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調 ケーススタディ(塔型設備) (平成21年度~平成23年度) 平成 24 年 2 月 経済産業省原子力安全・保安院

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発 電 設 備 耐 震 性 能 調 査

ケ ー ス ス タ デ ィ ( 塔 型 設 備 )

(平成21年度~平成23年度)

報 告 書

平成 24 年 2 月

経済産業省原子力安全・保安院

電 源 開 発 株 式 会 社

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本資料は,電源開発株式会社が国の委託を受けて実施した「平成23年度発

電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)」の報告書であり,本資料

の供覧,複製,転載,引用には,経済産業省原子力安全・保安院電力安全課

の承認が必要です。

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目 次 頁

1. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2. 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

2.1 調査目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

2.2 調査概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

2.3 類似構造物の耐震性能評価に関わる調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

3. 耐震性能評価手法に関する調査・検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

3.1 ケーススタディ地点の選定と対象構造物の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

3.2 塔型設備に作用する動水圧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

3.3 RC 構造塔型設備を構成する材料の非線形特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

3.4 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

4. ケーススタディに用いる入力地震動の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54

4.1 照査用下限加速度応答スペクトルに基づく地震動・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54

4.2 サージタンク地点の地形の影響を考慮する地震動・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57

4.3 サージタンクのケーススタディに用いる地震動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

5. サージタンクのケーススタディ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

5.1 ケーススタディ対象構造物の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

5.2 解析モデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

5.3 入力地震動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72

5.4 照査基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73

5.5 耐震性能照査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76

5.6 耐震性能照査のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86

6. 独立型取水塔のケーススタディ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90

6.1 ケーススタディ対象構造物の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90

6.2 解析モデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92

6.3 入力地震動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 102

6.4 照査基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 103

6.5 耐震性能照査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107

6.6 技術検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 122

7. まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 159

7.1 サージタンク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 159

7.2 独立型取水塔・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 159

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

1

1. はじめに

発電設備の立地に際し,その安全性が確保されるか否かは,設備の周辺住民にと

って極めて関心の高い事項であり,国民の生命と財産に重大な影響を与えるような安

全上の問題またはその懸念が生じると,発電設備の立地に対する国民の安心感と信

頼性が大きく損なわれる。

平成 16 年 10 月の新潟県中越地震では,震源地付近の水力発電設備(ダム等)に

おいて堤体に亀裂が入った。調査の結果,貯水が流出する恐れはなかったものの,

万が一ダムの貯水等が流出すれば,下流において大きな被害につながることが想定

される。平成 23 年 3 月の東日本太平洋沖地震は,我が国観測史上最大の地震であ

ったが,水力発電設備への被害は限定的であり大きくなかった。これは震源域までの

距離があったことや地震動が短周期側であったことが幸いしたものと考えられている。

このように近年,国内各地で大規模地震が続いており,水力発電設備の耐震性能の

検証は国民の安全に対する信頼を得ていくために必要不可欠である。

このため経済産業省原子力安全・保安院は,大規模地震に対する水力発電設備

の耐震性能を検証する方法の確立を目的として,発電設備耐震性能調査(H18 年度

~H20 年度実施,以下前調査という)を実施した。

前調査では,大規模地震としてレベル 2 地震動を対象とし,発電設備を対象とした

レベル2地震動策定方法や地震力として構造物の地震時応答を考慮した動水圧の

評価方法について調査した。また,照査対象構造物として,発電設備のなかから地

震被害が発生した際に大規模な溢水・漏水の発生や地震後の流量制御機能の喪失

の原因となる構造物(これを照査対象構造物という)を抽出し,これらが大規模地震に

対して被害を発生しないための要求性能を整理した。照査対象構造物は,ダム,ダ

ムに付属する洪水吐,ダムに付属する取水口,独立型取水塔,埋設および露出型導

水路,露出型調圧水槽および露出型水圧管路である。前調査では,このうちコンクリ

ート重力ダム天端の洪水吐とそのラジアルゲートおよび露出型水圧管路について,

レベル 2 地震動を対象とした耐震性能照査のケーススタディを実施し,これらがその

ような地震に対しても要求性能を満足することを確認するとともに,その方法をフロー

として示した。

平成21~23年度発電設備耐震性能調査(以下,本事業という)では,前調査を受

け,照査対象構造物のうち照査が実施されず残された構造物のうちから 6 構造物を

選定して,耐震性能照査のケーススタディを実施した。選定したケーススタディ対象

構造物は,水路橋,露出型サージタンク,コンクリート重力ダムの天端に設置される

洪水吐ゲートのうちローラーゲートであり,また独立型取水塔,放流管および放流ゲ

ート,アーチダムの天端に設置されるラジアルゲートである。前者については平成 21

年度および平成22年度調査において,後者については平成 22 年度および平成 23

年度調査において,順次実施した。また本事業は,調査内容により「総合調査」,「ケ

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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ーススタディ(塔型設備)」,「ケーススタディ(放流設備)」および「ケーススタディ(ラジ

アルゲート・水路橋)」の各調査により実施された。本事業のフローおよび各調査の概

要を,表-1.1 および表-1.2 に示す。

本報告書は,前記各調査のうち,「ケーススタディ(塔型設備)」の調査結果をま

とめたものである。

表-1.1 発電設備耐震性能調査(平成 21-23 年度)

項目 内容 H21 H22 H23

ケーススタディに用いる地震動の評価照査基準の検討,地震被害調査(文献)共通課題の検討(水路に作用する動水圧模型実験等)全体取りまとめ検討委員会(4回/年)課題検討会(4回/年)

ケーススタディ(ラジアルゲート・水路橋)地点選定,地震力の検討,非線形特性検討,照査基準検討,モデル作成・検証照査実施,照査基準の検証,照査フロー地点選定,ダム応答に基づく動水圧評価,モデル化検討,モデル作成・検証照査実施,照査基準の検証,照査フロー

ケーススタディ(塔型設備)地点選定,動水圧およびモデル化検討,非線形特性検討,照査基準検討,モデル作成・検証照査実施,照査基準の検証,照査フロー地点選定,動水圧(模型実験を含む)およびモデル化検討,非線形特性検討,照査基準検討,モデル作成・検証照査実施,照査基準の検証,照査フロー

ケーススタディ(放流設備)地点選定,動水圧およびモデル化検討,照査基準検討,モデル作成・検証,ダム応答に基づく動水圧評価動水圧に関する模型実験,照査実施,照査基準の検証,照査フロー地点選定,動水圧およびモデル化検討,照査基準検討,モデル作成・検証,ダム応答に基づく放流管内動水圧評価放流管延長・形状による動水圧の影響評価,照査査基準の検証,照査フロー

放流管・ゲート

コンクリート重力ダムの洪水吐・ローラーゲート

露出型サージタンク

総合調査

水路橋

アーチダムの洪水吐・ラジアルゲート

独立型取水塔

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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表-1.2 発電設備耐震性能調査(平成21 年度~平成 23 年度)一覧

調査名 概 要

総合調査 (1)地震動の評価,水路に作用する動水圧に関する模型実験

(2)水力発電設備(ケーススタディ構造物)の照査基準の検討

(3)検討委員会の実施

(4)各事業の連携の強化

(5)全体報告書の作成

ケーススタディ(ラジアルゲート・

水路橋)

(1)水路橋の耐震性能評価手法に関する調査・検討

(2)水路橋の解析モデルの作成・検証

(3)水路橋の検証手法の検討(ケーススタディ)

(4)ラジアルゲートの耐震性能評価手法に関する調査・検討

(5)ラジアルゲートの解析モデルの作成・検証

(6)ラジアルゲートの検証手法の検討(ケーススタディ)

ケーススタディ(塔型設備) (1)サージタンクの耐震性能評価手法に関する調査・検討

(2)サージタンクの解析モデルの作成・検証

(3)サージタンクの検証手法の検討(ケーススタディ)

(4)独立型取水塔の耐震性能評価手法に関する調査・検討

(5)独立型取水塔の解析モデルの作成・検証

(6)独立型取水塔の検証手法の検討(ケーススタディ)

(7)独立型取水塔に作用する動水圧に関する模型実験

ケーススタディ(放流設備) (1)ローラーゲートの耐震性能評価手法に関する調査・検討

(2)ローラーゲートの解析モデルの作成・検証

(3)ローラーゲートの検証手法の検討(ケーススタディ)

(4)ゲートに作用する動水圧に関する模型実験

(5)放流管・ゲートの耐震性能評価手法に関する調査・検討

(6)放流管・ゲートの解析モデルの作成・検証

(7)放流管・ゲートに作用する動水圧の検討

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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2. 概要

2.1 調査目的

本調査では,水力発電設備のうち塔型形状を有するサージタンクおよび独立型取

水塔について,保有すべき耐震性能を確認するための指標(耐震性能照査基準)を

検討することを目的として,サージタンクおよび取水塔のレベル 2 地震動に対する耐

震性能照査のケーススタディを実施した。

対象とするサージタンクは RC 構造,独立型取水塔は SRC 構造であり,レベル 2

地震動は各構造物設置位置で設定した。解析方法は,構造物と貯水の連成作用と

構造物の塑性挙動を考慮する動的手法を基本とした。

解析結果に基づき,地震動の特性と構造物における応答の関連を考察し,解析の

妥当性を検証するとともに,想定される損傷状況から要求性能及び照査基準を検証

した。

これら検討に基づき,適用した解析方法を評価して,サージタンクおよび独立型取

水塔の耐震性能照査手法を提案した。

2.2 調査概要

2.2.1 サージタンク

(1) サージタンクの耐震性能照査手法に関する調査・検討

水力発電設備では,発電運用中に発生する水路内の過渡的な圧力変動を吸収・

減衰するため,導水路と水圧管路の間にサージタンクを設ける。サージタンクは,上

部のごく一部のみが地上部にあり,他は埋設される埋設型サージタンクと,その多く

が地上に設置される露出型サージタンクに分類され,このうち地震による影響は露出

型サージタンクにおいて顕著であると考えられる。本調査においては,露出型サージ

タンクおよびその附属構造物についての耐震性能を検討した。

まず,アンケート調査から既存の露出型サージタンクから代表的な形式・構造を有

する地点を選定し,次に,このサージタンクに大規模地震が作用することを想定した

地震力の評価方法およびサージタンクの耐震性能照査手法について検討した。

地震力としては,サージタンクに作用する地震慣性力,またサージタンクの地震時

応答と内部水の相互作用による動水圧を考慮した。露出型サージタンクでは,地震

時にサージタンク内部に作用する動水圧は,静水圧と同程度と評価され,サージタン

ク構造の応力への影響は小さくない。また動水圧は,地震動の鉛直動の影響を強く

受け,その周期特性はサージタンク内部の水深に依存する。

耐震性能照査手法については,露出型サージタンクが大規模地震により塑性化

することを想定して,塑性化後の挙動が評価可能な手法やサージタンクの構造部材

の塑性化後の特性について調査・検討した。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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(2) サージタンクの解析モデルの作成および検証

(1)で選定した地点や地震力の評価方法を考慮して,サージタンクの構造形式に

適する解析モデルを検討し作成した。

サージタンクはRC構造(円筒形,内径 7.5m,RC 厚さ 0.6m)であり,主に地上部

(高さ 22.5m,水位 12m)を検討対象とした。 解析モデルは,サージタンクに作用する

動水圧の特性と大規模地震時の RC 構造の非線形挙動を考慮して,サージタンク内

部の貯水をすべてモデル化し,地上部の RC 構造の塑性化を考慮する構造体-貯水

連成解析モデルとした。

検討のための地震動としては,サージタンク設置地点で設定するレベル 2 地震動

として,照査用下限加速度応答スペクトル(H20)を適用した。解析方法は、構造物と

貯水の連成作用とRC構造の塑性挙動を考慮する動的手法とした。

作成した解析モデルによる予備解析を実施し,予備解析結果やケーススタディ対

象の露出型サージタンクの常時微動計測との整合性,また評価される動水圧特性と

模型実験結果(発電設備耐震性能調査(平成 21~23 年度)報告書(以下,総合調査

報告書という) 第 1 編参照)との比較などから解析モデルの妥当性を検証した。

(3)サージタンクの検証手法の検討(ケーススタディ)

サージタンクの保有すべき耐震性能を確認するための指標(耐震性能照査基準)

を検討することを目標として、作成されたサージタンクの解析モデルおよび別途総合

調査において設定した照査基準を用いて、その解析方法についてケーススタディを

行った。

解析結果に基づき、地震動の特性とサージタンク応答の関連を考察し、解析の妥

当性を検証し、さらに想定される損傷状況からサージタンクの耐震性能および照査基

準を検証した。

これら検討に基づき、適用した解析方法を評価して、照査フローとして取りまとめ,

さらに解析方法や照査基準とともにサージタンクの耐震性能照査基準を取りまとめ

た。

2.2.2 独立型取水塔

(1)独立型取水塔の耐震性能評価手法に関する調査・検討

独立型取水塔およびその附属構造物について、地震力に対する評価手法を検討

した。

ケーススタディ地点として、既存の独立型取水塔の調査を行い、形式、構造、規模

や地震に対する影響度に着目して,代表的な形式を選定した。

(2)独立型取水塔の解析モデルの作成・検証

独立型取水塔はダム上流約 200m の貯水池内にあり,RC構造(矩形断面,高さ

81m,幅22m,奥行き16.1m)である。選定した地点や地震力を考慮して、独立型取水

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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塔の解析モデルを検討し作成した。解析モデルは、独立型取水塔と貯水との連成作

用およびその非線形特性を考慮した。 なお,連絡橋梁の健全性は別途モデルによ

り検討した。

解析方法は、構造物と貯水の連成作用とRC構造の塑性挙動を考慮する動的手

法とした。検討のための地震動としては,サージタンク設置地点で設定するレベル 2

地震動として,照査用下限加速度応答スペクトル(H20)を適用した。

作成した解析モデルは、対象構造物に関する常時微動計測結果やレベル 2 地震

動を用いた線形動的解析結果に基づき,基本的な振動特性の妥当性や評価される

動水圧特性と模型実験結果(総合調査報告書第 1 編参照)との比較などから検証し

た。

(3)独立型取水塔の検証手法の検討(ケーススタディ)

独立型取水塔の保有すべき耐震性能を確認するための指標(耐震性能照査基

準)を検討するため、作成された独立型取水塔の解析モデルおよび照査基準を用い

て、その解析方法についてケーススタディを行った。

解析結果に基づき、地震動の特性と取水塔応答の関連を考察し、解析の妥当性

を検証し、さらに想定される損傷状況から取水塔の耐震性能および照査基準を検証

した。

これら検討に基づき、適用した解析方法を評価して、照査フローとして取りまとめ,

さらに解析方法や照査基準とともに取水塔の耐震性能照査基準を取りまとめた。

(4)独立型取水塔に作用する動水圧に関する模型実験

独立型取水塔およびその附属構造物に作用する地震力は、動水圧および慣性力

であり、動水圧は取水塔の内外から作用することが特徴である。大規模地震時の動

水圧を精度よく評価するため、模型実験と解析により検討を行った。模型実験は、解

析方法の検証を目的として実施し、検証された解析方法によりケーススタディ対象の

独立型取水塔に作用する動水圧を検討した。また、既存の簡略法との比較を行い、

その適用性を検討した。 なお,本調査結果については総合調査報告書 第1編第9

章に,他の模型実験と共に記載した。

2.3 類似構造物の耐震性能評価に関わる調査

2.3.1 サージタンク

(1) 耐震性能評価手法

既存の露出型サージタンクの多くは建設年代が古く,震度法に基づき設計されて

いるものがほとんどである。設計震度は概ね 0.10~0.15 程度であり,水平断面は動

水圧を含む内水圧による周方向の引張力に対して設計され,鉛直方向断面は地震

慣性力による曲げモーメントに対して設計されている。また,動水圧の評価には

Westergaard 式が用いられる。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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比較的大きな地震力を考慮した露出型サージタンクの耐震設計が行われている事

例としては,柳又発電所調圧水槽(九州電力㈱)がある。柳又発電所調圧水槽は,昭

和 40 年代後半に建設された高さ 34.1m,内径 25mの PC 製の露出型サージタンク

(図-2.1 参照)である。発電水力設備に関する技術基準に PC 構造に関する規定がな

く(当時),耐震性能などの安全性が求められたことから,設計において地震時応答

を考慮した有限要素法による検討が実施されている 1)。地震時の検討は静的応答解

析および動的応答解析により実施され,静的応答解析では設計震度を 0.20 とし,動

的応答解析は応答スペクトル法を用い,地震動は最大 100gal としている。設計水位

は調整池の満水位とし,サージング圧は満水位での全負荷遮断と地震が重なる確率

は非常に小さいことから考慮していない。また,動水圧は付加質量として評価されて

いる。

図-2.1 柳又発電所の調圧水槽,断面 1)

一方,大規模地震を対象とした露出型サージタンクの耐震評価の事例は見当たら

ないため,露出型サージタンクと類似の構造を有する塔型構造物について,その耐

震評価手法を整理する。

露出型サージタンクと類似構造物としては,水道用地上貯槽,原子力発電所の圧

力容器,各種液体貯蔵タンク等が挙げられる。ここでは,露出型サージタンクと最も構

造が類似する水道用地上貯槽について,最新の知見が取り込まれている文献 2)(以

下水道指針(2009 年)という)をもとに,耐震設計の考え方と評価手法について以下

に整理する。

水道指針(2009 年)は,旧指針(1997 年)に対して次のことが取り込まれている点が

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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特徴である。

・ 検討地震動としてレベル 1 およびレベル 2 の2つの地震動を用いた2段階設

計法が採用されたこと

・ 性能設計法の考え方が採用され,各施設それぞれに 1~3 の耐震性能と限

界状態が明確化され,重要度に応じて2つの地震動レベルに対する耐震性

能が規定されたこと

・ 近年の地震工学の研究や科学技術の進展を踏まえ,新しい知見が取り込ま

れていること

・ 経済的照査の概念が取り込まれていること

水道指針で規定されている地震動の定義を表-2.1 に,水道用地上貯槽に要求さ

れる耐震性能を表-2.2 に示す。大規模な水道用地上貯槽は重要施設(ランク A1 の

水道設備)に区分され,レベル 2 地震動に対しては耐震性能 2 を確保するように設計

する。ここで耐震性能2とは,貯槽が PC 構造の場合には,一部の部材が塑性化する

が損傷の修復を容易に行える状態を,鋼製の場合には,一部の部材が塑性化する

が漏水が発生しない状態を限界状態としている。円筒 PC 構造の耐震性能 2 におい

て漏水の発生が限界状態とはなっていないが,これについては円周方向軸力によっ

て側壁を貫通するひび割れが生じても,地震後にプレストレスなどの効果によって残

留するひび割れ幅が小さくなるためと解説されている。なお,水道指針には RC 構造

貯槽の耐震性能についての記載がないため,池状構造物(RC 構造物)の記述を参

照すると,軽微なひび割れが発生して漏水は生じるが早急に修復可能な状態をレベ

ル 2 地震動に対する限界状態としている。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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表-2.1 水道施設の耐震設計に考慮する地震動 2)

レベル 1 地震動 レベル 2 地震動

当該施設の設置地点において発生するものと

想定される地震動のうち,当該施設の供用期間

中に発生する可能性が高いもの

当該施設の設置地点において発生するものと

想定される地震動のうち,最大規模の強さを有

するもの

表-2.2 水道用地上貯槽の耐震性能 1,2,3 に対する限界状態 2)

部材

耐震性能 1

地震によって健全な機

能を損なわない性能

耐震性能 2

地震によって生じる損

傷が軽微であって,地

震後に必要とする修復

が軽微なものにとどま

り,機能に重大な影響を

及ぼさない性能

耐震性能 3

地震によって生じる損

傷が軽微であって,地

震後に修復を必要とす

るが,機能に重大な影

響を及ぼさない性能

本体工部材

(水密性を要する)

力学的特性が弾性域を

超えない限界の状態

一部の部材が塑性化す

るが,損傷の修復を容

易に行える限界の状態

一部の部材が塑性化す

るが,損傷の修復を容

易に行える限界の状態

本体工部材

(水密性を要しない)

力学的特性が弾性域を

超えない限界の状態

一部の部材が塑性化す

るが,損傷の修復を容

易に行える限界の状態

一部の部材が損壊して

も,施設全体の崩壊が

なく,復旧に支障となら

ないような限界の状態

PC構造

基礎工 力学的特性が弾性域を

超えない限界の状態

一部の基礎が塑性化し

ても,過大な変形や損

傷が生じない限界の状

一部の基礎が損壊して

も,著しい不同沈下が

発生しない限界の状態

本体工部材

(水密性を要する)

力学的特性が弾性域を

超えない限界の状態

一部の部材が塑性化す

るが,漏水が発生しない

限界の状態

一部の部材に座屈変形

が発生するが,漏水が

発生しない限界の状態

本体工部材

(水密性を要しない)

力学的特性が弾性域を

超えない限界の状態

複数の部材が塑性化す

るが,損傷の修復を容

易に行える限界の状態

一部の部材が損壊して

も,施設全体の崩壊が

なく,復旧に支障となら

ないような限界の状態

鋼 製

基礎工 力学的特性が弾性域を

超えない限界の状態

一部の基礎が塑性化し

ても,過大な変形や損

傷が生じない限界の状

一部の基礎が損壊して

も,著しい不同沈下が

発生しない限界の状態

次に,水道指針に示されている大規模地上貯槽のレベル 2 地震動に対する照査

基準を表-2.3 に示す。なお,RC 構造貯槽については池状構造物の記載を参照した

ものである。レベル 2 地震動に対する限界状態を最大耐荷力以下であることとし,RC

構造および PC 構造の場合には,静的あるいは動的解析を実施して発生断面力が耐

力以下,あるいは塑性率または応答歪みが許容値以下となることを照査する。鋼製

の場合には,静的あるいは動的解析を実施して応答歪みが許容値以下となることを

照査する。なお,水道指針では荷重・変位曲線と耐震性能の概念として図-2.2が示さ

れている。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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表-2.3 水道用地上貯槽のレベル 2 地震動に対する耐震性能と照査基準 2)

構 造 RC 構造※1 PC 構造 鋼製

耐震性能 耐震性能 2 耐震性能 2 耐震性能 2

限界状態 限界状態 2

(最大耐荷力以下)

限界状態 2

(最大耐荷力以下)

限界状態 2

(最大耐荷力以下)

軽微なひび割れが発生して漏

水は生じるが早急に修復可能

な状態

側壁を貫通ひび割れが発生す

るが水密性は確保される(ひび

割れからの漏水や滲み)状態

軽微な変形が発生するが水密

性は確保される状態 損傷状態

軽微な修復が必要 軽微な修復が必要 軽微な修復が必要

側壁の

照査基準

断面力(曲げ) ≦最大曲げ耐力

断面力(せん断) ≦せん断耐力

塑性率≦許容塑性率

地震後に残留するひび割れ幅

応答歪み≦許容歪み※2

発生断面力≦断面耐力

応答歪み≦許容歪み

※1 : 水道指針には RC 貯槽の記述がないため,池状構造物の照査基準を参照。

※2 : 地震力除去後に水密性が確保される程度に復元するための許容歪み。実験又は既往の研究成果などを

参照して適切に定めるが,これらを参照できない場合は一般に鉄筋の降伏歪みとしてよい。

a) RC 構造(PC 構造) b) 鋼製

図-2.2 荷重・変位曲線と耐震性能の概念 2)

適用する照査基準については,水道指針では地上貯槽の構造形態に応じた地震

時挙動を考慮して,適切な方法を選択するとなっている。地上貯槽は,一般的にその

構造が比較的単純で地震挙動も複雑ではないことから,静的解析法を用いても事実

上問題はないとしているが,高さに対する幅の比(D/H)が著しく小さい施設や複雑な

形態を有する施設等を対象とする場合や,より合理的な耐震計算を行う場合には,

動的解析を行うのがよいと解説している。

地震の影響として考慮する荷重は,地震動の影響,液面揺動および地盤の液状

化と側方流動とし,地震動の作用方向は一般に水平方向を考慮すればよいが,構造

物の特性によっては鉛直方向の影響を静的地震力によって考慮する。

地震時動水圧を算定する方法は,Housner 法や速度ポテンシャル法に基づく簡略

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

11

式の他,有限要素法,境界要素法,伝達マトリックス法等の数値計算法があるが,ど

の方法を用いてもよい。動的解析の場合の地震時動水圧は,流体要素を用いた連

成解析や付加質量としてモデル化することにより考慮する。液面揺動については,揺

動高さが屋根に達しないことを確認する。材料や部材の非線形特性に関しては,静

的解析では,構造物の非線形域の変形性能を考慮した震度法(地震時保有水平耐

力法)を用いることにより考慮する。動的解析では,RC あるいは PC 構造の場合には

コンクリートのひび割れや鋼材の降伏を考慮した等価線形化法や非線形解析法を,

鋼製の場合には非線形解析法を用いることにより,非線形特性を考慮する。

(2) 内部に貯水を有する構造物の動水圧

露出型サージタンクのように内部に液体を有する構造物では,地震時に内壁面に

作用する動水圧と構造物の連成作用のため,構造物の地震時挙動が影響を受ける

ことが想定される。このような連成作用はこれまで構造物の剛体挙動を仮定した

Westergaard 式による動水圧によって考慮されてきた。しかしながら,大規模地震時

のように構造物に大きな地震応答が発生するような場合では,Westergaard 式による

評価は十分でないものと考えられる。

ここでは,ケーススタディの対象とする RC 構造の露出型サージタンクと類似の構造

物について,地震時における構造物と貯水の連成作用の評価方法を調査した。

まず,動水圧の作用は,構造物の加速度の大きさに比例して作用する慣性力的な

作用(流力弾性振動またはバルジングと呼ばれている)と,自由液面がある場合に液

面が自由振動(揺動)を起こしたときに生じる二次的な動水圧作用(液面揺動またはス

ロッシングと呼ばれている)とがある例えば 2)~5)。

流力弾性振動(バルジング)は貯槽本体と内部液体が一体となって運動する短周期

的応答であり,液面揺動(スロッシング)は主として内部液体の運動が卓越する長周期

的応答である。一般的な水道用貯槽の場合では,基本固有周期は,バルジングモー

ドで 0.15~0.5 秒,スロッシングモードで 3~12 秒程度であり 5),その作用は流力弾性

振動が大きく,壁面に作用する地震時動水圧として貯槽設計に適用し,作用が小さ

い液面揺動は貯槽の屋根への地震時揚水圧の影響評価で考慮するのが一般的で

ある 2)。

流力弾性振動による動水圧を評価する方法には,簡便な近似式を用いる方法(以

下,簡略式と呼ぶ)と数値解析により評価する方法がある。数値解析では,液体要素

(または流体要素)を用いる有限要素法が多く行われている(以下,構造-流体連成

解析法あるいは単に連成解析という)。

簡略式は,震度法や応答変位法などによる耐震検討において,流力弾性振動に

よる動水圧を考慮する場合に一般的に用いられている。ここでは,簡略式により評価

される動水圧分布を水に接する構造体に分布荷重として与える。また,このような分

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12

布荷重は,付加質量として考慮する(以下これを付加質量モデルという)ことにより,

動的な検討に適用することもできる。

代表的な簡略式には速度ポテンシャル法に基づく簡略式とHousnerの近似式があ

り,これらは水深と加速度の深さ方向分布が一定で,壁の変形が十分小さく無視でき

る条件を仮定した式である。水道指針 2)では,レベル 1 地震動に相当する動水圧算

定式として,自由液面を有する水深一定の矩形貯槽と円筒貯槽に対して,これらの

近似式を用いてよいとしている。さらに,Housner の近似式は,内容水が貯槽に及ぼ

す地震時動水圧の影響を流力弾性振動と液面揺動とに分け,それぞれについて動

水圧の影響を評価する近似式であり,貯槽の全水深が内半径の 1.5 倍以下が適用

範囲となっている 2)。

構造-流体連成解析法は,一般には流体要素などを用いて,貯水と構造体との

相互作用を時刻歴として考慮する動的解析により動水圧を評価する方法である。こ

の方法は,流力弾性振動による動水圧とスロッシングによる影響を同時に考慮するこ

とが可能である。また,簡略式ではタンク壁の変形が動水圧に及ぼす影響は考慮さ

れないため評価される動水圧分布は水深に対して単調に増大するが,構造-流体

連成解析法では,タンク壁の変形が考慮されるため,変形の大きな壁中位部に大き

な動水圧が発生する現象が表現可能である 6)。また,タンクの地震時挙動は地盤の

影響を受けタンク壁面に生じる動水圧も地盤の影響により変化するが,地盤を考慮し

た連成解析を行うことにより,地盤の影響を含む厳密な値を得ることが可能となる 7)。

構造物に大規模地震動が作用する場合では,構造物側壁下部等に生じた塑性ヒ

ンジ等塑性化の影響によって壁の上部の変形が大きくなることがあり,微小変形の仮

定条件が満足できないため,簡略式の適用が困難になる。このような場合には,付加

質量モデルや連成解析法を用いるのが望ましい 2)。

鈴木ら 8),9),10)は, 内径(D)と水深(H)の比(D/H)と容量を変えた水道用円筒型プ

レストレスコンクリート製貯槽を対象とし,汎用有限要素法プログラム DIANA を用いて,

簡略式を適用した静的解析と付加質量および連成解析を用いた動的解析を行い,

現行の耐震設計法で用いられている動水圧評価手法の妥当性および適用範囲につ

いて検討した。この結果,地震動規模が大きくなると D/H が小さい貯槽の場合には

貯槽上部の応答が大きくなり,簡略式ではタンクの変形状態を再現できなくなる 8)。ま

た,付加質量として速度ポテンシャル法に基づく簡略式より算定される動水圧と等価

な効果をもたらす質量を側壁の各接点に与えた場合では、D/H=1.5 以上であれば

実用上十分な精度が得られることを確認した 9)。ただし,D/H=1.0 の PC 貯槽では,側

壁上端が大きく変位する振動モードが生じるなど,速度ポテンシャル法による動水圧

では考慮することができない応答性状を示すため,その耐震性能を照査するために

は連成解析が必要であることを指摘した 10)。

前川ら 11)は,大型の縦置き円筒形鋼製貯槽を模擬した縮尺比約 1/10 のモデル

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

13

貯槽を用いた振動試験を行い,動液圧分布の入力加速度依存性と耐震強度への影

響について評価した。半径/板厚比の大きい大型の鋼製円筒形貯槽では,地震時

に貯槽側壁はタンク構造体の振動で変形し易くなる一方,貯水重量の占める割合が

タンク全重量に対して大きくなることから,貯水の振動挙動はタンク構造体へ大きな影

響を与える。スロッシングモードでは大きな液面揺動が発生し,バルジングモードで

は振動により貯槽壁面への動圧が増幅される。また,バルジングモードでは貯槽があ

たかも梁のように振動するビーム振動とタンク壁面が花びら状に変形して振動するオ

ーバル振動に分類した。入力加速度の大きな場合の動圧分布は,上記ビーム振動

による動圧分布にオーバル振動の動圧分布が重なり,付加質量を用いる線形動的

解析とは異なる挙動となることを示した。

貯槽へのスロッシングの影響は、貯水の固有周期や地震動の周期特性等と密接

な関係がある。一般に大規模な貯槽のスロッシング周期は数秒以上の長周期となり,

スロッシングに影響する地震動の長周期成分は,地震の規模(マグニチュード),震央

距離,地震の発生機構,構造物が設置される地点の深さ数 km 程度までの地下構造

等の影響を強く受ける。このためスロッシングの影響が無視できないと判断される構

造物では,十分な地震動調査や動的解析を行い,必要に応じて専門家の判断を仰

ぐことを推奨している 2)。

スロッシングの評価手法には簡便法と詳細法があり,詳細法は前述の構造-流体

連成解析法を用いる方法である。簡便法には,Housner の理論に基づく応答スペクト

ル法 2),n 波共振法およびポテンシャル理論に基づく応答スペクトル法 2)があり,何れ

もスロッシングの振幅(最大波高)を求めるものである。

このようにして求められたスロッシングによる波高は,水槽外への越流や,その波圧

による屋根および水槽内設備への影響を評価するために用いる。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

14

(3) 解析プログラム

大規模地震における露出型サージタンクの耐震性能照査のための地震応答解析

では,サージタンク内の貯水の影響を適切に考慮すること,サージタンクの損傷レベ

ルを評価できることが重要である。また,サージタンクは構造の大きさに比較して薄肉

中空の塔型構造物であり,鉛直方向と水平方向の変形への評価が必要となる。この

ため地震応答解析に用いる解析プログラムは,構造物と貯水との連成および材料あ

るいは部材の非線形特性を 3 次元で取り扱えることが前提となる。

ここでは,水との連成機能を有する代表的な非線形地震応答解析プログラムにつ

いて,その機能の比較を行った。比較した解析プログラムは,MD-NASTRAN(MSC

Software 社),ABAQUS(SIMULIA Japan 社),ADINA(ADINA R&D 社)および

TDAP-III(アーク情報システム社等)である。MD-NASTRAN,ABAQUS および

ADINA は代表的な汎用プログラムであり,TDAP-III は土木・建築系構造物を対象に

開発されたプログラムである。上記 4 プログラムについて,露出型サージタンクの地震

応答解析に適用することを前提に機能を比較した。比較結果は,総合調査報告書第

1 編第 8 章に示した。

TDAP-Ⅲはソリッドおよびシェル要素では非線形特性を考慮する機能がなく,サー

ジタンクの躯体については,その構造型式からソリッドまたはシェル要素によるモデル

化が妥当と考えられるため,TDAP-Ⅲの適用は難しい。MD-NASTRAN は構造物と

貯水との連成が線形解析に限定され,またコンクリートのひび割れを評価できないた

め,RC 製タンクへの適用は難しい。ただし,貯水の動水圧を付加質量で考慮する場

合には,鋼製タンクへの適用は可能である。ABAQUS および ADINA については,構

造物と貯水の連成が可能であり,コンクリートおよび鋼材の非線形特性を考慮する機

能を有しており,RC 製,鋼製タンクへの適用は可能である。ただし,ADINA の場合に

はシェル要素ではコンクリートのひび割れが評価できないため,RC 製タンクでは躯体

をソリッド要素でモデル化することになる。

以上より本調査では,基本的には ABAQUS を用いることとした。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

15

(4) まとめ

露出型サージタンクの耐震性能照査に関して,適用する手法,地震時にサージタ

ンク内部に作用する動的な荷重および解析プログラムについて調査した。露出型サ

ージタンクは,既設の露出型サージタンクは建設年代が古く,大半が震度法により設

計された RC 製のものであり,レベル 2 相当の地震動を対象とした事例は見当たらな

い。このため手法については,類似構造物として主に水道用地上貯槽の耐震性能照

査法を調査した。以下にこれらをまとめる。

1) レベル 2 地震動に対する水道用地上貯槽の耐震性能照査は,最大耐荷力以下

である限界状態に対して行うものとして,適用する解析手法は地震時保有水平耐

力法による静的解析法が基本となっている。また,径/高さが小さい(1 以下)場

合や複雑な形態を有する場合等については,動的解析法に基づく照査を行うの

が望ましい。

2) サージタンクに作用する動水圧は,簡略式ではタンクの壁を剛体と仮定している

ため,壁の変形が動水圧に及ぼす影響が考慮されず,レベル 2 地震動のような

大規模地震動により側壁の変形が大きくなる場合や径/高さが 1 より小さいタンク

では,付加質量や液体要素を用いる連成解析により評価することが必要となる。

3) 一般に大規模貯槽における液面揺動の固有周期は数秒以上の長周期であり,こ

のような場合の貯槽の限界状態評価では,慣性力的な動水圧とスロッシングの連

成の影響は小さい。

4) 汎用的な解析プログラムのうち ABAQUS は,構造・水の連成機能や材料の非線

形特性を考慮する機能などを有し,露出型サージタンクの動的解析手法として適

用可能である。

2.3.2 取水塔

類似の検討として,独立型鋼製取水塔(高さ 41m,満水位 31.2m,正六角形(1辺

4.5m),全面スクリーン)を対象としたレベル2地震動に対する照査事例 12)がある。ここ

では解析モデルとして 3 次元骨組みモデルを用い,部材の非線形特性として M-φ

関係を適用し,取水塔に作用する地震力のうち貯水の影響については取水塔内部

の水による慣性力および各部材に作用する動水圧を考慮した。この結果,検討対象

の取水塔は,基部および頂部で塑性化の可能性はあるが,支柱の最大ひずみは,

降伏ひずみの 2~3 倍程度にとどまり,このような塑性化は弾性範囲をやや超える限

定的なものであり,鋼材特性を考慮すれば取水塔全体の大変形あるいは倒壊に到る

おそれはないと結論づけた。

石田,青山 13)は,RC 構造の 4 本の柱からなる角柱状形状の取水塔を対象として,

地震観測および常時微動計測による取水塔の振動特性を検討した。地震観測事例

からは,取水塔頂部の水平振動では,最大加速度振幅と卓越振動数に有意な関係

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

16

は見られないこと,卓越振動数と貯水位は負の相関を示し,このような相関は,取水

塔が周辺の水から抵抗を受ける場合の理論的な傾向と一致することを示した。一方,

常時微動計測ではそのような相関は見られず,これは振動レベルが小さく取水塔周

辺の水と一体化した振動を示さないためとした。

真鍋ら 14)は,既設取水塔の耐震補強検討として,煉瓦構造(楕円形 6.8m×4.5m,

高さ 15.2m)の補強設計事例を示した。検討では,震度法を用い,レベル 2 地震動に

対する取水塔部材の耐力照査,直接基礎の安全性照査を行い,取水塔に発生する

引張曲げモーメント,せん断力が耐力を超過し,基礎部の安定性(支持力,転倒,滑

動)が満足されないとの結論を得た。これに対して,地震時の要求性能として,地震

時の取水・止水機能の維持を設定し,限界状態として上部構造では「力学的な特性

が弾性域を超えない限界の状態」,下部構造は塑性化を許容することとして,「復旧

に支障となるような過大な変形や損傷が生じない限界の状態」を設定した。これを満

足する補強工法として,上部は内張鋼板設置工法,下部は鋼管杭工法を採用すると

した。

以上のように,取水塔の耐震性能に関する検討事例は非常に少なく,特に RC 構

造取水塔の照査事例は見当たらない。一方,発電設備のその他のRC構造物につい

ては,洪水吐門柱等に対して,エネルギー一定則に基づく照査事例 15)がある。また,

取水塔の振動特性は,周辺および内部の水の影響によって変化することが確認され

ており,照査に当たっては水の影響を適切に考慮することが必要である。

本調査では,発電設備の主要構造物の一つである独立型取水塔を対象としてレ

ベル 2 地震動に対する耐震性能照査のケーススタディを実施するが,これに関わる

課題は以下のようにまとめられる。

・取水塔の主要な構造形式としての RC 構造取水塔についての耐震照査事例はこ

れまでにない。

・取水塔の地震時応答に対する貯水の影響は,内部は内部水の慣性力,外部水

は構造物の周辺での動水圧の回り込みの影響を考慮した付加質量等により評価

されているが,これらは連成解析の結果と一致していない。

・取水塔の要求性能のうち,地震後の機能性に着目する照査事例はない。特に,

機器の健全性やアクセス性に着目する照査が必要である。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

17

参考文献

1) 大橋光太郎:柳又発電所調圧水槽の設計と施工について,発電水力,No.123,pp.3-29,

1973

2) (社)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説,2009

3) (社)日本水道協会:水道用プレストレスコンクリートタンク設計施工指針・解説,1998

4) (社)日本電気協会:原子力発電所耐震設計技術指針 JEAG 4601-1987

5) (社)日本建築学会:容器構造設計指針・同解説,1996

6) 坂井藤一:液体貯槽の耐震設計研究に関する現状と課題,土木学会論文集,No.362/I-4,

pp.1-11,1985

7) 宅野詩織,森川慎吾,中村秀明,浜田純夫:地震荷重を受ける PC タンクの動水圧の算定,

コンクリート工学年次論文報告集,Vol.20,No.3,pp.49-54,1998

8) 小野雄司,鈴木基行ほか:プレストレスコンクリート製タンクの耐震安全性に関する基礎的研

究,土木学会第 55 回年次学術講演会講演概要集,第 1 部門,CD-ROM,2000

9) 江角真也,鈴木基行ほか:付加質量モデルを用いた PC タンクの地震応答解析,土木学会第

56 回年次学術講演会講演概要集,第 1 部門,CD-ROM,2001

10) 西尾浩志,鈴木基行ほか:プレストレスコンクリート製タンク側壁のレベル 2 地震動に対する耐

震性能照査,土木学会論文集,No.725/V-58,pp.85-100,2003

11) 前川晃,清水泰貴,鈴木道明,藤田勝久:振動試験による円筒形貯水タンクの耐震性評価

-動液圧分布の入力加速度依存性について-,INSS JOURNAL,Vol.11,pp.117-128,

2004

12) 国土交通省国土技術政策総合研究所:大規模地震に対するダムの耐震性能照査に関する

資料【資料 例 3-3】,国土技術政策総合研究所資料,No.244,2005.3

13) 石田昇一郎,青山咸康: RC 型取水塔の水中振動特性について,農業土木学会論文集,

No.198,1998.12

14) 真鍋雅彦他: 煉瓦構造取水塔の耐震補強設計,第 58 回全国水道研究発表会,2007.5

15) 三石真也: 大規模地震に対するダム耐震性能照査について-照査方法と試行の概要-,

第 65 回ダム施工技術講習会テキスト,(社)日本ダム協会,2009.7

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

18

3. 耐震性能評価手法に関する調査・検討

3.1 ケーススタディ地点の選定と対象構造物の概要

3.1.1 サージタンク

(1) サージタンクに関するアンケート調査

塔型設備のケーススタディの対象とする露出型サージタンクは,構造形式,材質,

地上部および地中部の形状などが発電所ごとに異なっている。ケーススタディでは,

実在の露出型サージタンクを対象として検討することとし,ケーススタディ地点の選定

のため,電力会社 10 社が保有するサージタンクに関するアンケート調査を実施した。

対象とするサージタンクは,地上部が 5m以上の露出型サージタンクとした。アンケー

ト調査の主要項目を表‐3.1 に示す。

表-3.1 アンケート調査項目

大項目 小項目 内容

型式 ― 単動型,差動型,水室型,制水口型などの型式

材質 鋼製または鉄筋コンクリート(RC)製

内径

高さ 5m以上

壁厚または板厚

地上部の構造・形状

付属構造物 ライザー管など

材質 鋼製または RC 製

内径

高さ

壁厚または板厚

地中部の構造・形状

付属構造物 ライザー管など

建設年 ―

露出型サージタンクのアンケート調査の回答数を表‐3.2 に示す。回答された地点

数は 171 地点である。アンケート結果に基づき,形式,材質,形状,建設年代の順に

示す。それぞれを図-3.1 から図-3.5 に示す。

露出型サージタンクの型式は,単動型が最も多く,次いで差動型である。単動型と

差動型を合わせると全体の7割を占める。露出型サージタンクの材質別地点数は,

RC 製が 151 地点(88%)であり,20 地点(12%)の鋼製を大きく上回っている。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

19

表‐3.2 アンケート回答数

タイプ別地点数回答数

(地点数)うちRC うち鋼製

単動型 77 69 8差動型 45 44 1水室型 14 14 0制水口型 33 23 10その他 2 1 1合計 171 151 20

露出型サージタンクの地上部高さは,RC 製の場合は 5mから 15m未満が全体の7

割を占め,鋼製の場合は 5mから 35m以上まで均等に存在する。地上部の平均高さ

は 14.4mである。露出型サージタンクの内径(D)に対する地上部高さ(H)をアスペク

ト比(H/D)と定義してその傾向を見た。アスペクト比が大きいほど地上部が細長く塔

型形状となっている。RC 製の場合,アスペクト比2未満が 8 割以上を占めており,アス

ペクト比が 2 以上のサージタンクの数は 20 基程度である。一方,鋼製の場合は地点

数が全体的に少なく,アスペクト比は広く分布して 10 を超えるものもあるがその数は

少ない。すなわちRC製サージタンクは,細長い塔型形状の数が多いが,鋼製サージ

タンクではその数は少ない。

その他制水口型

水室型

差動型

単動型

単動型差動型水室型制水口型その他

鋼製(20)

RC製(151)

( )内は地点数

図‐3.1 露出型サージタンクの型式 図‐3.2 露出型サージタンクの材質

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

20

0

10

20

30

40

50

60

70地点数

5~10 10~15 15~20 20~25 25~30 30~35 35以上

地上部高さ(m)

RC鋼製

サンプル数 :171 例地上部高さの平均 :14.4m

図‐3.3 露出型サージタンクの地上部高さ

0

10

20

30

40

50

60

70

地点数

1未満 2以上5未満 10以上15未満 20以上

アスペクト比(地上部高さ/内径)

RC鋼製

サンプル数 : 171例アスペクト比の平均 :1.72

図‐3.4 露出型サージタンクのアスペクト比

建設年代に関しては,RC 製サージタンクは,1921 年(大正 10 年)から 1980 年(昭

和 55 年)までにほぼ均等に分布して,1980 年以降は減少傾向である。鋼製サージタ

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

21

ンクは,1921 年(大正 10 年)から 2000 年(平成 12 年)までほぼ均等であり,建設年

代による地点数の差異は見られない。

0

10

20

30

40

50

60

1901

~19

20年

1921

~19

40年

1941

~19

60年

1961

~19

80年

1981

~20

00年

2001

年~

建設年

地点

RC製

鋼製

図‐3.5 露出型サージタンクの建設年代

(2) ケーススタディ地点の選定

アンケート調査の結果,露出型サージタンクについて以下のことがわかった。

① サージタンクの型式は,単動型が最も多く,次いで差動型が多い。単動型と差動

型を合わせると全体の7割を占める。

② 材質別では,RC 製が 88%を占める。

③ RC 製の場合,高さ 15m未満のものが 7 割であり,鋼製の場合では,高さは比較

的均等に分布している。それぞれの地上部高さの最大値は,46m および 96m で

ある。

④ アスペクト比に着目すると,RC 製の場合はアスペクト比2未満が 8 割以上であり,

鋼製の場合は均等に分布する。一方,絶対数の多い RC 製サージタンクでは,細

長い形状が多くあり,これらは地震の影響を受けやすい構造と考えられる。

⑤ サージタンクの建設年代は,RC 製の場合 1921 年(大正 10 年)から 1980 年(昭

和 55 年)までにほぼ均等に分布しており,1981 年(昭和 56 年)以降は減少してい

る。鋼製の場合,1921 年(大正 10 年)から 2000 年(平成 12 年)まで均等に建設さ

れている。

以上より,ケーススタディ地点として,塔型構造物として特徴的な高さおよびアスペ

クト比が比較的大きな RC 製の露出型サージタンクを選定する。対象とするサージタ

ンクの諸元を表-3.3 に示す。選定した露出型サージタンクの地上部高さとアスペクト

比をアンケート調査結果と比較した。これを図‐3.6 に示す。選定した露出型サージタ

ンクは,高さもアスペクト比も他の露出型サージタンクに比べて,比較的大きなもので

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

22

あることがわかる。対象のサージタンクの概要を図-3.7 に示す。

表-3.3 塔型設備のケーススタディ,選定した露出型サージタンクの特徴

項目 内容 諸元 高さ 地上部 22.5m,地中部 50.25m

内径 地上部および地中部 7m 貯水深さ 62.25m (サージタンク底部と満水位の差)

材質 鉄筋コンクリート(RC)製 形式 差動型

内部に径 2.7m,鋼製のライザー管を有する 建設年 1962 年

0

1

2

3

4

5

6

0 10 20 30 40 50

地上部高さ(m)

アス

ペク

ト比

(地

上部

高さ

/内

径)

全データ今回対象地点

図‐3.6 ケーススタディ地点の位置づけ(RC 製サージタンク)

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23

サージタンク

水圧管路

a) 遠望(サージタンクおよび水圧管路)

b) 地上部

0.6m

0.6m

鋼製ライザー管鋼製ライザー管

7.0D

c) 断面図

7.0m 0.6m0.6m

貯水池満水位 EL387.5m

鋼製ライザー管

12m22.5m

72.75m

サージタンク 水圧管路導水路

EL375.5m

最高水位 EL393.7m

EL398m

8.4m

d) 立面図(地上部および地中部)

図-3.7 露出型サージタンクのケーススタディ,対象構造物の概要

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

24

3.1.2 独立型取水塔

(1) 独立型取水塔に関する実績調査

独立型取水塔の実績を,ゲート総覧 1)に基づき整理した。このうち高さ 20m以上に

ついての調査結果を図-3.8 に示す。独立型取水塔の構造としては,RC 構造が多い。

また,高さは 20m 以上広く分布するが,最大では 90m 超までであり,ケーススタディ

対象の取水塔は,最大級である。

取水塔(RC,鋼製の区別なし)

0

1

2

3

4

5

6

7

0~10

10~20

20~30

30~40

40~50

50~

60

60~70

70~80

80~90

90~

取水塔高さ(m)

取水

塔数

半円形多段式

直線多段式

円形多段式

取水塔(鋼製)

00.5

11.5

22.5

33.5

44.5

0~10

10~20

20~30

30~40

40~50

50~

60

60~70

70~80

80~90

90~

取水塔高さ(m)

取水

塔数

半円形多段式

直線多段式

円形多段式

取水塔(RC)

0

1

2

3

4

0~10

10~20

20~30

30~40

40~50

50~

60

60~70

70~80

80~90

90~

取水塔高さ(m)

取水

塔数

半円形多段式

直線多段式

円形多段式

図-3.8 独立型取水塔の実績

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

25

(2) ケーススタディ地点の選定

検討対象の独立型取水塔は,大規模貯水池内にあり,ダム上流約 200m の左岸

側に位置する。取水塔本体は堅固な岩盤上に設置された高さ81mのRC構造物であ

り,表面取水ゲート,底部取水ゲート,保安ゲートおよび取水口ゲートを付属し,取水

塔上部にはこれらの操作のための機器室建屋と連絡橋梁が配置されている。機器の

操作は,基本的には自動・遠隔操作により行われている。また,操作のための電力供

給は,連絡橋梁に設置した電源ケーブルより行われている。

対象とした取水塔の概要を表-3.4,図-3.9 および図-3.10 に示す。

表-3.4 検討対象取水塔,諸元

形 式 鉄筋コンクリート(RC)構造(一部に鉄骨を配置)

取 水 条 件 満水位 EL465m,低水位 405m,最大取水量 180m3/sec

形 状 寸 法 基礎部;

塔 部;

高さ×幅×奥行き 28m×40m×38m

高さ×幅×奥行き 59m×22m×16.1m

主要付属設備

表面取水ゲート;

底部取水ゲート;

取水口ゲート;

スクリーン付半円形多段式(5 段)ローラゲート

ローラゲート(保安用フラップゲート内蔵)

キャタビラゲート

連 絡 橋 梁 鋼製箱形桁,橋長 64m,幅員 4m

取水塔

ゲート巻上げ機室

連絡橋梁

表面取水ゲート

図-3.9 検討対象取水塔,状況写真

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26

取水塔

ダム(天端標高469m)

洪水吐

a) 取水口配置

導水路トンネル

取水塔

連絡橋梁

高さ 81m

機器室建屋

表面取水ゲート

底部取水ゲート取水口ゲート

b) 平面 c) 縦断

図-3.10 (1) 対象取水塔,構造

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27

e) C-C 断面

d) 立面 f) D-D 断面

図-3.10 (2) 対象取水塔,構造

機器室建屋

表面取水ゲート

塔部

基礎部

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28

3.2 塔型設備に作用する動水圧

3.2.1 サージタンク

(1) 動水圧の評価方法

1) 動水圧の算定手法

2 章の調査結果から,露出型サージタンクの地震時動水圧を算定する代表的な方

法を表-3.5 にまとめる。

以下に,サージタンク壁面に作用する動水圧の評価方法について概要を示す。

表-3.5 サージタンクの地震時動水圧を算定する代表的な方法

解析手法 簡略式 動的解析による方法

壁面動水圧 ・ 速度ポテンシャル法に基づく簡略

式 ・ Housner の近似式

・ 付加質量 ・ 流体要素モデルによる連成解析

スロッシング (液面揺動)

・ ポテンシャル理論に基づく応答スペクトル法

・ Housner 理論に基づく応答スペクトル法

・ n波共振法

・ 流体要素モデルによる連成解析

2) 壁面に作用する動水圧を算定する簡略式 2)

壁面に作用する動水圧を算定する簡略式としては,速度ポテンシャル法に基づく

簡略式と Housner の近似式とがある。これらの簡略式は,いずれも水深と加速度の深

さ方向分布が一定で,壁の変形が十分に小さく無視できる条件を仮定した式である。

また,Housner の近似式は,貯水が水槽に及ぼす地震時動水圧の影響を慣性力と自

由振動に分けてそれぞれを近似式で表したもので,水槽の水深が内半径の 1.5 倍以

下が適用範囲となっている。

① 速度ポテンシャル法に基づく簡略式(ベッセル関数表示式)

H

z

H

rIrkzp i

i

i i

i

hw

cos)1(

cos),( )(

0

H

zIrkhw cos ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (3.1)

,2

5,

2

3,

22

12 ii

H

rI

r

H

H

rI

H

rI

H

rH

rI

iii

ii

10

1)( 2

10 , II :第一種変形ベッセル関数

ここに, ),( zp :加速度の方向から反時計回りに角度 ,サージタンク底面から

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29

上方に z (m)における地震時動水圧強度(kN/m2), w :貯水の単位体積重量

(kN/m3), hk :水平震度, r :サージタンクの内半径(m), H :水深(m),図-3.11 参照

② Housner の近似式

cos3tanh2

13),(

2

H

r

H

z

H

zHkzp hw ‥‥‥‥‥‥ (3.2)

ここに, ),( zp :加速度の方向から反時計回りに角度 ,水面から下方 z (m)に

おける地震時動水圧強度(kN/m2), w :貯水の単位体積重量(kN/m3), hk :水平震

度, r :サージタンクの内半径(m), H :水深(m),図-3.12 参照

図-3.11 ベッセル関数表示式の概要 図-3.12 Housner の近似式の概要

3) 付加質量モデル

付加質量モデルは,サージタンク壁面に作用する動水圧を地震慣性力に置換え

るため,解析モデルの各点に動水圧に相当する慣性力を発生させる質量を付加した

解析モデルをいう。すなわち簡略式から得られるサージタンク壁面の各位置における

動水圧 0P を付加質量 m と分担面積 A および応答加速度 a との積で表わすものであ

る。サージタンク壁面に作用する動水圧を速度ポテンシャル法に基づく簡略式により

評価する場合には,付加質量は式(3.3)で表される。

zazAzmH

zIrkzP hw

,,cos,0 ‥‥‥‥‥‥‥ (3.3)

Page 34: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

30

ここに,

),(0 zP :加速度の方向から反時計回りに角度 ,水槽底面から上方に z (m)にお

ける地震時動水圧強度(kN/m2), w :貯水の単位体積重量(kN/m3), hk :水平震

度, r :サージタンクの内半径(m), H :水深(m), I :第一種変形ベッセル関数,

),( zA :分担面積 (kN/m2), )(za :サージタンク底面から上方に z (m)における応答

加速度(m/s2)簡略式では gkh で表される。図-3.13 参照。

図-3.13 付加質量の算定,模式図

式(2.3)から,付加質量 m は以下のように算定する。

gk

drzP

gk

drzP

gk

zAzPzm

hhh

,,,,

, 000 ‥‥‥‥‥ (3.4)

x 方向の振動のみを考えた場合は,式(3.4)の x 方向成分を考え,式(3.5)で表さ

れる。

cos,, zmzmx ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (3.5) 付加質量モデルは,動的解析によるサージタンクの加速度応答を動水圧に反

映できるが,簡略式から得られる動水圧を基本としているためタンク壁の変形

応答やスロッシングの影響は反映されない。また,基本的には水平一方向の振

動に対してのみの適用となる。

4) 流体要素モデル(構造物・貯水連成解析法)

構造物・貯水連成解析法は,貯水を流体要素でモデル化し,構造体と貯水の連成

を考慮した動的解析(以下,これを単に連成解析という)により動水圧を評価する方

法である。この方法は,サージタンク壁面に作用する動水圧とスロッシングによる影響

を同時に考慮することができる。また,貯水を流体要素でモデル化しているため,3次

元的な振動に対しても動水圧を算定でき,より直接的な評価が可能な手法である。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

31

(2) 動水圧の特性に関する検討

1) 検討内容

露出型サージタンクの耐震照査のケーススタディに用いる動水圧の評価手法を決

定するため,表-3.6 に示す内容について検討した。検討では,サージタンクの形状

や物性,入力地震動をパラメータとし,解析ではサージタンク本体をシェル要素,貯

水を流体要素によりモデル化し,解析プログラムには NASTRAN を用いる。検討条件

を表-3.7 に示す。検討に用いたモデルおよび入力地震動を図-3.14 および図-3.15

に示す。

表-3.6 動水圧の特性に関する検討内容

検討項目 検討内容 連成解析および簡易式による動水圧分布の比較 動水圧の評価方法 付加質量モデルの適用性 サージタンク形状(水深/径)の影響 弾性応答の影響 入力地震動の周波数特性の影響 サージタンクの水深の影響

動水圧特性

鉛直地震動の影響 サージタンク形状(水深/径)の影響 弾性応答の影響

スロッシング特性

入力地震動の周波数特性の影響

表-3.7 動水圧の特性に関する検討条件

モデル 諸元 物性 入力動(図-3.15 参照) A 高さ 15m

直径 10m 水深 5, 7.5, 10m

B 高さ 15m 直径 30m 水深 5, 7.5, 10m

剛体を仮定,自重は考慮しない

1)周期 0.3 秒および 1 秒,振幅 300gal の正弦波

2)水平(X 方向),入力位置はサージタンク底面

C 高さ 15m 直径 10m 水深 10m

D 高さ 15m 直径 30m 水深 10m

1) 賀祥模擬波*1),最大加速度を 300gal に調整

2)水平(X 方向),入力位置はサージタンク底面

E

高さ 15m 直径 10m 水深 0,10m

弾性係数(RC を想定)E = 2.35 × 104

N/mm2 ポアソン比 ν=0.20質量密度 ρ =2.45 t/m3

壁厚 0.8m

F (全体モデル)

地上部:同上 地中部:剛体

G (全体モデル)

全体高さ 45m(地上部 15m,地中部 30m)直径 10m 水深 40m(地上部水深 10m)

地上部:剛体 地中部:剛体

1) 周波数特性がフラットなガウス波,最大加速度振幅100gal

2)水平(X 方向)および鉛直(Z 方向),入力位置はサージタンク底面(モデル E)および地中部側面(モデルF)

A’ モデル A に弾性体物性を適用 *1)2000 年鳥取県西部地震時に賀祥ダムで観測された地震動を原種波形として,照査用下限加速度応答スペクトル 3)に適合させ作成した模擬波形(図-3.15(c)参照)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

32

(a) モデル A,C および E ,径 10m

(b) モデル B および D ,径 30m (c) モデル F および G ,径 10m

図-3.14 弾性体タンクと剛体タンクの最大応答加速度分布の比較

-300-200

-1000

100200

300

0 1 2 3

time (s)

加速度

(gal)

-300-200-100

0100200300

0 1 2 3

time (s)

加速度 (gal)

(a) 正弦波(周期 0.3 秒,振幅 300gal) (b) 正弦波(周期 1 秒,振幅 300gal)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

33

-300

-150

0

150

300

0 5 10 15 20

time (s)

加速度 (gal)

max = 277gal min =-300gal

(c) 賀祥模擬波,時刻歴

-150

-100

-50

0

50

100

150

0 0.5 1 1.5

時 間 (s)

加速度 (gal)

0.01

0.1

1

10

0.01 0.1 1 10 100

周 期 (s)

FourierSpect(gal・s)

(d) ガウス波,時刻歴 (e) ガウス波,フーリエスペクトル

図-3.15 動水圧の特性検討,入力地震動

2) 動水圧の評価方法

動水圧の評価方法に関して,連成解析および簡略式(式(3.1))による評価を比較

する。

剛体を仮定したサージタンク(モデル A および B)に作用する動水圧について,簡

略式および連成解析より得られた最大動水圧鉛直分布を,各水深条件において水

面を揃えて図-3.16 に示す。サージタンクを剛体と仮定し水平動を与えた場合では,

簡略式および連成解析より得られた動水圧分布性状はほぼ整合し,その値は直径

10m の場合にはほぼ等しく,直径 30m の場合には連成解析の方がやや大きく評価さ

れる。動水圧の水深依存性については,サージタンク径が大きい場合(直径 30m)で

は,水深による動水圧の分布形状の差が顕著になる。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

34

直径10m,正弦波300gal,周期0.3秒

0

2.5

5

7.5

10

0 10 20 30

動水圧(kN/m2)

水深 (m)

連成解析(H=10m) 連成解析(H=7.5m)

連成解析(H=5m) 簡略式 (H=10m)

簡略式 (H=7.5m) 簡略式 (H=5m)

実線は簡略式による推定値

直径30m,正弦波300gal,周期0.3秒

0

2.5

5

7.5

10

0 10 20 30

動水圧(kN/m2)

水深

(m)

連成解析(H=10m) 連成解析(H=7.5m)

連成解析(H=5m) 簡略式 (H=10m)

簡略式 (H=7.5m) 簡略式 (H=5m)

水深 5m

水深 7.5m

水深 10m

(a) モデル A (b) モデル B

図-3.16 連成解析と簡略式の動水圧分布の比較

次にサージタンクが弾性挙動をする場合についての動水圧について,弾性体サー

ジタンク(モデル C および D)の場合を比較する。これを図-3.17 に示す。サージタンク

が弾性挙動をする場合では,動水圧の値および分布性状は剛体を仮定した場合に

比べて大きく変化する。動水圧の値は剛体の場合より大きくなり,その傾向は応答倍

率の大きいモデル D で顕著である。また動水圧の鉛直方向の分布性状は,サージタ

ンクの中間標高にて最大値を示すようになり,これはコンクリート重力ダムにおいて弾

性挙動を考慮した場合に作用する動水圧の傾向と一致する。このときの加速度応答

は,モデル C では底部の入力に対して底部から天端に向かって単調に増大するが,

モデル D では中間に変曲点を持つ高次モードの分布性状を示す。このような動水圧,

応答加速度の性状は,相互に関連したものと考えられ,モデル D の場合ではもはや

簡略式での動水圧評価は適用できない。

動水圧のサージタンク内面の円周方向分布は,動水圧が最大値を示す断面から,

徐々に減少し,1/4 断面位置で零となり,反対側では正負が逆の値を示す。このよう

な性状は簡略式から得られる特性と同様である。これを図-3.18 に示す。

動水圧の地震動周波数に対する依存性については,正弦波(周期 0.3 秒および 1

秒)を用いたモデル A とモデル B では顕著ではなく,特にモデル A では,ほとんど見

られない(図-3.17 参照)。一方,より広い周波数帯を有する賀祥模擬波に対しては,

入力加速度の最大振幅は同じ 300gal であるが動水圧の最大値は,モデル D ではモ

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

35

デル B の 2 倍程度となっている。これらは解析モデルの応答の周波数依存性および

入力地震動の周波数特性に関連するものと考えられる。これについては,入力地震

動の周波数特性が広いガウス波を用いたケースに基づき,さらに後述する。

以上まとめれば,簡略式による動水圧の評価は,サージタンクの挙動が剛体的で

ある場合では,連成解析との整合性は良好であり,両者ともに動水圧の値や分布性

状を良く再現できるが,サージタンクの弾性挙動が顕著になると,簡略式の適用性は

低いものと考えられる。

直径10m-水深10m最大値発生時刻における動水圧分布

0

2.5

5

7.5

10

0 10 20 30 40 50

動水圧(kN/m2)

モデ

ル底

面か

らの

位置

(m)

簡略式 正弦波0.3秒

正弦波1秒 賀祥波

正弦波:剛体モデル賀祥波:弾性体モデル

○:モデルA□:モデルA◆:モデルC

直径30m-水深10m最大値発生時刻における動水圧分布

0

2.5

5

7.5

10

0 10 20 30 40 50

動水圧(kN/m2)

モデル底

面からの位

置(m)

簡略式 周期0.3秒

周期 1秒 賀祥波

正弦波:剛体モデル賀祥波:弾性体モデル

○:モデルB□:モデルB◆:モデルD

(a) モデル A(剛体)および C(弾性体) (b) モデル B(剛体)および D(弾性体)

0

5

10

15

0 300 600 900

応答加速度(gal)

高さ

(m)

径10m 径30m

モデルC

モデルD

水面

(c) 加速度応答分布,最大応答加速度時,モデル C および D

図-3.17 弾性体タンクと剛体タンクの最大動水圧分布の比較

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

36

kN/m2

kN/m2

(a) モデル A(剛体) (b) モデル B(剛体)

kN/m2

kN/m2

(c) モデル A(剛体)((a)の反対側) (d) モデル B(剛体)((b)の反対側)

kN/m2

kN/m2

(e) モデル C(弾性体) (f) モデル D(弾性体)

図-3.18 動水圧の三次元分布

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

37

次に,サージタンク内の動水圧評価における水深および入力動の方向の影響に

ついて検討する。入力動としては,より広い範囲の周波数成分に対するサージタンク

の応答を見るため,周期 0.07 秒から 10 秒以上にわたってフラットな周波数特性をも

つガウス波を用いた。ここでは,解析モデルとして地上部と地中部を含む全体モデル

の検討結果について,またこれの比較として地上部のみの部分モデルの検討結果に

ついて考察する。

まず,地上部のサージタンクの基本的な応答特性として,水平方向の入力動に対

する加速度および動水圧の時刻歴とその周期成分を図-3.19 に,地上部の加速度応

答(最大値であり,同時刻の分布ではない)を図-3.20 に示す。サージタンク天端の応

答倍率は,空虚時で約 2 倍,地上部の水深が 10mでは 3 倍程度となり,空虚時の卓

越周期は 0.057 秒(17.5Hz)であり,水深が 10m ではこれよりやや長く 0.062 秒

(16.1Hz)となる。このようなサージタンクの応答特性は,貯水の影響として妥当なもの

と考えられる。

加速度時刻歴図ガウス波-直径10m 高さ15m 水なしモデル

-300

-200

-100

0

100

200

300

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

時 間 (s)

加速度 (gal)

加速度フーリエスペクトルガウス波-直径10m 高さ15m 水なしモデル

0

50

100

150

200

0.01 0.1 1

周 期 (s)

加速度フーリエスペクト

ル(gal*s)

(a)時刻歴,モデル E,空虚時 (b)スペクトル,モデル E,空虚時

加速度時刻歴図ガウス波-水深10mモデル

-400

-200

0

200

400

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

時 間 (s)

加速度 (gal)

加速度フーリエスペクトルガウス波-水深10mモデル

0

50

100

150

200

0.01 0.1 1

周 期 (s)

加速度フーリエスペクト

ル(gal*s)

(c)時刻歴,モデル E,水深 10m (d)スペクトル,モデル E,水深 10m

加速度時刻歴図ガウス波-水深40mモデル

-400

-200

0

200

400

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

時間 (s)

加速

度 (m/s2)

加速度フーリエスペクトルガウス波-水深40mモデル

0

50

100

150

200

0.01 0.1 1

周 期 (s)

加速度フーリエスヘ

゚クト

ル(gal*s)

(e)時刻歴,モデル F,水深 40m,天端 (f)スペクトル,モデル F,水深 40m

図-3.19 サージタンクの加速度応答,水平動,天端

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

38

モデル E,F および G の動水圧分布を図-3.21 に,モデル E および F の動水圧時

刻歴,スペクトルを図-3.22 に示す。図には参照のため,モデル A(地上部のみのモ

デル,剛体,水深 10m)にガウス波を入力したケースを合わせて示す。対象としたモ

デルの諸元(径 10m)では,水深の違いが動水圧の分布性状に与える影響は大きく

なく,水深が大きくなる地中部の動水圧は水深に対してほぼ一定値となる。水平動の

場合(図-3.21 (a),(c))では,地上部においてやや弾性応答の影響が認められるが,

地中部では弾性応答の影響は認められず,また地上部の分布に与える水深の影響

も認められない。その値は簡略式に比べてやや大きいが違いは小さい。鉛直動の場

合(図-3.21 (b),(d))の水深方向の動水圧分布では,同様に,水深の影響は顕著で

はなく,地中部において弾性挙動の影響が認められる。一方,鉛直動に対する動水

圧の値は,同じ入力加速度振幅であるものの,水平動の場合に比べて 4~5 倍程度

と顕著に大きい値を示す。

なお,地震動の周期特性については,後述する。

0

5

10

15

0 100 200 300 400

応答加速度(gal)

地上

部高

さ(m

貯水なし 水深10m水深40m

注)モデル E(貯水なし,水深 10m ) および F ( 水 深40m)に対する結果

図-3.20 応答加速度分布、水平動(ガウス波)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

39

水平ガウス波-直径10m-水深条件10m及び40m

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40

最大動水圧(kN/m2)

水深 (m)

弾性体:水深10m 弾性体:水深40m

剛体:水深10m 剛体:水深40m

簡略式:水深40m 簡略式:水深10m

簡略式動水圧値算出条件 半径 r = 5m 水深 H = 40m

簡略式動水圧値算出条件 半径 r = 5m 水深 H = 10m

○:モデルE □:モデルF●:モデルA ◇:モデルG

鉛直ガウス波-直径10m-水深条件10m及び40m

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40最大動水圧(kN/m2)

水深

(m)

弾性体:水深10m 弾性体:水深40m

剛体:水深10m 剛体:水深40m

○:モデルE□:モデルF●:モデルA◇:モデルG

(a) 動水圧分布、水平動 (b) 動水圧分布、鉛直動

0

5

10

0 5 10 15 20

最大動水圧(kN/m2)

水深

(m)

弾性体:水深10m 弾性体:水深40m

剛体:水深10m 剛体:水深40m

簡略式:水深40m 簡略式:水深10m

0

5

10

0 5 10 15 20

最大動水圧(kN/m2)

水深

(m)

弾性体:水深10m 弾性体:水深40m剛体:水深10m 剛体:水深40m

(c) 動水圧分布(部分)、水平動 (d) 動水圧分布(部分)、鉛直動

図-3.21 水深および振動方向の違いによる最大動水圧分布の比較 (モデル E,F および G)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

40

(a)動水圧時刻歴,モデル E (b)動水圧スペクトル,水平動,モデル E

(c)動水圧時刻歴,鉛直動,モデル E (d)動水圧スペクトル,鉛直動,モデル E

(e)動水圧時刻歴,水平動,モデル F (f)動水圧スペクトル,水平動,モデル F

(g) 動水圧時刻歴,鉛直動,モデル F (h)動水圧スペクトル,鉛直動,モデル F

図-3.22 水平動および鉛直動に対する動水圧応答,水深 10m 位置(地上部底部)

動水圧フーリエスペクトル鉛直ガウス波-水深10mモデル

0

2

4

6

8

10

0.001 0.01 0.1 1 10

周 期 (s)

動水

圧フーリエス

ペクト

ル(k

N/m2*s)

節点番号:1050動水圧時刻歴図鉛直ガウス波-水深10mモデル

-40-30-20-10

010203040

0 0.5 1 1.5

時間 (s)

動水

圧(kN/m2)

節点番号:1050

動水圧フーリエスペクトル鉛直ガウス波-水深40mモデル

0

2

4

6

8

10

0.001 0.01 0.1 1 10

周 期 (s)

動水圧

フーリエスペクトル

(kN/

m2*s)

節点番号:1050動水圧時刻歴図鉛直ガウス波-水深40mモデル

-40-30-20-10

010203040

0 0.5 1 1.5

時間 (s)

動水

圧(kN/m2)

節点番号:1050

動水圧時刻歴図ガウス波-水深40mモデル

-10

-5

0

5

10

0 0.5 1 1.5

時間 (s)

動水

圧(kN/m2)

節点番号:1050 動水圧フーリエスペクトルガウス波-水深40mモデル

0

0.5

1

1.5

2

2.5

0.001 0.01 0.1 1 10

周 期 (s)

動水

圧フーリエスヘ

゚クト

ル(kN/m2

*s)

節点番号:1050

動水圧フーリエスペクトルガウス波-水深10mモデル

0

0.5

1

1.5

2

2.5

0.001 0.01 0.1 1 10

周 期 (s)

動水

圧フーリエスヘ

゚クト

ル(kN/m2

*s)

節点番号:1050動水圧時刻歴図ガウス波-水深10mモデル

-10

-5

0

5

10

0 0.5 1 1.5

時間 (s)

動水

圧 kN/m2)

節点番号:1050

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

41

次に,動水圧の評価方法として付加質量による方法について検討する。付加質量

を用いる方法では,モデル A の条件で,サージタンクの物性を弾性体としたモデル

A’を用いる。まず,簡略式から推定される動水圧を式(3.5)により付加質量に変換し

て,モデル壁面の要素に付加し,これを用いた応答解析(正弦波,周期 0.3 秒,振幅

300gal)を行う。解析結果の比較は,付加質量を用いる方法ではサージタンクの応答

が評価されるのみで動水圧を直接評価することができないので,サージタンク壁面に

発生する応力に着目する。

連成解析および付加質量モデル(モデルA’)を用いた応答解析から得られた円周

方向および鉛直方向の応力分布を図-3.23 に示す。連成解析および付加質量モデ

ルにより得られたタンク応力は,円周方向および鉛直方向ともに整合しない。これは,

連成解析では動水圧が壁面法線方向に作用するのに対して、付加質量モデルでは

加振方向のみに作用する慣性力としており動水圧の作用方向が異なるためである。

直線的な壁面を対象とする検討では,壁面の法線方向に付加質量と入力動を定義

することによりある程度の精度で応力評価が可能であると考えられる。一方,サージタ

ンクのような円筒形の場合では付加質量と入力動の方向を壁面法線方向に設定する

ことができず,また円周方向応力が断面内で伝達して分布形状に影響する。このよう

なことから,サージタンクの径が大きな場合では,概略の検討として応答や応力の最

大値を求める場合では付加質量を用いる方法の適用は可能であるが,大規模地震

を対象として限界状態を評価する場合では,その適用性は低いものと考えられる。

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42

要素中心位置における円周方向応力

-90

-60

-30

0

30

60

90

-200-1000100

円周方向応力 (kN/m2)

加振

方向

から

の角

度θ

)

連成解析 付加質量

圧縮(-)引張(+)

要素中心位置における鉛直方向応力

-90

-60

-30

0

30

60

90

-100 0 100 200

鉛直方向応力 (kN/m2)

加振

方向

から

の角

度θ

)連成解析 付加質量

引張(+)圧縮(-)

(a) 円周方向応力 (b) 鉛直方向応力

凡例

水深条件10m

モデル高さ15m

着目位置

5.63m

加振方向

加振方向からの角度 θ(+)

図-3.23 連成解析と付加質量モデルによるタンク壁の発生応力の比較

3) 動水圧の特性

前節において,動水圧の評価方法の観点から、サージタンクの形状,弾性挙動,

水深および入力地震動の方向の影響について検討した。ここでは,さらに入力地震

動の周期特性依存性について考察する。

サージタンクの基本応答周期を表-3.8 に示す。

サージタンクの構造体としての固有周期は,内部の貯水による動的相互作用の結

果動水圧が生じ,やや長くなる。動水圧の卓越周期は,水平動が卓越する場合では,

構造体との連成作用によって発生するため構造体の固有周期と一致する。一方,鉛

直動に対してはサージタンクそのものの振動ではなく,貯水の底部と表面を往復する

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43

振動の周期が卓越する。この周期は地盤中の重複波と同じく以下にて算定される。

VHTp

4 (3.6)

ここに,Tp:卓越周期,H:全水深,V:水中の弾性波速度(1440m/s)

これを,モデル E および F,G に適用すれば,それぞれ 0.028 秒および 0.11 秒と

なり,評価された動水圧特性に近いものとなる(図-3.22 参照)。

以上のように,動水圧の周期特性は,地震動の方向に応じて動的相互作用の周

期あるいは貯水高さの周期によりほぼ規定されるものと考えられる。これは,貯水深さ

の卓越振動周期が地震動の周期と一致する場合や構造物の応答周期と一致する場

合では,共振が発生する可能性を示しているものと考えられ,この場合では鉛直動の

影響は特に顕著になる。図-3.21 では水深の異なるモデルの動水圧分布は,水面か

ら同じ水深を比べた場合に差が小さいことが示されたが,一方上記のように動水圧の

周期特性では水深の影響により両者は異なりこれが構造物の応答に影響を与える可

能性が示唆された。このことから,サージタンクのケーススタディでは,地下部の貯水

を含めたモデル化を行い,動水圧によるサージタンク応答への影響検討を行うことと

する。

表-3.8 サージタンクの周期特性

内容 モデル 周期(周波数) 水平地震動に対する応答

サージタンクの挙動 モデル E(径 10m,高さ 15m,空虚) 0.057 秒(17.5Hz) サージタンクの挙動 モデル E(径 10m,高さ 15m,水深 10m) 0.062 秒(16.1Hz) 水平地震動による動水圧 モデル E(径 10m,高さ 15m,水深 10m) 0.062 秒(16.1Hz) 水平地震動による動水圧 モデル E(径 10m,高さ 15m,水深 40m) 0.062 秒(16.1Hz)

鉛直地震動に対する応答 鉛直地震動による動水圧 モデル E(径 10m,高さ 15m,水深 10m) 0.037 秒(33.3Hz) 鉛直地震動による動水圧 モデル F(径 10m,高さ 15m,水深 40m) 0.11 秒(9.1Hz) 貯水高さの固有振動数 水深 10m 0.028 秒(35.7Hz)

貯水高さの固有振動数 水深 40m 0.11 秒(9.1Hz)

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44

(3) スロッシングに関する検討

地震時に露出型サージタンクに発生するスロッシングについて,以下の項目に着

目し,構造物・貯水連成解析に基づき検討する。検討では,サージタンクの形状や物

性,入力地震動をパラメータとし,解析ではサージタンク本体をシェル要素,貯水を

流体要素によりモデル化し,解析プログラムには NASTRAN を用いる。検討条件を表

-3.9 に示す。検討に用いるモデルおよび入力地震動を図-3.14(a), (b) および図

-3.15に示す。なお,NASTRANでは水面の変形は直接には算定されないが,水面位

置において大気圧を考慮した動水圧が算定され,これは解析上の水面揺動を示すも

のであり,これをここではスロッシングと考える。

①タンク形状の影響

②タンクの水深の影響

③入力地震動の周波数特性の影響

表-3.9 サージタンク内のスロッシング関する検討ケース

モデル (図-2.14 a),b)参照)

諸元 物性 入力動 (図-3.15 参照)

SA 高さ 15m 直径 10m 水深 10m

SB 高さ 15m 直径 30m 水深 10m

剛体を仮定,自重は考慮しない

1)周期 0.3 秒および 1 秒,振幅 300gal の正弦波

2)水平(X 方向),入力位置はサージタンク底面

SC 高さ 15m 直径 10m 水深 10m

SD 高さ 15m 直径 30m 水深 10m

弾性体 弾性係数

E=2.35×104 N/mm2 ポアソン比 ν=0.20 質量密度 ρ =2.45 t/m3

壁厚 0.8m

1) 賀 祥 模 擬 波 , 振 幅300gal

2)水平(X 方向),入力位置はサージタンク底面

検討結果として,モデル SA および SB(剛体サージタンク)における水深 0m(水面),

5m,10m位置の動水圧時刻歴を図-3.24 に示す。モデル SB では水面から底部の広

い範囲でスロッシングに起因する圧力変動が発生し,これは入力地震動が無くなった

後も継続する。一方,モデル SA では,そのような圧力変動は水面では見られるもの

の,水面下では明瞭ではない。それぞれスロッシング周期は簡易式(式(3.7))2)により,

モデル SA およびモデル SB に対して,それぞれ 3.3 秒および 6.2 秒と推定され,これ

は実際に生じている圧力変動の周期と整合する。両者の圧力変動が,入力動,周期

1 秒の正弦波においてより明瞭であるのは,スロッシング周期に近いためと考えられ

る。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

45

RH

Rg

T

841.1tanh841.1

22

(3.7)

ここに,T:スロッシング周期,R:貯槽半径,H:貯槽水深,g:重力加速度

一般に,スロッシングの程度は貯槽形状の影響を受け,モデル SB のように径/水

深比が大なるほど顕著であり 2),これはここでの検討結果と一致する。スロッシングは

その程度が大きくなると,貯槽からの溢水や貯槽天井構造物の被害につながることが

考えられ,これにはスロッシング高さが影響する。スロッシング高さは,式(3.8)により

算定できる(Housner 理論式)2)。

1

841.1coth408.0

2

Rg

RH

R

h

(3.8)

R

H

R

g

R

H

R

SVh

841.1tanh841.1

841.1tanh531.1

(3.9)

ここに,η:スロッシングによる最大波高,ω:スロッシング円振動数,H:水深,R:半

また,スロッシングの最大波高(ηmax)は,速度ポテンシャル理論より以下の式によ

り算定できる。

VSR

HT

841.1tanh245.0max (3.10)

式(3.8)および式(3.9)を検討モデルの諸元および入力動として正弦波(周期0.3秒,

振幅 300gal)に適用した結果を図-3.25 に示す。これよりモデル SA およびモデル SB

のスロッシング波高は,およそ 0.74m および 1.0m~1.15m と算定される。一方,連成

解析結果(図-3.24 参照,周期 0.3 秒の場合の水深 0m での動水圧の変動より算定)

の水面変動振幅は,それぞれ 0.3m および 0.6m であり,前記に比べて 1/2 程度であ

る。このような差は解析手法の仮定に起因するものと考えられる。また同図から,スロ

ッシング波高とサージタンクの諸元の関連として,水深が大になるとスロッシング波高

は一定値に収束する傾向があり,また径が大であるほどスロッシング波高は大であり,

また,スロッシングの周期は,径が大であるほど長くなる。

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46

剛体-直径10mモデル-正弦波300gal 水深=0m 動水圧時刻歴

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40

時 間 (s)

動水

圧 (kN/m2)

周期0.3秒周期1.0秒

剛体-直径10mモデル-正弦波300gal 水深=5m 動水圧時刻歴

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40

時 間 (s)

動水圧

(kN

/m2

)

周期0.3秒

周期1.0秒

剛体-直径10mモデル--正弦波300gal 水深10m 動水圧時刻歴

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40

時 間 (s)

動水圧 (kN/m2)

周期0.3秒周期1.0秒

剛体-直径30mモデル-正弦波300gal 水深=0m 動水圧時刻歴

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40

時 間 (s)

動水圧

(kN/m2)

周期0.3秒周期1.0秒

剛体-直径30mモデル-正弦波300gal 水深=5m 動水圧時刻歴

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40

時 間 (s)

動水圧

(kN/m2)

周期0.3秒

周期1.0秒

剛体-直径30mモデル--正弦波300gal 水深10m 動水圧時刻歴

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40

時 間 (s)

動水

圧 (kN/m

2)

周期0.3秒周期1.0秒

上から順に,水深 0m,5m,10m の動水圧を示す。

(a) モデル SA(径 10m) (b)モデル SB(径 30m)

図-3.24 スロッシングの検討,動水圧の時刻歴

Sv=90cm/s

0

500

1000

1500

50 100 150

水面揺動,最大波高(cm)

水深

(cm

)

D=10m D=30m D=10m D=30

中つぶし:ハウズナー理論白抜き:ポテンシャル理論

入力動は,Sa=300gal,周期 0.3 秒の正弦波として,これより Sv=90cm/s とした

(a) スロッシング最大波高(水深 10m)

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47

水深10m

0

10

20

30

40

50

0 2 4 6 8 10

スロッシング周期(秒)

径(m

0

1

2

3

4

5

径/

水深

(b) スロッシング周期

図-3.25 スロッシング波高の推定

次に,入力地震動をより実地震動に近いものとした場合のスロッシング特性につい

て考察する。図-3.26 および図-3.27 は,モデル SC(径 10m)およびモデル SD(径

30m)に対して照査用下限スペクトルに基づく模擬地震動を 20 秒間入力した場合の

動水圧の特性を示している。この場合では,地震動終了後に水面での動水圧変動が

継続してスロッシングの兆候を見せているものの,前述(図-3.24 参照)の場合とは異

なり明瞭ではなく,特にサージタンク径の小さい SD モデルの場合がより不明瞭である。

SC モデルでは,水面での動水圧にスロッシング周期に相当するスペクトルピークが

認められるが,底部では認められない。また SD モデルの動水圧スペクトルは,水面,

底部ともそのピークは明瞭でない。

これについて入力動の加速度応答スペクトル(図-3.15 参照)から推定される応答

加速度,スロッシング波高を式(3.10)を用いて検討した。結果を表-3.10 に示す。両

者の差はモデル SD で顕著であり,前述のようにモデル SD の応答モードが中間標高

で大きく(図-3.17 参照)なり,式(3.10)において想定される応答性状と大きく異なるた

めと考えられる。

表-3.10 スロッシング波高,近似式と連成解析の比較 モデル スロッシン

グ周期 応答加速度 (推定)

応答速度 (推定)

スロッシング最大波高 式(3.10)

スロッシング最大波高 連成解析

モデル SC 3.3 秒 80gal 260cm/s 150cm 80cm モデル SD 6.2 秒 30gal 190cm/s 250cm 40cm

ケーススタディでは内径 7m,高さ 22.5mのサージタンク(表-3.3 参照)を対象として

おり,この場合の式(3.8)や式(3.9)から推定されるスロッシング周期および波高は,

2.7 秒(0.37Hz)および 0.6~0.7m となる。一方,構造体としての周期は,0.13 秒

(7.5Hz)であり,このためスロッシング周期と離れていることから,スロッシングの影響

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

48

は受けづらいものと考えられる。

弾性体-直径10mモデル-水深10m

-20

-10

0

10

20

0 10 20 30 40

時 間 (s)

動水圧

(kN/m2)

弾性体-直径10m-水深10m

0

10

20

30

40

50

60

0.01 0.1 1 10周 期 (s)

フー

リエ

スペ

クトル

(kN/m2・

s)

スロッシング周期3.3秒

(a) 動水圧時刻歴,水深 0m(水面) (b) 動水圧スペクトル,水深 0m(水面)

弾性体-直径10mモデル-水深10m

-20

-10

0

10

20

0 10 20 30 40

時 間 (s)

動水

圧 (kN/m2)

弾性体-直径10m-水深10m

0

10

20

30

40

50

60

0.01 0.1 1 10周 期 (s)

フー

リエ

スペ

クトル

(kN/m2・

s)

(c) 動水圧時刻歴,水深 10m(底部) (d) 動水圧スペクトル,水深 10m(底部)

図-3.26 スロッシング特性,モデル SC(径 10m)

弾性体-直径30mモデル-水深10m

-20

-10

0

10

20

0 10 20 30 40

時 間 (s)

動水圧 (kN/m2)

弾性体-直径30m-水深10m

0

10

20

30

40

50

60

0.01 0.1 1 10周 期 (s)

フー

リエ

スペク

トル

(kN/m2・s) スロッシング周期

6.2秒

(a) 動水圧時刻歴,水深 0m(水面) (b) 動水圧スペクトル,水深 0m(水面)

弾性体-直径30mモデル-水深10m

-60

-40

-20

0

20

40

60

0 10 20 30 40時 間 (s)

動水

圧 (kN/m2)

弾性体-直径30m-水深10m

0

10

20

30

40

50

60

0.01 0.1 1 10周 期 (s)

フー

リエ

スペ

クトル

(kN/m2・

s)

(c) 動水圧時刻歴,水深 10m(底部) (d) 動水圧スペクトル,水深 10m(底部)

図-3.27 スロッシング特性,モデル SD(径 30m)

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49

3.2.2 独立型取水塔

独立型取水塔に作用する動水圧特性を把握するために,実験および解析による検

討を行った。検討結果については,総合調査報告書第1編の9章に取りまとめてい

る。

これら模型実験および解析結果より明らかになった内容は以下のとおりである。

(1) 取水塔模型外壁に作用する動水圧の鉛直方向分布は,水深とともに増加する形

状となる。模型実験結果は,模型を剛体と仮定した外部水との連成解析による結

果と一致するが,Westergaard 式より小さな値を示す。

(2) 取水塔模型内壁に作用する動水圧の鉛直方向分布は,水深とともに増加する形

状となる。模型実験結果は,模型を剛体と仮定した内部水との連成解析結果と一

致する。また,実験材料の物性を考慮した解析結果およびWestergaard式での結

果では,基部を除き一致する。

(3) 動水圧の水平方向分布は,取水塔外壁では模型中心から離れるに従い端部付

近での逸散により動水圧が減少する傾向を示し,解析結果と実験結果は一致す

る。

(4) 取水塔内壁では,水が拘束されているため逸散せず動水圧が一様な水平方向

分布を示し,模型を剛体と仮定した解析結果と実験結果は一致する。実験材料

の物性を考慮した解析では,模型中心から周辺に向って漸減する分布を示す。

これは,模型端部に設置した合板の弾性挙動の影響により,内部の動水圧が減

少したものである。

(5) 以上より,取水塔の解析モデル作成においては,外壁に作用する動水圧は構造

物・貯水連成解析により,内壁に作用する動水圧は,Westergaard 式により鉛直

方向の分布を求め,水平方向にはこれを一様に分布するものとして評価する。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

50

3.3 RC 構造塔型設備を構成する材料の非線形特性

3.3.1 サージタンク

(1) RC 構造サージタンクの非線形解析

大規模地震を対象とした RC 構造サージタンクの耐震性能評価においては,RC 構

造の損傷を評価することが必要と考えられ,これには非線形動的解析が用いられる。

RC 構造物の非線形解析には大きく分けて,材料の応力-ひずみ関係に非線形特

性を与えた解析(材料非線形解析)と,部材要素の曲げモーメント-変形(曲率)関

係に非線形特性を与えた解析(部材非線形解析)の2つに分けられる。

材料非線形解析は,モデル化が複雑で長い演算時間を必要とするが,部位ごとの

コンクリートのひび割れの発生状況や鉄筋の降伏-破壊過程等,耐震性能照査上

のより多くの情報を得ることが可能である。一方, 部材非線形解析は,時刻歴応答

に対する耐荷力照査を要素レベルで行え,モデル化がシンプルであることから比較

的短い演算時間で済むという利点があるが,多方向入力下で残留変形等を算定する

場合や軸力が大きく変動するような場合には適用が困難である。

露出型サージタンクは円筒のシェル状構造で,常時(非地震時)の応力状態は,

円周方向は内水圧による引張応力,鉛直方向は自重による圧縮応力となる。一方,

地震時応力状態は,地震荷重による地上の梁振動に動水圧による円周方向応力が

加わり,複雑な曲げ応力状態となることが想定される。また,貯水による壁面への動

水圧は水平地震動および鉛直地震動により発生し,その作用方向は周方向に一様

ではなく,振動方向によって常に変動している。このため平面保持の仮定に基づく部

材非線形モデルの適用は難しく,コンクリートおよび鉄筋,それぞれの非線形特性を

考慮した解析が適切であると考えられる。 (2) RC 材料の非線形特性

RC 構造物の非線形解析では,その精度は用いる材料構成則に大きく依存し,精

度の高い解析結果を得るためには,ひび割れの発生や鉄筋の降伏など,材料の損

傷状況をできる限り忠実に再現可能な構成則が不可欠である。このため,ひび割れ

下でのコンクリートや鉄筋の個々の材料挙動モデル(材料非線形特性)に加え,これ

らの材料挙動モデルを組み合わせたひび割れ下での挙動を表現する構成則が必要

となる。また地震時の動的解析では,材料の履歴特性を適切に表現でき,繰り返し応

力変動に対しても安定した挙動が得られる材料構成則が必要となる。

コンクリート単体の非線形特性は,圧縮側では応力の増加とともにひずみが増大

する非線形の応力-ひずみ関係を示し,ひび割れが発生した後には,ひび割れ直

角方向の剛性が低下する(図-3.28 参照)。一方,引張側では発生応力が引張強度

に達するまでは線形の応力-ひずみ関係を示し,ひび割れが発生し始めると引張軟

化挙動を示して,完全にひび割れが入る(この状態を限界ひずみという)と応力を負

担しなくなる(図-3.28 参照)。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

51

鉄筋単体の非線形特性は,圧縮・引張側ともに発生応力が降伏強度に達するまで

は線形の応力-ひずみ関係を示し,降伏後の剛性はほぼ 0 となる(図-3.29 参照)。

RC では,これらの単体材料の非線形挙動に加え,ひび割れ発生とともにコンクリ

ートと鉄筋が相互に影響を与え,単体とは異なる非線形挙動を示す。

RC 構造物の非線形解析の分布ひび割れモデルによく使われている RC 材料の非

線形特性の構成則として,岡村・前川らの構成則 4)がある。これは,時刻歴応答解析

に適用可能であり,履歴特性を含めた RC 材料の非線形特性を表現した構成則であ

る。以下に,これに基づくコンクリートの圧縮・引張挙動のモデル化および鉄筋のモデ

ル化について,その概要をまとめる。

コンクリートの圧縮挙動(図-3.28 a)参照)は,ひび割れたコンクリートの圧縮剛性が,

ひび割れのないコンクリートの一軸圧縮剛性より小さくなる影響を,ひび割れ直角方

向の引張ひずみの関数としてモデル化している。

引張載荷時のコンクリートの平均挙動(図-3.28 b)参照)は,ひび割れ発生後にお

いて鉄筋との付着伝達により,コンクリートは局所的に引張力を分担する。このコンク

リートが分担する引張のモデル化には,一般に Tension Stiffening モデルが用いられ

る。

ひび割れせん断方向のモデル化には,式(3.11)に示すひび割れ面での応力伝

達モデルとひび割れ間のコンクリートの剛性を組み合わせたモデルを用いる。

crc GG

G11

1

(3.11)

ここに, cG :ひび割れのないコンクリートのせん断剛性

crG :ひび割れ面でのせん断剛性

鉄筋のモデル化には,鉄筋平均挙動モデル(図-3.29 参照)を用いている。これは,

ひび割れ発生後のひび割れ間の鉄筋応力分布を三角関数に仮定し,コンクリートの

Tension Stiffening と組み合わせることにより,鉄筋の平均応力-平均ひずみ関係を

導いたモデルとなっている。これにより,平均応力-平均ひずみ関係に非線形性が

現われる時の鉄筋の平均応力(平均降伏応力)が鉄筋単体の降伏強度より低いこと

が解析的に取り込まれる。

大規模地震を対象とする露出型サージタンクのケーススタディでは,RC 構造の非

線形特性として,ここで整理したコンクリートおよび鉄筋の材料非線形特性を考慮す

ることとして,これらの材料構成則はひび割れの発生や鉄筋の降伏など,材料の損傷

状況をできる限り忠実に再現可能な構成則を適用して行う。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

52

3.3.2 独立型取水塔

独立型取水塔で設定する材料の非線形特性については,前節で示したサージタ

ンクと同様に設定することを基本とした。

0 ~

0.1

引張破壊面に垂直なひずみせ

ん断

弾性

係数

の低

減係

cf

cf

0

ひび割れたコンクリートの圧縮挙動

ひび割れのないコンクリートの1軸圧縮挙動

10.0 50.0

6.0

引張側

圧縮側

c

(a) コンクリート圧縮挙動のモデル化

c

tutf

tf

tu

0

(b) コンクリート引張挙動のモデル化(Tension Stiffening)

図-3.28 コンクリートの非線形特性

2yy1y

2ytf

ytf

ytf

sE

1E

鉄筋平均挙動

鉄筋単体挙動

0

図-3.29 鉄筋引張挙動のモデル化(平面応力ひずみ関係)

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53

3.4 まとめ

本章では,露出型サージタンクおよび独立型取水塔の耐震性能評価のケーススタ

ディに関して,ケーススタディ地点を選定し,次にケーススタディに用いる手法に関わ

る調査として,サージタンクに作用する地震荷重としての動水圧の特性や耐震性能

評価のための解析モデルに適用する非線形特性について検討した。

結論を要約すると,以下のとおりである。

(1) 露出型サージタンクの内部壁面に作用する動水圧評価は,直接的に動水圧

を評価でき,形状への適用性の高い構造物・貯水連成解析の適用性が高い。

一方,付加質量を適用する場合では,振動方向と動水圧の作用方向は一致

するので,壁面の法線方向に動水圧が作用する円形断面の場合では注意が

必要である。また,鉛直動による動水圧の影響を考慮する場合では,サー

ジタンクのモデル化や地震動の設定に当たっては,地上部ばかりでなく地

中部の貯水,また鉛直方向地震動を考慮する必要がある。さらに,大規模

地震動を対象とする動的解析では,RC の損傷状況をできる限り忠実に再

現できるコンクリートおよび鉄筋の材料非線形特性を用いた解析を実施す

ることが望ましい。 (2) 独立型取水塔の耐震性能照査では,外壁に作用する動水圧は構造物・貯水

連成解析により,内壁に作用する動水圧は,Westergaard 式により鉛直方

向の分布を求め,水平方向にはこれを一様に分布するものとして評価する

ことができる(総合調査報告書第 1 編第 9 章参照)。また,大規模地震動

を対象とする動的解析ではサージタンクと同様,RC の損傷状況をできる

限り忠実に再現できるコンクリートおよび鉄筋の材料非線形特性を用いた

解析を実施することが望ましい。

参考文献

1) (社)ダム・堰施設技術協会:ゲート総覧Ⅰ~Ⅴ

2) (社)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説,2009

3) 国土交通省国土技術政策総合研究所:大規模地震に対するダムの耐震性能照査に関する

資料,国土技術政策総合研究所資料,No.244,2005.3

4) 岡村甫,前川宏一:鉄筋コンクリートの非線形解析と構成則,技報堂出版,1991

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

54

4. ケーススタディに用いる入力地震動の設定

塔型設備のケーススタディに用いるレベル 2 地震動は,震源を特定せずに策定す

る地震動として照査用下限加速度応答スペクトル 1),2)(以下,照査用下限スペクトルと

いう)に基づき設定する。サージタンクは山体の頂部に位置していることから,地盤の

応答によって地震動が増幅する場合がある(総合調査報告書第 1 編図-2.12)ので,こ

れを検討する。また,取水塔はダムの直上流部に位置して,ダム基礎と同様の岩盤上

に設置されることから前記照査用下限スペクトルをそのまま適用する。以下,サージタ

ンクの入力地震動に関する検討結果を示す。 ここでサージタンクに直接入力するケースをここでは原地震動ケースという。また,サ

ージタンクが設置される山体の下部で地震動を定義する場合では,地形による影響を

考慮してサージタンク地点での地震動として設定するケースを地形考慮地震動ケース

という。

4.1 照査用下限加速度応答スペクトルに基づく地震動 照査用下限スペクトルに基づく地震動を設定するためには,位相特性が必要となる。

ここでは,対象地盤が堅硬であることから,同等な岩盤条件であるコンクリートダムにお

ける地震観測記録の位相特性として,賀祥ダムにおける地震観測記録(2000 年鳥取

県西部地震)を用いる。照査用下限スペクトル,賀祥ダムにおける観測地震動,これら

に基づき作成した模擬地震動(原地震動ケース)のスペクトルおよび模擬地震動の時

刻歴を,それぞれ図-4.1,図-4.2,図-4.3 および図-4.4 に示す。図-4.3 より,作成した

地震動の応答スペクトルは目標の応答スペクトルとほぼ一致する。

10

100

1000

0.01 0.1 1 10周期(s)

加速

度応

答ス

ペク

トル

(gal) 水平動

鉛直

図-4.1 照査用下限加速度応答スペクトル(H20)2)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

55

地震波 賀祥波 南北方向(実測19秒~48秒29秒間)

-600

-300

0

300

600

0 5 10 15 20 25 30時間(s)

加速

度(g

al)

最大449gal 最小-528gal

地震波 賀祥波 東西方向(実測19秒~48秒の29秒間)

-600

-300

0

300

600

0 5 10 15 20 25 30時間(s)

加速

度(g

al)

最大494gal 最小-531gal

地震波 賀祥波 鉛直方向(実測19秒~48秒29秒間)

-600

-300

0

300

600

0 5 10 15 20 25 30時間(s)

加速

度(g

al)

最大485gal 最小-321gal

図-4.2 賀祥ダムにおける観測地震動

照査用下限加速度応答スペクトル

10

100

1000

0.01 0.1 1 10周期(s)

加速

度応

答スペ

クト

ル(gal)

下限スペクトル水平

模擬波南北

a) 水平方向(南北波位相)

照査用下限加速度応答スペクトル

10

100

1000

0.01 0.1 1 10周期(s)

加速

度応

答ス

ペクト

ル(ga

l)

下限スペクトル水平

模擬波東西

b) 水平方向(東西波位相) 照査用下限加速度応答スペクトル

10

100

1000

0.01 0.1 1 10周期(s)

加速

度応

答ス

ペクト

ル(ga

l)

下限スペクトル鉛直

模擬波鉛直

c)鉛直方向

図-4.3 目標スペクトルとの整合性(観測地震動方向)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

56

模擬地震波 水平方向(賀祥波南北方向)

-500

-250

0

250

500

0 5 10 15 20 25 30

時間(sec)

加速

度(g

al)

最大256gal,最小-329gal

模擬地震波 水平方向(賀祥波東西方向)

-500

-250

0

250

500

0 5 10 15 20 25 30

時間(sec)

加速

度(g

al)

最大300gal,最小-328gal

模擬地震波 鉛直方向(賀祥波鉛直方向)

-500

-250

0

250

500

0 5 10 15 20 25 30

時間(sec)

加速

度(g

al)

最大258gal,最小-200gal

図-4.4 作成した地震動(原地震動ケース),時刻歴(水平および鉛直方向)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

57

4.2 サージタンク地点の地形の影響を考慮する地震動

対象のサージタンクは,山体の上部に設置されている。このため,地震による山体

の応答によって,サージタンク設置地点の地震動が変化することが想定される。ここで

は,4.1 節にて評価した地震動を水路の最下部の平坦部(図-4.5 ●印)で発生するも

のとして,サージタンクが設置される山体モデルによる地震動の補正(地形による補

正)を検討した。すなわち,前節で算定した模擬地震動を解放基盤面上にて定義し,

これを山体モデルの底部相当まで引き戻し,これを山体モデル底部の入力地震動とし

て山体の応答を求め,サージタンク位置での地震動を抽出する。山体モデルの物性

値は,サージタンク地点の地質状況を,建設時の地質状況やボーリング資料に基づき

設定した。 検討に用いた山体モデル,物性値および補正フローを図-4.5,表-4.1 および図-4.6

に示す。

700m 600m

水圧鉄管

固定台

サージタンク

461.8m

図-4.5 地形による増幅特性の検討モデル

表-4.1 解析モデルの物性

岩盤等級 せん断波 速度(m/s)

せん断弾性係数(N/mm2)

密度 (g/cm3)

減衰定数 (%)

CM(表層,厚さ10m)

1000 2500 2.5 5

CH(深部) 1700 7500 2.6 5

地震動の設定位置

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58

解放基盤面にて地震動設定(下限加速度応答スペクトル)

Shakeによるモデル底部相当地盤への引き戻し

山体モデルの応答解析

サージタンク位置での地震動の抽出

図-4.6 地震動の補正フロー

まず,地震動水平動(図-4.4 参照)の山体モデルへの入力方向の影響を検討する

ため,水路軸と地震動(賀祥波東西方向)をあわせたケース(Case 1),水路軸と地震

動(賀祥波南北方向)をあわせたケース(Case 2)を検討した。検討ケースを表-4.2 に

示す。

表-4.2 地震動の入力方向の検討,検討条件

Case 解放基盤面における地震動の設定方法

(模擬地震動は,照査用下限加速度応答スペクトル(H20),賀祥ダム

観測地震動の位相により算定)

Case 1 X 軸方向:地震動(東西方向位相)

Y 軸方向:地震動(南北方向位相)

Z 軸方向:地震動(鉛直方向位相)

Case 2 X 軸方向:地震動(南北方向位相)

Y 軸方向:地震動(東西方向位相)

Z 軸方向:地震動(鉛直方向位相)

検討結果として,各ケースの地震動時刻歴,最大加速度および加速度応答スペクト

ルの比較を,それぞれ図-4.7,表-4.3 および図-4.8 に示す。これより,両ケースを比較

すると,加速度時刻歴ではそれぞれ用いた位相特性を反映した履歴を示すが,一方,

加速度応答スペクトルでは,位相特性が異なっても顕著な違いは認められない。以下,

Case 1 の特徴を示す。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

59

まず最大加速度で比較すれば,入力地震動(図-4.4 参照)は管路軸水平,直交水

平,鉛直の順に,329gal,328gal,258gal に対して,応答振動は,241gal,253gal,232gal とやや小さくなる。これを加速度応答スペクトルでみると,全体としては補正に

よってスペクトル強度がやや低下する傾向を示す。また水路軸方向の一部周期帯で

やや顕著な減衰が生じ,また,水路軸直交方向や鉛直方向の一部では増幅が生じる。

水平方向の振動特性としてはサージタンクの固有周期が主要な周期となるが,これは

現地における常時微動計測から 0.13 秒程度が卓越し,地形による補正後はこのよう

な周期領域では水路軸方向でやや地震動が低減する。また,鉛直方向の卓越振動と

してサージタンク内の貯水高さに応じた振動があり,これは貯水高さが約 58m である

ことを考慮すると 0.16 秒となるが,鉛直方向ではこのような周期帯でやや低減が生じ

る。

水平水路軸方向(X方向)

-300

0

300

0 5 10 15 20時間(s)

加速

度(g

al)

水平水路軸方向(X方向)

-300

0

300

0 5 10 15 20時間(s)

加速

度(g

al)

水平水路軸直交方向(Y軸方向)

-300

0

300

0 5 10 15 20時間(s)

加速

度(g

al)

水平水路軸直交方向(Y方向)

-300

0

300

0 5 10 15 20時間(s)

加速

度(g

al)

鉛直方向(Z方向)

-300

0

300

0 5 10 15 20時間(s)

加速

度(g

al)

鉛直方向(Z方向)

-300

0

300

0 5 10 15 20時間(s)

加速

度(g

al)

a) Case 1 b) Case 2

図-4.7 サージタンク位置での地震動の比較(地形考慮地震動ケース)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

60

表-4.3 サージタンク位置での応答加速度の最大振幅

応答加速度の最大振幅(gal) 方向

Case 1 Case 2

水平水路軸方向(X 方向) 241.0 249.9

水平水路軸直交方向(Y 方向) 252.6 239.4

鉛直方向(Z 方向) 231.5 206.8

X方向(水平水路軸方向)

10

100

1000

0.01 0.1 1 10

周期(Sec)

加速

度応

答ス

ペク

トル

(gal

)

調圧水槽位置河床位置照査用下限加速度応答スペクトル

X方向(水平水路軸方向)

10

100

1000

0.01 0.1 1 10

周期(Sec)

加速

度応

答ス

ペク

トル

(gal

)

調圧水槽位置

河床位置

照査用下限加速度応答スペクトル

Y方向(水平水路軸直交方向)

10

100

1000

0.01 0.1 1 10

周期(Sec)

加速

度応

答ス

ペク

トル

(gal

)

調圧水槽位置

河床位置

照査用下限加速度応答スペクトル

Y方向(水平水路軸直交方向)

10

100

1000

0.01 0.1 1 10

周期(Sec)

加速

度応

答ス

ペク

トル

(gal

)

調圧水槽位置

河床位置

照査用下限加速度応答スペクトル

Z方向(鉛直方向)

10

100

1000

0.01 0.1 1 10

周期(Sec)

加速

度応

答ス

ペク

トル

(gal

)

調圧水槽位置河床位置照査用下限加速度応答スペクトル

Z方向(鉛直方向)

10

100

1000

0.01 0.1 1 10

周期(Sec)

加速

度応

答ス

ペク

トル

(gal

)

調圧水槽位置河床位置

照査用下限加速度応答スペクトル

Case 1 Case 2

図-4.8 サージタンク位置での地震動応答スペクトルの比較

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

61

4.3 サージタンクのケーススタディに用いる地震動

サージタンクは,設計・施工上の関係から,山体の上部や尾根に設置される。このた

めサージタンク位置での地震動は,解放基盤面で定義される地震動に対して地形の

影響により変化することが想定される。このような場合のサージタンク位置での地震動

は,サージタンクを含む山体の地震応答解析により評価できる。 一方,地震動を設定する解放基盤面については,サージタンク地点には広い範囲

に堅硬な岩盤が分布し,このためケーススタディでは発電所が位置する低標高部(図

-4.5 参照)を解放基盤面として定義できるが,それ以外の定義も考えられやや任意性

がある。このため地形による影響評価方法を厳密に定めるには,現地での詳細な調査

等が必要になる。 また,地形影響を考慮した場合の地震動は,サージタンクの固有周波数を含む周

波数領域で,原地震動のスペクトルに対してやや顕著な減衰を示した。このような特

性は,地形に加えて検討に用いる物性値に依存するものと考えられるが,現時点での

原位置における物性値に関わる資料はほとんど無く,このためこのような影響考慮の

妥当性を検証することが難しい。このため,原地震動ケースの場合のほうが,より不確

定な要因を含まないものといえる。 以上のことから,ケーススタディでは, サージタンク設置位置にて地震動を設定す

ることとして,原地震動ケース(図-4.4 参照)にてケーススタディを実施する。原地震動

ケースおよび地形影響地震動ケースの地震動設定のイメージを図-4.9 に示す。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

62

ライザー管

梁要素,梁にてサージタンク内壁と連結

RC構造体

積層シェルおよびリバー要素にてモデル化非線形性を考慮

地表面

地盤結合部

バネ要素にて連結常時微動計測結果を考慮

地盤,剛体を仮定

貯水

音響要素地震動の入力(水平,鉛直)

地震波 賀祥波 南北方向(実測19秒~48秒29秒間)

-600

-300

0

300

600

0 5 10 15 20 25 30時間(s)

加速

度(g

al)

最大449gal 最小-528gal

RC構造

a) 原地震動ケース

700m 600m

水圧鉄管

固定台

サージタンク

461.8m

地震波 賀祥波 南北方向(実測19秒~48秒29秒間)

-600

-300

0

300

600

0 5 10 15 20 25 30時間(s)

加速

度(g

al)

最大449gal 最小-528gal

引き戻し

水平水路軸方向(X方向)

-300

0

300

0 5 10 15 20時間(s)

加速

度(g

al)

地形を考慮した場合の地震動

原地震動

b) 地形の影響を考慮する地震動ケース

図-4.9 サージタンク地点における地震動の設定方法

参考文献

1) 国土交通省国土技術政策総合研究所:大規模地震に対するダムの耐震性能照査に関する資

料,国土技術政策総合研究所資料,No.244,2005.3

2) 三石真也,島本和仁:大規模地震に対するダム耐震性能照査について,ダム技術,No.274,

2009

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

63

5. サージタンクのケーススタディ

5.1 ケーススタディ対象構造物の概要

露出型サージタンク(以下,単にサージタンクという)のケーススタディでは,既存の

サージタンクのうち地震の影響を受け易いものとして地上部高さ(H)が大きく,またサ

ージタンク径(D)との比(H/D)の大きな地点を選定することとした。既存のサージタン

クに関する調査では,材質別では,RC 製が全体の 88%を占めており,RC 製では地

上部の高さは 15m 未満のものが 7 割である。また,H/D でみると,RC 製では,H/D<2 のものが 8 割以上を占めている。これより,材質としては RC 製を選定し,地上部

高さが 22.5m である地点をケーススタディ地点として選定した。 対象のサージタンクは,円筒形(内径 7.0m,高さ 72.75m)の RC 製で,全体の 1/3

にあたる 22.5m が地上に露出して,H/D は 3.2 と大きく,2/3 が地下の岩盤内に配置

されている。サージタンクの壁厚さは,天端付近の一部を除き 0.6m であり,鉄筋は,

周方向と鉛直方向に配筋されている。また,付属構造物として,サージタンク内に鋼製

ライザ管(内径 2.7m)が設置されている。 サージタンク埋設部の岩盤状況は,地表から 2.5m 程度は,CL 級岩盤,それ以下

は CM 級以上岩盤と評価されている。 サージタンクの構造概要を図-5.1 に示す。

+398.00

+325.25

ライザ 高水位 +394.30

貯水池満水位 +387.50

+375.500

1:0.21:0.3 地表線

鋼製ライザ管

3.5

2.8

4.32.70.6 0.67.0

導水路 水圧管路サージタンク

22.5m

72.75m

12.0m

図-5.1(1) 対象サージタンクの構造概要(縦断図)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

64

16φ@.28

16φ@.25

鋼製ライザ管

.60

.60

7.00

D

2.70

D

.10

.40.10 19φ@.20

9φ@1.00 @12° 図-5.1(2) 対象サージタンクの構造概要(横断図)

5.2 解析モデル

5.2.1 モデル化方針

解析モデルは,レベル 2 地震時の限界状態を考慮できるものとして,以下の方針に

従い作成した。なお,解析プログラムは ABAQUS(SIMULIA Japan 社)を用いた。 (1) 地上部サージタンク

コンクリートおよび鉄筋は個々にモデル化し,それぞれに材料非線形特性を与える。

コンクリートは厚さ方向の損傷度合いを評価可能な積層シェル要素で,鉄筋は配筋を

的確に表現できるリバー要素でモデル化する。 (2) 付属構造物

付属構造物としてサージタンク内部に設置されている鋼製ライザ管を対象とした。ラ

イザ管は,鋼製取付バンドによりサージタンク内壁に密着して固定されており,サージ

タンクと一体となって挙動するものと考えられる。ライザ管の安定性は鋼製取付バンド

の応力を評価することとし,ライザ管は内部の貯水重量を含めた梁要素で,鋼製取付

バンドは梁要素でモデル化する。 (3) 地下部サージタンク

地下部は堅硬な岩盤内にあることから,剛体としての挙動を仮定する。地下のサー

ジタンク本体は剛体特性の単層シェル要素によりモデル化し,各節点に地震動を入

力する。 (4) サージタンク内貯水

サージタンク内の水位を常時のサージタンク最高水位(貯水池満水位)とし,貯水を

音響要素でモデル化して,サージタンクと貯水との相互作用を考慮する。モデル化範

囲は,鉛直地震動による動水圧が水深の影響を受けることから,サージタンク底部から

水面までとする。なお,サージタンク内にはライザ管が設置されているが,サージタンク

内の動水圧については,ライザ管と貯水との相互作用は無視する。 (5) 地盤

地盤は,基本的には地表まで堅硬な岩盤であるが,一部地表部は掘削による緩み

等が想定されるため,地上部と地下部の境界(これを地盤結合部という)に地盤ばね

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

65

(水平方向)を設定する。また,地盤ばねを設定した区間のサージタンクは,コンクリー

ト物性の線形弾性体とし,単層シェル要素によりモデル化する。 上記解析モデルを概念的に図-5.2 に示す。

ライザー管

梁要素,梁にてサージタンク内壁と連結

RC構造体

積層シェルおよびリバー要素にてモデル化非線形性を考慮

地表面

地盤結合部

バネ要素にて連結常時微動計測結果を考慮

地盤,剛体を仮定

貯水

音響要素地震動の入力(水平,鉛直)

RC構造

図-5.2 サージタンクのモデル化の概念図

5.2.2 解析モデル

解析方針に従い作成した解析モデルを図-5.3 に示す。鉄筋部のリバー要素は,実

際に配筋されている鉄筋のかぶり,ピッチとコンクリート部の要素との関連を考慮して,

等価なかぶり,配筋ピッチおよび剛性を設定した。 解析モデルの構成を表-5.1 に,RC 構造のモデル化概要を図-5.4 に示す。

表-5.1 サージタンクの解析モデルの構成

部 位 使用する要素 材料物性 要素数 コンクリート 積層(4 層)シェル要素 非線形材料 896

地上部 鉄筋 リバー要素 非線形材料 ― コンクリート 単層シェル要素 線形材料 (地下部に含む)

地盤結合部 地盤 バネ要素(水平方向) 線形材料 64

地下部(底面を含む) 単層シェル要素 剛体 1216 192(底面)

鋼製ライザ管,取付バンド 梁要素 線形材料 305

貯水 音響要素 音響インターフェース要素

VS=1440m/s 10,176 1888

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

66

注) X 方向:水平水路軸方向(正が下流方向,負が上流方向)

Y 方向:水平水路軸直交方向

Z 方向:鉛直方向

図-5.3 解析モデル

リバー要素

(鉄筋)

※リバー要素は,以下で配置を表現する.  ・シェル要素からの離れ(a)  ・鉄筋のピッチ(d)  ・シェル要素辺との角度

ad

積層シェル要素

(コンクリート)

図-5.4 RC 構造のモデル化概要

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

67

5.2.3 解析物性

レベル 2 地震動を対象とする照査では,材料降伏後の損傷の程度を評価することと

なるため,RC 材料の強度はより実物の強度特性に近い物性を設定した。 (1) コンクリート

コンクリートの基本物性を表-5.2 に,非線形特性を図-5.6 および図-5.7 に示す。 非線形特性は,圧縮側はコンクリート標準示方書 1)を参照し設定した。応力-ひず

み関係において,圧縮強度の 31 までは弾性係数 Ec の弾性範囲とし,圧縮強度 f’c

に対するひずみε’peak は 0.002 とした。 引張側の応力-ひずみ関係は図-5.5 に従うものとした。ここで,コンクリートと鉄筋

の付着特性(係数 C)は,異形鉄筋では 0.4 が採用されているが,対象とするサージタ

ンクでは丸鋼が配筋されており,これに対する付着特性の事例はない。ここでは両鉄

筋の付着特性の差を考慮して 0.7 とした。除荷・再載荷時の剛性低減係数(K)は式

(5.1)2)より設定した。εt およびεtu は,それぞれ 0.76×10-4 および 1.53×10-4 となる。

表-5.2 コンクリートの基本物性

物性 記号 値 備考

圧縮強度 f ’c 24 N/mm2 近傍類似 RC 構造物の強度より推定

し,常時微動計測により検証 質量密度 ρc 2.5 g/cm3

弾性係数 Ec 25 kN/mm2 常時微動計測より推定 ポアソン比 νc 0.2

引張強度 ft 1.914 N/mm2 コンクリート標準示方書 1)を参照し

て,下式により算出 ft =0.23 f ’c2/3

c

tutf

tf

tu

0 εt

ft :コンクリート引張強度 εtu :ひび割れ限界ひずみ(=2εt) εt :降伏ひずみ C :付着性状を表す係数

図-5.5 コンクリート引張域の平均応力-平均ひずみ関係(Tension Stiffening)

ε

εtuK (5.1)2)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

68

0

5

10

15

20

25

0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01 0.012

ひずみ

応力

(N

/m

m2)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01 0.012

ひずみ

剛性

低減

係数

K

a) 応力-ひずみ関係 b) 剛性低減係数-ひずみ関係

図-5.6 コンクリートの非線形特性(圧縮側)

0

0.25

0.5

0.75

1

1.25

1.5

1.75

2

2.25

0 0.001 0.002 0.003 0.004

ひずみ

応力

(N

/m

m2)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0 0.001 0.002 0.003 0.004

ひずみ

剛性

低減

係数

K

a) 応力-ひずみ関係 b) 剛性低減係数-ひずみ関係 2) 図-5.7 コンクリートの非線形特性(引張側)

(2) 鉄筋

鉄筋の基本物性を表-5.3 に示す。対象構造物に使われている鉄筋は,丸鋼

SR24(現基準では SR235)-φ16,φ19 であり,鉄筋単体の実降伏強度は,JIS 保証

値を割り増し 3)した 300N/mm2 とした。非線形特性はバイリニアモデルとし,鉄筋降伏

後の剛性は,初期弾性係数 Es の 1001 とした。なお,コンクリート中の鉄筋は,コンクリ

ートとの付着作用により,降伏後直ちにひずみ硬化域に入る 4)ことから,ひずみ硬化開

始点である 2%ひずみにおいて,鉄筋単体降伏強度となるように降伏強度を設定した。

これを図-5.8 に示す。また,履歴特性(バウジンガー効果)は考慮していない。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

69

表-5.3 鉄筋(丸鋼)の基本物性 物性 記号 値 備考

質量密度 ρs 0 g/cm3 コンクリート分に含まれていると考える

弾性係数 Es 200 kN/mm2

ポアソン比 νs 0.3

降伏強度 fy 300 N/mm2 SR235 の実降伏強度として JIS 保証

値 235N/mm2 の 1.25 倍とした 3) 減衰定数 hs 0.02

0

100

200

300

400

0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03

ひずみ

応力

(N

/m

m2)

図-5.8 鉄筋の非線形特性

(3) 付属構造物

付属構造物の物性値を表-5.4 に示す。ライザ管および取付バンドは線形の鋼材と

した。貯水位以下のライザ管の質量密度は,ライザ管本体質量とライザ管内部貯水の

質量を合算した値とし,内部貯水の慣性力を考慮した。

表-5.4 付属構造物の物性値

物性 記号 値 備考

質量密度 ρ 7.85 g/cm3

質量密度

(貯水位以下) ρ 179.23 g/cm3 ライザ管内部貯水考慮

弾性係数 E 200 kN/mm2

ポアソン比 ν 0.3

ライザ管

減衰定数 h 0.02

質量密度 ρ 7.85 g/cm3

弾性係数 E 200 kN/mm2

ポアソン比 ν 0.3

取付バンド

減衰定数 h 0.02

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

70

(4) 地盤ばね

現地調査により地表地盤(深さ 2.5m 程度)は,CL 級岩盤と評価されている。これよ

り,CL 級岩盤の変形係数として 500 N/mm2(下限値)を適用し,さらに道路橋示方書

に準拠した方法 5)で算出した水平地盤反力係数に,節点が負担する面積を乗じたも

のを水平ばね定数とした。

5.2.4 荷重条件

考慮した外力を以下に示す。 ・ 自重,付属構造物の荷重 ・ 地震による慣性力 ・ 静水圧 ・ 動水圧 水位条件は,原則として発電休止中の貯水池満水位に相当する水位とした。 なお,内部に貯水を有する構造物では,地震により液面揺動が発生するが,対象の

サージタンクでは,その形状から地震時挙動に影響を与えるような大きな液面揺動は

ないものと考え,考慮しないものとした。

5.2.5 解析モデルの検証

解析モデルの妥当性を検証するため,常時微動計測を実施した。計測は,サージ

タンク露出部の鉛直断面にて,3 成分速度計(㈱東京測振,VSE-315D,応答振動数

0.2~70Hz)を,天端および基部コンクリートに設置し,収録装置(㈱東京測振,

SPC-51)にて同時計測を行った。計測の結果,対象サージタンクの卓越周波数は,

7.4Hz~7.6Hz であった。 一方,作成した解析モデルの固有振動数は,表-5.5,図-5.9 および図-5.10 に示す

固有値解析結果から,空虚時において 7.2Hz であり,常時微動計測における卓越振

動数(7.4~7.6Hz)とほぼ一致している。 以上のことから,作成した解析モデルは,実物のサージタンクの振動特性を適切に

表現できており,妥当なものと判断した。

表-5.5 サージタンクの固有値解析結果,周期および振動数

貯水条件(地上部) 水平方向

固有周期/固有振動数

鉛直方向

固有周期/固有振動数

空虚(ライザ管を考慮) 0.139 秒/7.19Hz 0.030 秒/33.2Hz

満水位

(ライザ管を考慮) 0.150 秒/6.67Hz 30Hz 以上

満水位

(ライザ管を考慮しない) 0.148 秒/6.73Hz 0.030 秒/33.5Hz

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

71

X 方向1次

7.19Hz

Y 方向1次

7.19Hz

X 方向 2 次

28.83Hz

Y 方向 2 次

28.85Hz

図-5.9 主要振動モード(地上部),空虚時(ライザ管を考慮)

X 方向1次

6.67Hz

Y 方向1次

6.67Hz

X 方向 2 次

21.3Hz

Y 方向 2 次

21.8Hz

図-5.10 主要振動モード(地上部),満水時(ライザ管を考慮)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

72

5.3 入力地震動

入力地震動は,4 章での検討結果を踏まえて,照査用下限加速度応答スペクトル

に適合する賀祥模擬波を,サージタンクが設置される基礎岩盤に水平 2 方向および

鉛直方向に入力した。入力地震動を図-5.11 に示す。

-400

-200

0

200

400

0 2 4 6 8 10 12 14 16

時 間 (s)

加速

度 (ga

l)

max=300gal min=-328gal

a) X 軸:水路軸方向(賀祥波東西方向位相)

-400

-200

0

200

400

0 2 4 6 8 10 12 14 16

時 間 (s)

加速

度 (ga

l)

max=256gal min=-329gal

b) Y 軸:水路軸直交方向(賀祥波南北方向位相)

-400

-200

0

200

400

0 2 4 6 8 10 12 14 16

時 間 (s)

加速

度 (ga

l)

max=258gal min=-200gal

c) Z 軸:鉛直方向(賀祥波鉛直方向位相)

図-5.11 入力地震動

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

73

5.4 照査基準

5.4.1 要求性能

レベル 2 地震動に対するサージタンクの要求性能を,表-5.6(総合調査報告書第 1編第 6 章参照)に示す。

表-5.6 サージタンクのレベル 2 地震動に対する要求性能および照査対象構造物

(a) 要求性能

(1)要求性能 1 :公衆災害の原因とならないための要求性能 地震時に損傷を受けたとしても,周辺に影響を与える漏水が生じないこと。サー

ジタンクの損傷により周辺に被害を及ぼさないこと。 (2)要求性能 2 :発電機能に対する要求性能

地震時に損傷を受けたとしても,通水機能を所定の期間内に確保すること。

(b) 対象構造物

(1) サージタンクの地上部 (2) 付属構造物 (3) サージタンクの地下部(埋設部)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

74

5.4.2 限界状態および照査基準

レベル 2 地震動に対するサージタンクの限界状態および照査基準は,要求性能に

対応して表-5.7 のように設定した。 表-5.7 は,ケーススタディで実施した RC 製サージタンクに対する限界状態および

照査基準としている。サージタンクが鋼製の場合は,ゲートなどの鋼構造物の照査基

準を参照して,水密性を確保するための主要部材の座屈の発生および許容ひずみ量

を限界状態とする。

表-5.7 サージタンク(RC 構造)のレベル 2 地震動に対する限界状態と照査基準

(a) 要求性能 1: 公衆災害の原因とならないための性能

対象構造物 限界状態 照査基準

サージタンク 地上部

(1) 周辺に影響を与える漏水が発生しない状態*1)

(2) 一部の部材が塑性化するが,損傷の修復を容易に行える状態

(曲げ破壊に対する照査) 作用曲げモーメント≦許容曲げ耐力

あるいは 発生ひずみ≦許容ひずみ*2)

(せん断に対する照査) 作用せん断力≦許容せん断耐力

付属設備 設定しない

サージタンク 地下部

大規模な漏水*1)に至るような断層変位,地すべりなどが地下部に生じないこと

断層変位,地すべり変位 ≦許容変位

(b) 要求性能 2: 発電機能に対する性能

対象構造物 限界状態 照査基準

サージタンク 地上部

(1) 周辺に影響を与える漏水が発生しない状態*1)

(2) 一部の部材が塑性化するが,損傷の修復を容易に行える状態

(曲げ破壊に対する照査) 作用曲げモーメント≦許容曲げ耐力

あるいは 発生ひずみ≦許容ひずみ*2)

(せん断に対する照査) 作用せん断力≦許容せん断耐力

付属設備

(1) コンクリート構造物の一部が塑性化するが剥離せず,損傷の修復を容易に行える状態

(2) ライザー管等構造物が落下しない状態

(1) コンクリート構造物 地上部と同じ

(2) 付属構造物の支持部材 発生応力≦降伏強度

サージタンク 地下部

一部の部材が塑性化するが,損傷の修復を容易に行える状態 地上部と同じ

*1)漏水に対する限界状態および照査基準は,設備が設置される地点の周辺状況を考慮して,個別に

設定する。

*2)ケーススタディでは,コンクリートの圧縮ひずみは 0.35%,鉄筋のひずみは降伏ひずみの 2 倍程度

を考える。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

75

5.4.3 耐震性能照査の手順

照査フローを図-5.12 に示す。対象構造物は,既往の検討において,レベル2地震

動よりも規模の小さい地震動で損傷することが確認されていたため,ケーススタディで

は標準検討は省略して詳細検討を実施した。

開 始

入力地震動の設定

地下部に耐震上懸念される地質不良部はあるか?

要求性能を満足

終 了さらに詳細な検討,あるいは必要に応じ対策等を検討

No

Yes

基礎岩盤を含む検討フロー地上部解析モデルの作成

付加質量として動水圧を考慮する線形解析による応答値の算定

断面力・応力の評価

照査基準を十分に満足するか?

動水圧の影響は大きいか?(注①)

地下部を含む解析モデルの作成

断面力・ひずみの評価

構造物-貯水の連成を考慮する非線形解析による応答値の算定

照査基準を満足するか?

標準検討

詳細検討

Yse

No

No

Yse

Yse

No

注① 水柱共振周波数が,サージタンク固有振動数に近い,

    あるいは入力地震動のピークと一致

※ ケーススタディで実施した検討

図-5.12 サージタンクの照査フロー

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

76

5.5 耐震性能照査

5.5.1 動的解析結果

(1) 応答加速度,応答変位および変形

天端の応答加速度および応答変位時刻歴,応答加速度の周波数特性を図-5.13,

図‐5.14 に示し,最大変位を示す時刻の変形性状を図-5.15 に示す。 天端における最大応答加速度は,X 方向 1235gal,Y 方向 -1356gal,Z 方向

580gal であり,入力地震動に対してそれぞれ 3.7 倍,4.1 倍,2.2 倍の応答となり,周

波数特性は,X 方向が 6.5Hz,Y 方向が 6.7Hz(図‐5.14 参照)であった。 また,X 軸端および Y 軸端上天端における最大変位は,X 方向 -8.02mm,Y 方向

9.39mm,Z 方向 2.72mm であった。

出力点

X

Y

注:X 方向,正方向が水路軸流下方向

-1500-1000-500

0500

10001500

0 2 4 6 8 10 12 14 16

時 間 (s)

加速

度 (ga

l)

max=1235gal min=-1164gal

-10

-5

0

5

10

0 2 4 6 8 10 12 14 16時 間 (s)

変 位

(m

m)

max=6.57mm min=-8.01mm

a) X 方向 a) X 方向

-1500-1000-500

0500

10001500

0 2 4 6 8 10 12 14 16

時 間 (s)

加速

度 (

gal)

max=1168gal min=-1248gal

-10

-5

0

5

10

0 2 4 6 8 10 12 14 16時 間 (s)

変 位

(m

m)

max=9.37mm min=-6.15mm

b) Y 方向 b) Y 方向

-1500-1000-500

0500

10001500

0 2 4 6 8 10 12 14 16

時 間 (s)

加速

度 (ga

l)

max=580gal min=-454gal

-10

-5

0

5

10

0 2 4 6 8 10 12 14 16時 間 (s)

変 位

(m

m)

max=2.72mm min=-1.46mm

c) Z 方向 c) Z 方向 加速度 変位

図-5.13 天端加速度および変位時刻歴

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

77

0

20

40

60

80

100

1 10Freq.(Hz)

Amplitude

6.54Hz

a) X 方向

0

20

40

60

80

100

1 10Freq.(Hz)

Amplitude

6.69Hz

b) Y 方向

0

20

40

60

80

100

1 10Freq.(Hz)

Amplitude

6.88Hz

c) Z 方向

図-5.14 天端加速度,伝達関数

8.02mm

X 軸端最大変位(9.20 秒)

9.39mm

Y 軸端最大変位(8.69 秒)

図-5.15 変位応答,最大値

(2) 応力およびひずみ

地上部サージタンクのコンクリート最大圧縮応力分布,解析終了時のコンクリート引

張応力分布,鉄筋ひずみ分布および鉄筋・コンクリートの塑性化挙動を,それぞれ図

-5.16 から図-5.19 に示す。 コンクリートの圧縮応力は最大 5.7N/mm2 であった。また,鉛直方向の引張ひずみ

は,地上部サージタンク下端の断面全体にひび割れ限界ひずみ(εtu=1.53×10-4)

を超えるひずみが発生した。ひび割れ発生は,解析終了時には断面を貫通するもの

となった(図-5.17 参照)。 鉄筋ひずみ(リバー要素ひずみ)は,コンクリートひび割れ発生箇所の鉛直鉄筋で

地震中に最大 3380μ,解析終了時に最大 3110μ(図-5.18,図-5.19 参照)であっ

た。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

78

-5.7N/mm2

(kN/m2)

鉛直方向最大圧縮応力発生時刻

8.99 秒(サージタンク外面)

-1.8N/mm2

(kN/m2)

水平方向最大圧縮応力発生時刻

8.99 秒(サージタンク内面) 図-5.16 コンクリート応力,最大圧縮応力発生時刻 応力分布(地上部)

X

Y

X

Y

X

Y

X

Y

以下,矢印の方向から見た分布図

a) 外面

b) 内面 図-5.17(1) コンクリート鉛直方向ひずみ分布,解析終了

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

79

X

Y

X

Y

X

Y

X

Y

以下,矢印の方向から見た分布図

a) 外面

b) 内面

図-5.17(2) コンクリート周方向ひずみ分布,解析終了

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

80

X

Y

X

Y

X

Y

X

Y

以下,矢印の方向から見た分布図

最大ひずみ 3.11E-3

a) 外面

b) 内面

図-5.18 鉄筋鉛直方向ひずみ分布,解析終了

Page 85: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

81

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

-0 0 0.001 0.002 0.003 0.004

ひずみ

応力

(N

/m

m2)

a) 外面コンクリート鉛直方向

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

-0 0 0.001 0.002 0.003 0.004

ひずみ

応力

(N

/m

m2 )

b) 内面コンクリート 鉛直方向

-100

0

100

200

300

-0 0 0.001 0.002 0.003 0.004

ひずみ

応力

(N

/m

m2)

c) 外面鉄筋,鉛直方向

-100

0

100

200

300

-0 0 0.001 0.002 0.003 0.004

ひずみ

応力

(N

/m

m2)

d) 内面鉄筋,鉛直方向

図-5.19 コンクリートおよび鉄筋の応力・ひずみ履歴の一例(引張応力を正とした)

(3) 動水圧

最大動水圧が発生する時刻の動水圧分布を図-5.20,図-5.21 に示す。 最大動水圧は,水深 62.25m(サージタンク下端)位置で 544kPa,地上部において

は水深 12m(地上部下端)位置で 200.6kPa であった。最大動水圧発生位置における

動水圧時刻歴および周波数特性を,図-5.22,図-5.23 に示す。 動水圧は,水深に応じて大きくなる分布(図-5.21 参照)となり,標高別にほぼ一様と

なる分布(図-5.20 参照)となった。サージタンク内の水平加速度に起因する動水圧は,

周方向で異なった分布を示し,その値は簡略式により評価される値とほぼ一致する 6)。

一方,鉛直動に起因する動水圧は,サージタンク内を標高別に見れば一様分布とな

る。このような動水圧の特性を考慮すれば,ケーススタディで評価されたサージタンク

内の標高別にほぼ一様となる動水圧は,鉛直動の影響が圧倒的に大きく,これはサ

ージタンクの水柱高さに対応した共振(共振周波数 =1440/4/62.25=5.8Hz,図-5.23

Page 86: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

82

参照)が発生することに起因するものである。

地表面 地表面

a) 地上部最大動水圧発生時刻 6.70 秒 b) 最大動水圧発生時刻 7.40 秒 図-5.20 動水圧分布(単位:kPa)

0

10

20

30

40

50

60

70

0 100 200 300 400 500 600

動水圧(kPa)

水 深

(m)

簡略式 解析値(7.4秒) 解析値(6.7秒)

簡略式動水圧値算出条件 半径 r = 3.5m 水深 H = 62.25m 震度 kh= 0.350.335

地上部

大動水圧

発生位置

(6.7 秒)

大動水圧

発生位置

(7.4 秒)

図-5.21 サージタンク内の最大動水圧分布

Page 87: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

83

-600-400-200

0200400600

0 2 4 6 8 10 12 14 16

時 間 (s)

動水

圧 (kP

a)

max=200.62kPa min=-185.25kPa

a) 水深 12m 位置(地上部最下端)

-600-400-200

0200400600

0 2 4 6 8 10 12 14 16

時 間 (s)

動水

圧 (kP

a)

max=544.04kPa min=-450.90kPa

b) 水深 62.5m 位置(サージタンク下端) 図-5.22 最大動水圧発生位置の動水圧時刻歴

0

100

200

300

400

500

1 10 100Freq.(Hz)

FourierSpect.(kPa・s)

5.91Hz

5.76Hz

a) 水深 12m 位置(地上部最下端)

0

500

1000

1500

1 10 100Freq.(Hz)

FourierSpect.(kPa・s)

5.91Hz

5.76Hz

b) 水深 62.5m 位置(サージタンク下端)

図-5.23 最大動水圧発生位置の動水圧スペクトル

5.5.2 耐震性能照査

(1) 曲げ破壊に対する耐震性能照査

動的解析結果から,地上部サージタンクのコンクリートおよび鉄筋の応力・ひずみ挙

動をまとめれば以下のとおりである。 ・ コンクリートの圧縮応力は最大 5.7N/mm2 であり,線形範囲(8N/mm2 以下)にと

どまった。 ・ 地上部サージタンク下端の全断面において,コンクリートの鉛直方向の引張ひず

みが,ひび割れ限界ひずみ(εtu=1.53×10-4)を超えてひび割れが発生し,解

析終了時には断面を貫通するひび割れとなった。 ・ コンクリートひび割れ発生箇所の鉛直鉄筋のひずみは,地震中に最大 3380μ,

解析終了時に最大 3110μであり,鉄筋単体の降伏ひずみ(1500μ)の 2 倍程度

と,ほぼ弾性領域にとどまっており,鉄筋破断時のひずみ 10,000μ(10%ひず

み)程度に対しては十分小さい。

Page 88: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

84

以上のことから,サージタンクは,地震動の変動に対応してコンクリートの一部に塑

性ひずみが発生するものの,鉄筋はほぼ弾性域にとどまることから,地震動による曲げ

変形に対しては構造体としての損傷は発生しない。

(2) せん断破壊に対する耐震性能照査

せん断破壊に対する耐震性能照査は,サージタンクの応答変位が最大となる時刻

(8.9 秒)に着目し,最も厳しい状態となる地上部・地下部境界部について検討した。 せん断力は,動的解析より求まる水平方向(X-Y 平面)の面外せん断力とし,せん

断耐力は,コンクリートおよびせん断筋(丸鋼φ9,12°ピッチ,図‐5.24 参照)を考慮

した。コンクリートのせん断強度 fvc は式(5.2)により評価し,引張応力が作用している断

面はせん断には抵抗しないものとした。

33 2420.0'20.0 cvc ff =0.577 N/mm2 (5.2)

照査結果を表-5.8 に示す。これより,8.9 秒時には,サージタンク地上部の下部の広

い範囲(円周方向で約 1/2)でせん断力がせん断耐力を上回り,せん断破壊の可能性

がある結果となった。

16φ@.28

16φ@.25

鋼製ライザ管

.60

.60

7.00

D

2.70

D

.10

.40.10 19φ@.20

9φ@1.00 @12° 図-5.24 地上部標準断面図

図-5.25 地上部・地下部境界部,要素位置図

Page 89: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

85

表-5.8 サージタンクのせん断力(8.9 秒時)とせん断耐力の比較

要素位置 作用せん断力 軸力 コンクリート 鉄筋 せん断耐力

要素番号 θ SFY FY Ac fvc せん断耐力 As fvs せん断耐力 SFR SFY<SFR

(度) (kN/m) (kN/m) (m2/m) (N/mm2) (kN/m) (mm2/m) (Nmm2) (kN/m) (kN/m)

865 5.625 17.9 569 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 <

866 16.875 43.5 594 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

867 28.125 60.4 624 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

868 39.375 70.0 651 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

869 50.625 71.2 673 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

870 61.875 60.9 669 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

871 73.125 53.4 656 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

872 84.375 43.3 662 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

873 95.625 16.7 666 0.3 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 <

874 106.875 -18.0 668 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 <

875 118.125 -54.4 651 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

876 129.375 -110.3 539 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

877 140.625 -126.5 283 0.6 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

878 151.875 -105.4 -309 0.6 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

879 163.125 -88.6 -826 0.6 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

880 174.375 -63.0 -1389 0.6 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

881 185.625 60.8 -1879 0.6 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

882 196.875 45.7 -2227 0 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

883 208.125 22.2 -2451 0 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

884 219.375 8.9 -2471 0 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

885 230.625 2.8 -2515 0 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

886 241.875 16.1 -2372 0 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

887 253.125 40.2 -2055 0 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

888 264.375 84.9 -1568 0 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

889 275.625 157.9 -900 0 0.577 346.20 79.9 300 23.98 370.2 <

890 286.875 199.5 14 0 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

891 298.125 178.0 516 0 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

892 309.375 111.1 530 0 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

893 320.625 94.0 523 0 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

894 331.875 102.1 529 0 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

895 343.125 65.9 535 0 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

896 354.375 24.4 549 0 0.577 0.00 79.9 300 23.98 24.0 >

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

86

(3) 付属構造物(ライザ管)の耐震性能照査

サージタンクの機能に影響を与える付属構造物としてライザ管がある。ライザ管は,

2 本の鋼製取付バンドにより,サージタンクに密着するよう固定されている。これより,ラ

イザ管の安定性は,鋼製取付バンドの引張応力により照査した。 ライザ管取付バンドは,丸鋼 SR24(現基準では SR235)-φ16 であり,降伏強度は

サージタンクのコンクリート部鉄筋と同じく 300N/mm2 とした。 取付バンドの最大引張応力を図-5.26 に示す。取付バンドの最大引張応力は 142

N/mm2 であり,降伏強度 300 N/mm2 に対して十分に余裕があることから,ライザ管は

安定している。

地表面

貯水面

底 面

137N/mm2

(kN/m2)

142N/mm2

地表面

貯水面

底 面

(kN/m2)

a) 地上部,7.04 秒時 b) 地下部,5.74 秒時

図-5.26 ライザ管鋼製取付バンド応力分布,最大値発生時刻

5.6 耐震性能照査のまとめ

5.6.1 照査結果

照査結果をまとめれば以下のとおりである。 (1) 地震力による曲げ変形に対しては,地上部下端においてコンクリート部の全体に

水平ひび割れが発生する。 (2) 水平ひび割れが発生する箇所での鉄筋は,ほぼ弾性域にとどまる状態であり,終

局状態に対して十分余裕がある。 (3) せん断に対しては,地上部下端の約 1/2 の範囲で,せん断耐力を上回るせん断

力が発生する。 (4) 付属設備のライザ管の取付バンドに発生する最大応力は,降伏強度以下である。

以上のように,サージタンクのケーススタディでは,せん断耐力が広い範囲で不足し,

せん断に対する限界状態が確保されない状態となる。照査結果を照査基準と比較し

て表-5.9 にまとめる。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

87

表-5.9 サージタンク(RC 構造)のレベル 2 地震動に対する耐震性能

(a) 要求性能 1: 公衆災害の原因とならないための性能

対象構造物 限界状態 照査基準 照査結果

サージタンク 地上部

(1) 周辺に影響を与える漏水が発生しない状態

(2) 一部の部材が塑性化するが,損傷の修復を容易に行える状態

(曲げ破壊に対する照査) 作用曲げモーメント≦許容曲げ耐力

あるいは 発生ひずみ≦許容ひずみ

(せん断に対する照査) 作用せん断力≦許容せん断耐力

・鉄筋はほぼ弾性状態を保

持し,曲げ耐力を満足する ・せん断力はせん断耐力を

上回る範囲がある 照査基準を満足できない

付属設備 設定しない

サージタンク 地下部

大規模な漏水に至るような断層変位,地すべりなどが地下部に生じないこと

断層変位,地すべり変位 ≦許容変位

(今回照査対象としていな

い)

(b) 要求性能 2: 発電機能に対する性能

対象構造物 限界状態 照査基準 照査結果

サージタンク 地上部

(1) 周辺に影響を与える漏水が発生しない状態

(2) 一部の部材が塑性化するが,損傷の修復を容易に行える状態

(曲げ破壊に対する照査) 作用曲げモーメント≦許容曲げ耐力

あるいは 発生ひずみ≦許容ひずみ

(せん断に対する照査) 作用せん断力≦許容せん断耐力

・鉄筋はほぼ弾性状態を保

持し,曲げ耐力を満足する ・せん断力はせん断耐力を

上回る範囲がある 照査基準を満足できない

付属設備

(1) コンクリート構造物の一部が塑性化するが剥離せず,損傷の修復を容易に行える状態

(2) ライザー管等構造物が落下しない状態

(1) コンクリート構造物 地上部と同じ

(2) 付属構造物の支持部材 発生応力≦降伏強度

(1)せん断力はせん断耐力を

上回る範囲があり,内部の構

造コンクリートの損傷が想定

される (2)取付バンド応力は許容応

力(降伏強度)より小さい 照査基準を満足できない

サージタンク 地下部

一部の部材が塑性化するが,損傷の修復を容易に行える状態

地上部と同じ (今回照査対象としていな

い)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

88

5.6.2 照査結果への対応

検討対象のサージタンクのレベル 2 地震動に対する耐震性能は照査基準を満たさ

なかった。このような場合では,さらに詳細な検討を行う,あるいは適切な補強工の検

討が必要となる。以下では,ケーススタディに対応する補強工の概念を示す。また,総

合調査報告書第 3 編には,耐震補強に適用される補強工の実績を整理しており,サ

ージタンクの補強工として適用可能な方法もある。実際の補強工の検討に当たっては,

地点および補強工の特性を勘案して,適切な経済性および施工性を有する工法を選

択することが重要である。

ケーススタディ対象のサージタンクの耐震補強工は,特に限界状態が確保されない

せん断力に対して施工することとなる。ケーススタディのせん断損傷は,サージタンク

の地上部下部の外部および内部に生ずる。このような補強工の一例として,内部およ

び外部に十分な剛性を有する補強部材を設置することが考えられる。また,内部につ

いては,ライザ管などの付属設備があること,施工中に貯水の影響があることを考慮す

れば,外部にのみ補強部材を設置する方法が優れているものと考えられる。このような

補強工の概念図を図-5.27 に示す。

地表面

補強鉄筋コンクリート

既設コンクリート

打ち替えコンクリート

既設コンクリート(捨巻きコンクリート)

図-5.27 サージタンク補強工の一例

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

89

参考文献

1) (社)土木学会:コンクリート標準示方書 2007 年制定

2) 長沼一洋,大久保雅章:繰返し応力下における鉄筋コンクリート板の解析モデル,日本建築学

会構造系論文集,第 536 号,pp.135~142,2000.10

3) 鉄筋コンクリート終局強度設計に関する資料,日本建築学会,昭和 62 年

4) 玉井真一他:一軸引張部材における鉄筋の降伏以降の平均応力-平均ひずみ関係,土木学

会論文集,第 378 号/V-6,1987.2

5) (社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 IV 下部構造編,2002.3

6) 経済産業省原子力安全・保安院:平成 21 年度発電設備耐震性能調査報告書,2010.3

Page 94: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

90

6. 独立型取水塔のケーススタディ

6.1 ケーススタディ対象構造物の概要

ゲート総覧 1)に基づいた調査結果によれば,独立型取水塔(以下,取水塔という)の

構造としては RC 構造が多く,高さは 20m 以上のものが広く分布しており,最大では

90m 超まである。このことから,ケーススタディ対象構造物には,高さ 81m の取水塔を

選定した。 対象の独立型取水塔(以下単に取水塔という)は,大規模貯水池にあり,ダム上流

約 200m の左岸側に位置する。取水塔は鉄骨・鉄筋コンクリート(SRC)構造であり,

表面取水ゲート,取水口ゲートおよび連絡橋梁を付属し,取水塔上部にはこれらの操

作のための機器および建屋がある。機器の操作は,基本的には自動・遠隔操作により

行われており,このための電源ケーブルや通信ケーブルは連絡橋梁に沿って設置さ

れている。対象とする取水塔の概要を表-6.1,図-6.1 および図-6.2 に示す。

表-6.1 対象取水塔の諸元

形式 鉄骨・鉄筋コンクリート(SRC)構造

貯水池 満水位 EL465m,低水位 405m

高さ 81m,天端標高 EL470m

幅×奥行き 22m×16.1m

主要付属設備 表面取水ゲート(5 連),スクリーン,

取水口ゲート,連絡橋梁(RC 製,長さ 64m)

取水塔

ゲート巻上げ機室

連絡橋梁

表面取水ゲート

図-6.1 対象取水塔,外観

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

91

(a) 平面 (b) 縦断

取水塔

ダム(天端標高469m)

洪水吐

(c) 標準断面 (d) 位置図

図-6.2 検討対象取水塔,構造図

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92

6.2 解析モデル

6.2.1 モデル化方針

解析モデルは,レベル 2 地震時の限界状態を考慮できるものとして,以下の方針に

従い作成した。なお,解析プログラムは ABAQUS(SIMULIA Japan 社)を用いた。 (1) 塔部のモデル化

取水塔塔部(標高 465m~標高 403.5m,図-6.2 参照)は SRC 構造であることから,

コンクリート,鉄筋および鉄骨を個々にモデル化した。コンクリートはソリッド要素,鉄筋

および鉄骨はリバー要素でモデル化し,いずれも非線形挙動を再現できるものとした。

なお,操作機器が配置される天端は,十分に配筋されていることから剛体としてモデ

ル化した。

(2) 基礎コンクリート部のモデル化

基礎コンクリート部(標高 403.5m 以下,図-6.2 参照)はソリッド要素でモデル化し,発

生応力が弾性域を超えないことを限界状態としていることから,鉄筋および鉄骨はモ

デル化しないこととした。

(3) 基礎地盤との相互作用と地盤のモデル化

取水塔の底部地盤は堅固な岩盤であり,用いる地震動の設定地盤がせん断波速度

(Vs)700~1500m/s 程度であることを考慮すれば,取水塔が設置されている地盤はこ

れと同等である。このため取水塔底面を地震入力位置として,底部地盤は解析モデル

には含めないこととした。一方,取水塔と接する背面掘削斜面部は建設中の掘削によ

る緩み等が想定される。このため取水塔と背面地盤との相互作用を地盤バネとして設

定した。

(4) 付属構造物のモデル化

表面取水ゲートおよびスクリーンは照査対象とせず,地震時に損傷しても取水塔の

通水機能は確保されることからモデル化しないこととした。開閉装置や連絡橋梁は荷

重として扱った。

(5) 貯水のモデル化

塔内貯水による動水圧は付加質量によりモデル化し慣性力として考慮した。塔外貯

水は音響要素でモデル化し,塔部と塔外貯水の連成により動水圧を考慮した。なお,

塔外貯水のモデル化の範囲は水深(82m)の 3 倍を目安とし,背面側は地形を考慮し

た形状とした。

なお,表面取水ゲートと貯水の連成について事前の予備検討を行ったところ,塔外

貯水を表面取水ゲートではなく取水塔塔部に直接連成させた方が,取水塔塔部に発

生する応力・ひずみが大きくなり,照査上,安全側の評価ができることから,(4)で示し

たように表面取水ゲートのモデル化を行わないこととした。

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93

6.2.2 解析モデル

解析方針に従い作成した解析モデルを図-6.3 および図-6.4 に示す。なお,解析対

象の水位は満水位(EL.465m)とした(6.2.4 項参照)。

330.7m

82m

522m

277.2m

取水塔

図-6.3 取水塔解析モデルの鳥瞰図

天端標高470m

標高411m

59m

22m

6m

(a) 取水塔本体の解析モデル

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塔内貯水:付加質量

塔外貯水:音響要素(構造と連成)

地盤ばね

地震動入力シェル要素(剛体)を配置

EL.383m

EL.403.5m

EL.411m

EL.465m(満水位)EL.470m

EL.454m

開閉装置,連絡橋梁は

荷重として扱う

地形を考慮

無反射境界

(b) 取水塔縦断面(取水塔中央)

(c) 取水塔モデル(取水塔中央)

図-6.4 取水塔解析モデルの詳細

下部ゲート 無反射境界

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95

6.2.3 解析物性

レベル 2 地震動を対象とする照査では,材料降伏後の損傷の程度を評価することと

なるため,解析モデルの材料強度はより実物の強度特性に近い物性を設定した。

(1) コンクリート

コンクリートの基本物性は,取水塔建設時の圧縮強度試験に基づき現在の圧縮強

度を推定し,この圧縮強度を基本に設定した。基本物性を表-6.2 に示す。 コンクリートの非線形特性については以下のとおり設定した。 まず,圧縮側はコンクリート標準示方書 2)を参照し設定した。応力-ひずみ関係に

おいて,圧縮強度の 31 までは弾性係数 Ec の弾性範囲とし,圧縮強度 f’c に対するひ

ずみε’peak は 0.002 とした。これを図-6.5 に示す。一方,引張側の応力-ひずみ関係

は図-6.6 に従うものとした。ここで,コンクリートと鉄筋の付着特性(係数 C)は,異形鉄

筋に対応する 0.4 とした。また,除荷・再載荷時の剛性低減係数 K は式(6.1)より設定

3) した。その結果,コンクリート引張降伏ひずみεt およびひび割れ限界ひずみεtu は

それぞれ 0.789×10-4 および 1.58×10-4 となる。設定結果を図-6.7 に示す。

表-6.2 コンクリートの基本物性

物性 記号 値 備考

圧縮強度 f ’c 29 N/mm2 建設時の材料強度試験値および材齢に伴う

強度増加から推定

質量密度 ρc 2.5 g/cm3 鉄筋・鉄骨を含む値として設定

弾性係数 Ec 27.5kN/mm2 圧縮強度から推定

ポアソン比 νc 0.2 一般値

引張強度 ft 2.171N/mm2 コンクリート標準示方書を参照して,下式により算出

ft =0.23 f ’c2/3

減衰定数 hc 0.02 材料,逸散減衰として,道路橋示方書・同解

説Ⅴ耐震設計編を参照。履歴減衰は別途

非線形特性として考慮。

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96

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01 0.012ひずみ

応力

(N

/m

m2)

29.1(N/mm2)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01 0.012ひずみ

剛性

低減

係数

K

(a) 応力~ひずみ関係 (b) 剛性低減係数~ひずみの関係

図-6.5 詳細モデルに用いたコンクリート(圧縮側)の非線形特性

c

tutf

tf

tu

0 εt

ft :コンクリート引張強度 εtu :ひび割れ限界ひずみ(=2εt) εt :降伏ひずみ C :付着性状を表す係数

図-6.6 コンクリート引張域の平均応力-平均ひずみ関係(Tension Stiffening)

ε

εtuK (6.1)3)

0.0

0.3

0.6

0.9

1.2

1.5

1.8

2.1

2.4

0 0.001 0.002 0.003 0.004ひずみ

応力

(N/m

m2)

2.171(N/mm2)

εt=7.89×10-5

εtu=1.58×10-4

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 0.001 0.002 0.003 0.004ひずみ

剛性

低減

係数

K

(a) 応力~ひずみ関係 (b) 剛性低減係数~ひずみの関係

図-6.7 詳細モデルに用いたコンクリート(引張側)の非線形特性

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97

(2) 鉄筋・鉄骨

対象取水塔は基本的には鉄筋コンクリート(RC)構造であるが,塔下部では配筋量

が多くなることから鉄筋と併用して鉄骨が配置されている。コンクリート標準示方書 2 )で

は,主として型鋼等の鉄骨を鉄筋と併用して用いる鉄骨鉄筋併用構造の場合,断面

耐力は鉄骨を鉄筋に換算して鉄筋コンクリート部材として算定するとしている。このた

め,本解析においても鉄骨は鉄筋に換算して,鉄筋としてモデル化した。鉄筋および

鉄骨の基本物性を表-6.3 に示す。 次に鉄筋の非線形特性について示す。コンクリートに埋め込まれた鉄筋の応力-

ひずみ関係は,コンクリートと鉄筋の付着作用の影響のモデル化が必要となる。鉄筋

単体の応力-ひずみ関係は,降伏応力に達するまでは線形弾性で,降伏後は塑性

棚およびひずみ硬化域を経て破断に至る。コンクリート中の鉄筋は,コンクリートのひ

び割れ面で鉄筋応力が降伏点に達してもひび割れ間ではコンクリートとの付着作用に

より降伏点には達していない。これを平均的に捉えると,コンクリート中の鉄筋の応力

-ひずみ関係は降伏後直ちにひずみ硬化域に入る 4)。 本ケーススタディで用いる鉄筋の非線形特性は,鉄筋とコンクリートの付着特性を考

慮した平均応力-平均ひずみ関係として,図-6.8 に示すバイリニアモデルとした。

表-6.3 鉄筋(SD295)・鉄骨(SS400)の基本物性

物性 記号 値 備考

降伏強度(鉄筋) fy 325 N/mm2 SD295 の実際の降伏強度として JIS 保証値

295N/mm2 の 1.1 倍 5)とした。

降伏強度(鉄骨) fy 195 N/mm2 SS400 の JIS 保証値

質量密度 ρs 0 g/cm3 コンクリート分に含まれていると考える。

弾性係数 Es 200 kN/mm2 コンクリート標準示方書より

ポアソン比 νs 0.3 一般値

減衰定数 hs 0.02 材料・逸散減衰として,道路橋示方書・同解説Ⅴ

耐震設計編を参照。履歴減衰は別途非線形特性

により考慮。

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0

100

200

300

400

0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03ひずみ

応力

(N/m

m2) 288 (N/mm2)

εy=1.44×10-3

図-6.8 鉄筋の非線形特性

(3) 地盤ばね

背面岩盤掘削部は,CM~CL 級岩盤相当であり,これは変形係数 500 N/mm2 程

度と評価される。これより背面岩盤掘削部の水平ばね定数としては,道路橋示方書 6)

に準拠した方法で算出した水平地盤反力係数に節点の分担面積を乗算した 85000k

N/m3 とした。

4/3

0 3.0

H

HkH

Bkk ・・・・・・・・・・・・・・ (6.2)

mB

BBmB

mkN

CCmkNE

Ek

mkN

mk

k

mkNk

HH

ML

H

H

Hk

H

40

)(

/500000

)(

)2(3.0

1

)(

3.0

)0.1(

)(

2

20

00

3

0

3

:取水塔基礎部幅

,幅:基礎前面の換算載荷

を採用

て級岩盤の変形係数とし~,:基礎の変形係数

を採用地震時に用いる係数:地盤反力係数の推定

α

水平方向地盤反力係数

る載荷試験の値に相当すの剛体円板による平板:直径

合はグラウトを行わない場数の推定に用いる補正係:

地盤反力係数:基礎前面の水平方向ここに,

(4) 貯水

塔外貯水の物性値については,単位体積重量を 9.81(kN/m3),体積圧縮係数を

2.3×106(kN/m2)とした。

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99

6.2.4 荷重条件

考慮した外力を以下に示す。なお,水位条件は,原則として発電休止中の貯水池

満水位に相当する標高 465m とした。 ・ 自重 ・ 静水圧 ・ 地震による慣性力 ・ 動水圧 このほか,付属構造物である取水塔天端のゲート開閉装置および連絡橋梁を表

-6.4 および図-6.9 で示す質点要素として解析モデルに組み込んだ。

表-6.4 ゲート開閉装置および連絡橋梁荷重値

標高 荷重値 各点の質量 要素数

(m) (tf) (kN) 記号 (t) (点)

表面取水ゲート巻上機 125 1225.83 MA 62.5 2

底部取水ゲート巻上機 70 686.47 MB 17.5 4

修理用ゲート巻上機

470.0

80 784.53 MC 40 2

連絡橋梁 467.5 100 980.67 MD 50 2

図-6.9 ゲート開閉装置および連絡橋梁荷重 設定位置

MA

MB

MC

MD

4.5m

9.4m

1.1m 3.72m

C.L

2.5m

4.5m

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100

6.2.5 解析モデルの検証

解析モデルの検証は,作成した解析モデルによる固有値解析と常時微動計測を行

い,両者を比較することで実施した。固有値解析結果を図-6.10 に,常時微動計測結

果を図-6.11 に,両者を比較したものを表-6.5 にそれぞれ示す。これらの結果,解析モ

デルの妥当性を確認した。

(a)水位 454m 水路軸方向 (b)水位 454m 水路軸直交方向

(c)水位 465m 水路軸方向 (d)水位 465m 水路軸直交方向

図-6.10 主要振動モード

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1.00E-03

1.00E-02

1.00E-01

1.00E+00

1.00E+01

1.00E+02

1.00E+03

1.00E+04

1.00E+05

1.00E+06

1.00E+07

1 10 100

Frequency (Hz)

H/V

Spectr

am

P_I_X①/P_I_Z①

P_I_X②/P_I_Z②

P_I_X③/P_I_Z③

P_I_X/P_I_Z平均

1.00E-03

1.00E-02

1.00E-01

1.00E+00

1.00E+01

1.00E+02

1.00E+03

1.00E+04

1.00E+05

1.00E+06

1.00E+07

1 10 100

Frequency (Hz)

H/V

Spec

tram

P_I_Y①/P_I_Z①

P_I_Y②/P_I_Z②

P_I_Y③/P_I_Z③

P_I_Y/P_I_Z平均

(a) H/V スペクトル(発電停止中)左:水路軸方向 右:水路軸直交方向

1.00E-03

1.00E-02

1.00E-01

1.00E+00

1.00E+01

1.00E+02

1.00E+03

1.00E+04

1.00E+05

1.00E+06

1.00E+07

1 10 100

Frequency (Hz)

H/V

Spe

ctra

m

P_I_X①/P_I_Z①

P_I_X②/P_I_Z②

P_I_X③/P_I_Z③

P_I_X/P_I_Z平均

1.00E-03

1.00E-02

1.00E-01

1.00E+00

1.00E+01

1.00E+02

1.00E+03

1.00E+04

1.00E+05

1.00E+06

1.00E+07

1 10 100

Frequency (Hz)

H/V

Spec

tram

P_I_Y①/P_I_Z①

P_I_Y②/P_I_Z②

P_I_Y③/P_I_Z③

P_I_Y/P_I_Z平均

(b) H/V スペクトル(発電中)左:水路軸方向 右:水路軸直交方向

図-6.11 常時微動観測結果(H/V スペクトル)

表-6.5 固有値解析結果と常時微動計測結果の比較(固有振動数(1 次))

水位 454m モデル 水位 465m(満水位)モデル

X 方向

水路軸方向

Y 方向

水路軸

直交方向

X 方向

水路軸方向

Y 方向

水路軸

直交方向

X 方向加振モデル

水路軸方向 1.869Hz 2.317Hz 1.661Hz 2.086Hz

Y 方向加振モデル

水路軸直交方向 1.868Hz 2.308Hz 1.660Hz 2.073Hz

常時微動

計測結果

(図-6.11)

1.8~2.2Hz 2.4~2.7Hz

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102

6.3 入力地震動

取水塔地点のレベル 2 地震動として,本ケーススタディでは照査用下限加速度応

答スペクトル(国交省,H20)7)を適用し,これに鳥取県西部地震の際に賀祥ダムで観

測された地震波の位相を適用する。入力地震動は,本来,地盤や地形の増幅特性等

を考慮して設定する必要があるが,取水塔地点はダムの近傍にあり,ダム基礎と同等

の岩盤が分布している。このため入力地震動としては前記レベル 2 地震動を用い,取

水塔が設置される基礎岩盤に水平 1 方向(水路軸方向)および鉛直方向に入力した。

入力地震動を図-6.12 に示す。

入力動 水平方向(賀祥波 東西位相)

-500

-250

0

250

500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時 間 (s)

加速度 (gal)

max = 256gal min =-329gal

(a) X 軸:水路軸方向(賀祥波東西方向位相適用)

入力動 鉛直方向(賀祥波 鉛直位相)

-500

-250

0

250

500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時 間 (s)

加速

度 (gal)

max = 258gal min =-200gal

(b) Z 軸:鉛直方向(賀祥波鉛直方向位相適用)

図-6.12 入力地震動

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103

6.4 照査基準

6.4.1 要求性能

レベル 2 地震動に対する取水塔の要求性能を,表-6.6(総合調査報告書 第 1 編第

4章参照)に示す。

表-6.6 独立型取水塔のレベル 2 地震動に対する要求性能および照査対象構造物

(a) 要求性能

要求性能 1:公衆災害の原因とならないための要求性能

地震時に損傷を受けたとしても,周辺に影響を与える漏水が生じないこと。取水口の損傷によ

り周辺に被害を及ぼさないこと。

要求性能 2:発電機能に対する要求性能

地震時に損傷を受けたとしても,所定期間内に通水機能を確保すること。

(b) 対象構造物

・ 基礎部および塔部

・ 取水ゲート,保安ゲート,底部取水ゲート,取水口ゲート

・ 上記ゲートの開閉装置およびそれらの支持部

・ 連絡橋梁

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104

6.4.2 限界状態および照査基準

レベル 2 地震動に対する取水塔の限界状態および照査基準は,要求性能に対応

して表-6.7 および表-6.8 に設定(総合調査報告書 第 1 編第4章参照)した。

表-6.7 取水塔本体のレベル 2 地震動に対する限界状態および照査基準(要求性能 1,2)

対象部位 限界状態 照査基準

取水塔全体 力学的に安定である状態 転倒しないこと

せん断摩擦安全率≦許容安全率 岩着面鉛直応力≦許容地耐力

基 礎 部 力学的特性が弾性域を超えない状態 発生応力≦許容応力度

鋼 製 損傷の修復を容易に行える状態

ゲートが開閉可能な状態

主要構造部材及び補助構造部材のひずみ

≦降伏ひずみの 2 倍程度

残留変位≦ゲート可動範囲

鉄筋コンクリート製 損傷の修復を容易に行える状態

ゲートが開閉可能な状態

(曲げ破壊に対する照査) 作用曲げモーメント≦許容曲げ耐力

あるいは 発生ひずみ≦許容ひずみ*1)

(せん断に対する照査) 作用せん断力≦許容せん断耐力

*1)ケーススタディでは,コンクリートの圧縮ひずみは 0.35%,鉄筋のひずみは降伏ひずみの 2 倍程度

を考える。

表-6.8 ゲート・開閉装置・連絡橋梁のレベル 2 地震動に対する限界状態

および照査基準(要求性能 1,2)

対象部位 限界状態 照査基準

取水口ゲート*2) (要求性能 1)

地震後に速やかに流水遮断可能な状態

(主要構造部材及び補助構造部材のひず

みがほぼ弾性域内にとどまる状態)

主要構造部材及び補助構造部材のひずみ

≦降伏ひずみの 2 倍程度

ゲートのたわみ≦許容変位

同上開閉装置*2)

(要求性能 1) 地震後に使用可能な状態

アンカーボルトの発生応力≦許容応力 装置に損傷が発生しない

取水ゲート,保安ゲート,

底部取水ゲート

(要求性能 2)

損傷の修復が容易にでき取水が可能とな

る状態(主要構造部材及び補助構造部材

のひずみがほぼ弾性域内にとどまる状態)

主要構造部材及び補助構造部材のひずみ

≦降伏ひずみの 2 倍程度

ゲートのたわみ≦許容変位

同上開閉装置

(要求性能 2)

損傷の修復を容易にでき取水が可能とな

る状態

アンカーボルトの発生応力≦許容応力 装置に損傷が発生しない

連絡橋梁

(要求性能 1,2)

落橋しない状態

必要な電力供給が可能な状態

取水塔と橋台間の最大相対変位 ≦桁かかり長

*2) 取水口ゲートおよび同上開閉装置については,流水遮断機能を有する場合に適用される。

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105

6.4.3 耐震性能照査手順

取水塔の耐震性能照査手順は,比較的簡易な標準検討および詳細検討の 2 段階

で行うフローとする。標準検討では,RC 製取水塔の非線形特性をM-φモデルを用

い,動水圧は簡易式により評価される付加質量として考慮する地震応答解析が適用

できる。解析の結果,比較的顕著な塑性化が想定される場合には,詳細検討を行う。

詳細検討は,RC を構成するコンクリートおよび鉄筋の非線形特性および貯水との連

成を考慮するものである。一般には,取水塔のコンクリート部をソリッド要素,鉄筋をリ

バー要素など,また貯水を音響要素などでモデル化した解析モデルを用いる地震応

答解析となる。取水塔は,比較的堅硬な基礎岩盤上に設置されて,基礎岩盤の安定

性が課題となることはほとんどなく,また地震による応答は上部で顕著である。このた

め取水塔の基礎岩盤を解析モデルの一部として考慮する必要性は小さい。しかしな

がら,取水塔基礎岩盤の一部に地質不良部などがある場合では,これを考慮すること

が必要となる。 連絡橋梁に関する照査については,橋梁が可動支承として設置される場合では,こ

れが取水塔の地震時応答に与える影響は軽微である(図-6.56 参照)。このため,橋梁

と取水塔間の遊間長や桁かかり長が不足する場合を除いて,解析モデルにこれを考

慮することは不要である。これは取水塔のみを考慮した標準検討にて検討する。 以上の照査手順を照査フローとして図-6.13 から図-6.14 に示す。

以下,このような照査フローに従ったケーススタディの結果を示すが,対象構造物は,

事前に実施したレベル2地震動による標準検討(M-φモデルによる解析および線形

解析)でコンクリートが塑性化することが確認されたため,本ケーススタディでは標準検

討は省略して詳細検討について示す。標準検討の結果については,ケーススタディに

関る技術検討として,6.6.4 節に示す。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

106

図-6.13 取水塔の照査フロー,全体ステップ

図-6.14 取水塔の照査フロー,詳細検討

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107

6.5 耐震性能照査

6.5.1 動的解析結果

(1) 応答加速度,応答変位および変形

天端の応答加速度および応答変位時刻歴,応答加速度の振動数特性を図-6.15,

図‐6.16 および図‐6.17 に示し,最大変位を示す時刻の変形性状を図-6.18 に示す。 取水塔天端における最大加速度は,水路軸方向で 1,050gal,鉛直方向で 752gal で

あり,入力地震動の最大加速度に対してそれぞれ 3.19 倍,2.91 倍であった。また,最

大変位は,水路軸方向で 9.4cm,鉛直方向で 1.3cm であった。また,塑性化が顕著と

なる 7 秒付近から長周期化している様子が認められる。

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

水路

軸方

向加

速度

(gal)

(a-1) 加速度(水路軸方向)

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

加速

度(g

al)

(a-2) 加速度(鉛直方向)

-15

-10

-5

0

5

10

15

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

水路

軸方

向変

位(c

m)

(b-1) 変位(水路軸方向)

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

変位

(cm

)

(b-2) 変位(鉛直方向)

入力動 水平方向(賀祥波 東西位相)

-500

-250

0

250

500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時 間 (s)

加速

度 (gal)

max = 256gal min =-329gal

(c-1) 入力地震動(水路軸方向)

入力動 鉛直方向(賀祥波 鉛直位相)

-500

-250

0

250

500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時 間 (s)

加速

度 (gal)

max = 258gal min =-200gal

(c-2) 入力地震動(鉛直)

図-6.15 取水塔天端加速度および変位時刻歴

0.1

1

10

100

1 10 100Freq.(Hz)

Spectral Ratio

0~5.12秒を対象

5~10.12秒を対象

1.56Hz1.37Hz

7.42Hz

7.23Hz

(a) 水路軸方向

0.1

1

10

100

1 10 100Freq.(Hz)

Spe

ctral Ratio

0~5.12秒を対象

5~10.12秒を対象

10.74Hz9.77Hz

(b) 鉛直方向

図-6.16 取水塔天端加速度,伝達関数

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108

(a) 水路軸方向 (b) 鉛直方向

図-6.17 取水塔天端最大変位発生時刻(7.17101 秒)の加速度分布

図-6.18 取水塔天端最大変位発生時刻(7.17101 秒)の変形図

(2) 応力およびひずみ

取水塔に発生した応力,ひずみのうち,代表要素(No.8130)(図-6.19 参照)で最大

値を示したときの応力分布を図-6.20 に,ひずみ分布を図-6.21 に示す。また,解析終

了時における応力分布を図-6.22 に,ひずみ分布を図-6.23 に示す。

解析結果によると,コンクリートに発生するひずみは,地震中で最大 2,890μ,解析

終了時では最大 4,390μとなり,取水塔部と基礎コンクリート部との境界付近に集中し

ている。これらのひずみは,ひびわれ限界ひずみを上回っていることからひびわれが

生じるものと推測される。一方,鉄筋に発生するひずみは,地震中で最大 2,130μ,解

析終了時では最大 3,000μとなり,取水塔部と基礎コンクリート部との境界付近に集中

(m/s2) (m/s2)

9.4cm

1.3cm

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

109

している。しかし,鉄筋ひずみは降伏ひずみ(1440μ)の 2 倍以下であり,ほぼ弾性域

にある。

一方,せん断力については,塑性化による剛性低下を考慮した解析を行っているた

め,局所的な破壊が生じることなく解析が正常に終了したことから,せん断耐力に関す

る基準を満たしているものと考えられる。

以上より,取水塔は地震動の影響を受けてコンクリートの一部に塑性ひずみが発生

するものの,鉄筋はほぼ弾性域にとどまることから,地震動による曲げ変形に対して構

造体としての健全性を保全しているものと考えられる。

(3) 動水圧

取水塔本体に作用する動水圧のうち,最大動水圧発生時刻(t=5.59 秒)における動

水圧分布を図-6.24 に,最大動水圧発生位置(上流側)とその背面(下流側)における

動水圧時刻歴,振動数特性を図-6.25 および図-6.26 に示す。これらを概観すると,取

水塔上流面に作用する動水圧分布は概ね放物線状となっており,標高 430m 付近で

最大動水圧が発生している。一方,下流面に作用する動水圧分布は近くに迫る地山

の影響を受けた分布となっていることがわかる。また,標高 415m における平面的な動

水圧分布をみると,構造中心線上に発生する動水圧が最大となっており,凹型形状部

では,その部分の貯水に慣性力が作用する形で動水圧が増大している。また,動水

圧の卓越振動数は,取水塔天端の加速度応答の卓越振動数とほぼ一致する。

以上を総合すると,以下のことがいえる。

・取水塔に発生する動水圧は,加振方向と直交する面の中央部で最大となる。

・凹型形状により,くぼみ部分の貯水に慣性力が作用し,動水圧が増大する。

・地山に近接する場合,取水塔に作用する動水圧と地山に作用する動水圧が複

合的に作用する。

代表要素

(No.8130)

(取水塔背面)

図-6.19 代表要素の応力時刻歴

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110

(a) コンクリート最大主応力

(b) 鉛直方向鉄筋の最大主応力(塔部のみ)

図-6.20 代表要素最大値発生時刻(t=7.81 秒)の応力分布図

(単位:kPa)(単位:kPa)

(単位:kPa) (単位:kPa)

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111

(a) コンクリート最大主ひずみ

(b) 鉛直方向鉄筋の最大主ひずみ(塔部のみ)

図-6.21 代表要素最大値発生時刻(t=7.81 秒)のひずみ分布図

0.00289

0.00213

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112

(a) コンクリート最大主応力

(b) 鉛直方向鉄筋の最大主応力(塔部のみ)

図-6.22 最終時刻の応力分布図

(単位:kPa) (単位:kPa)

(単位:kPa) (単位:kPa)

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113

(a) コンクリート最大主ひずみ

(b) 鉛直方向鉄筋の最大主ひずみ(塔部のみ)

図-6.23 最終時刻のひずみ分布図

0.00439

0.00300

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114

(a) 上流面側

(b) 下流面側

(c) 縦断面(水路中心軸)

(d) 水平面(標高 415m)

図-6.24 最大動水圧発生時刻(t=5.59 秒)の動水圧分布図 (単位:kPa)

標高 415m

(上流側) (下流側)

(上流側) (下流側)

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115

-200

-100

0

100

200

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

動水

圧(k

Pa)

a-1) 上流側(標高 425.5m 位置)

-200

-100

0

100

200

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

動水

圧(k

Pa)

a-2) 上流側(標高 411m 位置)

-200

-100

0

100

200

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

動水

圧(k

Pa)

b-1) 下流側(標高 425.5m 位置)

-200

-100

0

100

200

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

動水

圧(k

Pa)

b-2) 下流側(標高 411m 位置) 図-6.25 最大動水圧発生位置等の動水圧時刻歴

0

50

100

0.1 1 10 100Freq.(Hz)

Spectr

um

(kP

a・se

c)

1.28Hz

a-1) 上流側(標高 425.5m 位置)

0

50

100

0.1 1 10 100Freq.(Hz)

Spectr

um

(kP

a・se

c)

6.96Hz

a-2) 上流側(標高 411m 位置)

0

50

100

0.1 1 10 100Freq.(Hz)

Spectr

um

(kP

a・se

c)

1.28Hz

b-1) 下流側(標高 425.5m 位置)

0

50

100

0.1 1 10 100Freq.(Hz)

Spectr

um

(kP

a・se

c)

2.50Hz

b-2) 下流側(標高 411m 位置) 図-6.26 最大動水圧発生位置等の動水圧スペクトル

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116

6.5.2 耐震性能照査

(1) 曲げ破壊・せん断破壊に対する耐震性能照査

動的解析結果から,取水塔のコンクリートおよび鉄筋の応力・ひずみ挙動をまとめ

れば以下のとおりである。 ・ コンクリートの圧縮応力は最大 19N/mm2程度であり,ほぼ弾性領域にとどまって

いる。 ・ コンクリートの鉛直方向の引張ひずみが,ひび割れ限界ひずみ(εtu=1.58×

10-4)を超えてひび割れが発生する。 ・ コンクリートひび割れ発生箇所の鉛直鉄筋のひずみは,地震中に最大 2,130μ,

解析終了時に最大 3,000μであり,鉄筋単体の降伏ひずみ(1440μ)の 2 倍程

度と,ほぼ弾性領域にとどまっている。 ・ せん断破壊に対しては,塑性化による剛性低下を考慮した解析が正常に終了し

たことから,せん断耐力に関する基準を満たしているものと考えられる。 以上のことから,取水塔は,地震動の変動に対応してコンクリートの一部に塑性ひ

ずみが発生するものの,鉄筋はほぼ弾性域にとどまることから,地震動による曲げ変形

およびせん断変形等に対し構造体としての損傷は発生しない。 (2) 連絡橋梁の耐震性能照査

今回のケーススタディでは,取水塔本体のみで非線形解析を行っていることから,取

水塔下部と連絡橋梁地山側橋台部が同一挙動したと仮定して照査を行う。このとき,

取水塔と連絡橋梁の接続部の相対変位を図-6.27 に示す。これを見ると,水平方向で

は地震中の最大変位量が 9.0cm で残留変位はほとんど発生していない。一方,鉛直

方向では地震中の最大変位量が 2.3cm で残留変位も 1.1cm 程度となっている。

連絡橋梁の桁かかり長は 1m 以上であり,取水塔側と連絡橋梁の間の遊間長が

15cm あることから取水塔と連絡橋が衝突する恐れもない。また,現地の電源ケーブル

は余長をもって設置されている。ただし,連絡橋梁の可動支承の可動範囲は±5.3cm

であることから,支承部の損傷が懸念される。

以上より,連絡橋梁は,地震によって甚大な損傷や落橋などは発生せず,地震後

においても取水塔への連絡は確保され,また電源ケーブルによる電力供給も可能で

ある。

-15

-10

-5

0

5

10

15

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

水路

軸方

向変

位(c

m) 9.0cm (7.17101秒)

-15

-10

-5

0

5

10

15

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

変位

(cm

)

2.3cm (8.21564秒)

図-6.27 連絡橋梁接続部の相対変位時刻歴

水平方向 鉛直方向

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117

(3) ゲート開閉装置の耐震性能照査

取水塔のゲート開閉設備の耐震性能照査は,レベル 2 地震動に対してゲートが開

閉可能な状態にあることを照査する。耐震性能照査が必要となるゲート開閉設備は巻

上機等の開閉装置と操作盤であるが,開閉装置本体は剛な構造であり十分な耐震性

能を有しており,操作盤本体も十分な耐震性能を有しているものが用いられている。こ

のため,耐震性能照査は設備を支持している支承部について実施する。 ここでは,取水口ゲートの巻上機について,動的解析結果に基づく照査事例を以

下に示す。 対象の取水口ゲート巻上機は,2 対のドラムが各々8 本のアンカーボルトで取水塔

本体に固定されている構造となっている(図-6.28 参照)。支承部の耐震性能は,ドラム

中心位置に地震慣性力(HE,VE)が作用するものとし,アンカーボルトに発生する引

抜き力(RV1,RV2)およびせん断力(RH)を求め,これにより発生する応力が許容応力

度以下であることを照査する。

巻上機(1 基当り)

・重量 W= 392 kN

アンカーボルト(1 基当り)

・M36×8 本

・断面積 A=1,216m2/本

・許容引張応力度 :

σa=235 N/mm2 (降伏強度)

・許容せん断応力度 :

τa=136 N/mm2 (σa/√3)

図-6.28 取水口ゲート巻上機支承部と作用荷重の概念

巻上機に作用する地震慣性力は,動的解析より得られた巻上機位置における水平

方向および鉛直方向の最大加速度から,換算震度を求めることにより算出する。 巻上機位置における取水塔の加速度時刻歴を図-6.29 に示すが,時刻 6.6979 秒

に水平下流方向に 1,060gal,時刻 6.9297 秒に鉛直下方に 598gal の最大加速度が

示されている。このため,巻上機には時刻 6.6979 秒に水平上流方向に,時刻 6.9297秒に鉛直上方に最大地震慣性力が作用するものとし,両時刻におけるアンカーボルト

の断面力を算出する。 アンカーボルトの断面力の算出結果を表-6.9 に,照査結果を表-6.10 に示す。

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118

照査結果では、せん断に対しては発生応力が許容応力に比べて十分に小さく、引

抜に対してはアンカーボルトには引張力が発生しない。従って,アンカーボルトはせん

断および引抜きに対して安全であり,取水口ゲートの支承部は十分な耐震性能を有し

ている。

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

時刻(sec)

上下

流方

向加

速度

(gal

)

1,050gal (6.69788秒)

-897gal (8.59658秒)

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

時刻(sec)

鉛直

方向

加速

度(g

al)

752gal (6.69509秒)

-598gal (6.9297秒)

(出力位置)

図-6.29 取水口ゲート巻上機位置における加速度時刻歴

表-6.9 取水口ゲート巻上機支承部のアンカーに作用する最大断面力

条 件 水平加速度最大時 鉛直加速度最大時

時 刻 6.6979 秒 6.9297 秒 水平方向 aH(gal) 1,050 -42

応答加速度 鉛直方向 aV(gal) 743 -598 水平方向 KH 1.07 -0.04

換算震度 鉛直方向 KV 0.76 -0.61 水平方向 HE(kN) 420 -17

地震慣性力 鉛直方向 VE(kN) 297 -239

せん断力(-下流、+上流) RH(kN) 210 -8 RV1(kN) -560 -68 軸力(引抜き力)

(-圧縮,+引張) RV2(kN) -130 -85

表-6.10 取水口ゲート巻上機支承部の照査結果

照査項目 断面力 (kN)

アンカー断面積(mm2)

アンカー本数

作用応力 (N/mm2)

許容応力度 (N/mm2) 判定

せん断 210 1,216 4 43 136 OK

引抜き アンカーボルトに引張力は作用しない。 OK

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

119

(4) 地盤の耐震性能照査

取水塔基礎の耐震安定性は,動的解析結果から得られる取水塔基礎底面の地盤

反力を基に,取水塔全体の転倒,滑動および基礎コンクリートの圧壊が生じないことを

照査する。 本取水塔基礎の下流側は地山に支持されていることから,下流側に対する耐震安

定性は上流側に比べて高いため,照査は上流側に対して実施する。 上流側に対する耐震安定性は,基礎底部上流端の鉛直反力が最大となる時刻

(7.50 秒,図-6.30 参照)が最も厳しい状態と考え、照査は,この時刻における動的解

析より得られた地盤反力に,解析では考慮されていない水重および揚圧力を加算して

得られた合力とモーメントを用いて実施する。 算定した基礎底面における合力および基礎底面上流端まわりのモーメントを表

-6.11 に示す。

-180,000-120,000-60,000

060,000

120,000180,000

0 2 4 6 8 10 12 14時刻 (sec)

鉛直

方向

反力

(kN

) 最大152,127kN(7.49725秒)

図-6.30 動的解析より得られた取水塔基礎底面上流端における鉛直反力時刻歴

表-6.11 取水塔基礎に働く荷重およびモーメント

取水塔基礎に働く合力

鉛直合力 V 水平合力 H

基礎底部上流端まわりの

モーメント M

21,326 kN/m 9,562 kN/m 77,792 (kN・m/m)

※合力,モーメントは取水塔基礎底面単位奥行き当たりの値(奥行き 40m)

①転倒に対する安定

レベル2地震動における取水塔全体の転倒に対する安定は,合力の作用位置が取

水塔基礎底面内にあることを確認する。 次式より算定した合力の作用位置 d は 65.3 m であり,取水塔基礎底面内にあること

から,転倒に対しては安定している。

mV

Md 65.3

326,21

792,77

ここに, d :合力の作用位置 (m)

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

120

M :取水塔基礎底面上流端まわりのモーメント (kN・m/m) V :取水塔基礎底面に働く鉛直合力 (kN/m) B :取水塔基礎底面の幅 (m)

d

HEL.383m

EL.403.5m

EL.411m

EL.465m(満水位)EL.470m

EL.454m

地 山 Z

X

V

q1

M

B=38m3d

図-6.31 取水塔基礎底面に働く荷重およびモーメント

②滑動に対する安定

滑動に対する安定は、取水塔基礎底面に働く水平合力 H が、取水塔基礎と地盤と

の摩擦抵抗力以下であることを確認する。取水塔基礎と地盤との摩擦係数 f は、設計

時の安定計算書から f =0.7 とし、せん断強度は考慮しない。

これより、対象取水塔は滑動に対して安定している。

156.1562,9

326,217.0

H

VfFs

ここに, sF :安全率

V :取水塔基礎底面に働く鉛直合力 (kN/m) H :取水塔基礎底面に働く水平合力(kN/m) f :取水塔基礎底面と地盤との摩擦係数 ( f =0.7)

③圧壊に対する安定

圧壊に対する安定は、取水塔基礎底面上流端における地盤反力度が、基礎コンク

リートの許容圧縮応力度以下であることを確認する。ここで,基礎コンクリートの許容圧

縮応力度は,レベル2地震動に対する照査では圧縮強度とする。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

121

合力の作用位置 d は、 mBmd 67.12365.3 となるため,取水塔基礎底面の地

盤反力は三角形分布となる。これより基礎底面上流端の地盤反力度は 3.90N/mm2 と

なり、基礎コンクリートの許容応力以下であることから,圧壊に対して安定している。 なお,基礎地盤に関しては,対象の取水塔は CH 級の堅硬な岩盤上に設置されて

いることから,地盤の安定性は確保されている。

222 /29/90.3/898,365.33

326,212

3

21 mmNmmNmkN

d

Vq ca

ここに, 1q :取水塔基礎底面上流端における地盤反力度 d :合力の作用位置 (m) V :取水塔基礎底面に働く鉛直合力 (kN/m)

ca :基礎コンクリート許容応力度

6.5.3 まとめ

照査結果をまとめれば以下のとおりである。 ・ 取水塔は,地震動の変動に対応してコンクリートの一部に水平ひびわれが発生

するものの,鉄筋はほぼ弾性域にとどまり,終局状態に対して十分余裕があり,地

震動による曲げ変形およびせん断変形等に対し構造体としての損傷は発生しな

い。 ・ 取水口ゲート巻上機の基礎について,動的解析結果に基づく照査を行ったとこ

ろ,せん断および引抜きに対して十分な耐震性能を有している。 ・ 取水塔基礎地盤について照査を行ったところ,転倒,滑動,圧壊のいずれに対

しても十分な安定性を確保している。 以上の結果から,レベル 2 地震動に対する取水塔の耐震性能は,照査基準を満足

しており,通水機能は地震後も確保されていると評価される。

Page 126: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

122

6.6 技術検討

6.6.1 表面取水ゲートに関する検討

取水塔のケーススタディでは塔部本体を安全側に照査するために,表面取水ゲート

のモデル化は行わなかった。これは,事前に表面取水ゲートの取扱いに係る検討を行

った結果に基づいたものである。以下に,その検討結果について示す。 (1) 検討に用いる解析モデル

解析モデルとして,表-6.12 および図-6.32 に示す 5 種類のモデルを用いた。これを

補足するため詳細モデルの概要を図-6.33(1)に,表面取水ゲートのモデル化の方法

を図-6.33(2)に,ゲートのモデル化の有無による貯水連成の違いを図-6.33(3)に示す。

入力地震動は図-6.12 で示したレベル 2 地震動を用い,水路軸方向および鉛直方向

に入力した。

表-6.12 取水塔詳細モデルの検証,表面遮水壁ゲートのモデル化

モデル 解析条件 検証項目

A: 取水塔単体モデル

非線形 貯水なし

非線形挙動

B1: 取水塔+ゲート(ピン接続)モデル

非線形 貯水なし

ゲート接続条件の検討

B2: 取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル

非線形 貯水なし

ゲート接続条件の検討

C: 取水塔+ゲート(ピン接続)モデル

非線形 貯水あり

貯水との連成解析

D: 取水塔+仮想連成面(前面)モデル

非線形 貯水あり

貯水との連成解析

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

123

A:取水塔単体モデル

B1:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル B2:取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル

C:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル D:取水塔+仮想連成面(前面)モデル

図-6.32 詳細モデルの検証解析,モデル A~D(表-6.12 参照)

ピン接続

鉛直ローラー接

表面取水ゲート

ロ ー ラ ー 接

X 軸方向 (水平)

Z 軸方向 (鉛直)

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124

取水塔躯体

基礎コンクリート

地盤ばね

(1) 全体図 (2) 取水塔と表面取水ゲート

図-6.33 (1) 詳細モデル

(1) 取水塔縦断面) (2) モデル化(モデル B1,B2,C)

図-6.33 (2) 表面取水ゲートのモデル化

貯水との連成

解析上考慮される動水圧

貯水との連成

(1) モデル C (2) モデル D

図-6.33 (3) 貯水との連成モデル

330.7m

82m

522m

277.2m

取水塔表面取水ゲート

(赤色部)

表面取水ゲートを5

分割して、その連結

部分に剛性の小さい

要素を配置

表面取水ゲート

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

125

(2) 解析結果

各モデルともに塔部基部の鉛直方向応力応答が卓越する。検証に用いたレベル 2

地震動およびモデル A の代表要素(要素番号 8130)の鉛直方向応力時刻歴を図

-6.34 に示す。以下,モデル A の代表要素が最大鉛直方向応力を示す時刻 7.108 秒

に対応する応力最大時で各モデルを比較する。各モデル(7.108 秒付近)での最大主

応力分布図を図-6.35~図-6.39 に,代表要素のひずみ時刻歴を図-6.40 に,応力時

刻歴を図-6.41 に示す。また,コンクリートの応力・ひずみ関係を図-6.42 に,頭部の相

対変位履歴を図-6.43 に示すとともに,鉄筋に発生する最大主応力の一覧を表-6.13

に示す。

入力動 水平方向(賀祥波 東西位相)

-500

-250

0

250

500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時 間 (s)

加速

度 (gal)

max = 256gal min =-329gal

(1)地震動(国交省下限スペクトル(H20)に基づく)

-14,000

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

4,000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

時刻(sec)

Z方

向応

力(k

Pa)

7.108秒

(2) 応力時刻歴

代表要素

(No.8130)

(取水塔背面)

図-6.34 代表要素の応力時刻歴,モデル A

Page 130: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

126

モデル A(図-6.35 参照)の塔部の基礎コンクリートの境界付近では,コンクリートの

引張強度(2.171MPa)に近い鉛直応力がやや広い範囲に発生し,また鉄筋は局部的

に 200kN/mm2 程度の応力が認められる。これは,このような範囲ではコンクリートに引

張クラックが入るが,鉄筋はなお弾性域内に留まっていることを示している。

これに対してモデル B1(図-6.36 参照)およびモデル C(図-6.38 参照)は,モデル A

に対してゲート(ピン接続)を加えたものであり,モデル B2(図-6.37 参照)は,モデル A

に対してゲート(鉛直ローラー接続)を加えたものである。全体的なコンクリートおよび

鉄筋応力の様子はモデルAとほぼ同じであるが,ピン接合部においてはゲート分割間

の接続部において局部的に引張応力が発生している。一方,ゲートと塔部をローラー

接続とした場合のモデル B2 では,塔部とローラー接続部の局部的な引張応力は認め

られない。

次に貯水の有無による挙動の違いをみる。モデル B1(図-6.36 参照)とモデル C(図

-6.38 参照)の比較は貯水に影響を示す。両者の応力分布には顕著な差は認められ

ないが,塔部基部要素のひずみ時刻歴では,貯水の影響を考慮するモデル C の方が

やや大きな塑性化ひずみを示している。

更に,ゲートのモデル化の有無による挙動の違いをみる。モデル C(図-6.38 参照)

とモデル D(図-6.39 参照)の比較は貯水連成面の位置の違いによる影響を示す。モ

デル C で見られたゲートの影響による局所的な応力発生が解消されるとともに,モデ

ル D ではひずみや応力がモデル C より大きくなっている。

頭部での相対変位履歴については,ゲートの有無による違い(モデル A とモデルB

1の比較(図-6.43(a)参照)),コンクリートの非線形性の影響(モデル A とモデルB2 の

比較(図-6.43(b)参照))は,変位挙動への影響は少ない。一方,貯水の影響(モデル

A とモデルCの比較(図-6.43(c)参照))は,貯水を考慮することにより変位の周期がや

や長周期化する。更に,ゲートモデル化の有無による影響(モデル C とモデル D の比

較(図-6.43(c),(d)参照))をみると,モデル D でやや大きな変位が見られる。

(3) 考察

表面取水ゲートのモデル化に関して,まず塔部との接続条件を検討した。接続条件

は,ピン接続およびローラー接続である。

この結果,設定した剛性の影響によりピン接続の場合では,ゲートリーフの境界部

に剛性の小さい要素を配置したとしてもこの付近に局部的な応力が発生した。一方,

ローラー接続の場合ではこのような局部応力は発生しなかった。これらのことから,ゲ

ートリーフの剛性が塔部挙動に与える影響は,ゲートリーフを分割してもなお局部的に

は認められる。これらのことから,表面取水ゲートと塔部との接続条件は,ローラー接

続とすることが良い。

次に,ゲートのモデル化の有無による影響を検討した(図-6.32,図-6.33(3)左図)。

Page 131: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

127

水路軸方向(X 軸方向)のみの連成に着目すれば,ゲートを考慮したモデル C と比べ

て,モデル D では表面取水ゲートとコンクリートに囲まれた内部水の動水圧も付加質

量として考慮すれば等価な評価が可能である。また,ゲートと塔部の連成による影響

を取り除くことで,合理的なモデル化およびモデルに取り込む要素を低減することによ

る解析時間の短縮や精度向上が期待できる。両者の結果を比較すると,モデル C に

比べてモデル D では取水塔本体に発生するコンクリートや鉄筋のひずみや応力が大

きくなっている(表-6.13 など)。

なお,コンクリートおよび鉄筋の非線形特性を考慮することにより,塔部の非線形挙

動は適切に評価されたものと考えられる。入力した地震動に対し,解析対象の取水塔

にはいずれのモデルにおいても,塔部基部のコンクリートには引張強度を超える応力

とクラックの発生が想定されるが,鉄筋はなお線形状態に留まる。また,クラック発生後

も解析は正常に継続・完了していることから,発生せん断力は耐力以下であったものと

評価される。

以上の結果から,モデル D では,取水塔の応答が合理的と考えられ,取水塔本体

を安全側に照査できる利点があることから,以後のケーススタディではモデル D を用い

て行うこととした。

Page 132: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

128

(前面) (背面)

(1) コンクリート最大主応力

(前面) (背面)

(2) 鉛直方向鉄筋の最大主応力(塔部のみ)

図-6.35 代表要素最大値発生時刻の応力分布図

(A:取水塔単体モデル; 非線形、貯水なし)

(単位:kPa) (単位:kPa)

(単位:kPa) (単位:kPa)

Page 133: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

129

(前面) (背面)

(1) コンクリート最大主応力

(前面) (背面)

(2) 鉛直方向鉄筋の最大主応力(塔部のみ)

図-6.36 代表要素最大値発生時刻の応力分布図

(B1:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル; 非線形、貯水なし)

(単位:kPa)

(単位:kPa) (単位:kPa)

(単位:kPa)

Page 134: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

130

(前面) (背面)

(1) コンクリート最大主応力

(前面) (背面)

(2) 鉛直方向鉄筋の最大主応力(塔部のみ)

図-6.37 代表要素最大値発生時刻の応力分布図

(B2:取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル; 非線形、貯水なし)

(単位:kPa)

(単位:kPa) (単位:kPa)

(単位:kPa)

Page 135: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

131

(前面) (背面)

(1) コンクリート最大主応力

(前面) (背面)

(2) 鉛直方向鉄筋の最大主応力(塔部のみ)

図-6.38 代表要素最大値発生時刻の応力分布図

(C:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル; 非線形、貯水あり)

(単位:kPa) (単位:kPa)

(単位:kPa) (単位:kPa)

Page 136: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

132

(前面) (背面)

(1) コンクリート最大主応力

(前面) (背面)

(2) 鉛直方向鉄筋の最大主応力(塔部のみ)

図-6.39 代表要素最大値発生時刻の応力分布図

(D:取水塔+仮想連成面(前面)モデル; 非線形、貯水あり)

(単位:kPa) (単位:kPa)

(単位:kPa) (単位:kPa)

Page 137: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

133

-1.5E-03

-1.0E-03

-5.0E-04

0.0E+00

5.0E-04

1.0E-03

1.5E-03

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

ひず

A:取水塔単体モデル(非線形、貯水なし)

-1.5E-03

-1.0E-03

-5.0E-04

0.0E+00

5.0E-04

1.0E-03

1.5E-03

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

ひず

B1:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル(非線形、貯水なし)

-1.5E-03

-1.0E-03

-5.0E-04

0.0E+00

5.0E-04

1.0E-03

1.5E-03

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

ひず

B2:取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル(非線形、貯水なし)

-1.5E-03

-1.0E-03

-5.0E-04

0.0E+00

5.0E-04

1.0E-03

1.5E-03

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

ひず

C:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル(非線形、貯水あり)

-1.5E-03

-1.0E-03

-5.0E-04

0.0E+00

5.0E-04

1.0E-03

1.5E-03

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

ひず

D:取水塔+仮想連成面(前面)モデル(非線形、貯水あり)

図-6.40 コンクリートのひずみ時刻歴(要素番号 8130),鉛直方向

Page 138: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

134

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

応力

(kPa)

A:取水塔単体モデル(非線形、貯水なし)

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

応力

(kPa)

B1:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル(非線形、貯水なし)

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

応力

(kPa)

B2:取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル(非線形、貯水なし)

-25,000

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

応力

(kPa)

C:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル(非線形、貯水あり)

-25,000

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

鉛直

方向

応力

(kPa)

D:取水塔+仮想連成面(前面)モデル(非線形、貯水あり)

図-6.41 コンクリートの応力時刻歴(要素番号 8130),鉛直方向

Page 139: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

135

-25,000

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

-0.0006 -0.0004 -0.0002 0 0.0002 0.0004 0.0006 0.0008 0.001

鉛直方向ひずみ

鉛直

方向

応力

(kP

a)

-25,000

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

-0.0006 -0.0004 -0.0002 0 0.0002 0.0004 0.0006 0.0008 0.001

鉛直方向ひずみ

鉛直

方向

応力

(kP

a)

A:取水塔単体モデル

(非線形、貯水なし)

B1:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル

(非線形、貯水なし)

-25,000

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

-0.0006 -0.0004 -0.0002 0 0.0002 0.0004 0.0006 0.0008 0.001 0.0012

鉛直方向ひずみ

鉛直

方向

応力

(kP

a)

-25,000

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

-0.0006 -0.0004 -0.0002 0 0.0002 0.0004 0.0006 0.0008 0.001

鉛直方向ひずみ

鉛直

方向

応力

(kP

a)

B2:取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル

(非線形、貯水なし)

C:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル

(非線形、貯水あり)

-25,000

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

-0.0006 -0.0004 -0.0002 0 0.0002 0.0004 0.0006 0.0008 0.001 0.0012

鉛直方向ひずみ

鉛直

方向

応力

(kP

a)

D:取水塔+仮想連成面(前面)モデル (非線形、貯水あり)

図-6.42 コンクリートの応力・ひずみ履歴(要素番号 8130),鉛直方向

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

136

-15

-10

-5

0

5

10

15

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

上下

流方

向変

位(c

m)

A:取水塔単体モデル

B1:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル

(a) A:取水塔単体モデルと B1:取水塔+ゲート(ピン接続)モデルの比較

-15

-10

-5

0

5

10

15

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

上下

流方

向変

位(c

m)

A:取水塔単体モデル

B2:取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル

(b) A:取水塔単体モデルと B2:取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデルの比較

-15

-10

-5

0

5

10

15

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

上下

流方

向変

位(c

m)

A:取水塔単体モデルC 取水塔+ゲート(ピン接続)モデル

(c) A:取水塔単体モデルと C:取水塔+ゲート(ピン接続)モデルの比較

-15

-10

-5

0

5

10

15

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時刻(sec)

上下

流方

向変

位(c

m)

A:取水塔単体モデルD 取水塔+ゲート仮想面モデル

(d) A:取水塔単体モデルと D:取水塔+仮想連成面(前面)モデルの比較

図-6.43 頭部の相対変位履歴の比較

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137

表-6.13 代表時刻・代表要素の鉛直方向鉄筋に発生する応力・ひずみ比較

モデル 解析条件 最大主応力

(引張側)

最大主ひずみ

(引張側)

A:取水塔単体モデル 非線形、 貯水なし

199,900 kPa 0.000999

B1:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル 非線形、 貯水なし

225,700 kPa 0.001129

B2:取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル 非線形、 貯水なし

218,300 kPa 0.001092

C:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル 非線形、 貯水あり

214,900 kPa 0.001075

D:取水塔+仮想連成面(前面)モデル 非線形、 貯水あり

283,800 kPa 0.001561

(出力位置)

代表要素

赤色(ハッチング):RC 部

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

138

6.6.2 表面取水ゲート及び貯水が非線形特性に及ぼす影響

6.6.1 項においては表面取水ゲートに関する検討を行い,あわせて貯水の影響につ

いても検討を行った。ここでは,これらの結果を用いて,表面取水ゲート及び貯水が非

線形特性に及ぼす影響について検討する。図-6.44 に,6.6.1 項で検討した各モデル

の取水塔天端における水路軸方向の加速度時刻歴波形を示す。また,表-6.14に,線

形挙動時の 1 次卓越振動数と非線形挙動時の 1 次卓越振動数を示す。なお,線形挙

動時とは時刻 0~5 秒の間,非線形挙動時とは時刻 5~10 秒の間と仮定した。

これらの結果を見ると,貯水がない場合(モデル A,B1,B2)は線形挙動時に 1.953Hz,

非線形挙動時に 1.831Hz となり,ゲートモデルの違いによる影響は見られないが,非

線形挙動による長周期化がみられる。一方,貯水がある場合(モデル C,D)は線形挙

動時に各々1.831Hz,1.587Hz,非線形挙動時に各々1.709Hz,1.465Hz となっている。

このことは,表面取水ゲートの有無により,ゲート内側貯水の付加質量の有無が影響

し,モデル C,D では振動特性に違いがみられた。なお,非線形挙動による長周期化

は同様にみられる。

以上をまとめると,表面取水ゲートの有無は取水塔の振動モードにほとんど影響を

及ぼさないが,貯水の有無は振動モードに影響を及ぼすことが確認された。

表-6.14 非線形挙動に伴う取水塔天端の振動数特性の変化

1 次卓越振動数

線形挙動時

(0 秒~5 秒)

非線形挙動時

(5 秒~10 秒)

モデル A : 取水塔単体モデル 1.953 Hz 1.831 Hz

モデル B1 : 取水塔+ゲート(ピン接続)モデル 1.953 Hz 1.831 Hz

モデル B2 : 取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル 1.953 Hz 1.831 Hz

モデル C : 取水塔+ゲート(ピン接続)モデル 1.831 Hz 1.709 Hz

モデル D : 取水塔+仮想連成面(前面)モデル 1.587 Hz 1.465 Hz

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

139

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

時刻(sec)

上下

流方

向加

速度

(m/s2)

-17.13m/s2 (6.57705秒)

(a) A:取水塔単体モデル

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

時刻(sec)

上下

流方

向加

速度

(m/s

2)

-19.60m/s2 (7.05899秒)

(b) B1:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

時刻(sec)

上下

流方

向加

速度

(m/s

2)

23.08m/s2 (7.054秒)

(c) B2:取水塔+ゲート(鉛直ローラー接続)モデル

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

時刻(sec)

上下

流方

向加

速度

(m/s

2)

13.51m/s2 (9.99842秒)

(d) C:取水塔+ゲート(ピン接続)モデル

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

時刻(sec)

上下

流方

向加

速度

(m/s

2)

-10.50m/s2 (6.69788秒)

(e) D:取水塔+仮想連成面(前面)モデル

図-6.44 取水塔天端の加速度時刻歴(水路軸方向)

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140

6.6.3 地震時動水圧の評価

M-φモデルのような簡易評価を行う際,動水圧相当の付加質量をどの程度与える

かが課題となる。ここでは,ケーススタディに基づき検討した結果について示す。 ケーススタディでは取水塔は剛体ではなく変形の影響が考慮されているため,動水

圧と応答加速度の間には位相差が生じている。また,ケーススタディでは比較的高次

モードが卓越しているため,動水圧と応答加速度の相関性を見るのに工夫が必要とな

った。このような影響を除去するために,動水圧ならびに応答加速度の時刻歴波形に

対してそれぞれ振幅スペクトルを求め,両者の比から付加質量を評価することとした 8)。

この結果に,Westergaard の近似式による付加質量分布および後藤・土岐の式によ

る付加質量分布をフィッティングさせ,適切と思われる付加質量の設定法について検

討した。 ケーススタディに基づき設定した付加質量分布と Westergaard の近似式および後

藤・土岐式から求めた付加質量をフィッティングさせた結果を,図-6.45 に示す。 これによると,Westergaard の近似式に基づく付加質量では上下流側とも 0.7 倍,

後藤・土岐式に基づく付加質量では上流側で 2.0 倍,下流側で 1.5 倍において概ね

フィッティングすることがわかった。両者を比較すると,後藤・土岐式の方が天端に近い

方が大きく,ケーススタディに基づく付加質量分布のプロファイルとの相似性を考慮す

ると,Westergaard の近似式による付加質量の 0.7 倍が概ね妥当であるものといえる。

また,過年度調査で実施した模型振動実験では,取水塔外側に作用する動水圧は

Westergaard の近似式による動水圧の 0.6 倍~0.7 倍程度であったことを考慮しても,

妥当であると考えられる。

410

420

430

440

450

460

470

0 10 20 30 40 50付加質量(kPa/(m/s2))

標高

(m

動的解析結果Westergaard式×0.7倍後藤・土岐式×2.0倍

410

420

430

440

450

460

470

0 10 20 30 40 50付加質量(kPa/(m/s2))

標高

(m

動的解析結果(平均値)Westergaard式×0.7倍後藤・土岐式×1.5倍

(a) 上流側 中央 (b) 下流側 中央

図-6.45 ケーススタディに基づく付加質量分布

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141

6.6.4 簡易モデルによるケーススタディ

(1) 概要

地震後の取水塔機能の検証として連絡橋梁の落橋照査および詳細モデルとの

解析精度比較を主要な目的として,取水塔に設置される連絡橋梁の地震時挙動

を検討する。解析モデルは,取水塔および連絡橋梁を梁要素によりモデル化し,

梁の力学特性として M-φ関係を導入して,モデルの非線形挙動を考慮する簡易

モデルである。簡易モデルの検証は,常時微動計測および取水塔詳細モデルに

よる地震応答解析結果との整合,また平成 22 年度に行った取水塔に関する模型

実験結果等(総合調査報告書第 1 編第 9 章)を参照して行う。 (2) 解析条件

解析には,RC 構造物の非線形解析が適用可能な梁要素解析プログラムである

RESP-T を用いる。

解析条件のうち,入力地震動は詳細モデルの場合と同じとして,取水塔基礎および

橋梁基礎(地山側)に入力する。これを図-6.46 に示す。なお,連絡橋梁の地山側橋

台部は取水塔基礎から 60m 程度離れた斜面上岩盤にあり,このため斜面の応答を考

慮する入力地震動とする方がより厳密ではあるが,本ケーススタディでの入力地震動

は取水塔基礎および橋台部共に同じとする。

解析物性値についても詳細モデルにて適用したものと同じ非線形性および材料強

度として,それぞれ表-6.15 および表-6.16 に示す。

入力動 水平方向(賀祥波 東西位相)

-500

-250

0

250

500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時 間 (s)

加速度 (gal)

max = 256gal min =-329gal

(1) 水平方向(X 方向)

入力動 鉛直方向(賀祥波 鉛直位相)

-500

-250

0

250

500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15時 間 (s)

加速

度 (gal)

max = 258gal min =-200gal

(2) 鉛直方向(Z 方向)

図-6.46 地震動(国交省下限スペクトル(H20)に基づく)

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142

表-6.15 取水塔簡易モデルに用いる解析物性値

項目 部位等 特性 物性値

塔部天端 (EL.470m~EL.465m)

鉄筋コンクリート 剛体 質量密度 ρc 2.5g/cm3

質量密度 ρc 2.5g/cm3 弾性係数 Ec※1 27.5kN/mm2 コンクリート 非線形

ポアソン比 νc 0.2

質量密度 0.0g/cm3 弾性係数 200kN/mm2

塔部 (EL.465m~EL.403.5m)

鉄筋,鉄骨 非線形ポアソン比 0.3

質量密度 ρc 2.5g/cm3 弾性係数 Ec※1 27.5kN/mm2 基礎コンクリート 鉄筋コンクリート 線形 ポアソン比 νc 0.2

貯水部 塔外貯水 質量密度 1.0g/cm3

背面岩盤 CM~CL 級岩盤 線形 水平方向地盤反力

係数※2 85000kN/m3

※1 コンクリートの弾性係数は,圧縮強度をもとにコンクリート標準示方書を参照

※2 背面岩盤掘削部の水平ばね定数は,CM~CL 級岩盤の変形係数を 500 N/mm2 とし,道路橋示方書

に準拠した方法で算出した水平地盤反力係数に節点の分担面積を乗算したものとした。

表-6.16 取水塔簡易モデルに用いる材料強度

項目 種別 強度

(単位:N/mm2)備考

圧縮強度 29.0 材料強度試験値 引張強度 2.171 コンクリート標準示方書による コンクリート

せん断強度 0.614 コンクリート標準示方書による 鉄筋(SD295) 降伏強度 325 鉄骨(SS400) 降伏強度 195

(3) モデル化の方法

1) 概要

取水塔簡易モデルの概要を表-6.17,図-6.47 および図-6.48 に示す。

表-6.17 取水塔簡易モデルのモデル化の概要

要素種別 梁要素(平面保持仮定のフレームモデル)

境界条件 下端を固定

鉄筋・鉄骨のモデル化 鉄骨を鉄筋相当に換算

取水塔内部の水 固定荷重を設定

取水塔外周の水 動水圧に相当する付加質量を設定

付属設備のモデル化 連絡橋梁を梁要素モデル化

その他は固定荷重としてモデル化

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143

図-6.47 モデル化の範囲

(剛体材料,非線形材料,線形材料)

図-6.48 モデル化のイメージ

剛体

線形

非線形

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144

2) 作成方針

簡易モデルの作成は,以下の方針で作成する。

【モデルの設定】

・ 平面保持の仮定に基づき,断面を梁モデルで評価する。

・ 解析モデル下端は固定端とする。

・ 詳細モデルによる検討結果を踏まえて,表面取水ゲート部分は考慮しない。

・ RC 内に配置された鉄骨は鉄筋換算して耐力算定時に評価する。

・ 曲げ耐力の非線形特性は,曲げモーメントMと曲率φで定義するトリリニアの特

性で評価する。

・ 取水塔断面内部の水は付加質量として評価する。

・ 取水塔周辺の水は Westergaard 式による評価値を基本として,付加質量により

考慮する。

【材料特性の設定】

・ 塔部(EL+411m~EL+465m)は,コンクリートの曲げひび割れならびに鉄筋降伏を

考慮するため,非線形部材とする。

・ 基礎コンクリート部および塔部(EL+411m 以下)は地震時に鉄筋降伏が発生しな

いと判断し線形材料とし,塔部天端部は剛体として取り扱う。

・ 曲げ耐力の非線形特性は,曲げモーメントM~曲率φ関係で定義するトリリニア

の特性で評価する(図-6.49)。

図-6.49 M~φモデル

・ 曲げ耐力,せん断耐力の算定には道路橋示方書Ⅴ耐震設計編(平成 14 年 3

月)等を参考に,コンクリートの実強度を用いる。

・ 非線形材料の履歴特性は,繰り返し載荷時の部材の剛性劣化を表現できるモ

デルとして,鉄筋コンクリート部材の復元力特性を良く表現できるとされている

Takeda モデル(「道路橋示方書・同解説V耐震設計編・平成 14 年 3 月」p334)

を用いる(図-6.50)。

曲げモーメントM

曲率φ

Mc

Mu My0

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145

図-6.50 Takeda モデル(「道路橋示方書・同解説V耐震設計編・平成 14 年 3 月」より引用)

・ 減衰は,「道路橋示方書・同解説V耐震設計編 参考資料 5.2 減衰力のモデル

化」に則りレイリー減衰により評価する(図-6.51)。

KMCR M :質量マトリックス、 K :剛性マトリックス

j

i

ij

ij

ij

ji

h

h

11222

i , ih :固有周期 iT のときの角振動数、減衰定数

j , jh :固有周期 jT のときの角振動数、減衰定数

今回の解析では,非線形特性を設定した取水塔部分の降伏剛性(EIy)を用い

た場合の固有値解析を実施し,モード減衰である hi,hj を算定する。

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146

次数 円振動数ω 減衰定数 ω2^2-ω1^2 ##########1 4.87821 0.02053 α= 0.190706 156.93917 0.03229 β= 0.00040

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0

減衰

定数

h

振動数 f(Hz)

減衰定数と振動数

レーリー減衰(橋軸)

減衰定数(橋軸方向)

EIy=My0/φy0

ここに,EIy:降伏剛性(下図参照),My0:初降伏曲げモーメント(kN・m),φy0:初

降伏時曲率(1/m)

曲げモーメントM

曲率φ

Mc

Mu My0

降伏剛性

Φyo

Mu:終局曲げモーメント

My0:初降伏時曲げモーメント

Mc:曲げひび割れモーメント

モード減衰定数をひずみエネルギー比例型減衰で計算するときに用いた各部

材の減衰定数は,線形部材で 0.05,非線形部材で 0.02 とした。

図-6.51 解析に用いた Rayleigh 減衰

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147

【連絡橋梁支承部のモデル化】

連絡橋梁の支承部は,橋台(地山)側が固定支承,取水塔側が可動支承となって

いる。可動支承では滑りに対する摩擦抵抗と可動範囲を超えた場合の衝突による抵

抗が作用することから両者をモデル化するため並列の非線形バネを用いる。また,可

動支承が可動範囲を超えた場合には固定支承側にも衝撃力が作用することから,固

定支承側にも非線形バネを用いる(図-6.52)。

図-6.52 連絡橋梁支承部のモデル化

【貯水池の影響】

貯水池の影響は,詳細モデルの解析結果(6.6.3 項参照)に基づく検討から,

Westergaard 式による付加質量の 0.7 倍を与えてモデル化する。

3) モデル作成の手順

モデルの作成にあたっては断面形状や鉄筋量等の変化点を境界として,鉄筋や鉄

骨量を適切にモデルに反映させる(図-6.53)。梁要素へのモデル化は,取水塔の断

面形状が図-6.54 に示すようにせん断力に対してコンクリート及び鉄筋の負担が等価と

なる断面形状に換算する。作成した簡易解析モデルを,取水塔構造図と比較して図

-6.55 に示す。

(並列型非線型バネ)

+35.353kN

-35.353kN

Ks

反力

移動量

Ks:水平方向バネ係数=十分に大きな値

反力

移動量 Ks

Ks:水平方向バネ係数=十分に大きな値

53mm

53mm

耐力値 P

耐力値 P

(a) 摩擦抵抗バネ (b) 可動シュー衝突後に作用するバネ

(非線型バネ)

移動量

Ks

Ks:水平方向バネ係数=十分に大きな値

反力

耐力値 P

耐力値 P

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148

図-6.53 取水塔断面形状及び鉄筋量等の変化点

塔内貯水

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149

図-6.54 取水塔断面形状の等価換算(EL.421m の例)

図-6.55 取水塔塔部の簡易解析モデル

(15)

(15)

(6)

(6)

(6)

(17)

(2)

(2)

(16)

(8)

(11)

(2)

(2)

(16)

(8)

(11)

Y

X

14.0m

17.0m

3.0m

7.6m

5.5m 8.5m

有効せん断断面

下流側

上流側 コンクリートの

せん断耐力を加味する鉄筋

加振 方向

加振点

加振点

地盤バネ

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150

(4) 解析結果

解析は,先ずM-φモデルの妥当性を確認するために塔部単体モデルによる解析

を実施し,妥当性を確認した後,連絡橋梁を追加したモデルによる解析を実施した。

1) 塔部単体モデルによる固有値解析

固有値解析については,詳細モデル解析の検証を目的として,初期剛性値(線形

物性値)を用い,付加質量を考慮したモデルによる固有値解析を行った。その結果を

表-6.18 に示す。これより,両者の固有周期は概ね一致する。

表-6.18 固有値解析結果

モデル(主要要素) 貯水の影響 剛性 1 次固有周期(s)

簡易モデル(梁要素) 考慮 初期剛性 0.579

詳細モデル(ソリッド要素) 考慮 初期剛性 0.602

2) 塔部+連絡橋梁モデルによる解析

前項のとおり簡略モデルによる解析モデル妥当性を検証したことから,連絡橋梁を

付加したモデルによる解析を行った。

① 応答加速度・応答変位

塔部天端における上下流方向の応答加速度および応答変位について,「塔部単体

モデル」と「塔部+連絡橋梁モデル」で比較したものを図-6.56 に示す。これによると,

両者に差はほとんどなく,連絡橋梁が塔部に及ぼす影響は極めて小さいといえる。

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

時刻(sec)

上下

流方

向加

速度

(gal)

簡易モデル(塔部+橋梁)簡易モデル(塔部のみ)

塔部のみ   1122gal (6.8秒)

塔部+橋梁 1139gal (6.8秒)

-15

-10

-5

0

5

10

15

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

時刻(sec)

上下

流方

向変

位(cm) 簡易モデル(塔部+橋梁)

簡易モデル(塔部のみ)

塔部のみ  -12.96cm (7.7秒)

塔部+橋梁 -13.1cm (7.7秒)

図-6.56 塔部天端における応答加速度および応答変位

(簡易モデル:「塔部単体モデル」と「塔部+連絡橋梁モデル」の比較)

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151

② 応答断面力

簡易モデル解析で得られた最大応答断面力の一覧を表-6.19 に,断面力分布図を

図-6.57 に,そして代表的な標高における曲げモーメントM~曲率φの履歴図を図

-6.58 に示す。また,鉄筋降伏位置を図-6.59 に示す。これによると,詳細モデルの解

析結果と同様,塔部下端の基礎コンクリートとの接合部付近や鉄筋量が変化する断面

において,鉄筋が降伏する結果となった。

表-6.19 最大応答断面力の一覧(簡易モデル:塔部+連絡橋梁モデル)

i 端 j 端 座標 Mmax φmax Mmax φmax Qy(m) (kN・m) (kN・m) (kN)

操作台 1 1   470.0 0 1.18E-15 0 -9.31E-17 19454| 2 467.5 48635 1.77E-09 -46089 -1.68E-09| 2 2 467.5 48635 1.77E-09 -46089 -1.68E-09 39335

操作台 3 465.0 146973 5.34E-09 -140349 -5.10E-09塔部 3 3 465.0 146973 1.06E-06 -140349 -1.01E-06 63825| 4 460.0 466090 3.35E-06 -451766 -3.24E-06| 4 4 460.0 466090 3.35E-06 -451766 -3.24E-06 86303| 5 454.0 963354 6.92E-06 -965562 -6.93E-06| 5 5 454.0 963354 6.92E-06 -965562 -6.93E-06 104260| 6 447.2 1485890 1.07E-05 -1593710 -1.14E-05| 6 6 447.2 1502730 1.08E-05 -1614980 -1.16E-05 100104| 7 445.0 1576230 2.24E-05 -1666130 -7.16E-05| 7 7 445.0 1627100 1.16E-05 -1798590 -1.28E-05 106592| 8 440.0 1857800 1.39E-04 -2123470 -6.78E-05| 8 8 440.0 1920800 1.36E-05 -2146240 -1.51E-05 120219| 9 436.5 2166300 1.48E-05 -2351920 -4.10E-05| 9 9 436.5 2168960 1.48E-05 -2360130 -4.26E-05 128111| 10 435.0 2240890 2.55E-05 -2474540 -6.49E-05| 10 10 435.0 2253530 1.52E-05 -2503080 -3.75E-05 132449| 11 430.0 2409750 3.00E-05 -2938990 -9.33E-05| 11 11 430.0 2429790 1.64E-05 -2947510 -6.44E-05 158645| 12 425.7 2687080 5.21E-05 -3344670 -1.03E-04| 12 12 425.7 2694500 5.33E-05 -3347660 -1.03E-04 171523| 13 425.0 2747140 6.16E-05 -3424150 -1.10E-04| 13 13 425.0 2753950 4.43E-05 -3429620 -9.72E-05 185271| 14 421.0 3052040 8.57E-05 -3884560 -1.39E-04| 14 14 421.0 3053130 7.58E-05 -3888590 -7.45E-05 206664| 15 416.5 3447750 2.44E-04 -4347340 -1.08E-04| 15 15 416.5 3432880 1.65E-04 -4346480 -1.08E-04 214973| 16 415.0 3476150 3.97E-04 -4487530 -1.18E-04

| 16 16 415.0 3682890 1.22E-04 -4500450 -1.06E-04 263019塔部 17 411.0 3849980 5.63E-04 -5000000 -1.39E-04

  17 17 411.0 4089410 1.07E-06 -5010510 -1.32E-06 34735118 405.0 4972840 1.31E-06 -6498430 -1.71E-06

床版 18 18 405.0 4972840 1.31E-06 -6498430 -1.71E-06 40702719 403.5 5289010 1.39E-06 -7093000 -1.86E-06

  19 19 403.5 5289010 1.92E-09 -7093000 -2.58E-09 438550  20 401.0 5992230 2.18E-09 -8167560 -2.97E-09  20 20 401.0 5992230 1.63E-06 -8167560 -2.22E-06 500752

21 395.0 7835980 2.13E-06 -11136000 -3.02E-06  21 21 395.0 7835980 2.13E-06 -11136000 -3.02E-06 574961

22 389.0 9911520 2.69E-06 -14561700 -3.95E-06底版 22 22 389.0 9911520 3.60E-09 -14561700 -5.30E-09 651703

23 383.0 12258100 4.46E-09 -18433900 -6.70E-09

部材節点番号 せん断力

上流→下流方向加振 下流→上流方向加振曲げモーメント、曲率

要素

(*ハッチングは鉄筋の塑性化を示す。)

Page 156: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

152

(a) 軸力 (b) せん断力 (c) 曲げモーメント

図-6.57 断面力分布図(簡易モデル:塔部+連絡橋梁モデル)

図-6.58 M-φ履歴図(簡易モデル:塔部+連絡橋梁モデル)

‐5000000

‐4000000

‐3000000

‐2000000

‐1000000

0

1000000

2000000

3000000

4000000

5000000

‐0.001 ‐0.0005 0 0.0005 0.001

曲げ

モー

メン

ト(kN・

m)

曲率 (1/m)

EL+454m

‐5000000

‐4000000

‐3000000

‐2000000

‐1000000

0

1000000

2000000

3000000

4000000

5000000

‐0.001 ‐0.0005 0 0.0005 0.001

曲げ

モー

メン

ト(kN・

m)

曲率 (1/m)

EL+445m

‐5000000

‐4000000

‐3000000

‐2000000

‐1000000

0

1000000

2000000

3000000

4000000

5000000

‐0.001 ‐0.0005 0 0.0005 0.001

曲げ

モー

メン

ト(kN・

m)

曲率 (1/m)

EL+440m

‐5000000

‐4000000

‐3000000

‐2000000

‐1000000

0

1000000

2000000

3000000

4000000

5000000

‐0.001 ‐0.0005 0 0.0005 0.001

曲げ

モー

メン

ト(kN・

m)

曲率 (1/m)

EL+435m

‐5000000

‐4000000

‐3000000

‐2000000

‐1000000

0

1000000

2000000

3000000

4000000

5000000

‐0.001 ‐0.0005 0 0.0005 0.001

曲げ

モー

メン

ト(kN・

m)

曲率 (1/m)

EL+430m

‐5000000

‐4000000

‐3000000

‐2000000

‐1000000

0

1000000

2000000

3000000

4000000

5000000

‐0.001 ‐0.0005 0 0.0005 0.001

曲げ

モー

メン

ト(kN・m)

曲率 (1/m)

EL+425m

‐5000000

‐4000000

‐3000000

‐2000000

‐1000000

0

1000000

2000000

3000000

4000000

5000000

‐0.001 ‐0.0005 0 0.0005 0.001

曲げ

モー

メン

ト(kN・

m)

曲率 (1/m)

EL+421m

‐5000000

‐4000000

‐3000000

‐2000000

‐1000000

0

1000000

2000000

3000000

4000000

5000000

‐0.001 ‐0.0005 0 0.0005 0.001

曲げ

モー

メン

ト(kN・

m)

曲率 (1/m)

EL+415m

EL+411m

-5000000

-4000000

-3000000

-2000000

-1000000

0

1000000

2000000

3000000

4000000

5000000

-0.001 -0.0005 0 0.0005 0.001

曲率 (1/m)

曲げ

モー

メン

ト (kN

・m)

7.526秒

1,220秒

圧縮(地震変動分) 引張(地震変動分) 上流→下流方向加振 下流→上流方向加振 上流→下流方向加振 下流→上流方向加振

107(kN・m) 106(kN)106(kN)

Page 157: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

153

ハッチング位置の鉄筋が降伏

図-6.59 鉄筋降伏位置(簡易モデル:塔部+連絡橋梁モデル)

③ 照査方法

簡易モデルの解析は「道路橋示方書Ⅴ耐震設計編・同解説」(平成 14 年 3 月)に基

づき,主に以下に示す項目について照査を行う。

a) 応答塑性率による曲げ破壊に対する照査

塔部の損傷が修復を容易に行い得る限界状態以下であることを確認するために許

容塑性率を照査する。実際の照査では最大曲率φmax が許容曲率φa以下であるこ

とを照査する。 φmax≦φa 、φa=(φu-φy0)/α + φy0 ここで φu:終局曲率、φy0:初降伏時曲率、 α :安全係数(タイプⅡ地震=1.5 内陸直下型地震)

b) せん断破壊に対する照査

塔部に発生する最大応答せん断力Smax が、せん断耐力Ps以下であることを照査

し、脆性的な破壊となるせん断破壊型とならないことを確認する。

c) 残留変位

取水塔天端位置での残留変位δr が許容残留変位δra 以下であることを照査する。

照査では,動的解析より得られた最大応答塑性率μr を用いて、許容残留変位δra

Page 158: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

154

以下であることを照査する。

ここで動的解析結果より算出した最大応答塑性率μr は、塔部天端位置での最大

応答変位δmax と、塔部降伏発生時の天端位置変位δy(地震時保有水平耐力算定

時に算出された値)から下式より算出する。また許容残留変位δra は塔部の傾きを

1/100 として算定する。

最大応答塑性率μr=(δmax-δy)/δy+1

これより,残留変位δrは下式より算出する。

残留変位δr=CR・(μr-1)・(1-γ)δy

=0.6・(μr-1)δy (RC 材であることからγ=0.0,CR=0.6)

④ 照査結果

a) 曲げ破壊、せん断破壊に対する照査

曲げ破壊に対する照査結果を表-6.20 に,せん断破壊に対する照査結果を表-6.21

に示す。これによれば,曲げに関しては,最大応答曲率φmax が許容曲率φa を上回

った箇所はなく,φmax/φa が最大でも 0.37 であることから,曲げ破壊に至っていな

いことがわかる。一方,せん断に関しては,せん断力がせん断耐力を上回っていること

から,より詳細な照査が必要となる。

Page 159: 発電設備耐震性能調査 ケーススタディ( 塔型設備).pdf

平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

155

表-6.20 曲げ破壊に対する照査結果(塔部+連絡橋梁モデル)

i 端 j 端 座標 Mmax φmax 許容曲率 φmax/φa Mmax φmax 許容曲率 φmax/φa

(m) (kN・m) φa(1/m) (kN・m) φa(1/m)

1 1   470.0 0 1.18E-15 0 -9.31E-17 -

2 467.5 48635 1.77E-09 -46089 -1.68E-09

2 2 467.5 48635 1.77E-09 -46089 -1.68E-09 -

3 465.0 146973 5.34E-09 -140349 -5.10E-09

3 3 465.0 146973 1.06E-06 2.71E-03 0.00 -140349 -1.01E-06 -2.17E-03 0.00 OK

4 460.0 466090 3.35E-06 2.71E-03 0.00 -451766 -3.24E-06 -2.17E-03 0.00 OK

4 4 460.0 466090 3.35E-06 2.71E-03 0.00 -451766 -3.24E-06 -2.17E-03 0.00 OK

5 454.0 963354 6.92E-06 2.71E-03 0.00 -965562 -6.93E-06 -2.17E-03 0.00 OK

5 5 454.0 963354 6.92E-06 2.02E-03 0.00 -965562 -6.93E-06 -1.63E-03 0.00 OK

6 447.2 1485890 1.07E-05 2.02E-03 0.01 -1593710 -1.14E-05 -1.63E-03 0.01 OK

6 6 447.2 1502730 1.08E-05 2.02E-03 0.01 -1614980 -1.16E-05 -1.63E-03 0.01 OK

7 445.0 1576230 2.24E-05 2.02E-03 0.01 -1666130 -7.16E-05 -1.63E-03 0.04 OK

7 7 445.0 1627100 1.16E-05 2.02E-03 0.01 -1798590 -1.28E-05 -1.30E-03 0.01 OK

8 440.0 1857800 1.39E-04 2.02E-03 0.07 -2123470 -6.78E-05 -1.30E-03 0.05 OK

8 8 440.0 1920800 1.36E-05 1.61E-03 0.01 -2146240 -1.51E-05 -1.13E-03 0.01 OK

9 436.5 2166300 1.48E-05 1.61E-03 0.01 -2351920 -4.10E-05 -1.13E-03 0.04 OK

9 9 436.5 2168960 1.48E-05 1.61E-03 0.01 -2360130 -4.26E-05 -1.13E-03 0.04 OK

10 435.0 2240890 2.55E-05 1.61E-03 0.02 -2474540 -6.49E-05 -1.13E-03 0.06 OK

10 10 435.0 2253530 1.52E-05 1.50E-03 0.01 -2503080 -3.75E-05 -1.03E-03 0.04 OK

11 430.0 2409750 3.00E-05 1.50E-03 0.02 -2938990 -9.33E-05 -1.03E-03 0.09 OK

11 11 430.0 2429790 1.64E-05 1.39E-03 0.01 -2947510 -6.44E-05 -9.31E-04 0.07 OK

12 425.7 2687080 5.21E-05 1.39E-03 0.04 -3344670 -1.03E-04 -9.31E-04 0.11 OK

12 12 425.7 2694500 5.33E-05 1.39E-03 0.04 -3347660 -1.03E-04 -9.31E-04 0.11 OK

13 425.0 2747140 6.16E-05 1.39E-03 0.04 -3424150 -1.10E-04 -9.31E-04 0.12 OK

13 13 425.0 2753950 4.43E-05 1.27E-03 0.03 -3429620 -9.72E-05 -8.68E-04 0.11 OK

14 421.0 3052040 8.57E-05 1.27E-03 0.07 -3884560 -1.39E-04 -8.68E-04 0.16 OK

14 14 421.0 3053130 7.58E-05 1.62E-03 0.05 -3888590 -7.45E-05 -7.64E-04 0.10 OK

15 416.5 3447750 2.44E-04 1.62E-03 0.15 -4347340 -1.08E-04 -7.64E-04 0.14 OK

15 15 416.5 3432880 1.65E-04 1.62E-03 0.10 -4346480 -1.08E-04 -7.64E-04 0.14 OK

16 415.0 3476150 3.97E-04 1.62E-03 0.25 -4487530 -1.18E-04 -7.64E-04 0.15 OK

16 16 415.0 3682890 1.22E-04 1.52E-03 0.08 -4500450 -1.06E-04 -7.54E-04 0.14 OK

17 411.0 3849980 5.63E-04 1.52E-03 0.37 -5000000 -1.39E-04 -7.54E-04 0.18 OK

17 17 411.0 4089410 1.07E-06 -5010510 -1.32E-06 -

18 405.0 4972840 1.31E-06 -6498430 -1.71E-06

18 18 405.0 4972840 1.31E-06 -6498430 -1.71E-06 -

19 403.5 5289010 1.39E-06 -7093000 -1.86E-06

19 19 403.5 5289010 1.92E-09 -7093000 -2.58E-09 -

20 401.0 5992230 2.18E-09 -8167560 -2.97E-09

20 20 401.0 5992230 1.63E-06 -8167560 -2.22E-06 -

21 395.0 7835980 2.13E-06 -11136000 -3.02E-06

21 21 395.0 7835980 2.13E-06 -11136000 -3.02E-06 -

22 389.0 9911520 2.69E-06 -14561700 -3.95E-06

22 22 389.0 9911520 3.60E-09 -14561700 -5.30E-09 -

23 383.0 12258100 4.46E-09 -18433900 -6.70E-09

曲げ照査

要素

節点番号照査結果

上流→下流方向加振 下流→上流方向加振

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

156

表-6.21 せん断破壊に対する照査結果(塔部+連絡橋梁モデル)

要素 i 端 j 端 座標 最大値x せん断耐力 Smax/Ps(m) Smax(kN) Ps(kN)

1 1   470.0 19454 -2 467.5

2 2 467.5 39335 -3 465.0

3 3 465.0 63825 49291 1.29 NG4 460.0

4 4 460.0 86303 49291 1.75 NG5 454.0

5 5 454.0 104260 49291 2.12 NG6 447.2

6 6 447.2 100104 49291 2.03 NG7 445.0

7 7 445.0 106592 49291 2.16 NG8 440.0

8 8 440.0 120219 57235 2.10 NG9 436.5

9 9 436.5 128111 57235 2.24 NG10 435.0

10 10 435.0 132449 80467 1.65 NG11 430.0

11 11 430.0 158645 81719 1.94 NG12 425.7

12 12 425.7 171523 81719 2.10 NG13 425.0

13 13 425.0 185271 81719 2.27 NG14 421.0

14 14 421.0 206664 90788 2.28 NG15 416.5

15 15 416.5 214973 90788 2.37 NG16 415.0

16 16 415.0 263019 93295 2.82 NG17 411.0

17 17 411.0 347351 -18 405.0

18 18 405.0 407027 -19 403.5

19 19 403.5 438550 -20 401.0

20 20 401.0 500752 -21 395.0

21 21 395.0 574961 -22 389.0

22 22 389.0 651703 -23 383.0

照査結果

節点番号 せん断照査

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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b) 残留変位に対する照査

残留変位に対する照査結果を表-6.22 に示す。

取水塔天端では上下流方向に 0.043mの残留変位が発生するが,この値は許容残

留変位以下である。

表-6.22 残留変位照査結果(上下流方向)

最大応答変位

δmax(m)

降伏変位

δy(m)

最大応答

塑性率 残留変位 許容残留変位 照査結果

操作台位置 操作台位置 μmax δr(m) δra(m)

0.131 0.060 2.183 0.043 0.650 O.K

*)許容残留変位=0.65m は

塔部 EL+405m~EL+470:高さ 65m の 1/100

注) ここで降伏変位δyは,塔部の何れかの箇所で最初に降伏が生じた時

刻での、操作台位置の応答変位としている。

c) 支承部の照査

取水塔天端と連絡橋梁の最大相対変位量は,取水塔下端及び連絡橋梁地山側と

も同一の地震動を入力しているので図-6.56 から 13.1cm となる。連絡橋梁の桁かかり

長は 1m 以上あることから落橋の恐れはない。また,取水塔と連絡橋梁の遊間長も

15cm であることから両者が衝突する恐れもない。しかし,連絡橋梁の可動支承におけ

る許容変位量は±5.3cm であることから,支承部の損傷が発生するものと考えられる。

⑤ まとめ

簡易モデルによる取水塔耐震性能の照査では,対象としたレベル2地震動に対して,

機能を満足しないことから,より詳細な照査が必要となる結果となったが,解析に用いる

モデルについては概ね妥当であったと考えられる。

(5) 簡易モデルによる解析のまとめ

地震後の取水塔機能の検証として連絡橋梁の落橋照査および詳細モデルとの解

析精度比較を主要な目的として,取水塔に設置される連絡橋梁の地震時挙動の検討

を行った。 その結果,本検討に用いた解析モデルは固有値解析の結果から詳細モデルと同

等の精度を有していることがわかった。なお,残留変位は 4.3cm であり連絡橋梁は落

橋しない結果となったが,せん断力は同耐力を上回る結果となったことから,詳細モデ

ルによる検討が必要となる。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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参考文献

1) (社)ダム・堰施設技術協会:ゲート総覧Ⅰ~Ⅴ

2) (社)土木学会:コンクリート標準示方書 2007 年制定

3) 長沼一洋,大久保雅章:繰返し応力下における鉄筋コンクリート板の解析モデル,日本建築

学会構造系論文集,第 536 号,pp.135~142,2000.10

4) 玉井真一他:一軸引張部材における鉄筋の降伏以降の平均応力-平均ひずみ関係,土木学

会論文集,第 378 号/V-6,1987.2

5) (社)日本建築学会:鉄筋コンクリート終局強度設計に関する資料,1987.9

6) (社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 IV 下部構造編,2002.3

7) 三石真也,島本和仁:大規模地震に対するダム耐震性能照査について,ダム技術,No.274,

2009

8) 星隈順一他:大規模地震時における水中橋脚の挙動と動水圧の評価法,土木学会構造工

学論文集,Vol.47A,2001.3

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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7. まとめ

7.1 サージタンク

RC 構造サージタンクの耐震性能照査に関するケーススタディを実施し,照査方法

について検討を行った。検討内容および結果を以下にまとめる。 (1) 解析により評価されるサージタンクの応答は,構造形式や内部の水位条件に対し

妥当な性状と考えられ,また常時微動計測結果とも一致する。

(2) サージタンク内の動水圧挙動は,水柱高さに応じた周波数をもつ共振が卓越し,

このときの動水圧は簡略式による評価より顕著に大きい。一方,サージタンク内の

動水圧の共振周波数が入力地震動の卓越振動数と離れている場合では,動水

圧は大きくならない。

(3) 動水圧がサージタンクの耐震性能に与える影響は,偏圧としてサージタンクの曲

げ変形に与える影響と水圧としてサージタンク構造の応力に与える影響があり,そ

の程度は地震動に対するサージタンク挙動に比べて小さい。

(4) 適用したレベル2地震動に対しては,サージタンクの地上部下部において,コンク

リートの水平ひび割れが生じ,また周方向の広い範囲でせん断耐力を上回るせ

ん断力が発生した。

(5) ケーススタディでは考慮しなかった地形による地震動への影響については,サー

ジタンク地点での地震動は,原地震動に比べてやや規模が小さくなり,サージタ

ンクに発生する損傷は大幅に軽減されるものと推定された。

(6) サージタンクの要求性能,照査対象構造物,照査基準等を設定し,これをケース

スタディにより検証した。 (7) 上記をまとめて,耐震性能照査手順として標準検討および詳細検討の 2 段階の

検討を含む照査フローを示した。

7.2 独立型取水塔

SRC 構造取水塔の耐震性能照査に関するケーススタディを実施し,照査方法につ

いて検討を行った。検討内容および結果を以下にまとめる。 (1) SRC 構造取水塔の耐震性能照査に用いる解析モデルは,詳細な検討の場合で

は,ソリッド要素,リバー要素などによりモデル化ができ,また貯水の影響は貯水

を音響要素などによってモデル化することにより考慮できる。 (2) 付属構造物は,解析モデルでは耐震性能照査の必要性や照査方法を考慮して

省略できる。ただし,貯水との連成に関わる表面取水ゲートなどについては,省略

の妥当性についての検討が必要である。 (3) 上記(1)による詳細モデルによる検討から,動水圧は取水塔の地震時応答を増

大させる結果が示された。

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平成 23 年度発電設備耐震性能調査 ケーススタディ(塔型設備)

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(4) 標準的な検討方法として,SRC 構造の M-φ特性を考慮する解析方法が適用で

き,これは詳細な解析よりも安全側の評価結果を与える。 (5) 取水塔に設置される連絡橋梁が,取水塔の地震時応答に与える影響は小さく,

顕著に大きな応答変位が想定される場合以外では,解析モデルに橋梁を考慮す

る必要はない。 (6) 取水塔の要求性能,照査対象構造物,照査基準等を設定し,これをケーススタデ

ィにより検証した。 (7) 上記をまとめて,耐震性能照査手順として標準検討および詳細検討の 2 段階の

検討を含む照査フローを示した。

なお,本ケーススタディを通じた今後の課題は以下の通りである。

(1) サージタンクのせん断耐力として梁部材の考え方を適用したが,実際には壁体内

部の軸力分布の考慮や,見込まなかった鉄筋の作用などによるせん断耐力の増大

が考えられる。このため,サージタンクのような薄肉の RC 構造に対するせん断耐

力の合理的な評価法が今後の課題となる。

(2) 独立型取水塔の場合,地山近傍に設置されている場合が多いため,地山に作用

する動水圧も取水塔に影響する。この影響度を定量的に把握することが今後の課

題である。 (3) 標準的な検討方法では,例えば M-φモデルの場合,貯水の影響を模擬するた

めに付加質量を与える必要があるが,その一般化については今後の課題である。