熱および紫外線不活化 されたvaccinia ihdのcell killngに ついて 花房照子,...

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第11巻 第3号  227 30. Vaccinia VirusのCytotoxic Effect 多 ケ谷 勇, 小 田 昌 彦, ○北 村 佐 野 由民 子 (予研) 1) L細 胞 に 対 す るVaccinia Virus (Dairen-Ⅰ 株) のCytotoxic Effect (以下CTEと 略 す) を, Nigrosin に依 る染 色, 計 算 を用 い る こ とに 依 り, 定 量 的 に記 述 す る こ と を得 た. 2) 上 記 のCTEに, 細 胞 の 円形 化, 凝 集 と, Nig rosin染 色性 増 大 とい う二 つ のphaseを 区別すること が 出 来 る. 3) 種 々 な不 活 化 法 を比較 す る と, 紫 外 線 不 活 化 ウ イル スの み が, L細 胞 に対 す るCTEを 有 す る. これ はCTEの 発現に表面蛋白が関係することを予想せし め, 事実, これ が, ウ イル スの細 胞 表 面 へ の 吸 着, 侵 入 を介 して行 われ るら しい とい う所見 を得た. 4) 紫外線不活化ウイルスに依 り, L細 胞に於て微 量の補体結合抗原の産生が見られる. 5) 紫 外 線 不 活 化 ウ イル ス を家 兎 に皮 内 接種 して, CTE類 の現 象 が, 生体 内に於 て も発揮 されてい るこ と と観 察 した. 質問 小島保彦 (伝研) 孵 化 鶏 卵 漿 尿 膜 上 に お け るpock countに よるtitra tionは 活 性 ウ イル ス のtitrationに は良い場なのです が, UV不 活 化 ウ イル ス 中 の活 性 ウ イル スの存 在 を し らべ る場 としては ウサ ギの皮膚 を使用 した方 が良いの で は な い で し よ うか. そ れ は 漿 尿膜 上 でPockの 出来 ないUV照 射 材 料 を ウサ ギの皮 膚 で しらべ る と ウ イル ス の増 殖 が み られ るか ら. 多 ケ谷 ウ サ ギ の皮 膚 でUVウ イルスを定量的にはかつたこ と もあ ります が, そ の よ うな こ とは 見 て い ません. 照 射 材 料 な どの 相 違 もあ る と思 い ます. 質問 石田名香雄 (東北大細菌) 1) Agglutinatonと い う変 な言葉 が流行つて しま つ たが 総 論 的 にcytotoxic effectと 解 して よろ しい か. 2) す る とcellあ た り1以 下 のInfecticus center をUVウ イル ス でつ くつ た 場 合, Infectious center の まわ りに までCytotoxic effectは 波 及 す るか. 3) 本 質 的 に不 完 全増 殖 がCytotoxic effectと 考 え て よい か. 多 ケ谷 1) Vaccinia対L細 胞 に関 しては そ う思い ます. 即 ちcytotoxic effectの あ らわ れ の 一 つ と してagglu tinationが 先 行 す るの で, agglutinateonが 見 られ るの は 勿論multiple infectionの 場 合 で あ り ます. 2) Cytotoxic effectが 周 囲 の細 胞 へ 波 及 す るこ と は あ り ませ ん. 3) そう云い切つてよいかどうか は分 りませんが cytotoxic effect (vaccinia virusの) は不 完 全増 殖 の 一 つ の あ らわ れ, ない しはhost-virus interaction (細 胞 内 の) の一 つ の あ らわ れ で あ る と考 えて い ます. 質問 豊島久真男 (微研) 紫 外 線 照 射 時 間 に よ りCTとAgglutinationは 別れ 得 るの で し よ うか. 北村 Active virusの 場合 程 はつきり記録 してはおりま せ ん が, 同 じよ うな所 見 を得 て お ります. 31. 熱 お よ び紫 外 線 不 活 化 され たVaccinia IHDのcell killngに ついて ○花 房 照子, 花 房 秀 三 郎, 亀 加 藤 四郎, 釜 洞 醇 太郎 (阪大微研) 紫 外 線 (UJIV) お よび熱 不 活 化 ワ クチ ニ ア (HIV) 感 染 力 を失 つ て もな おそ れ ぞ れ に特 異 な細 胞 変 性, 致 死 効 果 を持 つ て い る. これ らの 変性 が不 活 化 ウ イル ス 粒 子 の 示 す性 質 で あ る こ とは, 精 製, 抗 体 の作 用, 沈 降, ク ロマ トグ ラ フ の実 験 か ら明 らか で あ る. また 血球 凝集素 とも関 係 は な い. HTVの 場合この致死作用は複 数 個 の 吸 着 を必要 とす る. HIVの 致死作用は耐熱性 でUVに 弱 く, UIVの そ れ はuvに 抵抗性であるが 熱 には 弱 い. Isotopeを 用 いた実 験 によりこれらの 不 活 化 ウ イル スが 感 染 した 細胞 で は活 性 ウ イ ル スの場 合 と同 様 細胞 核 のDNA合 成 に 抑 制 が 見 られ, 特 に UIVの 場合 に著 しい. しか し活 性 ウ イル ス と異 り細 胞質 内 にDNA合 成が見られない. 不活化ウイルスの 致 死作 用 は いず れ の 場合 も正 常 な細 胞 の 代 謝 を乱 す た め に起 る と考 え られ るが, また感 染 初 期 に 見 られ る変 性 因 子 はHIVで は全 くない か ら, これ は易 熱 性 物 質 おそ らく蛋 白質に よる変化 と想像 され る. 質問 多村 寛 (京大 ウ イル ス研) Cell killingのkineticsの 研 究 に はsuspension culture系 を使 用 したhomogeneousな 系 を と られ る方

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Page 1: 熱および紫外線不活化 されたVaccinia IHDのcell killngに ついて 花房照子, 花房秀三郎

第11巻 第3号  227

30. Vaccinia VirusのCytotoxic Effect

多 ケ谷 勇, 小田昌彦, ○北村 敬佐野由民子 (予研)

1) L細 胞に対するVaccinia Virus (Dairen-Ⅰ株) のCytotoxic Effect (以下CTEと 略す) を, Nigrosin

に依 る染色, 計算 を用いることに依り, 定量的に記述

することを得た.2) 上記のCTEに, 細 胞の円形化, 凝 集 と, Nig

rosin染 色性増大 とい う二つのphaseを 区別すること

が出来る.3) 種 々な不活化法を比較すると, 紫外線不活化ウ

イルスのみが, L細 胞 に対するCTEを 有する. これはCTEの 発現に表面蛋白が関係することを予想せしめ, 事実, これが, ウイルスの細胞表面への吸着, 侵

入を介 して行われるらしいという所見を得た.4) 紫外線不活化ウイルスに依 り, L細 胞に於て微

量の補体結合抗原の産生が見られる.5) 紫外線不活化ウイルスを家兎に皮内接種 して,

CTE類 似 の現象が, 生体内に於ても発揮 されているこ

とと観察 した.質問 小島保彦 (伝研)孵化鶏卵漿尿膜上におけるpock countに よるtitra

tionは 活性ウイルスのtitrationに は良い場なのです

が, UV不 活化ウイルス中の活性ウイルスの存在 をしらべる場 としてはウサギの皮膚 を使用 した方が良いのではないでしようか. それは漿尿膜上でPockの 出来

ないUV照 射材料をウサギの皮膚でしらべるとウイルスの増殖がみられるから.

答 多 ケ谷 勇ウサギの皮膚でUVウ イルスを定量的にはかつたこともありますが, そのようなことは見ていません. 照

射材料などの相違もあると思います.質問 石田名香雄 (東北大細菌)1) Agglutinatonと い う変な言葉が流行つて しま

つたが総論的にcytotoxic effectと解 してよろしいか.

2) す るとcellあ た り1以 下のInfecticus center

をUVウ イルスでつ くつた場合, Infectious centerの まわりにまでCytotoxic effectは 波 及するか.

3) 本質的に不完全増殖がCytotoxic effectと考えてよいか.

答 多 ケ谷 勇1) Vaccinia対L細 胞に関 しては そう思います.

即 ちcytotoxic effectの あ らわれの一つとしてagglutinationが 先行するので, agglutinateonが 見 られ

るのは勿論multiple infectionの 場合であります.2) Cytotoxic effectが 周囲の細胞へ波及すること

はありません.3) そ う云い切つてよいかどうか は分 りませんが

cytotoxic effect (vaccinia virusの) は不 完全増殖の一つのあらわれ, ない しはhost-virus interaction

(細胞内の) の一つのあらわれであると考えています.質 問 豊島久真男 (微研)

紫外線照射時間によりCTとAgglutinationは 別 れ得 るのでしようか.答 北村 敬Active virusの 場合程 はつきり記録 してはおりませんが, 同 じような所見 を得ております.

31. 熱 お よび紫外線不活化 されたVaccinia

IHDのcell killngに つ いて

○花房照子, 花房秀三郎, 亀 山 達加藤四郎, 釜洞醇太郎 (阪大微研)

紫外線 (UJIV) お よび熱不活化ワクチニア (HIV) は感染力を失つてもなおそれぞれに特異な細胞変性, 致

死効果を持つている. これらの変性が不活化ウイルス粒子の示す性質であることは, 精製, 抗体 の作用, 沈降, クロマ トグラフの実験から明らかである. また血球凝集素 とも関係はない. HTVの 場合この致死作用は複数個の吸着を必要 とする. HIVの 致死作用は耐熱性でUVに 弱 く, UIVの それはuvに 抵抗性であるが

熱には弱い. Isotopeを 用 いた実 験 によりこれらの不活化ウイルスが感染 した細胞では活性ウイルスの場合と同様細胞核のDNA合 成 に抑 制 が 見られ, 特 にUIVの 場合に著 しい. しかし活 性ウイルスと異 り細

胞質内にDNA合 成が見られない. 不活化ウイルスの致死作用はいずれの場合 も正常な細胞の代謝を乱すために起ると考えられるが, また感染初期に見られる変性因子はHIVで は全 くないから, これは易熱性物質おそらく蛋白質による変化 と想像 される.質 問 多村 寛 (京大 ウイルス研)Cell killingのkineticsの 研 究 に はsuspension

culture系 を使用したhomogeneousな 系 をとられる方

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228 ウ イ ル ス

がよりbetterで あろう.答 花房照子いわれる通 りだと思いますが, 現在 まで行つてきた

実験条件における実験を一応おこなつたものです.質問 石 田名香雄 (東北大細菌)UVと 熱不活化ウイルスのちがい如何.

答 花房照子UVで も不活化ウイルスは細 胞 質内DNA分 画に

Radioactivityを とらない点で活性ウイルスと異 りま

す. UVの 場合特に核のDNA合 成 の抑制が顕著です.質 問 館野 功 (伝研)IHDと は何ですか.

答 多ケ谷 勇 (予研)IHDは 向神経ワクチニアの株で今 演 者の使われた

のは, これをエールリッヒ癌細胞を通過 してHAの 産生がな くなつた変異株です.質問 植竹久雄 (札医大微生物)multiplicity 5以 上でcell killingが 観察されると

い うお話ですが, multiplicity 5以 上 を必要 とする理

由をどの様に御説明になりますか?答 花 房照子multiplicityを 低 くしたときのmetabolic change

についてまだ実験 していないのではつきりいえません

が, 不 活化 されたものでは変性因子 も低下 しているので大量ではじめて起つて くることも考えられます.

答 豊 島久真男花房氏はほゞ完全なCell killingを 目標にして居られるので, 66%Cell killing等 をしらべれば, 今云われた事 も可成解析出来るのではないかと思います.

32. Meningopneumonitis virus (MPV) の

プ ラックに よる定 量法 と他法 との比較

東 昇, ○多村 憲 (京大ウイルス研)

オウム病群ウイルスのプラック形成に関する報告はない. 吾 々はMPVを 浮遊培養由来のL細 胞に感染させてプラックの形成に成功 した. このプラックの数及び大 きさは感染12~13日 に最高値に達する. 感染12日におけるプラックの大 きさは平均0.3~0.5mmで, その

数はウイルス濃度に厳密に比例 し, またその数の瓶当りの分布はボアソン分布に一致 した. さらにプラック定量法の感度及び精度 を高めるべ く, ウ イルスの吸着時間, 吸着温度, 吸着の際の培地及び液量等の最適条件を求めた. 次にこのプラックによる定量法の再現性及び信頼限界を調べ, さらに徒 来のマウス (MLD50)

や我 々により確立 されたTCID50法 に よる感染価測定法 と比較 した. 以上の実験成績からMpvの プラックによる定量法がこのウイルスの力価測定に十分満足すべ き方法であることを認めた.

質問 宍 戸 亮 (予研)L cellのsuspension cell cultureの 方法を御教え

願いたい. そのcellは 特殊のmutantで すか. それ ともどのcellで もその方法で出来 るのですか?質問 大森常良 (家衛試)免疫血清のプラック形成に対する影響如何?答 多村 憲宍戸亮氏へsuspension cultureの 培養器は20回/

minの 半円形の往復運動するような操 置 に培養 瓶を

とりつけて培養してい ます. 培養瓶はシリコンコー トして細胞のガラス壁に附着を防いでおります. 使用 している細胞はこれまでmonosheetで 培養 されていました細胞をsuspension cultureに 移 したものでありましてcline化 した特殊な細胞ではありません。大森常良氏へよい血清が入手出来 ませんのでまだ試みておりませ

ん. ただplaqueがMPVに 起 因するものであることはplague内 部の細胞のみにMPV特 有 の増殖像をみとめることで確めております.

33. 各 系 狂犬病 ウイル ス接 種マ ウスにおけ

る感染 の様 相. 特 にCF抗 原 及 びCF

抗 体 の出現 について

○竹原孝一, 野村吉利, 中村〓治 (日生研)

固定F, 街上St, 西 ケ原株鶏胚高継代H, Flury株鶏胚高継代Fl-Hの4系 ウイルスをマウス脳内接種し夫々最強度 (急性死), 強度 (梢緩慢死), 弱度 (多 くは

発病回復), 最弱度 (多 くは無症状感染) の感染を起させ, 各感染についてウイルス, 中和抗体, GF抗 原,

CF抗 体 の動向を経時的に観 察した. 但 しCF反 応はTRC術 式によつた. その結果, 脳 内CF抗 原 は最弱

度のFl-H感 染 に至るまで証明可能であり, HやFl-H感染 のようにマウスが回復する場合にはウイルス消滅後 も比較的長 く証明できた. また回復例ではCF抗 体も出現が認められた.次 の実験では接種ウイルスを段階稀釈し, 感染 と脳内GF抗 原証明の50%陽 性限界を比較したが, H感 染の程度においてもなお両価が一致 し, 即 ち感染すれば

殆んど確実に抗原が証明可能 となることが示された.但 しFl-H感 染では, 抗原証明成績は最早や不定であ

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第11巻 第3号  229

つ た.

質問 川 島秀雄 (動薬検)犬に対してH, Fl-Hを 接種 した時にマウスの場合と

同様でしようか. この実験の所見からCF抗 原の方が

診断上価値あるように思われますが, 自然発生の感染犬の診断の場合のGF抗 体の価値についてどう考えられますか.答 竹原孝一犬について実験 していないので確実なことはわかりません. 他の実験で犬はマウスよりも鶏胚系ウイルスに感受性が低いので, H及 びFl-Hに 対 しても同様か

と思い ます. 自然感染犬においても経過の緩慢なものでは, 抗体証明の可能性があるかも知れません.

34. 狂 犬 病の免疫 に関す る研究

Ⅱ. 不 活化 した固定 ウイル スの免疫能について

○野村吉利, 竹原孝一, 中村〓治 (日生研)

前 回に報告した狂犬病卵系 諸ウイルスのic又 はip接種によるマウスにおける免疫の比 較 実 験 補遺 として, F1 (128代) 及びFl-H (243代) のip接 種の効果を

同様な方法で実験した結果, 両 ウ イルスともip接 種により生じる免疫の主体は対ip免 疫 (ip-ImD50-4.1,

2.7 ic-ImD50-≦1.8,≦0.6) であ り, 免 疫の様相はUV

(紫外線) 不 活化Lウ イルスip接 種の場 合 と見 掛上区別出来なかつた. そこで更に免疫能の高い不活化ワクチンを調製しこれと生ウイルスとを比較する目的で先ず最適株の選定を行つて西ケ原固定ウイルスFを 選

出 し, 次いでこれにuv, ホルマ リン, BPL (β-propiolactone) の変量 を作用 させてウイルスの感染性び免疫能に与える影響を試験 した(ip接 種 ×ip攻 撃).

その結果UV又 はBPL不 活化では8倍 不活化量を作用させてもなお, 生 ウイルス免疫価の10%前 後の免疫価 (4.0, 3.5) が維持 されており, この値は生 ・卵系ウイルスip応 用により得られた最高の安全免 疫域に匹敵

することが判つた.

35. 中止

36. ニ ュー カ ッスル病 ウ イルスに関す る研究-成 鶏 か らの移行抗体 の推移 について-

〇木下喜雄, 加藤亮哿, 青木竜身(大阪府立公衆衛生研)

成 鶏から卵黄を通 して, ヒナへの受動免疫抗体の移行について, 中和抗体及びHI抗 体により追求した.

抗体はNDV感 染耐過鶏からの卵の卵黄内に証明されるが他の部位には存在しない. 卵黄内抗体に卵黄が胎

児の栄養源 として消費され始める孵化18日 前後 より胎児血中に出現する. 抗体が完全にヒナに吸収されるのは生後48時 間頃で以後 ヒナ血中抗体減少し約40日 でほとんど消失 し, 以後NDVに 曝露されない限 り抗体の上昇は認められない. 中和抗体及びHI抗 体の半減期を計算すれげ, それぞれ約2.5日, 5日 である. 鶏の卵巣中の卵黄及び輸卵管内卵黄の大さ毎に抗体の移行

状態を測定 したが発育の或段階において移行するのでなく, 発生初期より, 卵黄成分に合まれて移行 している事が判明 した.質問 徐 慶一郎 (関東逓信病院)

① 私は前に日本脳炎ウイルスで成鶏から卵黄, ヒナへの移行状態に関する実験を行つたが, その際, 抗

体 のSpecifityが 問題になつた.演者の場合ニユーキヤッスル以外のウイルスで抗体

のSpecifityを 見 られたでしようか.

② 卵 黄〓の抗体の証明の際に, 卵黄〓の処理方法を御教え願いたい.

答 木下喜雄① NDV以 外のVirusでSpecifityを みた事はありません.② 卵 黄内抗体抽出液製法

卵 黄 生食液 塩化エチレン エーテル1.5ml+6ml+2ml+1ml

よく混和 振盤混和 重 層を37℃9 12時 間放置後, 1000~2000rpm遠 沈 上清を使用致しました.質問 川島秀雄 (動薬検)感染経過群 とは感染の程度, 経過 日数はどうでした

か. 卵及びひな血清 中のHI抗 体, VN抗 体が高過ぎるようですが.私共は回復直後の卵を孵化した場合に発育中止, 死

籠が出てそれから毒分離も出来 るし, また孵化後のひな4日, 6日 位の ものからも毒を分離出来ます. また自然 発 生 例 では14日 位のものも発 症 を見 ております. 従 つて回復後の日数が非常に重要であると考えま

す.

答 木下喜雄① 感染の程度はヘイ死率5%以 下の流行でした.

経過 日数は治療 したと思われて5~6ヵ 月後の交配種を使用.② 卵及びヒナ血清のHI価 測定はNDV診 断法に

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230 ウ イ ル ス

よつた. 中和抗体の測定はウイルス稀 釈法 により, EID50に より中和対数を求めた.

③ 孵化中の発育中止, 死籠率は正常と変 らない. Vimusの 分離は試みたが, 分離出来 ませんでした.

④ 感染耐過鶏よりの卵, ヒナに抗体の移行は親鶏に抗体が出来てからの時間が問題になると思 う. 非感

染鶏よりのヒナは孵化直後でも感染 発 症 しますが, 今後, 親鶏の抗体が生成後どの位で卵に現われるかを

追求 したいと思つて居 ます.

37. Ehrlichマ ウ ス腹水癌細胞 の 日本脳炎

ウ イルス感染並 びに免疫 に関す る実 験

的研究 第2報

林 博 (精神医研)

日本脳炎ウイルス (V) はEhrlichマ ウス腹水癌細

胞 (細胞) に よく増殖する. Vが 細胞に遭遇するや否や感染が成立 し, 一旦感染するとVは 抗体によつて完全には不活化 され難 くなる. 然 し遊離のVは 容易に完全

不活化 される. すでに細胞内に充分増殖したVも 抗体に不活化 されるが完全不活化は容易でない. 即, 細胞に感染を来 したVは, 遊離Vと 異つて, 感染の途端か

ら抗体に依つて完全には不活化され難い状態に入る. 此のように完全不活化は容易でな くとも, 兎 に角細胞

内Vを 不活化する抗体は細胞内に入つてVと 結合すると考えるのが自然である. そ こで抗体の在る腹腔内に増殖した正常細胞, 乃至, 感染細胞を取 り, 之 を音波で砕いてその内容に抗体 を証明しようと試みたが結果は全 く陰性であつた. 即 ち, 細胞内に抗体が透入する

と云 う証佐は得られず, 細胞内のVを 抗体が不活化するその機序を明らかにする事が出来なかつた. 更 に今

後の研究に俟つ.質問 岩崎辰夫 (ウ イルス研)(1) 細胞内ウイルスとは, cell associated virus

と云 う意味ですか, intracellular virusと 云 う意味ですか.(2) 細胞内ウイルスに対する免疫血清の作用を見る

場合, 感染細胞をどの程度何で洗滌 されますか.答 林 博(1) cell associated virusとintracellular virusとを此の場合実際に分ける事は難かしい. お答えも難か しいのですが, 私が, 細 胞内ウイルスと云 う言葉で表

現して居 るものは 「細胞内に入つて居るウイルス或は細胞内で増殖 したウイルス」 と解 して頂きたい. 或 は又, 更 に言葉に拘つて申し上げるとすると, 「細胞内

に入つて居ると考えられるウイルス」 或 は 「細胞内で

増殖 して居ると考えられるウイルス」 と解 して頂きたい.

(2) 1%に 卵黄を加えた燐酸緩衝食塩水 (pH 7.6, 37℃) の200mlに 癌細胞のpacked cell約3mlを 浮遊させて洗い, 遠心を用いて, 之 を5回 繰 り返 します.質問 新居志郎 (微研)1. Ehrlich癌 細胞に高感染のJEVを 作用させ後に免疫マウス腹腔内に入れた場合に, 非感染の癌細胞

の増加曲線 とか細胞分裂数と比べて, 何 らかの差は認めなかつたかどうか.答 林 博

特に調べた事がありません. 殊 に細胞を形態学的に調べた事はありません. 実験的に詳 しく調べては居 ませんが, 経験的にはあまり著 しい差はないだろうと考

えて居 ます.質 問 岡田善雄 (微研)感染細胞は細胞膜の透過性が変つて抗血清が入 り得るかも知れない との仮定から実験が行われながら, 実際の実験では必ず腹水の混入入を防ぐために激 しい細

胞の洗浄が当然要求 される. とするとこの洗浄操作の間に 「若しも細胞の中に入つていた抗体があつた」 として も全部流れ去る可能性をもつている. 実験の方法

論の上で欠陥がある様に思う.答 林 博

御指摘の点に私 も同感です. 云 うまで もなく他の方法 も行われるべきですが, 此 のprimitiveな 洗滌法はそう云 う欠陥を承知の上で是非先ずやらねばならない

最初の方法であります.質 問 深井孝之助 (微研)ここでお使いの 「不完全不活化」 ということばは大

変あい まいです. 実 は 「不活化されない」 とい うことなのですから, 考えを進める上でも, より適当なことばをお使いになるべきだと思います.答 林 博

私の使つた 「不完全不活化」 と云う言葉は今述べた抗体作用の現象を説明するのに便宜上用いた言葉であります. 「ウイルスの不活化」 と云 う事自体がどう云う事なのか厳密には私にはつきりして居 ませんので,

そ う云う意味では 「不完全不活化」 と云 う言葉 もあい

まいとなります. 今述べた不活化の状態を表現する適確な学問的単語がありましたらそ れ を使 う事にします.

質 問 高橋理明 (微研)

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第11巻 第3号  231

1) 細胞内ウイルスはどんなにhyperimmunizeさ

れたマウスの腹腔中に長時間入れておいても完全に不活化 されないのですか(答に対 し)2) そ うすると細胞内ウイルスの不活化には細胞外に於けるよりも時間が長 くか ゝると解 してよいのです

ね答 林 博(1) 長時間入れておいても不活化 されないと云 う意

味ではなくて, 不活化され難 くなると云 う意味です.(2) さうです. 細胞に感染 を来 したウイルスは, 遊

離ウイルスに比べてその不活化に時間がより多 くか ゝると云 う意味に解する事も出来 ます.質 問 桑 田次男 (千大細菌)ウ イルス性腫瘍はウイルスに対する免疫動物 を通過させても, 腫瘍細胞からウイルスを消滅させることは

出来ない. 所が所謂外来性ウイルス性に感染 している腫瘍細胞では, 之 を免疫動物を通過させればウイルスが消失すると云われてい ます. 一体, 日本脳炎ウイルスーエールリッヒ癌の組み合わせでは, 免疫動物を何回

通過させても, 癌細胞からウイルスを消滅 させることが出来ないのでしようか.

答 林 博その点は意図的には調べて居 りませんが2~3代 の

短いPassageで は ウイルスは完全に消失するとは云

えないと思います. 之は実験的に追求 したのではなくて実験中に知 り得た経験的な事に過 ぎません. 御 質問の点は極めて重大で且つ興味ある点でありますので私

も今後追究 したい と思います.

38. 腸 内 ウイルスの同定法

桜田教夫, A. M. Prince (406)

近年多数の腸内ウイルスが分離されるに従い, これらウイルスの分離, 同定に簡単且つ迅速な方法が要求されるに至つた.

先 にDeSomer & Prinzie等 はポリオについて抗血清を浸込ませた濾紙を用いて寒天の下の感染細胞の層に阻止帯を作つた.

われわれはこの方法を他の 腸 内 ウ イルスに応用した. 現在迄の結果ではEcho virusの 大多数Coxsackie

A9, Coxsackie B1~5が 約2~4日 間でプラークを作

る事が認められた.

阻止帯の直径はウイルス濃度が高 くなるに従つて逆に小 さくなり, 約1,000~5,000 PFUの 接種量を用い

た時に正確に測定が出来た.ポ リオ以外の腸内ウイルスの阻止帯の直径 と血清濃

度の対数値 との関係はDeSomer & Prinzie等 の結果と同様にlineal relationshipを 示す傾向にある事が

認められた.

39. HA1, HA2, Sendai, イ ンフルエ ンザ,

CA, SA等 呼 吸器 ウイル スの細胞培養

につい て

長木大三 (北研), Alfred M. Prince (406)

HA1, HA2, Sendai, インフルエンザ, CA, SA等 呼

吸器ウイルスの分離及び免疫血清学的試験に資するため, 人骨髄細胞 (BO株), 眼結膜 (CO株), 癌細胞 (KB,

HeLa株) 羊膜細胞 (FL株), マ ウス線維芽細胞 (L株)

等継代培養細胞株並びに猿腎初代培養細胞におけるウイルス培養を実験 した.継代培養細胞株の各ウイルスに対する感受性 と増殖

能は細胞変性効果, 赤血球吸着試験, 赤血球凝集素産生試験によつて判定するのに, 猿腎細胞培養に比 して劣つており, 抗原調製には不 適 であるこ とがわかつた. 猿 腎細胞培養における赤血球吸着試験は細胞変性効果, 赤 血球凝集素産生試 験 よりも より鋭 敏であつた.次 に猿腎細胞培養におけるHA1, HA2, CA, SAウ イルスの廻転培養法及び静置培養法による培養比較実験

を行つた所, 赤血球凝集素産生には両法間に殆んど差はなかつたが, 細胞変性効果は前者で顕著に現れる傾

向が見 られた.

40. Kinetic中 和 試験法 による 日本脳 炎 ウ

イルスの抗原構 造の研究

橋本信夫, A. M. Prince (406)

鶏胎児組織培養を用いて日本脳炎ウイルスのプラック形成のための種々なる条件を検討 し, 更 にDulbecco等のKinetic中 和試験法を応用して日本脳炎ウイルス

中山株の各種中和曲線の様相を比較検討 した.種 々の日本脳炎ウイルスをプラック法で3代 継代 して純化株 となし, またこの様な純化中山株で家兎を免

疫 して標準中山 抗 血 清 を作 り, プラック法を用いてKinetic中 和試験 を行つた.Homoの 中山株の中和は著 しく短時間で終了し, ま

た不活化 されない所謂resistant fractionが 高率に

存在することを認め, しかもそのfractionは 抗血清の稀釈 と共に増加した.

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232  ウ イル ス

更に中山抗血清に対する卵継代TOP株 の中和曲線を比較するに, その中和の程度はhomoの 中山株 より著しく低率であつた.追加 井上幸重 (ウ イルス研)御承知の様にこのvirusとcellのsystemで はfluid

cultureで は明らかなCPEを 示 さず, overlayの も と

でNeutral redに 対 する染色性を失う程度に細胞を変性 してプラックを形成する. 従つて, 多 くの基礎的研究ではこのウイルスとce11のsystemで プラックAssayの 感度をますためにはSerum (中和抗体や阻

止物質の有無に拘 らず) を使うよりSerum albuminを使 つた方が感度が よろしい. tryptose phosphate

brothも これを加えると少 くとも数%プ ラック形成が

減少する. 栄養物質を除くと細胞の維持が困難になるが, 多 くはこれをseedす る細胞数を充分にして細胞

層を作 らせることゝ, 培養温度を35~36℃ に してやることによつて解決 している.

答 橋本信夫我々はTryptose phosphate broth, Lactalbumine

hydrolysate, Yeast extract及 びchick embryo extractの16種 の組合せの重 層 液を比 較 したところ,

LactalbumineとTryptose phosphate brothは 特 に優れた感度 とclearな プ ラックを形成した. この場合

pH条 件が特に大事であつて, 低いpHで はプラック形成能が著 しく悪 くなる. 重層液には北海道とコララ ド州の犢血清 を3%に 用いているが, 微量の抗体が存在 しても感度が鈍 く, Sizeも 少 なくなるので, 血清の選

択には注意を要する.質 問 岩崎辰夫 (ウ イルス研)1) Mouse brain virusをPlaque assayし た と

き, pfuと3週 マウス脳内接種のLD50 (単位容積当り) との比はどの程度ですか。答 橋本信夫3週 マウス脳内接種でウイルスを定量, 比較 しては

居りません.追 加 大谷 明 (予研)TOP株 と中山株との反応に差 があ るようだと申さ

れましたが, TOP株 ウイルスを使用した実験 を示 されないとこの結論はでないと思います. もつとも, このSpeculationに 対 しては私は同感です.

質 問 日沼頼夫 (東北大)稀釈による解離 と理解される根拠をもう一度はつき

り御説明下 さい. この問題は動物ウイルス学に極めて大切な事柄 と存じますので.

答 橋本信夫日脳の中和が本法では非常に短時間で終了 し, 中和

の程度も低 く高率なresistant fractionが 認 められること, 並びに5% pfuで 中和価を測定 した場合よりも

中和の程度が異 ることより, その様に推測 している.

答 A. M. PrinceWe are very interested in the last question. The

mechanism of the high resistant fraction, and the mechanism of the systematic variation in this fraction as a consequence of repeated immunization is a great interest. I have recently heard,

from Dr. Stout & Dr. Jerve's work of the avidity

problem with Diphtheria Toxin. He was able to show a systematic increase in avidity (decrease in reversibility) of antibody as a result of successive immunization. Dr. Hashimoto's result seems to coincide with this, and may have the same mechanism as suggested by Jerve.

41. イ オ ン交 換 セ ル ロ ー ズ の ク ロ マ トグ ラ

フ イ ー に よ る 動 物 ウ イ ル ス の 精 製 に つ

い て

第1報 ア デ ノ ウ イ ル ス, エ コ ー ウ イル ス に 関 す る 基 礎 的 研 究

矢 追 秀 昭, 北 野忠 彦, 春 名 一 郎, 甲野 礼 作渡 辺 格 (京 大 ウ イル ス研)

Adenovirus Type 1, 3, 8及 びECHO virus Type

7をDEAE-Cellulose chromatographyに よつ て精

製 した.

Adenwirus Type 3, 8は 食 塩濃 度0.3MoL付 近 に,

1型 は0.45MoL付 近 に 溶 出 され, 更 に1型 に於 て は

0.2MoL付 近 にCytotoxic factorが ウ イル ス か ら分

離 して溶 出 され て く る. Foliu反 応 か らみ たAdeno

virus各 型 の 精 製 度 は共 に100倍 以 上 で あ る. ECHO 7

型 は0.4MoL付 近 にmain peakを もつ て 溶 出 され

る.

次 にAdenovirus 1型 感 染 細 胞 に産 生 され るCytotoxic factorはfluid phaseよ り も細 胞 のLysateに

存 在 す るの で, 感 染細 胞 のLysateをDaiflon処 理 に

よ り精 製 し, これ をDEAE-Celluloseに よ りchroma

tographす る とウ イル スは0.7MoL付 近 に, Cytotoxic

factorは0.5MoL付 近 に溶 出 され, 化 学 的 に 可成 り

純 度 の高 い ウ イル ス及 びCytotoxic materialを 得 る

こ とが 出来 た.

質 問 木 村 廉 (名 古 屋 市大)

Page 7: 熱および紫外線不活化 されたVaccinia IHDのcell killngに ついて 花房照子, 花房秀三郎

第11巻 第3号  233

イオン交換セルローズとイオン交換樹脂と如何なる

優劣があるか, 酵素の精製には交換樹脂を用いて好成績が得られるので両者の比較 もやつていただきたい と思 う.答 矢追秀昭イオン交換樹脂との比較は試みておりません.

質問 杉浦 昭 (公衆衛生院)ウイルスの回収率はどの くらいか.

答 矢追秀昭アデノウイルスの型によつて異るが, 1型 は60%,

3型 は80%, 8型 は殆んど100%で あ る. エコー7型

は約70%で あ る.

質問 日沼頼夫 (東北大)① 抄録の終 りに書いておられる生物学的及び化学

的性状は?② 所 謂 “毒素様物質”の産生の一番よいウイルス

培養条件は如何?答 矢追秀昭

① 化学的な性状については, 解析するには量的に未だ不足である.② 詳 しくは検討 していないが, 毒素様物質は単にウイルスの増殖に平行して細胞内に産生 されるようで

ある.質問 吉舌鉄男 (阪大微研)ダイフロン処理アデノ1型 のDEAEセ ル ロースで

の溶出塩類濃度が多少高 くなつているのは細胞外ウイルスとは表面構造において差異があることに依るとお

考えでしようか. それ ともダイフロン処理に依つて表面の性質が変えられることに依 るのでしようか.答 春 名一郎ダイフロン未処理のウイルスでは混在 している蛋白

質によつて溶出塩濃度が低いが, ダ イフロン処理によつて, その蛋白質が除去されウイルス自身の溶出塩濃

度が, 溶 出されるのではないかと思われる.追加 深 井孝之助 (阪大微研)Genetron処 理 によつてAdenovirus粒 子のicosa

hedronは 非 常に容易に認めることができるようにな

りますから, 溶 出塩類濃度が異つて来 ることについてのいまお述べになつたお老えが正しいと考えます.

42. 日本 脳炎 ウイル スの精製 に関す る研究

(続 報)

○竹原 学, 徳地幹夫, 大 山昭夫堀田 進 (神戸医大 ・微生物)

精 製に用いたウイルスは日脳 (GI株), デ ング熱 (望月株), 黄熱 (17D株), WEE (予研分与株), 及びポリオⅡ型 (MEFI株) の5種 であり, 前4者 は何れ もトリプシン処理ハムスター腎培養細胞に, ポ リオウイルスはHeLa細 胞培養に夫々増殖せ しめた培養液相を精

製材料 とした. 精製方法は各種ウイルス液 を低温下にEcteola-Cellulose Column Chromatography及 びFluorocarbon処 理法により精製した. この操作によ

りウイルス活性を極力保ちつつ, しかもN量 を約10%以下 に減少せ しめることが出来た. 次に之等の部分的精製ウイルスに対する各種酵素の影響を調べ, 更 に酵

素処理 されたウイルスの免疫元性を検討した. その結果, トリプシン, プ ロテイナーゼ, 及びリパーゼ等の2時 間処理によりてポリオウイルスを除いては何れも

ウイルス活性の減少をきたした. 精製活性ウイルスをウサギ及びサルに接種することにより, 中和抗体及び

補体結合抗体が共に産生 されたが, トリプシン或はリパーゼ処理ウイルスによつては夫等抗体の産生は前者

に比 して低 く, 且つ出現の時期 も遅延した. 以上の諸

実験成績について若干の考察を試みた.質 問 大谷 明 (予研)膵 リパー を日本脳炎ウイルスに作用させたときの反応のpHは どの位で したか?答 竹原 学

pH 7.2~7.4質問 岩崎辰夫 (ウイルス研)精製 日脳ウイルス及び精製ポリオウイルスに対する

膵 リパーゼの不活化作用の相違を以つて両ウイルスのLipidの 構成の相違を考える前に, ポ リオウイルスの

感染の成立にLipidが 必要か否か, 最 もprimitiveに考 えねばならないことはポリオウイルスにLipidが あるのか否かを考える必要はありませんか.

答 竹原 学リパーゼに依る不活化作用のみから何 も断定的なこ

とは述べられぬことは明らかである. 尤 もな御意見だと思う.

質問 野島徳吉 (伝研)(1) 膵 リパーゼはどのような標品を使いましたか.(2) 日脳 ウイルスとポリオウイルス両種ウイルス粒

子のリピド構成因子が異るというが, 後者にはリピ ドはないと思 う.答 竹原 学(1) 市販品 (東京化成製) を使用.(2) Polio virus partieleの 構成成分に就て, 正確

Page 8: 熱および紫外線不活化 されたVaccinia IHDのcell killngに ついて 花房照子, 花房秀三郎

234 ウ イル ス

なデーターを記憶 していないが, Lipase作 用のSubstrateが 両種ウイルスについて異なるのではないかと

思う.質問 春名一郎 (京大ウイルス研)イオン交換セルローズは, 他の種類のものを使用さ

れましたか.答 竹原 学未だ使用していない.質 問 多村 憲 (ウ イルス研)グ ラフでは感染値はTCID50と い うlog scaleで 片

方のN量 は%で 表わされていますのでどれほど精製されたかわかりにくいのですが, 感染価/N量 は相当高くなつているのでしようか.答 竹 原 学感染価/N量 の計算値 のデータを持 ち合 せていないが, 2, 3の ウ イルスに就てはVirus Recoveryが100%で しかもN量 はOriginal fluidの10%以 下 になつているから相当高 くなつていると思う.質問 北野忠彦 (ウイルス研)カ ラムの条件について

答 竹原 学1) カ ラ ムの 大 さ { 長 さ… …10~15cm

径 … … …1cm

2) 溶離条 件 ウ イルス吸 着 後1/15M-Phosp-hate Buffer (pH 7.2) にて溶離 を行なつた.

43. イ ン フルエ ンザ ・ウイル スの毒性 因子

に関す る研究○加藤延夫, 岡田章子 (名大細菌)

ウイルス (PR8) 粒 子自体の有するマウス静脈内接種による毒性について実験を行つた. ウイルスは感染漿尿液 より超遠心, 血球法, Al(PO4)3ゲ ル法により精

製 した. 成績の概要は次の如 くである. 1. 生 ウイルスの静脈接種による毒性はマウス (体重20~25g) の系統

により著 しい差があり, CFWが 感受性が最も高 く雑系が最 も低かつた. 剖検所見ではCFWの みに肝, 腸等 の病変以外に特異な肺病変が形成された. この肺病変の組織学的所見は 血管, 気管支周囲の細胞滲潤 と胞隔の充うつ血及び気管支上皮の変化を主徴 とした. 2.

生 ウイルスの接種後の体内消長は各系統マウスにより

有意の差異はなく, 接種後速やかに肺に多 く集 り以後漸減の傾向を辿つた. 3. 1時 間の音波処理 (10KC) によ りウイルス粒子のほゞ完全な分散解離が起 り, 電顕

及び超遠心分析によりウイルス粒子 (100~110mμ, 752

S) はHA粒 子 (40~60mμ, 74S) とS抗 原粒子 (15~30

mμ, 紐 状 に連なる傾向を有する) に分れることを見出した. 感染価は著しく減少 し, HA価 は多くの場合上

昇 した. マ ウスに対する毒性は感染価の著しい減少に拘 らず増強 した. CFW以 外 のマウスの病変は生ウイルス接種の場合 と同様であつた. CFWで は肺の肉眼

的所見は全 く同様であつたが, 気管支上皮の変化及び気管, 血管周囲の細胞滲潤 を全 く認めず胞隔の充 うつ血 と肺胞内出血が主であつた. 4. 音波処理後HA分 画とHAを 除去 したS分 画に分けるとHA粒 子の毒性は分別前の材料に比してかなりの低下が認められたが,

なお毒性を有 した. S分 画にもHA分 画 と同様なあるいはやや低い毒性を認め毒性因子をHA粒 子から遊離せしめることができた.

質 問 清水当尚 (大日本製薬)① インフルエンザウイルス (PR8) でCPEを 起 す

培養細胞に対する毒性因子の影響を検討されたことがあるでしようか. あればその結 果 をお知らせ願いたい.

② intactウ イルスでマウスに感染 せ しめた場合 (例えば経鼻感染) のウイルス増殖 を伴 う病変 と毒性因

子による病変 との関連性についてどう御考えでしようか.答 加藤延夫(1) 培 養細胞に対する効果は未だ見ておりません.(2) 今 回は静脈内注射の場合の病変のみを報告しましたが, 生 ウイルス経鼻接種後の肺病変の組織学的所見のうち, 肺胞隔の変化はtoxic componentに よるもので, 気管支上皮および気管支周囲の細胞滲潤の形成にはinfective virusが 必要 と思われ ます.質問 石 田名香雄 (東北大細菌)1) EBとConsolidation factorと の病理機構 とは

同 じと考えてよいか.2) Stabilityは 如何.

3) Recovery rateは 如何.答 加藤延夫(1) スライドで示 した組 織 標 本でみられた如 く,

CFW肺 所見中気管支上皮の変化及び気管支, 血管周

囲の細胞滲潤はinfective virus particleが 関与 していると思われますが, 肺胞隔の変化はtoxic componentに よるものと思われます.

(2) 易熱性 (60℃, 30分 にて完全に不活化), UVに比較的感受性があり, formalinに よつて不活化 され

ます.

Page 9: 熱および紫外線不活化 されたVaccinia IHDのcell killngに ついて 花房照子, 花房秀三郎

第11巻 第3号  235

(3) 未 だ 完 全 に 物 質 と して抽 出 して あ りませ ん か ら

不 明 です が, HA粒 子 か ら分 離 で き るtoxic component

は部 分 的 です.

質 問 保 坂 康 弘 (阪 大微 研)

Etherで 毀 したsubunitsとsonicationで 毀 した

subunitsの 間 で 差 が み られ るか.

答 加 藤 延 夫

Ether処 理 ではtoxic componentが 完 全 に不 活 化

され ます. ether処 理 に よつ て得 たsubunitsの 形 態

学 的性 状 に つい ては や つ て お り ませ ん.

質 問 日沼頼 夫 (東北 大)

Sonic vibration後HAを 除 い た 上 清 (S分 劃) をス

ピ ンコ で み る とtoxic factorはSと 如 何 に ちが うか

? 或 い はS抗 原 よ り大 きい もの か小 さい もの か?

答 加 藤 延 夫

S分 画 に移 行 す るtoxic componentの 沈 降 定数 は

しらべ て あ り ませ ん. 電 顕 で はS抗 原 粒 子 と思 わ れ る

均 一 の 粒 子 の み が認 め られ 他 の 有形 成 分 は認 め られ ま

せ ん の で, toxic componentはselubleな い しamor

phousの 状 態 で存 在 して い る もの と思 われ ます.

質 問 岡 田善 雄 (阪 大 微 研)

抽 出 され たtoxic componentはanti virus serum

で中 和 され ます か?

答 加 藤 延夫

intact virus particleのtoxic effectは 抗virus 血

清 に よつ て 中 和 され ます. virus particleを 破 壊 した

材 料 及 びHAか ら抽 出 した材 料 につ い て は や つ て お り

ませ ん が, 恐 ら く抽 出 した場 合 にはHI抗 体 の み で は

中和 され ない と思 い ます.

44. Myxovirusの 構 成 粒 子

○ 保 坂 康 弘, 細 川 康, 川 合 和 子深 井孝 之 助, 吉 舌 鉄 男, 舟 橋 修 之岡 田 善 雄 (阪 大 微研)田 所 順 (大 阪 府 衛研)

HVJ, NDV, Influenza virus PR8株 の 三 種 の ウ イ

ル ス の構 成 粒 子 をEmasol-ether法 で調 製 し, そ の 性

質 を超 遠 心法, ゲ ル 内 沈 降 反応 及 び電 子 顕 微 鏡 等 で 調べ た 結果, 此 等 の ウ イ ル スの 構 成 は, 単 に ウ イル ス表

面 のhemagglntininと 内部 のS-抗 原 とい うば か りで

な く, 更 に免 疫 学 的 に異 な るい くつ か のsubcom p o n

entsか ら成 る こ とが 明 らか とな つ た.

S-抗 原 に つい ては 略 々 共 通 で40~50Sの15~ 20 m μ

の 小 粒 子 か らな る. hemagglutininはHVJで は90~

100Sの50~60mμ, PR8で は50S (更 に300Sも 含 む) の

20mμ 粒 子 (更 に40mμ の 粒 子 あ り) か らな る. NDV で

は分 劃 の途 中160Sのhemagglutininは 毀 れ て5S 粒

子 を多 く出 す. NDVとHVJで はhemagglutinin に

R抗 原 が 含 まれ これ が 夫 々5S粒 子 及 び3.6S粒 子 に 当

る. これ に は凝 集 能 は ない. また ゲ ル内 沈 降 反 応 に よ

つ て これ 等 のSubunits抗 原 物 質 の拡 散 恒 数 及 び分 子

量 も求 め られ, トリプ シ ン及 びRNaseの 抗 原 性 に 及

ぼ す 影 響 も併 せ て研 究 され た.

質 問 石 田名 香 雄 (東 北 大)1) RはSedimentable proteinとspurを つ くるか

2) RはNDVとHVJと に あつ てPR8に ない と考

え て よい か

3) Lipidを 含 む 抗 原 は ど こか に得 られ てい ない か

答 保 坂 康 弘

1) Rはnormal sedimentable proteinとspur し

ない.

2) RはPR8に は ない.

3) まだ 調 べ て い ない.

質 問 加 藤 延夫 (名 大 細 菌)

(1) PR8のHAのSedimentation coefficient の

300Sは 従 来 の 報 告 か らみ て大 に過 ぎは しな い か?

(2) Nmg/HAか ら ウ イル ス粒 子1個 中 のHA粒 子 数

を計 算 す る根 拠 は? intact particleとHA subunit

とは血 球 凝 集力 が 等 しい とお考 え です か?

答 保 坂 康 弘

(1) PR8のHAのSedimentation coefficientは 二

種 あ る (50Sと300S). 300Sの は 電 顕 でみ られ る内 部

構 造 の 脱 け たghost様 の もの と思 う.

(2) Emasol-ether法 処 理 前後 で の蛋 白量/HAの 比

の 割 合 か ら1ウ イル ス粒 子 の 構 成HA数 の最 少 推 定 数

は計 算 で き る. そ の場 合HAは 共 に 同 じ粒 子数 に よつ

て 同価 を示 す と仮 定 してい る.

質 問 工 藤 肇 (東 北 大 細 菌)

3.6S Componentは 漿 尿液 中 の 蛋 白 成分 の 一 つ と考

え られ ない か.

答 保 坂 康 弘

免 疫 学 的 にみ て 全 く別 の もの と考 え られ ます.

45. イ ン フ ル エ ン ザA2ウ ィ ル ス に 対 す る

non-specific inhibitorの 酵 素 的 破 壊

○ 杉 浦 昭, 下 条 寛 人 (公 衆 衛 生 院)

A2ウ イル ス に対 す るinhibitorは 主 と して αグ ロブ

リ ンに含 まれ て お り, また シ ア リ ン酸 を含 んで い る.

Page 10: 熱および紫外線不活化 されたVaccinia IHDのcell killngに ついて 花房照子, 花房秀三郎

236 ウ イル ス

A2ウ イル スinhibitorは α inhibitorほ どで は ない

が, ウ イル スの 酵 素作 用 あ るい はRDEに よつ て明 ら

か に破 壊 され, そ の際inhibitor中 の シア リン酸 は 透

析 性 とな つ てinhibitorか ら離 れ る.

inhibitorに 対 す る酵 素 作 用 は足 立 で は強 い が, in

hibitor insensitiveなYS, PR8で は弱 い.

以 上 の 点 か ら考 えてA2ウ イル スinhibitorも また

α inhibitorの 範 疇 に入 るべ きもの で あ る. ただ 他 の

α inhibitorに 比 べ 酵 素 作 用 に対 す る抵 抗 性 が 強 い こ

とお よび ご く限 られ た 種 類 の ウ イル スす なわ ちA2 ウ

イル スのinhibitor sensitive strainと しか反 応 しな

い とい う特 徴 を もつ てい る.

質 問 石 田 名香 雄 (東 北 大 細 菌)

1) 我 々が 且 つ て称 した よ うに α′-inhibitorと い つ

た名 が適 当 では あ る まい か.

2) DEAE-Cellulose等 のfractionationで α と α′

と分 離 で きた か.

3) Heat activationを うけ た α′に対 す る各 ウ イル

スのEnzymatic activityの 変 化 を認 め たか.

答 杉 浦 昭

1) イ オ ン交 換 セ ル ロー ズ, 電 気 泳 動 等 の 方 法 に よ

つ ては 足 立 に対 す るinhibitorとindicator Leeに 対

す るinhibitorと を分 離 す る こ とは で きな かつ た.

2) 予 め 馬血 清 を加 熱 した 場 合RDEに よ りinhib

itor titerが 減 少 しや す くな る こ と もあつ た が, そ う

で ない こ ともあ り一 致 した成 績 は え られ なか つ た.

質 問 保 坂 康 弘 (阪 大 微 研)

加 熱 に よ り酵 素 作 用 で失 活 す る とい う報 告 とそ うで

ない とい う報 告 もあ るが, そ の原 因 を ど う考 え られ ま

す か.

答 杉 浦 昭

ウ イル ス株 の種 類 に よ る もの と思 い ます.

質 問 深 井孝 之 助 (阪 大 微 研)

inhibitor sensitiveな ウ イル ス の粒 子 は他 の もの に

比 べ て よ り多 くのenzyme unitを もつ てい る とお 考

え なの です か?そ れ と も異 つ た種 類 のenzymeを 持

つ てい る とお考 え な の です か?

答 杉 浦 昭

オ ボ ムチ ンに対 す る酵 素 作 用 は足 立 で も他 の ウ イル

ス で も略 々 同 じで あ る 点 か らenzyme unitが 多 い と

は考 え られ ない. 酵 素 作 用 の強 弱 は む しろ吸 着 が お こ

りや す い か否 か に関 係 が あ るの で は ない か と思 い ま

す.

46. イ ンフルエ ンザA2型 ウイル スのP, Q

相 に関す る研究

○徳田正夫, 鈴木司郎, 猪川 純(京大ウイルス研)

インフルエンザA2型 ウイルスP相 が抗体のないヒト或いはモルモット血清 と共に培養することによつてP相 からQ相 に変る機転について研究した. 現在の段

階では次の様に解するのが最も容易であると思 う. 即ち, P相 ウイルスが増殖する時に少数のQ相 ウイルスが生ずる. その数は足立2/57株 「ウ」 ではQ相 ウ: P相

「ウ」=100.9:107.5以下 である. こめ場合には血清は単に

Q相 「ウ」 の撰択に役立つている. 又P相 とQ相 との中間型の 「ウ」 の出現することがあるが, 之 はP相 「ウ」 とQ相 「ウ」 とのRecombinationに よるものと思われる.質問 杉浦 昭 (公衆衛生院)始 めからP, Q両 相が混在しているのか, あるいは増

殖の過程で常に一定の割合で変異株 を生 じているのでしようか.答 徳 田正夫始めからQ相 がまじつているとしても今申しあげた

実験結果からP相 の107.5EID50に 対 してQ相 は100.9EID50以 下 であるか ら, この様な割合ならばLimit

infecting dilutionを 繰返せばP相 のみになり得る.

従つて増殖の過程で変異株が生じていると考えます.質問 竹森信之 (予研)人間からの分離株でP, Q相 が混 合 していることがあるとすれば, Qウ イルスをin vitroで 人間または猿細胞通過するとQと 共にPが 出現する様なことがないでしようか.

答 徳 田正夫in vitroで は未だやつていませんが, Qウ イルスを

マウスに, 多いのは18代 も継代 しましたが, 依然とし

てQ相 でした.

質問 石田 弘 (化血研)私は一応P相 を呈する株 を限界希釈継代6G迄 行つてもP Q両 相 の 「ウ」 が出て来た事を経験したが, この場合何代位継代すれば純粋になると老えられるか?答 徳 田正夫P相, Q相 の まじつている割合即ち株によつて違う

のではないでしようか. 足立2/57株 の場合は何度も10

倍段階希釈ウイルスを接種した卵のウイルスで検しましたが, 何 れもP相 のみで, 足立2/57株 か ら無処理で

Q相 が出てきた経験はありません.

Page 11: 熱および紫外線不活化 されたVaccinia IHDのcell killngに ついて 花房照子, 花房秀三郎

第11巻 第3号  237

47. Analysis of Virulence of Strains of Japanese Encephalitis Virus

Alfred M. Prince (406)Virus populations derived from mouse brains

inoculated with terminal dilutions of standard mouse passage Nakayama strain Japanes ence

phalitis Virus were found to vary genetically in virulence following subcutaneous inoculation of 4-week old mice.

Analysis of virulence was carried out by inoculation of serial dilutions of virus into suckling mice intracerebrally, and 4-week old mice intracerebrally and subcutaneously. Mice inoculated

subcutaneously which survived the virus inoculation were individually bled for determination of hemagglutinating inhibiting and neutralizing antibody in order to determine the immunogenicity of the strains examined.

The following peripheral virulence character

istics were delineated:1. Virulent (Mouse S. C.). These strains result

ed in death of 30-50% of mice inoculated with any dilution except the terminal dilution. The following virulent strains were immunogenic following subcutaneous inoculation (Nakayama Clone C, M7-927, Nak Plaque AAA SMP-1. Strain

(M5/596) was non productive of HI antibody (tested with Nakayama antigen) but produced neutralizing antibody.

2. Attenuated (Mouse S. C.). These strains were characterized by few, if any, deaths at any dilution inoculated subcutaneously. Attenuated strains

may be subdivided into those which were non immunogenic following subcutaneous inoculation

(Nakayama Clone D, Warren strain egg passage viruses, TOP 1-day egg passage strain (Okuno); and presumably attenuated strains which are also immunogenic. Strains of the later type have not been encountered so far, but are being actively searched for.

質問 福見秀雄 (予研)I woul dlike to know the behaviors of those viru

lent and avirulent Japanese B encephalitis virus

strains, whose characteristics in mouse inocula

tions you have presented here, to monkeys.

答 A. M. Prince

Tests in Monkeys of attenuated strain virulence

and immunogenicity are now in progress. We

need to know whether luck of immunogenicity

in mice parllels that in primates

質 問 Rassmussen (台 北 米 海 軍 医 研)

Attenuated virusの 皮 下 組織 に おけ るfateは 如 何

か?

答 A. M. Prince

We do not know what fate of "attenuated" strain

is in subcutaneous tissue. The occasional produc

tion of antibody, especially at high dilutions, sug

gests the possibility that multiplication takes

place, but is inefficient and variable in extent, perhaps due to an autointerference effect. We observe

autointereference in tissue culture with these

strains. We have not tried immunogenicity expe

riments with killed warren strain virus.

質問 宍戸 亮 (予研)(1) Did you try to challenga the virulent strain

of Nakayama into the survived mice of subcutaneous inoculation?

(2) Did you try to recover the virus from the survived mie of subcutaneous inoculation?

Because I think that the H. I. antibody is a

good expression of infection, but it may be possible that such an attenuated strain may change its

pathogenicity or antibody-producing (H. I.) ability.

答 A. M. Prince

(1) We have not yet done challenge experi

ments, but one of course planning to do them even

tually, if the serological results become more

promising.

(2) We have not tried virus reisolation after S.

C. inoculation. This shonld be done.

質問 桑田次男 (千大細菌)(1) How is the stability of virulence of some of

your attenuated strain after passing in suckling

mice?

(2) Are there any difference among suckling

mice of different ages in susceptibility against

your attenuated virus strain?

Page 12: 熱および紫外線不活化 されたVaccinia IHDのcell killngに ついて 花房照子, 花房秀三郎

238 ウ イル ス

答 A. M. Prince

(1) Attenuation of clone D was stable for 3

mouse I. C. passages at near terminal dilutions.

I suspect that we could not carry this on too long,

however.

(2) We use 1-2 day old sucklings for these

experiments. I have not yet compared suscepti

bility as a function of age.

追加 大谷 明 (予研)私共の弱毒TOP株 について, 又他の弱毒ウイルス

株についても, 哺乳マウスのAqeの 差による感受性の違いについては詳 しくしらべておりません. 然 し私

共が現在得ております弱毒株は, 極めて低希釈に於ても, 脳内接種で殆んど成熱マウスを殺 さないのに, 生後2~4日 哺乳マウス脳内では, full titerを 示 しております. この事実 より, 私 は少 くとも弱毒株に関する限 り, 哺乳, 成 熟両マウスの間には大きな感受性の差があると考えています.答 A. M. PrinceThis is a very convincing difference between

brain susceptibility at mice of 2-days and adults.

The important question is whether the extreme

attenuation which you have certainly achieved

with the top strain is a useful one. In other words,

is the strain now even more "over-attenuated"

than it was at 1 day egg p. 72, when, as we show

ed, it was not immunogenic following peripheral

inoculation?

質 問 渡 辺 守松 (家 畜 衛 試)

私 の 経 験 に よれ ば, 4週 マ ウス のi.p. また はS. Cに

日本 脳 炎 ウ イル ス を接 種 す る とconstantな 死 命 率 を

示 さない が, 3週 マ ウス で は非 常 にconstantな 成 績

を示 す.

答 A. M. Prince

That is very interesting and helpful to us.

Thank you.

48. ボ リオ生 ウイル スワクチン投与児 およ

び ソー クワクチ ン接種児 における補体

結合 抗体値 の消長

西沢義人, 児玉貞介, 野上一雄, 真 島栄一○今田 稔, 岡嶋慎治, 神原佳子, 村上圭司瀬川欣子, 坂 野靖章 (阪大小児)

ポ リオ患児10名. Salk vaccine接 種児21名. Lederle

製 ポリオ3型 混合生ワクチン内服児10名 につき, 生 ウイルス, 56℃ 5分 加熱, 56℃ 30分加熱, 0.2% Phenol添加抗原 を用いCFを 行つた.trivalent vaccineでCF抗 体 は生 ウイルス抗原で

は1ヵ 月から3ヵ 月迄持続 したが, 加熱抗原では3ヵ

月後の陽性例が減少した.生 ウイルス抗原のみでtrivalent vaccine内 服3ヵ

月後の150例 のCFの 結果を観察 した. CF抗 体上昇は0~1才 に高率で, 年令が高 くなるに従つて上昇率が

低 くなつた. 内股前中和抗体陰性例ではCF抗 体上昇率は44.2%で あつたが, 保有例では24.4%に す ぎなかつた. Ⅰ型で34例, Ⅱ型7例, Ⅲ型42例 の上昇例 を認めた.ワクチン内服児50名 につきCF抗 体 の消長 を調べ

た. Ⅰ型, Ⅲ型 の結果からCF抗 体は1ヵ 月から3ヵ

月頃迄持続, 6ヵ 月では低下, 又 は消失する例が多いものと考えられる.Ⅱ型の力価が低いのはこのtrivalent vaccineの 最

も大 きな問題点であると思 う.質 問 平 山宗宏 (東大小児科)新居氏はウイルス紙上に, ソークワクチンの効果を

CFで みておられますが, 今の御発表ではCFの 上昇が大変わるい. 私の経験でもワクチンによるCF上 昇はわるかつたように思います. その理由としてNT価が或程度以上上らないとCFが 上らないのか, それと

も何か抗体産生機序の上の差があるとお考えですか. 例えばウイルスが体内で増殖 しない とCF抗 体は出来

にくいと云 うようなことがあるとお考えですか.答 今 田 稔ソークワクチンでCF抗 体上昇率が低いのは, 生 ワ

クチンの場合 とソークワクチンとでは抗体産生のメカニズムが異るものと考える.CF抗 体 (殊に生 ウイルス抗原に対する) が上昇する

ためにはやはりウイルスの増殖が必 要 な条 件だと思

う.また, 或 る発表においてソークワクチンのCF抗 体

上昇 を比較的高率に認めるのは, 術式の差によるものかもしれない と思 う.

49. ボ リオ不活化 ワクチ ンの免疫持続 と減

弱 について

巽 稔○川上勝朗, 谷 一, 中田 脩赤木信博, 佐 々木聖 (大阪医大小児科)

吾々はソークワクチン3回 接種 を行つた2才 未満の

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第11巻 第3号  239

乳幼児33名 につき, 其後2年4ヵ 月間, 中和抗体価の推移を追求 し, また, その間1回 または2回 の追加接種 を行つた場合の効果 をしらべ, 次 の成績を得た.1) 1才 未満及び1才 の幼若乳幼児では, Brown等

の学童における成績と比べて, 抗体減弱は急激であつて, ワクチン3回 接種後2年4ヵ 月間にⅠ型90%, Ⅱ

型65%, Ⅲ型82%, の例において, その抗体価が3回接種後の1/4以 下にまで減弱するのをみとめた.2) この ような幼若乳幼児に対する追加接種は, 一

旦減弱消失 した抗体を再び急上昇せ しめ, また, ソークの3回 法により抗体上昇 をみなかつた乳幼児に対しても, はじめて抗体を上昇せしめる作用をもち, きわめて有効である.

以上の事実から, 吾国では乳児期にソークの3回 法を完了 して, 尚, 其後数年間は年1回 の追加免疫を行うのが適当であろう.

質 問 平 山宗宏 (東大小児)(1) ワクチン接種前に抗体陰性 と云われるのは, 3

型共 にもたぬのでしようか. 私 の経験で, 0.1cc皮内注射法 をやつたとき, 3型 共に抗体未保有のものは, 抗体上昇がわるいが, 1つ 以上抗体 をもつていると, 例えば, Ⅱ型 をもつていても, ワクチンによるⅠ型の上昇もよいようです.(2) 日本 のようにポリオ患者が1才 台に多発 している現状では, ソークの原法で, 接種完了に半年以上を要 してから効果が期待出来るのでは間に合わないかとも考えられます. 初 回免疫をどうしたら早 くに抗体を獲得出来るか御意見がありますか.答 川上勝朗

① ワクチン接種前に3型 とも陰性なるものは27名であり, 残 り4名 は2つ の型陰性, 2名 が1つ の型の

み陰性であつたが, 3型 とも陰性者 と, 後 二者 との間の抗体上昇の差については, 後二者の例が少なかつたためか, 差が認められなかつた.② 御質問のごとく, とくに吾国では, 1才 未満の乳児に短期間のうちに充分な抗体 を産生せ しめることが望 まれ, そ のような方法を研究することが一つの重要課題であろう. 米国では1回 の注射量を10ccと い うような大量 を注射すると, 短期で充分な抗体上昇をみるという報告があつた.

質問 新 宮正久 (久留米大微生物)乳幼児と学童の抗体の推移を乳幼児は我が国の成績を用いて学童のは米国のを用いておられますが, その積極的な理由があれば御教示下さい.

答 川上勝朗吾国では患者の発生年令からみて, 幼弱乳幼児にワクチン接種を行う必要があり, 吾 々の現在迄の実験では, その意味で年長学童における接種経験 をもたないので, やむを得ず米国学童のそれ と比較した.

追加 田野礼作 (京大ウイルス研)(1) 米国のBrownの 学童におけるワクチン接種の

成績 と比較するにはpHでendpointを お さえているのとCPEで お さえるので方法がちがい若干無理があると思 う.(2) 我々は0.1ml皮 内接 種4回 法 でもよい抗 体上

昇率を得ている. Salk原 法の3回 目を2回 後6~7ヵ月目に行うのは日本の現状では悠長にすぎる. 期間を短縮 してもbooster effectは 十分得られる. ソークワクチン接種により効果を得るには接種抗原量も重要

であるとは思うが, 接種のtimingと 回数がより重要であるように思われる.

追加 平山宗宏 (東大小児科)甲野教授へ0.1cc皮 内法で抗体上昇のわるいのは, 皮下法 と同

じにやつた場合で, 私共の成績でも, 初 回免疫に皮内

注, 射を4~5回 用いるとか, 第1回 皮下1cc, 第2回以後皮内 とい うような組合せを行 うことによつて相当の効果が期待出来ます. 米 国のように初回10ccの 如 き試みは我が国では問題になりませんから, 我が国の実状に即した接種法, 接種間隔等を早急にきめなくてはならないと思います.

質 問 渡辺守松 (家畜衛試)1才 未満のもので抗体の上 るものと上 らないものの

母親の抗体差がありますか.

答 川上勝朗母親の抗体については調べていない.質問 影山公一 (慶大小児科)4回 乃至5回 目の追加免疫を経口時にやられたか.

答 川上勝朗4回 ~5回 の追加も初回接種 と同様1.0cc皮 下 の方

法で行つた. 弱毒生ウイルスの経口的投与は行つていない

50. 凍 結 乾燥痘苗 に関す る研 究

柳沢 謙, 北 岡正見, 多 ヶ谷勇 (予研)添川正夫, 山内一也 (北里研)

○沢田哲治, 鈴木正敏 (予防会結研)

グ リセリン水加痘苗は低温では長期間力価を保持す

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240 ウ イル ス

るが高温では短期期間に力価の低下を来たす. 我 々は種々の媒質を加えて痘苗を凍結乾燥し, 37℃, 45℃ に保

存 し, pock counting法 と人体接種によつて力価を検定し耐熱性をしらべてつぎの成績を得た.1) 37℃ と45℃ に9ヵ 月保存 した乾燥痘苗では5%

ペプ トン溶液, 2%, 5%グ ル タミン酸ソーダ溶液 を

媒質としたものがよく力価を保持 した. しかし37℃保存に くらべて45℃ 保存のものに僅かに力価の低下がみられた. これに反して塩類加乳糖溶液を媒質 としたもの, 媒質を含まない乾燥痘苗は著明な力価の低下を示

した.2) 5℃, 37℃, 45℃ に1ヵ 月保存 した乾燥痘苗の

善感率では5%ペ プ トン溶液 と5%グ ルタミン酸 ソーダ溶液を媒質 とした乾燥痘苗の間に差が認められず,

5℃ 保存のグリセリン水加痘苗 と同程度であつた. しかし45℃, 1ヵ 月保存の塩類加乳糖溶液を媒質 とした

ものは極めて低い善感率を示し, pock countsと よく相関した.以上の成績から塩類加乳糖溶液 を媒質 とした乾燥痘

苗は耐熱性が極めて低いが, グルタミン酸ソーダ溶液を媒質とした乾燥痘苗は, ペプ トン溶液を媒質 としたもの と同様の安定 した耐熱性を示すことを認めた.追加 荒川清二 (伝研)私 は矢追教授と共に1938に 精製痘苗の保護物質を検

討 し, ペ プトンもよいこと を報 じている. McCleanか らよい乾燥痘苗をつくつたからというので二度送つて貰つたが二度共実際の使用に堪え得ない程度の力価しかなかつた. グルタミン酸 ソーダについても兼子千

秋が検討し意外によくなかつた. この際1%の 濃度のものを用いた. しかるに乳糖添加のものは非常によかつた. これも1%の 濃度で可なり濃いものである. 乳

糖についても, グルタミン酸ソーダについても濃度が可なり保存力に決定的な作用をもつことがあるのでは

なかろうか.

質 問 館野 功 (伝研)(1) 痘苗 には表示されましたように必ず一定数の雑

菌が入つていることがふつうなのですか. 抗生物質が入つているようですが実際使用する場合は抗生物質に

対するanaphylaxy, allergic reactionに ついても考慮 しなければなりませんね.(2) Pox virusに 対する抗体はvaccination後 何年

位つづくのですか. 南北鮮等より密入国者が多いようですが我々のもつている免疫抗体は充分protectiveなlevelに あ るのですか.

答 沢 田哲治さきに遠沈 を繰 り返 して細菌数を減少せしめた とこ

ろ, 同時にvirusのtiterも 減少 した. Collierは0.5% Phenolを 用 いて細菌数を減少せしめたが, 保存中にvaccineのPotencyが 減少すると報告している. そ

れで今回はSMを 用いて細菌数を減少せしめて報告 した. なおPenicillinを 用いてはいない. 今後Fluorocarbonを 用いた材料で乾燥 したい.答 多 ヶ谷 勇 (予研)(1) 材料 として牛の皮膚苗を用いる関係上, 雑 菌の

混入は避けられませんので, 厚生省生物学的製剤基準で1cc中 に1,000個 の コロニー形成菌以下と規定されています.

(2) 種痘後の抗体価の推移については最近の手技を用いた, わが国での詳しいデータは未だ見ておりません. 二木謙三先生の流行時の罹患発症者 と種痘歴 との

関係のデータによれば, 免疫の最高時は善感後3~12ヵ月で以後漸次低下するとされており, これによれば

当然疑似症が出ればその周囲では直ちに臨時種痘をすべ きであります.質問 渡辺守松 (家畜衛試)

含湿度が低い程保 存 性 がよいで しようか, あ るいは, ウイルスや細菌の種類によつてoptimumの 含湿

度が保存に最適 というようなことがあるでしようか.答 山内一也凍結乾燥後更にP2O5で 水分 を除去 して, 含水度0.1%乃 至0.7%迄 の種々の乾燥痘苗を作成 し37℃ に保存3ヵ 月の条件では保存性に差を認める事が出来なかつ

た.答 沢 田哲治

乾燥BCGで はP2O5を 用いて過度に脱水すると, 例えば0.5%以 下 にすると保有中に力価が減少する. もちろん4%, 5%と い う含水度の高いものは保有中に力価が減少する.

51. 麻 疹 の予防 に関す る研究

○奥野 良臣, 管井 利治, 高橋 理明豊島久真男, 畑 清一郎, 山村 友良三木 隆, 中村 観善, 藤 田 利和上田 重晴, 国田 信治 (阪大微研)

麻疹ウイルス 鶏卵にadaptし, 長期継代可能なことは干渉法及びFL細 胞への還元接種によつて証明できる. また漿尿腔通過麻疹ウイルスは猿及び人に対 して殆んど病原性はないが人に対 し或程度の抗体産生能があり, 殊 に猿には顕著な抗体上昇を来す. 羊膜腔通

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第11巻 第3号  241

過 ウ イルスは特に人に対する抗体 (CF及NT) 産生能は

著明であるが, 発熱 を主徴 とする所謂接種麻疹を発現する. これ等の所見は従来に引続き今年の実験に於ても確認 した. この際の接種方法 としては経鼻噴霧法が適当と認めた.

以上の今回の実験に先立つて麻疹の既往歴が無い と称する人及び入手後間もない猿に就て補結抗体の有無を検るべ と, 一定地域の子供は半数近 くも抗体が保有している (81/168) のに反し他の地域の子供は1名 の陽性

者もなく (0/30) 環境による顕著な相違を認め, 猿 も亦

30の 高い陽性率を示した.次 にUVに て不活化 したウイルスはモルに対 し能率的な抗体 (中和) 産生能を示した.質問追加 荒川清二 (伝研)1) 組織培養ウイルスを人体に接種 された経験あら

ば承りたい.2) 私 は1948年 に固定当初のマウス馴化ウイルスを

接種 して貰つて2株 共8日 の潜伏期で発症 し, 定型的な麻疹発疹 と小児科の専門家に認定 された. これは欧文だけで発表 したのであつたが, 1950年 であつたかアメリカの教授団が来朝 した時私の接種麻疹の潜伏期が何れも8日 であることを難じた. すなわち普通麻疹の

潜伏期は11日 位である. 私のそれは短 か す ぎるとした. これに対 し天然痘 と牛痘化された天然痘 とくらべると後者の発痘の開花期期は8日 頃に対 し, 前者の潜伏

期は12日 前後であることを指摘 した. 貴所見 も7, 8日とい うことであり, Dolgin-Cox-Cabassoの 成績 も8日のものが最も多い. 承 の所見 と合致する点大変興味

深 く拝聴 した.答 奥野良臣(1) 組織培養ウイルスは人体に使用 したことはあり

ません.(2) 私 も最初疑つたのですが, 経験を重ねるに従つ

て, 矢張 り潜伏期が7~8日 前後であつて も誤りでないと考え, 貴見に同感です.

質問 務台方彦 (伝研)サルに接種 したときにサルにViremiaと, 白血球

の減少がみられたか.

答 奥 野良臣今回の猿9頭 についてはViremiaと 白血球検査は

行つていません.質問 佐分利保雄 (伝研)用いられた株は分離当初にはサルに対し強い病原性

をもつていたか.答 豊島久真男

分離初期, 新輸入猿について病源性実験 を試みましたが, 8匹 の猿全てが最初から抗体を保持 していたため, 病源性は見られませんでした.質問 中村〓治 (日生研)接種麻疹を起 したVirusはamniotic passageのものでしたか?答 奥野良臣Amniotic passageか らAllantoic passageを 経 た

ものです. しか し羊膜が継代材料に含まれています. 全 く羊膜を取去つてallantoic passageす るのが弱毒

化に好適か否かは一つの要点と考えています.

52. ヒ トとサ ルにおけるハ シカ抗体 の分布

○佐分利保雄, 荻原 博, 務台 方彦松本 稔 (伝研)小寺 重孝 (日本モンキーセンター)塩田 浩政, 内藤 寛, 村野 順三

(相模原病院)

(1) ヒ ト245例 の血清について抗体の年令分布をみた. 生後2月 内の小児で67%に 証明された中和抗体はやがてその率が下 ると思われるが, その後, 年令が増すにつれて陽性率をまし15才でほぼ100%に な り以後この率が

たもたれた. 中和抗体価は6~9才 で最高 (9/13は64倍以上), 20~30才 ごろからひくくな る傾向 がある.

CF抗 体 もほぼ同様の消長をしめすが, 100%に はたつ

せず, 15~19才 で最高率, 90%, 以後70%代 をたもつ. これらの結果はほぼ15才 までにほとんどの子供がハシ

カにかかつてしまうことをしめす. ハシカの既往歴と抗体 との不一致が中和抗体で31例 中3例, CF抗 体で29例 中7例 にみられたが, その理由はわからない.(2) サル外国産のサル99匹 中61%, ニホンザル61匹 中34%に

中和抗体が証明されハシカ感 染 の 多いことをしめした. 捕獲 より4月 内のニホンザル38匹 は中和・CF抗体ともに陰性, 6月 たつと陽性のものが現れ5~23月 のサル15匹 中13匹 が陽性であつた. このことは野性のサルにはハシカの感染がなく, ヒ トと接触 してはじめて

感染 をうけることをしめす.質 問追加 奥野良臣 (微研)(1) 既往歴 と抗体保有の くい違いの理由は何で しよ

うか.追加. 対 象の環境に支配 されることが一つの理由と

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242 ウ イル ス

思 う. ヂ ステンパーとの関係は, 私共が能勢町に於て犬 との関係を調査 したが犬は抗体保有に影響を及ぼ しているとは認められなかつた.(2) 猿が抗体保有するに至る期間中人の麻疹流行 と

関係がありますか.答 佐分利保雄(1) 既往歴であるとい う診断にまちがいがあるか も

知れない. Adamsた ちの報告 (小児のヂステンパー感染症) を考えに入れれば或いは, ヂステンパー感染の結果抗体保有の くいちがいがでて来たのかも知れない.

(2) 麻疹 の流行 と関係があるように考えた方がよいように思う. しか しいままでの成績から, はつきりとした証明がされたとは考えられない.

53. ム ンプスの感染 と血清抗体 との関係

金光正次, 杉 田泰宏 (札大衛生)

ムンプスの流行に曝露 された学童を対 象としてHI

とCF抗 体の疫学的意義を検討 した.1. 感染 前の保有抗体と発病 との関係. ムンプスの既

往歴なくCFS抗 体陰性者をHI及 びCFV抗 体 の有

無により群別 し, 患者の発生を見ると, HI抗 体 の高さに関係なくCFV陰 性群のみから患者が発 生した. 又HIが 高い程CFV陽 性の者 も多い. 2. 流行終了後の抗体. CFS及 びV抗 体の高い者は殆んどが顕性患

者であるが, HI抗 体 では患者は広い値に分布する. 罹病率の低い学年程各抗体の陰性者 も多い. しかし罹

患を免れた者の3種 抗体陰性者の割合は罹病率の大きさと関係なく20%で ある. 3. 流行 を通 じ非 罹患者のHI抗 体は64~128倍 をモー ドとする正規型を示 し, 前

報の成績 と一致した. 4. 患者の潜伏期に於ける抗体はCFSとVは 殆んど陰性であるが, HI抗 体 は約半数が16倍以上を示 した. しかし後者の高さと潜伏期の経過

との間には関係ない. 5. 感染尿膜から作つたS抗 原を血球で処理すると, それに対するS抗 体は常にV抗 体より低い.質 問 沼崎義夫 (東北大細菌)HI抗 体 を測定した日から発 症 した日までの間隔 は

どの位でしようか. 最初に見たHI抗 体は潜伏期の抗体ではないか?答 金光正次

採血か ら発病までの日数 とHI抗 体の高 さとの間には特に関係ない.

質 問 保坂康弘 (阪大微研)

患者血清のHVJ, Influenza virusに 対する抗体価はどうでしようか.

答 金光正光ムンプス以外のウイルスに対するHI抗 体は測つて

いない.

質問 徳 田正夫 (京大ウイルス研)S抗 原を作 られる時何万回転で超遠心されましたで

しようか. 私共 も福知山市の流行に於てS抗 体が低かつたのですが, 30,000rpmで 超遠心 したS抗 原を用いました. それで私はHenle等 の用いているS抗 原

とは抗原の質が違 うためと考えておりますが. いかがでしようか?答 金光正次本報のS抗 原は感染尿膜乳剤を3万 回1時 間遠心し

その上清をニワトリ血球で処理した ものを用いた. Flormanら は上清をメタノール沈 澱 し再溶 した もの

をS抗 原 として抗体を測 り, 我々と類似の成績を得ている. 超遠心の回転数がS抗 原の質に関与する事実と

関係あると考える.

54. 小 児 のMyxovirus-HI抗 体 分 布 と, イ

ンフルエ ンザA2流 行 前後 の変 動 につ

いて

五明 功 (金沢大 ・小児)

1) 12才以下6ヵ 月の健康小児203名 のMyxovirus-HI抗 体の分布を追求 した. わが国最近の流行株の流行年度に対応する抗体上昇をみ とめ, 抗体保育率はアジア型インフルエンザP相 足立2/57に 最 も高 く, 以下, B宮 津1/55抗 体, A1京 都1/53抗 体の順となり. アジア型インフルエンザQ相, 京都2/57抗 体 の保育率は極

めて低率であつた. アジア型 インフルエンザP相 抗体でも, 3才 以下の乳幼児では, その抗体保育率及び抗

体価は極めて低 く, 該 ウイルスによる流行の危険が予想 される.2) 1960年4月 中旬より5月 の石川県下のインフルエンザ流行は, アジア型インフルエンザP相 ウイルス

によるもので, 1957年 のアジア型 インフルエンザ流行

後に出産 した乳幼児に罹患率が高かつた.3) ア ジア型 インフルエンザにおいても, 母子免疫

が成立 し, その値は母清のHI価 と同等, 又はやや低い傾向がみられ, その持続期間は約6ヵ 月以内と考え

られた.質 問 芦原義守 (京大ウイルス研)NDVに 高いHI価 を示 した人 の年令, 家鶏 との関

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第11巻 第3号  243

係について御調査で したら御教示下 さい.答 五明 功NDVに128倍, 256倍 のHI価 を示 した2例 の年令

は7才, 8才 で, 流行性結膜炎のような, 既往症ははつきりしておりません. 尚家鶏 をかつている家庭であ

りました.

55. 非流 行期 におけるイ ンフルエ ンザの不

顕性 感染

○金光正次, 平 保, 後藤 仁 (札大衛生)

昭和35年7月 から今年3月 に至るイの非流行期に継続

的に含嗽液からウイルスの分離を試みたが全て陰性. しかしHI抗 体 はその間に明かに変動 し, その転回点

は足立株に対 し32倍, Avidityの 高 い大久保株に対 し256倍 で全期間を通じ恒常である. CFS抗 体 は殆んどが陰性, V抗 体は低下の一途を示 した. 又A1型 抗体

(HI) は低下, A, B型 抗体は変動 しない. しか し10年前の非流行期にはPR8, Lee抗 体 も変動 している. 本年3月 下旬老人集団に発 生 したA2イ の流行で既有抗

体 と発病 との関係を見 ると, A2抗 体128倍 以下の者に患者が圧倒的に多い. A1抗 体 は関係ないが. 非罹患群のPR8抗 体の分布は患者群に比べ明かに高い 値に分布 している.追加 徳 田正夫 (京大ウイルス研)InterepidemicにH-Ⅰ 抗体が上昇するのはInter

epidemicに 新 たに不顕性感染 を受けたためとお考え

ですか? そ うであるならばInterepidemicに もヒトの間に相当流行があると考えられますが. Influenza A2型 ウイルスは流行によつて多少違いますが, 比較的

分離 し易いウイルスであるのに, Interepidemicに は何故ヒトの材料から分離 し得ないのでしようか, これはInterepidemicの ウ イルスが鶏胎児にadaptし にくいものであるのか, 或いはウイルスの量が少ないためか, 又分離 を試みた例数が少ないためでしようか?答 金光正次新たな不顕性感染 と考えたい. ウイルスが分離出来なかつた理由として, 1) ウイルスの絶対量の少いこと2) 流行時とウイルスの性状が異り, 普通の方法では分

離 し得ない状態にあることが考えられるが, この推定を証明する事実は把えていない.

質問 芦原義守 (京大ウイルス研)不顕性感染に於てもムンプス, ポリオのCFは かなり陽性になりますが, 御発表ではHI抗 体だけの変動で不顕性感染 と考えられているように思いますが, こ

の点の解釈について御意見を聞かせて頂 きたい.

答 金光正次非流行期の不顕性感染は侵入 したウイルスの増殖その他の理由によりHI抗 体のみが感染のIndicator と

な るような抗原剌〓になると考えたい.質 問 松本慶蔵 (東北大内科)

① CFSのnegativeと された価は如何.② HIのnegativeと された価は如何.答 金光正次CFS, V抗 体 は4倍 未満, HI抗 体 は16倍 未満を陰

性 とした.追加 甲野礼作 (京大ウイルス研)1. ムンプス流行時患者の発生のあつた家族 となか

つた家族 とを比較すると, 患者発生家族では患者及び

不顕性感染のあつた と思われる小児はCF, HI抗 体共に上昇 したが, 同 じウイルス曝露されたと思われる成

人はHI上 昇をみたが, CFの 変 動 はなかつた. 対象の患者家族ではHI, CFの 動 きがなかつた. このこと

から免疫のある成人がムンプスウイノレスに曝露 した時HI (恐 らくは中和抗体 も) のみが生じ, ウイルス増殖が

おさえられる結果CFは 出ないのであると思われる. 演者の成績を裏書きするものと思われる.

追加 金光正次我々の成績でPR8抗 体 の高い者はアジア型 抗 体 とは独立にある程度のアジア型 インフルエンザの感染発

病 を抑制すると云 う結果になつたが, これについて御発言 をいただき度い.56. 昭 和35年 夏 大阪地方 お よび徳島地方 に

流 行 した髄膜炎 につ いてのウ イルス学

的研究

西沢義人, 児 玉貞介, 野上一夫○真島栄一今田 稔, 岡島慎治, 神原佳子, 村上圭司瀬川欣子, 板 野靖章 (阪大小児)渡会信夫 (徳島市民病院小児)

本年1月 以降阪大小児科 を受診 した髄膜炎患者44例中27例 よりコクサッキーB5を 分離 したほかCB1, ポリオⅠ, 同定不能各1株 を分離 した. 夏の流行期におけるCB5分 離率は糞便88%, リコール47%で あつた.

徳 島の患者44例 からのCB5分 離率は糞便70%, リコール19%, 咽頭33%で あつた. 大阪 においてHemiplegieと 発語障害 を伴なう1例 と顔面麻痺の1例 をみ

た. 分離株を哺乳マウスに接種 した場合にも麻痺を認める. なおポリオに罹患して6週 後~CB5に よる髄

膜炎に罹患 した1例 も経験 した. リコール中のウイル

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244 ウ イ ル ス

スは第9病 日まで, 糞便中のウイルスは第8病 週 まで

証明した. 中和抗体は2, 3週目に上昇 し7, 8週 目には低下の傾向をみる. CF抗 体 は61%に 型特異的の上昇をみた. 接触感染例は5例 あつた. 患者家族の糞便より17%にCB5を 証明した. 大阪地方の健康乳幼児の各

種ウイルスに対する中和抗体分布をしらべた結果13名中7名 にCB5抗 体 の上昇を認めた.質問 平山宗宏 (東大小児科)臨床家 として大変興味深 く伺いましたが, 東京には

未だ, 少 くとも流行の形ではきていないようです. ところで, CFがB5に 型特異的に出るというお話です

が, B1か ら5ま でのCF抗 原価は夫々どの位 に出来たで しようか.

答 岡島慎治各型の抗原価は原液が2単 位であつた.答 真島栄一Coxsackie B5ウ イルス感染例においてウイルスが

分離されて中和抗体の上らなかつた例があつたようですが, 私のみた例ではA群 ウイルスが3ヵ 月もの間分離されたにもかかわ らず中和抗体の証明できない例がありました. (Suckling miceを 用いた).

57. 四 国地方 に流行 したコ クサキーウイル

スB-5感 染 症 の疫学的, ウ イルス学 的

研究

○甲野礼作, 芦原義守, 浜田忠弥古川元宣 (京大ウイルス研)川上勝朗, 赤木信博 (大阪医大小児)

本年夏徳島市を中心に無菌性髄腺炎の流行があり,

我 々はこれがCoxsackie B-5 (C.B5) に よるものであることをつきとめた. C.B5の 流行は日本でははじめてであり, 世界でも4報 告があるにすぎない. 徳島

以外の中国, 四国, 近畿で我々は計71株 のC.B5を 分離 した. 最 も流行の大きかつた徳島では屎便から33/57

(分母: 検体数, 分子: C.B5分 離数), 咽頭 スワブ9/12, 髄液7/52他 に家族内接触者から1株 計45株 を分離

し得た. 他 にポリオ Ⅰ, Ⅲ型各1株 が得られた. 病 日別には屎便中に最長33日 まで永 く排泄されるが, 髄液,

咽頭 スワブでは2週 以後は陰性 となつた. 血清反応で

補体結合反応及び中和試験を行い前者はB群 に群特異的, 後者はB群 各型に型特異的であつた.FL細 胞におけるC.B5の 増殖 を追及 したが, 細胞

当り多重度10の 感染で, 2時 間後より細胞内ウイルスは増殖をはじめ, 12時 間で最高に達し, 液 層には6時

間後 より出現 した. H・E染 色により細胞質内にEに 赤染する封入体の出現をみとめた. 尚1959年 秋採取した大阪地方健康者の血清中に50才 以下ではC.B5に 対 し殆んど中和抗体が欠除していたのはこの流行の原因であつたと考えられた.質問追加 奥野 良臣 (微研)今年春から始まり7月 をピークとするCoxsackie

virus病 の流行があり, 大阪市の西博士に依ると大阪

市内の病院で100名 の患者があつた. 其中の大阪府立病院の32名 の忠者中17名 の材料からSuckling mouseとFL細 胞 を使つて7例 のVirusを 分離 した. 同定は未了であるが福見博士から分与されたCoxsackie B5と患者血清とあて ゝみると劃一的に陽性であることとpairの 血清で上昇した事からB5と 一応考えていますが, お尋ねしたいことはAcute phaseの 血清は発病

後何日以内でなければならないでしようか?答 甲野礼作患者の血清反応の態度は尚検討中で確定的なお答え

ができないが, 大体5日 以内と考えて良いのではあるまいか. 第1病 日でも1:8の 中和抗体を示 したものが

あつた. 後 は担当の芦原博士に答えて貰います.答 芦原義守協同研究者 として御答申上げます. 病 日を追つて充分検討していませんが, 検査 を依頼 された検体を通 して考えられることは, 急性期 としては4~7日 まで,

恢復期は出来るだけおそい方が良い様で抗体の上昇が他 と一寸異なる様に思われます.

質 問 福見秀雄 (予研)私 たちがこれまで研究調査 した範囲では東京方面にはまだコクサッキーB5に よる髄膜炎の注浸があつた

とは考えられない. 一方甲野君のデータを拝見するとこのウイルスは最近にいたつて関西以西地区に侵入 し

てきた様である. これまでECHO 9が ヨーロッパに侵入 したと言 う報告もあり, この場合B5ウ イルスが外国からこの地区に侵入 した様な考え様 もあるわけであるが, そのような場合, 大阪, 京都 などが中心となる

可能性は大きいが, 徳 島などからまずはじまることの可能性はあまり多 くはない. この様な意味でのこのウイルス感染症の疫学的なデータと考え方について御意

見を伺いたい.答 甲野礼作

患者の年令分布からみて母子免疫のないこと, 1959年秋大阪健康者 血清中に50才 以下 で殆んどB-5抗 体のないことからコクサッキーB5の 侵入が新 しいこと

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第11巻 第3号  245

は考えられる. しか し, どこからこれが輸入されたか

また今度の流行の初発地はどこかは明 らかでない. 大阪と同時期にとつた岡山健康者血清は相当に抗体保有者があり. この地方ではやゝ古 くからB-5の 浸注があつた如 く考えられる. 今後地域の問題を検討してみたい.

追加 巽 稔 (大阪医大小児)演 題56, 57に 対 して(1) 乳児期の髄膜炎は年長児 とちがつてケルニヒ,

項節硬直は原因如何にか ゝわらずその出現率は低い.

従つてコクサッキーB5に よるウイルス性髄膜炎だけ加え, 症状の発現率が低いというわけではない.(2) 瀬 戸内海沿岸にはギラン・バレー症候群Pleuro

dyniaな ど従来 とも多発し, 数年前岡山の浜本英次教

授によつてその起因ウイルスについての検索があつたが陰性に終つた. 従つて近年外国よりこのウイルスが

移入 されたとい うよりはむしろ従来から疾病はあつたが起因ウイルスが証明されなかつたと考えたい.

質 問 日沼頼夫 (東北大細菌)動物免疫血清でのCoxsackie virusのCFTで はA

群及びB群 間には或る程度の交叉 を示す ものがある. ところが人感染ペア血清で行つたところはじめから抗

体を有しているもの多 く, 診 断に用いられなかつた経験を持つている. 演者の場合CFTの 群及び型抗体の上昇は中和試験に比 して如何でしたか.答 甲野礼作私共の成績ではCFAはB群 に共通にあらわれ, 中

和試験は型特異的であつた.

58. 日本 に於 て初 めて分離 されたBウ イル

スについて

遠藤元繁, 上村知雄, 草野信男, 河合清之青山友三, 田嶋喜雄, 鈴木 潔 (伝研)小寺重孝 (日本モンキーセンター)

昭和34年12月 より35年4月 にわたり日本モンキーセンターのサルに, ヘルペス様発疹をともなう疾患が発

生 し其中の1匹 (タイワンザル) よりBウ イルスを分離 した. Bウ イルスと同定 した実験のあらましは次のようである.1) この ウイルスを皮下に接種された家兎は四肢の

弛緩性麻痺をおこして死ぬ.2) サ ルの培養腎臓細胞に接種すると多核巨大細胞を生じ核内に好エオジン性封入体がみられる.3) Bウ イルス免疫血清により中和される.

昨年の本学会で私共は各種サルのBウ イルス中和抗体について報告したが今回の報告とあわせ, 日本産及び日本に輸入されるサルにBウ イルスの不顕性及び顕

性感染があることがわかつた. 日本でもポリオワクチンの大量製産がはじまり, 毎年数千匹のサルが使用 さ

れるから, ワクチンの検定は勿論, 人間の感染予防に充分な注意が必要である.追加 北岡正見 (予研)

予研においてポリオ, ソークワクチンの安全試験に使用した一見健康な猿の脊髄からBウ イルスが分離 された. それは孵化鶏卵漿尿膜上に白斑 を形成 し, 単純

性疱疹ウイルス血清によつて中和されないが, 抗Bウイルス血清で中和された. 猿 における不顕性感染に注

意すべきである.質問追加 多 ケ谷 勇 (予研)① 剖検された猿の中枢神経系に病理組織学的変化

が認められたものはありませんか?② 先程北岡博士の追加された例は, 今演者の述べたモンキーセンターでの流行直前に予研へ送られたもので, ワクチンの安全試験終了後屠殺するまで全 く無症状に経過したにも拘わらずその脊髄, 脳 に相当ひどい病理組織学的変化 を示 し, 且 つウイルスが分離され

た. そのB-ウ イルスがどのようにしてこのような場所に高度の変化を示したものか, 不明である.

答 遠藤元繁私共が しらべた3匹 のサルでは, 中枢神経系の著明な病理的変化は認められませんでした.質 問 高橋三雄 (予研)感染猿からのB-virusの 分離率はどの組織が最 も高いですか.答 遠藤元繁水泡内容, 脳脊髄, 肝, 脾いずれからもVirusが 分

離 されると報告されていますが私共は非常に危険な実

験ですから, 必要にして最小限の実験という意味で各部分をまぜて兎に接種しました.

59. 群 馬県下 の蚊 よりArbor virusの 分 離

○松山 達夫, 中村忠義 (群馬衛研)大谷 明, 緒方隆幸, 小林 一郎高橋 三雄, 北 岡正見 (予研)小見山茂人 (群馬衛生民生部)

Arbor virusの 生態学的研究を意図し, 群 馬県下で

先ず蚊により保有 されるArbor virusの 種類, 蚊 の種別によるウイルス保有率等をしらべた. 7月 下旬より9月 上旬まで6ヵ 所に於て蚊を採取 し, 総計52,641匹

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246 ウ イ ル ス

を得た. これを種別に凡そ100匹 宛一括して生後2~4日 の哺乳マウスに脳 内接 種 し, ウイルス分離 を試み, 日本脳炎ウイルスと他に2種 のArbor virusを 得た. 47株 の分離ウイルスの内訳は, 日本脳炎ウイルスは39株 で, 1株 がC. pipiensよ り分離された他はすべてC . tritaenよ り分離された. C. tritaenの 保有

率は平均0.23% (0.16~0.33%) であつた. 赤羽 ウイルスは8月 下旬にのみA. vexansよ り4株, C. tritaenよ り2株 分離 され, 保有率は前者では0.04~0.15%,

後 者では0.04~0.06%で あつた. 板倉 ウイルスは8月下旬板倉地区のA. vexansの み より2株 分離 され,

保 有率は0.1%で あつた. 其他 の6種 の蚊よりはウイルスは分離 されなかつた.

60. 群 馬 県下 の蚊 か ら分離 され た新 しい

Arbor virusに つ い て

大谷 明, 緒方隆幸, 小林一郎,奥野 剛 (予研)松 山達夫 (群馬衛研)

1959年 夏, 群 馬県下の蚊 より日本脳炎ウイルス以外の2種 のArbor virusを 分離した. そのうち, 哺乳,

成熟両マウス脳内に毒力を示す一種6株 (赤羽ウイルスと仮称) はデゾシコール酸に対する抵抗性, プロタミンによる沈降性, 1日 ヒヨコ血球又はガチョウ血球に対する凝集性等Arbor virusの 共通性質はもつているが,

既知のA, B, C群 のウイルスはもとより, 試験されたすべての未分類Arbor virusと 共 通抗原 を有せず, 恐らく新ウイルスと考えられる. 他 の一種は, 成熟マウス脳内に毒性を示さず, 哺乳マウス脳内にさえも, 極

めて低い毒力しかもつていない. この免疫血清を使用しての同定試験の結果, このウイルス (板倉ウイルスと仮称) はA群Arbor virusに 属 し, サギヤマウイルス, MM 2021ウ イルスと酷似 していることが解つた.

これ等のウイルスの運命を追求することにより, 日本のArbor virusの 生態学の一端 を知 ることができると

考える.質問 川喜田愛郎 (千葉大細菌)演題59, 60に対 し1) 夜間に豚小舎で採集された蚊の分布が人あるい

は馬の周辺における昼夜のそれをどの程度に反映しているものと理解 してよろしいでしようか.2) コガ タアカイエカからのウイルス分離率の季節

的な消長と日本脳炎患者ないし患馬の発生の消長との

間に, 曰 く三田村 ・山田学説におけるような規則性が

今 日でもそのまま通用するとみてよいのでしようか.答 松山達夫

昨年は表のように7月 より9月 まで蚊がウイルスが陽性でしたので関係がはつきりしませんが, 患者は7月末に1例, あ とは8月 下旬より陽性 者が出現しました.答 大谷 明

昼間と夜間のみならず, 地形, 動物 の存在その他の環境の違いによつて蚊の分布は大変違います. 私共の場合は, 限定 された条件で限定 された方法でしらべた場合とお考え下 さい. 今年は, 東京都に於ては大変早くから日本脳炎患者の発生が報ぜられましたが, 私 共でconfirmし ましたcaseは いずれも, 8月 下旬以降の発患であり, 離れてはお りますが同時に群馬におけ

る蚊のウイルス保有が8月 中旬に始まつた事と関連が

あるように思えるのであります. 昨年は蚊のウイルス保有の開始期と終期をつかむことができませんでしたが, 今年は, これ を明かにするために, 5月 より10月まで, 昨年 と同様の実験を行いました. 只今データ整理中でありますが, コガタアカイエカのウイルス汚染は, 必ずしも蚊の実数とは平行せず, ウイルス汚染は別個に起 るようであります.

答 北岡正見自然界における日本脳炎ウイルス保有蚊の季節的消

長について三田村先生や私の考えが今日訂改すべきかとの質問に対 し, 今 日までの所見では未だその必要はないが, 更 に2~3年 の観察をまつてお答えする.

61. 恙 虫 病 リケ ッチアの補体結合反応 に関す る研究第1報 抗 原 の精製 とそ の特異性 につ

い て

宍戸 亮, 河野 晴也, 疋田美智子北岡 正見 (予研)

恙 虫病 リケッチアの補体結合反応用抗原を感染卵黄〓 よりイオン交換樹 脂XE-64及 び牛血 清アルブミンを用いて精製 した.抗原は精製の過程で紫外線照射で不活化され, 凍結

及び4℃ の保存に於ても極めて安定で且つ特異性の極めて高いいものであつた.この抗原を用いて日本各地で新 しく分離された多 く

の恙虫病 リケッチア株の血清学的分類を行つた所, 現

在までの所Gilliam系 (ビルマ株), Karp系 (ニューギニア), 及 び加藤系 (新潟株) に属するものやその中

間にあるもの等に分類された. 之 によつて我が国にお

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ける恙虫病 リケッチアの分類及び恙虫病の補体結合反応による診断が可能になつた.質問追加 川村明義 (伝研)1) Amberlite XE-64の 使 用の方法が吾々のと異

なつているが, その優れる点は何か.2) 抗血清の作 り方としてOne-shot法 が一番優れているのか.

追加 私はこのやり方のcfで 株特異 性を云々するためには, 抗血清の作 り方に問題があると思う. 私共はR. orientalis群 (R. sennetsuを 含 む) 各株 間に は

共通因子が少 くも表面物質 として存在し, 特異物質 を分析するには リケッチアを破 して行なわなければならないと確信している. その根拠 として① 及川, 豊川 (東大衛生) がWeil-Felix反 応にお

けるK因 子を螢光抗体法でも証明したこと.

② 私共は恙虫病患者血清を用い, R. sennetsu 宮山株を合む広 くR. orientalis群 株 リケッチアを螢光抗体法で証明したこと.

③ 交叉cftを や るに最も便利な感 染マウス臓器抗原 と免疫マウス血清の製法に成功, これを用いたcftで明 らかに共通因子を証明し得たこと, 従つてこの因子 を追跡することにより恙虫病群の 診 断 は 可能である. 株間の異同の分析には別の手段を考えるべきであろう.

答 宍戸 亮

① 特 に比較はしていないが, 吾 々の方法はcelite法 を変法 してXE-64で 変えたものといえよう.② One-shot法 で充分抗体 が上りうるのでむしろこの方が特異性抗体が充分上げるのによい方法である

と考えた. 一律に4週 後に採 血したことについては, すべての株について適当かどうか今後検討したい.

追加 羽里彦左衛門 (東大衛生)ウサギにRickettsia orientalis感 染マウス脾乳剤を静脈内に注射免疫する時は免疫初期にC. F. 抗体が上昇するが後期になつてから共通抗体のOXK凝 集素の抗体産生のPeakが 見 られた. また直接攻撃試験で

見 ると感染から攻撃までの時間が短い時には株特異性の差が見られるが1ヵ 月以上 も経過する時は段々その差が見 られなくなる. 従 つて補体結合反応に於ても免

疫血清を作る場合に免疫から採血までの時間を考慮する必要があると思う.

62. 発 疹 熱 リケ ッチアのS35メ チ オニ ン

incorporationに つ い て

○河野晴也, 藤 田和子, 夏 目洋子宍戸 亮 (予研)

われわれは充分に精 製された発 疹 熱 ・リケッチア (R. mooseri) が庶糖 ・燐酸緩衝液中でS35メ チオニン

をその トリクロル醋酸不溶分画にとりこむことを見出した. この 『とりこみ』 が リケッチア粒子自体の性質にもとず くものであることは, 抗 血清 と特異的に反応し沈澱する部分に放射活性が集まることから, 確実で

あると考えられる. また, この 「とりこみ」 はMg, グルタミン酸によつて殆んど影響されず, 嫌気的条件で僅かに, CN-の 存在で強 く阻害され, テ トラサイクリンおよびクロラムフェニコールによつては全 く阻害されないこともあきらかになつた. 一方C14ア ミノ酸混合

物 もこのリケッチアによつてとり こ まれ るが, この 『とりこみ』 には上記の抗生物質はいずれも強い阻害作

用を示す. 以上の事実から, 此処で観察されたメチオニン単独の 『とりこみ』 は従来よく知られている蛋白合

成系 と異る系によるもの と考えられるが, その詳細はいまだあきらかでない.

質問 牧 野利一 (札医大微生)(1) Exchange reactionが 酵素反応によるものと

すれば, この場合のmethionine incorporation がexchangeに よらないとい ゝ切れないのではないでし

ようか.(2) incorporationにanaerobic conditionが 影響を与えないとすれば, glutamateが エネルギー源となつているとは考えにくいのではないでしようか.答 河野晴也

(1) Exchangeを 御質問のように考えれば, このS35のincorporationによみこまれていると考えて皿ます.(2) anaerobiosisの 阻害が軽す ぎ ることは, 1つには系を完全にanaerobに す ることがむずかしいこ

と, またCN-が 阻害的にはたらくことからまだそれが無影響とはいえない と思います. またglutamate の存在はリケッチアの安定性に強い影響 をもつていますので, われわれの精製したリケッチアの安定性が, 不可避的に一定でないことから, その添加の影響 もfractuateす るのではないかと想像 してい ます. ですか

ら若し促進的に効 く場合のみであつたとしても, 直接のエネルギー源 となつているとは決められない と思います.