進ネットー ク交流会で活動中。 let'点 検 · リ ー連載 第2 10年 京逓病...

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リレー連載 第2回 1980年東京逓信病院高等看護学院卒業,同年横浜逓信病院入職,外科,内科系外来・病棟を網 羅。2002年看護師長へ昇格。2005年地域連携室を立ち上げて軌道に乗せ,2011年3月まで在 籍。2011年4月から医療安全管理室の副室長となり,現職(専従)。神奈川県看護協会医療安全推 進ネットワーク交流会で活動中。 日本郵政株式会社  横浜逓信病院 医療安全管理室 医療安全管理者/看護師長 瀧本由美子 医療安全室からこんにちは 自然体でシアする 安全推進活動レポリレー連載 第2回 Let's Go 点検! ~点滴スタンド・車いす・歩行器・ストレッチャーの定期点検 転倒リスク発見! 車輪に絡まる「禍いの髪の毛」 当院では,医療安全管理者が安全(感染を 含む)の目線で毎日院内ラウンドを実施して います。 ある病棟ラウンド時に,患者様が車輪の動 きが悪い点滴スタンドを引っ張って歩いてい る場面に出合いました。患者様に声をかけ, 車輪を確認したところ,車輪に髪の毛が絡 まっていることに気づき,予備の点滴スタン ドと交換しました。しかし,交換したスタン ドもまた,先ほどのスタンドほどではないに しろ,同じように髪の毛が絡んでいました。 そこで,ほかにも髪の毛が絡んでいないか と,車いす,歩行器,ストレッチャーを確認 すると同様の状況でした(特に点滴スタンド と車いすがひどかった!)。「このままでは転 倒につながる」と危惧し,即座に実行あるの みです。まず自分でできるところから始めよ うと,リスク担当の外来師長に声をかけ,私 と2人で手袋,エプロン,マスク(PPEで す!)を装着し,千枚通しと環境クロス,浸 透潤滑剤を持ち,細々と髪の毛の絡み取りを 始めました(写真)。 安全保持策へ ~点検表の作成 禍いを引き起こすかのように絡んでいる髪 の毛は,患者様たちの苦悩を思わせるような ものでした。 スタッフに,「以前に髪の毛の絡み取りを 実施したことがあるか?」を確認しても,答 えは「不明」でした。これら髪の毛は,いつ 頃から付着したものだろうかと思うほど,車 輪にくいこんで絡み合っており,手ごわい相 手でした。 まず点滴スタンド,次に車いす,歩行器, ストレッチャーの順で髪の毛の絡み取りを行 いました。1カ月に1回の頻度で行い,2カ 月ほどでほぼ取り除くことができました。 この作業をしながら,ふと,「何を点検す ることによって,これらの安全の保持ができ るのかな」と思い,点検項目の情報を収集し, 点滴スタンド,車いす,歩行器,ストレッ チャー各々の点検表,運用マニュアルを作成 しました(資料1,2)。 点検から台数把握,そして修理へ いよいよ点検表を用いて点検するに当た り,「点検隊」(自称)と名づけ,理学療法士, 外来リスク担当スタッフを加えた4人で定期 点検を開始しました。 点滴スタンドから始め,車いす,歩行器, ストレッチャーの順で,①各々の点検表に 沿って点検,②車輪の髪の毛などの絡み取 り,③掃除をしながら整備しました。 必要物品は前述したものに工具を加え,方 当院は,1952年10月に郵政省の職域病院として開設されま した。現在は,皆様にご利用いただける日本郵政株式会社の 企業立病院として質の高い診療を行い,地域医療に貢献して います。急性期を標榜し,外科系の患者様を中心に,内科系 や亜急性期の患者様も受け入れています。医療安全と院内感 染対策に力を注いでいます。 病院安全教育 Vol.3 No.1 98

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リレー連載 第2回

1980年東京逓信病院高等看護学院卒業,同年横浜逓信病院入職,外科,内科系外来・病棟を網羅。2002年看護師長へ昇格。2005年地域連携室を立ち上げて軌道に乗せ,2011年3月まで在籍。2011年4月から医療安全管理室の副室長となり,現職(専従)。神奈川県看護協会医療安全推進ネットワーク交流会で活動中。

日本郵政株式会社 横浜逓信病院医療安全管理室 医療安全管理者/看護師長瀧本由美子医療安全室からこんにちは!

自然体でシェアする安全推進活動レポート

リレー連載 第2回

Let's Go 点検!~点滴スタンド・車いす・歩行器・ストレッチャーの定期点検

転倒リスク発見! 車輪に絡まる「禍いの髪の毛」 当院では,医療安全管理者が安全(感染を含む)の目線で毎日院内ラウンドを実施しています。 ある病棟ラウンド時に,患者様が車輪の動きが悪い点滴スタンドを引っ張って歩いている場面に出合いました。患者様に声をかけ,車輪を確認したところ,車輪に髪の毛が絡まっていることに気づき,予備の点滴スタンドと交換しました。しかし,交換したスタンドもまた,先ほどのスタンドほどではないにしろ,同じように髪の毛が絡んでいました。 そこで,ほかにも髪の毛が絡んでいないかと,車いす,歩行器,ストレッチャーを確認すると同様の状況でした(特に点滴スタンドと車いすがひどかった!)。「このままでは転倒につながる」と危惧し,即座に実行あるのみです。まず自分でできるところから始めようと,リスク担当の外来師長に声をかけ,私と2人で手袋,エプロン,マスク(PPEです!)を装着し,千枚通しと環境クロス,浸透潤滑剤を持ち,細々と髪の毛の絡み取りを始めました(写真)。

安全保持策へ~点検表の作成 禍いを引き起こすかのように絡んでいる髪の毛は,患者様たちの苦悩を思わせるようなものでした。 スタッフに,「以前に髪の毛の絡み取りを実施したことがあるか?」を確認しても,答えは「不明」でした。これら髪の毛は,いつ頃から付着したものだろうかと思うほど,車輪にくいこんで絡み合っており,手ごわい相手でした。 まず点滴スタンド,次に車いす,歩行器,ストレッチャーの順で髪の毛の絡み取りを行いました。1カ月に1回の頻度で行い,2カ月ほどでほぼ取り除くことができました。 この作業をしながら,ふと,「何を点検することによって,これらの安全の保持ができるのかな」と思い,点検項目の情報を収集し,点滴スタンド,車いす,歩行器,ストレッチャー各々の点検表,運用マニュアルを作成しました(資料1,2)。

点検から台数把握,そして修理へ いよいよ点検表を用いて点検するに当たり,「点検隊」(自称)と名づけ,理学療法士,外来リスク担当スタッフを加えた4人で定期点検を開始しました。 点滴スタンドから始め,車いす,歩行器,ストレッチャーの順で,①各々の点検表に沿って点検,②車輪の髪の毛などの絡み取り,③掃除をしながら整備しました。 必要物品は前述したものに工具を加え,方

当院は,1952年10月に郵政省の職域病院として開設されました。現在は,皆様にご利用いただける日本郵政株式会社の企業立病院として質の高い診療を行い,地域医療に貢献しています。急性期を標榜し,外科系の患者様を中心に,内科系や亜急性期の患者様も受け入れています。医療安全と院内感染対策に力を注いでいます。

●病院紹介●

病院安全教育 Vol.3 No.198

リレー連載 第2回

1980年東京逓信病院高等看護学院卒業,同年横浜逓信病院入職,外科,内科系外来・病棟を網羅。2002年看護師長へ昇格。2005年地域連携室を立ち上げて軌道に乗せ,2011年3月まで在籍。2011年4月から医療安全管理室の副室長となり,現職(専従)。神奈川県看護協会医療安全推進ネットワーク交流会で活動中。

日本郵政株式会社 横浜逓信病院医療安全管理室 医療安全管理者/看護師長瀧本由美子医療安全室からこんにちは!

自然体でシェアする安全推進活動レポート

リレー連載 第2回

Let's Go 点検!~点滴スタンド・車いす・歩行器・ストレッチャーの定期点検

法は使用していないものから始めて使用中のもので交換できるものは点検済みのものと交換,交換できないものは預かってきて点検して戻すことにしました。 点検を始めると,まず大きな問題として,点滴スタンド,車いす,歩行器の台数がはっきりせず,台数把握から始めるため各々に番号を付けました。この番号を点検表に記載し,番号に沿って点検することとしました。 さらに,車いすのタイヤの劣化(パンク寸前のものもあり),ストッパーのねじの緩み,

点滴スタンドの持ち手のひび割れ,点滴棒の曲がりなど数々の発見があり,工具を使用したり設備係の力も借りたりして修理にかかりました。

汗を流し,血を流して1年, ついに意識改革を実現

 毎月汗を流しながら,千枚通しを2回も手に刺しながら(私だけです),だんだん綺麗になっていくのを感じながら,充実感を持って1年がかりで軌道に乗せることができまし

写真●車輪に絡まる「禍いの髪の毛」の除去作業

点検項目 No No No No

①キャスター•4輪ロック・解除が確実に行えるか•走行中キャスター部から異音がしないか

②センターホイール•直進・フリー走行の切り替えが行えるか

③高さ調整•ハンドル操作により高さ調整が確実に行えるか•ハンドルに破損箇所がないか•高さ調整の際,異音がしないか

④背上げ•背上げ操作が確実に行えるか•背上げ操作の際,異音がしないか

⑤トランスファーボード(サイドレール)•トランスファーボード(またはサイドレール)のストッパー開閉が確実に行えるか

•トランスファーボード(またはサイドレール)に破損箇所はないか

⑥患者固定ベルト•ベルトにほつれや破損箇所がないか

⑦マットレス•マットレスに汚れや破損箇所がないか

⑧酸素ボンベホルダー•酸素ボンベホルダーが確実に固定されているか

⑨IVポール•IVポールが確実に固定されているか※ストレッチャー下BOX内物品状況

(点検者サイン)

(外来・病棟)

※点検項目チェック 不備な内容は記載欄に記入

不備な内容記載欄

2014年5月1日改訂 横浜逓信病院医療安全管理室

ストレッチャーNo外来 1階(内科)No.1 (売店前)No.2   2階(地域連携室前)No.3病棟 3階No.4 4階No.5

点検日  /

資料1●ストレッチャー点検表 資料2●点滴スタンド点検表

点検項目 異常が見られるNo

1.フックの変形・破損

2.高さ調整ねじ

3.持ち手の破損

4.車輪について

1)動き

2)異常音

3)がたつき

5.備考

(外来・病棟)

スタンドNo

①  ②  ③  ④  ⑤  ⑥  ⑦  ⑧  ⑨  ⑩

⑪  ⑫  ⑬  ⑭  ⑮  ⑯  ⑰  ⑱  ⑲  ⑳

㉑  ㉒  ㉓  ㉔  ㉕  ㉖  ㉗  ㉘  ㉙  ㉚

2013年9月26日 横浜逓信病院医療安全管理室

①Noテープは病棟(青)・外来(黄)とする。

②1カ月/1回点検とする。

実施日:  年  月  日

病院安全教育 Vol.3 No.1 99

た。初めは関心を示さなかった病棟スタッフも,徐々にねぎらいの言葉をかけてくれたり,手が空いている時には手伝ってくれたりするようになりました。 2年目からは,看護部リスク委員会が年間計画に組み入れ実施すると報告があり,これは「継続」という,まさに5S活動の中の「躾」に当たり,すなわち「意識改革」につながったのではないかと考えています。 また,ICTラウンド中の感染委員長が,点検中の私たちに「点検するようになってから

綺麗になり,感染上でもよいことです。ご苦労様です」との声かけがあり,点検隊はさらに充実感を深めました。 当院のように100床以下でMEなどの専門スタッフもいない,補助者も少ない病院では,安全な医療の提供において個々ができることから始め,それを継続していくことが最も大切です。現在は,看護部リスク委員会が毎月,点検表を用いて外来・病棟で点検し,医療安全管理室に点検表の提出および報告をしてくれています。

詳しくはスマホ・PCから          で検索!日総研 14043 詳しくはスマホ・PCから          で検索!日総研 13867

旧バージョンからの変更点、新評価項目の対策法

事例や経験を踏まえて具体的に!

近藤ときえ氏市立札幌病院 副院長/認定看護管理者/MBA

個人目標設定とキャリア形成への支援

『やりたい看護・なりたい自分』を『部署の目標』につなげる師長のマネジメント

[時間]10:00~16:00 (札幌のみ13:00~18:00)

本誌購読者 15,500円 一般 18,500円参加料/税込

東京 15年 9/26(土)フォーラムミカサ エコ 名古屋 15年 10/18(日)

日総研ビル

福岡 15年 10/31(土)福岡商工会議所 岡山 15年 11/14(土)

福武ジョリービル

大阪 15年 12/12(土)田村駒ビル 札幌 16年 1/16(土)

道特会館

スタッフにやらされ感なし! すぐ取り組める!プログラム1.病棟目標と個人目標を共通動機にするマネジメント1)目標管理とは MBO(Management by Objective) と能力開発について2)部署目標から考える個人目標設定3)部署が求める役割を通じての目標設定4)評価指標の決定~スタッフの目標設定時の状態から5)病棟目標と個人目標の表現方法 ほか

2.目標達成の支援~フィードバックにおける看護師長のかかわり1)PDCAサイクルが回るようにサーバントリーダーとして2)動機付け、エンパワメント、役割提示などがカギ3)能力やレディネスにあわせた状況的対応型リーダーシップ4)評価のフィードバックと目標面接がうまくいく準備と要点 ほか

3.キャリア形成の支援ができる看護師長になる1)キャリアプランの確認 ~家庭・自己・仕事をどう調和させるか 今の優先度は?2)キャリアステージのどの段階にいるのかを確認し、支援の根拠とする3)キャリアデザインを描くことの重要性とキャリア形成の支援 ほか

4. 事例学習 スタッフそれぞれの思い・状況にマッチした面接「役割を持たないスタッフ」「子育て真っ最中のスタッフ」「どんな看護師を目指す?に迷うスタッフ」のキャリア支援 ほか

プログラム

病院機能評価3rdG:Ver.1.1

受審における具体策と注意すべきポイント

池庄司和子氏医療法人杏仁会 松尾内科病院 看護部長(元・横浜労災病院 看護部長)

1.これまでの旧バージョンからの変更点と対策●全体の流れ ●評価対象領域 ●項目の変化 ほか

2.3rdG:Ver1.1受審に向けての準備と実際●キックオフ ●各部署からのプロジェクトチーム編成 ほか

3.各領域別評価のねらいと取り組みのポイント●4つの評価対象領域について ●大項目と中項目 ほか

4.記録・マニュアル、各種提出書類の作成●サーベイヤーが書類を見る視点 ※当日は、実際の資料なども紹介します。

5.看護部が果たすべき役割とスタッフ教育●チーム医療における役割の整理 ●ケアプロセスのアピール、作成法●ケアプロセス調査において留意すべきポイント ほか

6.訪問審査当日の最終チェックポイント ~『評価:C』になりやすい重要項目への対策

地域支援型病院で「評価:S」を取得できた取り組みから具体的に学ぶ

サーベイヤーは「どこを見て、何を聞く」のか、受審体験や準備資料から実務を細かく指導!

福岡15年 8/29(土)福岡センタービル

東京15年 10/3(土)日総研 研修室(廣瀬お茶の水ビル)

大阪15年 11/14(土)田村駒ビル

岡山15年 12/12(土)福武ジョリービル

[時間]10:00~16:00

本誌購読者 15,500円 一般 18,500円参加料/税込

病院安全教育 Vol.3 No.1100