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NHKNHK元NHKアナウンサー・  福祉評論家・福祉ジャーナリスト 町永 俊雄さん 巻頭 インタビュー 長年NHKアナウンサーとして、テレビ を通し日常生活に関する様々な情報を伝え てくださった町永さん。近年ではNHKス ペシャル「セーフティネットクライシス」 で、社会保障問題を広く論じ、閉塞社会の 課題を伝えてくださいました。現在、福祉 ジャーナリストとして活動する町永さん に、お話を伺いました。 一人ひとりが 自分のことと考える 町永 俊雄さん プロフィール 1947年東京都生まれ。早稲田大学政治 経済学部卒業後、1971年NHK入局。 「おはようジャーナル」「くらしの ジャーナル」の生活情報番組や「教育 トゥデイ」「BS討論」などのキャスター を務める。また、2004年からは8年間に わたり「福祉ネットワーク」のキャス ターとして認知症や医療など現代が抱え る福祉テーマに取り組む。 3 6月号 2 6月号 +different 4 6月号

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―NHK時代は、全国の放送局への異

動や番組改編などでキャスターの交代

もあったかと思いますが、どの番組を

やりたいという希望は、聞いてもらえ

るものだったんですか。

 大まかには報道・芸能・スポーツ・

生活情報番組というテーマがあって、

このテーマをやりたいと長く希望して

いると聞いてもらえることもあります。

私は希望をしたわけではなかったので

すが、最初から生活情報番組、生放送

の番組が多かったですね。

 もともと、アナウンサー志望ではな

くディレクターだったんですね。当時

は学生運動が盛んだったこともあって

でしょうか、何か社会に関わっていら

れる職業を希望していました。どこか

で社会変革になにかしら関わることが

できたらと思っていたのかもしれませ

ん。それでマスコミを視野に入れ放送

局を選びました。NHKのディレクタ

ー採用試験に応募し、最終面接で「君

はアナウンサーにならないか」と言わ

れて、ここで落とされてもねえ(笑)。

えいっ「やります」と答えたんです。

―すると「福祉ネットワーク」のキャ

スターに決まった時は、どのように思

ったのでしょうか。

 意外でした。確かに、生活情報番組

はやっていましたから、暮らしや子ど

もの教育だとか福祉も番組の中で取り

上げることも多かったです。でも正直

に言うと、福祉専門の番組は出来るだ

ろうかという思いでした。やはり福祉

は何か特別な枠と考えていましたので、

専門的な知識を持って語り、正義感に

燃える人でないとふさわしくないので

はと、ある意味私自身がステレオタイ

プだったわけです。そこで番組プロデ

ューサーに相談すると、福祉に関心が

ある人間では今の社会の閉塞感は破れ

ないと言うのです。素朴な疑問を持っ

たり、わからないことはどういうこと

かと番組の中で格闘していく方が良い

というので引き受ける気持ちになりま

した。最初はおずおずといった感じだ

ったでしょうか。

―知ってしまっていると当たり前とし

てやり過ごすことも多くなりがちです。

伝え手としてそれはよろしくないです

よね。

 そうですよね。それに、福祉ってこ

ういうものだという概念に縛られてい

る人は多いと感じました。福祉ってか

わいそうな人達を助けるんだと、無意

識に支援する側とされる側にしてしま

い、これは行政の役割だとか、介護施

設の役割だという二分化して自分の問

題として考えられなくなる。超高齢社

会で誰もが福祉は自分のこととして考

えなければいけないのに、意外と福祉

に携わる人の方がこうした概念にとら

われて動けなくなっていないでしょう

か。本人はそう思っていなくても、ど

こかで助ける側の問題意識を持って、

支援する対象者がいるという構図が出

来てしまっている気がするんですね。

 番組をやりながら一番の難敵は福祉

に対する固定観念だなと思うようにな

りました。だから後に「この人と福祉

を語ろう」という番組を立ち上げたん

ですが、そこでは福祉関係者でない方

に、自分の困難に直面した時のことを

語ってもらおうということにしました。

以前に自分が感じていた福祉は立派な

こと、正しいことという観念ではなく

て、普通の生活者に福祉は必要だとい

うメッセージを伝えたかったんです。

―最近は、福祉の対象者は高齢者や障

害者だという認識に加え、稼働世代や

若者を視野に入れなければなりません。

生活困窮に関する問題がクローズアッ

プされていますがいかがでしょうか。

 今の社会保障の仕組みの根幹である

誰もが子どもを産み家族をもつという

前提はもうありません。何より誰もが

結婚するという前提や、終身雇用の前

提もなくなりましたから福祉の枠組み

を考え直さなければいけません。

 これまでの福祉は恩恵、施しとして

お上から与えられていました。上手く

いっていたのは右肩上がりの経済成長

に支えられていたからです。戦後初め

て、親の世代よりも子の世代が貧しい

暮らしになる時代を経験しようとして

います。日本は、高齢社会に突入した

高度経済成長期には対策を考えてこな

かった。経済が行き詰まった現在、急

に困ったといっても若者に対する福祉

の枠組みを作ってこなかったのです。

 若者の福祉問題の一つには、一人暮

らしが増えていることだと思います。

その上、企業社会から外れると、セー

フティーネットが全く張られていない

ので、いきなりホームレスになってし

まいます。日本は今まで企業の福祉力

に頼っていたところがあって、健康保

険や雇用保険、住宅や家族手当など、

みんな企業頼みでした。それに代わる

ものが無いし、日本の生活保護制度は

生きるための最後のネットでしかなく、

やり直すシステムではない。だから離

職すると一気に生活困窮者になってし

まいます。

 悲しいことですが今の若者は未来を

描けない。のしかかるのは超高齢社会

の負担増の未来だけです。メディアも

認知症や高齢者の問題を社会問題化す

るだけで、ここを所与の未来として希

望のビジョンを若者に提示できないの

です。

―確かに、若者に根性がない、もっと

頑張れといった風潮の話になることも

有りますね。

 子育てなどは、親が負担になってい

ることもありますね。親に子育てのつ

らさを言っても「何を言っているの。

元NHKアナウンサー・ 福祉評論家・福祉ジャーナリスト 町永 俊雄さん

巻頭インタビュー

 長年NHKアナウンサーとして、テレビを通し日常生活に関する様々な情報を伝えてくださった町永さん。近年ではNHKスペシャル「セーフティネットクライシス」で、社会保障問題を広く論じ、閉塞社会の課題を伝えてくださいました。現在、福祉ジャーナリストとして活動する町永さんに、お話を伺いました。

一人ひとりが自分のことと考える

町永 俊雄さん プロフィール

1947年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、1971年NHK入局。「おはようジャーナル」「くらしのジャーナル」の生活情報番組や「教育トゥデイ」「BS討論」などのキャスターを務める。また、2004年からは8年間にわたり「福祉ネットワーク」のキャスターとして認知症や医療など現代が抱える福祉テーマに取り組む。

3 6月号 26月号

#764800 埼玉県社会福祉協議会さま S・A・I 平成26年度 6月号

ショップとして、「ケア・カフェさっ

て」を定期開催しております。その特

徴は専門職だけでなく、地域で活動す

る民生委員や自治会員の他、「コミュ

ニティデザイナー」と称しているイン

フォーマルな支え合い活動や町づくり

を行う住民や団体、企業の方々が参加

して頂いていることがあげられます。

2年間で合計24回開催、住民を含む

25の専門職種、のべ1073人が参加

しました。ワールドカフェ形式(※

2)によるグループワークを通じ、顔

の見える関係の構築、相互理解の推進、

協働の具体化など様々なテーマについ

て対話を行いました。

 その中で、医療介護連携の具体化は

重要な課題でした。医療介護従事者は

互いに多忙である為、過去に連携に関

するトラブル等の経験を有する参加者

が少なくありません。また、情報共有

に関して、全ての情報を単純に共有す

れば良いというものでもありません。

地域にとってあるべき連携の具体像と

は何か?共有することが有効な最小限

の情報とは何か?等を模索する為、具

体的な事例検討を繰り返し行いました。

 医療介護連携推進へ向けた障壁を住

民目線で抽出し、最終的に「医介連携

ワークシート」としてまとめました。

また、介護側が医療側へ連携する際に

難渋するケースが散見された為、具体

的な連絡基準を「見守りパス」として

まとめ、参加者全員に配布しました。

 課題の可視化だけでなく、具体的な

解決策までまとめ上げることで、ケア

の統合や地域チームとしての意識形成

が進みました。次号では、幸手市で構

築した地域包括ケアシステムの実際に

ついてご紹介したいと思います。

(       

)は、近年、実現

の重要性が提唱されている地域包括ケ

アの基盤を成すものです。地域包括ケ

アには次の4つの視点があると考えま

す。①個人最適の視点。すなわち、個

人にとって最も適した統合されたケア

とは何かという問いを追求する臨床的

な視点。②多職種協働の視点。すなわ

ち、個人に最適化されたケアを実現す

る為、様々な職種、組織、施設を越え

て協働するという視点。③全体最適の

視点。すなわち、質の高いケアが一部

の人だけでなく、必要とする全ての住

民に継続的に提供されるという視点。

そして最も重要なことは、④住民の主

体性を支えるという視点。

 以上、4つの視点において、住民の

日常生活圏を中心に提供され、財源や

人材も含んだあらゆる資源が地域で循

環し、持続可能な仕組みこそが、地域

包括ケアシステムであると考えており

ます。

 「菜のはな」では、カフェ型ワーク

Aging in place

在宅医療連携拠点とは、多職種協働

による在宅医療の支援体制を構築し、

地域における包括的かつ継続的な在宅

医療の提供を目指すとともに、今後の

政策立案や均てん化(※1)等に資す

ることを目的とした地域拠点です。地

域包括支援センターの医療側の窓口と

して位置づけられるカウンターパート

ナー(対等な立場で連携するパートナ

ー)です。

当院は平成24年度在宅医療連携拠点

事業(実施主体:東埼玉総合病院)、

平成25年度在宅医療推進事業(実施主

体:幸手市・北葛北部医師会)におい

て、事業所として「菜のはな」を開設

し、主に在宅医療の推進と、地域包括

ケアシステムの構築に取り組んできま

した。

住み慣れた地域で、最期まで自分ら

しい暮らしを続けていくという考え方

を える福 祉 考

医療介護の連携の取り組み

   〜地域包括ケアシステム幸手モデル①〜

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在宅医療連携拠点「菜のはな」における

地域包括ケア構築の取り組み

地域包括ケアシステム構築で

留意するべき4つの視点

みんなそうやって育てたのよ」と言わ

れ、身近な相談者のはずが叱咤されて

しまう。企業もそうですよ。昔は「こ

んなこともできないのか」と言われて

も、頑張れば報酬や地位につながった。

でも今は言われるだけで、正職員にも

なれない。消耗させられ、根性論を言

われても若者はつらいだけでモチベー

ションのアップにはならない。年長者

は若者に、こうやって生きていったら

人生豊かになるぞといったロールモデ

ルを見せることもない。

 福祉の大きな課題は、若者に次の社

会に希望を持たせるビジョンを示すこ

とだと思います。経済が上向くことを

望むだけで、生きるための福祉を語る

ことなく、今の制度と政策の中だけで

考えていてはだめなんです。

―町永さんが、ご自身の活動を通して

一番伝えたいと思われることはどんな

ことでしょうか。

 一人ひとりが動かなければならない

ということ。お上が何とかしてくれる

発想はやめましょうということです。

また、あなたと私は違うけれど、互い

の存在を認めましょうということです。

 実は、日本語の違うという言葉は全

否定の文脈しかない。上司が「君、そ

れは違うな」というと、その考えは却

下だということになります。金子み

すゞさんの詩にある「みんなちがって、

みんないい。」の「ディファレント

(    

)」という言葉を持ってい

ないのです。日本の均質社会は、みん

なと一緒であることを価値として来ま

した。互いがちがって、それぞれが存

在するという「違い」を私達は作り出

す必要があります。

 講演会などでは、共生社会のタイト

ルで依頼されることが多いのですが、

皆さん、どう取り組めばいいですかと

答えを求めてくる。皆さんで考えてく

ださいと話した上で、無関心・排除・

孤立を変えられますかと問います。難

しそうな顔をされますが、反対を考え

ればいいですよ、関心と共感と想像力

を働かせましょうと話します。

―関心を持って相手の立場に立つこと

もそうですが、またどうしてよいかと、

なかなか動けないものです。

 自分のこととして考えるのは、慣れ

ていなくて難しいものです。先日私も

自分が認知症になったらと考える機会

があって、その時妻は何かをあきらめ

るだろうかと考えました。それはささ

やかな友人との交流や夫婦旅行かもし

れないが、妻があきらめることがある

のが一番辛い。だとしたらあきらめな

くて済む手立てが出来たらいいなと考

えると具体的に見えてくるものがあり

ますね。自分が当事者だったら…とい

った感覚、それが関心や共感や想像力

のもとですね。何か新しい力が必要で

はなくて、それぞれが持っている力を

掘り起こせばいいのです。

 それに私たちは大きな経験をしてい

ます。東日本大震災の時、首都圏では

皆さん帰宅難民になりましたが、あの

時、何時間もひたすら整然と歩きなが

ら考えていたのは被災地のことですよ

ね。我々は間違いなく新しい社会に向

かって歩いていましたよ。あの時、遠

く離れた見知らぬ人の辛さを誰もが考

えていました。確かに小さな子どもか

らお年寄りまで、他人の困難を自分の

辛さと感じたんです。第三者を思いや

る新しい時代を垣間見たあの時の思い

を忘れてはいけないのです。

 日本人は短時間に答えを求めようと

しますし、声の大きい人にもたちまち

傾いてしまう。でも、自分のこととし

て何通りもの答えを考えて、悩んでわ

からないことは話し合うプロセスが必

要だと思います。例えば□+□=5の

□には何通りもの数字が入ります。誰

かに答えをもらうのではなくて、自分

の問題として□の部分を考えることが

大切ですし、答えはいくつもあるんで

すよね。

 第三者のつらさを感じることができ

るのが福祉の力で、その力は生活者の

一人ひとりが確実に持っています。そ

のことを福祉の中心に持って来れば、

この社会の仕組みは変わるし、困難に

ある人への接し方も変わって来ると思

うのです。

different

社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス東埼玉総合病院

在宅医療連携拠点事業推進室 室長

中野

 智紀

※1 医療サービスなどの地域格差をな

くし、全国どこでも等しく高度な

医療を受けることができるように

すること

※2 会議・討論の一形式。参加者が少

人数で自由に対話を行い、時々他

のテーブルとメンバーをシャッフ

ルさせながら話し合いを発展させ

ていくこと

チームオール幸手を創る

〜住民を中心

としたケアの統合と多職種協働〜

5 6月号 46月号

#764013 埼玉県社会福祉協議会さま S・A・I 平成26年度 5月号