ビジネス連携 vol1
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マスコミでは連日、「A社とB社が業務提携を発表した」だとか、
「C社とD社のコラボレーションが実現!」といった、企業間の連携が取りざたされています。その多くは、有名企業や大手の企業であるのですが、実はこの企業連携は中堅、中小企業にも広がっています。
市場は今、マイクロ化が進んでおり、企業は個々の顧客の多
様化したニーズを踏まえたマーケティングが求められるようになっています。この市場をものにするには、より明確なコンセプトを打ち出し、それに適した企業の強みを発揮する必要があります。
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中小企業が競争環境を乗り切るためには、もてる経営資源を
分散させるのではなく、コアな部分に集中させることによって、効率的に強みを高める事が必要です。足りない部分は自社でどうにかするか、誰かに借りるか協力してもらうかの2つの選択肢があるわけですが、前者はスピードという点において後者に劣ります。スピードがものいう時代においては、後者を選択するほうが賢い選択と言えるのではないでしょうか。
この後者の選択こそが、企業連携なのですが、その方法には、一部を除いては何ら法律の制約があるわけでもなく、右に倣えの決まったやり方があるわけでもありません。企業の求める経営資源によって、様々な形があるのが実情です。
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企業連携のポイントは、事業推進に複数の企業が関与すると
いうことです。単独で事業を推進していく場合と比較し、常に相手を意識することが大きな違いと言えるでしょう。相手の資源を利用するという点で、手間が省けたようにも思えますが、自社単独で事業を立上げて推進していく時にくらべ、知っておくべき事、考えなくてはならないことは決して少なくありません。
本レポートでは、基本的な知識をはじめ、事例、企業連携の進
め方について解説していきたいと思います。そのポイントを理解いただき、自社の企業連携に役立てていただければと思います。
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はじめに
1 なぜ今、連携なのか? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 005
2 企業連携の種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 020
3 連携するきっかけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 041
4 成功する企業連携の流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 054
5 戦略企画フェーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 058
6 連携先調査・打診フェーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 070
7 連携計画策定フェーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 087
8 契約フェーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105
9 実施・モニタリングフェーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 116
10 解消フェーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128
11 企業連携成功の勘所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 134
12 国の支援策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141
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1はじめに
1 なぜ今、連携なのか?2 企業連携の種類
3 連携するきっかけ
4 成功する企業連携の流れ
5 戦略企画フェーズ
6 連携先調査・打診フェーズ
7 連携計画策定フェーズ
8 契約フェーズ
9 実施・モニタリングフェーズ
10 解消フェーズ
11 企業連携成功の勘所
12 国の支援策
企業連携を話題にするとき、例示には苦労しません。
2012年秋、新宿東口にて、「ビックロ」なる、ビックカメラとユニクロのコラボレーションが実現しました。
コンセプトは「素晴らしいゴチャゴチャ感」。店内には、ユニクロを着たマネキンがカメラを構えていました。
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ビックポイントがクーポン券となってユニクロ商品で利用できる、カメラや携帯電話などの家電とコーディネートできる。
など、消費者向けの利点をアピールしていたが、企業側サイドの視点で考えてみます。
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2012年は前年比99.5%
2012年は前年比79.1%
ファーストリテイリング売上推移 ビックカメラ売上推移
両社とも苦戦を強いられている事がわかります。
特にビックカメラでは、テレビの落ち込みが半端ないようです。夏前後思った以上に客足が伸びず、オリンピック需要も期待外れだったという。
ビックカメラにしてみれば、ユニクロとのコラボレーションにより、集客力高めて販売を伸ばす狙いがあると思われます。
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更に一例。最近ゴルフクラブを変えたのですが、そこでも企業連携に出会う事となりました。
ゴルフメーカーのキャロウェイと高級者のランボルギーニ。
目的を同じくする企業同士の、技術提携および共同開発の例です。
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2社は共同開発によって微細なカーボンファイバーを含んだきわめて先進的な新素材を生み出しました。
「軽量」かつ「強靭」な素材を常に要求される二つの世界で、両社のゴールは近いものであると考えられます。
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先ほどの例は男性よりの情報でしたので、次は女性にわかりやすい例を挙げてみましょう。
ちょっと前に話題になった、タニタ食堂です。
株式会社タニタといえば、体重計等の計量器の製造販売を行っている会社です。
11丸の内国際ビルヂング地下1階にあるタニタ食堂
そのタニタの社員食堂のメニューが話題になり、レストラン事業を展開する運びになりました。
経営理論的には「多角化」にあたり、事業開発の中で一番難易度の高い領域のはずです。これを自社だけで実現するのは、一般的にはかなり大変なのですが・・・
やはり、企業連携で実現したようです。
12株式会社タニタ発表のプレスリリース
株式会社きちりとの業務提携により実現
ここに挙げた例は、大手有名企業ばかりですが、実はこの企業連携は中堅、中小企業にも広がっています。
全業種平均では、5社に1社は何かしらの連携活動を行っているようです。
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㈱三菱総合研究所2007/12「地域中小企業のネットワーク形成に向けた取り組みに関するアンケート調査」より
企業連携を、自分の中でどう表現するか、注意が必要です。
たとえば、「自社に無いものを他社に求める」という言葉で、自分的に定義してしまうと、その後の発想を制限します。
企業連携は、もっと戦略的に捉える事が重要です。
たとえば、目先の課題に対応するような考え方では、自社が現在行っている事業の改善のために、他社の力を借りる、自社の長く定着した業務プロセスの改善には、他社の力が必要、
となってしまいますが、戦略的な発想では、「あの商品と自社の商品を組み合わせたら、こんなビジネスができる」
と、新たなアイデア、価値が生まれる事もあります。
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さらには、実質的なメリットとして、企業連携は自社努力にくらべ、短期間での目標達成コスト・投資の抑制各種リスクの低減
について優位性があると言えるでしょう。
社長をはじめ、ビジネス企画、事業立ち上げに係る方であれば、これらのメリットがどれほど、嬉しいものかは容易に理解できるはずです。
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まずは、短期間での目標達成として、A社は連携後すぐに、水泳メニューを提供することが可能となります。人材育成やノウハウを0から蓄積する必要はありません。
次にコスト・投資の抑制ですが、水泳施設は土地と設備が必要になります。この点連携であれば、B社の設備をそのまま活用すればよいので。自社で構築する場合にくらべて格段に費用は少なく済みます。
3つめの各種リスクの低減ですが、B社にはすでに顧客がいる。顧客を集められる立地だともいえる。スポーツジムサービスとの相互の行き来を可能にし、初期の段階で顧客がつかないといったリスクも回避できます。
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要はビジネスが成功する可能性を高くできるのです。
もちろん自社だけで利益を独占することはできませんが、成功確率×予想利益であらわす期待値でみれば、企業連携のほうがその値を高くすることも可能になります。