として,健常者29名についても同様の検査・測定を行った。【結果および考察】RA-TNF群ではRA-C群と比べてBOP陽性部位の割合が有意に低かったが,それ以外の指標・測定値において有意な群間差は認められなかった。21アミノ酸のうち,3アミノ酸(glutamicacid, tryptophan,ornithine)の血漿濃度においてRA-TNF群とRA-C群との間に有意差が認められた。更に,RA患者52名を対象にアミノ酸濃度と歯周状態との関連性を解析したところ,tryptophan濃度とBOPとの間にのみ有意な負の相関を認めた。以上から,RA患者ではTNF抑制療法の有無でアミノ酸プロファイルや歯周状態が異なり,tryptophan濃度とBOPとの関連性が示唆された。会員外共同研究者:村澤 章博士,中園 清博士,伊藤 聡博士,小林大介博士(新潟県立リウマチセンター),味の素株式会社イノベーション研究所

B-2813302599

メンテナンス中の歯の喪失について 1.歯の喪失の6割は歯根破折が原因

辻根 蛍子

キーワード:メンテナンス,歯の喪失,歯根破折【目的】歯のメンテナンスで歯の寿命が延び,健康で自立した豊かな人生を送れるが,過去の治療や現在の生活習慣が原因で歯を失うことがあり,歯を失う原因を知りそのリスクを回避することが大切です。今回,メンテナンス患者のメンテナンス中の歯の喪失とリスクを検討した。【材料と方法】5年間以上メンテナンスの219名(男性59人,女性160)を対象に,メンテナンス中の歯の喪失の有無を性別,年代別,部位別,疾患別で分析し,また喪失した歯の治療状態を調べた。【結果と考察】喪失率:44.7%,喪失本数:0.83本 1.性別:女性>男性。2.年代別:50歳代男性と70歳代女性で高く,平均歯数の2.3倍,60歳代男性は平均の0.7倍。3.部位別:上顎>下顎,大臼歯が50%以上,下顎大臼歯は下顎の歯の喪失の7割で前歯,小臼歯は7割が上顎。4.疾患別:喪失人数,喪失本数とも6割が歯根破折,3割が歯周病,う蝕は稀。部位疾患:前歯の9割が上顎,小臼歯と大臼歯の6割が破折,上顎は歯周病も高い。性・年代・疾患別:破折は男女とも50歳代,70歳以上で高く,歯周病は50歳代,70歳以上の女性で高い。疾患別の平均喪失本数:歯周病>破折。5.歯の状態:無髄歯,クラウン等が85%以上,メタルコアが6割以上。疾患別歯の状態:破折の100%が無髄歯,メタルコアやクラウン等も多く,歯周病の6割が無髄歯,メタルクラウン等でメタルコアは少。6.年代別歯数:歯の喪失なし:40歳代で25本以下,50歳代で20本未満があり。喪失なし:30歳代で25本以下,40歳代で20本未満があり,喪失の有無で歯数に10年以上の差があり。【結論】過去のう蝕の治療が主に関与して,メンテナンス中に45%の方が歯を喪失した。

Page 9: 000 jsps57 full100 B-01 0900 2201 TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割 篠原 宏貴 キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞 【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)は

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B-2913402599

メンテナンス中の歯の喪失について 2.歯の喪失の原因に糖質摂取過剰が関与

高志 尚美

キーワード:メンテナンス,歯の喪失,糖質摂取過剰【目的】近年,食生活が変化し軟らかい糖質の多い食品を早食い・食べ過ぎて,肥満・糖尿病などの生活習慣病が増加している。また糖質の多い食事で起こるう蝕・歯周病は,歯を喪失し生活習慣病に繋がり健康寿命に影響する。少子高齢化と医療費・介護人口が急増する今,歯を喪失するリスクを知ることは有益で,今回,歯を喪失した方の生活習慣を検討した。【材料と方法】破折・歯周病でメンテナンス中に歯を喪失した男性24人,女性76を対象に,歯の処置と歯軋り,歯列不正・咬合異常,食生活,嗜好品,生活習慣について調べ,歯の喪失に何が関与しているか調べた。【結果と考察】1.歯の処置と歯軋り:破折・歯周病で歯を喪失した方の9割に歯軋りと無髄・補綴歯(過去の炎症コントロール不良)が多く,過剰な力に対しメタルコアで破折を,歯周病の連結冠が抵抗し歯を喪失した。2.歯列不正・咬合異常:歯を喪失した50%に乳歯う蝕が関係する歯列不正が初診時にあり,更にメンテナンス中に歯の動揺が増加し50%に咬合異常を生じた(現在の力のコントロール不良)。3.食生活:殆どに糖質摂取過剰が見られ歯軋りと相関(現在の糖質のコントロールが力のコントロールに影響)。4.嗜好品:飲酒・喫煙・硬い物・野菜不足・魚不足等と関係なし。5.生活習慣:運動不足・睡眠不足・ストレスが70%以上に多少あるが,歯の喪失とブラッシングの回数や時間に関係なく現在の炎症のコントロールに問題なし。【結論】過去の炎症のコントロール不足で処置した無髄・補綴歯が多く歯列不正もあるリスク患者に,現在の糖質摂取過剰が歯軋りを生み力のコントロール不良を惹起し,歯の動揺の増大と破折を起こし歯を喪失した。

B-3013502599

メンテナンス中の歯の喪失について 3.糖質のコントロールの重要性

篠原 啓之

キーワード:メンテナンス,歯の喪失,糖質コントロール【目的】メンテナンス中に歯を喪失しなかった方の口腔状態と生活習慣を過去のう蝕処置の多少で分類し,更に歯を喪失した方と比較し,過去のう蝕と現在の炎症,力,糖質の3つのコントロールがメンテナンス患者にどのように影響し歯を喪失したかを検討した。【材料と方法】メンテナンス中に歯を喪失しなかった方を対象に,歯列不正,咬合異常,歯軋りの習慣,食生活,嗜好品,生活習慣について,補綴・無髄歯の少ない「健全歯群」と多い「無髄・補綴群」に分類し,また破折・歯周病で歯を喪失した「喪失群」と比較し,歯の喪失に何が関与していたか調べた。【結果と考察】(3群の相違)1.健全歯<無髄・補綴歯=喪失群:無髄歯,補綴歯。2.無髄・補綴歯群<健全歯群=喪失群:歯軋り,糖質摂取過剰。3.無髄・補綴歯群<健全歯群<喪失群:歯列不正。4.無髄・補綴歯群=健全歯群=喪失群;歯の動揺の増加,咬合異常,嗜好品,生活習慣,糖質摂取過剰と歯軋りの相関性。(う蝕・歯軋り・糖質過剰)1.健全歯:乳歯う蝕で永久歯の歯列不正が多いが永久歯う蝕が少なく,糖質過剰で歯軋りが多いが過剰な力に抵抗する補綴物が少ないため,歯の動揺で対応し喪失を免れた。2.無髄・補綴歯:永久歯う蝕が多く補綴物が多いが歯列不正が少なく,糖質摂取過剰が招く歯軋りが少なく力がコントロールされ喪失を免れた。【結論】過去の炎症のコントロール不足(糖質摂取過剰)で無髄・補綴歯が多くても,糖質摂取の調整で歯軋りが減少し,力がコントロールされるとメンテナンス中に歯を喪失するリスクが軽減される。よって,炎症のコントロール以上に糖質のコントロールが重要である。

B-3114003002

歯周病及び予防の効果的ブラッシグ法(簡単に歯周ポケットを清掃出来るブラッシング法)

勝野 雅穂

キーワード:歯周縁下,プラーク・コントロール,毛先の固定【目的】現在正しい歯の磨き方として一般的に採用されているバス法,スクラビング法等は歯肉縁下・歯周ポケットの清掃は殆ど期待できない。従って,一度歯周病に罹患した場合,丁寧な歯磨きと共にこまめに(少なくとも1~2週に一度)プロのケアを受けなければ(現実的に不可能)治癒も予防も出来ない。そこで,簡単に歯周ポケットまでプラークコントロールが出来,歯周病・歯周病予防に役立つブラシング法を考える。材料-毛の部分の長さ2.5cm弱,毛の長さ1.1~1.5cm(すべて同じ長さ),3列で毛先の細い歯ブラシ【方法(基本)】歯ブラシを5本の指(下顎の口蓋側は筆を持つ要領で)で軽く握り,歯ブラシを歯軸に近い方向で,歯冠(Z)の先端から毛が2~3列出る様に歯肉(G)・Zに軽く触れ(力が入った時は一度力を抜いて毛を真直ぐにする),次に触れた毛を絶対に動かさない(小刻みでも)で歯ブラシ全体を小さく(1~2mmのつもりで)G・Zに平行に左右又は廻す様に振り(最小限の圧力で),Zを出来るだけ覆って行く。それ以上覆えない所で10~20回振ったら,そのままの動きをしながら少しずつ平行移動して行く。【結果】Gの部分の毛は固定され動かないが,Zの表面の毛は表面を滑りながら(なぜなら,Zから2~3列出ている部分は抵抗が無いのでそのまま反対側に向かって移動し,Zを覆って行くから)その延長線上にある歯肉溝・歯周ポケットへ入って行き,ポケット内の清掃を可能にする。【結論】このブラッシング法は歯周病・歯周病予防に多大な効能を期待できるものと考える。

D-0109002504

老化歯根膜におけるROS産生機構の解析

池上 久仁子

キーワード:歯根膜細胞,老化,活性酸素【目的】歯根膜細胞は,歯周病原性細菌やメカニカルストレスなどの環境ストレスに絶えず暴露されており,細胞老化に伴い,活性酸素種(ReaciveOxygenspecies :ROS)が細胞内に蓄積される。過剰なROSは,細胞構成蛋白やDNAを酸化,傷害する酸化ストレスとして機能することで組織の炎症を細胞レベルで誘導する。興味深いことに,老化細胞においてはROS産生の場となるミトコンドリアに異常が認められること,歯根膜細胞は,ROS産生を触媒する鉄を貯蔵するferritinを高発現することが報告されている。本研究では,老化歯根膜細胞においてミトコンドリアあるいは鉄触媒依存性に産生されるROSについて検討することを目的とした。【材料と方法】ヒト老化歯根膜細胞におけるミトコンドリアの数と大きさについては,MitoTrackerを用いて蛍光染色し,蛍光顕微鏡およびFACSにより解析した。形態学的な評価は,透過型電子顕微鏡像を用いて検討した。細胞内のROSおよびミトコンドリア内の活性酸素(mitoROS)についてはそれぞれCM-H2CDFDA,MitoSOXRedを用いて蛍光染色し,蛍光顕微鏡ならびにFACSにて解析を行った。ferritinの発現解析をqPCR,WB法で行い,鉄キレート剤を用いてその機能を検討した。【結果と考察】老化歯根膜細胞においては,ROSの強い蓄積が認められ,ミトコンドリアの減少,異常な形態,mitoROSの増加を伴っていた。老化歯根膜細胞において,mRNA,蛋白レベルでferritinの発現が上昇しており,鉄キレート剤処理により同細胞内ROSの発現が抑制された。歯根膜細胞においては,老化に伴い蓄積するミトコンドリアの異常と鉄触媒機構の破綻が細胞内の過剰なROS産生に影響することが示唆された。

Page 10: 000 jsps57 full100 B-01 0900 2201 TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割 篠原 宏貴 キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞 【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)は

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D-0209102504

オートファジーがヒト歯根膜細胞の細胞外基質産生に及ぼす影響

中村 友美

キーワード:オートファジー,細胞外基質,歯根膜細胞【目的】歯根膜細胞は細胞外基質を大量に産生することで,歯周組織の恒常性を維持するのみならず,同組織の修復・再生において重要な役割を担う。近年,細胞内タンパク質分解系であるオートファジーが,細胞の生死や代謝調節機構を制御することが明らかとなってきた。本研究は,歯根膜細胞が産生する主要な細胞外基質タンパクであるコラーゲンの生成を,オートファジーがどのように調節制御するか検討することを目的に行った。【 材 料 お よ び 方 法】 ヒ ト 歯 根 膜 細 胞(ScienCellResearchLaboratories社)を用い,オートファジー誘導剤(Rapamycin)および阻害剤(E-64d,PepstatinA:リソソームプロテアーゼ阻害剤)の添加によるコラーゲンの蓄積量の変化を,Siriusred染色を行うことで検討した。さらに抗Ⅰ型コラーゲン抗体を用いた細胞免疫染色を行い,培養細胞中のコラーゲンの局在を観察した。また,Ⅰ型コラーゲンのタンパクおよびmRNA発現をウェスタンブロット法,Real-timePCR法にてそれぞれ解析した。【結果および考察】E-64dおよびPepstatinAの添加により,培養細胞におけるコラーゲンの蓄積が亢進し,細胞免疫染色により細胞内Ⅰ型コラーゲンタンパクの凝集を認めた。また,E-64dおよびPepstatinA添加によりCOL1A1のmRNAレベルでの発現は減少し,Ⅰ型コラーゲンのタンパク発現(分子量)パターンは著しく変化した。一方Rapamycinの添加により,COL1A1mRNAの発現は上昇した。本研究により,リソソームの機能障害によるオートファジーの抑制は,歯根膜細胞内の異常コラーゲンの凝集を惹起し,その生成過程に影響を及ぼすことが示唆された。

D-0309202504

ヒト歯肉線維芽細胞での炎症性サイトカイン発現に対するmiRNAの影響

松井 沙莉

キーワード:歯肉線維芽細胞,炎症性サイトカイン,miRNA【目的】MicroRNA(miRNA)は,細胞内に存在する長さ20から25塩基のノンコーディングRNAで,様々な遺伝子の発現調節機能を有する。歯周炎の発症および進行におけるmiRNAの役割を解明するために,ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)での炎症性サイトカイン遺伝子発現に対するmiRNAの影響を検索した。【材料および方法】フラップ手術時およびインプラント2次手術時に得られた炎症性および非炎症性歯肉を用いてmiRNAマイクロアレイを行った。miRNAマイクロアレイの結果,炎症性歯肉で発現上昇が認められたmiRNA発現プラスミドをHGFに導入し,IL-1β(1ng/ml),IL-6(1ng/ml)またはTNF-α(10ng/ml)で24時間刺激後,全RNAを抽出し,炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,TNF-α)の遺伝子発現レベルをリアルタイムPCRで検索した。【結果および考察】炎症性および非炎症性歯肉を用いたmiRNAマイクロアレイの結果,has-mir-223,has-mir-200b,has-mir-150の発現上昇が認められた。HGFをIL-1βで刺激するとIL-6遺伝子発現は上昇したが,mir-200bをHGF内で発現上昇させるとIL-6mRNA量は減少し,mir-223またはmir-150発現上昇でIL-6mRNA量は増加した。HGFをTNF-αで刺激するとIL-1β遺伝子発現が上昇するが,上記3種類のmiRNA発現上昇でIL-1βmRNA量は減少した。現在miRNAのターゲット検索およびmiRNAの間接作用に関して検索中である。研究協力者:LimingZhou(StomatologyHospitalofAnhuiMedicalUniversity,China)

D-0409502599

CCR7経路が肥満およびインスリン抵抗性に及ぼす影響に関する検討

佐野 朋美

キーワード:脂肪組織炎症,ケモカイン,炎症細胞浸潤,脂肪肝,インスリン抵抗性【目的】重度歯周病が軽微な慢性炎症としてインスリン抵抗性を惹起することが示唆されているが,詳細な分子基盤は不明である。演者らはこれまで,炎症反応の波及を脂肪細胞―マクロファージ相互作用に求め,invitroにおける炎症反応の増幅機序について報告してきた。今回は,これらの結果を踏まえ,invitroにおける検討を行った。【材料と方法】高脂肪食誘導性肥満マウスとob/obマウスへの尾静脈からのLPS注入により,血中CCL19/MIP-3β濃度が増加したことから,成熟脂肪組織がCCL19の主な産生源と考えられた。そこで,その受容体であるCCR7に着目し,CCR7経路が肥満およびインスリン抵抗性発症に及ぼす影響についてマウスモデルを用いて検討した。通常食あるいは高脂肪食負荷野生型マウスおよびCCR7欠損マウスを用い,耐糖能やマウスの表現系を比較した。【結果と考察】野生型マウスに比べCCR7欠損マウスでは,高脂肪食負荷による体重,内臓脂肪量,血中インスリン濃度増加が抑制され,組織標本において,高脂肪食誘導性の肝臓への脂肪蓄積が著明に抑制された。さらに,肝臓および脂肪組織における炎症性サイトカイン遺伝子発現の抑制,肝臓における脂肪合成系に関するFAS,SREBP-1cなどの遺伝子発現の抑制が確認され,インスリン負荷試験において高脂肪食負荷によるインスリン感受性低下の改善が認められた。【結論】CCL19は成熟樹状細胞のリンパ節へのホーミングやT-細胞の遊走に関与することが知られている。本研究により,CCL19-CCR7経路が肥満およびインスリン抵抗性の発症に関与する可能性が示唆された。

D-0510002504

糖尿病ラット歯周炎に対するpoly(ADP-ribose)polymerase阻害薬の効果

足立 圭

キーワード:poly (ADP-ribose)polymerase,糖尿病,酸化ストレス【目的】Poly(ADP-ribose)polymerase(PARP)はDNA傷害の際に活性化し,NAD+を分解しニコチンアミドを合成する核内酵素である。過度のPARPの活性化は細胞機能不全が生じ細胞死を引き起こす。PARPの活性亢進は糖尿病合併症の進展に影響を及ぼしていることが知られている。歯周病と糖尿病は密接に関連している。我々はこれまでに,糖尿病ラット歯周炎においてニトロ化ストレスが亢進していることを明らかにした。ニトロ化ストレスの亢進はPARPを活性化することが報告されている。本研究ではPARP活性亢進が糖尿病における歯周炎進展に及ぼす影響を検討する目的で,糖尿病ラットに歯周炎を誘導し,PARP阻害薬投与による歯周炎抑制効果を観察した。【材料と方法】5週齢の雄性Sprague-Dawleyラットにstreptozotocin(STZ)を腹腔内投与し,糖尿病を誘導した。STZ投与2週間後に糖尿病群及び正常群に対し,上顎右側第二臼歯にナイロン糸を留置し,実験的歯周炎を誘導した。ナイロン糸留置と同時に,PARP阻害薬(1,5-Isoquinolinediol)を2週間連日投与した。歯周炎誘導2週間後に組織の評価を行った。【結果と考察】歯周炎誘導により歯肉におけるTNF-α及びiNOS遺伝子発現が増加し,炎症性細胞浸潤および歯槽骨の吸収が認められた。糖尿病群では正常群に比較し,すべての評価項目において有意な歯周炎の増悪を認めた。PARP阻害薬は正常群及び糖尿病群ともに歯周炎を改善したが,その効果は糖尿病群でより顕著であった。【結論】本研究より,PARP活性亢進が糖尿病における歯周炎の進展に関与していることが証明された。PARP阻害薬は糖尿病に伴う歯周炎に対する新規治療法として有用である可能性が示唆された。

Page 11: 000 jsps57 full100 B-01 0900 2201 TNF-α誘導性破骨細胞形成におけるPKRの役割 篠原 宏貴 キーワード:PKR,TNF-α,破骨細胞 【目的】二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)は

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D-0610102504

肥満病態におけるPLAP-1の機能解析

阪下 裕美

キーワード:PLAP-1,肥満,耐糖能,インスリン感受性【目的】近年,歯周病と肥満病態との関連性が示唆されているが,両病態を結びつけるメカニズムの詳細については,未だ不明な点が多い。一方,歯周組織の恒常性維持に重要な役割を担う分子であるPLAP-1は,歯根膜だけでなく脂肪組織においてもその発現が認められることが明らかとなり,脂肪代謝においてもPLAP-1は何らかの機能を果たしていることが示唆される。そこで本研究では,当教室で樹立したPLAP-1ノックアウト(KO)マウスにおける高脂肪食誘導性の肥満病態を解析することで,同病態におけるPLAP-1の機能の一端を明らかにすることを目的とした。【材料と方法】C57BL/6(WT)マウスの各組織におけるPLAP-1の発現をリアルタイムPCR法にて検討した。WTマウスに普通食または高脂肪食を与え,脂肪組織におけるPLAP-1の発現動態をリアルタイムPCR法にて検討した。WTマウスおよびPLAP-1KOマウスに4か月間,高脂肪食を与え,体重変化を検討し,さらに,グルコース負荷試験,インスリン負荷試験を行った。【結果と考察】リアルタイムPCR法の結果,脂肪組織において恒常的にPLAP-1が発現しており,高脂肪食投与2か月目で一過性に発現が上昇した。高脂肪食を与えたPLAP-1KOマウスでは,WTマウスと比較して体重増加は有意に低かった。さらに,グルコース負荷試験およびインスリン負荷試験の値が有意に低く,耐糖能およびインスリン感受性が高いことが明らかとなった。以上の結果から,PLAP-1は,脂肪組織において何らかの機能を果たすことにより,肥満病態の形成に対して促進的に機能している可能性が示唆された。【結論】PLAP-1KOマウスにおいては,高脂肪食誘導性の肥満病態が抑制されることが明らかとなった。

D-0710302206

LIPUS刺激はATP-P2X7受容体を介して骨芽細胞の石灰化物形成を促進する

間中 総一郎

キーワード:低出力超音波,P2X7受容体,骨芽細胞【目的】骨芽細胞への低出力超音波(Low-intensitypulsedultrasound:LIPUS)刺激が,ATP-P2X7受容体を介した骨形成に及ぼす影響を調べるため,骨芽細胞の石灰化物形成に及ぼすLIPUS刺激の影響を細胞生物学的に検討した。【材料と方法】マウス頭蓋冠由来株化骨芽細胞(MC3T3-E1細胞)を6wellplateに播種し,14日間LIPUS刺激を与えた。P2X7受容体の関与を調べるために,P2X7受容体選択的アンタゴニストであるA438079を用いた。LIPUSはOSTEOTROND2(伊藤超短波株式会社,東京)を用いて,超音波出力30mW/cm2・発振周波数3.0MHz・刺激時間30min/dayとした。LIPUS刺激後の細胞および培養上清を回収し,細胞外マトリックス(TypeⅠcollagen,Osteocalcin,Osteopontin,およびBoneSiaroprotein)の遺伝子発現をreal-timePCR法,タンパク発現をELISA法を用いて解析した。また,同条件下の細胞外リン酸濃度をMalachiteGreenPhosphateAssaykit,およびマトリックス層のCa量をCalciumE-Testkitを用いて解析した。【結果と考察】細胞外マトリックスの遺伝子およびタンパク発現は,LIPUS刺激群でコントロール群と比較して有意に増加した。また,A438079はLIPUS刺激によるこれらの発現の影響をコントロールレベルまで抑制した。細胞外リン酸濃度はLIPUS刺激群で培養日数とともに経時的に増加し,A438079によって減少した。さらに,マトリックス層のCa量はLIPUS刺激によって有意に増加し,A438079によって減少した。【結論】MC3T3-E1細胞へのLIPUS刺激は,ATP-P2X7受容体を介して骨芽細胞の細胞外マトリックス形成,細胞外リン酸濃度の上昇および石灰化物形成を促進することが示唆された。

D-0810403104

BoneMorphogeneticProtein9による骨芽細胞の分化

古江 きらら

キーワード:骨芽細胞,BMP9,MAPK,PI3K/Akt【目的】Bonemorphogeneticprotein(BMP)9は強力な骨形成作用を有し,間葉系細胞の骨芽細胞への分化を促進することが報告されている。このBMP9のシグナル伝達にはSmad経路が関与することが示されているが,MAPK(p38,ERK1/2,JNK)およびPI3K/Akt経路については十分に解析されていない。本研究ではBMP9による骨芽細胞の分化におけるMAPKおよびPI3K/Akt経路の関与について解析を行った。【材料および方法】マウス頭蓋骨由来の骨芽細胞株MC3T3-E1subclone4を用いた。RecombinanthumanBMP9(rhBMP9)を添加後,Alkalinephosphatase(ALP)活性およびカルシウム沈着に対する影響を調べた。Westernblot法によりシグナル伝達分子のリン酸化の解析,MAPKおよびPI3K経路に対する各種阻害剤のALP活性およびカルシウム沈着への影響の解析を行った。【結果および考察】rhBMP9刺激MC3T3-E1細胞ではALP活性およびカルシウム沈着の亢進が認められた。しかし,MAPKおよびPI3Kに対する各種阻害剤により,このALP活性およびカルシウム沈着の亢進は有意に抑制された。Westernblot法により,rhBMP9添加後にMAPK,Aktのリン酸化の亢進を認めた。ヒト骨芽細胞を用いた実験でも同様の結果が得られている。以上のことより,BMP9は骨芽細胞の分化を促進し,MAPKおよびPI3K/Aktが関与していることが示唆された。