# þ Ü s%Ê'2 /Õdc)z5 * ö n4 0¿ >e 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü...

10
全国循環器撮影研究会誌 Vol.23 2011 - 30 - 研究報告 全国循環器撮影研究会被ばく線量低減推進施設における 認定状況および冠動脈領域の透視・撮影線量調査 ○牧 浩昭1)2), 山尾覚一1), 山田 剛1), 井上勝博1), 加藤京一2)3), 加藤 守2)4),水澤康彦2)5), 飯田泰治2)6) , 宇都辰郎2)7), 水谷 宏2)8), 小宮 勲2)9), 若松 修10) 11) 1) 三重大学医学部附属病院 , 2) 被ばく線量低減施設認定委員, 3) 昭和大学藤が丘病院, 4) 秋田県成人病医療センター, 5) 新潟市民病院, 6) 金沢大学附属病院, 7) 近畿大学医学部附属病院 8) 松山赤十字病院, 9) 九州大学医学部附属病院, 10) NTT 東日本関東病院 11) 被ばく線量低減施設認定委員委員長 要約 冠動脈領域の透視あるいは撮影線量の施設間格差や被ばく線量低減のための問題点を把握するた めに全国循環器撮影研究会の被ばく線量低減推進施設認定制度による認定状況を申請の際に提出さ れた血管検査室の線量測定記録(被ばく線量低減推進施設認定基準書)および血管検査室基準の全 14 項目のアンケートについて集計した.平均の透視線量率は診断時で 25.0 mGy/min (6 inch)24.5 mGy/min (7 inch)Percutaneous cardio intervention (PCI)時で 21.9 mGy/min (6 inch)21.4 mGy/min (7 inch)となった.また,透視線量率で 4.24.9 倍,シネ撮影線量で 3.510.2 倍の施設 間格差が存在した.血管検査室基準について実施率が低かったのは「スタッフの教育・訓練を定期的 に行っている」および「照射野を必要最小限に絞る」で実施率は 56.3% (27/48)および 77.1%(37/48) であった.全 14 項目についてのすべての項目を実施している施設の割合は 31.3%(15/48)であった. 本調査は各々の施設のデータと照らし合わせることで自施設の線量がどのレベルにあるかを把握 でき,透視および撮影条件の再検討を行うことあるいはその判断に利用できる. 1. はじめに 全国循環器撮影研究会で行っている被ばく線量低減推進施設認定制度が開始され約 3 年が経過し, 48 施設(2010 3 1 日時点)が認定された.この制度は被ばく線量の低減を目的として施設ごとに 認定を行っているものであるが,今回,申請の際に提出された血管検査室の線量測定記録に関する被 ばく線量低減推進施設認定基準書(書類 2)および血管検査室基準についてのアンケート(書類 3について集計を行う機会を得たので報告する. 本検討では被ばく線量低減推進認定状況を調査することで冠動脈領域の透視あるいは撮影線量の 施設間格差や Interventional Radiology (IVR)にともなう被ばく線量低減のための問題点を把握する ことを目的とした. 2. 対象と方法 全国循環器撮影研究会の 48 認定施設(2010 3 1 日時点)を対象に被ばく線量低減推進施設認定 の申請の際に提出される書類-1(申請書),書類-2 (項目 2, a. 線量測定記録)および書類-3(血管検査 室基準についてのアンケート回答) 1) を集計した.線量測定記録に関しては書類-2 IVR 基準点 2) おける透視・撮影線量の記入フォームが統一された 2008 4 月以降に認定された 30 施設 69 装置を 対象にした.

Upload: others

Post on 11-Jun-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全国循環器撮影研究会誌 Vol.23 2011

- 30 -

研究報告

全国循環器撮影研究会被ばく線量低減推進施設における

認定状況および冠動脈領域の透視・撮影線量調査

○牧 浩昭1)2), 山尾覚一1), 山田 剛1), 井上勝博1), 加藤京一2)3), 加藤 守2)4),水澤康彦2)5),

飯田泰治2)6) , 宇都辰郎2)7), 水谷 宏2)8), 小宮 勲2)9), 若松 修10) 11)

1) 三重大学医学部附属病院 , 2) 被ばく線量低減施設認定委員, 3) 昭和大学藤が丘病院,

4) 秋田県成人病医療センター, 5) 新潟市民病院, 6) 金沢大学附属病院, 7) 近畿大学医学部附属病院

8) 松山赤十字病院, 9) 九州大学医学部附属病院, 10) NTT 東日本関東病院

11) 被ばく線量低減施設認定委員委員長

要約

冠動脈領域の透視あるいは撮影線量の施設間格差や被ばく線量低減のための問題点を把握するた

めに全国循環器撮影研究会の被ばく線量低減推進施設認定制度による認定状況を申請の際に提出さ

れた血管検査室の線量測定記録(被ばく線量低減推進施設認定基準書)および血管検査室基準の全 14

項目のアンケートについて集計した.平均の透視線量率は診断時で 25.0 mGy/min (6 inch),24.5

mGy/min (7 inch),Percutaneous cardio intervention (PCI)時で 21.9 mGy/min (6 inch),21.4

mGy/min (7 inch)となった.また,透視線量率で 4.2~4.9 倍,シネ撮影線量で 3.5~10.2 倍の施設

間格差が存在した.血管検査室基準について実施率が低かったのは「スタッフの教育・訓練を定期的

に行っている」および「照射野を必要最小限に絞る」で実施率は 56.3% (27/48)および 77.1%(37/48)

であった.全 14 項目についてのすべての項目を実施している施設の割合は 31.3%(15/48)であった.

本調査は各々の施設のデータと照らし合わせることで自施設の線量がどのレベルにあるかを把握

でき,透視および撮影条件の再検討を行うことあるいはその判断に利用できる.

1. はじめに

全国循環器撮影研究会で行っている被ばく線量低減推進施設認定制度が開始され約 3 年が経過し,

48 施設(2010 年 3 月 1 日時点)が認定された.この制度は被ばく線量の低減を目的として施設ごとに

認定を行っているものであるが,今回,申請の際に提出された血管検査室の線量測定記録に関する被

ばく線量低減推進施設認定基準書(書類 2)および血管検査室基準についてのアンケート(書類 3)

について集計を行う機会を得たので報告する.

本検討では被ばく線量低減推進認定状況を調査することで冠動脈領域の透視あるいは撮影線量の

施設間格差や Interventional Radiology (IVR)にともなう被ばく線量低減のための問題点を把握する

ことを目的とした.

2. 対象と方法

全国循環器撮影研究会の 48 認定施設(2010 年 3 月 1 日時点)を対象に被ばく線量低減推進施設認定

の申請の際に提出される書類-1(申請書),書類-2 (項目 2, a. 線量測定記録)および書類-3(血管検査

室基準についてのアンケート回答)1)を集計した.線量測定記録に関しては書類-2 の IVR 基準点 2)に

おける透視・撮影線量の記入フォームが統一された 2008 年 4 月以降に認定された 30 施設 69 装置を

対象にした.

Page 2: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全循研被ばく線量低減推進施設認定状況および線量調査

- 31 -

2.1 認定状況および線量測定

検討項目は,年度ごとの認定施設数,都道府県別認定施設数および所属推進母体別認定施設数,単

施設あたりの装置設置数,設置からの経過期間,装置種類(Flat Panel Detector(FPD)あるいは Image

Intensifier (I.I.)),線量測定の際の線量計およびファントムの種類,Source-image receptor distance

(SID),透視線量率および撮影線量とした.

透視線量率および撮影線量は 6 inch および 7 inch について調査した.ここで,照射野サイズはメ

ーカー間の違いを考慮して FPD,I.I. ともに対角表示とした.Table 1 にメーカー別の FPD の照射

野の表示法とメーカーが通常用いている呼び方を示した.また,検査の対象として冠動脈撮影(シネ

撮影)を想定し,通常の診断時と Percutaneous cardio intervention (PCI)時とに分類して IVR 基準

点 2)での透視線量率, 撮影線量を調査した.さらに施設ごとに診断時と PCI 時に透視線量率, シネ撮

影線量に違いがあるか(ある場合はその要因を)検討した. 尚,線量記載フォームにシネ撮影とし

て記載があるが,診断と PCI との区別がない場合は両者に同一の値として扱った.

照射野が 6 inch あるいは 7 inch の線量(率)は測定点の内挿法により求めた.ただし,6 inch あ

るいは 7 inch が内挿できない装置(シネ撮影の記載のない装置: Digital subtraction

Angiography(DSA)専用装置を含む)が各々35,25 装置はあったがこれらは本検討から除外した.こ

れらにより,6 inch では 34 装置,7 inch では 44 装置が調査の対象となった.

線量(率)はフレーム(分)あたりの平均値,中央値,標準偏差,最小値,最大値,および 75%線

量(3/4 値)で表した.また,施設間格差を評価するために最大値/最小値を求めた.

Table. 1 Table 1 メーカー別の FPD の照射野の表示法

とメーカーが通常用いている呼び方

FPD 名称 装置上 inch cm

照射野サイズ(inch/cm) での表示 縦×横 対角 縦×横 対角

シーメンス

正方形 1 7×7 9.8 17.7×17.7 25

FD 20×20 2 5.6×5.6 7.9 14.3×14.3 20

3 4.3×4.3 6.3 11.0×11.0 16

4 2.8×2.8 3.9 7.1×7.1 10

長方形 1 11.7×15 18.9 29.6×38.2 48

FD 30×40 2 11.7×11.7 16.5 29.6×29.6 42

3 8.7×8.7 12.6 22.2×22.2 32

4 6.2×6.2 8.7 15.8×15.8 22

5 4.4×4.4 6.3 11.1×11.1 16

6 3.1×3.1 4.3 7.9×7.9 11

フィリップス inch と cm 表示のいずれも可能

FD10 10 7.1×7.1 10 18×18 25

8 5.7×5.7 8 13.5×13.5 20

6 4.2×4.2 6 11×11 15

FD20 19 14.8×13.4 19 38×30 48

17 12.0×12.0 17 30×30 42

13 9.2×9.2 13 22×22 31

10.5 7.4×7.4 10.5 19×19 27

8 5.7×5.7 8 16×16 22

7 4.9×4.9 7 13.5×13.5 19

6 4.2×4.2 6 11×11 15

東芝

8 inch 8 8×8 11 19.8×19.8 28

7 7×7 10 17.3×17.3 24

6 6×6 8 14.9×14.9 21

5 5×5 7 12.4×12.4 18

12 inch 12 12×12 17 29.8×29.8 42

10 10×10 14 24.8×24.8 35

8 8×8 11 19.8×19.8 28

6 6×6 8 14.9×14.9 21

12×16 inch 12×16 12×16 23 29.8×39.7 56

12 12×12 17 29.8×29.8 42

8 8×8 11 19.8×19.8 28

Page 3: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全国循環器撮影研究会誌 Vol.23 2011

- 32 -

2.2血管検査室基準についてのアンケート

Table 2 に示す設問 1~14 のアンケート項目 1)について各項目の実施率および全項目を実施してい

る施設の割合を算出した.

3. 結果

3.1 認定状況および線量測定

年度ごとの認定施設数(Fig.1),都道府県別認定施設数および所属推進母体別認定施設数(Fig.2),

単施設あたりの装置設置数(Fig.3),設置からの経過期間(Fig.4),装置の種類(FPD/I.I) (Fig.5),

線量測定の際の線量計(Fig.6)およびファントムの種類(Fig.7),SID(Fig.8)について認定施設

状況を Fig.1~8 に示す.

6 6×6 8 14.9×14.9 21

GE

Innova 2100IQ/2121IQ 0 7.9×7.9 11.1 20×20 28.3

1 6.7×6.7 9.5 17×17 24.0

2 5.9×5.9 8.4 15×15 21.2

3 4.7×4.7 6.7 12×12 17.0

Innova 3100IQ/3131IQ 0 11.8×11.8 16.7 30×30 42.4

1 7.9×7.9 11.1 20×20 28.3

2 6.3×6.3 8.9 16×16 22.6

3 4.7×4.7 6.7 12×12 17.0

Innova 4100IQ 0 15.7×15.7 22.3 40×40 56.6

1 12.6×12.6 17.8 32×32 45.2

2 7.9×7.9 11.1 20×20 28.3

3 6.3×6.3 8.9 16×16 22.6

島津

サファイア小 9 inch 1 9×9 12.7 22.1×22.1 31

2 7.5×7.5 10.6 19.2×19.2 27

3 6×6 8.4 15.3×15.3 21

4 4.5×4.5 6.3 11.5×11.5 16

サファイア大 17 inch 1 17×17 24 43×43 61

2 15×15 21.2 38.1×38.1 53.8

3 12×12 16.9 30.5×30.5 43.1

4 9×9 12.7 22.1×22.1 31.2

5 6×6 8.5 15.2×15.2 21.5

メーカーが通常用いている呼び方

FPD 名称 装置上 inch cm

照射野サイズ(inch/cm) での表示 縦×横 対角 縦×横 対角

シーメンス

正方形 1 7×7 9.8 17.7×17.7 25

FD 20×20 2 5.6×5.6 7.9 14.3×14.3 20

3 4.3×4.3 6.3 11.0×11.0 16

4 2.8×2.8 3.9 7.1×7.1 10

長方形 1 11.7×15 18.9 29.6×38.2 48

FD 30×40 2 11.7×11.7 16.5 29.6×29.6 42

3 8.7×8.7 12.6 22.2×22.2 32

4 6.2×6.2 8.7 15.8×15.8 22

5 4.4×4.4 6.3 11.1×11.1 16

6 3.1×3.1 4.3 7.9×7.9 11

フィリップス inch と cm 表示のいずれも可能

FD10 10 7.1×7.1 10 18×18 25

8 5.7×5.7 8 13.5×13.5 20

6 4.2×4.2 6 11×11 15

FD20 19 14.8×13.4 19 38×30 48

17 12.0×12.0 17 30×30 42

13 9.2×9.2 13 22×22 31

10.5 7.4×7.4 10.5 19×19 27

8 5.7×5.7 8 16×16 22

7 4.9×4.9 7 13.5×13.5 19

6 4.2×4.2 6 11×11 15

東芝

8 inch 8 8×8 11 19.8×19.8 28

7 7×7 10 17.3×17.3 24

6 6×6 8 14.9×14.9 21

5 5×5 7 12.4×12.4 18

12 inch 12 12×12 17 29.8×29.8 42

10 10×10 14 24.8×24.8 35

8 8×8 11 19.8×19.8 28

6 6×6 8 14.9×14.9 21

12×16 inch 12×16 12×16 23 29.8×39.7 56

12 12×12 17 29.8×29.8 42

8 8×8 11 19.8×19.8 28

Page 4: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全循研被ばく線量低減推進施設認定状況および線量調査

- 33 -

アンケート項目 内容

設問 1 「無駄な透視をしない」を啓発し続けている.

設問 2 低レートパルス透視(低線量透視)を必要に応じて使い分けている.

設問 3 必要最小限の撮影レート, 撮影フレーム数を実践している.

設問 4 軟線除去フィルタを X 線管に付加している.

設問 5 透視線量,撮影線量を適切に調整している.

設問 6 焦点皮膚間距離をできるだけ離すように実践している.

設問 7 I.I.および FPD を皮膚面に,できるだけ近づけるよう実践している.

設問 8 照射野を必要最小限に絞ることを実践している.

設問 9 過度のインチアップを避けることを実践している.

設問 10 線量又は透視時間の記録をしている.

設問 11

2Gy を超えたと思われた時の対処方法が検討されており,適切にアドバイスできるように心がけ

ている.

IVR 時の患者被曝線量を何らかの形で計測・推測しカルテ等に記載する等.

設問 12 継続した装置管理を実践している(施設で日常の QC,QA を実践している).

設問 13 目的に応じたプロトコール作成をし,それを実践している.

設問 14 スタッフの教育・訓練を定期的に行っている.

Table. 2 血管検査室基準についてのアンケート項目

Fig.2 都道府県別認定施設数および

推進母体別認定施設数

Fig.1 年度ごとの認定施設数

Fig.3 単施設あたりの装置設置

Fig.4 設置からの経過期間

Page 5: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全国循環器撮影研究会誌 Vol.23 2011

- 34 -

透視線量率を診断およびPCI時別にFig.9および10に示す.また,透視線量率を診断およびPCI時の

各inchにおける透視線量率を少ない施設から順に並び替えたものをFig.11~14に示す.診断時の透視

線量率は6 inch で25 mGy/min未満が18施設(53%),25~30 mGy/min未満が6施設(18%),30~40

mGy/min未満が8施設(23%),40 mGy/min以上が2施設(6%)となった.7 inch で25 mGy/min未満が

31施設(70%),25~30 mGy/min未満が5施設(11%),30~40 mGy/min未満が6施設(14%),40 mGy/min

以上 が2施設(5%)となった.

シネ撮影線量を診断およびPCI時別にFig.15および16に示す.同様に各inchにおけるシネ撮影線量

を少ない施設から順に並び替えたものをFig.17~20に示す.Table 3,4には平均値および施設間格差を

示した.平均の透視線量率は診断時で25.0 mGy/min (6 inch),24.5 mGy/min (7 inch),PCI時で21.9

mGy/min (6 inch),21.4 mGy/min (7 inch)となった.また,平均のシネ撮影線量は診断時で0.28

mGy/frame (6 inch),0.25 mGy/frame (7 inch),PCI時で0.25 mGy/frame (6 inch) ,0.25 mGy/frame

(7 inch)となった.さらに,透視線量率で 4.2~4.9倍,シネ撮影線量で 3.5~10.2倍の施設間格差が

存在した.

Fig.9 冠動脈診断時における透視線量率 Fig.10 冠動脈 PCI時における透視線量率

Fig.5 装置の種類 Fig.6 線量測定の際の線量計

Fig.7 線量測定の際のファントム Fig.8 線量測定の際の SID

Page 6: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全循研被ばく線量低減推進施設認定状況および線量調査

- 35 -

Fig.17 診断時(6inch )におけるシネ撮影線量 Fig.18 診断時(7inch )におけるシネ撮影線量

Fig.15 診断時におけるシネ撮影線量 Fig.16 PCI時におけるシネ撮影線量

Fig.13 PCI時(6inch )における透視線量率 Fig.14 PCI時(7inch )における透視線量率

Fig.12 診断時(7inch )における透視線量率 Fig.11 診断時(6inch )における透視線量率

Page 7: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全国循環器撮影研究会誌 Vol.23 2011

- 36 -

一方で,診断時と PCI 時の透視線量およびシネ撮影線量の施設ごとの比較では診断時と PCI 時の

透視線量率を区別している施設は 29%(PCI 時に透視線量率を減少させている施設が 18%,増加さ

せている施設が 11%)であり,71 %の施設で条件変更は認めなかった.減少させている施設におい

てその要因として入射線量モードの切り替え(56%)で付加フィルタを入れる(22%),パルスレートを下

げる(11%)ことにより線量を低減していた.

同様に,診断時とPCI時のシネ撮影線量の施設ごとの比較では診断時とPCI時のシネ撮影線量を区

別している施設は18% (PCIで減少14%,増加4% )であり,82 %の施設で条件変更は認めなかった.

減少させている施設においてその要因として撮影レートを下げる(30 frame/sから15 frame/sあるい

は15 frame/sから7.5 frame/s) (67%),付加フィルタを入れる(33%)ことにより線量を低減していた.

Table.3 冠動脈検査の透視線量率

検査/治療

inch (装置数) 平均(mGy/min)±標準偏差 最小 最大 格差(倍) 75%線量(3/4 値)

冠動脈診断

6 inch (n=34) 25.0±10.5 10.3 43.3 4.2 31.7

7 inch (n=44) 21.9± 8.3 9.3 45.4 4.9 28.0

冠動脈 PCI

6 inch (n=34) 24.5± 9.1 10.9 45.3 4.2 29.3

7 inch (n=44) 21.4± 8.3 9.0 41.6 4.6 24.2

Table. 4 冠動脈検査のシネ撮影線量

検査/治療

inch (装置数) 平均(mGy/frame)±標準偏差 最小 最大 格差(倍) 75%線量 (3/4 値)

冠動脈診断

6 inch (n=34) 0.28±0.10 0.15 0.52 3.5 0.37

7 inch (n=44) 0.25±0.10 0.11 0.45 4.1 0.33

冠動脈 PCI

6 inch (n=34) 0.27±0.11 0.05 0.51 10.2 0.37

7 inch (n=44) 0.25±0.11 0.05 0.45 9.0 0.33

Fig.19 PCI時(6inch )におけるシネ撮影線量 Fig.20 PCI時(7inch )におけるシネ撮影線量

Page 8: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全循研被ばく線量低減推進施設認定状況および線量調査

- 37 -

3.2 血管検査室基準についてのアンケート

Table 5 に血管検査室基準についてのアンケートの実施率を示す.

設問 4 の「付加フィルタの使用」と設問 12 の「装置の保守管理に関する項目」は認定の必須項目

ということもあり,全施設で実施されていた.また,設問 1 の「無駄な透視をしないを啓発し続けて

いる」と設問 10 の「線量又は透視時間の記録をしている」については全 48 施設が実施されていた.

一方で実施率が低かったのは設問 14 の「スタッフの教育・訓練を定期的に行っている」および設

問 8 の「照射野を必要最小限に絞る」で,それぞれ実施率は 56.3% (27/48)および 77.1%(37/48)であ

った.

また,血管検査室基準の全 14 項目についてのすべての項目を実施している施設の割合は

31.3%(15/48)であった.

4. 考察

今回,我々は被ばく線量低減推進施設の認定状況を調査することで冠動脈領域の透視あるいは撮影

線量の施設間格差がどの程度あるのか調査した.その結果,透視線量率で 4.2~4.9 倍,シネ撮影線

量で 3.5~10.2 倍の施設間格差を認めた.線量測定においては電離箱線量計およびアクリルファント

ムを使用している施設が多かったが,現在の施設認定審査においては線量計や測定方法(ファントム

および SID)については完全に統一されていない.従って,上記の測定に伴う誤差は考慮されておら

ず,今回の調査で明らかとなった施設間格差は多少の誤差を含んでいる可能性がある.しかし,田島

ら 3)や日本放射線技師会 4)などの他の報告 5)-9)と同程度の施設間格差を認めた.一方で,本検討の対象

である 48 施設はその性格上,被ばく低減に積極的な集団であると考えられるので,この集団ですら

4 倍から 2 桁の施設間格差が存在することが明らかとなったことは注目すべきことである.実際には

もう少し大きい施設間格差が存在するものと考えられる.また,線量測定の統一に必要性に関しては,

線量計およびファントムが比較的高価なこともあり,完全に統一することは困難であると思われるが

SID に関しては統一できるのではないかと考えた.

前述のごとく冠動脈検査あるいは IVR に限らず医療被ばくの特徴として患者の被ばく線量の分布

は広い範囲にわたり観察されている 5)-9).今回の検討ではそれらの原因までは検討していないが,使

用機器(FPD/I.I.,使用している期間,SID,総ろ過など主として機器に固有のもの)による差,診

アンケート項目 内容 実施施設数(n=48) 実施の割合(%)

設問 1 「無駄な透視をしない」を啓発し続けている. 48 100.0

設問 2 低レートパルス透視(低線量透視)を必要に応じて使い分けている. 43 89.6

設問 3 必要最小限の撮影レート, 撮影フレーム数を実践している. 47 97.9

設問 4 軟線除去フィルタを X 線管に付加している. 48 100.0

設問 5 透視線量,撮影線量を適切に調整している. 47 97.9

設問 6 焦点皮膚間距離をできるだけ離すように実践している. 47 97.9

設問 7 I.I.および FPD を皮膚面に,できるだけ近づけるよう実践している. 47 97.9

設問 8 照射野を必要最小限に絞ることを実践している. 37 77.1

設問 9 過度のインチアップを避けることを実践している. 42 87.5

設問 10 線量又は透視時間の記録をしている. 48 100.0

設問 11

2Gy を超えたと思われた時の対処方法が検討されており,適切にアドバイスできるよ

うに心がけている. IVR 時の患者被曝線量を何らかの形で計測・推測しカルテ等に記

載する等.

39 81.3

設問 12 継続した装置管理を実践している(施設で日常の QC,QA を実践している). 48 100.0

設問 13 目的に応じたプロトコール作成をし,それを実践している. 45 93.8

設問 14 スタッフの教育・訓練を定期的に行っている. 27 56.3

設問 1~14 設問 1~14 の全てにおいて実施 15 31.3

Table. 5 血管検査室基準について項目別の実施施設数および実施率

Page 9: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全国循環器撮影研究会誌 Vol.23 2011

- 38 -

断目標を達成するための線量の考え方(個人の画質への考え方),術者の手技に対する熟練度や技術

的因子,臨床的な難易度,手技の煩雑さなどによるものであると考えられる.医療被ばくにおいては

患者の受ける利益がリスクを上回ることが明確なため検査あるいは治療が行われることが前提であ

る 10).どの程度の施設間格差が許容範囲内かは議論の分かれるところであるが,しかしながら,同一

目的のために施行される放射線検査あるいは治療としてこの格差は小さいほどよく,冠動脈検査にお

ける線量の最適化について更なる努力が必要である.

透視線量率に関して日本放射線技師会の医療被ばくガイドライン 4)で示されている 25 mGy/min 以

下の施設の割合は 6 inch で 53%, 7 inch で 70%であった.一方で国際原子力機関(IAEA)の高レベル

透視線量率(100 mGy/min) 11)や日本工業規格(JIS Z4702) の高線量率透視(125 mGy/min) 12)を超える

装置は存在しなかった.我々の透視線量率の結果では診断および PCI 時の 75%線量(3/4 値)がそれぞ

れ 6 inch で 31.7 および 29.3 mGy/min, 7 inch で 28.0 および 24.2 mGy/min となり,ガイドライ

ンの数値は目標値としては概ね妥当であると考えられた.

一方で IVR を行う血管撮影室においてスタッフの教育・訓練を行っている施設についての割合が

56.3%と低く, スタッフ教育の重要性が示唆された.今後は関連団体からスタッフの教育のための指

針を示す必要があるかもしれない.また,照射野を必要最小限に絞るといった基本的な行為も実施率

が 77.1%と他の項目に比べ低くなった.この原因を考えなければならないが,本アンケート方式の限

界であると言える.いずれにしろ,IVR での被ばく線量低減のための臨床現場での問題点が明らかに

なった.

また,本検討の対象の施設は I.I.装置が 61%と FPD の 39%より多く設置されていたが,設置期間

が 5~10 年の装置が 40%, 10 年以上の装置も 26%を占めており,今後,機器の更新に伴い FPD 装置

に移行していくと推測されるため今後の装置の推移も見ながら被ばく線量低減のために繋げていく

必要があると考えられた.

本検討では正面管球のみを対象にしたが,今後は側面管球の線量も含めて検討しなければならない.

また,現在の装置は正確な付加フィルタを含めた総ろ過やグリッド比が不明なことも少なくない.こ

れらをメーカーの協力を得ながら検討しく必要があると思われた.さらに,DSA 撮影は撮影の目的

が不明確なまま線量が記載されていたり,DSA 撮影を行っていないと推測される無記入の施設が存

在したため今回は検討しなかった.入力フォームも含めて DSA 撮影についても検討しなければなら

ないと考えられる.最後に,冠動脈検査の目的を診断(撮影)あるいは PCI(治療)と分類したが,

その施設で目的を果たすための画質が担保されていることが前提で線量を比較した.このため各施設

での画質の相互の検討や最小限度の線量での透視あるいは撮影かどうかの検証は行っていない.これ

らも今後の課題としたい.

5. 結語

本検討の結果は各々の施設のデータと照らし合わせることで自施設の線量がどのレベルにあるか

を把握でき,透視および撮影条件の再検討を行うことあるいはその判断に利用できる.さらには新規

に全国循環器撮影研究会の被ばく線量低減推進施設認定を申請する施設にとって線量測定法の確認

など参考にすることが期待できる.

謝辞

本研究において調査およびデータの収集にご協力頂いた全国循環器撮影研究会の会員の皆様なら

びに会員施設の放射線技師諸兄に深く感謝致します.

尚,本研究の一部を第 24 回全国循環器撮影研究会(横浜, 2010)にて発表した.

Page 10: # þ Ü s%Ê'2 /ÕdC)z5 * ö N4 0¿ >E 1 g #>|g Ù ·+&8 æb3ñ0ií Ü ...plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/全循過去/public_html/secret_file... · b/ÕdC)z5 * ö N4 0¿1 D Ø_| 1 "g #

全循研被ばく線量低減推進施設認定状況および線量調査

- 39 -

参考文献

1) 全国循環器撮影研究会ホームページ.被ばく線量低減推進施設認定の申請書と申請方法:

http://plaza.umin.ac.jp/~zen-jun/shinsei_houhou.html (2010.5.13 時点)

2) International Electrotechnical Commission. Medical electrical equipment - Part 2-43:

Particular requirements for the safety of X-ray equipment for interventional procedures.

Document no. 60601-2-43 Ed1.0. Geneva, Switzerland: International Electrotechnical

Commission, 2000.

3) 田島修,鍋倉良三,佐藤久弥 他:心臓カテーテル検査における透視線量および被ばく低減技術

の標準化(ガイドライン化を目指して).全国循環器撮影研究会誌 16:18-21, 2004

4) 放射線量適正化のための医療被ばくガイドライン 放射線診療における線量低減目標値とその実

践 社団法人日本放射線技師会 文光堂,2009

5) 木村均,土佐鉄雄,村上龍也 他:循環器撮影(IVR)における被曝線量の全国調査.全国循環器撮

影研究会誌 16:8-16, 2004

6) Shigeru Suzuki, Shigeru Furui, Takaaki Isshiki, et al: Patients’ Skin Dose Percutaneous

Coronary Intervention for Chronic Total Occlusion. Catheterization and Cardiovascular

Interventions 71:160-164, 2008

7) Virginia Tsapaki, Nada A. Ahmed, Jamilia Salem AISuwaidi, et al: Radiation Exposure to

Patients During Interventional Procedures in 20 Countries: Initial IAEA Project Results.AJR

193:559-569, 2009

8) J. Karppinen, T. Parviainen, A. Servomaa et al: Radiation Risk and Exposure of Radiologists

and Patients during Coronary Angiography and Percutaneous Transluminal Coronary

Angioplasty (PTCA) Radiat Prot Dosimetry 57: 481-485, 1995

9) 水谷宏,梅津芳幸,江口陽一 他(平成 13 年度 IVR における患者被曝線量の測定と防護に関する

研究班): IVR における患者被曝線量の測定と防護に関する研究班報告.日放技会誌

59(3):369-381,2003

10) International Commission on Radiological Protection: 1990 Recommendations of the

International Commission on Radiological Protection. ICRP Publication 60. Ann. ICRP, 1990.

11) International Atomic Energy Agency (IAEA): International Basic Safety Standards for

Protection against Ionizing Radiation and for the Safety of Radiation Sources, Vienna, Safety

series No.115; 279-284, 1994

12) Japanese Industrial Standards. General requirements for high-voltage generators of medical

X-ray apparatus. JIS Z 4702. Tokyo, Japan: Japanese Standards Association (translation), 1999.