ひら つか けん いち - takii04 2017.07 ムジナモ 京都府立植物園 平 ひら 塚...
TRANSCRIPT
04 2017.07
ムジナモ
京都府立植物園平ひ ら
塚つ か
健け ん
一い ち
稀少な個性派セレクション
1属1種からなる単型属で、日本を含むアジア、オースト
ラリア、ヨーロッパ、アフリカの浅い池や沼、川の水たまり
の中に浮遊します。湿地の減少や河川の改修、農薬の影響な
どで国内では野生絶滅となっています。かつては埼玉県羽は
生にゅう
市の宝ほう
蔵ぞう
寺じ
沼で自生しているとされていましたが、現在は人
の手が加わり維持されている状態です。7~8月、水温が上
がると生育が旺盛になり盛んに分枝し、冬季は冬と
う
芽が
を作り水
底に沈みます。葉身は半開した二枚貝状で長さ2~5㎜。主
脈に近い部分に微細な感覚毛と腺細胞がたくさんあり、捕虫
器になっています。ボウフラやミジンコが感覚毛に触れると
50分の1秒ほどの速さで葉が閉じあわさり、さらに獲物をし
めつけます。消化酵素を分泌して獲物を消化吸収します。
京都府下では、干拓によってなくなった巨お
椋ぐら
池北西部向むかい
島じま
の一部に多数生育していたことが報告されています(大正14
年
三木茂博士、当時学生)。干拓工事の際、保護のための
措置も行われましたが、環境の変化により絶滅しました。深み
泥どろ
が池にも巨椋池から移植されたムジナモが生育していたと
の記録がありますが現在は存在していません。当園のムジナ
モは旧巨椋池由来のもので、30年以上栽培されていた植物愛
好家の竹谷光二氏(88)から譲受したものを維持しています。
花弁は長さ4〜6㎜、幅2〜3㎜とごく小さい。真夏のお昼ごろに白い小さな花を咲かせるが1〜2時間で閉じてしまう。開花した姿を見るのは非常に難しい。
水中ですばやく獲物を捕える食虫植物
※
和名
学名
科・属名
開花期
分布
危惧種ランク
ムジナモ
Aldrovanda vesiculosa
モウセンゴケ科ムジナモ属
7~8月
―
絶滅危惧IA類(CR)ⅠA類(CR):ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いものⅠB類(EN):ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険 性が高いものⅡ類(VU):絶滅の危険が増大している種
二枚貝のような小さな葉に捕虫器の感覚毛や腺細胞があり、虫を捕える。ムジナモは日当たりがよく弱酸性で、チッソ分をあまり含まない環境を好む。人工栽培の場合、弱酸性の水質を維持するとともに、アオミドロの発生に負けずに栽培するのが難しく、栽培は普及していない。