特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ...

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鉱山の現場においても、生産工場と同じように安全が最優先ですが、その上で生産の効率を向上していくことも 大変重要な課題です。 コマツは鉱山機械が厳寒・酷暑を問わず、休みなく安全に稼働し続けるようメンテナンスを行うだけでなく、お 客様にとって「なくてはならない存在」になることを目指し、「ブランドマネジメント」という活動に取り組んで います。お客様の現場に密着して多くを学び、お客様の理想を共有し、理想を実現するための真の目標を導き出し ます。そしてこの目標を達成すべく、メーカーならではの視点から対応策を提案し、全ての経営資源や強みを結集 して、お客様と共に実践していくのです。 この実践の過程で、コマツの強みの一つである現場力(継続的改善の能力)が活かされます。 私達は1960年代から、製造現場を中心にTQMを通じて現場力を地道に積み上げ、磨き上げてきました。私達の継 続的改善とは、現場の状況を正確に把握し「見える化」する「ファクツ・ファインディング」から始まり、 PDCA(Plan-Check-Do-Act)サイクル」を回して、念入りに、そして諦めずに、常に向上することを目指してチャ レンジし続けることです。この地道な努力を通じ、私達はお客様とwin-winの関係を構築しています。 2011 ΞχϡΞϧϨϙʔτ ಛɿ ݱͰஙɺ٬ͱͷύʔτφʔγοϓ KOMATSU Annual Report 22

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鉱山の現場においても、生産工場と同じように安全が最優先ですが、その上で生産の効率を向上していくことも大変重要な課題です。コマツは鉱山機械が厳寒・酷暑を問わず、休みなく安全に稼働し続けるようメンテナンスを行うだけでなく、お客様にとって「なくてはならない存在」になることを目指し、「ブランドマネジメント」という活動に取り組んでいます。お客様の現場に密着して多くを学び、お客様の理想を共有し、理想を実現するための真の目標を導き出します。そしてこの目標を達成すべく、メーカーならではの視点から対応策を提案し、全ての経営資源や強みを結集して、お客様と共に実践していくのです。

この実践の過程で、コマツの強みの一つである現場力(継続的改善の能力)が活かされます。私達は1960年代から、製造現場を中心にTQMを通じて現場力を地道に積み上げ、磨き上げてきました。私達の継続的改善とは、現場の状況を正確に把握し「見える化」する「ファクツ・ファインディング」から始まり、「PDCA(Plan-Check-Do-Act)サイクル」を回して、念入りに、そして諦めずに、常に向上することを目指してチャレンジし続けることです。この地道な努力を通じ、私達はお客様とwin-winの関係を構築しています。

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

KOMATSU Annual Report 22

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(写真)WA1200(左)は、鉱山の積込み作業で使われます。鉱石をすくうバケットと、「腕」に相当するブームを結合するピンの摩耗が、パナウォニカ鉱山における改善活動のテーマになりました。

ピルバラ地域では、コマツの鉱山機械が既に200台以上稼働しています。ピルバラは砂漠に準じた気候に属し、夏季には50 を超す猛暑、どこまでも侵入して部品を磨耗させるダスト(砂埃)等、自然環境は極めて過酷です。コマツの鉱山機械も過酷な自然条件の中、365日、1日24時間休むことのない高稼働を続けています。十分なメンテナンスを行っても、わずかな問題一つを見逃せば不測の故障・休車につながります。この重要なお客様との強固な関係性を維持するためには、厳しい環境でも休車を防いで車両の稼働率を高め、生産性を最大にしなければならないのです。

2010年7月、KALは「信頼性向上チーム」を発足し、コマツグループの力を結集して、超大型ホイールローダーWA1200の稼働率を高めるアクションプランを実践。稼働率を向上させました。

信頼性向上チームの活動ピルバラの鉱山では1日24時間・年365日、鉄鉱石をWA1200ですくい、超大型ダンプトラックや鉱石運搬用の貨車に積み込み、搬出しています。積込み機であるWA1200が休車すれば、鉱山の生産性低下に直結します。

当時、WA1200の稼働率が課題であり、稼働率が高まらない理由がバケットとブームを結合するピン(軸)の摩耗であることは推定されていました。「ピンがなぜ、想定以上に摩耗するのか?」信頼性向上チームはその原因と対策をデータで実証すべく、活動のモデル現場として、ピルバラで摩耗の発生が最も多かった鉄鉱山、パナウォニカを選定。メンバーは2010年10月中旬から11月末までの期間、バースの北約1,400キロメートルにある鉱山に赴き、メンテナンス記録から原因を分析しました。

コマツオーストラリア(株)(KAL)最大のお客様であるリオティント社は鉄、石炭、その他金属の鉱山で露天掘りおよび地下掘りを行う巨大資源メジャーの一社です。オーストラリア北西部のピルバラ地域だけでも14

の鉄鉱山を保有し、そこでの生産量は年間2億トンを超え、2015年の目標として年間3億5千3百万トンへの増産を計画しています。

そしてピンの摩耗を防ぐ4つのアクションプラン、つまり「適切な点検」「適切な部品の使用」「適切な部品組付け」「適切な車両運転」を決定し、MTBF*(平均故障間隔)の50%改善とトラブル発生頻度の50%削減を

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

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(写真)WA1200(左)は、鉱山の積込み作業で使われます。鉱石をすくうバケットと、「腕」に相当するブームを結合するピンの摩耗が、パナウォニカ鉱山における改善活動のテーマになりました。

ピルバラ地域では、コマツの鉱山機械が既に200台以上稼働しています。ピルバラは砂漠に準じた気候に属し、夏季には50 を超す猛暑、どこまでも侵入して部品を磨耗させるダスト(砂埃)等、自然環境は極めて過酷です。コマツの鉱山機械も過酷な自然条件の中、365日、1日24時間休むことのない高稼働を続けています。十分なメンテナンスを行っても、わずかな問題一つを見逃せば不測の故障・休車につながります。この重要なお客様との強固な関係性を維持するためには、厳しい環境でも休車を防いで車両の稼働率を高め、生産性を最大にしなければならないのです。

2010年7月、KALは「信頼性向上チーム」を発足し、コマツグループの力を結集して、超大型ホイールローダーWA1200の稼働率を高めるアクションプランを実践。稼働率を向上させました。

信頼性向上チームの活動ピルバラの鉱山では1日24時間・年365日、鉄鉱石をWA1200ですくい、超大型ダンプトラックや鉱石運搬用の貨車に積み込み、搬出しています。積込み機であるWA1200が休車すれば、鉱山の生産性低下に直結します。

当時、WA1200の稼働率が課題であり、稼働率が高まらない理由がバケットとブームを結合するピン(軸)の摩耗であることは推定されていました。「ピンがなぜ、想定以上に摩耗するのか?」信頼性向上チームはその原因と対策をデータで実証すべく、活動のモデル現場として、ピルバラで摩耗の発生が最も多かった鉄鉱山、パナウォニカを選定。メンバーは2010年10月中旬から11月末までの期間、バースの北約1,400キロメートルにある鉱山に赴き、メンテナンス記録から原因を分析しました。

コマツオーストラリア(株)(KAL)最大のお客様であるリオティント社は鉄、石炭、その他金属の鉱山で露天掘りおよび地下掘りを行う巨大資源メジャーの一社です。オーストラリア北西部のピルバラ地域だけでも14

の鉄鉱山を保有し、そこでの生産量は年間2億トンを超え、2015年の目標として年間3億5千3百万トンへの増産を計画しています。

そしてピンの摩耗を防ぐ4つのアクションプラン、つまり「適切な点検」「適切な部品の使用」「適切な部品組付け」「適切な車両運転」を決定し、MTBF*(平均故障間隔)の50%改善とトラブル発生頻度の50%削減を

(図)要因分析のため、TQM活動でおなじみの図やグラフを活用しました。

(写真)パナウォニカ鉱山

(写真)WA1200バケット周りの作業。左に立っている作業員の頭付近にピンが通る穴が見えます。巨大なバケットの容量は20立方メートル、幅は約6.5メートルあります(標準バケット)。

目標に、リオティント社の現場チームと連携して12月から翌2011年9月まで改善活動を実施しました。*MTBF(Mean Time Between Failures)

アクションプランの実践

「適切な車両運転」では、チームは24名のWA1200オペレーターに対し、積込み作業の負荷を抑えピンの磨耗を防ぐための最適な運転方法や積込み方法を指導しました。一度に多くの鉱石をすくえばサイクルタイム(ダンプトラック1台への積込み時間)は短くなりますが、過負荷のためピンが磨耗し休車時間が増大します。鉱石をすくう量を減らせばピンの磨耗が軽減し、積込みピッチが早まることで作業生産性もあまり低下しないのです。

4つのアクションプランを実践するうえで、リオティント社の現場作業員や、ホイールローダーのオペレーターとのチームワークが重要でした。例えば「適切な部品の使用」では、お客様が自主整備によりピンを組み付

付け」の作業手順も指導しました。

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(図)要因分析のため、TQM活動でおなじみの図やグラフを活用しました。

(写真)パナウォニカ鉱山

(写真)WA1200バケット周りの作業。左に立っている作業員の頭付近にピンが通る穴が見えます。巨大なバケットの容量は20立方メートル、幅は約6.5メートルあります(標準バケット)。

目標に、リオティント社の現場チームと連携して12月から翌2011年9月まで改善活動を実施しました。*MTBF(Mean Time Between Failures)

アクションプランの実践

「適切な車両運転」では、チームは24名のWA1200オペレーターに対し、積込み作業の負荷を抑えピンの磨耗を防ぐための最適な運転方法や積込み方法を指導しました。一度に多くの鉱石をすくえばサイクルタイム(ダンプトラック1台への積込み時間)は短くなりますが、過負荷のためピンが磨耗し休車時間が増大します。鉱石をすくう量を減らせばピンの磨耗が軽減し、積込みピッチが早まることで作業生産性もあまり低下しないのです。

4つのアクションプランを実践するうえで、リオティント社の現場作業員や、ホイールローダーのオペレーターとのチームワークが重要でした。例えば「適切な部品の使用」では、お客様が自主整備によりピンを組み付

付け」の作業手順も指導しました。

(写真)最適な運転方法の指導も、WA1200のピン摩耗低減につながります。

(写真)パナウォニカ鉱山のWA1200

鉱山で働くということ

信頼性向上チームのリーダーに聞くCI活動の経験を経て、KAL信頼性向上チームリーダーのリー・シラムは「新しいアプローチだけに、特に最初の段階が難しかった」と振り返っています。「お客様は、保有する全ての車両を自分達の手でメンテナンスしています。なかでもWA1200は鉱山採掘フリート(車両群)の要となる重要な車両です。今回のCI活動では、私達はしばしばお客様のメンテナンス方法を評価し、変更しなくてはなりませんでした。お客様も自分達のやり方を本当に変えてよいのか迷うことがあります。そのとき最も大切なのは、お客様と議論を尽くし、推奨する方法が必ず鉱山に益をもたらすと納得していただくことなのです。」

「CI活動にはグループ社員同士、様々な職種同士のチームワークが不可欠です。例えば、鉱山に駐在するKAL

のエンジニアはもちろん、日本の生産技術者や、KALのサービスメカニック、そして私が所属する技術サービス部のメンバーとのチームワークも大切です。そして何より重要なのがお客様との強いチームワークです。お客様は私達をパートナーとして扱い、全幅の信頼を置いてくださいました」。またシラムは活動の中で「日本人スタッフと共同で作業しているうちに、CIの手法が、日本の日常業務に根ざした手段・手順なのだ」と分かってきました。「私達は『コマツウェイ 』からもっと得られるものがあるはずです。ファクツ・ファインディングの方法や、1ページの紙面に企画をまとめるコンセプトなど、学ぶところは数多くあります。KALのビジネスにも活か

やがて、狙った効果が現れました。2011年10月のデータを開始前の2010年5月のデータと比べると、MTBFが平均で43.5%改善し、トラブル発生頻度は25%改善したのです。この成果を受けて、リオティント社の資産管理部門とKAL信頼性向上チームは、同鉱山でのCI活動の継続を決定し、更に他の鉱山に活動を展開することでも合意に達しています。

活動期間中、信頼性向上チームのメンバーは、毎月、パナウォニカ鉱山を訪問しました。パースからは飛行機で片道1時間半のフライトに加え、自動車で2時間の道のりです。鉱山に着くと、2日から5日間宿泊して業務にあたります。鉱山は市街地から遠く離れ、唯一の宿泊施設はリオティント社やコントラクター*の社員専用なので、利用するには数週間前に手続きをしなければなりません。鉱山では早朝の4時30分に起床し、朝食後、午前6時のシフトが始まる前に採掘現場や工場に行って、車両の状況を確認します。シフトは夕方6時までですが、活動期間は南半球の夏季に当たり、しばしば気温が50 に達する環境は、車両にとっても働く人々にとっても忍耐を要するものでした。

*コントラクター:設備や機器の補修および鉱山業務の一部を請け負う会社

(図)要因分析のため、TQM活動でおなじみの図やグラフを活用しました。

(写真)パナウォニカ鉱山

(写真)WA1200バケット周りの作業。左に立っている作業員の頭付近にピンが通る穴が見えます。巨大なバケットの容量は20立方メートル、幅は約6.5メートルあります(標準バケット)。

目標に、リオティント社の現場チームと連携して12月から翌2011年9月まで改善活動を実施しました。*MTBF(Mean Time Between Failures)

アクションプランの実践

「適切な車両運転」では、チームは24名のWA1200オペレーターに対し、積込み作業の負荷を抑えピンの磨耗を防ぐための最適な運転方法や積込み方法を指導しました。一度に多くの鉱石をすくえばサイクルタイム(ダンプトラック1台への積込み時間)は短くなりますが、過負荷のためピンが磨耗し休車時間が増大します。鉱石をすくう量を減らせばピンの磨耗が軽減し、積込みピッチが早まることで作業生産性もあまり低下しないのです。

4つのアクションプランを実践するうえで、リオティント社の現場作業員や、ホイールローダーのオペレーターとのチームワークが重要でした。例えば「適切な部品の使用」では、お客様が自主整備によりピンを組み付

付け」の作業手順も指導しました。

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(写真)最適な運転方法の指導も、WA1200のピン摩耗低減につながります。

(写真)パナウォニカ鉱山のWA1200

鉱山で働くということ

信頼性向上チームのリーダーに聞くCI活動の経験を経て、KAL信頼性向上チームリーダーのリー・シラムは「新しいアプローチだけに、特に最初の段階が難しかった」と振り返っています。「お客様は、保有する全ての車両を自分達の手でメンテナンスしています。なかでもWA1200は鉱山採掘フリート(車両群)の要となる重要な車両です。今回のCI活動では、私達はしばしばお客様のメンテナンス方法を評価し、変更しなくてはなりませんでした。お客様も自分達のやり方を本当に変えてよいのか迷うことがあります。そのとき最も大切なのは、お客様と議論を尽くし、推奨する方法が必ず鉱山に益をもたらすと納得していただくことなのです。」

「CI活動にはグループ社員同士、様々な職種同士のチームワークが不可欠です。例えば、鉱山に駐在するKAL

のエンジニアはもちろん、日本の生産技術者や、KALのサービスメカニック、そして私が所属する技術サービス部のメンバーとのチームワークも大切です。そして何より重要なのがお客様との強いチームワークです。お客様は私達をパートナーとして扱い、全幅の信頼を置いてくださいました」。またシラムは活動の中で「日本人スタッフと共同で作業しているうちに、CIの手法が、日本の日常業務に根ざした手段・手順なのだ」と分かってきました。「私達は『コマツウェイ 』からもっと得られるものがあるはずです。ファクツ・ファインディングの方法や、1ページの紙面に企画をまとめるコンセプトなど、学ぶところは数多くあります。KALのビジネスにも活か

やがて、狙った効果が現れました。2011年10月のデータを開始前の2010年5月のデータと比べると、MTBFが平均で43.5%改善し、トラブル発生頻度は25%改善したのです。この成果を受けて、リオティント社の資産管理部門とKAL信頼性向上チームは、同鉱山でのCI活動の継続を決定し、更に他の鉱山に活動を展開することでも合意に達しています。

活動期間中、信頼性向上チームのメンバーは、毎月、パナウォニカ鉱山を訪問しました。パースからは飛行機で片道1時間半のフライトに加え、自動車で2時間の道のりです。鉱山に着くと、2日から5日間宿泊して業務にあたります。鉱山は市街地から遠く離れ、唯一の宿泊施設はリオティント社やコントラクター*の社員専用なので、利用するには数週間前に手続きをしなければなりません。鉱山では早朝の4時30分に起床し、朝食後、午前6時のシフトが始まる前に採掘現場や工場に行って、車両の状況を確認します。シフトは夕方6時までですが、活動期間は南半球の夏季に当たり、しばしば気温が50 に達する環境は、車両にとっても働く人々にとっても忍耐を要するものでした。

*コントラクター:設備や機器の補修および鉱山業務の一部を請け負う会社

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(写真)最適な運転方法の指導も、WA1200のピン摩耗低減につながります。

(写真)パナウォニカ鉱山のWA1200

鉱山で働くということ

信頼性向上チームのリーダーに聞くCI活動の経験を経て、KAL信頼性向上チームリーダーのリー・シラムは「新しいアプローチだけに、特に最初の段階が難しかった」と振り返っています。「お客様は、保有する全ての車両を自分達の手でメンテナンスしています。なかでもWA1200は鉱山採掘フリート(車両群)の要となる重要な車両です。今回のCI活動では、私達はしばしばお客様のメンテナンス方法を評価し、変更しなくてはなりませんでした。お客様も自分達のやり方を本当に変えてよいのか迷うことがあります。そのとき最も大切なのは、お客様と議論を尽くし、推奨する方法が必ず鉱山に益をもたらすと納得していただくことなのです。」

「CI活動にはグループ社員同士、様々な職種同士のチームワークが不可欠です。例えば、鉱山に駐在するKAL

のエンジニアはもちろん、日本の生産技術者や、KALのサービスメカニック、そして私が所属する技術サービス部のメンバーとのチームワークも大切です。そして何より重要なのがお客様との強いチームワークです。お客様は私達をパートナーとして扱い、全幅の信頼を置いてくださいました」。またシラムは活動の中で「日本人スタッフと共同で作業しているうちに、CIの手法が、日本の日常業務に根ざした手段・手順なのだ」と分かってきました。「私達は『コマツウェイ 』からもっと得られるものがあるはずです。ファクツ・ファインディングの方法や、1ページの紙面に企画をまとめるコンセプトなど、学ぶところは数多くあります。KALのビジネスにも活か

やがて、狙った効果が現れました。2011年10月のデータを開始前の2010年5月のデータと比べると、MTBFが平均で43.5%改善し、トラブル発生頻度は25%改善したのです。この成果を受けて、リオティント社の資産管理部門とKAL信頼性向上チームは、同鉱山でのCI活動の継続を決定し、更に他の鉱山に活動を展開することでも合意に達しています。

活動期間中、信頼性向上チームのメンバーは、毎月、パナウォニカ鉱山を訪問しました。パースからは飛行機で片道1時間半のフライトに加え、自動車で2時間の道のりです。鉱山に着くと、2日から5日間宿泊して業務にあたります。鉱山は市街地から遠く離れ、唯一の宿泊施設はリオティント社やコントラクター*の社員専用なので、利用するには数週間前に手続きをしなければなりません。鉱山では早朝の4時30分に起床し、朝食後、午前6時のシフトが始まる前に採掘現場や工場に行って、車両の状況を確認します。シフトは夕方6時までですが、活動期間は南半球の夏季に当たり、しばしば気温が50 に達する環境は、車両にとっても働く人々にとっても忍耐を要するものでした。

*コントラクター:設備や機器の補修および鉱山業務の一部を請け負う会社

(写真)パナウォニカの集落。鉱山関係者のために開発された町です。

オーストラリアで稼働するWA1200(右)とAHSダンプトラック930E-AT(左)。リオティント社は乳がん予防キャンペーン、および鉱山での女性雇用促進キャンペーンに協賛しており、これにちなんで、ダンプトラックの一部をピンク色に塗装しています。

せる極めて有効な手法だと思います。」

パナウォニカ鉱山の町西オーストラリア州ピルバラ地域にあるパナウォニカは、州都パースの北約1,400キロメートルに位置する孤立した集落です。1972年、2つの鉄鉱床で採掘を行うために開発されました。現在約700名が暮らし、うち449

名が鉱山に勤務(コントラクター会社の社員は含んでいません)。居住者の平均年齢は32歳です。

AHS ~「未来の鉱山」を共に創る~~リオティント社「未来の鉱山」プロジェクトとAHSサポートセンター~

リオティント社の夢を実現するため、コマツはグローバルな経営資源と技術を結集。無人ダンプトラックの実用化に向け、ピルバラ地区のリオティント社ウェスト・アンジェラス鉄鉱山において3年間の試験運行を実施しました。地道な問題解決も継続的に実施し、挑戦は続きました。

3年間、無人で稼働し続けた5台の超大型ダンプトラック「930E」(最大積載量:297トン)は、無災害で延べ5940万トンの鉄鉱石を運び、平均稼働率は90%以上という成果を挙げました。一日あたり14.6

時間無人で稼働し、日々11,000トンの鉱石を運び続けたことになります。

グローバルなチーム編成で取り組むしかしながら、この成果への道のりは、決して容易なものではありませんでした。3年前、この試験運行を成功させるため、コマツはグローバルなプロジェクトチームを編成しました。チームは、車両やシステムの維持管理を担当する「現場サポート担当」と、現場サポート担当を技術的に支援する開発・生産部門主体の「プロダクトサポート担当」からなり、メンバーは、現地メンテナンスの主体となるコマツオーストラリア(株)(KAL)に加え、ダンプトラックを生産するコマツアメリカ(株)(KAC)、管制システムを開発した米国のモジュラーマイニングシステムズ(株)(MMS)、そしてシステム全般を総括するコマツの3カ国4社から集められました。

コマツが開発した世界初の無人ダンプトラック運行システム(AHS、Autonomous Haulage System)は、お客様の理想である「鉱山の自動化」と「遠隔オペレーション」を実現し、安全性の向上や生産コストの削減などに最大限貢献するコマツの究極の経営資源の一つです。

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

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(写真)パナウォニカの集落。鉱山関係者のために開発された町です。

オーストラリアで稼働するWA1200(右)とAHSダンプトラック930E-AT(左)。リオティント社は乳がん予防キャンペーン、および鉱山での女性雇用促進キャンペーンに協賛しており、これにちなんで、ダンプトラックの一部をピンク色に塗装しています。

せる極めて有効な手法だと思います。」

パナウォニカ鉱山の町西オーストラリア州ピルバラ地域にあるパナウォニカは、州都パースの北約1,400キロメートルに位置する孤立した集落です。1972年、2つの鉄鉱床で採掘を行うために開発されました。現在約700名が暮らし、うち449

名が鉱山に勤務(コントラクター会社の社員は含んでいません)。居住者の平均年齢は32歳です。

AHS ~「未来の鉱山」を共に創る~~リオティント社「未来の鉱山」プロジェクトとAHSサポートセンター~

リオティント社の夢を実現するため、コマツはグローバルな経営資源と技術を結集。無人ダンプトラックの実用化に向け、ピルバラ地区のリオティント社ウェスト・アンジェラス鉄鉱山において3年間の試験運行を実施しました。地道な問題解決も継続的に実施し、挑戦は続きました。

3年間、無人で稼働し続けた5台の超大型ダンプトラック「930E」(最大積載量:297トン)は、無災害で延べ5940万トンの鉄鉱石を運び、平均稼働率は90%以上という成果を挙げました。一日あたり14.6

時間無人で稼働し、日々11,000トンの鉱石を運び続けたことになります。

グローバルなチーム編成で取り組むしかしながら、この成果への道のりは、決して容易なものではありませんでした。3年前、この試験運行を成功させるため、コマツはグローバルなプロジェクトチームを編成しました。チームは、車両やシステムの維持管理を担当する「現場サポート担当」と、現場サポート担当を技術的に支援する開発・生産部門主体の「プロダクトサポート担当」からなり、メンバーは、現地メンテナンスの主体となるコマツオーストラリア(株)(KAL)に加え、ダンプトラックを生産するコマツアメリカ(株)(KAC)、管制システムを開発した米国のモジュラーマイニングシステムズ(株)(MMS)、そしてシステム全般を総括するコマツの3カ国4社から集められました。

コマツが開発した世界初の無人ダンプトラック運行システム(AHS、Autonomous Haulage System)は、お客様の理想である「鉱山の自動化」と「遠隔オペレーション」を実現し、安全性の向上や生産コストの削減などに最大限貢献するコマツの究極の経営資源の一つです。

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

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Page 8: 特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ …dcnwis77.komatsu.co.jp/CompanyInfo/ir/annual/pdf/2012/ar12j_03.pdf · (写真)wa1200(左)は、鉱山の

(写真)AHS試験運行に向けて編成したグローバルチームは、再編成・強化を経て、2011年12月からAHSサポートセンタ(パース)で活動しています。

それら改善活動のテーマ数は、ダンプトラックの車体に関するものが5件、システムに関するものが20件に及び、項目別にみると安全性向上に関するものが9件、生産性向上に関するものが16件という内訳でした。

着実に成果を生みだす試験運行中、AHSは商品開発のPDCA(Plan-Do-Check-Act)を回す上でも大きな役割を果たしまし

た。

例えば降雨時、鉱山のダンプトラック走行路は極めて滑りやすくなります。オペレーターが経験に基づいて行う「慎重な運転」を再現すべく、プロジェクトチームはAHSシステムに新しいスリップ制御機能や、特定区間の速度制限機能を導入しました。人間の「経験や勘」をICTで再現する試みは困難でしたが、極めて効果的にスリップを防止することに成功しました。また障害物を感知する装置が誤作動した事例では、数多くのセンサーから得られる情報を収集・分析して原因を突き止め、AHSの制御プログラムを最適に設定することで、ダンプトラックの搬送量を7,000トン/月増大させることができました。

AHSは稼働データが高度に「見える化」されていることに加え、改善方策を迅速・的確に運行プログラムに反映し、多数の車両に水平展開することが可能です。AHSを導入することで、鉱山現場において更なる改善が期待できます。

2011年11月1日、コマツとリオティント社は、2015年末までにピルバラ地域の同社鉱山に少なくとも150台のAHSダンプトラックを導入するという覚書にサインしました。これは、コマツのグローバルなプロジェクトチームがリオティント社と一体となって、共に課題達成に取り組んだことにより、ウェスト・アンジェラス鉱山でのトライアル運行が成功した成果であると自負しています。

AHSサポートセンタの設立

覚書への調印直後の2011年12月、コマツは、KAC、MMS、KAL各社からなるグローバルチームを再編成した「AHSサポートセンタ」を設置し、本格導入プロジェクトの全体統括、ならびに稼働するAHSの運行管理やサポートの強化を図るとともに、2012年7月現在20名強のメンバーも、計画の進展に併せて増強する予定です。

プロジェクトチームのメンバーはリオティント社のソフトウェア・ハードウェア担当者と共同で試験運行を進め、AHSのシステムや無人ダンプトラック本体の特性を鉱山現場での実作業とすり合わせ、期待通りに稼働させるため、改善活動に取り組みました。

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KOMATSU Annual Report 29

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リオティント社が推進している構想「マイン・オブ・ザ・フューチャー(未来の鉱山)」は、生産コストの低減、安全衛生、環境保全、労働条件の向上など鉱山事業全般にわたる改革であり、各鉱山の無人ダンプ群を1,400キロメートル以上離れたパースから遠隔管理する壮大な計画も含まれています。コマツはブランドマネジメントを追求し、お客様にとって「なくてはならない存在」として夢の鉱山を実現すべく、その第一歩となるのが150台のAHSダンプトラック導入です。

リオティント社とコマツとのパートナーシップの深まり、グローバルチームワークの更なる進化、継続的な改善による生産性・稼働率の更なる向上 。「未来の鉱山」に向けて、150台のAHSダンプトラック導入活動は、着実に進展しています。

(写真)AHS試験運行に向けて編成したグローバルチームは、再編成・強化を経て、2011年12月からAHSサポートセンタ(パース)で活動しています。

それら改善活動のテーマ数は、ダンプトラックの車体に関するものが5件、システムに関するものが20件に及び、項目別にみると安全性向上に関するものが9件、生産性向上に関するものが16件という内訳でした。

着実に成果を生みだす試験運行中、AHSは商品開発のPDCA(Plan-Do-Check-Act)を回す上でも大きな役割を果たしまし

た。

例えば降雨時、鉱山のダンプトラック走行路は極めて滑りやすくなります。オペレーターが経験に基づいて行う「慎重な運転」を再現すべく、プロジェクトチームはAHSシステムに新しいスリップ制御機能や、特定区間の速度制限機能を導入しました。人間の「経験や勘」をICTで再現する試みは困難でしたが、極めて効果的にスリップを防止することに成功しました。また障害物を感知する装置が誤作動した事例では、数多くのセンサーから得られる情報を収集・分析して原因を突き止め、AHSの制御プログラムを最適に設定することで、ダンプトラックの搬送量を7,000トン/月増大させることができました。

AHSは稼働データが高度に「見える化」されていることに加え、改善方策を迅速・的確に運行プログラムに反映し、多数の車両に水平展開することが可能です。AHSを導入することで、鉱山現場において更なる改善が期待できます。

2011年11月1日、コマツとリオティント社は、2015年末までにピルバラ地域の同社鉱山に少なくとも150台のAHSダンプトラックを導入するという覚書にサインしました。これは、コマツのグローバルなプロジェクトチームがリオティント社と一体となって、共に課題達成に取り組んだことにより、ウェスト・アンジェラス鉱山でのトライアル運行が成功した成果であると自負しています。

AHSサポートセンタの設立

覚書への調印直後の2011年12月、コマツは、KAC、MMS、KAL各社からなるグローバルチームを再編成した「AHSサポートセンタ」を設置し、本格導入プロジェクトの全体統括、ならびに稼働するAHSの運行管理やサポートの強化を図るとともに、2012年7月現在20名強のメンバーも、計画の進展に併せて増強する予定です。

プロジェクトチームのメンバーはリオティント社のソフトウェア・ハードウェア担当者と共同で試験運行を進め、AHSのシステムや無人ダンプトラック本体の特性を鉱山現場での実作業とすり合わせ、期待通りに稼働させるため、改善活動に取り組みました。

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

KOMATSU Annual Report 30

Page 10: 特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ …dcnwis77.komatsu.co.jp/CompanyInfo/ir/annual/pdf/2012/ar12j_03.pdf · (写真)wa1200(左)は、鉱山の

ロス・ペランブレス鉱山(以下ペランブレス社)は、チリの首都サンティアゴの北東約240キロメートルに位置し、標高3,600メートル以上の高地に広がる2.5キロメートル×2.2キロメートルの現場から年間41万1,800トン(2011年)の鉱石を産出する、世界最大級の露天掘り銅鉱山です。

この鉱山で使われる鉱山機械の販売、サービスを担当するのが、コマツグループの代理店コマツチリ(株)(KCH)です。

KCHは、この鉱山で稼働する超大型ダンプトラック930E×43台という大規模なフリートを全てリースし、メンテナンスも担当する「フルメンテナンス契約」を締結しています。この契約を通じ、KCHは鉱山の要となるダンプトラックに包括的な責任を負う、極めて重要なパートナーとなっています。「鉱山機械の性能を最高度に発揮させたい」というお客様の目標を実現すべく、KCHはブランドマネジメントのアプローチから、ICTを活用してダンプトラックの稼働率を高め、車両の性能をフルに発揮させる活動を推進しました。それがバイタル・サイン プロジェクトです。

バイタル・サイン プロジェクトによる予防保全の強化「バイタル・サイン」とはもともと医学用語で、脈拍や血圧など「人間の健康状態を判断する指標」のことです。鉱山機械もバイタル・サイン に当たる各種センサーの情報や警報を発信しますが、これを活用し、予防保全を行えば、車両の稼働率は向上します。

KCHのバイタル・サイン プロジェクトは、このような鉱山機械のバイタル・サイン、つまり各種情報・警報の発生原因や、緊急性、重大性、必要とされる処置などをデータベース化することによって、よりスピーディで的確なプロダクトサポートを行い、車両の稼働率を更に高める活動です。

鉱山機械のセンサー情報としては、コマツ独自の車両モニタリングシステム「KOMTRAX Plus*」からの情報

(写真)ロス・ペランブレス銅鉱山。銅鉱山は、鉱脈に沿って縦に深い鉱山になるのが特徴です。写真右端に小さく見えるのが930Eダンプトラック。

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

KOMATSU Annual Report 31

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ロス・ペランブレス鉱山(以下ペランブレス社)は、チリの首都サンティアゴの北東約240キロメートルに位置し、標高3,600メートル以上の高地に広がる2.5キロメートル×2.2キロメートルの現場から年間41万1,800トン(2011年)の鉱石を産出する、世界最大級の露天掘り銅鉱山です。

この鉱山で使われる鉱山機械の販売、サービスを担当するのが、コマツグループの代理店コマツチリ(株)(KCH)です。

KCHは、この鉱山で稼働する超大型ダンプトラック930E×43台という大規模なフリートを全てリースし、メンテナンスも担当する「フルメンテナンス契約」を締結しています。この契約を通じ、KCHは鉱山の要となるダンプトラックに包括的な責任を負う、極めて重要なパートナーとなっています。「鉱山機械の性能を最高度に発揮させたい」というお客様の目標を実現すべく、KCHはブランドマネジメントのアプローチから、ICTを活用してダンプトラックの稼働率を高め、車両の性能をフルに発揮させる活動を推進しました。それがバイタル・サイン プロジェクトです。

バイタル・サイン プロジェクトによる予防保全の強化「バイタル・サイン」とはもともと医学用語で、脈拍や血圧など「人間の健康状態を判断する指標」のことです。鉱山機械もバイタル・サイン に当たる各種センサーの情報や警報を発信しますが、これを活用し、予防保全を行えば、車両の稼働率は向上します。

KCHのバイタル・サイン プロジェクトは、このような鉱山機械のバイタル・サイン、つまり各種情報・警報の発生原因や、緊急性、重大性、必要とされる処置などをデータベース化することによって、よりスピーディで的確なプロダクトサポートを行い、車両の稼働率を更に高める活動です。

鉱山機械のセンサー情報としては、コマツ独自の車両モニタリングシステム「KOMTRAX Plus*」からの情報

(写真)ロス・ペランブレス銅鉱山。銅鉱山は、鉱脈に沿って縦に深い鉱山になるのが特徴です。写真右端に小さく見えるのが930Eダンプトラック。

に加え、新たな試みとして、鉱山管理システムを専門とする北米のグループ会社モジュラーマイニングシステムズ(株)(MMS)の車両モニタリングシステム「MineCare*(マイン・ケア)」からの情報を活用することも想定しています。

*KOMTRAX Plus*MineCare:どちらのシステムも、車両に取り付けたセンサーの情報を収集し、そのデータを外部で利用できる機能を備えています。

データベースの構築に当たっては、単に鉱山機械のバイタル・サインとその対策を紐付けするだけでなく、鉱山の現場で車両をより効率的にメンテナンスできるよう、作業方法の検討・改善を行いました。そのためバイタル・サイン のプロジェクトは、データベース構築を担当するサブチームに加え、鉱山機械のメカやICTに詳しいサブチーム、現場のサービス員や品質保証に詳しいサブチームに分かれ、数多くの部門から約20名が参画することになりました。

バイタル・サインを使って、KOMTRAX Plusなどのデータをフル活用できるようになったことで、ペランブレス社での鉱山機械のメンテナンスは大幅に改善されました。警報が発信されるたび、これまでKCHの担当者が鉱山中を駆け回って技術者や計画部門に問い合わせ、ミーティングを開催するなどの対応が必要でしたが、バイタル・サイン データベースを利用すれば、問題の緊急性や解決策など、適切なアドバイスを即座に入手できるのです。

バイタル・サイン プロジェクトのもうひとつの挑戦は、それぞれのメンバーが自分たちの慣習的な仕事のやり方を改革する活動でした。KCHは、ペランブレス社とのJoiFUL*ミーティングを、互いの組織の各階層同士で実施し、議論することで、この改革を推進しました。

*JoiFUL(Joint Follow-Up Log):お客様とコマツが定期的に開催するミーティング。それ以前のミーティングで決めた事柄をフォローアップし、進展を確認します。 通常、経営トップ層、中間層、現場の3階層で開催します。

またMineCareからの情報をバイタル・サイン データベースに活用するトライアルでは、北米アリゾナからMMSの技術者を招いて、インターフェースの構築を進めました。専門家とコミュニケーションを図る過程で、コマツチリのスタッフはMineCareをより深く理解することができ、バイタル・サイン データベースと連携させて効果的に活用する確証を得ました。

約6カ月のバイタル・サイン プロジェクト活動を経て、KCHでは車両の整備計画や、稼動状況レポートを使って予防保全を強化し、重大な車両トラブルを防ぐ能力も高まりました。車両に新しい問題が発生した場合にも、バイタル・サイン データベースの診断機能を活用して問題を軽減・解消することができ、対処時間を短縮することができます。

(写真)鉱山内の整備場。前輪のすぐ後付近に、オレンジ色の作業着を着用した作業員が見えます。バイタル・サインのおかげで、超大型ダンプトラックの点検整備は、大幅に効率化されました。

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

KOMATSU Annual Report 32

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に加え、新たな試みとして、鉱山管理システムを専門とする北米のグループ会社モジュラーマイニングシステムズ(株)(MMS)の車両モニタリングシステム「MineCare*(マイン・ケア)」からの情報を活用することも想定しています。

*KOMTRAX Plus*MineCare:どちらのシステムも、車両に取り付けたセンサーの情報を収集し、そのデータを外部で利用できる機能を備えています。

データベースの構築に当たっては、単に鉱山機械のバイタル・サインとその対策を紐付けするだけでなく、鉱山の現場で車両をより効率的にメンテナンスできるよう、作業方法の検討・改善を行いました。そのためバイタル・サイン のプロジェクトは、データベース構築を担当するサブチームに加え、鉱山機械のメカやICTに詳しいサブチーム、現場のサービス員や品質保証に詳しいサブチームに分かれ、数多くの部門から約20名が参画することになりました。

バイタル・サインを使って、KOMTRAX Plusなどのデータをフル活用できるようになったことで、ペランブレス社での鉱山機械のメンテナンスは大幅に改善されました。警報が発信されるたび、これまでKCHの担当者が鉱山中を駆け回って技術者や計画部門に問い合わせ、ミーティングを開催するなどの対応が必要でしたが、バイタル・サイン データベースを利用すれば、問題の緊急性や解決策など、適切なアドバイスを即座に入手できるのです。

バイタル・サイン プロジェクトのもうひとつの挑戦は、それぞれのメンバーが自分たちの慣習的な仕事のやり方を改革する活動でした。KCHは、ペランブレス社とのJoiFUL*ミーティングを、互いの組織の各階層同士で実施し、議論することで、この改革を推進しました。

*JoiFUL(Joint Follow-Up Log):お客様とコマツが定期的に開催するミーティング。それ以前のミーティングで決めた事柄をフォローアップし、進展を確認します。 通常、経営トップ層、中間層、現場の3階層で開催します。

またMineCareからの情報をバイタル・サイン データベースに活用するトライアルでは、北米アリゾナからMMSの技術者を招いて、インターフェースの構築を進めました。専門家とコミュニケーションを図る過程で、コマツチリのスタッフはMineCareをより深く理解することができ、バイタル・サイン データベースと連携させて効果的に活用する確証を得ました。

約6カ月のバイタル・サイン プロジェクト活動を経て、KCHでは車両の整備計画や、稼動状況レポートを使って予防保全を強化し、重大な車両トラブルを防ぐ能力も高まりました。車両に新しい問題が発生した場合にも、バイタル・サイン データベースの診断機能を活用して問題を軽減・解消することができ、対処時間を短縮することができます。

(写真)鉱山内の整備場。前輪のすぐ後付近に、オレンジ色の作業着を着用した作業員が見えます。バイタル・サインのおかげで、超大型ダンプトラックの点検整備は、大幅に効率化されました。

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バイタル・サイン プロジェクトの成果はお客様にも高く評価されています。KCHではお客様との関係性を更に高めるため、次の段階として、複数の要因から故障を予測するなど、より高度な情報収集・分析機能を備えた予防保全システム作りに取り組んでいます。

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

KOMATSU Annual Report 33

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中国でのプロジェクトは、3つの鉱山を保有し、露天掘り、地下掘り合計で年間1億2900万トン(2011年度)を産出する中国有数の大手石炭鉱山会社で行われています。この鉱山では、超大型ダンプトラック930Eを含め200台以上のコマツ鉱山機械が稼働しています。

石炭はいくつもの地層になって埋蔵されているため、露天掘りでは不要な表土を取り除き、石炭層を露出させて採掘する作業を繰り返します。一方、この鉱山での地下掘りは日本の炭鉱と異なり、大型の専用掘削機やコンベアなど高度に自動化した設備を使い、効率的に石炭層のみを採掘します。そのため露天掘りの採掘コストが、地下掘りに比べ約30%割高になっていました。私達はお客様の利益を最大化するため、ブランドマネジメントの観点からお客様とディスカッションを繰り返し、「車両の稼働率」「作業効率」の観点からのアプローチが必要であるという方向性を導き出しました。

このアプローチに対応するため、コマツ、小松(中国)鉱山設備有限公司(KCML)、コマツアメリカ(株)(KAC)はお客様と連携し、2つのチームを設置しました。一つは車両のメンテナンスを見直し稼働率を向上するチーム。もう一つが鉱山機械の使い方をメーカーの視点から見直し最適化することで生産性を改善するチームです。特に後者の生産性改善チームの活動は、お客様の要望を実現するためコマツの製品でないロープショベルを対象に活動するという、メーカーの通常のサポートを越えた活動となりました。

原因の解析と対策の検討生産性改善チームは、露天掘りの生産性に影響を与える要因として、ダンプトラックのペイロードメーター(積載量を記録、測定する装置)を活用してショベルの積込み作業を17,149回分析し、それによって積込み作業の効率を左右する4つの指標(KPI:Key Performance Indicators)を明らかにしました。同様に930Eダンプトラックの運搬作業についても9,712回の事例を分析しました。

そうした現状分析の結果、チームはより効果が期待できるショベルの積込み量改善にテーマを絞り、4つのKPI、つまり「積込みの所要秒数」「ダンプトラック1台当たりの積込み回数」「ペイロード(積載トン数)」「ペイロードのバラつき」を積込み作業のトレーニングで最適化し、作業効率を向上させることにしました。積込み量をコントロールすれば、ダンプトラックの運搬効率アップも期待できます。

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

KOMATSU Annual Report 34

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3カ月で成果をあげるショベルのオペレーター20名には、スコアカードによる評価に取り組んでいただきました。スコアカードとは、KPIに即して積込み回数や秒数といった目標を定め、それが達成できたか記録するものです。実績はダンプトラックのペイロードメーターの情報で把握します。KCMLはデータの集積や、お客様への月次スコアの報告に加え、2010年と2011年にはスコアカード上位となった優秀オペレーター3名の表彰を実施しました。

効果は明確に現れました。2010年9月~11月の1時間あたり平均積込作業量は、スコアカード導入前(2010年6月)の平均値と比べ17%改善したのです。KCMLサービスエンジニア(鉱山駐在)の楊楽は、スコアカード運営業務を担当しました。彼は当時を振り返り、「とても小さな仕事だと感じていましたが、大きな成果が得られました。達成感がありました」と印象を語っています。

(写真)CI活動を進めている中国の石炭鉱山

(写真)露天掘りは、ショベル(右端)で石炭をすくい、ダンプトラック(左隣)に積み込んで搬出します。

(写真)ダンプトラック930E(最大積載量:297トン)に、最も効率的な回数、秒数で積込み作業をするよう管理しました。

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

KOMATSU Annual Report 35

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3カ月で成果をあげるショベルのオペレーター20名には、スコアカードによる評価に取り組んでいただきました。スコアカードとは、KPIに即して積込み回数や秒数といった目標を定め、それが達成できたか記録するものです。実績はダンプトラックのペイロードメーターの情報で把握します。KCMLはデータの集積や、お客様への月次スコアの報告に加え、2010年と2011年にはスコアカード上位となった優秀オペレーター3名の表彰を実施しました。

効果は明確に現れました。2010年9月~11月の1時間あたり平均積込作業量は、スコアカード導入前(2010年6月)の平均値と比べ17%改善したのです。KCMLサービスエンジニア(鉱山駐在)の楊楽は、スコアカード運営業務を担当しました。彼は当時を振り返り、「とても小さな仕事だと感じていましたが、大きな成果が得られました。達成感がありました」と印象を語っています。

(写真)CI活動を進めている中国の石炭鉱山

(写真)露天掘りは、ショベル(右端)で石炭をすくい、ダンプトラック(左隣)に積み込んで搬出します。

(写真)ダンプトラック930E(最大積載量:297トン)に、最も効率的な回数、秒数で積込み作業をするよう管理しました。

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情報共有の大切さこの鉱山では、頻繁に行われる技術交流会のほか、定期的にCI会議を開催しています。既に20回以上開催しているCI会議には、鉱山長をはじめ鉱山側のトップも出席し、KCMLと共に鉱山運営コストの改善を議論します。お客様にもKCMLの熱意が伝わり、「最初はCIについて何も知りませんでしたが、会議を重ねるにつれて価値が分かってきました」(鉱山のフリート(車両群)マネージャー張立挙氏)と評価されるまでになっています。

更なる理想の実現に向けて2011年に入って、この鉱山でのCI活動は新たな段階を迎えました。成果を挙げたショベルの改善活動は、同じ会社が運営する他の鉱山に展開することになりました。そしてもとの鉱山では、第2ステージとして超大型ダンプトラック930Eの作業効率および燃費の向上をテーマに、再び改善への挑戦が始まりました。チームではファクツ・ファインディングのため、詳細な稼働データの収集やデータ解析を行っています。実走行データの収集には、コマツ研究本部と連携し、センサー技術やICT技術も活用しました。

鉱山では、第2ステージへの期待が高まりつつあります。鉱山でフリート(車両群)管理を担当する方々は、口々に「データを活用して燃費低減にチャレンジします」(フリートマネージャー武建華氏)、「積み込み待ちの時間を減らし、生産性を改善したい」(フリートマネージャー張立挙氏)と述べ、それぞれ最大の目標である採掘コスト低減のため、改善活動に取り組まれています。

KCMLのアプリケーションエンジニアである王海波は、これまでのCI活動について次のように語っています。「私達はコマツグループ各社の協力や、エンジニアの努力を通じ、作業効率の最大化に向けて提案活動を行ってきました。それはKCMLとお客様がWin-Win関係を構築する上で欠かせないものになっています」

KCMLの鉱山現場サービスステーション鉱山内サービスステーションは、鉱山、つまりお客様から提供いただいた施設で、ここにKCMLのサービス員が駐在しています。930Eダンプトラックのペイロードメーターの精度を高めるため、重量センサーや時計の整備、データのダウンロードやアップロードを行っているのもここです。KCMLの楊楽は「ここに勤務してもう3

年になろうとしていますが、コマツグループのチームワークおよび団結力に深く感動しています。私たちのCIプロジェクトはチームワークの結晶です。そのチームの一員であることを誇りにしています」

お客様と夢を共有し、将来を見据えて着手した次の挑戦。コマツはこの夢を実現するためお客様にとって「なくてはならない存在」となるべく、活動を継続しています。

(写真)CI会議には鉱山側のトップも出席し、改善活動について議論します

(写真)鉱山現場のサービスステーション

2011年度 アニュアルレポート特集:鉱山現場で築く、お客様とのパートナーシップ

KOMATSU Annual Report 36

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情報共有の大切さこの鉱山では、頻繁に行われる技術交流会のほか、定期的にCI会議を開催しています。既に20回以上開催しているCI会議には、鉱山長をはじめ鉱山側のトップも出席し、KCMLと共に鉱山運営コストの改善を議論します。お客様にもKCMLの熱意が伝わり、「最初はCIについて何も知りませんでしたが、会議を重ねるにつれて価値が分かってきました」(鉱山のフリート(車両群)マネージャー張立挙氏)と評価されるまでになっています。

更なる理想の実現に向けて2011年に入って、この鉱山でのCI活動は新たな段階を迎えました。成果を挙げたショベルの改善活動は、同じ会社が運営する他の鉱山に展開することになりました。そしてもとの鉱山では、第2ステージとして超大型ダンプトラック930Eの作業効率および燃費の向上をテーマに、再び改善への挑戦が始まりました。チームではファクツ・ファインディングのため、詳細な稼働データの収集やデータ解析を行っています。実走行データの収集には、コマツ研究本部と連携し、センサー技術やICT技術も活用しました。

鉱山では、第2ステージへの期待が高まりつつあります。鉱山でフリート(車両群)管理を担当する方々は、口々に「データを活用して燃費低減にチャレンジします」(フリートマネージャー武建華氏)、「積み込み待ちの時間を減らし、生産性を改善したい」(フリートマネージャー張立挙氏)と述べ、それぞれ最大の目標である採掘コスト低減のため、改善活動に取り組まれています。

KCMLのアプリケーションエンジニアである王海波は、これまでのCI活動について次のように語っています。「私達はコマツグループ各社の協力や、エンジニアの努力を通じ、作業効率の最大化に向けて提案活動を行ってきました。それはKCMLとお客様がWin-Win関係を構築する上で欠かせないものになっています」

KCMLの鉱山現場サービスステーション鉱山内サービスステーションは、鉱山、つまりお客様から提供いただいた施設で、ここにKCMLのサービス員が駐在しています。930Eダンプトラックのペイロードメーターの精度を高めるため、重量センサーや時計の整備、データのダウンロードやアップロードを行っているのもここです。KCMLの楊楽は「ここに勤務してもう3

年になろうとしていますが、コマツグループのチームワークおよび団結力に深く感動しています。私たちのCIプロジェクトはチームワークの結晶です。そのチームの一員であることを誇りにしています」

お客様と夢を共有し、将来を見据えて着手した次の挑戦。コマツはこの夢を実現するためお客様にとって「なくてはならない存在」となるべく、活動を継続しています。

(写真)CI会議には鉱山側のトップも出席し、改善活動について議論します

(写真)鉱山現場のサービスステーション

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情報共有の大切さこの鉱山では、頻繁に行われる技術交流会のほか、定期的にCI会議を開催しています。既に20回以上開催しているCI会議には、鉱山長をはじめ鉱山側のトップも出席し、KCMLと共に鉱山運営コストの改善を議論します。お客様にもKCMLの熱意が伝わり、「最初はCIについて何も知りませんでしたが、会議を重ねるにつれて価値が分かってきました」(鉱山のフリート(車両群)マネージャー張立挙氏)と評価されるまでになっています。

更なる理想の実現に向けて2011年に入って、この鉱山でのCI活動は新たな段階を迎えました。成果を挙げたショベルの改善活動は、同じ会社が運営する他の鉱山に展開することになりました。そしてもとの鉱山では、第2ステージとして超大型ダンプトラック930Eの作業効率および燃費の向上をテーマに、再び改善への挑戦が始まりました。チームではファクツ・ファインディングのため、詳細な稼働データの収集やデータ解析を行っています。実走行データの収集には、コマツ研究本部と連携し、センサー技術やICT技術も活用しました。

鉱山では、第2ステージへの期待が高まりつつあります。鉱山でフリート(車両群)管理を担当する方々は、口々に「データを活用して燃費低減にチャレンジします」(フリートマネージャー武建華氏)、「積み込み待ちの時間を減らし、生産性を改善したい」(フリートマネージャー張立挙氏)と述べ、それぞれ最大の目標である採掘コスト低減のため、改善活動に取り組まれています。

KCMLのアプリケーションエンジニアである王海波は、これまでのCI活動について次のように語っています。「私達はコマツグループ各社の協力や、エンジニアの努力を通じ、作業効率の最大化に向けて提案活動を行ってきました。それはKCMLとお客様がWin-Win関係を構築する上で欠かせないものになっています」

KCMLの鉱山現場サービスステーション鉱山内サービスステーションは、鉱山、つまりお客様から提供いただいた施設で、ここにKCMLのサービス員が駐在しています。930Eダンプトラックのペイロードメーターの精度を高めるため、重量センサーや時計の整備、データのダウンロードやアップロードを行っているのもここです。KCMLの楊楽は「ここに勤務してもう3

年になろうとしていますが、コマツグループのチームワークおよび団結力に深く感動しています。私たちのCIプロジェクトはチームワークの結晶です。そのチームの一員であることを誇りにしています」

お客様と夢を共有し、将来を見据えて着手した次の挑戦。コマツはこの夢を実現するためお客様にとって「なくてはならない存在」となるべく、活動を継続しています。

(写真)CI会議には鉱山側のトップも出席し、改善活動について議論します

(写真)鉱山現場のサービスステーション

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