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LS 研:IoT 時代の情報システム部門の役割と人材像 2016 年度 研究成果報告書 IoT 時代の情報システム部門の役割と人材像 -データ活用の高度化に向けて- アブストラクト 1. 研究の背景 今日において IoT (Internet of Things) というキーワードはビッグデータ、人工知能 (AI) とともに、 目にしない日はない。多くの企業は IoT による新たな価値創出やビジネス拡大に期待している。このよ うなビジネス環境の変化において、情報システム部門は企業における業務プロセスの効率化やスピード アップだけでなく、新たなビジネス創出を支える IT システムを提供する役割が求められている。 2. 研究の目標 ビジネス環境がこれまでにないスピードで急激に変化している一方で、情報システム部門はシステム 開発や運用保守業務に追われ、IoT などの新しい取り組みに必ずしも十分に関われていない。変化に対 応しようとしながらも、十分に応えられていないことが問題である。 本分科会では、IoT 時代において情報システム部門が期待される役割とは何か、期待に応えられる部 門に変わるにはどのような人材が必要かを明らかにすることを研究目標とした。 3. 研究のアプローチ IoT については、業種業態によって状況が異なる。そこで本分科会メンバーで認識を合わせるために、 IPA (独立行政法人情報処理推進機構) i コンピテンシーディクショナリー (iCD) を活用し、本分科会 メンバー各社の現状のタスク (AsIs) や目指すべき姿 (ToBe) の整理を行った (1 参照)情報システム部門が会社や経営にとって本当に必要な存在となるには、求められる役割は何かを洗い 出し、本分科会メンバーの意見だけではなく、先進企業のデータサイエンティスト、LS 研の幹事・委 員、および IPA の方々にヒアリングを行い、研究の方向性を模索した。 1 AsIs(左図)と ToBe(右図) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 調 調 ユーザー 情シス ベンダー 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 調 調 ユーザー 情シス ベンダー

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LS 研:IoT時代の情報システム部門の役割と人材像

2016年度 研究成果報告書

IoT時代の情報システム部門の役割と人材像

-データ活用の高度化に向けて-

アブストラクト

1. 研究の背景

今日において IoT (Internet of Things) というキーワードはビッグデータ、人工知能 (AI) とともに、

目にしない日はない。多くの企業は IoT による新たな価値創出やビジネス拡大に期待している。このよ

うなビジネス環境の変化において、情報システム部門は企業における業務プロセスの効率化やスピード

アップだけでなく、新たなビジネス創出を支える IT システムを提供する役割が求められている。

2. 研究の目標

ビジネス環境がこれまでにないスピードで急激に変化している一方で、情報システム部門はシステム

開発や運用保守業務に追われ、IoT などの新しい取り組みに必ずしも十分に関われていない。変化に対

応しようとしながらも、十分に応えられていないことが問題である。

本分科会では、IoT 時代において情報システム部門が期待される役割とは何か、期待に応えられる部

門に変わるにはどのような人材が必要かを明らかにすることを研究目標とした。

3. 研究のアプローチ

IoT については、業種業態によって状況が異なる。そこで本分科会メンバーで認識を合わせるために、

IPA (独立行政法人情報処理推進機構) の i コンピテンシーディクショナリー (iCD) を活用し、本分科会

メンバー各社の現状のタスク (AsIs) や目指すべき姿 (ToBe) の整理を行った (図 1 参照)。

情報システム部門が会社や経営にとって本当に必要な存在となるには、求められる役割は何かを洗い

出し、本分科会メンバーの意見だけではなく、先進企業のデータサイエンティスト、LS 研の幹事・委

員、および IPA の方々にヒアリングを行い、研究の方向性を模索した。

図 1 AsIs(左図)と ToBe(右図)

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事業戦略策定

事業戦略把握・策定支援

IT製品・サービス戦略策定

IT戦略策定・実行推進

システム企画立案

システム要件定義・方式設計

運用設計

基盤システム構築

アプリケーションシステム開発

ソフトウェア保守

ハードウェア・ソフトウェア製品導入

プロジェクトマネジメント

サービスデスク

IT運用コントロール

システム運用管理

システム評価・改善

事業継続マネジメント

情報セキュリティマネジメント

品質マネジメント

システム監査

調達・委託

新ビジネス・新技術の調査・分析と技術支援

データサイエンス

新たな価値創造による新規製品

・サービス開発

ユーザー 情シス ベンダー

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事業戦略策定

事業戦略把握・策定支援

IT製品・サービス戦略策定

IT戦略策定・実行推進

システム企画立案

システム要件定義・方式設計

運用設計

基盤システム構築

アプリケーションシステム開発

ソフトウェア保守

ハードウェア・ソフトウェア製品導入

プロジェクトマネジメント

サービスデスク

IT運用コントロール

システム運用管理

システム評価・改善

事業継続マネジメント

情報セキュリティマネジメント

品質マネジメント

システム監査

調達・委託

新ビジネス・新技術の調査・分析と技術支援

データサイエンス

新たな価値創造による新規製品

・サービス開発

ユーザー 情シス ベンダー

Page 2: 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 3 4 1 4 6 6 2 2 3 7 ... · また、IoT 時代の役割についてIPA が公開しているiCD を活用して可視 化した結果、本分科会メンバー各社が現在取り組めていないタスクは、データサイエンスであることが

LS 研:IoT時代の情報システム部門の役割と人材像

2016年度 研究成果報告書

4. 研究内容

情報システム部門が会社にとって本当に必要な存在なのか、その役割は何かを洗い出した結果、少な

くとも“ITガバナンス”、“IT システムの全体最適”、“IT システム連携”は、情報システム部門無くしては

行えないという結論となった。また、IoT 時代の役割について IPA が公開している iCD を活用して可視

化した結果、本分科会メンバー各社が現在取り組めていないタスクは、データサイエンスであることが

明確となり、今後取り組むべき課題であることがわかった。

IoT のビジネスへの活用の進展にともない、あらゆるデータを対象としたデータマネジメントが必要

となる。そこでデータマネジメントを行なうにあたり、本分科会メンバー各社にどのような課題が存在

するかヒアリングした結果、以下の 3つの課題が存在することがわかった。

課題 1: 従来の基幹系/業務系データ

課題 2: IoT 時代に生まれた新しい種類のデータ

課題 3: シャドーIT による未知のデータ

5. 本分科会からの提言

IoT 時代においてデータ活用の高度化への取り組みを具体的に進めるには、これらをまとめる部門と

人材が必要である。本分科会では、「データ活用の高度化は情報システム部門こそが率先して取り組み、

その役割を担うべきである」ことを提言する。

以下にデータ活用の高度化を実現する上での 5 つの役割を定義する (図 2参照)。

(1)ビジネス部門との橋渡し

(2)データ収集 (データの目利き、必要なデータを集める)

(3)データ分析(価値を引き出す)

(4)データインフラ提供 (データ収集・蓄積のためのインフラの構築)

(5)複数ベンダー管理、パートナー協業

6. 総括

本分科会で検討してきた提言内容は、すでに先進企業においては取り組みが進んでいることも判明し、

方向性の正しさや有効性が確認できた。今後情報システム部門が会社に貢献して行くためには重要な課

題であり、取り組んでいく必要がある。

LS研の参加企業においては、データ活用の高度化にできるだけ早く取り組むことを強く提案する。IoT

はひとつの IT トレンドであるが、その本質はデータをどう扱うかにある。その有効活用がデジタルビ

ジネスの加速を左右する。情報システム部門がデータをトリガーとしてビジネスに貢献し、トライ&エ

ラーを繰り返し行いながら、価値を見出していくことが重要である。IoT はチャンスであり、これをキ

ーワードにビジネスにいかに貢献するかは今後の情報システム部門の取り組み次第である。

図 2 データ活用の高度化の 5 つ役割

ビジネス部門

開発会社研究機関外部企業

データ分析

ビジネス部門との橋渡し

データインフラ提供

データ収集

お客様・他部門連携

情報システム内機能

複数ベンダー管理パートナー協業

会社外の組織連携

情報システム部門